JP3765927B2 - 立毛布帛 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然毛皮調の外観及び風合を有する立毛布帛に関する
【0002】
【従来の技術】
アクリル系合成繊維は、獣毛ライクな風合いおよび光沢を有する繊維として天然繊維を想定したハイパイル分野に広く使用されている。元来、獣毛の構成はガードヘアー(上毛)とダウンヘアー(下毛)の二層構造からなっており、ガードヘアーはクリンプのないストレート形状を有することにより毛サバキ性が良くソフトな風合いを与え、またスッキリとした光沢のある外観を与えるといった特徴を有している。一方、ダウンヘアーは元来保温を良くし、かつボリューム感を与えるためにクリンプが付与されている。このような獣毛をそのまま真似たものが合成繊維からなるパイル製品(以下、立毛布帛という)であり、通常、ガードヘアーとダウンヘアーから構成されているが、ガードヘアーの先端部のクリンプは、立毛布帛となってからポリッシャー工程で除去することで獣毛ライクな外観と風合いを与えている。またダウンヘアーのクリンプの大半は除去せずに残しておくのが、ボリューム感を与える上で重要である。
【0003】
しかし従来のアクリル系合成繊維としては、クリンプを付与した後に染色処理を行うのが一般的であり、染色処理を行う工程などで高温の熱履歴を受けたものはポリッシング工程においてにクリンプ除去が困難であった。これらを解決するために、ポリッシング工程においてポリッシングの回数を増加させたり、ポリッシング温度を上昇させたりする方法が一般的には用いられてきたが、ポリッシング回数を必要以上に増加させたり、温度を上昇させることは、クリンプを除去する必要のないダウンヘアーのクリンプまで除去することにつながり、ボリューム感や高級感のない製品となりがちであった。
【0004】
これらの問題を解決するために、例えば特開平8−260289号公報に開示されているような原液着色繊維をパイル用原綿とする方法や特開平9−78378号公報に開示されているように、クリンプ除去性を向上させるため、扁平繊維を用いる方法等の取組がなされているが、繊維の色相や断面形状が限定されるなど大きな問題点を有しており、未だに充分な解決に至っていないのが現状であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来の欠点を改良し、繊維に付与されたクリンプが通常よりも少ないポリッシャー処理回数で容易に除去され、優れた風合いと外観を有する立毛布帛を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、繊維の持つ熱的特性に着目して検討した結果、特定の熱的特性範囲の繊維がクリンプ除去性に極めて優れていることを見いだし、本発明に至った。すなわち本発明の目的は、アクリロニトリル30〜70重量%、ハロゲン化ビニル単量体70〜30重量%および他の重合性ビニル系単量体0〜10重量%を合計100重量%となるように含有した共重合体から湿式紡糸法により製造され、乾燥前のゲル膨潤状態にある繊維に対し5.0倍〜9.0倍の一次延伸を行い、100℃〜140℃で乾燥後さらに110℃〜170℃で0.65〜0.8倍の弛緩熱処理を行うことにより製造され、昇温速度を15±2℃/分とし、繊維の長さ方向に対する荷重を5mg/dとしたときの熱機械分析における下記式(1)により算出される繊維の最大伸び率が2〜10%であり、且つ昇温速度2℃/分とし、初期荷重を33mg/dで、周波数0.05H z 、振動時荷重17 mg /dで引っ張り振動法にて正弦的ひずみを加えて測定した下記式(2)で表される動的粘弾性測定のtanδの最大値が0.47〜0.70であるアクリル系合成繊維を用い、クリンプを付与後、カット処理を行った原綿を作成し、スライバー編機にて編成してなる立毛布帛によって達成される。
最大伸び率(%)=(L max )−(L 0 )/(L 0 )×100・・・(1)
但し、式(1)中、(L 0 )は繊維の最初の長さ、 ( max ) は昇温に際して次第に繊維が伸びた場合の極大値に相当する試料繊維の長さを示す。
tanδ=E″/E′・・・(2)
但し、式(2)中、E′は動的弾性率、E″は動的損失を示す。
【0007】
また、前記アクリル系合成維繊は、繊維の最大伸び率が110〜155℃の温度範囲に存在し、繊維の長さ方向に対して2〜10%であるのが好ましく、また、動的粘弾性測定におけるtanδの最大値は80℃〜120℃の温度範囲に存在するのが好ましい
