JP3770865B2 - ホイールディスクの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホイールディスクの製造方法に関し、一層詳細には、絞り成形や圧縮成形等により形成されるホイールディスクの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、自動車等のタイヤホイール(以下、単にホイールという。)は、板状の素材から円盤状に形成されたホイールディスク(wheel disk)と、円筒状に形成されたリム(rim)とを組み合わせ、溶接により接合した2ピースホイールが広く用いられている。最近に至り、軽量化の要求や意匠向上の観点から、アルミニウム製の2ピースホイールが注目されてきている。
【0003】
一般に、アルミニウム製の2ピースホイールにおけるホイールディスクは、板状のアルミ素材、例えば、アルミ展伸材等を絞り成形等により加工した後、ハブ穴、ボルト穴および意匠向上を考慮しながら放熱性をも向上させる飾り穴が、打抜き加工あるいは切削加工によって形成される。この種のホイールディスクは、ホイールが使用される際に作用する負荷や、ホイールディスクの加工工程における負荷、特に打抜き加工あるいは切削加工による負荷を考慮しながら製造する必要がある。
【0004】
例えば、図5および図6に示すように、ホイールディスク1のボルト穴2および飾り穴3の周縁部位の強度を向上させる製造方法が開発されている。
【0005】
この製造方法では、先ず、厚さtを有する板状のアルミ素材を、上下の絞り型(図示せず)によりホイールディスク1の基本形状(皿状の形状)に成形する。次いで、絞り成形されたホイールディスク1のボルト穴2および飾り穴3に対応する部位において、一組の上ポンチ4および下ポンチ5と、他の一組の上ポンチ6および下ポンチ7とによってそれぞれ圧縮成形を行う。この圧縮成形により、ボルト穴2および飾り穴3に対応する部位が薄肉化され、薄肉化された分の材料は塑性流動により各ポンチ4、6、7の外側に盛り上がり、厚肉部2a、3aが形成される(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
これにより、各厚肉部2a、3aは、アルミ素材の厚さtよりも厚く形成されるとともに、加工硬化作用によってそれらの強度が向上して、その後の打抜き加工あるいは切削加工の負荷等によってボルト穴2および飾り穴3の周縁部位にクラック等が発生することを回避させるようにしている。
【0007】
【特許文献1】
特許第2901563号公報(段落[0005]および[0006])
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したホイールディスク1の製造方法では、絞り成形による加工と、打抜き加工あるいは切削加工との工程間に、各厚肉部2a、3aを形成するための圧縮成形による加工工程が必要となり、ホイールディスク1の加工工数が増大している。
【0009】
また、前述した絞り成形の場合、すなわち、概ね最終形状に形成された本絞り成形後のホイールディスク1では、アルミ素材が既に加工硬化されているために、圧縮成形による塑性流動によって各厚肉部2a、3aよりさらに広い部位を厚肉にすることが困難であり、強度の向上を図ることができない。
【0010】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、ホイールディスクの加工工数を増大させることがなく、強度を向上させることを可能とするホイールディスクの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るホイールディスクの製造方法は、板状のアルミ素材から形成されるホイールディスクの製造方法であって、前記板状のアルミ素材に対し、前記ホイールディスクの中心となる部位よりも周縁部側に存在する肩部に対応する部位を第1金型により予備絞り成形して、断面が湾曲若しくは屈曲した形状に形成した1次成形品を得る工程と、前記1次成形品に対し、前記肩部に対応する部位よりも中心側に存在して前記ホイールディスクの穴部に対応する部位を、第2金型を用いた圧縮成形によって薄肉化し、前記薄肉化によって生じたアルミ素材の一部を前記肩部側へと塑性流動させて、且つ該穴部の外周縁を前記アルミ素材と同じ厚さに規制して、しかも、前記肩部を本絞り成形して断面がさらに湾曲若しくは屈曲した形状に形成し、前記湾曲若しくは屈曲した形状の部位をアルミ素材の厚さ以上の厚さに成形した2次成形品を得る工程と、前記2次成形品における前記穴部に対応する部位に穴を形成する工程と、からなることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るホイールディスクの製造方法によれば、第1金型により板状のアルミ素材を予備絞り成形して断面が湾曲若しくは屈曲した形状に形成した後、第2金型を用いて、1次成形品に圧縮成形と本絞り成形とを同時に行うようにしている。