JP3768268B2 - 車両の側面衝突判別装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、相手車両が車両側面に衝突したのを検出して乗員保護用のエアバッグ装置を作動させるための衝突検出信号を出力する車両の側面衝突判別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両の衝突発生時の衝撃から運転者や同乗者を保護して負傷の軽減や死亡事故の減少を図ることを目的としたエアバッグ装置が急速に普及しつつある。このエアバッグ装置は、衝突発生により車両が一定限度つまり安全限界を超えた衝撃を受けたのを衝突センサで検知して、衝突センサから出力される衝突検出信号によってスクイブ(電気雷管)に通電し、スクイブの発火によりガス発生剤を燃焼させてガスを発生させ、このガスの流入による膨張により急激に拡張するエアバッグを乗員と車内の対向箇所との間に介在させて緩衝機能を得るようになっている。
【0003】
上記エアバッグ装置としては運転席用と助手席用とが存在するが、現在において実用化されているエアバッグ装置はいずれも車両の正面衝突を衝突センサで検知してエアバッグを拡張させるものが殆どである。ところが、車両の衝突には、上述の正面衝突の他に側面衝突や後部への追突などがあり、特に、側面衝突が発生した場合には 車両の側面部における比較的薄くて弱いドアーやピラー部が即座に変形して乗員に著し危害を与えることが多い。そのため、車両の側面衝突を検知して作動するエアバッグ装置の実用化が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、既存の正面衝突用のエアバッグ装置をそのまま側面衝突用に利用することはできない。すなわち、正面衝突の場合には、おおむね車両のバンパー、シャーシおよびエンジンの順序で破壊された後に乗員に衝撃を与えることから、車両の前面部が物体に衝突した時点から10〜15msecで衝突センサを作動させれば乗員を保護できるのに対して、側面衝突の場合には、比較的薄くて弱いドアーやピラー部が相手車両に衝突された瞬間に変形して乗員に危害を加えることから、例えば50km/hの速度で走行中に衝突が発生した場合に5msec程度で衝突センサを作動させる必要がある。
【0005】
また、衝突センサの検知感度を正面衝突の場合よりも高く設定すると、ドアの開閉時の衝撃などでも誤作動する恐れがある。そのため、フラッパー式と呼ばれるダンピング効果があって速応性の機械式衝突センサを用いることも提案されているが、この衝突センサは車種によっては充分な性能を発揮できないという問題がある。
【0006】
そこで、衝突をより正確に判別するために、圧電素子を使った電気式の衝突センサから出力する加速度信号を時間積分して速度変化量を算出し、その速度変化量が安全限界を越えたときに衝突の発生であると判定する正面衝突判別装置を側面衝突用に適用することが考えられる。しかし、速度変化量のみにより側面衝突をドア打ちなどと区別して判別しようとすると、安全限界のしきい値を比較的大きな値に設定する必要があることから、衝突判定に必要なレベルの積分結果を得られるまでに時間がかかる。これに対し、側面衝突の場合には、瞬時に衝突発生を判別しないと、エアバッグの拡張が遅れて所期の緩衝効果を得られない。したがって、衝突判定を下すまでに猶予される極めて短い時間内での加速度信号の積分値のみにより側面衝突とドア開閉などによる衝撃とを正確に判別するのは不可能である。
【0007】
、正面衝突の衝突判別装置の分野において、加速度信号から得られる速度変化量と、加速度に含まれる車両の衝突時に顕著に現れる特定の周波数帯域成分に基づき演算して得られる衝撃力とにより、速度変化量と衝撃力とを2軸とする平面上で衝突領域と非衝突領域とを区画する衝突判定曲線を予め実験的に求めておき、走行時に衝突センサから出力する加速度信号から得られる速度変化量と衝撃力とを関数的に演算して、その演算結果が衝突判定曲線の内外いずれの側に存在するかをもって衝突判定する装置が提案されている(特開平6−99787号公報参照)。しかし、この装置をそのまま側面衝突用に適用した場合、衝突判定曲線の設定および該曲線に対する演算結果の比較判定が正面衝突の場合と全く異なることから、側面衝突とドア開閉などにより受ける衝撃とを正確に判別することができない。
