JP3767077B2 - 原子炉圧力容器給水ノズルのセーフエンド部交換方法及び交換部構造 - Google Patents
原子炉圧力容器給水ノズルのセーフエンド部交換方法及び交換部構造 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子炉圧力容器給水ノズルのセーフエンド部交換方法及び交換部構造に関するものであり、より詳しくは、溶接後熱処理を一度で済ませるようにすると共に、ノズル本体の開口周縁部分に溶接後熱処理による残留応力が生じるのを防止し得るようにした原子炉圧力容器給水ノズルのセーフエンド部交換方法及び交換部構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4に示すように、原子炉圧力容器1には、内部へ給水2を取り入れるための給水ノズル3が取付けられている。
【0003】
尚、図中、4は原子炉圧力容器1の容器本体、5は原子炉圧力容器1の上蓋部、6は原子炉圧力容器1の内部に設けられた炉心部、7は原子炉圧力容器1内部で加熱された高温の炉水、8は原子炉圧力容器1の支持脚部である。
【0004】
上記給水ノズル3は、図5に示すように、低合金鋼製の容器本体4に形成した開口部9に溶接固定(溶接部10)される低合金鋼製のノズル本体11と、外部からの給水2を送給するための炭素鋼製の給水配管12と前記ノズル本体11の間に溶接によって取付けられて(溶接部13、溶接部14)、低合金鋼と炭素鋼という異材間の溶接を継手となって補助する異材継手機能(溶接が難しい低合金鋼製のノズル本体11と炭素鋼製のセーフエンド15との間は工場で溶接しておき、溶接が容易な炭素鋼製のセーフエンド15と炭素鋼製の給水配管12との間を現地で溶接させるようにする)や、肉厚の異なるノズル本体11と給水配管12とを接合する際の肉厚変化位置となる肉厚変化位置設定機能や、外力や応力などが作用した時に自らが破損されることによりノズル本体11などの破損を防止し且つ補修位置を特定させるための破損補修位置特定機能などの様々な機能を持つ炭素鋼製のセーフエンド15とで構成されている。
【0005】
そして、容器本体4内面側におけるノズル本体11の開口周縁部分16は、原子炉圧力容器1の内圧が掛り、且つ、応力が集中し易い形状をし、更に、低温の給水2と高温の炉水7とが合流する位置にあるため、疲労破壊を起こすおそれがあるので、セーフエンド15からノズル本体11の開口周縁部分16までの範囲の部分に、図6に示すような多重のサーマルスリーブ17を取付けて、容器本体4内面側におけるノズル本体11の開口周縁部分16にて、低温の給水2と高温の炉水7とが合流されることを防止し、以て、ノズル本体11の開口周縁部分16に疲労破壊が起こるのを防止させるようにしている。
【0006】
しかし、セーフエンド15とサーマルスリーブ17との間には、ニッケル基合金製などのシール18が取付けられているので、異種金属の間に生じる電位差によって、シール18部分に腐食が発生することから、セーフエンド15やサーマルスリーブ17は検査し、必要となれば補修しなければならないものとされている。
【0007】
しかし、セーフエンド15とサーマルスリーブ17を補修する作業は、手間が掛るため、又、原子炉圧力容器1の製造当時は、技術的な問題から別体型とせざるを得なかったところ、技術の進歩により今日では一体型で構成することが可能となったため、腐食等の問題がなく、より寿命の長いサーマルスリーブ一体型のセーフエンドに交換することが可能となっている。
【0008】
サーマルスリーブ一体型のセーフエンドへの交換手段は、先ず、溶接部13でノズル本体11から古いセーフエンド15を切断し、次に、図7に示すように、切断されたノズル本体11の先端部分に、サーマルスリーブ取付部19を備えた炭素鋼製の新しいセーフエンド20を溶接して(溶接部21)、溶接後に溶接部21に対し溶接の余熱が残っているうちに溶接後熱処理を行い、最後に、図8に示すように、炭素鋼製のセーフエンド20のサーマルスリーブ取付部19に炭素鋼製の新しいサーマルスリーブ22を溶接して(溶接部23)、セーフエンド20とサーマルスリーブ22とを一体化し、溶接部23に対し溶接後熱処理を行うというものである。
【0009】
