JP3763368B2 - プレス機械のブレークスルー緩衝装置及びその制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプレス機械で素材の打ち抜き加工をするときに発生するブレークスルーを緩衝して振動や破断音を低減するために設けられたプレス機械のブレークスルー緩衝装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
プレス機械においては、素材が打ち抜かれる際にいわゆるブレークスルー現象が発生し、これに伴って振動及び破断音が発生する。プレス機械の作業環境を向上させるために、従来から、この振動及び破断音の低減が行われている。
【0003】
上記ブレークスルーを緩衝するために、従来技術においては、例えば、以下のような機構を備えているものがある。すなわち、プレス機械の上型にガイドポストを設け、下型にこのガイドポストに対向するように緩衝油圧シリンダを設けている。緩衝油圧シリンダには、上下方向に移動自在な緩衝ピストンが内蔵されている。また、プレス機械には、内蔵されたピストン部を介して隔てられた2つの室にそれぞれ油及びエアを充填した空油タンクが備えられ、この空油タンクの油室と上記緩衝油圧シリンダとは油が充填された配管により接続されている。そして、ガイドポストが緩衝ピストンに衝突したときに、緩衝油圧シリンダ、上記配管及び空油タンクの油を介して、空油タンクのエアを圧縮してブレークスルーを緩衝するようにしている。このとき、緩衝ピストンの高さを調整することによって、ブレークスルーの最適な緩衝タイミングが得られるようにしている。
【0004】
このような従来技術の例としては、特開平7−251300号、特開平6−79500号、特開平7−241700号又は特開平7−241628号公報により提案されたものがある。
【0005】
特開平7−251300号及び特開平6−79500号公報においては、前記緩衝ピストンの高さ調整のために、ステッピングモータをアクチュエータとして前記空油タンクのピストン部を作動し、油を前記緩衝油圧シリンダに供給したり排出したりするタイミング調整装置を備えている。そして、プレス機械のブレークスルー時の振動あるいは破断音等を別途センサにより検出し、この検出値に基づいて制御装置が最適タイミングを決定して上記タイミング調整装置に指令を出力し、振動及び破断音が最小になるように制御するものである。
【0006】
また、特開平7−241700号公報においては、吸気動作、排気動作及び保持動作を有する3ポート弁を介して工場エアを前記空油タンクに供給し、このエア圧により前記緩衝ピストンの高さを調整するものである。なお、上記エア圧は、制御装置によりブレークスルー時の振動及び破断音が最小になるように制御されている。
【0007】
また、特開平7−241628号公報においては、工場エアを圧力制御弁及びカットオフバルブを介して前記空油タンクに供給し、このエア圧により前記緩衝ピストンの高さを調整するものである。なお、上記エア圧は、制御装置によりブレークスルー時の振動及び破断音が最小になるように制御されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の構成においては、以下のような問題が生じている。
1)特開平7−251300号公報及び特開平6−79500号公報に開示された従来技術においては、ステッピングモータをアクチュエータとして空油タンクのピストン部を作動している。このために、ステッピングモータ駆動用の大電源が必要となり、よって制御盤が大きくなるので広い場積が必要となる。また、ステッピングモータ駆動用のアンプはインバータ部を有しているため、このインバータ部での大電流チョッパーによるノイズが発生し易く、上記のような緩衝ピストンの最適高さの自動探査を行う際に必要な前記センサの出力アナログラインにノイズがのりやすいという問題がある。また、さらに、上記の油圧回路は密閉回路であるため、エア抜きが難しいという問題もある。
【0009】
2)また、特開平7−241700号公報及び特開平7−241628号公報に開示された従来技術においては、エア圧によって緩衝ピストンに供給する油量を調整して高さ調整を行うため、位置決めがアナログ的に行われ、位置決め精度が悪い。また、プレスクランク角が下死点近傍にあるときは位置制御不可領域があり、その間は緩衝ピストンを動かせない。この結果、緩衝ピストンを最適高さに調整するまでの時間がかかるという問題がある。
