JP3769405B2 - ナノケーブルとその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、太さが数十ナノメートル以下の同軸ケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ナノチューブ構造のチューブ内に、コアとしてナノチューブと異なった物質を取り込んだヘテロ構造が実現している。例えば、毛管現象を利用して、金属あるいはその化合物をナノチューブ内に注入する技術が発表されている(Ajayan, P. M. and Iijima, S, Nature 361, 333 (1993); Tsang, S. C., Chen, Y. K., Harris, P.J. F., and Green, M. L. H., Nature 372, 159 (1994); Ugarte, D., Chatelain,A., and de Heer, W. A., Science 274, 1897 (1996)、参照)。
【0003】
また、直接アーク放電を用いて、蒸気から金属あるいはその化合物を内包するカーボンナノチューブも合成されている(Seraphin,S., Zhou, D., Jiao, J., Withers, J. C., and Loutfy, R., Nature 362, 503 (1993); Loiseau, A. and Pascard,H., Chem. Phys. Lett. 256, 246 (1996); Terrones, M., et al., Appl. Phys. A66, 307 (1998)、参照)。
【0004】
このようなカーボンナノチューブにおいて、炭化物との接合は特に注目される。なぜなら、一般的に、炭化物は、炭素前駆体として生成され、それ自身、半導体的から金属的、超伝導的、または絶縁体的に振る舞う、非常に興味ある電気的性質を持っているからである。このようなカーボンナノチューブと、直径や螺旋状態によって、半導体あるいは金属的になる単層カーボンナノチューブ特有の電気的性質(Dresselhaus, M. S.,Dresselhaus, G., and Eklund, P., Science of Fullerenes and Carbon Nanotubes (New York, Academic Press, 1996))とが結びついて、多様な機能素子の実現が期待できる。例えば、外側のチューブを絶縁性、内側のコア部を導電性にすれば、微細なケーブルとして利用できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のヘテロ構造では、同軸ケーブルを形成することはできなかった。その理由は、同軸ケーブル構造を実現するには2層の導体層と層間の絶縁層が必要であったからである。
【0006】
そこで、本発明の技術的課題は、従来は実現が不可能であった、同軸構造を備えたナノケーブルとその製造方法とを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のナノケーブルでは、ナノチューブと、前記チューブ内に設けられたコア部とを備えたナノケーブルであって、前記コア部は、芯部である炭化シリコンと前記芯部を被覆する酸化シリコンからなり、前記ナノチューブは、チッ化ホウ素及び炭素からなることを特徴としている。
【0008】
また、本発明のナノケーブルでは、前記ナノケーブルにおいて、前記コア部の1種類の材料が結晶構造を有することを特徴としている。
【0009】
また、本発明のナノケーブルでは、前記ナノケーブルにおいて、前記コア部の1種類の材料が非結晶構造を有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明のナノケーブルでは、前記いずれかのナノケーブルにおいて、前記コア部は、各材料ごとに互いに同軸構造を有することを特徴としている。
【0011】
また、本発明のナノケーブルでは、前記いずれかのナノケーブルにおいて、前記ナノチューブと前記コア部は互いに同軸構造を有することを特徴としている。
【0012】
また、本発明のナノケーブルでは、前記いずれかのナノケーブルにおいて、前記コア部の中心に導体層又は半導体層が設けられ、その外側に絶縁層が設けられていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明のナノケーブルでは、前記いずれかのナノケーブルにおいて、前記コア部の中心が炭化シリコンであることを特徴としている。
【0014】
また、本発明のナノケーブルでは、前記いずれかのナノケーブルにおいて、前記コア部の中心部を被覆する絶縁層がシリコン酸化層、又は二酸化シリコンであることを特徴としている。
【0015】
また、本発明のナノケーブルでは、前記いずれかのナノケーブルにおいて、前記ナノチューブが単層構造又は多層構造であることを特徴としている。
【0017】
即ち、本発明のナノケーブルの基本的な構成の一つは、コア部の中心に導体層が設けられ、その外側に絶縁層が設けられたものであるが、例えば、半導体−絶縁体−半導体(もしくは半導体−絶縁体−金属)の放射方向における異質(ヘテロ)接合を構成することもできる。以下、これらを総称して「同軸ナノケーブル」と呼ぶ。
【0018】
