JP3767222B2 - オイル供給装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オイルポンプの吐出路の圧油を所定時に排出する排出路を有したオイル供給装置、特に、排出路に絞りを設けたオイル供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の自動変則装置には一般的に流体伝動装置やその他の各種の油圧アクチュエータが配備され、これら油圧アクチュエータには切換え操作用の圧油がオイルポンプより供給されている。
【0003】
ところで、車両はその停車時に走行に移る場合、シフトレバーがニュートラルレンジ(N)よりドライブレンジ(D)へ切換えられ、これに応じて流体伝動装置である動力伝達系の各油圧アクチュエータが切換え操作される。このため、エンジン駆動中は常に回転しているエンジン出力軸側であるトルクコンバータのポンプ側にオイルポンプを取付けておき、停車時にあっても切換え油圧を確保できるようにしたものがある。
【0004】
このようなエンジン駆動のオイルポンプを備えたオイル供給装置の一例が特開平8−144965号公報に開示される。このオイル供給装置はエンジン駆動のオイルポンプの吐出ポートと吸入ポートの間に流量制御弁を設け、吐出路に圧力調整弁を設け、この圧力調整弁のフィードバック圧が大きな場合にこの油圧を受けた流量制御弁が開き、吐出油を吸入路に迂回させて、ポンプ負荷を低減し、キャビテーションの発生を抑制している。しかし、このオイル供給装置ではエンジン始動時のような低回転時に流量制御弁が閉じており、このためライン圧が上昇してポンプ負荷が急増し、エンジンの始動性を良好に保持できない。
図7には他のオイル供給装置の例を示した。
【0005】
ここで、エンジン駆動のオイルポンプ100はその吐出路110に調圧弁120、マニュアルシフト弁130及び油圧クラッチ140等の各種の油圧アクチュエータを取付けている。マニュアルシフト弁130はドライブ(D)レンジで吐出路110を油圧クラッチ140側のポートに連通し、Pレンジでは油圧クラッチ140側のポートを閉じ、吐出路110をスプール131に設けた開口aに続く排出路190に連通する。
【0006】
この場合、Pレンジでの吐出路110の圧油を開口aに続く排出路190より排出してポンプ負荷を低減し、始動性を確保しようとすると、開口a、即ち、排出路断面積を比較的大きく設定することが望ましい。一方、Pレンジでエンジン回転数及びポンプ回転数が急増する極低温でのアイドルアップ運転時に吐出路110の油圧を高め、調圧弁120の導入路150に大きな操作油圧を加えて、スプール121を開弁方向に移動させ、戻し路180を開放して吸入路160の負圧化を抑え、キャビテーションの発生を抑えようとすると、開口a、即ち、排出路断面積を比較的小さく設定することが望ましい。
【0007】
このように、排出路190の開口a、即ち、排出路断面積は、始動性の確保のためには大きく、キャビテーションの抑制のためには小さく設定することが望ましく、従来は相反する要求を満たすために、双方の要求をそこそこ満たす妥協点を求めて、開口aの絞り内径を設定していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、特開平8−144965号公報のオイル供給装置では始動性の確保ができず、図7のオイル供給装置では始動性の確保とキャビテーションの抑制の相反する要求をそこそこ満たすだけでしかなく双方を確実に満たせるオイル供給装置が望まれている。
【0009】
特に小排気量車両では、近年、その制御性を確保する上で大排気量車と比べてエンジントルクに対し相対的に大きな容量のオイルポンプを装備するように成ってきている。このため、小排気量車での出力当たりの負荷が増加する傾向にあり、始動性の悪化を抑えるため排出路断面積を大きくして吐出路油圧を低下させる必要性がより高まっている。一方、耐久性、静粛性確保の観点よりキャビテーションの発生を抑制する必要性も高まっており、妥協点を求めることはますます困難となっている。
【0010】
本発明の目的は、始動性の確保とキャビテーションの抑制の双方を確実に満たせるオイル供給装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、請求項1の発明では、エンジンにより駆動されるオイルポンプを備え、このオイルポンプの吐出路と吸入路との間に吐出路の油圧が所定値を上回ると開く調圧弁を配設し、上記吐出路には排出路を接続し、同排出路により所定時に上記吐出路の圧油を排出し、上記排出路に流量感応型可変絞り弁を設け、この流量感応型可変絞り弁により、排出路の油流量が少ないと排出路断面積を拡げ、多いと調圧弁を開くように排出路断面積を狭めている。