【0010】
本発明は上記の問題点に着目してなされたもので、構造が簡単で、油圧回路のエア抜き等の保守が容易であり、位置決め精度の向上及び最適位置探査時間の短縮化が可能なプレス機械のブレークスルー緩衝装置及びその制御方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、プレス機械の上下金型間に設けられた緩衝油圧シリンダ10によって、プレス機械が素材打ち抜き加工時に生じるブレークスルーを緩衝するプレス機械のブレークスルー緩衝装置において、前記緩衝油圧シリンダ10に接続されたアキュムレータと、
油を貯溜する開放型のリザーバタンク27と、
前記リザーバタンク27の油を前記アキュムレータに定量ずつ供給し、前記緩衝油圧シリンダ10の緩衝位置を所定距離ずつ上昇させる定量吐出手段と、
前記アキュムレータから前記リザーバタンク27に油を定量ずつ排出し、前記緩衝油圧シリンダ10の緩衝位置を所定距離ずつ下降させる定量排出手段と、
前記定量吐出手段を制御する吐出制御手段と、
前記定量排出手段を制御する排出制御手段とを備えた構成としている。
【0012】
請求項1に記載の発明によると、吐出制御手段により定量吐出手段を制御して一定量の油をリザーバタンクからアキュムレータへ供給して緩衝油圧シリンダの緩衝ピストンを一定量上昇させ、あるいは、排出制御手段により定量排出手段を制御して一定量の油をアキュムレータから排出して緩衝ピストンを一定量下降させることにより緩衝ピストンの高さを調整することができる。この結果、デジタル的で位置決め精度が非常に良い緩衝ピストンの調整が可能となる。
また、リザーバタンクは開放型であるためエア抜きは容易に行われる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプレス機械のブレークスルー緩衝装置において、前記アキュムレータは空油タンク13としている。
【0014】
請求項2に記載の発明によると、圧力の変動を容易に平滑化できるので精度の良い緩衝ピストンの調整が可能となる。また、取り扱いが容易となる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のプレス機械のブレークスルー緩衝装置において、前記定量吐出手段及び前記定量排出手段は、それぞれ定量吐出型ポンプとしている。
【0016】
請求項3に記載の発明によると、一回の作動ごとに一定量の油を正確に吐出、あるいは排出することが可能である。よって、デジタル的で位置決め精度が非常に良い緩衝ピストンの調整が可能となる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、プレス機械の上下金型間に設けられた緩衝油圧シリンダ10によって、プレス機械が素材打ち抜き加工時に生じるブレークスルーを緩衝するブレークスルー緩衝装置において、
前記緩衝油圧シリンダ10に接続されたアキュムレータと、
油を貯溜する開放型のリザーバタンク27と、
前記リザーバタンク27の油を前記アキュムレータに所定量ずつ供給し、前記緩衝油圧シリンダ10の緩衝位置を所定距離ずつ上昇させる上昇用プランジャポンプ21aと、
前記アキュムレータから前記リザーバタンク27に油を所定量ずつ排出し、前記緩衝油圧シリンダ10の緩衝位置を所定距離ずつ下降させる下降用プランジャポンプ21bと、
前記上昇用プランジャポンプ21aの前記アキュムレータへの油の供給、又は、下降用プランジャポンプ21bの前記アキュムレータからの油の排出のいずれかを行うように制御する制御器とを備えた構成としている。
【0018】
請求項4に記載の発明によると、上昇用プランジャポンプのストローク数を制御することによりプランジャポンプの1ストロークの容積を1単位とする一定量の油をアキュムレータに吐出することができ、下降用プランジャポンプのストローク数を制御することにより上記と同様に一定量の油をアキュムレータから排出可能である。したがって、デジタル的で位置決め精度が非常に良い緩衝ピストンの調整が可能となる。そして両者を同時に作動させることはないため、正確な油量の吐出、排出が可能となる。また、構造が簡単でコストを安くできる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のプレス機械のブレークスルー緩衝装置において、