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明でいう熱機械分析(以下TMAという)とは、物質の温度を一定の変化率に従って変化させながら、非振動的な荷重のもとで、物質の変形を温度又は時間の関数として測定する方法であり、例えばJIS−K7196に代表される試験方法を用いることができる。本発明においては、繊維の長さ方向に一定の荷重を与え、一定の速度で昇温した際に繊維の変形の度合いを測定する方法が好ましい。測定温度範囲は室温から所望の温度まで上昇させることができるが、アクリル系合成繊維の場合は、通常200℃程度までで、充分に目的とする伸び率に関するデータを得ることが出来る。また測定において、繊維試料の周囲の雰囲気は空気の他に、窒素や不活性ガスなどを用いても良い。
【0010】
ここで、繊維の最大伸び率とは、一定荷重を与えられた試料繊維の最初の長さを(L0)とした時、昇温に際して次第に繊維が伸びた場合の極大値に相当する試料繊維の長さを(Lmax)とし、次式により算出される。
最大伸び率(%)=(Lmax)−(L0)/(L0)×100
尚、昇温に際して試料繊維が大きく収縮することがあるが、その後に再度伸びた場合の伸び率は、本発明でいう最大伸び率には含まれない。
【0011】
本発明においては、TMAの昇温速度を15±2℃/分とし、繊維の長さ方向の荷重5mg/dを与え、空気中の条件下で分析を行う場合に、熱による繊維の伸び率が2〜10%を示すことが必要であるが、110〜155℃の温度範囲で繊維の長さ方向に対して伸び率が2〜10%を示すのがより好ましい。伸び率が2%未満では、ポリッシング工程におけるクリンプ除去効果が不十分で、10%を超えるとクリンプ除去効果は有るが、ダウンヘアーのクリンプまで除去されやすく、立毛布帛の形態安定性が悪く好ましくない。
【0012】
本発明でいう動的粘弾性測定とは、一定周波数の引っ張り振動又は曲げ振動を試料に与え、温度上昇による変化を試験する方法であって、例えばJIS−K7198に代表される粘弾性測定方法などがあげられるが、繊維を測定する場合は引っ張り振動を与える方法を用いるのがより好ましい。ここでいうtanδ(力学的損失正接)はE′(動的弾性率)とE″(動的損失)との比(tanδ=E″/E′)で表されるものである。
【0013】
本発明においては、動的粘弾性測定の昇温速度2℃/分とし、初荷重33mg/dで、周波数0.05Hz、振動時荷重17mg/dで引っ張り振動法にて正弦的ひずみを加えて測定する。また昇温は室温(温度23±2℃)から200℃まで行い、、空気雰囲気中にて測定した場合にtanδ(力学的損失正接)が0.47〜0.70であることが必要であるが、この場合の測定雰囲気は空気以外に窒素や不活性ガスを用いても良い。また80〜120℃の温度範囲でtanδが0.47〜0.70を示すのがより好ましい。tanδは繊維非晶部の構造に対応するパラメータであり、tanδが0.47未満では、立毛布帛の風合いが硬くクリンプ除去効果も不十分で、tanδが0.70を超えると柔らかすぎて直立した立毛布帛が得られず立毛布帛の品位が悪くなり好ましくない。また、tanδの最大値を示す温度は合成繊維の場合は通常80℃以上に存在し得るが、特にアクリル系合成繊維では85℃以上であるのが好ましい、また逆にtanδの最大値を示す温度が120℃を超えるものは染色性が低下する傾向にあり、好ましくない。
【0014】
本発明でいうアクリル系合成繊維とは、アクリロニトリルを主成分とする重合体からなる繊維をいうが、好ましくはアクリロニトリルを30重量%以上を含む共重合体であって、さらに好ましくは、アクリロニトリル30〜70重量%である。アクリロニトリルと共重合可能な単量体としては。例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミドまたはそれらのモノおよびジアルキル置換体、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニルのようなビニルエステル、ビニルピロリドン、ビニルピリジンおよびそのアルキル置換体、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、またはこれらの金属塩類およびアミン塩類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明においては、アクリロニトリル30〜70重量%と塩化ビニル及び/または塩化ビニリデン70〜30重量%と他の重合性ビニル単量体0〜10重量%からなるものがより好ましく、この場合の他の重合性ビニル単量としてはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、またそれらのモノ及びジアルキル置換体;スチレン及びスチレンのα、β置換体;ビニルアセテート、ビニルピドリロン、ビニルピリジン及びそのアルキル置換体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、パラスチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、パラメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、またはこれらの金属塩類およびアミン塩類等を用いることができる。