【0008】
本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両への側面衝突を迅速に、且つ正確に判別することのできる車両の側面衝突判別装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明における車両の側面衝突判別装置は、車両の側面部位に取り付けられて車両に対し側方から加わる加速度を電気信号に変換して検出する加速度センサと、この加速度センサの出力電気信号を一定時間積分して速度変化量を算出する積分手段と、前記加速度センサの出力電気信号から特定の高周波帯域成分のみを抽出する振動成分抽出手段と、この振動成分抽出手段の出力信号からエネルギ量を算出するエネルギ量算出手段と、前記エネルギ量と前記速度変化量を座標軸として形成される二次元領域のうち、前記速度変化量の値が、車両のドアに対するハンマリングにおける前記速度変化量及び低速側面衝突における前記速度変化量の最大値よりも僅かに大きな値に設定された速度変化量設定値より大きく、且つ、前記エネルギ量が、車両のドア打ちにおける前記エネルギ量の最大値よりも僅かに大きな値に設定されたエネルギ量設定値より大きな領域を衝突判定領域とする衝突判別手段とを備えたものである。
【0010】
上記の衝突判別手段は、前記積分手段が算出した速度変化量が前記速度変化量設定値以上であると判別した時に信号出力する第1の比較手段と、前記エネルギ量算出手段のエネルギ量が前記エネルギ量設定値以上であると判別した時に信号出力する第2の比較手段と、
前記第1および第2の両比較手段から同時に信号出力された時に衝突検出信号を出力する衝突判定部とから構成したものとすることができる。
【0011】
また、他の衝突判別手段として、前記積分手段と前記エネルギ量算出手段との各々の出力を関数的に演算して速度変化量とエネルギ量とを座標軸とする二次元領域上での座標値を求める関数演算手段と、前記速度変化量と前記エネルギ量とを座標軸とする二次元領域を衝突領域と非衝突領域とに区画する衝突判定曲線に対して前記関数演算手段の演算結果の座標値が大きいと判別した時に衝突検出信号を出力する第3の比較手段とからなるものがあり、この場合の前記衝突判定曲 線は、前記速度変化量の値が、車両のドアに対するハンマリング及び低速側面衝突における前記速度変化量の最大値よりも僅かに大きく、且つ、前記エネルギ量が、車両のドア打ちにおける前記エネルギ量の最大値よりも僅かに大きくなる二次曲線に設定されているものである。
【0012】
更に、前記振動成分抽出手段で抽出される高周波帯域成分は800Hz以上、好ましくは1000Hz以上、更に好ましくは1100Hz以上に設定するものとできる。
【0013】
上記構成によれば、車両に側方から加わる加速度を変換した電気信号を一定時間積分して速度変化量を算出するとともに、加速度を変換した電気信号から特定の高周波帯域成分のみを抽出して、その抽出した信号のエネルギ量を算出する。ここで、高周波帯域成分として、加速度センサに直接衝撃が加えられた時に顕著に発生する振動成分に相当する周波数帯域成分を抽出すると、この抽出した信号から算出したエネルギ量は加速度センサへの衝撃力、つまり車両の側面への衝撃力に相当する。そして、速度変化量とエネルギ量が各々の安全限界の設定値を共に超えた時点で、速度変化量とエネルギ量とを座標軸として形成される二次元領域のうちの衝突判定領域であると判別してエアバッグ装置を作動させるための衝突検出信号を出力する。
【0014】
従って、ドアを開ける時に誤って建造物の壁面に接触する等のドア打ちが発生した場合には、速度変化量が大きくなって速度変化量設定値を超えるが、加速度センサに直接的に衝撃が加わらないことから、加速度センサの出力電気信号中に高周波成分のエネルギが殆ど含まれない。そのため、加速度信号中に含まれる高周波成分のエネルギ量がエネルギ量設定値を超えることがなく、衝突検出信号を誤出力することがない。
【0015】
ところで、上記構成では、加速度センサの出力電気信号中に含まれる高周波成分のエネルギ量を算出しているため、何らかの物体を用いて悪戯でドアを叩打したりといった、いわゆるハンマリングが生じた場合には、加速度センサに振動が生じて高周波成分のエネルギ量がエネルギ量設定値を超えることがある。しかし、速度変化量が速度変化量設定値を超えないので、やはり衝突検出信号が誤出力されない。即ち、相手車が車両側面に衝突した場合のみ速度変化量と高周波成分のエネルギ量が共に各々の設定値を超えるので、側面衝突をドア打ちやハンマリングと区別して正確に判別することができる。
