JP3770425B2 - 圧電振動角速度計用振動子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は航空機、船舶、自動車等のナビゲーションシステムやこれらの姿勢制御等、或いはスチールカメラ、ビデオカメラの手振れや振動感知に使用される圧電振動角速度計に使用される圧電体振動子に関する。
【0002】
【従来の技術】
振動子に固有振動を励起し回転中心の周りに回転運動が加えらると、振動方向及び回転中心方向に垂直な方向に次式で示されるコリオリの力が発生する。
Fc=2m[v×Ω]
ここで、Fcはコリオリの力、mは振動子の質量、vは振動子の振動速度、Ωは回転角速度である。振動角速度計は振動子に生じたコリオリの力による振動を検出することにより回転角速度を測定するものである。
【0003】
振動角速度計では、従来より圧電正(直接)効果、圧電逆効果を利用したGEタイプとワトソンタイプの2種類の圧電振動角速度計が良く知られている。
GEタイプの圧電振動角速度計は図7に示すように金属(例えば、エリンバ等の恒弾性体)でできた棒状の振動子20に圧電セラミックス板23を接着し、これにより金属振動子20を励振するとともに、振動子20の回転にともない、励振方向と垂直な方向に生じるコリオリ力を検出する。振動子20の振動モードは無拘束の基本モード横振動であり通常は振動の節点において振動子20を基体に固定して使用される。
【0004】
ワトソンタイプの圧電振動角速度計は、図8に示すように4枚の圧電セラミックスバイモルフ21、22を2枚ずつ互いに直交するように重ねて音叉形状とし、駆動用の圧電バイモルフ21で音叉全体を励振し、回転に伴って生じるコリオリの力を検出用バイモルフ22から検知する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
GEタイプの圧電振動角速度計のように、振動子として金属を用いる場合には振動子に圧電素子(圧電セラミックス板23等)を接合する必要があり、また、ワトソンタイプの圧電振動角速度計のように、振動子をバイモルフ型構造にする場合にも圧電セラミックス板同士を接合する必要がある。そのため、振動子の励振時には、その接着剤も共に振動し検出の効率を下げたり、温度による接着剤の変化により振動状態が変化して角速度検出感度の変動を引き起こしたりしていた。さらに、これら接合工程を有するタイプでは、振動子毎に圧電素子を一つ一つ正確な位置合わせをして接合して行かなければならず、接合工程が量産時の生産効率を考えるうえでの阻害要因となるばかりか、個々の振動子の特性のばらつきを発生させる大きな要因にもなっていた。
【0006】
特に構造が簡単で小型化に適したGEタイプの圧電振動角速度計では、最近になって三角柱の金属振動子を用いるもの、円柱状の圧電セラミックスを振動子として用いるもの等が開発されているが、三角柱状の金属振動子を用い、その側面に圧電素子を接着するものは上記接合の問題点に加えてさらに振動子量産時の製造工程にも複雑化を招いており、また、円柱状の圧電セラミックス振動子を用いる場合には円柱状側面にロールタイプの印刷機等を用いて電極形成をし、その後に個別に分極処理を行なわなければならない等、量産時の生産効率が悪く、共に安価に振動子を製作することにおいて問題点を有するものであった。
【0007】
本発明は、上記のような従来の圧電振動角速度計用振動子の量産上の欠点を改良し、回転角速度の検出効率が良好であり、なおかつ低コストで量産できる圧電体振動子を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、四角柱状の圧電体と、前記振動子(10)の励振を行うための自励振用電極(12a、12b)と、励振信号の帰還を行うための帰還用電極(13b)と、コリオリ力の検出を行うための検出用電極群(14a、14b)とを含み、長手方向中心線を回転中心(1)として回転角速度を検出する圧電振動角速度計用振動子(10)であって、前記圧電体は、前記回転中心(1)に垂直な平面により区分される2領域を有し、前記2領域の一方は、前記振動子(10)を励振する駆動領域であり、前記回転中心(1)の方向に沿って平行に伸びる側面の幅方向に分極方向を有し、前記2領域の他方は、回転により発生する前記コリオリの力を検出する検出領域であり、前記側面と直交する他の側面の幅方向に分極方向を有し、前記自励振用電極(12a、12b)及び前記帰還用電極(13b)は、前記駆動領域において、前記振動子(10)の前記回転中心(1)の方向に沿って平行に伸びた2側面上にのみ形成され、前記自励振用電極(12a、12b)は、前記圧電体の同一側面上に2分割して形成され、前記検出用電極群(14a、14b)は、前記検出領域において、前記振動子(10)の前記回転中心(1)の方向に沿って平行に伸びた前記2側面上にのみ形成されていることを特徴とする圧電振動角速度計用振動子(10)。