JP3769103B2 - 歯付ベルトの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般産業用の歯付ベルトの製造方法、主として背面側で搬送を行なう用途に用いられる小型の歯付ベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
駆動プーリと従動プーリとの間に懸架し、背面側でカードや紙幣、硬貨等を搬送するために用いられるベルトとして、歯付ベルトが提供されている。この歯付ベルトは、内面側に長手方向に沿って複数の歯部を設けて形成されるものであり、歯部の表面には歯布を被覆し、また歯部の背面側には心線が埋設してある。
【0003】
このような歯付ベルトにおいて、歯部側と背面側とで層構成が異なるために、歯布とゴムの収縮の違いによってその幅方向に反りが発生し易く、反りが発生すると歯付ベルトをしなやかに走行させることができなくなるという問題がある。そこで、実用新案登録第3026320号公報で提供されているように、心線の背面側にも歯部の歯布と同じ材質の帆布を埋設することによって、幅方向に反りが発生することを防止することが行なわれている。
【0004】
そして実用新案登録第3026320号公報のものでは、次のようにして歯付ベルトの製造を行なっている。すなわち、歯形状の成形用溝を複数設けた金型の表面にまず歯布を重ね、この上に心線を巻き付けた後に、さらにこの上にゴムシートを重ね、そしてこのゴムシートの上に帆布を重ねると共に帆布の外側にさらに別のゴムシートを重ね、これを加熱加圧して成形すると共に加硫することによって、内側のゴムシートのゴムを金型の成形用溝に流入させて表面が歯布で被覆された歯部を形成すると共にこのゴムに心線を埋設し、また外側のゴムシートで帆布を埋設した背部ゴム層を形成するようにして、歯付ベルトを製造することができるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにして歯付ベルトを製造するにあたって、歯部のピッチが2.0mm以上の歯付ベルトでは、ベルト厚や歯部の体積もある程度大きいので、内側のゴムシートとして厚み0.6mm程度のものを用いて成形を行なうことができる。しかし、歯部のピッチが1.0mや1.5mm程度の歯付ベルトでは、ベルト厚や歯部の体積が小さくなるので、内側のゴムシートとして厚み0.6mmのものを用いて成形すると、歯部を形成するにはゴム量が多過ぎ、歯布の表面からゴムが滲み出すという問題がある。内側のゴムシートとして厚み0.3mm程度のものを用いれば、このような問題はないが、ゴムシートはゴムを圧延して作製されるため、0.3mmという厚みの薄いゴムシートを圧延で作製することは実用上不可能に近く、圧延装置の圧延厚を0.3mmに設定しても厚み精度にばらつきがあって、このような薄い厚みのゴムシートを用いることには問題がある。従って、従来の工法では歯部のピッチが1.5mm以下と小さい歯付ベルトを製造することが困難であった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、歯部のピッチが小さい歯付ベルトを容易に製造することができる歯付ベルトの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る歯付ベルトの製造方法は、長手方向に沿って複数設けられ表面が歯布1で被覆された歯部2と、歯部2の背面側に埋設された心線3と、心線3より背面側において背部ゴム層4に埋設された帆布5とからなる歯付ベルトを製造するにあたって、帆布5として歯部2側にゴム6を塗布したものを用い、この帆布5に塗布したゴム6で歯部2を形成することを特徴とするものである。
【0008】
より具体的には、歯形状の成形用溝7を複数設けた金型8の表面に、歯布1、心線3、金型8側にゴム6を塗布した帆布5、ゴムシート9をこの順に重ね、これを加熱加圧して成形することによって、帆布5に塗布したゴム6を金型8の成形用溝7に流入させて表面が歯布1で被覆された歯部2を形成すると共にゴムシート9で帆布5を埋設した背部ゴム層4を形成することを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明において歯布1と帆布5とは同じ材質のものを用いるのが好ましいものであり、その材質は6ナイロン、66ナイロン、ポリエステル、アラミド繊維等を選択することができる。また織構成は平織物、綾織物、朱子織物などいずれでもよい。この歯布1及び帆布5はRFL液で処理したものを用いるのが好ましい。RFL液はレゾルシンとホルマリンの初期縮合物をラテックスに混合して調製されるものであり、レゾルシンとホルマリンのモル比は1:1〜3、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物とラテックスとの重量比は1:1〜10である。尚、ラテックスとしては、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリルゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンなどのラテックスを用いることができる。