前記上昇用プランジャポンプ21aを制御する上昇用電磁弁25aと、
前記下降用プランジャポンプ21bを制御する下降用電磁弁25bと、
前記上昇用プランジャポンプ21aとアキュムレータ及びリザーバタンク27間をそれぞれ接続する回路に、上昇用電磁弁25aの切り換え作動によりリザーバタンク27からアキュムレータへの方向に油が吐出されるように介装されたチェック弁31、33と、
前記下降用プランジャポンプ21bとアキュムレータ及びリザーバタンク27間をそれぞれ接続する回路に、下降用電磁弁25bの切り換え作動によりアキュムレータからリザーバタンク27への方向に油が排出されるように介装されたチェック弁35、37とを備えた構成としている。
【0020】
請求項5に記載の発明によると、下降用電磁弁の作動を停止し、かつ上昇用電磁弁を作動させることにより上昇用プランジャポンプのみが作動し、チェック弁を介してリザーバタンクから油が吸い込まれ、アキュムレータに油が確実に吐出される。また、上昇用電磁弁の作動を停止し、かつ下降用電磁弁を作動させることにより下降用プランジャポンプのみが作動し、チェック弁を介してアキュムレータの油が確実に排出され、リザーバタンクに戻される。しかも、構成が簡単でコストも安くできる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のプレス機械のブレークスルー緩衝装置において、
前記上昇用電磁弁25a又は下降用電磁弁25bを所定時間オンし、所定時間オフすることにより、上昇用プランジャポンプ21a又は下降用プランジャポンプ21bに一定量の油を吐出又は排出させる制御器を備えた構成としている。
【0022】
請求項6に記載の発明によると、上昇用電磁弁又は下降用電磁弁を所定時間オンさせ、あるいは、所定時間オフさせるように制御器によって制御するので、上昇用プランジャポンプ又は下降用プランジャポンプが正確に一定量ずつ油を吐出又は排出できる。よって、自動的に緩衝ピストンの高さを一定量ずつ上昇あるいは下降させ、精度良く調整することができる。
【0023】
また、請求項7に記載の発明は、プレス機械の上下金型間に設けられた緩衝油圧シリンダ10の緩衝ピストン12の高さを調整することによって、プレス機械が素材打ち抜き加工時に生じるブレークスルーを緩衝するブレークスルー緩衝装置の制御方法において、前記緩衝油圧シリンダ10の緩衝ピストン12を上昇させるときには、定量吐出手段を所定時間作動させて、リザーバタンク27に貯溜された油をアキュムレータを経由して前記緩衝油圧シリンダ10に定量ずつ吐出することにより、所定距離だけ上昇させ、また前記緩衝油圧シリンダ10の緩衝ピストン12を下降させるときには、定量排出手段を所定時間作動させて、油を前記緩衝油圧シリンダ10からアキュムレータを経由してリザーバタンク27に定量ずつ排出することにより、所定距離だけ下降させ、緩衝ピストン12の高さを調整する方法としている。
【0024】
請求項7に記載の発明によると、定量吐出手段を所定時間作動させ、一定量の油をリザーバタンクからアキュムレータを経由して緩衝油圧シリンダに供給して緩衝ピストンを所定距離上昇させ、あるいは、定量排出手段を所定時間作動させ、一定量の油を緩衝油圧シリンダからアキュムレータを介して排出して緩衝ピストンを所定距離下降させることができる。これによって、緩衝ピストンの高さを安定的に、かつ正確に調整することができる。この結果、デジタル的で位置決め精度が非常に良い緩衝ピストンの調整が可能となる。したがって、定量吐出手段及び定量排出手段からの油のパルス送りが可能となり、緩衝シリンダの上昇又は下降を確実に所定距離行わせることができ、よって、短時間で最適位置探査が可能となる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るプレス機械のブレークスルー緩衝装置及びその制御方法について、図面を参照して詳述する。
【0026】
図1〜図3に基づいて、第1実施形態を説明する。
図1はブレークスルー緩衝装置を備えたプレス機械の構成図であり、図1(1)は正面図を、図1(2)は側面図を示す。
【0027】
