JP3767252B2 - 内燃機関のフレキシブルフライホイール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のクランクシャフトの一端に取り付けられるフレキシブルフライホイールに関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関のクランクシャフトの回転を安定化させるフライホイールとして、外周部にフライホイールマスが設けられたフレキシブルプレートを、クランクシャフトの一端に固定したフレキシブルフライホイールが、従来から知られている。上記のフレキシブルプレートは、捩り方向に比して曲げ方向の剛性が低く設定されており、クランクシャフトの曲げ振動を適宜に吸収して、クランク応力や高回転域での異音,振動等を適宜に低減するようになっている(特開平06−193683号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなフレキシブルフライホイールでは、フレキシブルプレートがバネとなってフライホイールマスが面振れし、例えば、半クラッチ状態におけるフライホイールマスのクラッチ接触面とクラッチディスクとの間のすべり速度に変動を生じて、異音(ジャダー音)や振動を招聘する虞がある。
【0004】
そこで、このようなフライホイールマスの面振れを抑制するために、フライホイールマスとフレキシブルプレートとの間に、板バネを介装したものが知られている。
【0005】
しかしながら、このような板バネを用いた場合、面振れ方向の剛性とともに並進方向(軸方向)の剛性も高くなってしまう。このため、クランクシャフトの曲げ振動を適宜に吸収するというフレキシブルフライホイール本来の機能に悪影響を及ぼす虞があり、更なる改良が望まれている。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る内燃機関のフレキシブルフライホイールは、外周部にフライホイールマスが設けられたフレキシブルプレートと、上記フレキシブルプレートの中央部を挟んでクランクシャフトの一端に固定されるレインフォースプレートと、を有している。
【0008】
そして、請求項1の発明は、所定高さの円周面をなす上記レインフォースプレートの外周面に摺接するパイプ部と、このパイプ部の基端部から径方向外方へ張り出し、上記フレキシブルプレートに固定される平板状のフランジ部と、を有するパイプフランジを備えることを特徴としている。
【0009】
また、上記パイプ部が、先端部へ向かうにしたがってレインフォースプレート側へ傾斜していることを特徴としている。
【0010】
ところで、フレキシブルフライホイールに最も近い気筒のクランクピンの上死点位置で点火・爆発が行われたときに、フレキシブルプレートへ入力する曲げモーメントが最も大きくなる。
【0011】
そこで、請求項の発明では、上記フランジ部が少なくとも2箇所で上記フレキシブルプレートに固定されたものにおいて、軸方向視で、フレキシブルフライホイールに最も近い気筒のクランクピンの上死点位置の方向、つまり最も大きな曲げモーメントが作用する最大曲げ方向に、上記フランジ部のフレキシブルプレートへの固定位置の一つを設定している。
【0012】
請求項の発明では、軸方向視で、フレキシブルフライホイールに最も近い気筒のクランクピンの上死点位置の方向に、上記フランジ部を拡大している。
【0013】
請求項の発明では、軸方向視で、フレキシブルフライホイールに最も近い気筒のクランクピンの上死点位置の方向に、上記パイプ部の筒長さが部分的に長くなるように設定している。
【0014】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、パイプフランジによって、レインフォースプレートに対するフレキシブルプレートの面振れ方向の剛性を効果的に向上することができ、ひいてはフライホイールマスの面振れを抑制することができる。
【0015】
また、互いに摺接するレインフォースプレートの外周面とパイプフランジのパイプ部の内周面との間のフリクションにより、フレキシブルプレートの面振れ振動を速やかに減衰させることができる。
【0016】
更に、レインフォースプレートの外周面とパイプフランジのパイプ部の内周面とが互いに摺接しており、両者の軸方向の相対移動が許容されているので、並進方向の剛性が必要以上に高くなることはない。従って、クランクシャフトの曲げ振動を吸収するというフレキシブルフライホイール本来の機能を阻害することもない。
【0017】
また、レインフォースプレートとパイプフランジのパイプ部とが線接触する形となり、両者間のフリクションが必要以上に大きくなることを回避することができる。
【0018】
請求項の発明によれば、フランジ部のフレキシブルプレートへの固定位置の一つが、最も大きな曲げモーメントが作用する最大曲げ方向に設定されることとなり、フレキシブルプレート及びフライホイールマスの面振れをより効果的に抑制することができる。
【0019】
請求項の発明によれば、最も大きな曲げモーメントが作用する最大曲げ方向にフランジ部を拡大した形となり、フレキシブルプレート及びフライホイールマスの面振れをより効果的に抑制することができる。
【0020】
請求項の発明によれば、最も大きな曲げモーメントが作用する最大曲げ方向に、パイプ部の筒長さが部分的に長くなる形となり、フレキシブルプレート及びフライホイールマスの面振れをより効果的に抑制することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