【0016】
、速度変化量およびエネルギ量が同時に各々の設定値を超えない限り側面衝突の発生と判断しないので、算出する速度変化量およびエネルギ量の安全限界を設定するための各々の設定値は、それぞれハンマリングまたはドア打ちなどでは生じない程度の低いレベルに設定できる。それにより、側面衝突が発生した場合には、算出される速度変化量およびエネルギ量が何れも衝突発生時から早い時点で夫々の設定値を超える変化を見せるため、側面衝突を極めて短時間で判別して衝突検出信号を出力することができ、エアバッグを効果的に拡張させることができる。
【0017】
衝突判別手段を、算出した速度変化量を速度変化量設定値と比較する第1の比較手段と、算出したエネルギ量を設定値と比較する第2の比較手段と、これら比較手段から同時に信号出力されたか否かを判別するアンドゲートなどの衝突判定部とに構成すると、構成が極めて簡単であって、高精度に且つ迅速に側面衝突を判別できる。
一方、衝突判別手段を、速度変化量とエネルギ量とを座標軸とする二次元領域を衝突領域と非衝突領域とに区画する衝突判定曲線を予め実験的に求めておき、速度変化量とエネルギ量を関数的に演算して求めた上記二次元領域上での座標値が衝突判定曲線よりも大きいと判別した時に衝突検出信号を出力する構成とすれば、上記衝突判定曲線は速度変化量と衝撃力とを合わせて総合的に求められるものであるから、側面衝突が発生した場合には、速度変化量および衝撃力が共に衝突発生時から早い段階で一定の限界を超える変化をみせて、演算結果が衝突判定曲線の衝突判定領域に存在する値となるので、側面衝突の発生を極めて短時間でなおかつ正確に判別することができる。
【0018】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。まず第1実施例を図1乃至図4により説明する。図1は本発明の第1実施例に係る車両の側面衝突判別装置を示すブロック構成図、図2は図1における側面衝突判定マップを示す図、図3は側面衝突などが発生した時の周波数に対するエネルギ分布を示すスペクトル図、図4は加速度センサの設置位置を示す自動車の概略斜視図である。
【0019】
図1において、加速度センサ1は車両に対し側方から加えられる加速度を電気信号に変換して検出するもので、圧電効果を利用して機械的エネルギを電気的エネルギに変換する圧電素子を用いて構成されている。この加速度センサ1は、図4に示すように、自動車AM側面におけるドアDの中央部D1または下端部D2、シル部C、ピラー部Pのうちの何れか一か所に側方からの加速度を受けることのできる配置で埋め込み設置されている。この加速度センサ1から出力された加速度信号は、図示しないA/D変換器によりデジタルデータに変換されたのちに、図1で破線で囲った例えばマイクロコンピュータからなる構成によりソフトウェア的に信号処理される。なお、側面衝突用のエアバッグはドアDまたはシートの側部に設置される。また、同図には自動車AMの右側面を示しているが、左側面にも同様に加速度センサ1およびエアバッグが設けられるのは勿論である。
【0020】
加速度センサ1からの加速度信号は、入力タイミング発生回路2によるカウント動作により発生するタイミング信号に同期して一定周期毎に断続的に且つ一定時間だけ通過を許容される。この入力タイミング発生回路2を通過した加速度信号は、ローパスフィルタ3により帯域制限されたのちに積分回路4で積分されて、タイミング信号により設定された一定時間における速度変化量データに変換される。上記の加速度信号をローパスフィルタ3により帯域制限して入力することにより、加速度信号中に含まれるところの車両に対し側方から加わる加速度に相当する成分のみを抽出している。
【0021】