従って、圧縮成形によって薄肉化された穴部に対応する部位と、アルミ素材と同じ厚さに規制された該穴部の外周縁とは、加工硬化作用によってそれらの強度を増加させることができる。しかも、本絞り成形によって、1次成形品をさらに断面が湾曲若しくは屈曲した形状に形成するとともに、アルミ素材の厚さ以上の厚さに成形した肩部は、圧縮成形によって薄肉化された分の材料による塑性流動作用によって強度を増加させることができ、且つ加工硬化作用によってその強度をさらに増加させることができる。その結果、ホイールディスクの加工工程、すなわち、加工工数を増大させることなく、ホイールディスクの強度を向上させることができる。
【0013】
しかも、前記穴部の外周縁は、厚肉に形成されなくとも加工硬化作用によって強度が増加されるので、その後の打抜き加工あるいは切削加工の負荷等によって該外周縁にクラック等が発生することを回避させることが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に係るホイールディスクの製造方法について、この製造方法により製造されるホイールディスクとの関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係るホイールディスク10が組み込まれるホイール12の正面図であり、図2は、ホイール12の横断面図である。
【0016】
ホイールディスク10は、円盤状に形成され、ハブを固定するためのハブ穴14と、ハブ穴14の外側に、ホイールディスク10の円周方向に沿って等間隔に配置され、外周縁16aが形成された複数のボルト穴16とを有する。このボルト穴16には、ナットとの共働によりホイールディスク10をハブに締結するためのハブボルトが挿通される。
【0017】
また、ホイールディスク10は、その周縁部10aの内側に、ホイールディスク10の円周方向に沿って等間隔に配置され、外周縁18aが形成された複数の飾り穴18を有する。この飾り穴18は、ハブに隣接するブレーキドラムやブレーキディスクから発生する摩擦熱を放出するための機能も有する。なお、飾り穴18は、意匠の観点から装飾性をも有し、本実施の形態では丸穴の形状としているが、これに限定されるものではなく、例えば、三角形や台形等の任意の形状とし、その大きさも任意の大きさとすることができる。
【0018】
さらに、ホイールディスク10は、ボルト穴16が配置された部位と飾り穴18が配置された部位との間に、断面が湾曲した形状に形成された肩部10bを有する。この肩部10bのボルト穴16側の部位、すなわち、ボルト穴16の外周縁16aの周りには、ボルト穴16が配置された部位および飾り穴18が配置された部位より厚肉の縁部10cが形成される。
【0019】
一方、ホイールディスク10の周縁部10aに溶接等により接合された円筒状のリム20は、その両周縁部が立設されたリムフランジ部22と、前記リムフランジ部22の内側にタイヤのビード部が嵌合されるビードシート部24と、ビードシート部24に形成された突起部25と、ホイール12の回転中心軸Pに向かって凹んだ形状を有するウエル部26とを有する。このウエル部26のホイールディスク10側の側部には、エアバルブが装着されるエアバルブ穴28が設けられる。
【0020】
図2から容易に諒解されるように、ホイールディスク10とリム20とが組み合わされてホイール12が構成される。
【0021】
本実施の形態に係るホイールディスク10が組み込まれるホイール12は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、ホイールディスク10の製造方法について、これを実施するための金型との関係において、その作用効果とともに図3および図4を参照しながら以下に説明する。なお、図1および図2に示すホイールディスク10と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0022】
