JP3763321B2 - 軟性眼内レンズの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は眼内レンズの製造方法に係り、特に、眼内挿入時に光学部を折曲げて小切開創からの挿入が可能な軟性眼内レンズの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
眼内レンズは、白内障等の疾病や事故等によって除去ないし損傷した水晶体の代替レンズとして使用されるものであり、この眼内レンズは、代替レンズとして機能する光学部と、この光学部を嚢内の中心位置に固定、保持するために当該光学部の外周に固定配置された支持部とから構成されている。
【0003】
従来より、光学部の材料としては硬質の材料であるポリメチルメタクリレート(PMMA)が主に使用されてきた。PMMAが眼内レンズの光学部として用いられる理由は、透明性および体内での安全性に優れる点および機械加工性に優れることから精巧なレンズを得ることができる点にある。一方、支持部の材料としてはPMMA,ポリプロピレン(PP)等が多用されている。支持部は、その材料となる支持部用部材を前記の光学部とは別途作製し、この支持部用部材を光学部の所定位置に固定配置(接合)することで形成されることが多く、このような支持部用部材としては上記の材料からなるフィラメントの弧状成形物が主に用いられている。
【0004】
光学部と支持部用部材との接合方法としては、支持部用部材を取り付ける小孔を光学部に予め設け、光学部を完成させた後に前記の小孔に支持部用部材の一端を挿入して、光学部を介してステーキング,レーザー照射等を行い、これによって支持部用部材の前記一端と当該一端が挿入されている部分の周辺の光学部との両方を溶融させた後、放冷して、支持部用部材と光学部とを熱融着させる方法が採用されている。
【0005】
ところで、近年、超音波乳化吸引術等の普及にともない、術後乱視と手術侵襲の軽減を目的として、小切開創からの挿入が可能な眼内レンズが開発されてきている。この眼内レンズは、光学部の材料として軟性高分子材料を使用することにより、当該光学部を折曲げて小切開創からの挿入を可能にしたものであり、軟性眼内レンズと呼ばれている。
【0006】
しかし、軟性高分子材料には機械加工、特にPMMA製の眼内レンズを製造する際に従来より行われている切削加工および研磨加工を施すことが困難である。そのため、光学部の形成原料であるモノマー、プレポリマー、オリゴマー等を型内で重合するキャストモールド法等によって光学部が得られている。そして支持部用部材の取り付け方法としても、従来のように光学部に機械的に小孔を設けるということが困難であることから、また、軟性高分子材料にステーキングを施しても当該軟性高分子材料をきれいに溶融させることができず、むしろ白化して粉状になることが多いことから、従来とは異なる手法を用いなければならない。
【0007】
このような軟性眼内レンズの製造方法として特開昭62−142558号および特開昭62−152450号の各公報には、フィラメントの末端部に球根状等の機械的な係合部を一体的に形成してなる支持部用部材、或はフィラメントの末端に機械的な係合部を形成する別の部材を接合してなる支持部用部材を用い、これら支持部用部材の末端部分を成形型内に挿入した後、光学部となる軟性高分子材料の原料を注入して加熱重合することにより、離脱しにくい支持部を有する眼内レンズを製造する方法が開示されている。
【0008】
また、特開平4−292609号公報においては次のような方法が開示されている。すなわち、成形型内で軟性光学部用モノマーを重合して軟性光学部を得た後、軟性光学部の硬度を高めるために型ごとフリーザー中で冷却し、この状態下で、支持部用部材を挿入するための小孔(支持部用部材挿入孔)とアンカーフィラメントを挿入するための小孔(アンカーフィラメント挿入孔)とを機械的に設ける。次に、軟性光学部に設けられた支持部用部材挿入孔に支持部用部材を挿入し、アンカーフィラメント挿入孔にも支持部用部材と同材質のフィラメントを挿入し、支持部用部材とアンカーフィラメントの交点にレーザビームを照射して、熱融着させる。さらに、アンカーフィラメント挿入孔がフィラメント材料で満たされるまで、レーザビームをこの挿入孔にそって照射して眼内レンズを製造する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、軟性眼内レンズの製造方法は種々あるが、これらはいずれも煩雑、複雑な操作を伴う。
すなわち特開昭62−142558号および特開昭62−152450号の各公報に開示されている方法では、支持部となるフィラメント(支持部用部材)を加熱して、その末端部分を複雑な形状に加工しなければならない。支持部となるフィラメントは径が0.15mm程度のものであり、この末端部分を全て同じ形状に熱溶融により加工するには非常に煩雑で微細な加工工程を設けなければならない。
【0010】