一方、入力タイミング発生回路2を通過した加速度信号の一部は、バンドパスフィルタ6によって所定の高周波帯域成分のみを抽出される。この抽出する高周波帯域成分について図3を参照しながら説明する。図3において、実線の曲線は側面衝突、1点鎖線の曲線はハンマリング、破線の曲線はドア打ちの特性曲線をそれぞれ示しており、同図から明らかなように、800Hz以上の高周波数成分において各々の特性の相違が顕著に現れる。すなわち、側面衝突やハンマリングの場合のように加速度センサ1に直接的に衝撃を加えられた場合には、1kHz前後の振動成分が発生するので、上記のバンドパスフィルタ6により加速度信号に含まれる800Hz以上の高周波帯域成分、好ましくは1000Hz以上、更に好ましくは1100Hz以上に設定すれば、衝撃力に相当する振動成分のみを抽出する。これにより、加速度センサ1に間接的に衝撃が加えられて加速度センサ1に振動が伝わらないドア打ちを除外するとともに、速度変化量のみでは分からない衝撃力を検出している。
【0022】
バンドパスフィルタ6で抽出した高周波帯域成分はエネルギ量検出手段7でエネルギ量に変換される。このエネルギ量算出手段7としては、例えば2乗演算器が用いられており、正負にわたって変化する上記の帯域成分を2乗演算することにより、加速度の正負とは無関係に衝撃力の大きさに相当するエネルギ量に変換している。
【0023】
積分回路4およびエネルギ量算出手段7でそれぞれ算出された速度変化量およびエネルギ量は、第1および第2の比較器5,8でそれぞれ安全限界に相当する速度変化量設定値およびエネルギ量設定値と比較される。この設定値について、図2のエネルギ量Eと速度変化量Vを座標軸として二次元領域を形成した側面衝突判定マップを参照しながら説明する。図2には高速での側面衝突や低速(20km/h)での正面衝突における高周波成分のエネルギ量Eと速度変化量Vとの関係の他に、ドア打ちおよハンマリングについても、高周波成分のエネルギ量Eと速度変化量Vとの相関が最も深い領域をそれぞれ破線で囲って示してある。同図から明らかなように、第1の比較器5の速度変化量設定値VR は、ハンマリングおよび低速側面衝突の発生時における最大の速度変化量Vよりも僅かに大きな値に設定されている。一方、第2の比較器7のエネルギ量設定値ER は、ドア打ちの発生時における最大のエネルギ量Eよりも僅かに大きな値に設定されている。
【0024】
両比較器4,7とアンドゲート9とにより衝突判定手段15が構成されている。この衝突判定手段15は、図2のエネルギ量Eと速度変化量Vを座標軸として形成される二次元領域のうち、エネルギ量Eが大きくても速度変化量Vが小さい領域と、速度変化量Vが大きくてもエネルギ量Eが小さい領域と、エネルギ量Eと速度変化量Vが共に小さい領域とを非衝突領域と判別し、エネルギ量E及び速度変化量Vが共に前記設定値 R ,E R より大きな残りの領域を衝突判定領域とする。
【0025】
従って、ドア打ちが発生した場合には速度変化量Vが速度変化量設定値VR を超えることにより第1の比較器5から信号出力されるが、この場合、加速度センサ1に直接的に衝撃が加わらないことから、加速度センサ1の加速度信号中に高周波成分のエネルギが殆ど含まれないため、エネルギ量算出手段7の出力信号レベルが第2の比較器8のエネルギ量設定値ER を超えることがなく、衝突判別部としてのアンドゲート9からトリガ回路13に対し衝突検出信号が誤出力されることがなく、エアバッグ14が展開しない。
【0026】
一方、ハンマリングが生じた場合には、加速度センサ1に振動が生じて高周波成分のエネルギ量Eが第2の比較器8のエネルギ量設定値ER を超えるが、この場合、速度変化量Vが第1の比較器5の速度変化量設定値VR を超えないので、アンドゲート9からは、やはり衝突検出信号が誤出力されない。なお、相手車が低速で側面衝突した場合も、ハンマリングの発生時と同様に判別して衝突検出信号が出力されない。これは、低速側面衝突の発生時にエアバッグ14を展開させると、乗員に対し逆に危険であるためである。
【0027】
これに対し、相手車が高速で車両側面に衝突した場合は、速度変化量Vおよび高周波成分のエネルギ量Eが共に両比較器5,8の各々の前記設定値VR ,ERを超えるので、側面衝突をドア打ちやハンマリングと正確に区別して判別することができる。しかも、算出する速度変化量Vおよびエネルギ量Eの安全限界を設定するための各々の前記設定値VR ,ER は、上述のようにハンマリングおよびドア打ちなどでは生じない程度の低いレベルに設定しているので、側面衝突が発生した場合には、算出される速度変化量Vおよびエネルギ量Eが衝突発生時から早い時点で前記設定値を超える変化を見せるため、側面衝突を極めて短時間で判別して衝突検出信号を出力することができる。図3の側面衝突の特性曲線における太線で示した部分は衝突検出信号を出力するのに要求される時間帯であるが、側面衝突の発生直後に衝突検出信号を出力できることを示している。