【0010】
そして帆布5の片面にはゴム6を均一な厚みで塗布(スプレディング)する。ゴム6の塗布(スプレディング)は、ゴム組成物を溶剤に溶かしたゴム糊を帆布5の上側に塗布し、これを一対のロール間に通して余分なゴム糊を除去すると共に帆布5の表面にゴム糊を均一な厚みに塗り拡げ、これを80℃〜120℃の温度で5〜7分間乾燥することによって、行なうことができる。このように塗布によって帆布5の表面にゴム6を設けているために、このゴム6の層厚は塗布量に応じて任意に設定することができるものであるが、歯部のピッチが1.5mm以下の歯付ベルトを製造する場合には、帆布5の表面に設けるゴム6の層厚は0.3mm以下の厚みに設定するのが好ましい。ゴム6の層厚が0.3mmを超えると、後述のようにこのゴム6で歯部1を成形する際に歯布1の表面にゴムが滲み出るおそれがある。ゴム6の層厚の下限は特に設定されないが、実用上は0.1mm程度が限界である。尚、帆布5の表面のゴム6と、ゴムシート9とは異なる組成のゴム配合で作製するのが好ましく、歯付ベルトの歯部1を形成することになる帆布5の表面のゴム6は高硬度のゴム配合で、歯付ベルトの背部ゴム層4を形成することになるゴムシート9は低硬度のゴム配合で作製するのがよい。
【0011】
心線3としては、Eガラスまたは高強度ガラスの5〜9μmのフィラメントを撚り合わせたものをゴム組成物からなる保護層あるいは接着剤であるRFL液で処理した無機繊維のものや、引張強度が高いパラ系アラミド繊維の0.5〜2.5デニールのフィラメントを撚り合わせたものをRFL液、エポキシ樹脂溶液、イソシアネート溶液とゴム組成物で処理した有機繊維の撚りコードなどを使用することができる。勿論、これらに限定されるものではない。
【0012】
また、ゴムシート9はゴム組成物を圧延成形あるいは押出成形することによって作製されるものであり、その厚みは任意であるが、0.5mm〜1.5mm程度が一般的である。このゴムシート9や帆布5に設けた上記のゴム6としては、特に制限されるものではないが、水素化ニトリルゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン(ACSM)、クロロプレンゴム、アクリルゴム等を用いることができるものであり、このゴム中には配合剤として亜鉛華、ステアリン酸、可塑剤、老化防止剤などが添加される。
【0013】
歯付ベルトの製造にあたっては、円柱形の金型8を用いる。金型8には突部と凹部を周方向に交互に形成して歯形状の成形用溝7が複数設けてある。そして、まず予めミシンジョイントやホットメルトジョイントして円筒状にした歯布1を金型8の外周に被せて、図1(a)のように金型8の表面に歯布1を重ね、次に心線3を所定のピッチ及び所定の張力で歯布1の上から螺旋状に巻き付け、そしてさらにこの上からゴム6を塗布した上記の帆布5を、ゴム6が金型8側に向くようにして巻き付け、さらにこの上から上記のゴムシート9を巻き付けて重ねる。このようにして図1(a)に示すように金型8の表面に各材料を積層した後、ジャケットを被せて金型8を加硫缶(図示省略)に入れ、加熱加圧すると共に加硫を行なう。
【0014】
このように加熱加圧及び加硫を行なうことによって、帆布5に塗布したゴム6は歯布1を成形用溝7の溝底に押し付けるようにして成形用溝7内に流れ、図1(b)のようにこのゴム6によって歯部2を成形することができるものであり、また心線3もゴム6内に埋入される。さらにゴムシート9によって背部ゴム層4が形成されるものであり、帆布5はこの背部ゴム層4内に埋入される。
【0015】