これらの共重合体を湿式紡糸する溶剤としては、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤が挙げられる。紡糸原液は紡糸性、工程安定性を考慮し、上記の共重合体の最も溶解性の高い有機溶剤で溶解すれば良く、公知の一般的な溶解方法を用いることが出来る。紡糸原液は共重合体濃度20重量%以上として湿式紡糸するのが好ましい。紡糸浴としては、水または水と紡糸原液に用いたのと同じ溶剤を混合した水溶液を用いることができる。
【0015】
本発明においては、乾燥前のゲル膨潤状態(繊維内部に溶剤及び水分を含んだ状態)にある繊維に対し浴中での延伸を行う。延伸方法は特に限定はなく、公知の延伸装置を用いることができるが、延伸倍率は5.0〜9.0倍であるのが好ましい。延伸倍率が5倍未満では弛緩熱処理が十分にかからず、また延伸倍率が9倍を越えると弛緩熱処理での収縮切れを発生するため好ましくない。
【0016】
通常はこの延伸の後、必要に応じて紡糸油剤を付与した後に乾燥緻密化を行う。この乾燥温度としては、特に制限はないが、100℃〜140℃で行うことが好ましく、さらに好ましくは、125℃〜135℃である。次いでこの緻密化されたアクリル系合成繊維を高温下で弛緩熱処理することにより、所望の熱的特性を付与することができるが、弛緩率は0.65倍(35%)〜0.8倍(20%)であるのが好ましい。また弛緩熱処理温度は110℃〜170℃が好ましく、さらに好ましくは130〜160℃である。温度が110℃未満では0.8倍以下(20%以上)の緩和が得られず、170℃を超えると繊維の黄変や膠着等の問題が発生する傾向がある。
【0017】
弛緩熱処理が0.8倍を越える(20%未満)と、十分な伸びと熱安定性が得られず、0.65倍未満(35%を超える)と生産性の低下やエネルギーコストの面から見て好ましくない。このように浴中において高延伸を行い、乾燥後、高弛緩処理を行ったものは低温でのクリンプ付与が可能であるので、そのことがクリンプ除去を容易にしている理由とも考えられている。また、弛緩熱処理は乾熱、飽和水蒸気、加圧水蒸気、過熱水蒸気等のいずれであってもよい。弛緩熱処理後の繊維は、公知の方法により適宜油剤付与、機械クリンプの付与及びカット等の必要な処理、操作を行うことができる。
【0018】
本発明でいうクリンプとは、ギアークリンプ法やスタフィングボックス法などの公知の方法で得られたクリンプをいい、特に限定されるものではないが、好ましいクリンプ形状としては、捲縮度4〜15%、好ましくは5〜10%。クリンプの山数としては6〜15山/インチ、好ましくは8〜13山/インチの範囲であるのが良い。前記した捲縮度とはJIS−L1074に代表される測定法によって得られるものである。
【0019】
本発明に用いるアクリル系合成繊維の繊度は2〜40デニールが好ましく、特に5〜30デニールの範囲が特徴を発揮しやすく好適である。2デニール未満では、繊維が細すぎ腰がなく直立の立毛布帛が得られず、40デニールを超えると繊維が太すぎて風合いの硬い立毛布帛となり好ましくない。また、繊維断面は丸断面のほか、扁平断面、T型、U型、V型、Y型、C型、X型、W型、ドックボーン型、角断面、葉断面、中空断面等限定されず複合繊維などの多成分系繊維であってもよい。なお必要に応じ、これらの繊維には防錆、着色防止、耐候制等に効果のある安定剤等を添加してもよい。
【0020】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は何等これらに限定されるものではない。実施例の記載に先立ち、分析測定条件および評価方法について説明する。
(A)熱機械分析(TMA)
セイコー電子工業(株)製TMA/SS150Cを用い、JISK7196を参考に試料長10mm、トータルデニール3000d、昇温速度15±2℃/分、初荷重5mg/d、測定温度範囲室温(温度23±2℃)〜200℃、空気中のもとで測定を行った。