請求項2の発明は、四角柱状の圧電体と、角速度の検出に用いる第1の電極と、振動子(10)の励振に用いる第2の電極とを含み、長手方向中心線を回転中心(1)として角速度を検出する圧電振動角速度計用振動子(10)であって、前記圧電体は、前記回転中心(1)に垂直な平面により区分される2領域を有し、前記2領域の一方は、前記振動子(10)を励振する駆動領域であり、前記回転中心(1)の方向に平行な側面の幅方向に分極方向を有し、前記2領域の他方は、回転により発生するコリオリの力を検出する検出領域であり、前記側面と直交する他の側面の幅方向に分極方向を有し、前記第1の電極は、前記検出領域において、前記振動子(10)の前記回転中心(1)の方向に平行な同一側面上に2分割して形成されており、前記第2の電極は、前記駆動領域において、前記第1の電極が形成された前記側面と平行な側面上に形成されていることを特徴とする圧電振動角速度計用振動子(10)。請求項3の発明は、前記第2の電極は、前記振動子(10)の励振を行うための自励振用電極(12a、12b)と、励振信号の帰還を行うための帰還用電極(13b)とを含み、前記自励振用電極(12a、12b)は、同一側面上に2分割して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の圧電振動角速度計用振動子(10)。
【0009】
本発明に係る圧電振動角速度計用振動子は、前述した2つの領域においてそれぞれ異なった方向に分極処理を施したうえで、一方の領域を圧電体振動子の励振を行う駆動領域として使用し、他方の領域を回転により生じるコリオリ力の検出領域として使用する。特に最適な実施の形態では検出領域の分極方向を振動子の励振方向に一致させることにより、検出領域からは励振信号が重畳していないコリオリ力による信号のみが検出できるように構成している。
【0010】
回転角速度検出のために、振動子の駆動領域側に振動子の励振を行うための自励振用電極群とフィードバックを行うための帰還用電極群が形成され、振動子の検出領域側にコリオリ力の検出のための検出用電極群が形成されるが、これら総ての電極が圧電体振動子の回転中心方向に沿って平行に伸びた相対向する2つの側面上にのみ形成され、これら2側面と交差する他の2つの側面上には電極群が全く配置されないように構成されている。また、本発明では同一側面上に形成された二つの電極間に駆動源を接続して振動子が励振される。
【0011】
このように構成された本発明に係る圧電振動角速度計用振動子では、圧電体振動子の圧電横効果を利用して、駆動領域においては電気−機械エネルギ変換を、検出領域においては機械−電気エネルギ変換を行うことにより、コリオリ力の検出を効率よく行おうとするものである。すなわち、自励振用電極群を通して交流電圧を振動子の駆動領域に印加すると圧電横効果により駆動領域における電気−機械エネルギ変換が行われ、振動子には相対する電極面方向に基本モードの屈曲振動が励起される。なお、検出効率をより高めるため、前記屈曲振動が振動子の機械的共振周波数の振動若しくはそれに近い振動となるように交流電圧の発振周波数を決定する。
【0012】
この状態で回転中心の周りに回転が生じると励振速度vと加えられた回転角速度Ωに比例したコリオリ力が発生し、このコリオリ力により振動子は電極面に平行な平面内で屈曲共振振動を行う。コリオリ力によるこの屈曲共振振動が生じると圧電横効果に基づいて検出領域において機械−電気エネルギ変換が行われ、検出用電極面内に分極電荷が誘起される。従って、この発生電荷を測定することにより回転角速度を評価することができる。なおこの場合、コリオリ力による分極電荷は圧電横効果により検出用電極面と垂直な方向に誘起されるので検出効率を落とすことがないし、またコリオリ力による振動が共振振動となるように振動子の断面形状も決定され、検出効率が高められる。