また特開平4−292609号公報に記載の方法では、成形型内で軟性光学部用モノマーを重合して軟性光学部を得た後に、型ごとフリーザー中で冷却することにより軟性光学部の硬度を高め、この状態下で、支持部用部材挿入孔とアンカーフィラメント挿入孔とを機械的に改めて設ける必要がある。さらに、支持部用部材挿入孔に挿入された支持部用部材とアンカーフィラメント挿入孔に挿入されたアンカーフィラメントとをレーザビームの照射によって溶融融着させる他に、アンカーフィラメント挿入孔がフィラメント材料で満たされるまでレーザビームを照射しなければならない。
【0011】
本発明は、軟性眼内レンズをより容易に製造することができる軟性眼内レンズの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明の軟性眼内レンズの製造方法は、熱処理用の有底の穴を光学部に形成するための突起と、光学部の側面から該光学部の内部に支持部用部材の一端を挿入するための支持部用部材挿入孔を形成するための針状部材と、この針状部材をその一端が成形型の内部空間に突出するようにして着脱自在に保持する針状部材保持部とを備えた成形型内で、前記針状部材保持部によって前記針状部材を着脱自在に保持しつつ、眼内挿入時に変形可能な軟性高分子材料の液状原料を重合させて、前記熱処理用の有底の穴と前記支持部用部材挿入孔とを備え、光学部の側面近傍に底面を有し、光学部の光学面の縁部に開口する前記熱処理用の有底の穴が前記支持部用部材挿入孔の途中で該支持部用部材挿入孔と交差している光学部を得る第1の工程と、前記第1の工程で得られた光学部の前記支持部用部材挿入孔に支持部用部材の一端を挿入し、この状態下で前記熱処理用の有底の穴を通して前記支持部用部材の前記一端に熱を加えて、該一端と前記光学部とを前記熱処理用の有底の穴の底部周辺で熱融着させる第2の工程とを含むことを特徴とするものである(以下、この方法を「方法I」という。)。
【0013】
さらに、上記の目的を達成する本発明の軟性眼内レンズの他の製造方法は、熱処理用の有底の穴を光学部に形成するための突起と、支持部用部材をその一端が成形型の内部空間に突出するようにして着脱自在に保持する支持部用部材保持部とを備えた成形型内で、前記支持部用部材保持部によって前記支持部用部材を着脱自在に保持しつつ、眼内挿入時に変形可能な軟性高分子材料の液状原料を重合させて、光学部の側面近傍に底面を有し、光学部の光学面の縁部に開口する前記熱処理用の有底の穴を有する光学部と、この光学部の側面から前記熱処理用の有底の穴を横断するようにして該光学部の内部に一端を挿入した状態で配設された支持部用部材からなる支持部とを備えた第1の軟性眼内レンズを得る工程と、前記第1の軟性眼内レンズに設けられている前記熱処理用の有底の穴を通して前記支持部用部材の前記一端に熱を加え、該一端と前記光学部とを前記熱処理用の有底の穴の底部周辺で熱融着させて、光学部と該光学部に固着された支持部とを備えた第2の軟性眼内レンズを得る工程とを含むことを特徴とするものである(以下、この方法を「方法II」という。)。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
先ず本発明の方法Iについて説明すると、この方法Iは、上述のように、眼内挿入時に変形可能な軟性高分子材料の液状原料を特定の成形型内で重合させて所定の光学部を成形する第1の工程と、この第1の工程で得られた光学部に特定の方法で支持部用部材の一端を熱融着させる第2の工程とを含んでいる。
【0015】
第1の工程では、熱処理用の有底の穴を光学部に形成するための突起と、光学部の側面から当該光学部の内部に支持部用部材の一端を挿入するための支持部用部材挿入孔を形成するための針状部材と、この針状部材をその一端が成形型の内部空間に突出するようにして着脱自在に保持する針状部材保持部とを備えた成形型を使用する。そして、この第1の工程では、上記の成形型を用いて、熱処理用の有底の穴と支持部用部材の一端を光学部に挿入するための支持部用部材挿入孔とを備え、熱処理用の有底の穴が支持部用部材挿入孔の途中で当該支持部用部材挿入孔と交差している光学部を得る。
【0016】
成形型に設けられている突起によって光学部に形成する熱処理用の有底の穴は、後述する第2の工程において特定の方法で光学部に支持部用部材の一端を熱融着させる際に利用するものであり、この熱処理用の有底の穴は、上述のように、支持部用部材の一端を光学部の内部に挿入するための支持部用部材挿入孔の途中で当該支持部用部材挿入孔と交差する。そして、後述する第2の工程での光学部と支持部用部材の一端との熱融着の位置は、熱処理用の有底の穴と支持部用部材挿入孔との交差部周辺である。支持部用部材の一端を光学部の内部深くまで挿入すると軟性眼内レンズの光学特性を損なうおそれがあるので、当該交差部の位置は光学部の側面近傍であることが好ましい。
【0017】
したがって、熱処理用の有底の穴は光学部の側面近傍にその底面を有し、かつ、光学部の光学面の縁部または光学部の側面に開口しているものであることが好ましい。これに伴って、上記の突起の配設位置は、光学部における側面近傍にその底面を有し、かつ、光学部の光学面の縁部または光学部の側面に開口する熱処理用の有底の穴を形成することができる位置であることが好ましい。
