JP3764068B2 - 接合構造 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、多数接合されて筒状のトンネル壁体を構成するセグメント同士を接合する場合に用いて好適な接合構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば筒状のトンネル壁体を構成する場合、一般に、セグメント同士をボルトによって接合していた。このボルトでセグメント同士を接合する構造としては、セグメントの接合面近傍に、これら接合面同士を当接させた際に互いに連通する孔部を有する継手を埋め込んでおき、これら継手の孔部同士が連通するように、セグメントの接合面同士を当接させた状態にて、孔部へボルトを挿通させ、このボルトへナットを締結させて接合させる構造が一般的である。また、相互のセグメントにナット部材であるインサート金具を埋め込んでおき、隣接するセグメントに貫通させたボルトを締結させて互いに接合させる構造もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構造では、構築現場にて継手の接合面に形成された孔部へボルトを挿通させ、このボルトへナットを締結させるという極めて煩雑な作業を要するという問題があった。しかも、上記接合構造では、継手の孔部同士を正確に連通させてセグメントを設置させなければならなかった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、例えばセグメント同士などの部材同士を極めて容易に接合させることができる接合構造の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1記載の接合構造は、部材同士を、互いの接合面を突き合わせた状態に接合する接合構造であって、一方側の部材に設けられ、他方側の部材に向かって延在する接合棒と、前記他方側の部材に設けられ、前記接合棒が挿入された場合に該接合棒を固定する接合具とによって接合されてなり、前記接合具が、前記接合棒が挿入されるスリーブと、前記接合棒の挿入方向に対して垂直をなすように前記スリーブに設けられた少なくとも一対の係止ピンとを備え、前記スリーブには、前記各係止ピンが挿入されるとともにこれら係止ピン間を押し広げる外力が加えられた場合に、これら係止ピン間を再び接近させるように弾性反発力を付与する少なくとも一対のテーパ穴が設けられ、前記接合棒には、前記各係止ピンが係止するくびれが形成されていることを特徴とする。
【0006】
上記請求項1記載の接合構造によれば、一方の部材に設けられた接合棒を、他方の部材に設けられた接合具のスリーブに挿入させると、接合棒が各係止ピン間に挿入されてその間隔を一時的に押し広げる。この時の各係止ピンには、それぞれのテーパ穴によってお互いの間隔を元に戻そうとする弾性反発力が加えられている。そして、接合棒の挿入が進んでそのくびれ位置が各係止ピン位置と一致した時に、各係止ピン間を押し広げていた圧迫力が解放されるため、各係止ピンが互いに接近して各くびれに係止する。そして、この係止力によってそれぞれの部材同士が接合される。
【0007】
請求項2記載の接合構造は、請求項1記載の接合構造において、前記接合具と前記接合棒との間には、前記一対の係止ピンと前記くびれとの係止による係止箇所が、前記接合棒の挿入方向に沿って複数段設けられていることを特徴とする。
上記請求項2記載の接合構造によれば、接合棒と接合具との間に生ずる係止力(すなわち、各部材間の接合状態を維持させるための結合力)を、複数の係止箇所に分散できるようになる。
【0008】
請求項3記載の接合構造は、請求項2記載の接合構造において、前記一対の係止ピンが、前記挿入方向より見た場合に、前記各係止箇所間で向きが異なっていることを特徴とする。
上記請求項3記載の接合構造によれば、接合棒を様々な方向より挟み込んで係止することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、部材同士を、互いの接合面を突き合わせた状態に接合する接合構造であり、その一実施形態を図1〜図4を参照しながら以下に説明していくが、本発明がこれのみに限定解釈されるものでないことは勿論である。以下の説明においては、本接合構造を、トンネルを構成するセグメント間の接合に適用した場合を例に説明する。