上記のようにして、図2に示すような、表面が歯布1で被覆された歯部2と、歯部2の背面側に埋設された心線3と、心線3より背面側において背部ゴム層4に埋設された帆布5とからなる歯付ベルトを製造することができるものであり、歯付ベルトの内面側の歯部2に被覆される歯布1と、歯付ベルトの背面側の背部ゴム層4に埋設される帆布5によって、歯付ベルトの内面側と背面側の収縮率のバランスをとることができ、歯付ベルトが幅方向に反り変形することを防ぐことができるものである。そして、歯部2は帆布5に塗布したゴム6が満たされることによって形成されているものであり、帆布5に塗布して形成されるゴム6は既述のように層厚を薄く形成することができ、歯布1の表面にゴムが滲み出るようなことなく、ピッチの小さい歯部2を容易に成形することができるものである。また、背部ゴム層4は、歯付ベルトを駆動プーリと従動プーリとの間に懸架して使用するにあたって、歯付ベルトの背面側でカードや硬貨等を搬送する際の摩擦係数を高めて、搬送能力を高めるために設けられているものである。
【0016】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
30デニールの6ナイロンからなる経糸と30デニールのウーリー6ナイロンからなる緯糸によって、経糸密度190本/3cmで製織された朱子織帆布を用い、この朱子織帆布を水中で振動を与えて製織時の幅の約1/2にまで収縮させて歯布1として用いた。この歯布1には、表1の配合のRFL液に浸漬すると共に一対のロール間に通して0.5kg/cm2 (ゲージ圧)の圧力で絞った後、150℃で4分間乾燥し、さらに再度同じ配合のRFL液に浸漬して200℃で2分間乾燥することによって、RFL処理を行なった。
【0017】
【表1】
【0018】
また、上記の歯布1と同じ朱子織帆布を用い、この朱子織帆布を水中で振動を与えて製織時の幅の約1/2にまで収縮させて帆布5として用いた。そしてこの帆布5を図3に示すように送りながら表2の配合のゴム糊10を上面に塗布し、このゴム糊を上面に付着させた帆布5を上下一対のロール11a,11b間に通すことによって余分なゴム糊10を除去した後、乾燥することによって、厚みが0.6mmの帆布5とゴム6の積層物を得た。尚、一対のロール11a,11b間のクリアランスは0.6mmより大きく設定してあるが、ゴム糊を乾燥させて溶剤を飛ばすことによって、帆布5とゴム6の合計厚みが0.6mmになるようにしてあり、ゴム6の層厚を0.3mmに形成するようにしてある。また、この上下一対のロール11a,11bは、下側のロール11bが帆布5の進行方向と同じ方向に回転し、上側のロール11aが余分のゴム糊10を除去する作用をするようにしてある。
【0019】
【表2】
【0020】
また、表3の配合のゴム組成物をロールに通して圧延し、厚み1.0mmのゴムシート9を作製した。
【0021】
【表3】
【0022】
そして、上記のRFL処理した歯布1をエンドレスの筒状にして、歯形状の成形溝7を設けた円柱状の金型8の外周にセットし、この上からS撚りの心線3とZ撚りの心線3(いずれもガラス繊維フィラメントのストランドを既述のRFL液で処理して撚ったもの)を交互に0.5mmピッチで配置して巻き付け、さらにこの上から帆布5をゴム6を内側にしてエンドレスの筒状にして巻き付けた。さらにこの上からゴムシート9を巻き付けた(図1(a)参照)。
【0023】
この後、金型8にジャケットを被せて加硫缶に入れ、加熱加圧すると共に加硫を行なうことによって、帆布5に塗布したゴム6が成形用溝7内に流れて歯部2が形成されると共に、ゴムシート9で帆布5を埋入した背部ゴム層4が形成された、図1(b)のようなスリーブ状の成形品を成形した。そしてこれを金型8から脱型して所定幅に切断することによって、歯数が270歯、歯部2のピッチが1.0mm、ベルト幅が15mmの歯付ベルトを得た。
【0024】
ここで、歯部2を形成するために帆布5に塗布したゴム6と、背面ゴム層4を形成するゴムシート9とは表2及び表3のように異なる配合にしてあり、歯部2は高硬度のゴム(JISA80°)で、背面ゴム層4は低硬度のゴム(JISA70°)で形成されるようにしてある。また背面ゴム層4を形成するゴムシート9には表3のように多孔質充填剤として珪藻土が配合してあり、背面ゴム層4の油水吸収性を高めると共に摩擦係数の変化を少なくして、歯付ベルトの背面でカードや紙幣等を搬送するのに適するようにしてある。
【0025】
上記のようにして得た歯付ベルトは、歯部2の形状が良好であり、歯部2の歯布1の織り目からのゴムの露出は見られず、歯布1の表面にゴムは付着していないものであった。また歯付ベルトを、常温で48時間、続いて40℃・90%RHで72時間、続いて常温で0.5時間、続いて5℃で72時間、続いて常温で0.5時間放置する試験を行ない、歯付ベルトの背面の反りを測定したところ、歯付ベルトの背面の反りは0であった。
【0026】
【発明の効果】