【0013】
なお、本発明に係る圧電振動角速度計用振動子では、駆動領域と検出領域において異なった方向であり、且つそれぞれ直交する方向に分極処理がなされている。従って、各領域で圧電横効果を利用することにより四角柱状の振動子の相対する2側面上に電極群をまとめて形成することができる。その結果、製造時においては平板状の圧電材料の相対する側面に反応性エッチングによる電極パターンが形成されたものを切断することにより、接着剤の使用されていない圧電体振動子を一度に多量に作成することができ、また、精密切断機による切断を行えば、極めて小型の圧電体振動子を再現性よく量産することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明に係る最適な実施の形態を説明する。図1に本発明に基づく圧電振動角速度計用振動子の最適な基本構成を示す。この圧電体振動子10は圧電材料としてハード系のPZTセラミックスを用い、断面がほぼ正方形であって振動子軸1に沿って伸びた長尺状の直方体に形成されている。振動子10は振動子軸1の軸方向のほぼ中央を境に2つの領域(図面上、左右の領域)に区分されており、一方の領域(本実施例では左側領域)を駆動領域とし、他方の領域(本実施例では右側領域)を検出領域として使用する。なお、いずれを駆動領域とするかは自由である。
【0015】
駆動領域となる左側領域では図1及び図2に示すように、回転中心1に沿って伸びる振動子10の一側面を上面とし、この上面に励振駆動用電極12が形成される。電極の形成は銀ペースト等のスクリーン印刷、若しくはスパッタ、蒸着、メッキ等により行うことができる。この励振駆動用電極12は振動子10の上面において、回転中心1を中心として左右に分割して形成されており、一方が駆動信号入力用電極12a、他方が駆動用基準電極12bとして使用される。
【0016】
一方、この上面と平行に相対向する振動子10の駆動領域下面には励振信号の帰還用電極13が形成される。この帰還用電極13も図1及び図2に示すように、振動子10の下面において振動子軸1方向を中心として左右に分割して形成されており、上面に形成された駆動信号入力用電極12aに相対向し振動子10の同じ側面側に位置する電極が帰還信号出力用電極13aとして、駆動用基準電極12bと相対向し振動子10の同じ側面側に位置する電極が帰還用基準電極13bとして使用される。
【0017】
振動子10の回転中心1の方向に垂直な平面で分けられた他の半分の領域、すなわち、検出領域となる右側領域では図1及び図2に示すように、コリオリ信号検出用電極14が形成される。このコリオリ信号検出用電極14も励振駆動用電極12と同様に振動子10の検出領域上面において、回転中心1の方向を対称軸として左右に分割して形成されており、一方がコリオリ信号出力用電極14aとして、他方がコリオリ信号用基準電極14bとして使用される。さらに、この検出領域上面と平行に相対向する振動子10の検出領域下面には基準電極11が下面全面に形成されている。そして、これらの電極群はそれぞれが絶縁された状態で振動子10の側面上に配置されている。
【0018】
本発明に係る圧電振動角速度計の最適な実施の形態では、以上のような電極配置を有する振動子10を、その駆動領域において図3に示すように、励振駆動用電極12の形成された上面及び帰還用電極13の形成された下面に平行であり、かつ回転中心1に垂直な方向に分極処理し、その検出領域ではコリオリ信号検出用電極14の形成された上面及び基準電極11の形成された下面に垂直であり、かつ回転中心1に垂直な方向に分極処理している。すなわち、本発明に係る圧電振動角速度計では、圧電体内部においてそれぞれ異なった方向に分極処理された2つの分極分域をもつ構造となっている。
【0019】
特に図3に示す分極処理の実施例では、駆動領域において分極方向を駆動信号入力用電極12aの位置する側面側から駆動信号基準電極12bの位置する側面側へ向け、検出領域において分極方向を基準電極11の位置する下面側からコリオリ信号検出用電極14の位置する上面側に向けているが、これに限らず、それぞれ逆の方向に分極処理してもいいし、片方のみ分極処理を逆にしても良い。なお、振動子10の回転中心1に垂直な断面は励振方向の共振周波数とコリオリ力による振動が共振状態になり検出精度を上げることができるようにほぼ正方形に形成されている。