また、本発明のナノケーブルの製造方法では、前記ナノケーブルをレーザーアブレーション法によって製造する方法であって、レーザービームターゲットに、窒化ホウ素、炭素、酸化シリコンおよび窒化リチウム(LiN)を含むことを特徴としている。
【0019】
さらに、本発明のナノケーブルの製造方法では、レーザーアブレーション法によるナノケーブルの製造方法において、レーザービームターゲットに、窒化ホウ素、炭素、および窒化リチウム(Li3N)を含み、酸化シリコン蒸気を流す工程を含むことを特徴としている。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は本発明の実施の形態による同軸ナノケーブルの基本構造を模式的に示す断面斜視図である。図1を参照すると、本発明の実施の形態によるナノケーブル10は、コア部と外皮とを備え、コア部は、芯部3と、その周囲を覆う絶縁層2とを備え、また、外皮は、コア部の周囲を覆うナノチューブ1を備えている。
【0022】
このナノケーブル10において、芯部3が1種類の材料から成る場合には、結晶構造を有するものであっても、非結晶構造を有するものであってもよい。また、芯部3が2種類以上の材料からなる場合には、材料ごとに互いに同軸構造をとることができる。
【0023】
また、コア部の中心である芯部3として、導体層又は半導体層が設けられ、その外側に絶縁層2が設けられる。芯部3は、炭化シリコンであり、芯部3を被覆する絶縁層2は、シリコン酸化層、あるいは二酸化シリコンを用いることができるが、図1の例においては、非結晶質二酸化シリコン層から形成されている。
【0024】
また、ナノケーブル10において、外皮を構成するナノチューブ1は、単層構造であっても多層構造であってもよく、ホウ素、窒素、または炭素の元素から構成することができるが、図1に示される例においては、BNとCの多層チューブから形成されている。
【0025】
以上説明した本発明の実施の形態によるナノケーブル10は、例えば、以下のように製造される。
【0026】
レーザーアブレーション法によるナノケーブルの形成方法において、レーザービームターゲットに窒化ホウ素、炭素、酸化シリコンおよび窒化リチウム(Li3N)を含むものを用いる。
【0027】
また、レーザーアブレーション法によるナノケーブルの形成において、酸化シリコンは、酸化シリコン蒸気を流す工程によって形成することもできる。
【0028】
実験的に決定されたナノケーブルの構造は、軸方向においてナノワイヤーとナノチューブの両方を兼ね備えており、そして理想的な半導体−絶縁体−半導体(もしくは半導体−絶縁体−金属)の放射方向における異種(ヘテロ)接合を構成するので、電子輸送もしくはナノ装置にきわめて重要である。ナノケーブルの重要性は、それ自身の優れた構造のみならず、構造形成の制御にもある。
【0029】
ナノケーブルの成長は2段階に分けられる。第1段階は、C(固体または蒸気)+2SiO(ガス)→SiC(固体)+SiO2(固体)の反応によるSiC−SiO2ナノワイヤーの形成である。第2段階は、BN及びCのナノ領域への分離による、BCN鞘の被覆である。
【0030】
このナノケーブルの内部にLiは検出されなかったが、グラファイト様(graphitic or graphote-like)の鞘の形成において、Liは重大な役割を果たすことを見出した。
【0031】
出発物質にLi3Nがないと、グラファイト様の鞘のない、SiC−SiO2ワイヤーのみが形成される。チューブ状BN層は、グラファイトテンプレートなしでは形成が困難であるが、Cは実験温度(1200℃)でSiOと容易に反応するので、上記の結果は驚くべきことではない。Liが出発原料に存在すると、SiOに対するLiの高い反応性は、外側のC層がSiOとの反応を避けて、テンプレートの役割を果たすことによるのであろう。さらに、Liはグラファイト状BNの生成を促進することができる。その結果、ナノチューブ内に導体層とそれを被覆する同軸構造の絶縁層が設けられ、チューブの導電性と組み合わせることにより、同軸(ナノ)ケーブルの実現が可能になる。
【0032】
以下に、本発明の実施の形態による同軸ナノケーブルの一製造例について、説明する。
【0033】
本発明の技術を用いて太さ数十nm以下の同軸ケーブルを実現した。
【0034】
用いたレーザーアブレーション装置は、T.Guo et al(Chem.Phys.Lett.243 (1955)49)の装置を原形とするもので、レーザーとして、Nd:YAGパルスレーザーの2次高調波(波長532nm)を用いた。パルスレートは10Hz,パルス幅は6〜7nsであった。
【0035】
ターゲットとして、窒化ホウ素、炭素、酸化シリコン、および窒化リチウム(Li3N)を混合圧縮した。ターゲット上でのエネルギー密度は約3J/cm2であった。ターゲットは、電気炉中で1200℃に加熱した石英反応管の中央にセットした。流量300sccmの窒素ガスを導入し、全体の圧力を500torrに調整した。生成物を炉の下流で収集した。
【0036】
尚、酸化シリコンガスを流して窒化ホウ素、炭素、および窒化リチウム(Li3N)と高温下で反応させる方法でも同様の生成物が得られた。
【0037】
得られた生成物の透過電子顕微鏡(TEM)観察により、同軸ナノケーブルが形成できたことを確認した。
【0038】
