JP3766762B2 - マグネトロンスパッタリング方法および装置 - Google Patents

マグネトロンスパッタリング方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬質保護皮膜、透明導電性皮膜、磁気記録皮膜などの成膜に使用されるマグネトロンスパッタリング方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年需要が急増している各種半導体装置や磁気記録媒体、あるいは磁気記録ヘッド、ディスプレーパネル、プリンターヘッドその他の電子部材用の薄膜、あるいは摺動部材や工具、金型への硬質皮膜、磁気・光学部品などへの硬質保護膜の形成には、広くスパッタリングによる成膜手法が採用されている。スパッタリングを利用した該成膜手法の特徴としては、安定した品質の膜が再現性よく成膜できること、大面積の基板への成膜が比較的容易であること、様々の合金や化合物を用いた成膜が可能であること、等が挙げられる。
【0003】
上記スパッタリング法の中でも、ターゲットの背後に配置したマグネットによる磁界でターゲット表面にプラズマを収束させる様にした所謂マグネトロンカソードを用いたマグネトロンスパッタリング法は、成膜速度が速く且つ量産性にも優れていることから、一般に広く採用されている。また、その特徴を更に高めるため、ターゲット裏面に配置される永久磁石や電磁石の強度を高めてターゲット表面の磁場を強くする方法、ターゲットに供給される直流電力に高周波電力を印加してプラズマ密度を高めスパッタリングの効率を高める方法など、幾つかの改良研究も進められている。
【0004】
この種のマグネトロンスパッタリング法では、成膜に用いるターゲット材の背面に、逆極性を有する2対の磁極からなる永久磁石または電磁石を配置し、ターゲット全面に漏洩磁場を形成することによってイオン化率を高める所謂マグネトロンスパッタリングカソードを用いており、効率的なイオン化による高密度プラズマの形成と高速スパッタリングを可能にしている。通常のマグネトロンスパッタリングカソードでは上記対向する磁極から発生する磁束がちょうど釣り合って、磁力線がターゲット前面の空間で閉じる様に設計されている。そしてターゲット面上の空間で発生するプラズマは、この閉じた磁力線によって強くトラップされターゲット面近傍に収束している。そして、スパッタリングされて基板上に堆積することにより形成される薄膜は、プラズマの分布しているターゲット近傍の領域から離れた場所でプラズマの影響を受けないで成長させることも可能であり、高速でしかも低ダメージの成膜を可能にしている。
【0005】
一方、上記の通常のマグネトロンスパッタリングとは異なった所謂アンバランスドマグネトロンスパッタリング方法も知られている。この方法は、通常のマグネトロンスパッタリング法(以下、バランスドマグネトロンスパッタリング法と記す)を用いて成膜する際に、非平衡な磁場分布を有するマグネトロンカソードを使用するところに特徴を有している。
【0006】
ここで非平衡な磁場分布を有するマグネトロンカソードとは、図1に略示如く、スパッタリングターゲット1表面を通る平面のうち、スパッタリングカソードを構成する永久磁石Mまたは電磁石EMの磁極をすべて含む最小の半無間円柱または角柱領域によって切られる領域での漏洩磁場の、当該平面に対する垂直成分の積分値がゼロでない値を有するように設計された所謂アンバランスドマグネトロンカソードであり(図中、符号2は基板、3はバッキングプレート、4は鉄ヨークを示している)、これまでのバランスドマグネトロンカソードの設計に見られる様な、ターゲット1の面を貫通する特定の磁極、例えばN極からの磁束とS極への磁束との釣り合いを意図的に崩したところに特徴を有している。
【0007】
この様なアンバランスドマグネトロンカソードは、例えば「J. Vac. Sci.Technol. A4(2),pp186−202,1986」にも示されている様に、従来は成膜速度の向上や基板バイアス印加時のイオン電流の増大を目的として硬質皮膜の形成などに用いられている。
【0008】