【0020】
以下に本発明に係る振動子の用いられた圧電振動角速度計の動作原理を説明する。図4は振動子10が励振駆動されて振動を起こす動作原理を説明するための図である。駆動信号入力用電極12aと駆動信号基準電極12bとの間に交流の励振電圧を印加すると、励振駆動用電極12下の振動子10内部の上面部近傍に位置する部分(図4の斜線部)に駆動信号入力用電極12aから駆動信号基準電極12bへ向かう交流電界が生じる。この交流電界により振動子10の上面部近傍は分極電荷を生じ、圧電横効果により振動子10の回転中心1の方向に伸縮運動を起こす。
【0021】
一方、帰還用電極13に近い振動子10内部の下面部近傍に位置する部分(図4の白色部)には交流電界による分極電荷は生ぜず、従って圧電横効果による伸長収縮が生じないため自発的な変形は全く起こさない。このため、駆動信号用電極12側の上面部近傍で起きる振動子10の伸縮運動を下面部近傍の自発変形を起こさない部分が抑制するように働き、振動子10の上下方向、すなわち、電極群が形成された2側面方向に折れ曲がる屈曲振動が生じる。
【0022】
従って、駆動信号入力用電極12aに圧電体振動子10の有する一次の機械的共振周波数foの交流電圧を入力すれば、振動子10の一部分の励振であっても振動子10全体に及ぶ一次の屈曲共振振動が励振されることになる。このとき、振動子10の下面に形成された帰還信号出力用電極13aから屈曲共振振動に伴う誘起分極電荷が出力され、この信号を図示しない励振駆動用電源に帰還すれば、振動子10の機械的共振周波数foで安定した振動を励起させることができる。
【0023】
この1次の屈曲共振振動は図1の振動速度vで示される運動を与えることになる。そして、振動子10は振動の節点2を境に振動子10の中央部分と端部とで反対の向きの速度を持った無拘束条件横振動を行うことになる(図5(a)参照)。この振動状態において振動子10に回転中心1の周りに回転が生じ、回転角速度Ωが与えられると振動子10には電極面に平行な面内において回転中心1に垂直な方向(図1に示されるFcの方向)にコリオリ力Fcが発生する。
【0024】
振動子10にかかるコリオリ力Fcは、Fc=2m(v×Ω)で与えられることが知られており、回転角速度Ωが一定の場合には振動子10の振動速度vの大きさと方向で決定される。いま、励振信号により屈曲共振振動を行っている振動子10は振動の節点2を境にその振動速度vが反対であるため、図5(b)に示すように発生するコリオリ力Fcの方向も反対となる。このため、このコリオリ力Fcは振動速度vに同期して電極が形成された面に平行な面内において回転中心1に垂直な方向の屈曲振動を励起する(図5(c))。
【0025】
本振動子10の場合、回転中心1に垂直な平面はほぼ正方形に形成され、振動子10の一次の屈曲共振振動とコリオリ力Fcによる屈曲振動の共振周波数が等しくなるように決定されている。従って、コリオリ力Fcによる屈曲振動も励振屈曲振動と同様に共振振動となり、振動子10の両端で同じ方向、中央部で逆方向をとり、しかも機械的な共振周波数foで変動することになる。
【0026】
このコリオリ力Fcによる一次の屈曲共振振動の大きさを評価することがすなわち与えられた回転角速度Ωを評価することになる。この屈曲共振振動の大きさの評価には振動子10の圧電横効果が利用される。すなわち、コリオリ力Fcの大きさは、圧電横効果に基づく振動子10の機械的な歪みにより発生する応力誘起電荷を測定することにより決定される。
【0027】
コリオリ力Fcにより発生する応力誘起電荷の検出は振動子10の電極面に対し垂直な方向に分極処理されている検出領域のコリオリ信号検出用電極14を用いて行われる。検出領域における分極の方向は励振駆動による振動方向と同一であり、従って、振動子10が励振駆動され上下方向(図面上、vの方向)に屈曲振動しても圧電横効果による分極電荷は発生せず、この二つのコリオリ信号検出用電極14a、14bから励振駆動による励振信号の帰還信号が検出されることはない。
【0028】