なお、図1は、本実施形態の接合構造を示す図であって、接合状態での断面図である。また、図2は、同接合構造を図1のA−A線より見た断面図である。また、図3は、同接合構造を示す図であって、図1のB部拡大図である。また、図4は、同接合構造を示す図であって、接合前状態の断面図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の接合構造は、一方側のセグメントa(部材)に固定され、他方側のセグメントb(部材)に向かって延在する接合棒10と、セグメントbに設けられ、接合棒10が挿入された場合にこの接合棒10を固定する接合具20とによって接合される概略構成を有している。
接合具20は、接合棒10が挿入されるスリーブ21と、接合棒10の挿入方向に対して垂直をなすようにスリーブ21に設けられた一対の係止ピン22とを備えている。そして、スリーブ21には、各係止ピン22が挿入されるとともにこれら係止ピン22間の間隔を押し広げる外力が加えられた場合に、これら係止ピン22間を再び接近させるように弾性反発力を付与する一対のテーパ穴23が形成されている。
また、接合棒10には、各係止ピン22が係止する一対のくびれ11が形成されている。
【0011】
接合棒10は、スリーブ21に挿入される樹脂成形(プラスチック)の棒体であり、その挿入方向の後端部側に形成されたねじ部12と、該ねじ部12より挿入方向に向かって先細りに形成された第1テーパ部13と、該第1テーパ部13より略円柱状に形成されたストレート部14と、該ストレート部14より挿入方向に向かって先細りな円錐形状に形成された第2テーパ部15とを備えて構成されている。
そして、この接合棒10は、セグメントaに埋設させたインサートナット16内にねじ部12をねじ込むことにより、セグメントaに対して抜出不可に固定されている。
【0012】
ストレート部14は、前記接合具20の各係止ピン22間の間隔よりも大きな外径寸法を有しており、そのくびれ11の部分のみが前記間隔と略等しい太さ寸法となっている。
図2及び図3に示すように、各くびれ11は、接合棒10の軸線に垂直をなす方向に向かってストレート部14の両側面に形成された切り欠きであり、その内部に前記各係止ピン22を受け入れた場合には、その係止部11aによって各係止ピン22を係り止めできるようになっている。
【0013】
再び図1に示すように、前記接合具20は、樹脂成形品(プラスチック)である前記スリーブ21と、前記各係止ピン22とを備えて構成されている。
スリーブ21は、有底の円筒形状をなしている。そして、その開口部分には、前記接合棒10の第1テーパ部13の壁面を受け止めるための面取りが形成されている。
【0014】
また、図2及び図3に示すように、このスリーブ21の前記各テーパ穴23は、該スリーブ21の軸線より離れるにしたがって先細りとなる傾斜面23a,23bを備えた涙滴形状をなしている。このような形状を有することにより、例えば図3の視線において、挿入されている係止ピン22に対してこれを紙面右方向に圧迫するような外力を加えた場合に、各傾斜面23a,23bがこの圧迫力に抵抗する弾性反発力を紙面左方向に向かって係止ピン22に加えることとなる。これにより、各係止ピン22はお互いの間隔を常に一定に保とうとしている。
なお、各係止ピン22は例えば鋼材やステンレス材からなるピンであり、弾性変形を生じないものが採用されている。そして、これら係止ピン22は、適宜手段によって各テーパ穴23内から外れ落ちないように取り付けられている。
【0015】
以上説明の構成を有する接合構造による、各セグメントa,b間の接合作業について、図4を参照しながら以下に説明する。
同図に示すように両セグメントa,b間が離間した状態より、一方のセグメントbのスリーブ21の開口内に、接合棒10を挿入するように他方のセグメントaを接近させていく(白抜き矢印方向に接近させる)。この接近動作に伴ってスリーブ21内に挿入されていく接合棒10は、その第2テーパ部15によって各係止ピン22を、その間隔を押し広げるように圧迫していく。そして、各係止ピン22の位置に前記くびれ11が来たときに、前記各テーパ穴23の弾性反発力によってこれら係止ピン22間の間隔を元に戻すと同時に、前記各係止部11aによって係止される。これにより、接合棒10が接合具20に対して抜出不可に固定されるので、セグメントbに対するセグメントaの接合作業が完了する。
