JP3764762B2 - ピペット装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は液体の吸引・吐出を行うピペット装置に関し、特に吐出量の微調整が可能なピペット装置の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から各種のピペット装置が提案されている。従来の一般的なピペット装置は、シリンダとピストンとで構成される。ピストンをシリンダ内で移動させることによってシリンダ内の容積が変化し、これにより液体の吸引・吐出が行われる。このピペット装置としては、従来から手動のもの及び電動のものが実用化されており、手動ピペット装置は化学分析などにおいて所望量の試料の吸引・吐出に利用され、電動ピペット装置は例えば自動分注装置などに組み込まれている。
【0003】
ところで、DNAシークエンサにおいて、DNA解析を行うためにはDNAの分離媒体である薄いゲル板の上部に形成された複数の小溝に微量(例えば1.2μl)のサンプルDNAを注入する必要がある。その小溝の厚みは0.2mm程度しかなく、その深さも4mm程度しかない。そのような溝にサンプルDNAを注入する場合には、一般的には、ノズル先端に極薄のディスポーザブルチップ(ノズルチップ)を装着させたマイクロピペットが使用される。
【0004】
しかし、上述のように注入対象である小溝は極めてその形状及び容積が小さく、マイクロピペットから所定量のサンプルDNAを正確かつ確実にその小溝に注入するのは困難であり、また熟練を要していた。
【0005】
すなわち、ノズルの内径やノズルチップの内径がきわめて小さいこと、及び、上記の小溝にバッファー液が満たされていることに起因して、流体抵抗が大きく、このため吐出コントロールが困難であるという問題があった。すなわち、あまりゆっくりピストン軸を押し込むと、吐出力が不足気味となってピストン軸を完全に押し込んでもノズルチップ内などに液が残りやすく、その一方、勢い良くピストン軸を押し込むと、吐出力が過剰となって上記の小溝から液が溢れたり、気泡が生じたりする問題があった。このような問題は、DNAシーケンシングの分離パターンに悪影響を与え、その後の解析が困難になるという問題を引き起こしていた。
【0006】
また、一般的なピペット装置においても、実際の吸引量・吐出量をできる限り正確に設定したいとの要望がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来のピペット装置、特にマイクロピペットにおいては、シリンダの直径がその軸方向に均一であり、液体の吐出開始時と、吐出終了時とで段階的に吐出力を調整するのが困難であった。そこで、液体の吐出開始時には流体抵抗に勝って勢いの良い吐出を行わせ、かつ液体の吐出完了時には吐出力を微妙に調整できるようなピペット装置が要望されていた。また、液体の吸引時に、十分な吸引力をもって一気に吸引を行うことができるピペット装置が要望されていた。
【0008】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、吐出力及び吸引力を合理的に調整可能なピペット装置を提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、液体吐出の第1段階においては勢い良く吐出を行うことができ、かつ液体吐出の第2段階においては微妙な吐出調整を行うことができるピペット装置を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の目的は、大径のピペット装置と小径のピペット装置の両者の利点を兼ね備えた複合型のピペット装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、大径シリンダと、前記大径シリンダの断面積よりも小さな断面積を有し、前記大径シリンダの先端側開口に連通した小径シリンダと、前記大径シリンダ内を進退し、前記大径シリンダの内容積を変化させる大径ピストンと、前記大径ピストンに形成された貫通孔に挿通され、その貫通孔から突出して前記小径シリンダ内を進退し、前記小径シリンダの内容積を変化させる小径ピストンと、吐出時において、第1吐出ステップでは前記大径ピストン及び前記小径ピストンを一体的に下降させ、その後の第2吐出ステップでは前記小径ピストンのみを下降させる伝達手段と、を含むことを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、大径シリンダに連通して小径シリンダが設けられており、これに対応して、大径ピストンとその貫通孔から突出する小径ピストンとが設けられている。