図1において、上下動するスライド1には上型2が固設され、上型2にはパンチ3及び複数のガイドポスト4が取着されている。また、ボルスタ5には下型6が固設され、下型6にはダイス7が取着されている。
【0028】
下型6のガイドポスト4に対向する位置には、緩衝油圧シリンダ10がそれぞれ設けられている。この緩衝油圧シリンダ10はシリンダ11と緩衝ピストン12から構成されており、シリンダ11の底部のシリンダ室には油が充填されていて、このシリンダ室は管路15を介して空油タンク13に接続されている。また、空油タンク13は油圧装置20に接続されており、油圧装置20は制御装置40に接続されている。なお、空油タンク13は油圧のアキュムレータの一例として使用されているが、これに限定されずに、例えばバネ等によって油圧が平滑化されるバネ式アキュムレータ等であってもよい。
【0029】
スライド1を上下動させるクランク軸にはこのクランク回転角度を検出するクランク角度センサ16が取着されており、また、ボルスタ5にはブレークスルー時の振動加速度を検出するボルスタ加速度センサ18が設けられている。これらのクランク角度センサ16及びボルスタ加速度センサ18からの各検出信号は、制御装置40に入力されている。制御装置40は、例えばマイクロコンピュータを主体にしたコンピュータシステムにより構成されている。
【0030】
また、図2は油圧装置20の回路図である。同図において、上昇用プランジャポンプ21aは油圧室22aと空気室23aとピストン24aからなり、空気室23aのヘッド側とボトム側は2位置の上昇用電磁弁25aを介して工場エア26に接続されている。
油圧室22aとピストン24aとはプランジャポンプを形成しており、空気室23aのボトム側に空気圧が加わったときには油を所定量吐出し、ヘッド側に空気圧が加わったときには油を所定量吸い込むようになっている。
油圧室22aは管路30を介して開放型のリザーバタンク27に接続されており、また、管路30には第1のチェック弁31が介装されていて、第1のチェック弁31によってリザーバタンク27から油圧室22aの方向に油が流れるようになっている。また、油圧室22aは管路32を介して空油タンク13の油室側に接続されており、管路32には第2のチェック弁33が介装されていて、第2のチェック弁33によって油圧室22aから空油タンク13の方向に油が流れるようになっている。また、空油タンク13の油室は管路15により緩衝油圧シリンダ10に接続されている。
空油タンク13には空気室14が設けられており、空気室14には所定の圧力の空気が充填されていて油に所定の圧力を加えている。
【0031】
下降用プランジャポンプ21bは油圧室22bと空気室23bとピストン24bからなり、空気室23bのヘッド側とボトム側は2位置の下降用電磁弁25bを介して工場エア26に接続されている。油圧室22bとピストン24bとはプランジャポンプを形成しており、空気室23bのボトム側に空気圧が加わったときには油を所定量吐出し、ヘッド側に空気圧が加わったときには油を所定量吸い込むようになっている。
油圧室22bは管路34を介してリザーバタンク27に接続されており、また、管路34には第3のチェック弁35が介装されていて、第3のチェック弁35によって油圧室22bからリザーバタンク27の方向に油が流れるようになっている。また、油圧室22bは管路36により空油タンク13の油室に接続されており、管路36には第4のチェック弁37が介装されていて、第4のチェック弁37によって空油タンク13の油室から油圧室22bの方向に油が流れるようになっている。
【0032】
また、上昇用電磁弁25a及び下降用電磁弁25bの各ソレノイド部は、制御装置40に接続されている。制御装置40はクランク角度センサ16及びボルスタ加速度センサ18からの各検出信号を入力し、この検出信号に基づいて上昇用電磁弁25a及び下降用電磁弁25bの方向を切り換える。
【0033】
図2においては、上昇用電磁弁25aは(a)位置にあり、この位置では、工場エア26によって上昇用プラジャポンプ21aの空気室23aのヘッド側に空気圧が加えられ、ピストン24aは右側に移動し、油圧室22aにリザーバタンク27から油が管路30を経由して吸いこまれる。また、このとき、下降用電磁弁25bも(a)位置にあり、工場エア26によって下降用プランジャポンプ21bの空気室23bのボトム側に空気圧が加えられ、ピストン24bは左側に移動して油圧室22bの油をリザーバタンク27に管路34を経由して送る。