【0016】
以上説明のように、本実施形態の接合構造は、接合棒10と接合具20とによって接合されてなり、接合具20が、スリーブ21と各係止ピン22とを備え、スリーブ21には、各係止ピン22が挿入されるとともにこれら係止ピン22間を押し広げる外力が加えられた場合に、これら係止ピン22間を再び接近させるように弾性反発力を付与するテーパ穴23が設けられ、接合棒10には、各係止ピン22が係止するくびれ11が形成されている構成を採用した。
この構成によれば、セグメントa,b同士を接合させる際に、単に、一方のセグメントaに設けられた接合棒10を他方のセグメントbに設けられた接合具20へ挿入させることにより、極めて容易に、接合具20を構成する各係止ピン22に接合棒10のくびれ11を係止させ、それぞれを接合させることができる。これにより、ボルトを継手の接合面に形成された孔部へ挿通させてナットを締結させていた従来構造と比較して、その接合作業にかかる労力を大幅に低減させることができるとともに、ロボットによる自動組み立ての容易化を図ることができる。また、接合時に、現場にて用意する部品を少なくすることができ、部品の搬入、準備等の作業を軽減することができ、省力化を図ることもできる。
【0017】
次に、上記実施形態の変形例を図5を参照して説明するが、上記実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
上記実施形態では、接合棒10と接合具20との間の係止箇所を、接合棒10の挿入方向の1箇所としたが、本変形例では、2箇所としている点が特に異なっている。すなわち、同図に示すように、接合具20と接合棒10との間に、一対の係止ピン22と一対のくびれ11との係止による係止箇所が、接合棒10の挿入方向に沿った係止箇所31,32の2段(複数段)に分けて設けられている。
【0018】
本変形例によれば、その係止箇所を、接合棒10の挿入方向に沿って複数段設ける構成を採用したことにより、接合棒10と接合具20との間に生ずる係止力(すなわち、各セグメントa,b間の接合状態を維持させるための結合力)を、2つの係止箇所31,32に分散できるようになるので、これらの間の係止力が部分的に集中して、これら接合棒10や接合具20を破損する恐れを低減させることが可能となる。これにより、近年極めて深刻な問題とされている地震が発生したとしても、各セグメントa,b間の接合箇所における崩壊を減らすことができる。即ち、この接合構造を有する構造物の耐震性を大幅に向上させて地震による構造物の倒壊を確実に防止することができるようになる。
【0019】
次に、上記実施形態の他の変形例を図6を参照して説明するが、上記実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
本変形例は、上記変形例と同様にその係止箇所を二段(複数段)にすることに加えて、各段間で係止ピンの向きが異なっている点が特に特徴的となっている。すなわち、同図に示すように、一対の係止ピン22が、挿入方向40より見た場合に、各係止箇所41,42間で向きが直交して「井」の字状をなすように構成されている。これに対応して、挿入棒10側のくびれ11も、挿入方向40より見た場合に、各係止箇所41,42間で向きが直交して「井」の字状をなすように構成されている。
【0020】
本変形例によれば、その各係止ピン22の向きを、各係止箇所41,42間で異なる構成を採用したことにより、接合棒10を前後左右の方向より挟み込んで係止できるので、例えば接合後のセグメントa,b間が一方向に位置ずれが生じて、各係止箇所41,42のうちの一箇所の各係止ピン22に対してこれを押し戻すような圧迫力を加えても、他の係止箇所が接合棒10と接合具20との間の係止状態を確実に維持し続けるので、各セグメントa,b間の離脱をより確実に防止することが可能となる。
【0021】
なお、上記実施形態及びその各変形例においては、本発明の接合構造を、トンネルを構成するセグメントa,b同士の接合構造に適用する場合について説明したが、これに限定されず、その他の部材間の接合に適用しても良いことは勿論である。