【0018】
熱処理用の有底の穴の横断面形状は特に限定されるものではなく、円形,矩形等、適宜選択可能であるが、後述する第2の工程で光学部と支持部用部材の一端とを熱融着させるうえから、当該熱処理用の有底の穴の横断面形状を円形とする場合にはその直径を概ね0.1mm以上とすることが好ましく、当該熱処理用の有底の穴の横断面形状を円形以外の形状とする場合にはその最短径を0.1mm以上とすることが好ましい。熱処理用の有底の穴の径をあまりに大きくすると軟性眼内レンズの光学特性を損なうおそれがあるので、当該熱処理用の有底の穴の横断面形状を円形とする場合にはその直径を概ね0.5mm以下とすることが好ましく、当該熱処理用の有底の穴の横断面形状を円形以外の形状とする場合にはその最長径を0.5mm以下とすることが好ましい。また、熱処理用の有底の穴と支持部用部材挿入孔との交差部における熱処理用の有底の穴の径のうち、支持部用部材挿入孔に挿入された支持部用部材の一端の当該交差部における幅(熱処理用の有底の穴の開口部側から平面視したときの前記一端の幅)方向と同一方向の径については、支持部用部材の前記の幅と同等であるか若干大きめであることが好ましい。熱処理用の有底の穴の深さは、当該熱処理用の有底の穴が光学部の光学面に開口したものである場合には、光学部の縁部における厚さと支持部用部材の前記一端の厚さ(光学部の光軸と平行な方向の寸法)に応じて概ね0.1〜0.4mmの範囲内で適宜選択可能であり、当該熱処理用の有底の穴が光学部の側面に開口したものである場合には概ね0.1〜0.3mmの範囲内で適宜選択可能である。
【0019】
したがって、第1の工程で用いられる成形型における上記の突起の横断面形状、径および長さは、光学部に形成しようとする熱処理用の有底の穴の横断面形状、径および深さに応じて適宜選択される。
【0020】
また、熱処理用の有底の穴は、支持部用部材挿入孔の途中で当該支持部用部材挿入孔と交差するものであるので、互いに交差した熱処理用の有底の穴および支持部用部材挿入孔を容易に形成するうえから、上記の突起はその上部において後記の針状部材の一端を係止する係止部を有していることが好ましい。この係止部の具体例としては、図9(a)〜(c)に示すように、上記の突起40の先端部に設けられた貫通孔41a、上記の突起40の先端部に設けられたU字状の溝41b、上記の突起40の先端部に設けられたV字状の溝41c等が挙げられる。また、縦断面が鉛直方向上方または側方に開口部を有するコの字状の凹部であってもよい。
【0021】
方法Iで使用する成形型は、上述した突起の他に、光学部の側面から当該光学部の内部に支持部用部材の一端を挿入するための支持部用部材挿入孔を形成するための針状部材と、この針状部材をその一端が成形型の内部空間(キャビティ)に突出するようにして着脱自在に保持する針状部材保持部とを備えている。
【0022】
針状部材は、支持部用部材の一端を光学部に挿入するための支持部用部材挿入孔を形成する都合上、光学部の成形後に当該光学部から抜去する必要があるので、当該針状部材において成形型の内部空間に突出する前記一端については、光学部からの抜去時にその妨げとなる凸部がない形状とすることが好ましい。また、針状部材によって形成される支持部用部材挿入孔は、後述の支持部用部材の一端を少なくとも前記の交差部まで挿入することができるものであればよいが、その横断面形状は支持部用部材の前記一端の横断面形状と相似形をなしていることが好ましく、かつ、当該横断面の大きさは支持部用部材の前記一端の横断面の大きさより若干大きいことが好ましい。したがって針状部材は、その横断面形状、特に、成形型の内部空間に突出する一端の横断面形状が、支持部用部材の前記一端の横断面形状と相似形をなし、かつ、当該横断面の大きさが支持部用部材の前記一端の横断面の大きさより若干大きいものであることが好ましい。
【0023】
針状部材の材質は、光学部の成形時に変形を起こさないものであればよく、その具体例としては後述する支持部用部材の材質と同じものの他、PVDF(ポリフッ化ビニリデン),ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体),FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体),PFA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂),PTFE(ポリ四フッ化エチレン)等のフッ素系樹脂や、鉄,アルミニウム,真鍮等の金属が挙げられる。これらの中でも、成形後の光学部からの抜去が容易であるという観点から、PVDF等のフッ素系樹脂(モノフィラメント)が好ましい。また、針状部材の配設数は、目的とする軟性眼内レンズに所定の支持部を形成するうえで必要な数とし、当該配設数は目的とする軟性眼内レンズの形状等に応じて適宜選択される。したがって、支持部用部材挿入孔と交差する熱処理用の有底の穴の配設数も、支持部用部材挿入孔の数に応じて適宜選択され、これに伴って、熱処理用の有底の穴を光学部に形成するための突起の配設数も適宜選択される。