非平衡な磁場分布を実現する方法としては、バランスドマグネトロンカソードの外周部に設置した電磁石(図1の符号EMなど)を動作させる方法や、外周部に可動式の永久磁石を設置してその位置を変える方法などがある。更に、バランスドマグネトロンカソードとして用いられるフェライト磁石の一部を、例えば希土類−コバルト系或いは希土類−鉄−ホウ素系の如き強力な磁石に置換する方法もある。
【0009】
そして、非平衡な磁場分布を有するアンバランスドマグネトロンカソードを用いた場合は、従来のバランスドマグネトロンカソードにおいて釣り合いが取られていた磁場のバランスを意図的に崩すことによって、ターゲットから基板方向に向かう磁力線を形成し、ターゲット近傍で発生したプラズマの磁力線に沿った拡散を促進することにより、基板近傍でのプラズマ密度を高めることが可能になる。
【0010】
またプラズマ密度の上昇により、高温の電子ガスによる基板表面の加熱効果、反応性スパッタリングにおける反応の促進、更には、基板に負の電圧を印加しプラズマ中の正イオンを基板方向に加速して薄膜へ照射するバイアススパッタリングでのイオン照射の増加、などの効果を得ることができるので、これまで高温の基板上での成膜が必要とされていた薄膜形成の低温化、あるいは基板バイアス印加による硬質膜形成での膜硬度の向上、などの効果が期待される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
アンバランスドマグネトロンスパッタリングでは、ターゲット表面近傍で形成されたプラズマの基板近傍への拡散を促し、基板上に形成される薄膜に対してプラズマの作用を促進させることにより、従来のバランスドマグネトロン方法では実現することのできない成膜の低温化、あるいはバイアススパッタリングにおける硬質膜の硬度上昇など、所謂プラズマアシスト効果を得ることが可能となることは前述の通りである。
【0012】
また、アンバランスドマグネトロンカソードで形成される磁場は、バランスドマグネトロンカソードで形成される磁場分布とは異なり、ターゲットから基板方向に伸びる磁力線が形成されていることが大きな特長となっている。その結果として、ターゲット表面付近で形成されたプラズマがこの磁力線に沿って基板方向へ拡散し、基板近傍でのプラズマ密度の上昇を実現している。
【0013】
上記プラズマの拡散は、アンバランスドマグネトロンカソードにおける最大の特長となっているが、本発明者らが種々研究を進めるうち、現状のアンバランスドマグネトロンカソードを使用すると大きな問題を生じることが確認された。即ち、従来のバランスドマグネトロンカソードを用いて成膜した場合に問題とならなかった「基板面内での膜質不均質」の問題がしばしば生じることである。
【0014】
例えば、アンバランスドマグネトロンカソードを用いて成膜されたインジウム錫酸化物透明導電膜(ITO膜)では、比抵抗が基板面内で不均一になるという問題が生じる。また近年、摺動部材、金型、切削工具類、耐摩耗性機械部品、研磨材、磁気・光学部品の如き各種部材の保護膜として利用されつつあるダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)では、膜の硬度が基板面内で不均一な分布を持ってしまうという問題も生じることが分かった。
【0015】
基板面内での膜質の不均一分布は、現状のアンバランスドマグネトロンカソードを用いた場合でも、例えば基板サイズに対してターゲットサイズを極端に大きくすることにより緩和できるが、この方法では、装置サイズを極端に大きくしなければならなくなるばかりでなく、成膜効率も極端に低下するので実用性を欠く。
【0016】
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、アンバランスドマグネトロンスパッタリングの前述した特長を維持しつつ、また、通常のスパッタリング手法で用いられるのと実質的に同等の大きさの基板面内で、均一な膜質を確実に得ることのできるマグネトロンスパッタリング方法と装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明に係るマグネトロンスパッタリング方法とは、基板上に膜を形成するためのマグネトロンスパッタリング方法であって、基板の全面に垂直磁場を作用させてスパッタリングを行なうところに要旨が存在する。またこの発明を別の観点からみると、基板上に膜を形成するためのマグネトロンスパッタリング方法であって、基板を、当該基板面に対し水平な磁場を形成する位置から外してスパッタリングを行なう方法である点においてもその特徴を見出すことができる。
