JP3764849B2 - インクジェット記録用シアンインク組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、力学的エネルギーおよび/または熱エネルギーによりインクを吐出、飛翔させ、被記録材に対して記録を行うインクジェット記録に好適に用いられる水性のインクジェット記録用シアンインク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録法は、力学的および/または熱的作用を用いてインク小滴を形成し、これを紙などの被記録材上に付着させ、ドットを形成して画像を記録する方法である。このインクジェット記録法は、電子写真などの記録法で必要とされる現像や定着といったプロセスを含まないことから、装置の小型化が容易であると同時に、高速でかつ低騒音での記録が可能である。また、このようなオンデマンド型と呼ばれる記録法は、記録装置が簡略でかつフルカラー化が容易であり、その応用研究は今後ますます盛んに行われるものと考えられる。
【0003】
インクジェット記録法に望まれるインク特性としては、印字品質などの記録特性のみならず、装置の長期信頼性の面から、ノズル内でのインクの耐目詰まり性が重要である。インクの目詰まりは、インクに使用する有機溶剤の物性だけでなく、長期にわたって放置したインクの諸物性の変化による染料の析出などにも起因する。このようにインク特性としては、長期保存安定性も強く望まれる。
【0004】
従来からインクの耐目詰まり性を向上させるために、インクの湿潤剤として多価アルコールが使用されている。多価アルコールはそれ自体蒸気圧が低く、そのほとんどが水とすべての割合で混合し、しかも吸湿性であるため、インクの水分蒸発を抑えて染料の析出を防止することができる。
しかしながら、多価アルコールを添加したインクは、染料分子が会合凝集し易く、インクの水分蒸発による染料の析出以前に、会合凝集した染料がノズルに付着して目詰まりを起こすといった現象を生じ易い。
【0005】
このような問題を解決するために、有機溶剤としてN-メチル-2-ピロリドンとグリセリンを併用して、耐目詰まり性を改善したインクが提案されている(特公昭63−57475号公報参照)。しかしながら、このインク自体の長期保存安定性は不充分である。
【0006】
また、特公平6−78495号公報には、特定のアニオン型染料と、エチルアルコールに溶解したときの溶解度が20℃で5重量%以上である特定の水難溶性化合物からなる耐水性付与剤とを有効成分とする耐水性インク組成物が開示されている。このインク組成物は、染料が耐水性付与剤をミセル化し、水に溶解して経時安定性を向上させたものである。しかしながら、このインク組成物は、連続印刷を行った場合に、インクの追従性が不充分であるという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐目詰まり性に優れ、連続印刷を行っても安定した吐出が可能で、かつ長期の保存安定性に優れたシアンインク組成物を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の水溶性シアン染料と水溶性有機溶剤とを特定の割合で配合することにより、耐目詰まり性に優れ、連続印刷を行っても安定した吐出が可能、すなわちインクの追従性が良好で、かつ長期の保存安定性に優れたシアンインク組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
かくして本発明によれば、水溶性シアン染料0.1〜9重量%、メチルカルビトール、ジエチレングリコール、2,2'-チオジエタノール、エチレン尿素およびトリエタノールアミンからなる水溶性有機溶剤4〜51重量%、ならびに界面活性剤0.01〜5重量%を少なくとも含有し、残部が水であることを特徴とするインクジェット記録用シアンインク組成物(以下、「インク組成物」と称する)が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる水溶性シアン染料としては、公知の水溶性シアン染料が挙げられ、中でもC.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトブルー199、C.I.アシッドブルー7およびC.I.アシッドブルー9から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの2種以上を用いる場合の組み合わせは特に限定されないが、例えば、C.I.ダイレクトブルー199とC.I.アシッドブルー9などが挙げられる。
【0011】
本発明のインク組成物における水溶性シアン染料の含有量は、0.1〜9重量%、好ましくは0.1〜6重量%、より好ましくは0.3〜5重量%である。水溶性シアン染料の含有量が0.1重量%未満の場合には、必要とされる色調、コントラストが得られ難くなるので好ましくない。また、水溶性シアン染料の含有量が9重量%を超える場合には、ノズル内で目詰まりが起こり易くなるので好ましくない。
【0012】
本発明のインク組成物における水溶性有機溶剤の全含有量は、4〜51重量%であり、好ましくは10〜50重量%である。水溶性有機溶剤の全含有量が上記の範囲であれば、インクの吐出安定性を確保することができる。また、水溶性有機溶剤の全含有量が多すぎる場合には、乾燥不良になることがあるので好ましくない。
【0013】