一方、コリオリ力Fcによる屈曲振動は励振駆動による屈曲共振振動とは異なっり、これと垂直な方向に起こるため、図5(c)に示すように二つに分割されたコリオリ信号検出用電極14a、14bの位置するそれぞれの側面側は交互に伸び縮みすることになる。すなわち、振動子10がコリオリ信号出力用電極14a側に屈曲するとその電極下の圧電体領域には圧縮応力が、他方のコリオリ信号用基準電極14b側では伸長応力が働き、圧縮応力側の出力用電極14aと基準電極11との間には正の分極電荷が発生し、それとは逆に、コリオリ信号用基準電極14bと基準電極11との間には負の電圧が発生することになる。
【0029】
また、反対に振動子10が前述したコリオリ信号用基準電極14b側に屈曲すると、その電極下の圧電体領域には圧縮応力が、反対側のコリオリ信号出力用電極14a側では伸長応力が働き、圧縮応力側のコリオリ信号用基準電極14bと基準電極11との間には正の分極電荷が発生し、それとは逆に、伸長応力側のコリオリ信号出力用電極14aと基準電極11との間には負の分極電荷が発生することになる。従って、二つのコリオリ信号検出用電極14aと14bとの間ではそれぞれ大きさが同じで符号が逆の電荷がコリオリ電圧として発生することになる。
【0030】
このコリオリ電圧は、振動子10の共振振動に応じて発生するものであり、圧電体自身の濾過作用によって共振周波数foの正弦波波形となり、その結果、左右のコリオリ信号検出用電極14a、14bからの出力は位相が互いに反転した正弦波として検出されることになる。そこで、2つのコリオリ信号検出用電極14a、14bからの信号の差をとることで、励振駆動に伴う同位相のノイズ信号を相殺することができると共に、逆位相であるコリオリ信号のみを得ることができる。なお、励振駆動に用いる交流電圧の周波数がコリオリ力の発生する方向の圧電体の基本モードの共振周波数とも一致しているため、一旦コリオリ力による屈曲が発生するとこの振動も共振状態となり、コリオリ力検出の精度を高めることができる。
【0031】
以上述べてきた振動子の実施の態様では駆動領域と検出領域をほぼ同じ大きさに形成しているが、本発明はこれに限らない。特に振動子10の駆動を確実にするために振動子中央部を駆動領域側に含めることも効果的である。
【0032】
図6に本発明に係る圧電振動角速度計用振動子の分極処理プロセスの一例を示す。直方体状の圧電体3の上下面に、図6(a)に示すような縞模様状に配列された銀電極4を形成する。この上下面に形成された銀電極4に直流高電圧をかけ、およそ2Kv/mm程度の強力な電界を圧電体3内に生じさせて上下方向に分極処理する。その分極処理後、反応性イオンエッチングにより銀電極4を取り除く。次に図6(b)に示すように、前記直方体状の圧電体3の左右側面に前記上下面に形成された銀電極4とはそれぞれ行を違えた位置に再び縞状に銀電極5を形成する。そして、再び直流高電圧かけて圧電体3の上下面に平行な方向に分極処理する。その後、この銀電極5も反応性イオンエッチングにより取り除く。
【0033】
分極処理後、圧電体3を図6(c)に示すようにダイシングソーにて異なった一対の分極方向を有するブロック6ごとに切断する。それをさらに必要な振動子の厚さを有する圧電体板7にスライスする(図6(d))。そして、その後スライス面に等幅等間隔にパターンニングされた短冊状の電極を形成する。ダイシングソーにて短冊状の電極パターンに沿って前記圧電体板を切断することにより、2つの異なった分極方向を有する圧電体振動子10を作製することができる(図6(e))。このようなプロセスによれば、直方体状の圧電体3から数多くの小型振動子を再現性よく量産することができる。
【0034】
【発明の効果】
本発明は金属振動子に接着剤で圧電素子を接着するのではなく、圧電体振動子に銀ペーストによるスクリーン印刷や蒸着、メッキ等によって電極を形成することができるため振動子表面に接着剤部分が存在せず、従って振動子の個々の特性のばらつきによる検出精度への悪影響、さらに接着剤の温度変化による検出精度への悪影響を受けるおそれも極めて少ない。さらに振動子は四角柱状の圧電体単体であり、電極面も上下側面に設けるだけで済むため、小型の振動子を再現性よく量産することができ安価な振動子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づく圧電振動角速度計の振動子の構成例である。
【図2】前記構成例に係る振動子の電極配置を示す図である。
【図3】前記構成例に係る振動子の分極方向を示す図である。
【図4】前記構成例に係る振動子の励振原理を説明するための図である。