【0018】
この方法を実施する際に用いられるスパッタリングカソードとしては、非平衡な磁場分布を形成するアンバランスドマグネトロンスパッタカソードが好ましく、またカソード部に配置される永久磁石または電磁石の磁極数を3極以上とすれば、本発明をより効率よく遂行し易くなるので好ましい。
【0019】
上記本発明の方法は、様々の種類の基材および膜素材に適用することができ、それらの種類は特に制限されないが、本発明によってもたらされる膜質の均一化という特徴を有効に活かす意味から、特に透明導電性薄膜やダイヤモンドライクカーボン薄膜などの形成に極めて有効である。
【0020】
また本発明に係るマグネトロンスパッタ装置は、上記方法の実施に有効に利用される装置の構成を特定するもので、第一の構成は基板上に膜を形成するためのマグネトロンスパッタリング装置であって、該スパッタリング装置内の基板配置位置が、当該基板の全面に垂直磁場が形成される位置に設定され、あるいは、該スパッタリング装置内における基板配置位置を、水平磁場形成位置から外れる位置に設定してなるところに特徴を有している。
【0021】
【発明の実施の形態】
前述の如くアンバランスドマグネトロンカソードでは、ターゲット近傍で生成したプラズマを従来のバランスドマグネトロンカソードの様にターゲット近傍に収束させるのではなく、カソードからの磁場のバランスを意図的に崩すことによって基板近傍にまで拡散させている。このことが、アンバランスドマグネトロンスパッタリング法を採用した成膜の特長であるプラズマアシストを可能にしている。
【0022】
しかしながら、このプラズマアシスト効果が基板面内で均一に作用しているという保証はなく、このことが、基板面内で膜質が不均一分布を生じる原因になっていると考えられる。このことを図2を用いて説明すると、図2は一軸対称の円形アンバランスドマグネトロンカソードにおけるプラズマの拡散状態を示す右半部模式図であり、プラズマは、ターゲット1上における漏洩磁場強度の高い図中のA部分で生成され、生成したプラズマは逐次基板2方向へと拡散していく。
【0023】
先に説明した様に、基板2上に形成される薄膜に及ぼすプラズマアシスト効果は、基板2直近からの高温電子ガスによる加熱効果、あるいは基板バイアスを基板1に印加してプラズマ中からイオンを引き込み、基板2を照射しながら成膜されるときのイオン照射効果であるため、いずれの場合も、基板2直近でのプラズマ密度が重要になってくると思われる。
【0024】
そして、アンバランスドマグネトロンカソードを用いた従来法を採用したときに、基板面内で膜質の不均一分布を生じる原因は、この成膜手法を採用する際に、基板面内でのプラズマアシスト効果を均一にする為の手だてが講じられていないためと思われ、こうした膜質の不均一分布を軽減するには、基板近傍でのプラズマの密度を可及的に均一化することが必要と思われる。
【0025】
そこで本発明者らは、基板近傍でのプラズマ形成状況の確認を含めて更に詳細に検討を進めた。
【0026】
その結果、
1)図2に示した様なアンバランスドマグネトロンカソードでは、図中のA領域生成したプラズマは、両極性拡散と呼ばれる拡散により実線矢印で示した磁力線に沿って基板近傍にまで拡散していくこと、
2)そしてこの図で説明すると、基板近傍までの拡散パスとして、白抜き矢印で示す如く左右の磁力線に沿った拡散パスが形成され、その結果、プラズマは基板2面上のB領域に集中的に拡散していくこと、
3)この様なプラズマの集中は、プラズマの拡散が磁力線に沿って生じるため、磁力線が基板2面上で収束している場所、つまり基板2面内で磁力線が基板面に平行になっている場所、換言すると磁場の基板面に垂直な成分がゼロになる領域で生じること、