第1吐出ステップでは、まず、小径ピストンを退避後退された状態で、大径ピストンと小径ピストンとが一体的に押し込まれ、これにより大径シリンダ内の容積が減少される。大径ピストンが前端に到達した時点、すなわち第2吐出ステップの開始時には、大径ピストンが停止されたまま小径ピストンが押し込まれ、小径シリンダ内の容積が減少される。一方、吸引時には、小径ピストン及び大径ピストンの両者が押し込まれている状態において、まず小径ピストンが引き上げられて大径ピストンの位置に揃ってから、両者が共に一気に引き上げられるのが望ましい
【0013】
よって、本発明によれば、吐出時の最初において、大径シリンダ及び大径ピストンを利用して比較的高い吐出力をもって、流体抵抗に対抗しつつ勢い良く吐出を行うことができ、吐出の終了間際には小径シリンダ及び小径ピストンを利用して吐出力を微調整可能な状態でその吐出を行うことができる。
【0014】
本発明の上記のDNAサンプルのゲル板への吐出に利用すれば、上記の2段階吐出により、流体抵抗に対して十分な吐出力を確保できると共に、吐出力を微妙に調整して小溝からの溢れ出しや気泡発生を効果的に防止できる。
【0015】
本発明の好適な態様では、前記大径ピストンには中空の大径用ピストン軸が連結され、前記小径ピストンには小径用ピストン軸が連結され、前記大径用ピストン軸内には、前記小径ピストン及び前記小径用ピストン軸が進退自在に挿通される。すなわち、大径用ピストン軸内に小径用ピストン軸が挿通され、二重管構造が採用される。
【0016】
また、本発明の好適な態様においては、前記大径用ピストン軸の頭部開口から前記小径用ピストン軸の頭部が突出し、前記小径用ピストン軸の頭部に押し下げ力が加えられる。
【0017】
そして、本発明の好適な態様では、前記小径用ピストン軸に加えられた押し込み力を前記大径用ピストン軸へ過渡的に伝達する伝達手段を含み、前記伝達手段は、前記大径ピストンが最下段に到達するまでの第1吐出ステップでは、当該押し込み力を前記大径用ピストン軸に伝達させて両ピストンを一体的に下降させ、前記大径ピストンが最下段に到達した後の第2吐出ステップでは、当該押し込み力を前記小径用ピストン軸のみに伝達させる。
【0018】
すなわち、この伝達手段は、小径用ピストンの頭部に加えられる押し下げ力を第1吐出ステップでは大径用ピストンに伝達し、第2吐出ステップでは小径用ピストン軸に伝達させるものである。これにより、独立して各ピストン軸に押し下げ力を伝達させる必要がなくなり、単に小径用ピストン軸のみを押し下げることによって自然に二段階吐出を実現できる。
【0019】
ここで、前記伝達手段は、前記第1吐出ステップにおいて生じる反作用力よりも大きくかつ前記第2ステップにおいて解除可能な保持作用を有する。
【0020】
また、本発明の好適な態様では、前記伝達手段は、前記小径用ピストン軸に設けられた凸状部と、前記大径用ピストン軸に設けられ、前記凸状部に係合する弾性部材と、で構成され、望ましくは、前記弾性部材は、前記凸状部の通過時に弾性変形を生じる部材で構成され、かつ、前記凸状部の下降通過よりも上昇通過の方が通過抵抗が小さい形状を有する。
【0021】
本発明の好適な態様では、前記小径ピストンが上昇退避した状態では、その先端面が大径ピストン先端面に揃うようになっている。つまり、小径ピストンの上昇退避状態では、その先端面が大径ピストンの先端面の一部を構成するように機能する。その一方、本発明の好適な態様においては、前記大径ピストンが下降端に位置した状態では、前記大径シリンダ内の容積が実質的にゼロとなり、その状態から前記小径ピストンが下降する。
【0022】
また、本発明の好適な態様では、前記大径ピストンの外周面には大径用パッキングが配置され、前記大径ピストンの前記貫通孔には前記小径ピストンを気密保持する小径用パッキングが配置される。または、前記大径ピストンの外周面には大径用パッキングが配置され、前記小径ピストンの先端部には小径用パッキングが配置される。これにより、各接合部のシール性が高められる。
【0023】
本発明の好適な態様においては、前記大径ピストンをその引き出し方向に付勢する大径用付勢手段と、前記小径ピストンをその引き出し方向に付勢する小径用付勢手段と、を含む。ここで、望ましくは、前記大径用付勢手段及び前記小径用付勢手段はいずれもコイルバネで構成される。
【0024】