【0024】
上述した針状部材は、針状部材保持部によって着脱自在に保持されるわけであるが、針状部材によって形成される支持部用部材挿入孔と前述した熱処理用の有底の穴との交差部の位置は、前述のように光学部の側面近傍であることが好ましく、また、支持部用部材の一端を光学部の内部深くまで挿入すると軟性眼内レンズの光学特性を損なうおそれがあるので、支持部用部材挿入孔の深さは概ね0.5〜3.0mmの範囲内とすることが好ましい。さらに、支持部用部材挿入孔は光学部の側面から当該光学部の内部に達するものであればよいが、その深さ方向は、光学部の主平面に対して0〜15度の範囲内で傾いていることが好ましい。したがって、針状部材保持部による針状部材の保持は、針状部材の一端が成形型の内部空間に概ね0.5〜3.0mm突出し、かつ、その突出方向が光学部の主平面に対して0〜15度の範囲内で傾くように行うことが好ましい。
【0025】
針状部材保持部は、上述した針状部材を着脱自在に保持することができるものであればよく、その具体例としては、成形型の壁面に形成された貫通孔等が挙げられる。
【0026】
第1の工程で使用する成形型は、上述した突起、針状部材および針状部材保持部を備え、かつ、人眼水晶体の代替レンズとして機能し得る光学部(収束レンズ)を形成することができるものであればよい。光学部は、両凸レンズ,平凸レンズ,メニスカスレンズ等とすることができ、どのようなレンズ断面形状とするかは適宜選択可能である。したがって、成形型の内部空間(キャビティ)の形状も、目的とする軟性眼内レンズにおける光学部の形状に応じて適宜選択される。
【0027】
第1の工程では、針状部材保持部によって針状部材を着脱自在に保持しつつ、眼内挿入時に変形可能な軟性高分子材料の液状原料を上述した成形型内で重合させて、熱処理用の有底の穴と支持部用部材挿入孔とを備え、熱処理用の有底の穴が支持部用部材挿入孔の途中で当該支持部用部材挿入孔と交差している光学部を得る。このとき、前述した針状部材の一端(成形型の内部空間に突出している一端)は、互いに交差した熱処理用の有底の穴および支持部用部材挿入孔を容易に形成するうえから、光学部に熱処理用の有底の穴を形成するための突起の上部において当該突起によって係止されていることが好ましい。
【0028】
なお、本発明でいう「熱処理用の有底の穴が支持部用部材挿入孔の途中で当該支持部用部材挿入孔と交差している」とは、熱処理用の有底の穴と支持部用部材挿入孔とが支持部用部材挿入孔の途中(先端部を含む)で互いに交差している状態を意味する他、熱処理用の有底の穴が支持部用部材挿入孔の途中(先端部を含む)で当該支持部用部材挿入孔から分岐した状態を呈する場合をも意味する。
【0029】
光学部を形成するために使用する前記の液状原料としては、軟性眼内レンズの光学部を形成することができるものであればいかなるものも使用可能であるが、特にシリコーン樹脂,アクリル樹脂およびヒドロゲルから選ばれる一種用の液状原料(モノマー,プレポリマー,オリゴマー等)が好ましい。
【0030】
例えば、シリコーン樹脂からなる光学部を得る場合には、上記の液状原料として液状のポリジオルガノシロキサンが用いられ、これを前記の成形型内で種々の方法により硬化させることにより、目的とする光学部が得られる。なお、この場合の「硬化」とは、液状のポリジオルガノシロキサンが三次元的な反応により液状からゴム状へと相変化するという意味である。ポリジオルガノシロキサンとしては、側鎖および末端にメチル基,フェニル基,トリフルオロプロピル基,ハイドライド基,シラノール基,ビニル基を置換基として有するものが使用できる。硬化の方法としては、過酸化物によるメチル基とビニル基の反応による硬化、金属塩触媒によるハイドライド基とシラノール基の脱水素反応による硬化、シラノール基同士の脱水縮合反応による硬化、白金触媒によるハイドライド基とビニル基のビニル付加反応による硬化等の反応があり、これらの反応によりシリコーン樹脂製の光学部が得られる。
【0031】
アクリル樹脂からなる光学部を得る場合には、前記の液状原料として、アクリル酸エステルモノマー類,メタクリル酸エステルモノマー類および架橋性モノマーから選択されるモノマーの1種以上が使用できる。このようなモノマーを例示すると2−エチルフェノキシメタクリレート,2−エチルフェノキシアクリレート,フェニルメタクリレート,ベンジルメタクリレート,2−フェニルエチルメタクリレート,3−フェニルプロピルメタクリレート,4−フェニルブチルメタクリレート等のフェニル基含有メタクリレートおよびアクリレート、更にn−ブチルアクリレート,イソブチルアクリレート,イソアミルアクリレート,ヘキシルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,オクチルアクリレート,イソオクチルアクリレート,デシルアクリレート,イソデシルアクリレート等のアルキルメタクリレートおよびアクリレート、パーフルオルオクチルエチルオキシプロピレンメタクリレート等が挙げられる。架橋性モノマーとしては、エチレングリコールジメタクリレート,ジエチレングリコールジメタクリレート,1,4−ブタンジオールジメタクリレート等が挙げられる。これらのモノマーの重合に際して、紫外線吸収能を有するモノマー類、黄色等の重合性色素類等を使用することもできる。上記モノマーの適宜な混合物に、ラジカル重合開始剤を加えて重合することによりアクリル樹脂製の光学部が得られる。
