JP3771665B2 - コンプレッサ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用空調装置に用いられる斜板式可変容量コンプレッサのON/OFFを制御するコンプレッサ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
斜板式可変容量コンプレッサは、斜板の傾きを変化させることが可能な構造を持ち、その斜板の傾き角の変化によりピストンの往復ストロークを変化させることで、冷媒の吐出量を制御するようにしている。
【0003】
図3は斜板式可変容量コンプレッサの一例を示す構造図である。
この斜板式可変容量コンプレッサ1は、図示しないエンジンと当該コンプレッサ1との機械的な連結を制御する電磁操作式のマグネットクラッチ2(以下単にクラッチともいう。)を有する。このマグネットクラッチ2を介して駆動されるシャフト3には、フロントヘッド4内において、ドライブラグ5が固定されており、このドライブラグ5にジャーナルピン6を介して斜板7が取り付けられている。斜板7には、シリンダブロック8内に摺動自在に嵌合しシャフト3と平行に往復運動する複数の(たとえば、5気筒の場合には5個の)ピストン9が、ソケットプレート10およびピストンロッド11を介して取り付けられている。斜板7は、ジャーナルピン6を中心(支点)としてスリーブ部材12を介してシャフト3上をスライドすることで、傾き角を変化させている。斜板の傾き角が大きければ冷媒の吐出量は多く、傾き角が小さければ吐出量は少なくなる。斜板の傾き角は、後で詳述するように、ピストン9に加わる圧力のバランスによって変化し、リヤヘッド13内に設けられコンプレッサ1に帰還する冷媒の圧力に応じてクランクケース14内の圧力を制御するコントロールバルブ15によって決定される。なお、図中、16はガイドレール、17はリターンスプリング、18は吸入ポート、19は吐出ポート、21は吐出弁である。
【0004】
このように構成されたコンプレッサ1のON/OFFは、マグネットクラッチ2への通電(つまり、電磁力の発生)を制御することによってなされる。たとえば、エンジン作動時、つまりイグニッションスイッチがONされている場合には、ブロアファン作動時であることを条件として、エアコンスイッチの操作により任意にコンプレッサ1をON/OFFできるようになっている。また、エアコンスイッチがON状態にある場合には、前記条件の下、イグニッションスイッチの操作によってもコンプレッサ1がON/OFFされるようになっている。すなわち、従来は、エアコンスイッチをONしたままイグニッションスイッチをOFFした場合にもただちにマグネットクラッチ2への通電を切ってコンプレッサ1をOFFする制御を行っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の斜板式可変容量コンプレッサ1の制御にあっては、熱負荷状態またはコンプレッサ1内の圧力バランスによっては、特にエアコンスイッチをONしたままイグニッションスイッチをOFFした時に異音が発生するおそれがった。
【0006】
この異音発生のメカニズムは、次のようなものと考えられている。
まず、前提として、図4を参照して、斜板7の傾き角の変化のメカニズムを説明しておく。ここで、図4は斜板7の傾きの変化の原理を説明するための模式図である。
【0007】
5気筒の斜板式可変容量コンプレッサ1を例にとると、斜板7の傾き角は、ピストン9に加わる圧力のバランス、つまり、図4に示すように、コンプレッサ1内の5つのシリンダの内圧Pt が各シリンダの上面を押す力と、クランクケース14内の圧力Pc が各シリンダの下面を押す力と、リターンスプリング17の力Fとの間のバランスによって変化し、実際にはクランクケース14内の圧力Pc を制御するコントロールバルブ15によって決定される。
【0008】