【0028】
なお、加速度センサ1の加速度信号は入力タイミング発生回路2に設定された一定周期毎に取り込まれるために、側面衝突の発生でない場合には積分回路4およびエネルギ量算出手段7の演算値をそのつどクリアする必要がある。そこで、通常状態検知回路10では、ローパスフィルタ3からの加速度信号から所定のオフセット値を減算し、その減算値を入力タイミング発生回路2に設定された一定時間において積分している。この積分値が第の比較器11の基準オフセット値V0 と比較されて、積分値が基準オフセット値V0 よりも小さい場合に第4の比較器11から信号出力される。この第4の比較器11から信号出力されて通常走行であると判別する毎に、リセット回路12がそのつど積分回路4およびエネルギ量算出手段7の演算値をクリアする。
【0029】
図5は本発明の第2実施例に係る車両の側面衝突判別装置を示すブロック構成図、図6は図5における側面衝突判定マップを示す図である。図5において、図1と同一若しくは同等のものに同一の符号を付してその説明を省略し、以下に、図1と相違する構成についてのみ説明する。
【0030】
即ち、図1と相違するのは、衝突判別手段18のみである。この衝突判別手段18は、積分回路4とエネルギ量算出手段7との各々の出力にそれぞれ所定の定数を乗算したのちに加算するよう関数的に演算して、図6に示すような速度変化量とエネルギ量とを座標軸とする二次元領域上での座標値を求める関数演算手段16と、この関数演算手段16の演算結果を図6の衝突判定曲線の値fX と比較して、演算結果が大きい場合に衝突検出信号を出力する第3の比較器17とにより構成されている。
【0031】
衝突判定曲線の値fX は、図6に示すように、設置する車両に対し速度変化量Vと衝撃力に相当するエネルギ量Eとを合わせて総合的に求められたもので、前記ハンマリングや低速側面衝突における前記速度変化量Vの最大値よりも僅かに大きく且つ前記ドア打ちにおけるエネルギ量の最大値よりも僅かに大きくなる二次曲線に設定されており、予め実験的に算出されている。高速での側面衝突が発生した場合には、速度変化量Vおよびエネルギ量Eが共に衝突発生時から早い段階で一定の限界を超える変化をみせて衝突判定曲線の値fX の衝突判定域の値となるので、第1の実施例と同様に、側面衝突の発生を極めて短時間で、なおかつ正確に判別することができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明の車両の側部衝突判定装置は上述のように、速度変化量およびエネルギ量が同時に各々の設定値を超えたときのみ側面衝突の発生と判断するので、ドア打ちの発生時にはエネルギ量が設定値を超えることがなく、一方、ハンマリングが生じた場合には速度変化量が速度変化量設定値を超えることがない。従って、相手車が車両側面に衝突した場合のみ速度変化量と高周波成分のエネルギ量が共に各々の設定値を超えることから、側面衝突をドア打ちやハンマリングと区別して正確に判別することができる。
【0033】
しかも、速度変化量およびエネルギ量の安全限界を設定するための各々の設定値を、それぞれハンマリングまたはドア打ちなどでは生じない程度の低いレベルに設定できるから、側面衝突が発生した場合には、算出される速度変化量およびエネルギ量が衝突発生時から早い時点で設定値を超える変化を見せるため、側面衝突を極めて短時間で判別して衝突検出信号を出力することができ、エアバッグを効果的に拡張させることができる。
【0034】
、高周波成分のエネルギ量と速度変化量とを関数的に演算した演算結果が、予め実験的に求めた衝突判定曲線で区画する衝突判定域に存在していると判別したときに、衝突検出信号を出力するものとすれば、衝突判定曲線は速度変化量と衝撃力とを合わせて総合的に求められるものであって、予め実験的に算出されるものであるから、側面衝突が発生した場合には、速度変化量および衝撃力が共に衝突発生時から早い段階で一定の限界を超える変化をみせて、演算結果が衝突判定曲線の衝突判定領域に存在する値となるので、側面衝突の発生を極めて短時間で、なおかつ正確に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る車両の側面衝突判別装置を示すブロック構成図である。