【0032】
ヒドロゲルからなる光学部を得る場合は、前記の液状原料としてポリヒドロキシエチルメタクリレートのモノマーやポリビニルピロリドンのモノマーが用いられる。これらのモノマーをヒドロゲル材料を形成し得る条件下に重合することによりヒドロゲルからなる軟性光学部が得られる。また、ヒドロゲルとしてはポリビニルアルコールを用いることもでき、この場合には前記の液状原料としてDMSO(ジメチルスルホキシド)/水混合溶媒にポリビニルアルコールを溶解させたものが用いられる。この溶液を低温結晶化後、ゲル中のDMSOを水で完全置換することにより、ポリビニルアルコールからなる光学部が得られる。なお、ポリビニルアルコールからなる光学部を得る場合においては、「液状原料を重合させる」という表現は厳密には正しくないが、本明細書ではこの場合も「液状原料を重合させる」というものとする。
【0033】
上述した液状原料を前述した成形型内で重合させた後、重合体を離型し、当該離型前または離型後に前記の針状部材を抜去することにより、熱処理用の有底の穴と支持部用部材挿入孔とを備え、熱処理用の有底の穴が支持部用部材挿入孔の途中で当該支持部用部材挿入孔と交差している光学部を得ることができる。
【0034】
本発明の方法Iでは、上述した第1の工程により上記の光学部を得た後、当該光学部に形成されている支持部用部材挿入孔に支持部用部材の一端を挿入し、この状態下で熱処理用の有底の穴を通して支持部用部材の前記一端に熱を加えて、当該一端と光学部とを熱処理用の有底の穴の底部周辺で熱融着させる第2の工程を行う。
【0035】
第2の工程で使用する支持部用部材は、その一端を支持部用部材挿入孔に挿入して光学部と熱融着させることによって軟性眼内レンズ用の支持部を形成することができるものであればよい。このような支持部用部材の具体例としては、所定材料からなるフィラメントの弧状成形物が挙げられ、この支持部用部材は、当該支持部用部材が光学部の径方向の外側から当該光学部を囲むようにして、一端または両端を光学部に熱融着される。
【0036】
上記の支持部用部材は、従来より眼内レンズの支持部用材料として用いられてきた熱可塑性樹脂からなるものであればよいが、特にPMMA,メチルメタクリレート系共重合体,ポリプロピレン,ポリアミド,フッ素系樹脂(ポリフッ化ビニリデン等),ポリイミド,ポリカーボネート等が好ましい。
【0037】
支持部用部材と光学部との熱融着は、支持部用部材の一端が熱処理用の有底の穴と支持部用部材挿入孔との交差部まで、または当該交差部よりさらに奥にまで達するようにして当該一端を支持部用部材挿入孔に挿入し、この状態下で熱処理用の有底の穴を通して支持部用部材の前記一端に熱を加えることによって行われる。
【0038】
ここで、本発明でいう「熱処理用の有底の穴を通して支持部用部材の一端に熱を加える」とは、
(1) 加熱した部材を熱処理用の有底の穴に挿入して、支持部用部材の前記一端のうちで前記の交差部に位置する部分が軟化ないし溶融するまでステーキングを行う、
または、
(2) 熱処理用の有底の穴が光路となるようにして、支持部用部材の前記一端のうちで前記の交差部に位置する部分が軟化ないし溶融するまでレーザービームを照射する
ことを意味する。なお、「熱処理用の有底の穴を通して支持部用部材の一端に熱を加える」にあたっては、光学部のうちで熱処理用の有底の穴の側壁に該当する部分や熱処理用の有底の穴の底部に該当する部分が、ステーキングまたはレーザービームの照射によって変成しないようにすることが好ましい。
【0039】
上述のようにして「熱処理用の有底の穴を通して支持部用部材の一端に熱を加え」た後、放冷または強制的に冷却して、支持部用部材の前記一端のうちで軟化ないし溶融した部分を固化させることにより、支持部用部材の前記一端と光学部とを熱融着させることができる。
【0040】
支持部用部材の前記一端と光学部とを上述のようにして熱融着させることにより実用に供し得る軟性眼内レンズが得られるが、この後必要に応じてバレル研磨を行う。バレル研磨は、例えば、第2の工程で得られた軟性眼内レンズを、蒸留水,アルコールまたはアルコール水溶液中において、ガラスビーズおよび研磨剤を用いて、温度約−2〜5℃の範囲内で約3〜7日間行う。
【0041】