本発明で用いられる水溶性有機溶剤の各成分は、市販のものを用いることができ、インク組成物における各成分の含有量は次のとおりである。
メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)の含有量は、1〜20重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましく、5〜15重量%がさらに好ましい。
ジエチレングリコールの含有量は、1〜5重量%が好ましい。
2,2'-チオジエタノールの含有量は、1〜5重量%が好ましい。
エチレン尿素の含有量は、1〜20重量%が好ましく、1〜15重量%がより好ましく、5〜10重量%がさらに好ましい。
トリエタノールアミンの含有量は、0.01〜1重量%が好ましい。
【0014】
本発明のインク組成物に配合する界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0015】
アニオン界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルアリルおよびアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩などが挙げられる。
【0016】
カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などが挙げられる。
【0017】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。
【0018】
両性界面活性剤としては、ジメチルアルキルラウリルベタイン、アルキルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、イミダゾリニウムベタインなどが挙げられる。
上記の界面活性剤の中でも、例えば、ユニオンカーバイド社製、商品名:Tergitol 15-S-15、エアープロダクツ社製、商品名:サーフィノール465などのノニオン界面活性剤が好適に用いられる。
【0019】
本発明のインク組成物には、所望の物性値を有する記録液とするために、必要に応じて添加剤を配合してもよい。そのような添加剤としては、消泡剤、ノズル乾燥防止剤、防カビ、防腐、防錆剤などが挙げられる。
【0020】
消泡剤としては、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
ノズル乾燥防止剤としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0021】
また、防カビ、防腐、防錆剤としては、例えば、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベゾチアゾリン−3−オン、3,4−イソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
【0022】
本発明のインク組成物は、例えば、イオン交換水に水溶性シアン染料を添加し、室温で撹拌して水溶性シアン染料を完全に溶解させた後、水溶性有機溶剤を順次添加し、最後に界面活性剤を添加し、室温で撹拌した後、所望の大きさのフィルターで濾過することにより得られる。
【0023】
本発明のインク組成物の諸物性は、適宜制御することができるが、本発明の好ましい態様によれば、インク組成物の粘度(25℃)は、25mPa・秒以下、好ましくは10mPa・秒以下である。インク組成物の粘度が上記の範囲であれば、インクの吐出安定性を確保することができる。また、インク組成物の表面張力(25℃)は、好ましくは20〜50mN/mである。
【0024】
【実施例】
本発明を実施例および比較例に基づいてさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
以下の処方でインク組成物を調製した。
イオン交換水に水溶性シアン染料を添加し、室温で撹拌して水溶性シアン染料を完全に溶解させた後、水溶性有機溶剤を順次添加し、最後に界面活性剤を添加し、室温で1時間撹拌した後、0.45μmのフィルターで濾過してインク組成物を得た。
【0026】
C.I.ダイレクトブルー199 3重量%
メチルカルビトール 8重量%
ジエチレングリコール 5重量%
2,2'-チオジエタノール 5重量%
エチレン尿素 8重量%
トリエタノールアミン 0.5重量%
界面活性剤 0.5重量%
(ユニオンカーバイド社製、商品名:Tergitol 15-S-15)
イオン交換水 残部
【0027】
(実施例2)
以下の処方とする以外は実施例1と同様にして、インク組成物を調製した。
C.I.ダイレクトブルー199 2重量%
C.I.アシッドブルー9 1重量%
メチルカルビトール 10重量%
ジエチレングリコール 3重量%
2,2'-チオジエタノール 3重量%
エチレン尿素 10重量%
トリエタノールアミン 0.5重量%
界面活性剤 1重量%
(エアープロダクツ社製、商品名:サーフィノール465)
イオン交換水 残部
【0028】
(比較例1)
エチレン尿素を添加しない以外は実施例1と同様にして、インク組成物を調製した。
C.I.ダイレクトブルー199 3重量%
メチルカルビトール 8重量%
ジエチレングリコール 5重量%
2,2'-チオジエタノール 5重量%
トリエタノールアミン 0.5重量%
界面活性剤 0.5重量%
(ユニオンカーバイド社製、商品名:Tergitol 15-S-15)