【図2】図1における側面衝突判定マップを示す図である。
【図3】側面衝突などが発生した時の周波数に対するエネルギ分布を示すスペクトル図である。
【図4】加速度センサの設置位置を示す自動車の概略斜視図である。
【図5】本発明の第2実施例に係る車両の側面衝突判別装置を示すブロック構成図である。
【図6】図5における側面衝突判定マップを示す図である。
【符号の説明】
1 加速度センサ
4 積分回路(積分手段)
5 第1の比較器(第1の比較手段)
6 バンドパスフィルタ(振動成分抽出手段)
7 エネルギ量算出手段
8 第2の比較器(第2の比較手段)
9 アンドゲート(衝突判別手段)
15 衝突判定手段
16 関数演算手段
17 第3の比較器(第3の比較手段)
18 衝突判定手段
AM 自動車(車両)

Claims (4)

  1. 車両(AM)の側面部位に取り付けられて車両に対し側方から加わる加速度を電気信号に変換して検出する加速度センサ(1)と、
    この加速度センサ(1)の出力電気信号を一定時間積分して速度変化量(V)を算出する積分手段(4)と、
    前記加速度センサ(1)の出力電気信号から特定の高周波帯域成分のみを抽出する振動成分抽出手段(6)と、
    この振動成分抽出手段(6)の出力信号からエネルギ量(E)を算出するエネルギ量算出手段(7)と、
    前記エネルギ量(E)と前記速度変化量(V)を座標軸として形成される二次元領域のうち、前記速度変化量(V)の値が、車両のドアに対するハンマリングにおける前記速度変化量及び低速側面衝突における前記速度変化量の最大値よりも僅かに大きな値に設定された速度変化量設定値(V R )より大きく、且つ、前記エネルギ量(E)が、車両のドア打ちにおける前記エネルギ量の最大値よりも僅かに大きな値に設定されたエネルギ量設定値(E R )より大きな領域を衝突判定領域とする衝突判別手段(15)と、
    を備えてなることを特徴とする衝突判別装置。
  2. 前記衝突判別手段(15)を、
    前記積分手段(4)が算出した速度変化量(V)が前記速度変化量設定値(V R 以上であると判別した時に信号出力する第1の比較手段(5)と、
    前記エネルギ量算出手段(7)のエネルギ量(E)が前記エネルギ量設定値(E R 以上であると判別した時に信号出力する第2の比較手段(8)と、
    前記第1および第2の両比較手段(5),(8)から同時に信号出力された時に衝突検出信号を出力する衝突判定部(9)と、
    から構成してなる請求項1に記載の車両の側面衝突判別装置。
  3. 車両(AM)の側面部位に取り付けられて車両に対し側方から加わる加速度を電気信号に変換して検出する加速度センサ(1)と、
    この加速度センサ(1)の出力電気信号を一定時間積分して速度変化量(V)を算出する積分手段(4)と、
    前記加速度センサ(1)の出力電気信号から特定の高周波帯域成分のみを抽出する振動成分抽出手段(6)と、
    この振動成分抽出手段(6)の出力信号からエネルギ量(E)を算出するエネルギ量算出手段(7)と、
    前記積分手段(4)と前記エネルギ量算出手段(7)との各々の出力を関数的に演算して速度変化量(V)とエネルギ量(E)とを座標軸とする二次元領域上での座標値を求める関数演算手段(16)と、
    前記速度変化量(V)と前記エネルギ量(E)とを座標軸とする二次元領域を衝突領域と非衝突領域とに区画する衝突判定曲線(f x に対して前記関数演算手段(16)の演算結果の座標値が大きいと判別した時に衝突検出信号を出力する第3の比較手段(17)とからなる衝突判別手段(18)と、を備え
    前記衝突判定曲線(f x )は、前記速度変化量(V)の値が、車両のドアに対するハンマリング及び低速側面衝突における前記速度変化量の最大値よりも僅かに大きく、且つ、前記エネルギ量(E)が、車両のドア打ちにおける前記エネルギ量の最大値よりも僅かに大きくなる二次曲線に設定されていることを特徴とする衝突判別装置。
  4. 前記振動成分抽出手段(6)で抽出される高周波帯域成分は800Hz以上である請求項1〜3の何れかに記載の車両の側面衝突判別装置。
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