なお、熱処理用の有底の穴は、眼内における軟性眼内レンズの位置固定のためのポジショニングホールとして利用することができるが、近年の手術技術の向上に伴いポジショニングホールは必須ではなくなりつつあるので、当該熱処理用の有底の穴は最終的に支持部用部材と同系統の樹脂(PMMA等のアクリル系樹脂,ポリプロピレン,ポリアミド,フッ素系樹脂,ポリイミド,ポリカーボネート等)、または光学部と同系統の樹脂(シリコーン系樹脂,アクリル系樹脂等)、あるいはエポキシ樹脂や光硬化性樹脂等によって封鎖ないし閉塞してもよい。この封鎖ないし閉塞は、例えば、上述した樹脂の糸状のものを熱することにより溶融させて当該有底の穴に流し込むか滴下する方法、当該有底の穴に注入したモノマー等の溶液に可視光や紫外線を照射して光重合させる方法等により行うことができる。
【0042】
上述のようにして少なくとも第1の工程および第2の工程の2つの工程を行うことにより、目的とする軟性眼内レンズを得ることができる。
【0043】
次に、本発明の方法IIについて説明する。
本発明の方法IIは、前述したように、熱処理用の有底の穴を光学部に形成するための突起と、支持部用部材をその一端が成形型の内部空間に突出するようにして着脱自在に保持する支持部用部材保持部とを備えた成形型内で、支持部用部材保持部によって支持部用部材を着脱自在に保持しつつ、眼内挿入時に変形可能な軟性高分子材料の液状原料を重合させて、熱処理用の有底の穴を有する光学部と、この光学部の側面から熱処理用の有底の穴を横断するようにして当該光学部の内部に一端を挿入した状態で配設された支持部用部材からなる支持部とを備えた第1の軟性眼内レンズを得る工程と、第1の軟性眼内レンズに設けられている熱処理用の有底の穴を通して支持部用部材の前記一端に熱を加え、当該一端と光学部とを熱処理用の有底の穴の底部周辺で熱融着させて、光学部と当該光学部に固着された支持部とを備えた第2の軟性眼内レンズを得る工程とを含むことを特徴とするものである。
【0044】
第1の軟性眼内レンズを得る工程で使用する成形型は、上述のように、熱処理用の有底の穴を光学部に形成するための突起と、支持部用部材をその一端が成形型の内部空間に突出するようにして着脱自在に保持する支持部用部材保持部とを備えている。前記の突起は、本発明の方法Iで使用する成形型に設けられている「熱処理用の有底の穴を光学部に形成するための突起」と機能および形体の点で同じものである。また、支持部用部材保持部は、保持する対象が支持部用部材である点を除けば本発明の方法Iで使用する成形型に設けられている針状部材保持部と同じであるが、第1の軟性眼内レンズを成形型から離型する都合上、縦断面がU字状,V字状等を呈する溝が好ましい。そして、上記の成形型の内部空間(キャビティ)の形状は、方法Iで使用する成形型と同様に、目的とする軟性眼内レンズにおける光学部の形状に応じて適宜選択される。
【0045】
第1の軟性眼内レンズは、支持部用部材保持部によって支持部用部材を着脱自在に保持した上述の成形型内で、眼内挿入時に変形可能な軟性高分子材料の液状原料を重合させることによって得られる。このとき使用する支持部用部材としては、本発明の方法Iの説明の中で例示したものと同じものが挙げられる。また、前記の液状原料としても、本発明の方法Iの説明の中で例示したものと同じものが挙げられる。
【0046】
方法IIでは、上述の工程によって第1の軟性眼内レンズを得た後、当該第1の軟性眼内レンズに設けられている熱処理用の有底の穴を通して支持部用部材の前記一端に熱を加え、当該一端と光学部とを熱処理用の有底の穴の底部周辺で熱融着させて、光学部と当該光学部に固着された支持部とを備えた第2の軟性眼内レンズを得る工程を行う。この第2の軟性眼内レンズを得る工程での支持部用部材と光学部との熱融着は、本発明の方法Iでの熱融着と同様にして行われるので、ここではその説明を省略する。この熱融着により支持部用部材と光学部とが固着して、目的とする第2の軟性眼内レンズが得られる。
【0047】
この第2の軟性眼内レンズは、そのままでも実用に供することが可能であるが、方法IIでは、上述のようにして第2の軟性眼内レンズを得た後、方法Iによって軟性眼内レンズを得る場合と同様に、必要に応じて当該第2の軟性眼内レンズをバレル研磨によって研磨を行う。また、前記熱処理用の有底の穴は、方法Iの説明の中で述べたように、所定の物質および方法によって封鎖ないし閉塞してもよい。
【0048】
【作用】
本発明の方法では、
(1) 眼内挿入時に変形可能な軟性高分子材料の液状原料を所定の成形型内で重合させて、熱処理用の有底の穴と光学部の側面から当該光学部の内部に支持部用部材の一端を挿入するための支持部用部材挿入孔とを備えた光学部を得る(方法I)、
または、
(2) 眼内挿入時に変形可能な軟性高分子材料の液状原料を所定の成形型内で重合させて、熱処理用の有底の穴を有する光学部と、この光学部の側面から熱処理用の有底の穴を横断するようにして当該光学部の内部に一端を挿入した状態で配設された支持部用部材からなる支持部とを備えた第1の軟性眼内レンズを得る(方法II)
ので、光学部をフリーザー中で冷却した状態下で当該光学部に所望の孔を機械的に設けるという従来の手法を適用する必要がない。
【0049】
また、支持部用部材と光学部とは、支持部用部材挿入孔に挿入された支持部用部材の一端に前記熱処理用の有底の穴を通して熱を加えることによって熱融着され、これによって固着されるので、支持部用部材の前記一端に機械的な係合部を形成するという従来の手法を適用する必要がない。