【0022】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載の接合構造は、接合棒と接合具とによって接合されてなり、接合具が、スリーブと係止ピンとを備え、スリーブには、各係止ピンが挿入されるとともにこれら係止ピン間を押し広げる外力が加えられた場合に、これら係止ピン間を再び接近させるように弾性反発力を付与するテーパ穴が設けられ、接合棒には、各係止ピンが係止するくびれが形成されている構成を採用した。
この構成によれば、例えばセグメント同士などの部材同士を接合させる際に、単に、一方の部材に設けられた接合棒を他方の部材に設けられた接合具へ挿入させることにより、極めて容易に、接合具を構成する各係止ピンに接合棒のくびれを係止させ、それぞれの部材同士を接合させることができる。これにより、ボルトを継手の接合面に形成された孔部へ挿通させてナットを締結させていた従来構造と比較して、その接合作業にかかる労力を大幅に低減させることができるとともに、ロボットによる自動組み立ての容易化を図ることができる。また、接合時に、現場にて用意する部品を少なくすることができ、部品の搬入、準備等の作業を軽減することができ、省力化を図ることができる。
【0023】
また、請求項2記載の接合構造によれば、その係止箇所を、接合棒の挿入方向に沿って複数段設ける構成を採用したことにより、接合棒と接合具との間に生ずる係止力(すなわち、各部材間の接合状態を維持させるための結合力)を、複数の係止箇所に分散できるようになるので、これらの間の係止力が部分的に集中して、これら接合棒や接合具を破損する恐れを低減させることが可能となる。これにより、近年極めて深刻な問題とされている地震が発生したとしても、接合箇所における崩壊を減らすことができる。即ち、この接合構造を有する構造物の耐震性を大幅に向上させて地震による構造物の倒壊を確実に防止することができるようになる。
【0024】
また、請求項3記載の接合構造によれば、各係止ピンの向きを、各係止箇所間で異なる構成を採用したことにより、接合棒を様々な方向より挟み込んで係止できるので、例えば接合後の部材間が一方向に位置ずれが生じて各係止箇所のうちの一箇所の係止ピンに対してこれを押し戻すような圧迫力を加えても、他の係止箇所が接合棒と接合具との間の係止状態を確実に維持し続けるので、部材間の離脱をより確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の接合構造の一実施形態を示す図であって、接合状態での断面図である。
【図2】 同接合構造を示す図であって、図1のA−A線より見た断面図である。
【図3】 同接合構造を示す図であって、図1のB部拡大図である。
【図4】 同接合構造を示す図であって、接合前状態の断面図である。
【図5】 同接合構造の変形例を示す図であって、接合状態での断面図である。
【図6】 同接合構造の他の変形例を示す図であって、要部斜視図である。
【符号の説明】
a,b・・・セグメント(部材)
10・・・接合棒
11・・・くびれ
20・・・接合具
21・・・スリーブ
22・・・係止ピン
23・・・テーパ穴
31,32,41,42・・・係止箇所
40・・・挿入方向
Claims (3)
- 部材同士を、互いの接合面を突き合わせた状態に接合する接合構造であって、
一方側の部材に設けられ、他方側の部材に向かって延在する接合棒と、前記他方側の部材に設けられ、前記接合棒が挿入された場合に該接合棒を固定する接合具とによって接合されてなり、
前記接合具は、前記接合棒が挿入されるスリーブと、前記接合棒の挿入方向に対して垂直をなすように前記スリーブに設けられた少なくとも一対の係止ピンとを備え、
前記スリーブには、前記各係止ピンが挿入されるとともにこれら係止ピン間を押し広げる外力が加えられた場合に、これら係止ピン間を再び接近させるように弾性反発力を付与する少なくとも一対のテーパ穴が設けられ、
前記接合棒には、前記各係止ピンが係止するくびれが形成されていることを特徴とする接合構造。 - 請求項1記載の接合構造において、
前記接合具と前記接合棒との間には、前記一対の係止ピンと前記くびれとの係止による係止箇所が、前記接合棒の挿入方向に沿って複数段設けられていることを特徴とする接合構造。 - 請求項2記載の接合構造において、
前記一対の係止ピンは、前記挿入方向より見た場合に、前記各係止箇所間で向きが異なっていることを特徴とする接合構造。
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