図2は本発明の実施の形態によるナノケーブルの結晶構造を示す低倍率写真である。図3は、本発明の実施の形態によるナノケーブル先端の結晶構造とそのコア部分の炭化シリコンの電子回折像を示す電子顕微鏡写真である。図4は、ナノケーブルの詳細な多層構造の組識を示す高分解能像の電子顕微鏡写真である。
【0039】
図2において、網状の像は試料の支持膜である。
【0040】
また、図3において、左上の拡大像が外側の鞘であるチューブ部分の構造、右下の拡大像がコア部分の炭化シリコン結晶構造を示している。
【0041】
レーザーアブレーション法で得られた、図2に示すナノケーブルは、数十μm以下の長さと数十ナノメートルの直径を有する、高アスペクト比をもち、また直径は比較的均一である。
【0042】
また、拡大した図3では、ナノケーブルが結晶構造のコア部分と、これを囲む非結晶構造の層とを有することが示されている。
【0043】
図3に挿入した回折パターンは、結晶構造のコア部分がβ相SiCで、電子線に平行な<110>軸を有することを示しいる。{111}面からの回折スポットはアスタリスク(*)が付され、これは双晶面を示している。積層欠陥の存在は、SiCコア部分が、CとSiCの固−気反応により形成されたことを暗示している。
【0044】
また、図4では、非結晶構造の鞘の外側に別のグラファイト様の鞘が見られる。鞘からの格子の縁(図4の左上に挿入)は、層間距離が約0.35nmであり、BNまたはCのターボストレイティックグラファイテック(turbostratic graphitic)層の(002)間隔に近いことを示している。結晶構造のSiCコア部分(図3の右下部に挿入)から、約0.25nmの(111)面間隔をもつ典型的なフェースセンター(面心)立方相の<110>プロジェクションを見ることができる。ここに示された構造は、信号伝送に使用されている通常の同軸ケーブルと同じである。
【0045】
【発明の効果】
以上に説明した通り、本発明にれば、コア部の中心領域と外側の鞘であるチューブ部分が2層の導体層となり、また中間層の二酸化シリコン層が絶縁層となるので、従来は実現が不可能であった、同軸ナノケーブルとその製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態によるナノケーブルの基本構造の概略を示す断面斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態によるナノケーブルの結晶構造を示す低倍率電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明の実施の形態によるナノケーブル先端の結晶構造とそのコア部分の炭化シリコンの電子回折像を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】ナノケーブルの詳細な多層構造の組識を示す高分解能像の電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 ナノチューブ
2 絶縁層
3 芯部
10 ナノケーブル

Claims (11)

  1. ナノチューブと、前記チューブ内に設けられたコア部とを備えたナノケーブルであって、前記コア部は、芯部である炭化シリコンと前記芯部を被覆する酸化シリコンからなり、前記ナノチューブは、チッ化ホウ素及び炭素からなることを特徴とするナノケーブル。
  2. 請求項1に記載のナノケーブルにおいて、前記コア部の1種類の材料が結晶構造を有することを特徴とするナノケーブル。
  3. 請求項1記載のナノケーブルにおいて、前記コア部の1種類の材料が非結晶構造を有することを特徴とするナノケーブル。
  4. 請求項1乃至3の内のいずれかに記載のナノケーブルにおいて、前記コア部は、各材料ごとに互いに同軸構造を有することを特徴とするナノケーブル。
  5. 請求項1乃至4の内のいずれかに記載のナノケーブルにおいて、前記ナノチューブと前記コア部分は互いに同軸構造を有することを特徴とするナノケーブル。
  6. 請求項1乃至5の内のいずれかに記載のナノケーブルにおいて、前記コア部の中心に導体層又は半導体層が設けられ、その外側に絶縁層が設けられていることを特徴とするナノケーブル。
  7. 請求項1乃至6の内のいずれかに記載のナノケーブルにおいて、前記コア部の中心が炭化シリコンであることを特徴とするナノケーブル。
  8. 請求項6又は7記載のナノケーブルにおいて、前記コア部の中心部を被覆する絶縁層がシリコン酸化層、又は二酸化シリコンであることを特徴とするナノケーブル。
  9. 請求項1乃至8の内のいずれかに記載のナノケーブルにおいて、前記ナノチューブが単層又は多層構造であることを特徴とするナノケーブル。
  10. 請求項1記載のナノケーブルをレーザーアブレーション法によって製造する方法であって、レーザービームターゲットに、窒化ホウ素、炭素、酸化シリコンおよび窒化リチウム(LiN)を含むことを特徴とするナノケーブルの製造方法。
  11. レーザーアブレーション法によるナノケーブルの製造方法において、レーザービームターゲットに、窒化ホウ素、炭素、および窒化リチウム(LiN)を含み、酸化シリコン蒸気を流す工程を含むことを特徴とするナノケーブルの製造方法。
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