この各付勢手段によって、ピストン軸に復帰力を働かせることができ、押し下げ後に、蓄積された復元力を利用して、各ピストン軸を原点に自動的に復帰させることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。
【0026】
図1には、本発明に係るピペット装置の好適な実施形態が示されており、図1はその断面図である。
【0027】
図1において、このピペット装置10は、2つのピペットユニットを含み、一方のピペットユニットは大径シリンダ12と大径ピストン14とで構成され、他方のピペットユニットは、小径シリンダ16と小径ピストン18とで構成される。大径シリンダ12は、中空の円筒形状を成しており、その内部には大径ピストン14が昇降自在に収納されている。
【0028】
大径ピストン14は、図2に示されるように円盤状に構成されており、その外周面にはOリングで構成されるパッキング20が配置されている。具体的には、大径ピストン14の外周面には環状の溝が形成され、その溝内に環状のパッキング20が配置されている。このパッキング20によって大径ピストン14の外周囲と大径シリンダ12の内壁との気密が図られている。
【0029】
図1において、大径ピストン14の中心部には貫通孔22が上下方向に形成されており、その貫通孔22には、上記の小径ピストン18が挿入されている。図1に示す状態は、大径ピストン14及び小径ピストン18のいずれもが上方に引き上げられた初期段階である。この状態では、小径ピストン18の先端面18Aと大径ピストン14の先端面14Aとが同一面を構成している。
【0030】
貫通孔22の内周壁には溝が形成されており、その溝内にOリングで構成されるパッキング24が配設されている。このパッキング24は、小径ピストン18の外周面と貫通孔22との間の気密を保つためのものである。
【0031】
図1において、大径シリンダ12の内部空間と小径シリンダ16の内部空間とは連通されており、すなわち大径シリンダ12のノズル部26側の開口12Aを介して2つのシリンダが一体的に連結されている。この小径シリンダ16の内径は実質的に小径ピストン18の外径と一致している。小径シリンダ16の下端側はノズル部26を構成しており、このノズル部26の先端開口26Aから液体が吸引されあるいは吐出される。もちろん、このノズル部26の先端部にディスポーザブル型のノズルチップを装着して液体の吸引や吐出を行わせることもできる。
【0032】
図1に示されるように、大径シリンダ12の上部には筒状のガイド28が形成されており、そのガイド28内には大径用ピストン軸30が挿通されている。この大径用ピストン軸30は、その下方端側が大径ピストン14に連括しており、すなわち大径ピストン14と大径用ピストン軸30は両者一体的に昇降するものである。
【0033】
大径用ピストン軸30は、中空のパイプ状に構成されており、その内部には上記の小径ピストン18及びその小径ピストン18に連結された小径用ピストン軸32が挿通されている。小径用ピストン軸32はその下方端側が小径ピストン18の上端と連結され、その上方端が操作用ノブ34を構成している。
【0034】
ガイド28の上縁と大径用ピストン軸30の上端部30Aとの間にはコイルバネ36が介装されており、このコイルバネ36によって大径用ピストン軸30が常に上方へ付勢されている。すなわち、大径シリンダ12に対して大径ピストン14は常に上方に付勢されている。これと同様に、小径ピストン18の上端部18Bと大径用ピストン軸30の底面との間にはコイルバネ38が介装されており、このコイルバネ38によって大径ピストン14に対して小径ピストン18が常に上方へ付勢されている。すなわち、コイルバネ36及びコイルバネ38によって、大径ピストン14及び小径ピストン18のいずれもが上方へ付勢されている。もちろん、このようなコイルバネ36及びコイルバネ38は、ノブ34を下方に押し込むことによって縮ませることができ、これによって後述するように大径ピストン14及び小径ピストン18を作動させることができる。
【0035】