上記のように本発明は、長手方向に沿って複数設けられ表面が歯布で被覆された歯部と、歯部の背面側に埋設された心線と、心線より背面側において背部ゴム層に埋設された帆布とからなる歯付ベルトを製造するにあたって、帆布として歯部側にゴムを塗布したものを用い、この帆布に塗布したゴムで歯部を形成するようにしたので、帆布に塗布して形成されるゴムは容易に層厚を薄く形成することができるものであり、このゴムで歯部を成形するにあたって、歯布の表面にゴムが滲み出るようなことなくピッチの小さい歯部を容易に成形することができるものである。また歯付ベルトの内面側の歯布と背面側の帆布によって、歯付ベルトの内面側と背面側の収縮率のバランスをとることができ、歯付ベルトが幅方向に反り変形することを防ぐことができるものである。
【0027】
また本発明は、歯形状の成形用溝を複数設けた金型の表面に、歯布、心線、金型側にゴムを塗布した帆布、ゴムシートをこの順に重ね、これを加熱加圧して成形することによって、帆布に塗布したゴムを金型の成形用溝に流入させて表面が歯布で被覆された歯部を形成すると共にゴムシートで帆布を埋設した背部ゴム層を形成するようにしたので、帆布に塗布して形成されるゴムは容易に層厚を薄く形成することができるものであり、このゴムを金型の成形用溝に流入させて歯部を成形するにあたって、歯布の表面にゴムが滲み出るようなことなくピッチの小さい歯部を容易に成形することができるものである。また歯付ベルトの内面側の歯布と背面側の帆布によって、歯付ベルトの内面側と背面側の収縮率のバランスをとることができ、歯付ベルトが幅方向に反り変形することを防ぐことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a),(b)はそれぞれ一部の断面図である。
【図2】同上により製造された歯付ベルトの一部の拡大した断面図である。
【図3】同上の製造の一工程を示す概略図である。
【符号の説明】
1 歯布
2 歯部
3 心線
4 背部ゴム層
5 帆布
6 ゴム
7 成形用溝
8 金型
9 ゴムシート
Claims (2)
- 長手方向に沿って複数設けられ表面が歯布で被覆された歯部と、歯部の背面側に埋設された心線と、心線より背面側において背部ゴム層に埋設された帆布とからなる歯付ベルトを製造するにあたって、帆布として歯部側にゴムを塗布したものを用い、この帆布に塗布したゴムで歯部を形成することを特徴とする歯付ベルトの製造方法。
- 歯形状の成形用溝を複数設けた金型の表面に、歯布、心線、金型側にゴムを塗布した帆布、ゴムシートをこの順に重ね、これを加熱加圧して成形することによって、帆布に塗布したゴムを金型の成形用溝に流入させて表面が歯布で被覆された歯部を形成すると共にゴムシートで帆布を埋設した背部ゴム層を形成することを特徴とする歯付ベルトの製造方法。
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JP20571197A JP3769103B2 (ja) | 1997-07-31 | 1997-07-31 | 歯付ベルトの製造方法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP20571197A JP3769103B2 (ja) | 1997-07-31 | 1997-07-31 | 歯付ベルトの製造方法 |
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JPH1151123A JPH1151123A (ja) | 1999-02-23 |
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Family Applications (1)
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JP20571197A Expired - Lifetime JP3769103B2 (ja) | 1997-07-31 | 1997-07-31 | 歯付ベルトの製造方法 |
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JP (1) | JP3769103B2 (ja) |
-
1997
- 1997-07-31 JP JP20571197A patent/JP3769103B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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JPH1151123A (ja) | 1999-02-23 |
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