4)従って、基板2面上でこの様な磁力線の収束領域ができない様にすれば、プラズマの集中が回避され、基板面全域で均一なプラズマアシスト効果が得られること
が確認された。
【0027】
本発明はこうした知見に基づいてなされたもので、基本的には、図2に示した様に、基板2面上で磁力線の収束領域ができない様にしてプラズマの集中を回避し、プラズマアシスト効果を基板面全域に均一に作用させ得るようにしたところにあり、そのための具体的な手段として、基板の全面に当該基板面に対して垂直な磁場を作用させることによって、磁場の基板面に垂直な成分がゼロになる場所を無くし、言い換えると、基板を当該基板面に対し水平な磁場を形成する位置から外してスパッタリングを行なえば、上記の様な磁力線の収束領域ができなくなり、基板全面に亘って均一な皮膜形成が可能になることを確認したのである。
【0028】
そして、磁場の基板面に垂直な成分がゼロになる場所をなくし、基板面の全域に当該基板面に対して垂直な磁場を確実に作用させには、スパッタリング装置を構成するカソード、コイルあるいはその他の永久磁石や電磁石によって生じる磁力に応じて、当該装置内の基板配設位置を、当該基板面に対し水平な磁場を形成する位置から外れる位置に設定すればよい。
【0029】
そのための手段は特に制限されないが、好ましい具体策としては、
▲1▼アンバランスドマグネトロンカソードにおけるN極およびS極のいずれか一方の磁力を十分に大きくし、且つターゲットと基板間の距離を適切な値に設定し、あるいは、
▲2▼磁極の数を通常の2極から3極以上に増加すると共にそれらの磁力を調整し、且つ基板を適切な位置に配設し、あるいは
▲3▼付加コイルを使用し、基板に対して垂直方向への磁場を印加することにより、基板面内における磁場の垂直方向成分を一定の方向に偏向させる方法
などを採用すればよい。
【0030】
また装置の構成上可能であれば、基板の裏側、つまりターゲットに面していない反対側の面に磁石またはコイルを配置し、基板面内における磁場の垂直方向成分を一定の方向に偏向させる方法を採用することも有効である。
【0031】
本発明によれば、様々の金属や合金、セラミックスなどからなる基板や膜形成素材(ターゲット材)を用いて、上記の様に基板面に形成される膜の全面に亘る膜質を均一にすることができるので、こうした特長を活かして様々の用途に幅広く有効に活用できる。具体的には、各種半導体装置、磁気記録媒体あるいは磁気記録ヘッド、ディスプレーパネル、プリンターヘッドその他の電気・電子部品を加工する際の薄膜形成、あるいは摺動部材や工具、金型への硬質皮膜の形成、磁気・光学部品への硬質保護膜の形成などに幅広く活用できる。
【0032】
中でも、フラットディスプレーパネルや太陽電池の透明電極用として使用する際に形成される透明導電性薄膜には、表面全域で均質な導電性を有する薄膜が求められ、また、各種金型用耐摩耗保護膜、工具用硬質膜、磁気記録媒体用保護膜などの表面に形成される硬質皮膜として最近ダイヤモンドライクカーボン薄膜が注目されており、該薄膜の特長を活かす上でも高い均質性が求められるが、本発明は、これら透明導電性薄膜やダイヤモンドライクカーボン薄膜などの形成に極めて有効に活用できる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に設計を変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0034】
実施例1
アンバランスドマグネトロン(以下、UBMと略記する)スパッタリングカソードを用いて透明導電性(ITO:Indium Tin Oxide)薄膜の形成を行なった。UBMスパッタリングカソードとしては、図3に示した標準のUBMカソードである非平衡マグネトロンカソードAを用いた。図中、1はターゲット、3は鉄ヨーク、4は銅製バッキングプレート、5はアースシールドであり、ターゲット1の上方に所定の間隔を空けて配置される基板は図面に現われていない。またターゲット1の素材としては、高密度の焼結ITOターゲットを使用し、成膜条件は下記の通りとした。
【0035】
スパッタリングガス圧:1mtorr
酸素分圧:5×10-6torr