このように、セーフエンド20とサーマルスリーブ22とを一体化したものに交換することによって、ニッケル基合金製などのシール18がなくなるので、腐食等の問題がなくなり、より長寿命化を得ることができるようになる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記サーマルスリーブ一体型のセーフエンドへの交換手段には、以下のような問題があった。
【0011】
即ち、低合金鋼製のノズル本体11の先端部分と、炭素鋼製の新しいセーフエンド20との異材間を現地で直接溶接するようにしているが、低合金鋼と炭素鋼との間の溶接は難しく、低合金鋼は異材間の溶接により熱影響部割れを起こす可能性があるので、熱影響部割れを防止するために、溶接の余熱が残っているうちに直ちに溶接後熱処理を行わなければならず、溶接後熱処理が大変である。
【0012】
又、炭素鋼製の新しいセーフエンド20のサーマルスリーブ取付部19に炭素鋼製の新しいサーマルスリーブ22を溶接した後にも別に溶接後熱処理が行われるので(こちらは炭素鋼どうしの溶接となるので、一旦、溶接部23が室温にまで落ちてから溶接後熱処理を行うようにしても何ら支障はないが)、面倒な溶接後熱処理を二度行わなければならず、手間が掛る。
【0013】
加えて、ノズル本体11の先端部分と新しいセーフエンド20との溶接部21は、ノズル本体11の容器本体4内面側における開口周縁部分16に近いので、溶接後熱処理を行う際に、開口周縁部分16の温度が上がって、低合金鋼の降伏点を越えてしまうこととなり、開口周縁部分16に残留応力が生じてしまう。
【0014】
本発明は、上述の実情に鑑み、溶接後熱処理を一度で済ませるようにすると共に、ノズル本体の開口周縁部分に溶接後熱処理による残留応力が生じるのを防止し得るようにした原子炉圧力容器給水ノズルのセーフエンド部交換方法及び交換部構造を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、原子炉圧力容器1の給水ノズル3のノズル本体11から一部を所要量だけ残した状態で炭素鋼製の古いセーフエンド15を切断し、切断し残された旧セーフエンド残留部24に、炭素鋼製の新しいセーフエンド25を溶接し、旧セーフエンド残留部24とセーフエンド25との溶接部26に対し、溶接後熱処理を施すようにすることを特徴とする原子炉圧力容器給水ノズルのセーフエンド部交換方法にかかるものである。
【0016】
又、本発明は、原子炉圧力容器1の給水ノズル3のノズル本体11から一部を所要量だけ残した状態で炭素鋼製の古いセーフエンド15を切断し、切断し残された旧セーフエンド残留部24に、サーマルスリーブ取付部19を備えた炭素鋼製の新しいセーフエンド25を溶接し、セーフエンド25のサーマルスリーブ取付部19に炭素鋼製の新しいサーマルスリーブ22を溶接して、セーフエンド25とサーマルスリーブ22とを一体化し、旧セーフエンド残留部24とセーフエンド25との溶接部26及びサーマルスリーブ取付部19とサーマルスリーブ22との溶接部23に対し同時に、溶接後熱処理を一回だけ施すようにすることを特徴とする原子炉圧力容器給水ノズルのセーフエンド部交換方法にかかるものである。
【0017】
更に、本発明は、原子炉圧力容器1の給水ノズル3のノズル本体11先端部分に旧セーフエンド残留部24を備え、旧セーフエンド残留部24に、炭素鋼製の新しいセーフエンド25を溶接固定したことを特徴とする原子炉圧力容器給水ノズルのセーフエンド部交換部構造にかかるものである。
【0018】
更に又、原子炉圧力容器1の給水ノズル3のノズル本体11先端部分に旧セーフエンド残留部24を備え、旧セーフエンド残留部24に、サーマルスリーブ取付部19を備えた炭素鋼製の新しいセーフエンド25を溶接固定し、セーフエンド25のサーマルスリーブ取付部19に炭素鋼製の新しいサーマルスリーブ22を溶接固定したことを特徴とする原子炉圧力容器給水ノズルのセーフエンド部交換部構造にかかるものである。
【0019】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0020】
セーフエンド25とサーマルスリーブ22とを一体化したものに交換することによって、ニッケル基合金製などのシールがなくなるので、腐食等の問題がなくなり、より長寿命化を得ることができるようになる。
【0021】