図1〜3は、本発明に係るフレキシブルフライホイールを、4気筒の内燃機関に適用した第1実施例を示している。
【0023】
このフレキシブルフライホイールは、薄板リング状のフレキシブルプレート12と、このフレキシブルプレート12の中央部(軸心部)を挟んで内燃機関のクランクシャフト14の後端部14aに複数の取付ボルト16で共締め固定される所定厚さのリング状のレインフォースプレート18と、を有している。フレキシブルプレート12は、捩り方向に比して曲げ方向の剛性が適宜に低く設定され、その外周部には、リング状のフライホイールマス20が複数の取付ボルト22で共締め固定されている。
【0024】
このフレキシブルフライホイールは、基本的に、以下に示す機能を有する。
【0025】
第1に、主に所定の質量を有するフライホイールマス20の慣性力により、クランクシャフト14の回転を安定化させて、内燃機関のトルク変動を抑制する機能を有している。また、特にシリンダ数の少ない(1又は2気筒)の内燃機関の場合には、クランクシャフト14の回転を圧縮行程等においても持続させる機能を有している。
【0026】
第2に、曲げ方向に柔軟性を持つフレキシブルプレート12によって、クランクシャフト14の曲げ振動を適宜に吸収し、クランク応力や高回転域での異音,振動等を低減する機能を有している。
【0027】
第3に、図外の変速機へクランクシャフト14の回転力を伝達するクラッチ機構の一部として機能している。詳述すると、フライホイールマス20にはクラッチカバー24が固定されており、このクラッチカバー24には、プレッシャプレート28を付勢するダイヤフラムスプリング26が取り付けられている。また、プレッシャプレート28とフライホイールマス20との間には、図外の変速装置の入力軸に接続するクラッチディスク30が介装されている。クラッチ継状態では、ダイヤフラムスプリング26がプレッシャプレート28をフライホイールマス20側へ押圧し、クラッチディスク30に貼りつけられた摩擦材32がフライホイールマス20のクラッチ接触面20aに強く押しつけられて、フライホイールマス20とクラッチディスク30とが接続される。一方、クラッチ断状態では、ダイヤフラムスプリング26の外周側が図1の右側に後退して、クラッチディスク30とフライホイールマス20との接続が解除される。
【0028】
第4に、始動時にフレキシブルプレート12の外周に設けられたリングギヤ34に、図外の始動装置から回転力を受けるように構成されている。
【0029】
そして本実施例のフレキシブルフライホイールは、パイプフランジ36を備えることを一つの特徴としている。このパイプフランジ36は、所定高さの円周面をなすレインフォースプレート18の外周面に摺接する円筒状のパイプ部38と、このパイプ部38の基端部(フレキシブルプレート12側の端部)から折曲して径方向外方へ張り出した平板状のフランジ部40と、により構成されており、このフランジ部40が、2個のリベット42A,42B(図3,4)によりフレキシブルプレート12に2カ所で固定されている。
【0030】
パイプ部38は、図3に示すように、先端部(図3の右端部)へ向かうにしたがって縮径し、つまり先端部へ向かうに従ってレインフォースプレート18側へ傾斜するテーパ状に形成されている。すなわち、パイプ部38の内周面は、レインフォースプレート18の外周面に対して所定の角度αで傾斜している。
【0031】
フランジ部40は、図2に示すように、この実施例では略円環状をなしており、軸心を挟んで同一直径線上に、リベット42A,42Bが挿通する取付孔44A,44Bがそれぞれ形成されている。
【0032】
ここで、図4に示すように、内燃機関の4個の気筒の中でフレキシブルフライホイールに最も近い#4気筒の#4クランクピン14bの上死点位置の方向に、フランジ部40のフレキシブルプレート12への固定位置、つまり一方のリベット42Aの位置を設定している。
【0033】
この点について詳述すると、図5に示すように、フレキシブルフライホイールに最も近い#4気筒の#4クランクピン14bが圧縮上死点に位置する状態で、#4気筒の点火・爆発が行われた場合に、クランクシャフト14の後端部14aに取り付けられたフレキシブルプレート12に入力する曲げモーメントが最も大きくなり、このときの最大曲げ方向P1(図2)に、フランジ部40のフレキシブルプレート12への固定位置の一方、すなわち一方のリベット42Aの位置を設定している。つまり、図2に示すように、最大曲げ方向P1に沿って、リベット42A,42B取付用の取付孔44A,44Bを形成している。
【0034】
なお、図5ではクランクシャフト14の変形を誇張して描いており、実際には変形はわずかである。
【0035】
以上のような構成により、本実施例では、パイプフランジ36によって、レインフォースプレート18に対するフレキシブルプレート12の面振れ方向P(図3)の剛性が向上するため、フレキシブルプレート12及びフライホイールマス20の面振れをより確実に抑制することができる。
【0036】
また、仮に面振れが生じても、互いに摺動するパイプフランジ36のパイプ部38の内周面とレインフォースプレート18の外周面との間のフリクションにより、面振れ振動を速やかに減衰させることができる。
【0037】
更に、パイプ部38の内周面とレインフォースプレート18の外周面とが互いに結合されておらず、スライド可能に摺接しているため、従来例のように板バネを用いた場合に比して、並進方向(軸方向)の剛性が必要以上に高くなる虞がない。このため、クランクシャフト14の曲げ振動を適宜に吸収するというフレキシブルフライホイール本来の機能を阻害することもない。