基板:CORNING #1737(コーニング社製)、厚さ0.5mm
基板温度:200℃
基板加熱法:ランプヒーターによる加熱
基板−ターゲット間距離:75mm
ターゲットサイズ:直径6インチ、厚さ5mm
成膜パワー:350WDC放電
ITO膜厚:2,000Å。
【0036】
この時の基板上での垂直磁場の測定結果を図7に示す。また、得られたITO膜の比抵抗の測定結果を図18に示す。これらの図からも明らかな様にこの実施例では、本発明で必須の要件として定める基板面内の全領域で垂直磁場が形成されているため、均一な膜質のITO膜が形成されている。
【0037】
比較例1
基板とターゲット間の距離を50mmに変えた以外は、上記実施例1と同じ条件でITO膜を形成した。従って、使用したUBMカソードは、図3に示した非平衡マグネトロンカソードAである。この時の基板上での垂直磁場の測定結果を図8に、また得られたITO膜の比抵抗の測定結果を図19に示す。
【0038】
この例では、図14として示したベクトルポテンシャル分布図からも明らかな様に、カソード磁石から伸びてくる磁力線の一部が基板面近傍でループを形成しており、基板面内の中心から半径約23mm離れた位置付近で磁場の垂直成分がゼロとなり、「基板全面に垂直磁場を作用させる」という本発明の要件を満たしていないため、図19に示す如くITO膜の膜質は直径方向で不均一になっている。
【0039】
比較例2
前記実施例1および比較例1で用いたのと同じ非平衡マグネトロンカソードAを使用し、ターゲットしては高密度の焼結カーボンターゲットを用いてダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜の形成を行なった。成膜条件は下記の通りとした。
【0040】
スパッタリングガス圧:3mtorr
基板:ポリッシュ超硬基板
基板温度:室温(裏面水冷)
基板−ターゲット間距離:50mm
ターゲットサイズ:直径6インチ、厚さ5mm
成膜パワー:1000WDC放電
DLC膜厚:8,000Å
基板バイス:−200V。
【0041】
この場合は、前記比較例1と同様に、基板上での垂直磁場は基板面内の半径約23mm付近で磁場の垂直成分がゼロになる(図14参照)。即ち、磁場の垂直成分が基板面内でゼロになってしまう領域が存在し本発明の要件を満たしていないため、図20に示す如くDLC膜の膜質が不均一になり、基板上での磁場の垂直成分がゼロである領域でDLC膜の硬度が高くなっている。これは、該領域でプラズマ密度が高くなり、基板バイアス印加によるイオン照射の作用が強く働いたためと考えられる。
【0042】
実施例2
UBMカソードとして、図4に示す構造の非平衡マグネトロンカソードB(図中の符号1〜5は前記と同じ意味、符号6は空芯コイルを表わす)を用いた以外は、前記比較例1と同じ条件でITO膜を形成した。この非平衡マグネトロンカソードBでは、図4に示す如く、標準的UBMカソードの外周部に空芯コイル6を配置し、10Aのコイル電流によりターゲット1から基板(図4におけるターゲット1の上方50mmの位置に配置されている)に向かって一方向の磁場を加えた。この時の基板上での垂直磁揚の測定結果を図9に、また、得られたITO膜の比抵抗の測定結果を図21に示す。
【0043】
この例では、図15に示したベクトルポテンシャル分布からも明らかな様に、空芯コイル6からの磁場を印加することにより磁力線の分布を修正し、基板2面内での磁場の垂直成分がゼロになる領域を無くしているため、ITO膜の膜質不均一が解消されている。
【0044】
実施例3
UBMカソードとして図5(図中の符号は前記と同じ意味を表わす)に示す構造の非平衡マグネトロンカソードCを使用した以外は、前記比較例1と同じ条件でITO膜を形成した。この非平衡マグネトロンカソードCでは、標準的UBMカソードである前記非平衡マグネトロンカソードAにおけるセンター磁極(図3中でSと記載されている磁極)を小さくする一方、外周側のリング磁石(図3中でNと記載されている磁極)を大きくしている。この時の基板上での垂直磁場の測定結果を図10に、また、得られたITO膜の比抵抗の測定結果を図22に示す。