【0034】
緩衝ピストン12を上昇させるには、下降用電磁弁25bの作動を停止させて下降用プランジャポンプ21bの作動を停止させると同時に、下記のように、上昇用電磁弁25aを作動させて上昇用プランジャポンプ21aを作動させる。
まず、上昇用電磁弁25aを(b)位置から(a)位置に移動することにより、ピストン24aはリザーバタンク27から第1のチェック弁31及び管路30を経由して油圧室22aにピストン24aの1ストローク分の油を吸い込む。つぎに、上昇用電磁弁25aを(a)位置から(b)位置に移動することにより、ピストン24aは油圧室22a内の1ストローク分の油を吐出する。吐出された油は管路32、第2のチェック弁33及び空油タンク13を経由して緩衝油圧シリンダ10に送り込まれ、緩衝ピストン12を一定量上昇させる。以上の一連の作動で、上昇時の1サイクルが終了する。
【0035】
すなわち、ピストン24aを1ストローク作動させる毎に、一定量の油が吐出され、緩衝ピストン12の高さを所定距離ずつ上昇させることができる。したがって、緩衝ピストン12の上昇距離は上昇用電磁弁25aの作動回数によって調整可能となり、よってデジタル的に極めて精度良く緩衝ピストン12の高さを調整することができる。
なお、上記上昇用プランジャポンプ21aは定量吐出手段として作用している。
【0036】
また、緩衝ピストン12を下降させるには、同様にして、上昇用電磁弁25aの作動を停止させて上昇用プランジャポンプ21aの作動を停止させると同時に、下記のように、下降用電磁弁25bを作動させて下降用プランジャポンプ21bを作動させる。
まず、下降用電磁弁25bを(a)位置から(b)位置に移動することにより、ピストン24bは緩衝油圧シリンダ10から空油タンク13、第4のチェック弁37及び管路36を経由して油圧室22bにピストン24bの1ストローク分の油を吸い込む。このとき、緩衝ピストン12が一定量下降する。つぎに、下降用電磁弁25bを(b)位置から(a)位置に移動することにより、ピストン24bは油圧室22a内の1ストローク分の油を吐出し、この吐出された油は第3のチェック弁35及び管路34を経由してリザーバタンク27に戻される。以上の一連の作動で、下降時の1サイクルが終了する。
【0037】
すなわち、ピストン24bを1ストローク作動させる毎に、一定量の油が吸い込まれ、緩衝ピストン12の高さを所定距離ずつ下降させることができる。したがって、緩衝ピストン12の下降距離は下降用電磁弁25bの作動回数によって調整可能となり、よってデジタル的に極めて精度良く緩衝ピストン12の高さを調整することができる。
なお、下降用プランジャポンプ21bは定量排出手段として作用している。
【0038】
つぎに、制御方法について図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
ステップ51で、制御装置40は、クランク角度センサからの信号でプレスクランク角度が所定の角度範囲に入ったことを確認し、ボルスタ加速度センサ18からブレークスルー評価信号を入力する。そして、このブレークスルー評価信号に基づいて、所定のブレークスルー評価値を求めて記憶する。ここで、ブレークスルー評価値とはブレークスルー時の振動又は破断音等の大きさを評価する状態値を表しており、例えば、スライド加速度の最大値やこの最大値の平均値、又は破断時の騒音などで表される。
【0039】
次にステップ52で、制御装置40は、上記のブレークスルー評価値が最適値になるように、緩衝ピストン12の高さ位置を探索し、この高さ位置を目標値として決定する。なお、本実施形態では、ボルスタ加速度信号の最大振幅値をブレークスルー評価値としており、この最大振幅値が最小になるような緩衝ピストン12の位置を探索している。そして、ステップ53で制御装置40は、上記で探索した緩衝ピストン12の目標位置に基づいて、現在の緩衝ピストン12の高さから上昇させるべきか下降させるべきかを判断し、上昇させる場合にはステップ54に進み、下降させる場合にはステップ55に進む。
【0040】