先ず、第1の工程において、厚さtを有する板状のアルミ素材、例えば、アルミ展伸材等に絞り成形を行い、1次成形品30aを得る。
【0023】
この工程では、第1金型32により、ホイールディスク10の肩部10bおよび縁部10cに対応する部位が、僅かに断面が湾曲した形状に成形される(図3参照)。これを1次成形(予備絞り成形)という。この1次成形による加工では、1次成形品30aにおける縁部10cが、アルミ素材の厚さtと同じ厚さか、若しくは若干薄肉化した厚さt1になるようにしている。その際、縁部10cが厚さt1に薄肉化される場合には、第1金型32の後述する空間34と、1次成形品30aとの間に若干の隙間35が生じる。この場合、1次成形品30aは、成形による加工硬化作用が少ないので、前記アルミ素材とほぼ同じ強度を有している。
【0024】
なお、第1金型32は、所謂、固定側金型(下型)32aと可動側金型(上型)32bとの組からなり、それらの略中央部に所望の形状が得られるように空間(キャビティ)34が形成される。この空間34に前記板状のアルミ素材を供給して1次成形品30aが成形される。
【0025】
次に、第2の工程において、1次成形品30aに圧縮成形と絞り成形とを同時に行い、2次成形品30bを得る。
【0026】
この工程では、第2金型36により、1次成形品30aにおけるホイールディスク10のボルト穴16に対応する部位が圧縮成形されることによって薄肉化される。これと同時に、ボルト穴16の外周縁16aがアルミ素材の厚さtになるように規制され、且つ縁部10cがアルミ素材の厚さtより若干厚肉の厚さt2になるように成形されるとともに、該肩部10bがさらに断面が湾曲した形状に成形される(図4参照)。これを2次成形(圧縮成形および本絞り成形)という。
【0027】
この成形加工により得られた2次成形品30bにおいて、圧縮成形により薄肉化された前記ボルト穴16に対応する部位とともに、アルミ素材と同じ厚さtに規制されたボルト穴16の外周縁16aは、アルミ素材のさらなる加工硬化作用によって強度が増加される。また、圧縮成形により薄肉化された分の材料は、塑性流動作用によって縁部10cに流動される。この縁部10cは、アルミ素材の厚さtに比して若干厚肉化した厚さt2に規制されながら成形されることによって強度が増加されるとともに、さらなる加工硬化作用によりその強度がより一層増加される。
【0028】
なお、第2金型36は、前記第1金型と同様に、固定側金型(下型)36aと可動側金型(上型)36bとの組からなり、それらの略中央部に所望の形状が得られるように空間42が形成されて構成される。さらに、第2金型36には、ボルト穴16の径や形状等に対応させて先端が略球面状に形成された一組の第1ポンチ38aおよび第2ポンチ38bが、先端略球面状の部位が前記空間42に突出するように備えられている。この空間42に1次成形品30aを供給して2次成形品30bが成形される。
【0029】
ここで、本実施の形態では、前記各ポンチ38aおよび38bによって、1次成形品30aにおけるホイールディスク10のボルト穴16に対応する部位を圧縮成形する場合を例示して説明したが、例えば、ボルト穴16および飾り穴18の両方、または飾り穴18のみを圧縮成形するようにしても構わない。また、第1ポンチ38aに代替して、例えば、先端平面状の凸部が僅かに突出して形成されたダイス(図示せず)等を用いるようにしてもよい。さらに、前記各ポンチ38aおよび38bは、先端が略球面状に形成された場合を例示して説明したが、ボルト穴16の径や形状等、あるいは圧縮成形による圧縮の程度等を考慮して種々の形状に改変できることは勿論である。
【0030】
また、本実施の形態では、ホイールディスク10の肩部10bおよび縁部10cを断面が湾曲した形状に形成する場合を例示して説明したが、例えば、肩部10bおよび縁部10cを断面が屈曲した形状に形成してもよいことは勿論である。
【0031】