【0050】
さらに、光学部のうちで熱処理用の有底の穴の側壁に該当する部分や、熱処理用の有底の穴の底部に該当する部分が熱変成しないようにして支持部用部材と光学部と熱融着させることは容易である。このため、軟性高分子材料からなる光学部を白化ないし粉状にさせることなく当該光学部に支持部用部材を容易に固着させることができる。
これらの理由から、本発明の方法によれば、目的とする軟性眼内レンズを容易に得ることが可能になる。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、これらの実施例は本発明を例示するものであり、本発明を限定するものではない。
【0052】
実施例1(方法Iによる軟性眼内レンズの製造)
(1)第1の工程
眼内レンズを得るための成形型として、図1にその概略を示す下型1と、図示を省略した上型とからなるものを用いた。
図1に示した下型1の内部底面2は、両凸レンズからなる眼内レンズの一方の光学面に対応した凹面形状を呈し、この内部底面2には、熱処理用の有底の穴を光学部に形成するための突起3が2本、それぞれ所定の位置に設けられている。各突起3の高さは下型1の側壁4の高さよりも高く、側壁4には、図示を省略した針状部材をその一端が成形型の内部空間に突出するようにして着脱自在に保持する針状部材保持部5として貫通孔が2つ、それぞれ所定の位置に設けられている。なお、図2にその概略を拡大して示すように、突起3の先端部には、針状部材の一端を係止する係止部6として貫通孔が設けられている。
【0053】
この下型1の各針状部材保持部5に針状部材を挿入し、その一端を突起3の先端部に設けられている係止部6にそれぞれ係止させた後、図示を省略した上型と組合わせて所定の成形型とした。そして、この成形型のキャビティに軟性高分子材料の液状原料を注入した。当該液状原料の組成は下記のとおりである。
【0054】
【0055】
成形型を密閉後、窒素圧2.0kg/cm2 、温度110℃の条件で2時間加圧重合を行った。上記の液状原料の重合が完了した後の成形型内における重合体および針状部材の概略の平面図を図3に、また、図3に示したA−A線方向の断面の概略を図4に示す。
図3および図4に示したように、上記の液状原料の重合により両凸レンズ形状を呈する重合体10が形成され、この重合体10には未だ針状部材11が挿入されている。また、この重合体10は未だ突起3と係合した状態にあるが、離型後においては、当該突起3との係合箇所が熱処理用の有底の穴となる。なお、図3および図4においては、突起3および針状部材11以外の下型1ならびに上型の図示を省略している。
【0056】
この後、各針状部材11を抜去し、重合体10を成形型から離型して、目的とする光学部を得た。この光学部の概略の平面図を図5に、また、図5に示したB−B線方向の断面の概略を図6に示す。
図5および図6に示したように、上記の光学部20は両凸レンズ形状を呈し、この光学部20は熱処理用の有底の穴21を2つ、また、支持部用部材挿入孔22を2つ、それぞれ備えている。各熱処理用の有底の穴21は、光学部20の一方の光学面の縁部にそれぞれ開口しており、その横断面は直径0.3mmの円形を呈する。一方、各支持部用部材挿入孔22は、光学部20の側面から当該光学部20の内部に達する深さ2.0mmの孔であり、その横断面は直径0.17mmの円形を呈する。また、光学部20の主平面に対して5度傾けて設けられている。そして、各熱処理用の有底の穴21は2つの支持部用部材挿入孔22のいずれか一方とその途中で交差している。
【0057】
(2)第2の工程
PMMA製フィラメントを弧状に熱成形することによって得た支持部用部材を2本用意し、第1の工程で得られた光学部20に設けられている2つの支持部用部材挿入孔22のそれぞれに、前記の支持部用部材の一端をその奥まで挿入した。このとき、各支持部用部材が光学部20の径方向から当該光学部20を囲むように、各支持部用部材の所定の一端を挿入した。
【0058】
次に、光学部20に設けられている2つの熱処理用の有底の穴21のそれぞれに加熱したステーキング用ロッドを挿入し、各支持部用部材挿入孔22のそれぞれに挿入されている支持用部材の前記一端のうちで熱処理用の有底の穴21と支持部用部材挿入孔22との交差部に位置する部分が溶融するまでステーキングを行った。このとき、光学部20のうちで熱処理用の有底の穴21の側壁に該当する部分および熱処理用の有底の穴21の底部に該当する部分が熱変成しないようにした。
【0059】
ステーキングの後に放冷して、支持部用部材の前記一端のうちで溶融した部分を固化させた。これによって、支持部用部材の前記一端と光学部20とが熱融着し、光学部20および2つの支持部を備えた軟性眼内レンズが得られた。この軟性眼内レンズの概略の平面図を図7に、また、図7に示したC−C線方向の概略の断面を図8に示す。
【0060】