ステップ54においては、制御装置40は緩衝ピストン12を目標位置まで所定距離上昇させる指令信号を出力する。すなわち、下降用電磁弁25bを(a)位置にしたままで停止させ、上昇用電磁弁25aを所定サイクル数だけ(a)位置と(b)位置間で切換える。これによって、所定量の油が上昇用プランジャポンプ21aから吐出され、空油タンク13を経由して緩衝油圧シリンダ10に送られ、緩衝ピストン12は所定距離上昇する。この後、ステップ51に戻って処理を繰り返す。
【0041】
ステップ55においては、制御装置40は緩衝ピストン12を目標位置まで所定距離下降させる指令信号を出力する。すなわち、上昇用電磁弁25aを(b)位置にしたままで停止させ、下降用電磁弁25bを所定サイクル数だけ(b)位置と(a)位置間で切換える。これにより、所定量の油が下降用プランジャポンプ21bによって緩衝油圧シリンダ10から排出され、リザーバタンク27に戻される。この結果、緩衝ピストン12は所定距離下降する。この後、ステップ51に戻って処理を繰り返す。
【0042】
以上の処理を繰り返すことにより、緩衝油圧シリンダ10とガイドポスト4との緩衝位置が最適タイミング位置となって行き、ブレークスルー時の振動や破断音を最小にすることが可能となる。このとき、緩衝ピストン12がディジタル的に正確に位置決めされるので、精度良く短時間で最適な緩衝位置が探索可能となる。また、インバータ回路のような大電流スイッチング回路を有していないので、ノイズ発生も少なくなる。
【0043】
次に、第2実施形態を説明する。本実施形態は、定量吐出手段及び定量排出手段として定量吐出型ポンプを使用した例を示している。
図4は本実施形態の油圧回路を示しており、ここでは、図2の構成と同じものには同一符号を付して説明を省く。定量吐出型ポンプ51aの入力ポートは管路30を介してリザーバタンク27に接続されており、また、管路30には第1のチェック弁31が介装されていて、第1のチェック弁31によってリザーバタンク27から定量吐出型ポンプ51aの方向に油が流れるようになっている。また、定量吐出型ポンプ51aの出力ポートは管路32を介して空油タンク13の油室側に接続されており、また、管路32には第2のチェック弁33が介装されていて、第2のチェック弁33によって定量吐出型ポンプ51aの出力ポートから空油タンク13の方向に油が流れるようになっている。また、空油タンク13の油室は、管路15により緩衝油圧シリンダ10に接続されている。
【0044】
定量吐出型ポンプ51aは回転駆動手段の一例としての電動モータ52aによって駆動されており、この電動モータ52aの駆動信号は駆動アンプ54aに接続されている。また、定量吐出型ポンプ51aの回転軸には、回転角度検出器53aが連結されている。この回転角度検出器53aからの角度信号は制御装置40に入力されており、また、制御装置40は駆動アンプ54aに駆動指令を出力している。
【0045】
また、同様に、定量吐出型ポンプ51bの出力ポートは管路34を介してリザーバタンク27に接続されており、また、管路34には第3のチェック弁35が介装されていて、第3のチェック弁35によって定量吐出型ポンプ51bの出力ポートからリザーバタンク27の方向に油が流れるようになっている。また、定量吐出型ポンプ51bの入力ポートは管路36を介して空油タンク13に接続されており、また、管路36には第4のチェック弁37が介装されていて、第4のチェック弁37によって空油タンク13の油室から定量吐出型ポンプ51bの入力ポートの方向に油が流れるようになっている。
【0046】
また、定量吐出型ポンプ51bは回転駆動手段の一例としての電動モータ52bによって駆動されており、この電動モータ52bの駆動信号は駆動アンプ54bに接続されている。また、定量吐出型ポンプ51bの回転軸には、回転角度検出器53bが連結されている。この回転角度検出器53bからの角度信号は制御装置40に入力されており、また、制御装置40は駆動アンプ54bに駆動指令を出力している。
【0047】
なお、定量吐出型ポンプ51a、51bは、例えば斜軸ポンプや斜板ポンプやギアポンプ等の定量吐出型ポンプを用いことができる。
【0048】