たとえば、最大冷房時、つまり、エンジン回転数が低い低速走行時、外気温が高いときなど、エバポレータ内を通過する冷媒ガスの量に対して吸収する熱量が多い場合には、冷媒ガスの低圧側圧力が上昇し、コントロールバルブ15は内蔵された低圧側バルブを開いてクランクケース14内の圧力Pc を吸入側へ逃がすため、クランクケース14内の圧力Pc は吸入圧力Ps とほぼ同等になる(つまり、吐出圧力Pd と比べ小さくなる)。このようにクランクケース14内の圧力を下げることで、前記圧力バランスがPt +F>Pc となり、斜板7は傾きが大きくなる方向へ動かされ、最大傾度となる(ピストン最大ストロークまたはフルストローク)。
【0009】
一方、容量制御時、つまり、エンジン回転数が高い高速走行時、外気温が低いとき、車室内温度が低いときなどには、冷媒ガスの低圧側圧力が低くなり、コントロールバルブ15は内蔵された高圧側バルブを開いてクランクケース14内に吐出圧力Pd を導入するため、クランクケース14内の圧力Pc は吐出圧力Pd に近づく。このようにクランクケース14内の圧力を上げることで、Pt 、Pc 、Fのバランスがくずれ、Pt +F=Pc となるよう斜板7は傾きが小さくなる方向へ動かされ、冷媒ガスの吐出量が減少し、吸入圧力が上昇する。このため、斜板7は圧力のバランスのとれた位置で平衡状態となり、コンプレッサ1は容量制御を行う。
【0010】
次に、図5および図6を参照して、異音の発生原理を説明する。
図5はマグネットクラッチ2をON/OFFした時のコンプレッサの状態の変化を示すグラフである。同図中、期間Aはクラッチ2がOFF状態(コンプレッサOFF)にあるときの平衡状態を示し、期間Bはクラッチ2をONした(コンプレッサON)起動時の過渡的状態を示し、期間Cはクラッチ2がON状態(コンプレッサON)にあるときの平衡状態を示し、期間Dはクラッチ2をOFFした(コンプレッサOFF)停止時の過渡的状態を示している。ここでは、コンプレッサ1は、フルストロークに近い状態、たとえば、斜板7の傾き角がフルストローク時の85〜95%の状態で作動している場合を考える。また、図6は1つのシリンダに関係する圧力を説明するための模式図である。ここで、20は吸入弁である。
【0011】
コンプレッサ作動時にシリンダの内圧Pt が吸入圧力Ps よりも小さい状態(Pt <Ps )にあるシリンダにおいて、クラッチ2をOFFすると、その瞬間、そのシリンダの内圧Pt が上昇して吸入圧力Ps とほぼ同等になるため(Pt ≒Ps )、ピストン9に加わる圧力のバランス状態(斜板7の傾き角が85〜95%)がくずれ、斜板7は傾きが大きくなる方向、つまりフルストローク側へ急激に動かされ(図5中の破線の円で囲った部分E参照)、斜板7のストッパー機構から衝突音が発生する。これが異音の原因と考えられる。
【0012】
より詳細には、前記シリンダ(Pt <Ps )において、クラッチ2をOFFすると、その瞬間からコンプレッサ1の内部は平衡状態に向かって圧力が変化し、吸入圧力Ps およびクランクケース14内の圧力Pc が上昇する(図5参照)。一方で、その時点においてそのシリンダの内圧Pt は吸入圧力Ps よりも小さい状態(Pt <Ps )にあるため、吸入弁20が開いてシリンダ内に吸入圧力Ps が導入され、シリンダの内圧Pt が上昇し吸入圧力Ps とほぼ同等になる(Pt ≒Ps )。このため、シリンダの内圧Pt がピストン9の冠面を押す力が大きくなり、ピストン9に加わる圧力のバランス状態(斜板7の傾き角が85〜95%)がくずれるので、斜板7は傾きが大きくなる方向、つまりフルストローク側へ急激に移動する(前記部分E参照)。その結果、スリーブ部材12とドライブラグ5が急激に衝突し、異音が発生する。
【0013】
実験によれば、上記した異音発生のおそれは、クラッチ2がOFFされるすべての場合について存在するのではなく、エアコンスイッチをONした状態でイグニッションスイッチをOFFした場合にのみ存在することがわかっている。
【0014】
本発明は、斜板式可変容量コンプレッサにおける上記課題に着目してなされたものであり、コンプレッサOFF時の異音発生を防止することができるコンプレッサ制御装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、斜板式可変容量コンプレッサのON/OFFを制御するコンプレッサ制御装置において、エンジンを作動させるための第1スイッチと、前記コンプレッサを作動させるための第2スイッチと、前記エンジンと前記コンプレッサとの機械的な連結を制御するクラッチ手段と、前記第2スイッチをONした状態において前記第1スイッチをON状態からOFF状態に切り替えたときに、前記クラッチ手段をOFFするコンプレッサOFF信号を前記切替え時点から一定時間だけ遅延させて出力する制御手段とを有することを特徴とする。