【図5】前記構成例に係る振動子の動作を説明するための図である。(a)は振動子の側面から励振に伴う変形を示す図であり、(b)は振動子の上部電極面側からコリオリ力による振動示すための図である。
【図6】本発明に係る圧電体振動子の作製方法を示す図である。
【図7】従来の圧電振動角速度計の概念図である。
【図8】従来の圧電振動角速度計の概念図である。
【符号の説明】
1 回転中心
2 振動の節点
3 圧電体
4、5 銀電極
10 振動子
11 基準電極
12 励振駆動用電極
13 帰還用電極
14 コリオリ信号検出用電極
Ω 回転角速度
Claims (3)
- 四角柱状の圧電体と、前記振動子の励振を行うための自励振用電極と、励振信号の帰還を行うための帰還用電極と、コリオリ力の検出を行うための検出用電極群とを含み、長手方向中心線を回転中心として回転角速度を検出する圧電振動角速度計用振動子であって、
前記圧電体は、前記回転中心に垂直な平面により区分される2領域を有し、
前記2領域の一方は、前記振動子を励振する駆動領域であり、前記回転中心の方向に沿って平行に伸びる側面の幅方向に分極方向を有し、
前記2領域の他方は、回転により発生する前記コリオリの力を検出する検出領域であり、前記側面と直交する他の側面の幅方向に分極方向を有し、
前記自励振用電極及び前記帰還用電極は、前記駆動領域において、前記振動子の前記回転中心の方向に沿って平行に伸びた2側面上にのみ形成され、
前記自励振用電極は、前記圧電体の同一側面上に2分割して形成され、
前記検出用電極群は、前記検出領域において、前記振動子の前記回転中心の方向に沿って平行に伸びた前記2側面上にのみ形成されていることを特徴とする圧電振動角速度計用振動子。 - 四角柱状の圧電体と、角速度の検出に用いる第1の電極と、振動子の励振に用いる第2の電極とを含み、長手方向中心線を回転中心として角速度を検出する圧電振動角速度計用振動子であって、
前記圧電体は、前記回転中心に垂直な平面により区分される2領域を有し、
前記2領域の一方は、前記振動子を励振する駆動領域であり、前記回転中心の方向に平行な側面の幅方向に分極方向を有し、
前記2領域の他方は、回転により発生するコリオリの力を検出する検出領域であり、前記側面と直交する他の側面の幅方向に分極方向を有し、
前記第1の電極は、前記検出領域において、前記振動子の前記回転中心の方向に平行な同一側面上に2分割して形成されており、
前記第2の電極は、前記駆動領域において、前記第1の電極が形成された前記側面と平行な側面上に形成されていることを特徴とする圧電振動角速度計用振動子。 - 前記第2の電極は、前記振動子の励振を行うための自励振用電極と、励振信号の帰還を行うための帰還用電極とを含み、前記自励振用電極は、同一側面上に2分割して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の圧電振動角速度計用振動子。
Priority Applications (1)
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JP03888097A JP3770425B2 (ja) | 1997-02-24 | 1997-02-24 | 圧電振動角速度計用振動子 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP03888097A JP3770425B2 (ja) | 1997-02-24 | 1997-02-24 | 圧電振動角速度計用振動子 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH10239061A JPH10239061A (ja) | 1998-09-11 |
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ID=12537537
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-
1997
- 1997-02-24 JP JP03888097A patent/JP3770425B2/ja not_active Expired - Lifetime
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