ここで、所定時、例えば、吐出路から排出路に流入する油流量が少ない始動時のような場合には、流量感応型可変絞り弁が排出路断面積を拡げ、吐出路の油圧を下げ、オイルポンプの負荷を下げ、始動性を確保でき、排出路に流入する油流量が多いアイドルアップ時のような場合に、流量感応型可変絞り弁が排出路断面積を狭め、調圧弁を開くようにして、オイルポンプの吐出路を吸入路に連通し、吸入路の負圧化によるキャビテーションの発生を抑制し、異音発生や耐久性低下を防止できる。
【0012】
好ましくは自動変速機のオイル供給装置において、上記排出路はパーキングレンジに保持されたマニュアルシフト弁を介し吐出路に連通されることが良い。この場合、マニュアルシフト弁がパーキングレンジに保持される場合、始動やアイドルアップがなされることより、オイルポンプがオイル供給不要の運転域である始動時(この時エンジン回転数はアイドル回転数より低い)やアイドルアップ時に、マニュアルシフト弁が吐出路の圧油を排出路に排出するように容易に構成でき、従来装置を容易に兼用でき、この点で構成の簡素化、低コスト化を図れる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1記載のオイル供給装置において、上記流量感応型可変絞り弁は、流入口及び流出口より排出路断面積が大で底面が上記流出口より低位に形成されたボール収容室と、上記流出口の周囲に形成された絞り通路と、同ボール収容室に収容され油流量の増加変動に応じて上記底面より上記流出口を狭めるよう変動するボールとを有することを特徴とする。
この場合、自重とオイルの動圧とのバランスによりボール収容室内の排出路断面積を可変させるボールを用いるので、構造の簡素化、低コスト化を図れる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1、図2には本発明の適用されたオイル供給装置1を示した。このオイル供給装置1は図示しない自動車の自動変速機内の油圧クラッチ2やその他の各油圧アクチュエータ、あるいは多数の潤滑/冷却要部に圧油を供給するように構成されている。
【0015】
オイル供給装置1は油圧源のオイルポンプ3と、オイルポンプ3の吐出路4と吸入路5の間に取り付けられる調圧弁としての油圧調整弁6と、吐出路4の油圧調整弁6の下流側に取り付けられるマニュアルシフト弁7と、吐出路4のマニュアルシフト弁7の下流側に取り付けられる油圧クラッチ2等の各種の油圧アクチュエータと、オイルポンプ3が吸入路5を介し吸入する油を貯溜するオイルパン9及びオイルフィルタ10とを備える。
オイルポンプ3は図示しないエンジン出力軸側と一体のトルクコンバータのポンプ軸8に取付られ、エンジン駆動時には常時回転して、圧油を吐出路4側に吐出する。
【0016】
油圧調整弁6は吐出路4の油圧を所定値に保持するもので、吐出路4の油圧を操作油圧として導入路12より取り込み、その操作油圧と戻しばね11とのバランス作動に応じてスプール14が戻し路13を開閉するように構成される。戻し路13の下流端は吸入路5に連通し、適時に吐出路4の圧油を吸入路5を介してオイルポンプ3の吸入口に供給できる。なお、ここでの所定値とは、後述するスプール15がパーキングレンジ(P)に保持された状態での調圧値であり、エンジンがアイドルアップ運転域に入り、キャビテーションの発生域に入った場合の吐出路油圧の内で比較的低い値が設定され、操作油圧がこの所定値を上回ると速やかに戻しばね11の弾性力に抗してスプール14が戻し路13を開放できるように設定されている。油圧調整弁6は、スプール15がドライブレンジ(D)等に保持された場合においては、過度の吐出圧を排除するためのレギュレータ機能を示す。なお、この油圧調整弁6は、レギュレータ機能を発揮するための調圧値とキャビテーション防止のための所定値とを同一値に設定しているが、場合により、両油圧に差を設定できる図示しない油圧調整弁を用いても良い。
【0017】
マニュアルシフト弁7は図示しないシフトレバーと連動するスプール15をバルブボデー16内に摺動可能に収容する。スプール15はパーキングレンジ(P)、リバースレンジ(R)、ニュートラルレンジ(N)、ドライブレンジ(D)等の走行レンジ(2)、(L)へ選択的に切換えられる。ここで、マニュアルシフト弁7のスプール15がドライブレンジ(D)にあると、吐出路4は油圧クラッチ2側のポートと連通し、停車時や始動時に使用されるパーキングレンジ(P)にあると、油圧クラッチ2側のポートを閉じ、吐出路4をスプール15に形成された後述する流入口191を介し排出路17に連通させる。
【0018】