大径用ピストン軸30の上部には伝達機構40が設けられている。この伝達機構40は、具体的には大径用ピストン軸30の上端部30Aに配置された弾性部材42と小径用ピストン軸32に形成された凸状部44とで構成されており、ノブ34に押し下げ力が働いた場合に、大径ピストン14が下方へ可動できる限りにおいては、大径ピストン14及び小径ピストン18を両者一体として下方に下降させ、大径ピストン14が大径シリンダ12の底面に到達した時点からは小径ピストン18のみを下方へ下降させるための機構である。すなわち、弾性部材42には、小径用ピストン軸32の外径とほぼ同一の直径を有する開口部が形成されており、その開口部に小径用ピストン軸32が挿通されている。そして、上述した凸状部44は、その小径用ピストン軸32の直径よりも大きな直径を有しており、すなわち小径用ピストン軸32が上方から下方へ引き下げられた場合にはその凸状部44が弾性部材42に当接してその引き下げ力を大径用ピストン軸に伝達させるように機能する。ただし、その弾性部材42はそれ自体弾性を有しているため、大径ピストン14が最下端に到達した場合においては伝達機構40による2つのピストン軸の一体的な保持力に対して押し下げ力が勝ることになり、具体的には、弾性部材42が変形して凸状部44の通過を許容させることになる。これについては後に詳述する。なお、弾性部材42の開口部は、上方が狭く下方が広く構成されており、凸状部44の上方から下方への通過に対してはより強い規制作用を有し、一方、凸状部44の下方から上方への通過に対してはあまり規制力を働かせないように機能する。
【0036】
図1に示されるように、このピペット装置10の主要部はケース46内に収納されており、操作者は、このケース46を4本の指で握り、残りの親指でノブ34を操作することが可能である。
【0037】
なお、2つのコイルバネ36及び38の付勢力があまり大きすぎるとノブ34の押し下げ動作に支障を生じさせることになるので、親指によるノブ34の操作にそのような支障が生じないように各バネの付勢力を適宜設定する。また、コイルバネ38は、小径ピストン18の自動的な引き上げを行わせるものであり、伝達機構40による規制に対抗して凸状部44を下方から上方へ通過させる程度の付勢力を持たせることが望ましい。
【0038】
図1に示す実施形態において、大径ピストン14の直径は例えば1cmであり、小径シリンダ16の内径すなわち、小径ピストン18の直径は例えば0.1mmである。大径ピストン14のストローク量は例えば1cmに設定され、小径ピストン18のストローク量は例えば3cmに設定される。
【0039】
次に、この図1に示したピペット装置10を用いて液体の吸引及び吐出を行わせる場合の動作について説明する。
【0040】
上述したようにコイルバネ36及びコイルバネ38によって大径ピストン14及び小径ピストン18は上方に常に引き上げられているが、以後の説明のため各シリンダ12,16内には既に液体が吸引されているものとする。
【0041】
このような状態において液体の吐出を行う場合には、ケース46を握った状態において、親指でノブ34を上方から下方へ押し込む。すると、伝達機構40の保持力すなわち凸状部44が弾性部材42に当たることによる小径用ピストン軸32と大径用ピストン軸30の一体的な連結が図られ、ノブ34に加えられた押し下げ力はそのまま大径ピストン14の下降動作に転換される。この場合、小径ピストン18は大径ピストン14に保持されているため、このようなノブ34の操作によって大径ピストン14と小径ピストン18とが両者一体として下方に下降することになる。なお、小径ピストン18の上方端においてはその先端面18Aが大径ピストン14の先端面14Aに揃っているため、その小径ピストン18の先端面18Aが大径ピストン14の先端面14Aの一部をあたかも構成しているように機能して大径シリンダ12の内部に取り込まれた液体に対して吐出圧が加えられる。この際、大径シリンダ12の内壁と大径ピストン14との間の気密がパッキング20によって図られる。
【0042】
このような吐出時の前半工程ともいえる第1吐出ステップでは、大径ピストン14と小径ピストン18とが両者一体的に下方に引き下ろされ、これにより大径シリンダ12内に含まれる液体に対して強い吐出力を与えることができ、ノズル部26や小径シリンダ16などの内壁面との間に生じる抵抗に打ち勝って円滑に液体を吐出させることが可能となる。
【0043】
図3に示されるように、大径ピストン14が大径シリンダ12の内底面に到達すると、ノブ34に加えられていた押し下げ力は、伝達機構40の保持力に勝ることになり、すなわち弾性部材42が凸状部44の通過に伴い自己変形して、結果として小径用ピストン軸32の下方への動きが始まることになる。すると、その小径用ピストン軸32に連結された小径ピストン18が下方に押し込まれることになり、その小径ピストン18は小径シリンダ16内を下方へ突き進む。これにより、小径シリンダ16内に追い込まれた液体は更にこの小径ピストン18の先端面18Aによってより下方に追い込まれることになる。この場合、コイルバネ38がその押し下げ力に対して反作用を生じさせるが、このコイルバネ38は比較的弱い付勢力を有しているため、操作者は親指によるノブ34に対する押し下げ力を微調整しながら微妙な吐出を図ることもできる。なお、大径ピストン14が最下段に押し下げられた状態では、その大径ピストン14の先端と大径シリンダ12の内底面との間に空間が実質的に存在していないため、大径ピストン14はその状態に気密維持されることになり、コイルバネ36の作用によって大径用ピストン軸30や大径ピストン14自体が上方に引き上げられることはない。もちろん、その状態を確保するロック機構を設けてもよい。