次に、上記のような構成における作用を説明する。基本的には、図3と同様のフローチャートに基づいて制御されるが、ステップ54、55での処理方法が異なっているので、このステップ54、55について説明する。定量吐出型ポンプ51a、51bによって、一定量の油を緩衝油圧シリンダ10に吐出し、又は緩衝油圧シリンダ10から排出するには、定量吐出型ポンプ51a、51bの回転角度を所定角度ずつ回転させるようにすればよい。すなわち、ステップ54で、緩衝ピストン12の高さを所定距離上昇させるには、制御装置40は、駆動アンプ54aに駆動指令を出力して電動モータ52aを回転させ、定量吐出型ポンプ51aを駆動する。そして、回転角度検出器53aの角度信号を入力し、定量吐出型ポンプ51aが所定の角度だけ回転したら、定量吐出型ポンプ51aを停止させる。これによって、回転角度に応じた一定量の油が緩衝油圧シリンダ10に吐出される。また、ステップ55で、緩衝ピストン12の高さを所定距離下降させるには、制御装置40は、上記と同様にして、駆動アンプ54bに駆動指令を出力して電動モータ52bを回転させ、定量吐出型ポンプ51bを駆動する。そして、回転角度検出器53bの角度信号を入力し、定量吐出型ポンプ51bが所定の角度だけ回転したら、定量吐出型ポンプ51bを停止させる。これによって、回転角度に応じた一定量の油が緩衝油圧シリンダ10から排出される。
【0049】
このように、定量吐出型ポンプ51a、51bの回転角度を任意に制御することにより、緩衝ピストン12の高さをディジタル的に精度良く制御できる。この結果、前実施例と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のブレークスルー緩衝装置を装着したプレス機械の構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態のブレークスルー緩衝装置の油圧回路図である。
【図3】本発明のブレークスルー緩衝装置の制御方法のフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態のブレークスルー緩衝装置の油圧回路図である。
【符号の説明】
4…ガイドポスト、10…緩衝油圧シリンダ、12…緩衝ピストン、13…空油タンク、20…油圧装置、21a…上昇用プランジャポンプ、21b…下降用プランジャポンプ、22a,22b…油圧室、23a,23b…空気室、24a,24b…ピストン、25a…上昇用電磁弁、25b…下降用電磁弁、26…工場エア、27…リザーバタンク、31…第1一方向弁、33…第2一方向弁、35…第3一方向弁、37…第4一方向弁、40…制御装置、51a、51b…定量吐出型ポンプ、52a、52b…電動モータ、53a、53b…回転角度検出器、54a、54b…駆動アンプ。
Claims (7)
- プレス機械の上下金型間に設けられた緩衝油圧シリンダ10によって、プレス機械が素材打ち抜き加工時に生じるブレークスルーを緩衝するプレス機械のブレークスルー緩衝装置において、
前記緩衝油圧シリンダ10に接続されたアキュムレータと、
油を貯溜する開放型のリザーバタンク27と、
前記リザーバタンク27の油を前記アキュムレータに定量ずつ供給し、前記緩衝油圧シリンダ10の緩衝位置を所定距離ずつ上昇させる定量吐出手段と、
前記アキュムレータから前記リザーバタンク27に油を定量ずつ排出し、前記緩衝油圧シリンダ10の緩衝位置を所定距離ずつ下降させる定量排出手段と、
前記定量吐出手段を制御する吐出制御手段と、
前記定量排出手段を制御する排出制御手段とを
備えたことを特徴とするプレス機械のブレークスルー緩衝装置。 - 請求項1に記載のプレス機械のブレークスルー緩衝装置において、前記アキュムレータは空油タンク13であることを特徴とするプレス機械のブレークスルー緩衝装置。
- 請求項1に記載のプレス機械のブレークスルー緩衝装置において、前記定量吐出手段及び前記定量排出手段は、それぞれ定量吐出型ポンプであることを特徴とするプレス機械のブレークスルー緩衝装置。
- プレス機械の上下金型間に設けられた緩衝油圧シリンダ10によって、プレス機械が素材打ち抜き加工時に生じるブレークスルーを緩衝するブレークスルー緩衝装置において、
前記緩衝油圧シリンダ10に接続されたアキュムレータと、
油を貯溜する開放型のリザーバタンク27と、
前記リザーバタンク27の油を前記アキュムレータに所定量ずつ供給し、前記緩衝油圧シリンダ10の緩衝位置を所定距離ずつ上昇させる上昇用プランジャポンプ21aと、