イオン交換水 残部
【0029】
(比較例2)
2,2'-チオジエタノールをジエチレングリコールに代える以外は実施例1と同様にして、インク組成物を調製した。
C.I.ダイレクトブルー199 3重量%
メチルカルビトール 8重量%
ジエチレングリコール 10重量%
エチレン尿素 8重量%
トリエタノールアミン 0.5重量%
界面活性剤 0.5重量%
(ユニオンカーバイド社製、商品名:Tergitol 15-S-15)
イオン交換水 残部
【0030】
(比較例3)
メチルカルビトールをブチルカルビトールに代える以外は実施例2と同様にして、インク組成物を調製した。
C.I.ダイレクトブルー199 2重量%
C.I.アシッドブルー9 1重量%
ブチルカルビトール 10重量%
ジエチレングリコール 3重量%
2,2'-チオジエタノール 3重量%
エチレン尿素 10重量%
トリエタノールアミン 0.5重量%
界面活性剤 1重量%
(エアープロダクツ社製、商品名:サーフィノール465)
イオン交換水 残部
【0031】
(比較例4)
トリエタノールアミンを添加しない以外は実施例2と同様にして、インク組成物を調製した。
C.I.ダイレクトブルー199 2重量%
C.I.アシッドブルー9 1重量%
メチルカルビトール 10重量%
ジエチレングリコール 3重量%
2,2'-チオジエタノール 3重量%
エチレン尿素 10重量%
界面活性剤 1重量%
(エアープロダクツ社製、商品名:サーフィノール465)
イオン交換水 残部
【0032】
(実験1:連続印刷試験)
実施例1〜2および比較例1〜4で得られたインク組成物をそれぞれ、シャープ株式会社製のインクジェットプリンター(IO−730)の改造機を用いて、印刷濃度15%として連続的に印刷を行い、印字可能枚数を検討した。インクタンクにインク組成物を充填して空になるまでの印刷可能枚数は約200枚である。
【0033】
この実験では空になった時点でインク組成物を再充填し、この作業を印刷できなくなるまで繰り返し、そのときまでに印刷できた枚数を印刷可能枚数とした。印刷可能枚数が400枚を超えや場合を○、それ以下であった場合を×とした。得られた結果を表1に示す。
【0034】
(実験2:目詰まり試験)
実施例1〜2および比較例1〜4で得られたインク組成物をそれぞれインクカートリッジに充填し、10枚印刷を行った後、インクカートリッジをプリンターから取り外し、キャップをせずに室温で7日放置した。放置後、再びインクカートリッジをプリンターに装着して印刷できた場合を○、印刷できなかった場合を×とした。得られた結果を表1に示す。
【0035】
(実験3:保存安定性試験)
実施例1〜2および比較例1〜4で得られたインク組成物をそれぞれガラス容器に入れて60℃で60日放置した後、インク組成物の物性値(粘度、表面張力、pH)を以下の方法で測定した。得られた物性値と、予め測定しておいた初期(インク組成物の調製直後)の物性値とを比較した。得られた結果を表1に示す。
【0036】
粘度:粘度測定機(山一電機工業株式会社製、商品名:ビスコメイトVM−1A−L)を用いて、20℃における粘度を測定した(単位:mPa・秒)。
表面張力:表面張力測定機(協和界面科学株式会社製、商品名:CBVP−A3)を用いて、20℃における表面張力を測定した(単位:mN/m)。
pH:pH測定機(新電元工業株式会社製、pH BOY−P2)を用いて、20におけるpHを測定した。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から、実施例のインク組成物は、優れた耐目詰まり性を有し、連続印刷を行っても安定した吐出が可能で、保存安定性にも優れていることがわかる。一方、比較例のインク組成物は、保存安定性の点で良好なものもあるが、ノズル内で目詰まりを起こし、連続印刷が行えないことがわかる。これらの結果から、本発明のインク組成物は、構成成分のいずれか1種類でも欠けると本発明の優れた効果が得られないことがわかる。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、耐目詰まり性に優れ、連続印刷を行っても安定した吐出が可能で、かつ長期の保存安定性に優れたインク組成物を提供することができる。
Claims (3)
- 水溶性シアン染料0.1〜9重量%、メチルカルビトール、ジエチレングリコール、2,2'-チオジエタノール、エチレン尿素およびトリエタノールアミンからなる水溶性有機溶剤4〜51重量%、ならびに界面活性剤0.01〜5重量%を少なくとも含有し、残部が水であることを特徴とするインクジェット記録用シアンインク組成物。
- 水溶性有機溶剤が、メチルカルビトール1〜20重量%、ジエチレングリコール1〜5重量%、2,2'-チオジエタノール1〜5重量%、エチレン尿素1〜20重量%、トリエタノールアミン0.01〜1重量%からなる請求項1に記載のインクジェット記録用シアンインク組成物。
- 水溶性シアン染料が、C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトブルー199、C.I.アシッドブルー7およびC.I.アシッドブルー9から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載のインクジェット記録用シアンインク組成物。
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