そして、低合金鋼製のノズル本体11の先端部分に、古いセーフエンド15の一部を所要量残す(旧セーフエンド残留部24)ようにしているので、炭素鋼製の旧セーフエンド残留部24と、炭素鋼製の新しいセーフエンド25という同種素材間を溶接することとなり、炭素鋼どうしの溶接は、低合金鋼と炭素鋼との溶接と異なり、溶接の余熱が残っている間に直ちに溶接後熱処理を行わなくとも、溶接による熱影響部割れが生じないので、一旦、溶接部26を室温にまで落とすことが可能となる。
【0022】
その後、新しいセーフエンド25のサーマルスリーブ取付部19に炭素鋼製の新しいサーマルスリーブ22を溶接した後で溶接部23に溶接後熱処理が行われるので、このとき溶接部26と溶接部23との溶接後熱処理を同時に行わせるようにすることにより、溶接後熱処理を一度で済ませることが可能となる。
【0023】
しかも、サーマルスリーブ取付部19とサーマルスリーブ22の溶接は、炭素鋼どうしの溶接となるので、一旦、溶接部23が室温にまで落ちてから溶接後熱処理を行うようにしても何ら支障はなく、従って、一度の溶接後熱処理は、都合の良い時に行うようにすることができる。
【0024】
加えて、古いセーフエンド15と新しいセーフエンド25との溶接部26は、旧セーフエンド残留部24の長さの分だけ、ノズル本体11の容器本体4内面側における開口周縁部分16からの距離が遠くなるので、溶接後熱処理を行った際の開口周縁部分16の温度が低くなる。そこで、旧セーフエンド残留部24を、溶接後熱処理により開口周縁部分16の温度が低合金鋼の降伏点を越えない所要の長さとすることにより、開口周縁部分16に溶接後熱処理による残留応力が生じるのを防止することができるようになる。
【0025】
このように本発明によれば、溶接後熱処理を一度で済ませるようにすることができると共に、ノズル本体11の開口周縁部分16に残留応力が生じるのを防止することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図示例と共に説明する。
【0027】
図1〜図3は、本発明の実施の形態の一例である。
【0028】
給水ノズル及びセーフエンド部分の基本的な構造については、図5〜図8と同様であるため、同一の部分については同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0029】
本発明にかかるサーマルスリーブ一体型のセーフエンドへの交換手段は、先ず図2に示すように、ノズル本体11から一部を所要量だけ残した状態で炭素鋼製の古いセーフエンド15を切断し(旧セーフエンド残留部24)、次に、図3に示すように、切断し残された旧セーフエンド残留部24に、サーマルスリーブ取付部19を備えた炭素鋼製の新しいセーフエンド25を溶接し(溶接部26)、最後に、図1に示すように、セーフエンド25のサーマルスリーブ取付部19に炭素鋼製の新しいサーマルスリーブ22を溶接して(溶接部23)、セーフエンド25とサーマルスリーブ22とを一体化し、最後に、旧セーフエンド残留部24とセーフエンド25との溶接部26及びサーマルスリーブ取付部19とサーマルスリーブ22との溶接部23に対し同時に、溶接後熱処理を一回だけ行うようにする。
【0030】
このように、セーフエンド25とサーマルスリーブ22とを一体化したものに交換することによって、ニッケル基合金製などのシール18がなくなるので、腐食等の問題がなくなり、より長寿命化を得ることができるようになる。
【0031】
そして、低合金鋼製のノズル本体11の先端部分に、古いセーフエンド15の一部を所要量残す(旧セーフエンド残留部24)ようにしているので、炭素鋼製の旧セーフエンド残留部24と、炭素鋼製の新しいセーフエンド25という同種素材間を溶接することとなり、炭素鋼どうしの溶接は、低合金鋼と炭素鋼との溶接と異なり、溶接の余熱が残っている間に直ちに溶接後熱処理を行わなくとも、溶接による熱影響部割れが生じないので、一旦、溶接部26を室温にまで落とすことが可能となる。
【0032】
その後、新しいセーフエンド25のサーマルスリーブ取付部19に炭素鋼製の新しいサーマルスリーブ22を溶接した後で溶接部23に溶接後熱処理が行われるので、このとき溶接部26と溶接部23との溶接後熱処理を同時に行わせるようにすることにより、溶接後熱処理を一度で済ませることが可能となる。
【0033】