【0045】
これらの図からも明らかな様に、本例では、S,N磁極の大きさ調整によって前記実施例2と同様に磁力線の分布が修正され、基板面内での磁場の垂直成分がゼロになる領域を無くすことにより、得られるITO膜の膜質不均一が解消されている。
【0046】
実施例4
UBMカソードとして図6に示す構造の非平衡マグネトロンカソードDを用いてITO膜の形成を行なった。成膜条件は、前記比較例1と同じにした。
【0047】
この非平衝マグネトロンカソードDでは、標準的UBMカソードである前記非平衡マグネトロンカソードAにおける磁極を、図6に示す如く2極から3極に変更し、図中の磁石Ma,Mb,Mcとして夫々Sm・Co磁石、フェライト磁石、Sm・Co磁石を用いた。また磁極の向きを内側から順にN,S,Nとなる様に配置した。このカソードを用いたときの基板上での垂直磁場の測定結果を図11に、また、得られたITO膜の比抵抗測定結果を図23に示す。
【0048】
この実施例では、図16に示すベクトルポテンシャル分布からも明らかな様に、カソード磁極を3極に分割し磁石の配置を適正に調整することによって磁力線の分布が修正され、基板面内での磁場の垂直成分がゼロになる領域を無くしているので、得られるITO膜の膜質不均一が解消されている。
【0049】
比較例3
UBMカソードとして前記図6に示した構造の非平衡マグネトロンカソードDを使用してITO膜の形成を行なった。成膜条件は、前記比較例1と同じとした。
【0050】
本例では、非平衡マグネトロンカソードDの磁石Ma,Mb,Mcとして何れもSm・Co磁石を用いた。また、磁極の向きを内側から順にN,S,Nとなる様に配置した。このカソードを用いたときの基板上での垂直磁場の測定結果を図12に、また、得られたITO膜の比抵抗測定結果を図24に示す。
【0051】
この比較例では、図17に示すベクトルポテンシャル分布からも明らかな様に、磁石の配置と強度が適切でないため磁力線の分布が不適当であり、基板面内で磁場の垂直成分がゼロになる領域が生じている。しかも、図17からも明らかな様に基板外周側にプラズマが拡散してしまうため、ITO膜の膜質が外周側で大幅に低下している。
【0052】
比較例4
前記比較例3で用いたのと同じカソードを使用し、前記比較例2と同じ条件でDLC膜の形成を行なった。このとき、前記比較例3と同様に基板上での垂直磁場は、図12に示す如く基板面内の中心から半径約47mm付近で磁場の垂直成分がゼロになるため、この領域でのプラズマ密度が高くなってDLC膜の硬度が高くなっている。即ちこの比較例でも基板面内の全ての領域で垂直磁場を作用させるという本発明の要件を満たしていないため、均一な膜質のDLC膜を形成できない。
【0053】
実施例5
UBMカソードとして前記図6に示した構造の非平衡マグネトロンカソードDを使用し、DLC膜の形成を行なった。成膜条件は前記比較例2と同一とした。
【0054】
本例では、非平衡マグネトロンカソードDの磁石Ma,Mb,Mcとして、それぞれSm・Co磁石、フェライト磁石、フェライト磁石を使用し、また磁極の向きが内側から順にN,S,Nとなる様に配置した。このカソードを用いたときの基板上での垂直磁場の測定結果を図13に、また得られたDLC薄膜の硬度測定結果を図26に示す。
【0055】
この例では、カソード磁極を3極に分割すると共に各磁石の配置位置を適正にすることにより、磁力線の分布がうまく修正されて基板面内での磁場の垂直成分がゼロになる領域を無くすことができ、得られるDLC膜の膜質不均一が解消されている。
【0056】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、任意の基板表面に、様々の金属や合金、セラミックスなどからなる膜質の均一な薄膜を確実に得ることができるので、透明導電性薄膜やダイヤモンドライクカーボン薄膜などをはじめとして、各種半導体装置、磁気記録媒体あるいは磁気記録ヘッド、ディスプレーパネル、プリンターヘッドその他の電気・電子部品を加工する際の薄膜形成、あるいは摺動部材や工具、金型への硬質皮膜の形成、磁気・光学部品への硬質保護膜の形成などに幅広く活用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】非平衡な磁場分布を有するマグネトロンカソードを用いたスパッタリング状況を示す模式図である。