【0038】
加えて、パイプ部38が先端部へ向かうに従ってレインフォースプレート18側へ傾斜しているため、パイプ部38とレインフォースプレート18とが線接触する形となり、両者38,18間のフリクションが必要以上に大きくなることを回避することができる。
【0039】
しかも、一方のリベット42Aの位置を、軸方向視で#4クランクピン14bの上死点位置の方向、つまり最大曲げ方向P1に設定しているため、フレキシブルプレート12やフライホイールマス20の面振れをより効果的に抑制することができる。
【0040】
図6〜8は、パイプフランジの他の実施例を示している。なお、パイプフランジ以外の構成は上記第1実施例と同様であり、重複する説明を適宜省略する。
【0041】
図6,7に示す第2実施例のパイプフランジ46は、上記第1実施例のパイプフランジ36と同様、レインフォースプレート18(図1〜3)の外周面に摺接するパイプ部48と、このパイプ部48の基端部より径方向外方へ張り出した平板状のフランジ部50と、により構成されている。
【0042】
ここで、パイプ部48は、軸方向視で#4クランクピン14bの圧縮上死点位置の方向つまり最大曲げ方向P1に対応して筒長さが部分的に長くなるように設定されている。つまり、最大曲げ方向P1でパイプ部48の筒長さが最も高くなるように、パイプ部48の先端縁が湾曲形成されている。
【0043】
また、フランジ部50は、軸方向視で最大曲げ方向P1に拡大された略菱形をなしており、その長径側の両端部に、リベット42A,42Bが挿通する取付孔52A,52Bがそれぞれ形成されている。
【0044】
なお、このようなフランジ部50の形状に応じて、フランジ部50が固定されるフレキシブルプレート12の取付凹部12aの形状も適宜に変更されている。
【0045】
この実施例によれば、上記第1実施例と同様の効果が得られることに加え、最大曲げ方向P1に対応して、パイプ部48の筒長さが部分的に長くなっているとともに、フランジ部50が拡大されているため、フレキシブルプレート12及びフライホイールマス20の面振れをより確実に抑制することができる。
【0046】
図8に示す第3実施例では、フランジ部54が、#4クランクピン14bの圧縮上死点の方向つまり最大曲げ方向P1に拡大された略扇状をなしている点でのみ、第2実施例と異なる。この実施例によれば、上記第2実施例と同様、最大曲げ方向P1にフランジ部54が拡大されているため、フレキシブルプレート12及びフライホイールマス20の面振れをより確実に抑制することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えばパイプフランジのフランジ部を3カ所以上でフレキシブルプレートへ固定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係るフレキシブルフライホイールを示す断面図。
【図2】第1実施例のフレキシブルフライホイールを単体で示す正面図。
【図3】第1実施例の要部を示す拡大断面図。
【図4】第1実施例のパイプフランジの固定位置を示す説明図。
【図5】第1実施例の作用説明図。
【図6】本発明の第2実施例に係るパイプフランジを示す正面図。
【図7】第2実施例に係るパイプフランジを示す側面図。
【図8】本発明の第3実施例に係るパイプフランジを示す正面図。
【符号の説明】
12…フレキシブルプレート
14…クランクシャフト
18…レインフォースプレート
20…フライホイールマス
36…パイプフランジ
38…パイプ部
40…フランジ部

Claims (4)

  1. 外周部にフライホイールマスが設けられたフレキシブルプレートと、上記フレキシブルプレートの中央部を挟んでクランクシャフトの一端に固定されるレインフォースプレートと、を有する内燃機関のフレキシブルフライホイールにおいて、
    所定高さの円周面をなす上記レインフォースプレートの外周面に摺接するパイプ部と、このパイプ部の基端部から径方向外方へ張り出し、上記フレキシブルプレートに固定される平板状のフランジ部と、を有するパイプフランジを備え
    かつ、上記パイプ部が、先端部へ向かうにしたがってレインフォースプレート側へ傾斜していることを特徴とする内燃機関のフレキシブルフライホイール。
  2. 上記フランジ部が少なくとも2箇所で上記フレキシブルプレートに固定され、
    軸方向視で、フレキシブルフライホイールに最も近い気筒のクランクピンの上死点位置の方向に、上記フランジ部のフレキシブルプレートへの固定位置の一つを設定したことを特徴とする請求項に記載の内燃機関のフレキシブルフライホイール。
  3. 軸方向視で、フレキシブルフライホイールに最も近い気筒のクランクピンの上死点位置の方向に、上記フランジ部を拡大したことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関のフレキシブルフライホイール。
  4. 軸方向視で、フレキシブルフライホイールに最も近い気筒のクランクピンの上死点位置の方向に、上記パイプ部の筒長さが部分的に長くなるように設定したことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の内燃機関のフレキシブルフライホイール。
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