続いて、第3の工程において、2次成形品30bに、ハブ穴14、ボルト穴16および飾り穴18が、プレス装置(図示せず)等による打抜き加工あるいは切削工具(図示せず)等による切削加工によって形成され、ホイールディスク10が得られる。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態に係るホイールディスク10の製造方法によれば、厚さtを有する板状のアルミ素材を1次成形した後、圧縮成形用の各ポンチ38aおよび38bを備えた第2金型36を用いて、1次成形品30aに圧縮成形と絞り成形とを同時に行うようにしている。従って、圧縮成形によって薄肉化されたボルト穴16に対応する部位と、アルミ素材と同じ厚さtに規制されたボルト穴16の外周縁16aとは、さらなる加工硬化作用によってそれらの強度を増加させることができ、これと同時に、肩部10bおよび縁部10cは、本絞り成形によって1次成形品30aをさらに断面が湾曲した形状に形成されるとともに、アルミ素材の厚さtと同じか若しくは厚さtより若干厚肉の厚さt2に成形することで強度を増加させ、且つ加工硬化作用によってその強度をさらに増加させることができる。その結果、ホイールディスク10の加工工程、すなわち、加工工数を増大させることなく、ホイールディスク10の肩部10bおよび縁部10c、さらにボルト穴16の外周縁16aの強度を向上させることができる。
【0033】
しかも、ボルト穴16の外周縁16aは、厚肉に形成されなくとも加工硬化作用によって強度が増加されるので、その後の打抜き加工あるいは切削加工の負荷等によって該外周縁16aにクラック等が発生することを回避させることが可能となる。
【0034】
さらに、ボルト穴16の外周縁16aは、従来技術で示した厚肉部2aのように盛り上がった形状に形成されないので、座面付きナットを用いてホイールディスク10をハブに締結することが可能となる。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0036】
すなわち、ホイールディスクの加工工数を増大させることなく、該ホイールディスクの強度を向上させることができる。
【0037】
さらに、ホイールディスクの穴部の外周縁は、厚肉に形成されなくとも加工硬化作用によって強度が増加されるので、打抜き加工あるいは切削加工の負荷等によって該外周縁にクラック等が発生することを回避させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る製造方法により製造されるホイールディスクが組み込まれるホイールの正面図である。
【図2】図1に示すホイールの横断面図である。
【図3】図1に示すホイールディスクの製造方法における第1の工程を示す部分断面説明図である。
【図4】図1に示すホイールディスクの製造方法における第2の工程を示す部分断面説明図である。
【図5】従来技術に係るホイールディスクの製造方法における1工程を示す部分断面説明図である。
【図6】従来技術に係るホイールディスクの製造方法における他の工程を示す部分断面説明図である。
【符号の説明】
10…ホイールディスク 10a…周縁部
10b…肩部 10c…縁部
12…ホイール 14…ハブ穴
16…ボルト穴 16a…外周縁
18…飾り穴 20…リム
30a…1次成形品 30b…2次成形品
32…第1金型 34、42…空間
36…第2金型 38a…第1ポンチ
38b…第2ポンチ t、t1、t2…厚さ
Claims (1)
- 板状のアルミ素材から形成されるホイールディスクの製造方法であって、
前記板状のアルミ素材に対し、前記ホイールディスクの中心となる部位よりも周縁部側に存在する肩部に対応する部位を第1金型により予備絞り成形して、断面が湾曲若しくは屈曲した形状に形成した1次成形品を得る工程と、
前記1次成形品に対し、前記肩部に対応する部位よりも中心側に存在して前記ホイールディスクの穴部に対応する部位を、第2金型を用いた圧縮成形によって薄肉化し、前記薄肉化によって生じたアルミ素材の一部を前記肩部側へと塑性流動させて、且つ該穴部の外周縁を前記アルミ素材と同じ厚さに規制して、しかも、前記肩部を本絞り成形して断面がさらに湾曲若しくは屈曲した形状に形成し、前記湾曲若しくは屈曲した形状の部位をアルミ素材の厚さ以上の厚さに成形した2次成形品を得る工程と、
前記2次成形品における前記穴部に対応する部位に穴を形成する工程と、
からなることを特徴とするホイールディスクの製造方法。
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