【0044】
図3に示したような第2の吐出工程である第2吐出ステップにおいては、断面積が極めて小さい小径シリンダ16の内容積を小径ピストン18の大きなストロークによって調整することができるので、吐出量の正確な設定や残液を生じさせない吐き出し等を達成することが可能である。
【0045】
なお、試料の吸引を行う場合においては、図3に示したようにノブ34を親指でしっかりと押し込んだ後にその親指をノブ34から解放させる。すると、コイルバネ38の作用によって小径ピストン18が上方に引き上げられ、小径ピストン18の先端面18Aが大径シリンダ12の開口12Aを通過した時点からコイルバネ36の作用によって大径ピストン14が上方に引き上げられる。そして、最終的に図1に示した状態に復帰することになる。
【0046】
図1に示した伝達機構40は、各種の方式を採用することが可能であり、すなわち第1吐出ステップにおいて押し込み力を大径用ピストン軸30へ伝達させ、第2吐出ステップにおいては押し込み力を小径用ピストン軸32のみに伝達させるような機構を採用すればよい。この場合、例えば蝶番いのような機構や電磁スイッチにより動作するロック機構などを採用することができる。
【0047】
図4には、大径ピストンの他の実施形態が示されている。この図4に示す大径ピストン50には、その外周に大径ピストン50の厚さと同一の厚さを持った円環状のパッキング52が配置されており、また、大径ピストン50の貫通孔54には大径ピストン14と同じ厚さを持った円環状のパッキング56が配置されている。このようなパッキング52及び54を用いることによって、大径ピストン50が大径シリンダ12の最下段まで到達した時点において大径シリンダ12の内容積を確実にゼロにすることができ、液体の残存を確実に防止できる。
【0048】
また、図5に示す実施形態においては、大径ピストン58の貫通孔60にはパッキングが設けられておらず、その代わりに小径ピストン62の先端部に筒状のパッキング64が設けられている。すなわちこのパッキング64は小径ピストン62の直径よりもやや大きな直径を有し、小径ピストン62が上方に退避された状態においては、大径ピストン58の先端面58Aを完全な平面にすることができ、この結果、大径ピストン14が再下段まで落とし込まれたときに、大径シリンダ12内の容積を確実にゼロにすることができる。更に、小径ピストン62が小径シリンダ16内へ挿入されたときに小径ピストン62先端部の気密をパッキング64によって、より確実なものにすることができる。
【0049】
図1に示したピペット装置10は、手動により動作するものであったが、小径用ピストン軸32を駆動モータ等によって駆動させて電動式のピペット装置を構成することもできる。この場合においても、図1に示したピペット装置10と同様の効果を得られ、すなわち2段階の吐出工程によって迅速かつ確実な液体の吐出を達成することができる。
【0050】
図1に示したピペット装置10は、特にDNAサンプルをゲル板の上部に形成された小溝に微量吐出する際に有用であり、すなわち粘性の高い液体に対して、第1滴下ステップにおいては十分な吐出圧を以て一気に吐出を行わせることができ、更に第2吐出ステップにおいて吐出の微調整を行いながら確実な吐出を実現することができる。これにより、従来において生じていた小溝からサンプルDNAが溢れてしまう問題を効果的に解消することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、液体吐出の第1段階においては勢いよく吐出を行うことができ、液体吐出の第2段階においては微妙な吐出調整を行うことができる。すなわち、本発明によれば大径のピペッテング装置と小径のピペッティング装置の両者の利点を兼ね備えたピペット装置を提供することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るピペット装置の断面図である。
【図2】 大径シリンダの正面図である。
【図3】 ピペット装置の動作を説明するための図である。