スプール15はその一端に図示しないシフトレバーとの連結部151を形成され、他端近傍に外径方向に延びる連通穴152を形成され、その連通穴152とスプール15の他端との間に排出路17の一部を成す流量感応型可変絞り弁18を取付ている。
【0019】
図2に示すように、流量感応型可変絞り弁18はスプール15の中心線Lに対し同心的に形成されたボール収容室19を備える。このボール収容室19は連通穴152の中央に開口する円形断面の流入口191と下流側の流出口192と、流入口191及び流出口192より低位に形成され排出路断面積が流入口191及び流出口192より大の底面193を形成されている。底面193と流出口192の間はコーン型の穴に形成され、その傾斜面195の下流端が流出口192に連結している。図3に示すように、流出口192は円形断面でその周辺位置に、絞り通路194が切り込み形成されている。底面193上には転動可能に金属性のボール20が配設される。なお、場合によりボール20は金属以外の樹脂等で成形されても良い。このボール20はボール収容室19に流入する油の流量の増加変動、即ち油の動圧を受け、この動圧と自重wのバランスで転動し、動圧が比較的大きいと底面193より流出口に移動し、同流出口12を閉じるよう変動できる。ボール20の外径は流出口192の内径より僅かに大きく設定される。このためボール20が流出口192を閉じた場合、上下の絞り通路194のみより油が排出路17の下流側に流動し、この際、ボール20の下流側部位に負圧域を形成させ、ボール20を流出口192に吸着可能に構成されている。
【0020】
なお、図2の流量感応型可変絞り弁18では、底面193と流出口192の間はコーン型の穴に形成され、傾斜面195が流出口192に連結されているが、ここでのボールが比較的軽量の場合、あるいは油の流量が比較的大きな場合には底面193と流出口192の間を図5の如く段差部196をもって不連続に連結するようにしても良く、図6の如く逆傾斜面197に形成しても良い。これらの場合、ボール収容室19における流量が所定値を上回ると、底面193のボールが浮き上がり、直接流出口192側に吸着されることにより排出路断面積を狭めることとなる。
【0021】
このようなオイル供給装置1の作動を説明する。
ここでシフトレバーのスプール15がパーキングレンジ(P)にある状態で、エンジンの始動処理がなされるとする。この場合、オイルポンプ3が比較的低速回転され、吐出路4に吐出された圧油は流入口191よりボール収容室19を経て流出口192より排出路17の下流側に流下する。この時、図4(a)に示すように、ボール20は流入口191からの緩やかな油の流れfに当たり、比較的小さな動圧を受けるが、この動圧に応じた押し上げ力が自重wを上回ることなく、ボール20が傾斜面195を登ることはなく、流出口19は開放状態に保持され、ボール収容室19での排出路断面積は比較的大きく保持される。このため、吐出路4の油圧は速やかにボール収容室19を経て排出路17の下流側に排出され、ポンプ負荷は低く保持され、たとえ極低温時の始動であっても始動を良好に保持できる。
【0022】
この始動後において、図示しないエンジン制御系にアイドルアップ指令が成され、エンジン回転数が急増し、これに伴いポンプ回転数が急増するとする。
【0023】
この場合、吐出路4に吐出された比較的多量の圧油の比較的大きな流れは流入口191よりボール収容室19を経て排出路17の下流側に流下する。この時、流入口191からボール20に向けて流速の大きな油の流れf1が当たり続け、比較的大きな動圧を受けたボール20は自重wに抗して傾斜面195を登り、流出口19を閉じ、図2に2点鎖線で示す位置にがたつくことなく保持される。この時、周辺の絞り通路194のみより油が排出路17の下流側に流動し、ボール20はその下流側に生じた負圧で流出口192に吸着された状態を保持できる。
【0024】
この吸着可能な構造により、油の流量が増加していく時のボール作動流量と、油の流量が低下していく時のボール作動流量にヒステリシスを設けることができる。これにより、上記油の流量の増加側と低下側のボール作動流量が同一である場合に懸念されるボールの作動ハンチングによるボールの振動を防止することができ、作動音の防止、耐久性の向上を図ることができる。
【0025】
このため、ボール収容室19の排出路断面積は十分に小さく絞られ、吐出路4の油圧は急増する。この急増した油圧は導入路12を介し油圧調整弁6に操作油圧として加わる。油圧調整弁6は戻しばね11の弾性力である所定の調圧値を閉弁方向に受けているが、操作油圧がその閉弁方向の弾性力を容易に上回ることとなり、スプール14が戻し路13を開放し、吐出路4の圧油を吸入路5に供給する。この時、オイルポンプ3は比較的高回転しており、オイルパン9の油をオイルフィルタ10を介し吸入するのみでは吸入路5側の負圧化を招き、キャビテーションを発生させるところであるが、吐出路4からの圧油の供給を受け、吸入路5側の負圧化によるキャビテーションの発生を抑制し、異音発生や耐久性低下を防止することができる。