しかも、サーマルスリーブ取付部19とサーマルスリーブ22の溶接は、炭素鋼どうしの溶接となるので、一旦、溶接部23が室温にまで落ちてから溶接後熱処理を行うようにしても何ら支障はなく、従って、一度の溶接後熱処理は、都合の良い時に行うようにすることができる。
【0034】
加えて、古いセーフエンド15(旧セーフエンド残留部24)と新しいセーフエンド25との溶接部26は、旧セーフエンド残留部24の長さの分だけ、ノズル本体11の容器本体4内面側における開口周縁部分16からの距離が遠くなるので、溶接後熱処理を行った際の開口周縁部分16の温度が低くなる。そこで、旧セーフエンド残留部24を、溶接後熱処理により開口周縁部分16の温度が低合金鋼の降伏点を越えない所要の長さとすることにより、開口周縁部分16に溶接後熱処理による残留応力が生じるのを防止することができるようになる。
【0035】
このように本発明によれば、溶接後熱処理を一度で済ませるようにすることができると共に、ノズル本体11の開口周縁部分16に残留応力が生じるのを防止することができる。
【0036】
尚、本発明は、上述の実施の形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の原子炉圧力容器給水ノズルのセーフエンド部交換方法及び交換部構造によれば、溶接後熱処理を一度で済ませるようにすると共に、ノズル本体の開口周縁部分に溶接後熱処理による残留応力が生じるのを防止することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例の部分拡大側方断面図である。
【図2】給水ノズルの交換手順を示す作動図である。
【図3】図2に続く作動図である。
【図4】原子炉圧力容器の概略全体側断面図である。
【図5】従来例の部分拡大側方断面図である。
【図6】サーマルスリーブを取付けた別の従来例の部分拡大側方断面図である。
【図7】現在検討中の給水ノズルの交換手順を示す作動図である。
【図8】図7に続く作動図である。
【符号の説明】
1 原子炉圧力容器
3 給水ノズル
11 ノズル本体
15 古いセーフエンド
19 サーマルスリーブ取付部
22 サーマルスリーブ
23,26 溶接部
24 旧セーフエンド残留部
25 新しいセーフエンド
Claims (4)
- 原子炉圧力容器(1)の給水ノズル(3)のノズル本体(11)から一部を所要量だけ残した状態で炭素鋼製の古いセーフエンド(15)を切断し、切断し残された旧セーフエンド残留部(24)に、炭素鋼製の新しいセーフエンド(25)を溶接し、旧セーフエンド残留部(24)とセーフエンド(25)との溶接部(26)に対し、溶接後熱処理を施すようにすることを特徴とする原子炉圧力容器給水ノズルのセーフエンド部交換方法。
- 原子炉圧力容器(1)の給水ノズル(3)のノズル本体(11)から一部を所要量だけ残した状態で炭素鋼製の古いセーフエンド(15)を切断し、切断し残された旧セーフエンド残留部(24)に、サーマルスリーブ取付部(19)を備えた炭素鋼製の新しいセーフエンド(25)を溶接し、セーフエンド(25)のサーマルスリーブ取付部(19)に炭素鋼製の新しいサーマルスリーブ(22)を溶接して、セーフエンド(25)とサーマルスリーブ(22)とを一体化し、旧セーフエンド残留部(24)とセーフエンド(25)との溶接部(26)及びサーマルスリーブ取付部(19)とサーマルスリーブ(22)との溶接部(23)に対し同時に、溶接後熱処理を一回だけ施すようにすることを特徴とする原子炉圧力容器給水ノズルのセーフエンド部交換方法。
- 原子炉圧力容器(1)の給水ノズル(3)のノズル本体(11)先端部分に旧セーフエンド残留部(24)を備え、旧セーフエンド残留部(24)に、炭素鋼製の新しいセーフエンド(25)を溶接固定したことを特徴とする原子炉圧力容器給水ノズルのセーフエンド部交換部構造。
- 原子炉圧力容器(1)の給水ノズル(3)のノズル本体(11)先端部分に旧セーフエンド残留部(24)を備え、旧セーフエンド残留部(24)に、サーマルスリーブ取付部(19)を備えた炭素鋼製の新しいセーフエンド(25)を溶接固定し、セーフエンド(25)のサーマルスリーブ取付部(19)に炭素鋼製の新しいサーマルスリーブ(22)を溶接固定したことを特徴とする原子炉圧力容器給水ノズルのセーフエンド部交換部構造。
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