【図2】非平衡な磁場分布を有するマグネトロンカソードを用いたスパッタリング時のプラズマの拡散状態を示す模式図である。
【図3】実施例で用いた非平衡マグネトロンカソードAの構造を示す説明図である。
【図4】実施例で用いた非平衡マグネトロンカソードBをの構造を示す説明図である。
【図5】実施例で用いた非平衡マグネトロンカソードCの構造を示す説明図である。
【図6】実施例で用いた非平衡マグネトロンカソードDの構造を示す説明図である。
【図7】実施例1における基板面内の垂直磁場分布を示す図である。
【図8】比較例1における基板面内の垂直磁場分布を示す図である。
【図9】実施例2における基板面内の垂直磁場分布を示す図である。
【図10】実施例3における基板面内の垂直磁場分布を示す図である。
【図11】実施例4における基板面内の垂直磁場分布を示す図である。
【図12】比較例3における基板面内の垂直磁場分布を示す図である。
【図13】実施例5における基板面内の垂直磁場分布を示す図である。
【図14】比較例1を実施する際の磁力線のベクトルポテンシャル分布を示す図である。
【図15】実施例2を実施する際の磁力線のベクトルポテンシャル分布を示す図である。
【図16】実施例4を実施する際の磁力線のベクトルポテンシャル分布を示す図である。
【図17】比較例3を実施する際の磁力線のベクトルポテンシャル分布を示す図である。
【図18】実施例1で得たITO膜の、中心位置からの距離と比抵抗の関係を示すグラフである。
【図19】比較例1で得たITO膜の、中心位置からの距離と比抵抗の関係を示すグラフである。
【図20】比較例2で得たDLC膜の、中心位置からの距離と硬度の関係を示すグラフである。
【図21】実施例2で得たITO膜の、中心位置からの距離と比抵抗の関係を示すグラフである。
【図22】実施例3で得たITO膜の、中心位置からの距離と比抵抗の関係を示すグラフである。
【図23】実施例4で得たITO膜の、中心位置からの距離と比抵抗の関係を示すグラフである。
【図24】比較例3で得たITO膜の、中心位置からの距離と比抵抗の関係を示すグラフである。
【図25】比較例4で得たDLC膜の、中心位置からの距離と硬度の関係を示すグラフである。
【図26】実施例5で得たDLC膜の、中心位置からの距離と硬度の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 スパッタリングターゲット
2 基板
3 バッキングプレート
4 鉄ヨーク
5 アースシールド
M 永久磁石
EM 電磁石

Claims (6)

  1. 基板上に膜を形成するためのアンバランスドマグネトロンスパッタリング方法であって、基板面に垂直な磁場成分がゼロになるような場所を無くすように基板の全面に垂直磁場を作用させてスパッタリングを行なうことを特徴とするアンバランスドマグネトロンスパッタリング方法。
  2. 板を、当該基板面に対し水平な磁場を形成する位置から外ことを特徴とする請求項1に記載のアンバランスドマグネトロンスパッタリング方法。
  3. カソード部に配置される永久磁石または電磁石の磁極数を3極以上とする請求項1または2に記載のアンバランスドマグネトロンスパッタリング方法。
  4. 膜が透明導電性薄膜である請求項1〜のいずれかに記載のアンバランスドマグネトロンスパッタリング方法。
  5. 膜がダイヤモンドライクカーボン薄膜である請求項1〜のいずれかに記載のアンバランスドマグネトロンスパッタリング方法。
  6. 基板上に膜を形成するためのアンバランスドマグネトロンスパッタリング装置であって、該スパッタリング装置内の基板配置位置が、基板面に垂直な磁場成分がゼロになるような場所を無くすように当該基板の全面に垂直磁場が形成される位置に設定されていることを特徴とするアンバランスドマグネトロンスパッタリング装置。
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