【0016】
この発明にあっては、制御手段は、第2スイッチをONした状態において第1スイッチをON状態からOFF状態に切り替えたときに、クラッチ手段をOFFするコンプレッサOFF信号を前記切替え時点から一定時間だけ遅延させて出力する。すなわち、コンプレッサを作動させるスイッチをONしたままエンジンを切ると、その時点から一定時間経過後にコンプレッサOFF信号がクラッチ手段に出力され、エンジンとコンプレッサとの機械的な連結が解除される(クラッチ手段OFF)。したがって、エンジンを切ってもただちにクラッチ手段はOFFされずしばらく(一定時間)エンジンと連結されているため、その間しばらくコンプレッサはエンジンの慣性力により回転し、シリンダの内圧の均圧化の速度が遅くなる。つまり、コンプレッサ内部の圧力バランスの急激な変化が防止される。そのため、斜板の傾きの変化もゆっくりとなり、異音発生の原因となる斜板の急激な動きが防止される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るコンプレッサ制御装置の構成を示すブロック図である。ここでは、簡単化のため、本発明に関係するコンプレッサOFF制御に関係する部分のみを示してある。
【0018】
このコンプレッサ制御装置は、たとえば図3に示すような構造を持つ斜板式可変容量コンプレッサ1と、このコンプレッサ1に駆動力を付与するエンジン25とを有する。コンプレッサ1とエンジン2との機械的な連結は、コンプレッサ1を構成するクラッチ手段としてのマグネットクラッチ2によって制御される。マグネットクラッチ2の構造や作動原理などは周知であるから、それらの説明は省略する。コンプレッサ1(より詳細には、マグネットクラッチ2)にはオートアンプ30が接続されている。オートアンプ30は、内蔵しているマイコンによって各センサ、エアミックスPBR、および各スイッチなどの信号を演算処理し、各アクチュエータ、ファンコントロールアンプ、およびコンプレッサ1を作動させ、吹出口位置、吸込口位置、吹出風温度、吹出風量、およびコンプレッサ1のON/OFFを総合的に制御する。コンプレッサ1の制御に関して言えば、オートアンプ30からコンプレッサ1(マグネットクラッチ2)に対しコンプレッサON信号が出力されるとクラッチ2が通電され(クラッチON)、発生した電磁力によりコンプレッサ1とエンジン2とが連結され(コンプレッサON)、逆に、コンプレッサOFF信号が出力されるとクラッチ2への通電が停止され(クラッチOFF)、電磁力が消滅してコンプレッサ1とエンジン2との連結が解除される(コンプレッサOFF)。また、オートアンプ30には、エンジン25を作動させるための第1スイッチとしてのイグニッションスイッチ40およびコンプレッサ1を作動させるための第2スイッチとしてのエアコンスイッチ50などが接続されている。
【0019】
次に、動作を説明する。
図2はスイッチ操作によるコンプレッサON/OFF制御に関するオートアンプ30の動作例を示すフローチャートである。
【0020】
まず、エアコンスイッチ50がONされているかどうかを判断し(ステップS1)、NOであればただちにコンプレッサOFF信号を出力してマグネットクラッチ2をOFFする(ステップS6)。
【0021】
これに対し、ステップS1の判断の結果としてYESであれば、つまり、エアコンスイッチ50がONされている場合には、引き続いて、イグニッションスイッチ40がON状態からOFFされたかどうかを判断し(ステップS2)、NOであれば、イグニッションスイッチ40のON/OFF状態に応じてクラッチ2のON/OFFを行う。すなわち、イグニッションスイッチ40がON状態にある場合には、エアコンスイッチ50もON状態にあるため、コンプレッサON信号を出力してマグネットクラッチ2をONし(ステップS5)、イグニッションスイッチ40がOFF状態にある場合には、エアコンスイッチ50がON状態にあるにもかかわらず、エアコンスイッチ50がOFFされている場合と同様に、コンプレッサOFF信号を出力してマグネットクラッチ2をOFFする(ステップS6)。