【図4】 大径ピストンの他の実施形態を示す図である。
【図5】 大径ピストン及び小径ピストンの他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
10 ピペット装置、12 大径シリンダ、14 大径ピストン、16 小径シリンダ、18 小径ピストン、22 貫通孔、30 大径用ピストン軸、32小径用ピストン軸、36,38 コイルバネ、40 伝達機構。

Claims (13)

  1. 大径シリンダと、
    前記大径シリンダの断面積よりも小さな断面積を有し、前記大径シリンダの先端側開口に連通した小径シリンダと、
    前記大径シリンダ内を進退し、前記大径シリンダの内容積を変化させる大径ピストンと、
    前記大径ピストンに形成された貫通孔に挿通され、その貫通孔から突出して前記小径シリンダ内を進退し、前記小径シリンダの内容積を変化させる小径ピストンと、
    吐出時において、第1吐出ステップでは前記大径ピストン及び前記小径ピストンを一体的に下降させ、その後の第2吐出ステップでは前記小径ピストンのみを下降させる伝達手段と、
    を含むことを特徴とするピペット装置。
  2. 請求項1記載の装置において、
    前記大径ピストンには中空の大径用ピストン軸が連結され、
    前記小径ピストンには小径用ピストン軸が連結され、
    前記大径用ピストン軸内には、前記小径ピストン及び前記小径用ピストン軸が進退自在に挿通されたことを特徴とするピペット装置。
  3. 請求項2記載の装置において、
    前記大径用ピストン軸の頭部開口から前記小径用ピストン軸の頭部が突出し、
    前記小径用ピストン軸の頭部に押し下げ力が加えられること特徴とするピペット装置。
  4. 請求項3記載の装置において、
    前記伝達手段は、前記小径用ピストン軸に加えられた押し込み力を前記大径用ピストン軸へ過渡的に伝達し、
    前記伝達手段は、
    前記大径ピストンが最下段に到達するまでの前記第1吐出ステップでは、当該押し込み力を前記大径用ピストン軸に伝達させて両ピストンを一体的に下降させ、
    前記大径ピストンが最下段に到達した後の前記第2吐出ステップでは、当該押し込み力を前記小径用ピストン軸のみに伝達させることを特徴とするピペット装置。
  5. 請求項4記載の装置において、
    前記伝達手段は、前記第1吐出ステップにおいて生じる反作用力よりも大きくかつ前記第2ステップにおいて解除可能な保持作用を有することを特徴とするピペット装置。
  6. 請求項5記載の装置において、
    前記伝達手段は、
    前記小径用ピストン軸に設けられた凸状部と、
    前記大径用ピストン軸に設けられ、前記凸状部に係合する弾性部材と、
    で構成されたことを特徴とするピペット装置。
  7. 請求項6記載の装置において、
    前記弾性部材は、前記凸状部の通過時に弾性変形を生じる部材で構成され、かつ、前記凸状部の下降通過よりも上昇通過の方が通過抵抗が小さい形状を有することを特徴とするピペット装置。
  8. 請求項1記載の装置において、
    前記小径ピストンが上昇退避した状態では、その先端面が大径ピストン先端面に揃うことを特徴とするピペット装置。
  9. 請求項1記載の装置において、
    前記大径ピストンの外周面には大径用パッキングが配置され、
    前記大径ピストンの前記貫通孔には前記小径ピストンを気密保持する小径用パッキングが配置されたことを特徴とするピペット装置。
  10. 請求項1記載の装置において、
    前記大径ピストンの外周面には大径用パッキングが配置され、
    前記小径ピストンの先端部には小径用パッキングが配置されたことを特徴とするピペット装置。
  11. 請求項1記載の装置において、
    前記大径ピストンをその引き出し方向に付勢する大径用付勢手段と、
    前記小径ピストンをその引き出し方向に付勢する小径用付勢手段と、
    を含むことを特徴とするピペット装置。
  12. 請求項11記載の装置において、
    前記大径用付勢手段及び前記小径用付勢手段はいずれもコイルバネで構成されたことを特徴とするピペット装置。
  13. 請求項1記載の装置において、
    前記大径ピストンが下降端に位置した状態では、前記大径シリンダ内の容積が実質的にゼロとなり、その状態から前記小径ピストンが下降することを特徴とするピペット装置。
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