【0026】
なお、暖機後の走行時には、シフトレバーのスプール15がドライブレンジ(D)等の走行レンジに切り替わり、吐出路4は油圧クラッチ2側のポートに連通し、この油圧クラッチ2やその他の各油圧アクチュエータ、あるいは多数の潤滑/冷却要部に圧油を供給でき、流入口191より排出路17側は閉鎖され、無駄な圧油の流れを防止できる。これと同時に、油圧調整弁6はレギュレータ機能を発揮し、吐出路4の過度の油圧の上昇を調整することとなる。
【0027】
図1のオイル供給装置で用いた流量感応型可変絞り弁18は排出路17の流量に感応して排出路断面積を増減調整するボール20を用いており、比較的構造が簡素化され、低コスト化を図れる。しかも、流量感応型可変絞り弁18はスプール15の一端に一体形成されていたため、従来のマニュアル弁に流量感応型可変絞り弁18を追加して形成することが容易であり、実施容易化を図れる。なお、場合により、マニュアルシフト弁7より排出路17下流側のバルブボデー16上に図示しない流量感応型可変絞り弁を別途設けても良く、この場合も同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
図1のオイル供給装置では過度の吐出圧排除のためのレギュレータ機能を有する油圧調整弁6をキャビテーションの発生防止のための調圧弁として兼用していたが、これに代えて、レギュレータ機能を有する油圧調整弁とは別に吐出路4と吸入路5間をキャビテーションの発生防止のために適時に開放する図示しない調圧弁を別途に用いても良い。この場合も図1のオイル供給装置と同様の作用効果を得られ、特に、レギュレータ機能で用いる調圧値とは無関係にキャビテーションの発生防止のための所定値の設定を行える利点がある。
【0029】
【発明の効果】
請求項1の発明では、吐出路の圧油を所定時に排出する排出路に流量感応型可変絞り弁を設けたので、所定時、例えば、吐出路から排出路に流入する油流量が少ない始動時のような場合には、流量感応型可変絞り弁が排出路断面積を拡げ、吐出路の油圧を下げ、オイルポンプの負荷を下げ、始動性を確保でき、排出路に流入する油流量が多いアイドルアップ時のような場合には、流量感応型可変絞り弁が排出路断面積を狭め、調圧弁を開くようにして、オイルポンプの吐出路を吸入路に連通し、吸入路の負圧化によるキャビテーションの発生を抑制し、異音発生や耐久性低下を防止できる。
【0030】
請求項2の発明では、自重とオイルの動圧とのバランスによりボール収容室内の排出路断面積を可変させるボールを用いるので、構造の簡素化、低コスト化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態例としてのオイル供給装置のオイル回路図である。
【図2】図1のオイル供給装置で用いる流量感応型可変絞り弁の拡大断面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図1のオイル供給装置で用いる流量感応型可変絞り弁の作動説明図であり、(a)は低流量時、(b)は高流量時を示す。
【図5】本発明における流量感応型可変絞り弁の変形例を示す断面図である。
【図6】本発明における流量感応型可変絞り弁の別の変形例を示す断面図である。
【図7】従来のオイル供給装置のオイル回路図である。
【符号の説明】
1 オイル供給装置
3 オイルポンプ
4 吐出路
5 吸入路
6 調圧弁
17 排出路
18 流量感応型可変絞り弁
19 ボール収容室
191 流入口
192 流出口
193 底面
194 絞り通路
20 ボール
Claims (2)
- エンジンにより駆動されるオイルポンプと、
上記オイルポンプの吐出路と吸入路との間に配設され、上記吐出路の油圧が所定値を越えたとき開く調圧弁と、
上記吐出路に接続され、同吐出路の圧油を所定時に排出する排出路と、
上記排出路に設けられ、同排出路の油流量が少ないと排出路断面積を拡げ、多いと上記調圧弁を開くように排出路断面積を狭める流量感応型可変絞り弁と、
を具備したことを特徴とするオイル供給装置。 - 上記流量感応型可変絞り弁は、流入口及び流出口より排出路断面積が大で底面が上記流出口より低位に形成されたボール収容室と、上記流出口の周囲に形成された絞り通路と、同ボール収容室に収容され油流量の増加変動に応じて上記底面より上記流出口を狭めるよう変動するボールとを有することを特徴とする請求項1記載のオイル供給装置。
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