【0022】
これに対し、ステップS2の判断の結果としてYESであれば、すなわち、エアコンスイッチ50がONされた状態においてイグニッションスイッチ40をOFFしてエンジン25を切った場合には、上記したようにコンプレッサ1の内部で異音が発生するおそれがあるので、それを防止すべく、イグニッションスイッチ40がOFFされた時点からあらかじめ設定された一定時間だけコンプレッサOFF信号の出力を遅延させる、換言すれば、イグニッションスイッチ40をOFFした時点から一定時間経過後にコンプレッサOFF信号を出力してマグネットクラッチ2をOFFさせる(ステップS4)。異音発生の条件はコンプレッサの構造や特定の熱負荷状態での圧力バランスなどによって変化するため、遅延時間の値は、あらかじめ、実験などを行って、車種ごとに、適当な時間を設定しておくことが好ましい。
【0023】
このように、異音発生のおそれがある場合、すなわち、エアコンスイッチ50をONした状態でイグニッションスイッチ40をOFFした場合にのみ、クラッチ2をOFFするタイミングを遅延させることで、エンジン25を切ってもクラッチ2はしばらく(一定時間)エンジン25と連結されているため、その間コンプレッサ1はエンジン25の慣性力により回転し、シリンダの内圧の均圧化の速度が遅くなり、コンプレッサ1の内部の圧力バランスの急激な変化が防止されるので、斜板7の傾きの変化もゆっくりとなり、異音発生の原因となる斜板7の急激な動きが防止される。したがって、エアコンスイッチ50をONしたままイグニッションスイッチ40をOFFした時の異音発生のおそれがなくなる。
【0024】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1記載の発明によれば、コンプレッサ作動スイッチをONした状態でエンジンを止めた場合にはその時点から一定時間の間だけコンプレッサをOFFしないようにしたので、コンプレッサ内での斜板の急激な動きが防止され、それに起因するコンプレッサ内部での異音の発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るコンプレッサ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 スイッチ操作によるコンプレッサON/OFF制御に関するオートアンプの動作例を示すフローチャートである。
【図3】 斜板式可変容量コンプレッサの一例を示す構造図である。
【図4】 斜板の傾きの変化の原理を説明するための模式図である。
【図5】 マグネットクラッチをON/OFFした時のコンプレッサの状態の変化を示すグラフである。
【図6】 シリンダに関係する圧力を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1…斜板式可変容量コンプレッサ
2…マグネットクラッチ(クラッチ手段)
5…ドライブラグ
7…斜板
9…ピストン
12…スリーブ部材
25…エンジン
30…オートアンプ(制御手段)
40…イグニッションスイッチ(第1スイッチ)
50…エアコンスイッチ(第2スイッチ)
Claims (1)
- 斜板式可変容量コンプレッサ(1)のON/OFFを制御するコンプレッサ制御装置において、
エンジン(25)を作動させるための第1スイッチ(40)と、
前記コンプレッサ(1)を作動させるための第2スイッチ(50)と、
前記エンジン(25)と前記コンプレッサ(1)との機械的な連結を制御するクラッチ手段(2)と、
前記第2スイッチ(50)をONした状態において前記第1スイッチ(40)をON状態からOFF状態に切り替えたときに、前記クラッチ手段(2)をOFFするコンプレッサOFF信号を前記切替え時点から一定時間だけ遅延させて出力する制御手段(30)と、
を有することを特徴とするコンプレッサ制御装置。
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