(B)動的粘弾性測定
熱機械分析同様、セイコー電子工業(株)製TMA/SS150Cを用い、JIS−K7198を参考に試料長10mm、トータルデニール30d、昇温速度2℃/分、測定温度範囲室温(温度23±2℃)〜200℃、空気中、周波数0.05Hz、初荷重33mg/dで17mg/dの荷重を与え正弦波モードにより引っ張り振動をさせながら測定を行った。
(C)立毛布帛の評価
実施例の湿式紡糸により得られた繊維に対し、予熱を82℃、2秒間とし、スタフィングボックス法によりクリンプを付与後、カット処理を行った原綿を作成し、次にオーバーマイヤー染色機を用い染料濃度4重量%で98℃、60分間染色を行った後スライバー編機にて立毛布帛を編成した。次いで120℃でプレポリッシング処理(パイルの方向性の歪みを除くために、予備的に行うポリッシング)とプレシャーリング(パイルの予備的な先端カット処理)を行いパイル長を17mmに揃えた後、パイル裏面にアクリル酸エステル系接着剤でバックコーティングを行った。その後、155℃のポリッシング、続いてブラッシングを行い、さらに135℃、120℃、90℃でポリッシングとシャーリングを組み合わせ、立毛表層部のクリンプを除去することで20mmのパイル長を持つ立毛布帛を作成した。このときポリッシング処理の合計を4回とする時は〜の工程を各1回とし、8回の時は〜の各工程を2回ずつ行った。
【0021】
(クリンプ除去性の評価基準)
前記した立毛布帛に対し、ポリッシャー仕上げ回数を変更した場合の視覚的および感覚的な観点から5名の判定者による官能的評価を行い、以下の基準で評価した。
◎:クリンプが完全に除去され、獣毛状に極めて似た風合いを有する。
○:クリンプの除去性がやや劣る。
△:クリンプの除去性がかなり劣る。
×:クリンプの除去性が劣る。
【0022】
(実施例1〜3)(比較例1〜2)
アクリロニトリル49重量%、塩化ビニル50重量%とスチレンスルホン酸ナトリウム1重量%よりなるアクリル系共重合体に対し、酸化チタンを1重量%加え、さらにアセトンに溶解したものを紡糸原液とし、孔数5000の扁平オリフィスを有する紡糸口金を通し、アセトン濃度が25%の水溶液による凝固浴槽に湿式紡糸し、次いで、水溶液中のアセトン濃度が55%と20%である2つの浴槽を通し、後者の浴槽で1.5倍の延伸を行い、さらに60℃の水洗浴槽にて2.0〜約5.3倍の延伸を行い、前記の延伸と併せて3.0〜8.0倍の一次延伸となるようにした。得られた繊維に油剤を付与した後125℃の乾熱雰囲気下で1.0〜2.35倍の2次延伸を行い、続いて160℃の乾熱雰囲気下で0.875倍〜0.7倍(12.5%〜30%)の弛緩熱処理を行った。得られた繊維(総繊度75000デニール、単繊維繊度15dデニール、偏平断面)に対し、前記(A)および(B)の条件に従って分析測定を行った。さらに(C)の手順に従って立毛布帛評価を行った。
【0023】
(実施例4〜5)(比較例3〜5)
アクリロニトリル56重量%、塩化ビニリデン42重量%と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(以下AMPS)2重量%よりなるアクリル系共重合体に対し、三酸化アンチモンを6重量%加え、さらにジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する)に溶解したものを紡糸原液とし、孔数200の丸形オリフィスを有する紡糸口金を通し、DMF濃度が50%の水溶液による凝固浴槽に湿式紡糸し、次いで、水溶液中のDMF濃度が40%と30%である2つの浴槽を通し、後者の浴槽で1.5倍の延伸を行い、さらに80℃の水洗浴槽にて2.0〜約5.3倍の延伸を行い、前記の延伸と併せて3.0〜8.0倍の一次延伸となるようにした。得られた繊維に油剤を付与した後、1.0〜2.67倍の2次延伸を行い、さらに160℃の乾熱雰囲気下で1.0倍〜0.75倍(0〜25%)の緊張又は弛緩熱処理を行った。得られた繊維(総繊度3000デニール、単繊維繊度15デニール、丸断面)を前記(A)および(B)の条件に従って分析測定を行った。さらに(C)の手順に従って立毛布帛評価を行った。
【0024】
(実施例6〜7)(比較例6〜8)