前記アキュムレータから前記リザーバタンク27に油を所定量ずつ排出し、前記緩衝油圧シリンダ10の緩衝位置を所定距離ずつ下降させる下降用プランジャポンプ21bと、
前記上昇用プランジャポンプ21aの前記アキュムレータへの油の供給、及び下降用プランジャポンプ21bの前記アキュムレータからの油の排出が同時に行われないように制御する制御器とを
備えたプレス機械のブレークスルー緩衝装置。 - 請求項4に記載のプレス機械のブレークスルー緩衝装置において、
前記上昇用プランジャポンプ21aを制御する上昇用電磁弁25aと、
前記下降用プランジャポンプ21bを制御する下降用電磁弁25bと、
前記上昇用プランジャポンプ21aとアキュムレータ及びリザーバタンク27間をそれぞれ接続する回路に、上昇用電磁弁25aの切り換え作動によりリザーバタンク27からアキュムレータへの方向に油が吐出されるように介装されたチェック弁31、33と、
前記下降用プランジャポンプ21bとアキュムレータ及びリザーバタンク27間をそれぞれ接続する回路に、下降用電磁弁25bの切り換え作動によりアキュムレータからリザーバタンク27への方向に油が排出されるように介装されたチェック弁35、37とを
備えたことを特徴とするプレス機械のブレークスルー緩衝装置。 - 請求項5に記載のプレス機械のブレークスルー緩衝装置において、
前記上昇用電磁弁25a又は下降用電磁弁25bを所定時間オンし、所定時間オフすることにより、上昇用プランジャポンプ21a又は下降用プランジャポンプ21bに一定量の油を吐出又は排出させる制御器を備えたことを
特徴とするプレス機械のブレークスルー緩衝装置。 - プレス機械の上下金型間に設けられた緩衝油圧シリンダ10の緩衝ピストン12の高さを調整することによって、プレス機械が素材打ち抜き加工時に生じるブレークスルーを緩衝するブレークスルー緩衝装置の制御方法において、
前記緩衝油圧シリンダ10の緩衝ピストン12を上昇させるときには、定量吐出手段を所定時間作動させて、リザーバタンク27に貯溜された油をアキュムレータを経由して前記緩衝油圧シリンダ10に定量ずつ吐出することにより、所定距離だけ上昇させ、また前記緩衝油圧シリンダ10の緩衝ピストン12を下降させるときには、定量排出手段を所定時間作動させて、油を前記緩衝油圧シリンダ10からアキュムレータを経由してリザーバタンク27に定量ずつ排出することにより、所定距離だけ下降させ、緩衝ピストン12の高さを調整することを
特徴とするプレス機械のブレークスルー緩衝装置の制御方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP24116296A JP3763368B2 (ja) | 1996-08-22 | 1996-08-22 | プレス機械のブレークスルー緩衝装置及びその制御方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP24116296A JP3763368B2 (ja) | 1996-08-22 | 1996-08-22 | プレス機械のブレークスルー緩衝装置及びその制御方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH1058200A JPH1058200A (ja) | 1998-03-03 |
JP3763368B2 true JP3763368B2 (ja) | 2006-04-05 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP24116296A Expired - Lifetime JP3763368B2 (ja) | 1996-08-22 | 1996-08-22 | プレス機械のブレークスルー緩衝装置及びその制御方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3763368B2 (ja) |
-
1996
- 1996-08-22 JP JP24116296A patent/JP3763368B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JPH1058200A (ja) | 1998-03-03 |
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