アクリロニトリル49重量%、塩化ビニル50重量%とスチレンスルホン酸ナトリウム1重量%よりなるアクリル系共重合体をDMFに溶解したものを紡糸原液とし、孔数200の丸形オリフィスを有する紡糸口金を通し、DMF濃度が50%の水溶液による凝固浴槽に湿式紡糸し、次いで、水溶液中のDMF濃度が40%と30%である2つの浴槽を通し、後者の浴槽で1.5倍の延伸を行い、さらに80℃の水洗浴槽にて2.0〜約5.3倍の延伸を行い、前記の延伸と併せて3.0〜8.0倍の一次延伸となるようにした。得られた繊維に油剤を付与した後、125℃の乾熱雰囲気下で1.0〜2.67倍の2次延伸を行い、さらに160℃の乾熱雰囲気下で1.0倍〜0.75倍(0〜25%)の緊張又は弛緩熱処理を行った。得られた繊維(総繊度3000デニール、単繊維繊度15デニール、丸断面)を(A)および(B)の条件に従って分析測定を行った。さらに(C)の手順に従って立毛布帛評価を行った。
【0025】
(比較例9)
アクリロニトリル56重量%、塩化ビニリデン34重量%とメチルメタクリレート8重量%とAMPS2重量%よりなるアクリル系共重合体に対し、酸化チタンを1重量%加え、さらにDMFに溶解したものを紡糸原液とし、孔数200の扁平形オリフィスを有する紡糸口金を通し、DMF濃度が50%の水溶液による凝固浴槽に湿式紡糸し、次いで、水溶液中のDMF濃度が40%と30%である2つの浴槽を通し、各々の浴槽で2.0倍(併せて4.0倍)の一次延伸を行った後、140℃の熱ローラーにて乾燥を行った。さらに117℃の蒸気による湿熱雰囲気下にて1.3倍の2次延伸、および10%の弛緩熱処理を行った。得られた繊維(総繊度3000デニール、単繊維繊度15デニール、偏平断面)を、(A)および(B)の条件に従って分析測定を行った。さらに(C)の手順に従って立毛布帛評価を行った。
【0026】
実施例および比較例の分析測定結果および立毛布帛評価結果を表1に示す。尚、弛緩率で1.0倍とあるのは、弛緩せずに緊張熱処理を行ったことを示しており、TMAにおいて最大伸び率が0%というのは、繊維が伸びずに収縮したか、或いは変形しなかったことを示している。また、表中のANはアクリロニトリル、VCLは塩化ビニル、VDは塩化ビニリデン、DMFはジメチルホルムアミドを略記したものである。
【0027】
これらの結果から繊維の熱による伸び率が2〜10%の範囲であり、且つtanδの最大値が0.47〜0.70の範囲である場合にはクリンプ除去性が良好であることがわかる。
【0028】
【表1】
Figure 0003765927
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、特定の熱的特性範囲のアクリル系合成繊維を用いることにより、付与されたクリンプが通常よりも少ないポリッシャー処理回数で容易に除去され、優れた風合いと外観を有する立毛布帛を得ることができ、衣料、玩具(ぬいぐるみ)、インテリア用等として広範囲に利用することができるものである。

Claims (4)

  1. アクリロニトリル30〜70重量%、ハロゲン化ビニル単量体70〜30重量%および他の重合性ビニル系単量体0〜10重量%を合計100重量%となるように含有した共重合体から湿式紡糸法により製造され、乾燥前のゲル膨潤状態にある繊維に対し5.0倍〜9.0倍の一次延伸を行い、100℃〜140℃で乾燥後さらに110℃〜170℃で0.65〜0.8倍の弛緩熱処理を行うことにより製造され、昇温速度を15±2℃/分とし、繊維の長さ方向に対する荷重を5mg/dとしたときの熱機械分析における下記式(1)により算出される繊維の最大伸び率が2〜10%であり、且つ昇温速度2℃/分とし、初期荷重を33mg/dで、周波数0.05H z 、振動時荷重17mg/dで引っ張り振動法にて正弦的ひずみを加えて測定した下記式(2)で表される動的粘弾性測定のtanδの最大値が0.47〜0.70であるアクリル系合成繊維を用い、クリンプを付与後、カット処理を行った原綿を作成し、スライバー編機にて編成してなる立毛布帛
    最大伸び率(%)=(L max )−(L 0 )/(L 0 )×100・・・(1)
    但し、式(1)中、(L 0 )は繊維の最初の長さ、 ( max ) は昇温に際して次第に繊維が伸びた場合の極大値に相当する試料繊維の長さを示す。
    tanδ=E″/E′・・・(2)
    但し、式(2)中、E′は動的弾性率、E″は動的損失を示す。
  2. 前記アクリル系合成繊維の最大伸び率が110〜155℃の温度範囲に存在し、繊維の長さ方向に対して2〜10%である請求項1記載の立毛布帛
  3. 前記アクリル系合成繊維のtanδの最大値が80℃〜120℃の温度範囲に存在する請求項1記載の立毛布帛
  4. 前記アクリル系合成繊維の繊度が5〜30デニールの範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の立毛布帛。
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