図7および図8に示した軟性眼内レンズ30は、眼内挿入時に変形可能な軟性材料からなる両凸レンズ形状の光学部20と、この光学部20を眼内に固定、保持するための2つの支持部31とを備えている。光学部20の一方の光学面の縁部には、当該軟性眼内レンズ30を製造する際に利用した熱処理用の有底の穴21が開口している。各支持部31は、一端を光学部20の側面から当該光学部20の内部に挿入した状態で配設された支持部用部材31aからなる。各支持部用部材31aはそれぞれ弧状を呈し、これらの支持部用部材31aは、光学部20の径方向外側から当該光学部20を囲むように配設されている。そして、各支持部用部材31aの配設は、当該支持部用部材31aの前記一端を熱処理用の有底の穴21の底部周辺で光学部20に熱融着させることでなされている。
【0061】
(3)研磨工程
上記の軟性眼内レンズ30をガラスビーズ,研磨剤および水と共にボトルに入れて湿式のバレル研磨を5日間行って、目的とする軟性眼内レンズを得た。
【0062】
実施例2(方法IIによる軟性眼内レンズの製造)
(1)第1の軟性眼内レンズの製造
貫通孔からなる針状部材保持部5(図1参照)に代えてU字状の溝からなる支持部用部材保持部が下型の側壁上面に形成されている以外は実施例1で用いたと同じ成形型を用意した。また、実施例1で用いた支持部用部材と同一形状を呈するPP製の支持部用部材を用意した。
そして、針状部材に代えて上記PP製の支持部用部材を用い、かつ、軟性高分子材料の液状原料として下記のポリジメチルシリコーンからなる主剤と硬化剤の混合物を使用した以外は実施例1と同様にして、成形型による光学部の成形を行った。ただし、下記混合物の重合は、循環恒温槽中において80℃で48時間加熱することにより行った。
【0063】
【0064】
重合終了後に離型して、熱処理用の有底の穴を有する光学部と、この光学部の側面から熱処理用の有底の穴を横断するようにして当該光学部の内部に一端を挿入した状態で配設されたPP製の支持部用部材からなる支持部とを備えた第1の軟性眼内レンズを得た。この第1の軟性眼内レンズは、支持部用部材と光学部とが熱融着されていない点を除き、図7に示した実施例1の軟性眼内レンズ30と同様の形状を呈する。
【0065】
(2)第2の軟性眼内レンズの製造
上記第1の軟性眼内レンズについて、支持部用部材と光学部との熱融着を実施例1と同様にして行って、光学部と当該光学部に固着された支持部とを備えた第2の軟性眼内レンズを得た。この第2の軟性眼内レンズは、図7に示した実施例1の軟性眼内レンズ30と同様の形状を呈する。
【0066】
(3)研磨
上記第2の軟性眼内レンズについて、実施例1と同様にして湿式のバレル研磨を行って、目的とする軟性眼内レンズを得た。
【0067】
比較例1
熱処理用の有底の穴を光学部に形成するための突起3(図1参照)および針状部材保持部5(図1参照)をそれぞれ備えていない下型を用い、かつ、針状部材を使用しなかった以外は実施例1と同様にして、軟性材料からなる両凸レンズ形状の光学部を得た。この後、当該光学部をフリーザーに入れて冷却し、この状態下で、光学部の側面から当該光学部の内部に達する支持部用部材挿入孔を微細ドリルを用いて設けた。このとき、目的とする支持部用部材挿入孔を設けるまでにはかなり複雑な手間がかかった。また、得られた支持部用部材挿入孔にはドリルの跡が残っていた。
【0068】
次に、支持部用部材として実施例1で用いたと同じものを用意し、この支持部用部材の一端を上記の支持部用部材挿入孔に挿入した後、光学部の光学面上の適当な一点に加熱したステーキング用ロッドを押し当ててステーキングを行った。このステーキングにより光学部と支持部用部材の前記一端とが熱融着し、軟性眼内レンズが得られた。なお、光学部のうちでステーキング用ロッドが押し当てられた部分は白化し粉状になった。
【0069】
・支持部の接合強さ試験
実施例1,実施例2および比較例1で得られた各眼内レンズについて、眼内レンズ承認基準に規定される「支持部の接合強さ」試験を実施した。
この試験は、軟性眼内レンズに設けられている2つの支持部をそれぞれクリップで挟み、一方の支持部を挟んでいるクリップを持って軟性眼内レンズを吊るしあげ、他方の支持部を挟んでいるクリップに静かに20gの重りをかけることによって行った。そして、上記の承認基準では、支持部が光学部から1分以内に抜けた場合を不合格とする。試験結果を以下に示す。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば軟性眼内レンズをより容易に製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で光学部を得るために使用した成形型の下型の概略を示す斜視図である。
【図2】熱処理用の有底の穴を光学部に形成するために図1に示した下型に設けられている突起の概略を拡大して示す側面図である。
【図3】実施例1での液状原料の重合が完了した後の成形型内における重合体および針状部材の概略を示す平面図である。
【図4】図3に示したA−A線方向の断面の概略を示す断面図である。
【図5】実施例1で得られた光学部の概略を示す平面図である。
【図6】図5に示したB−B線方向の断面の概略を示す断面図である。
【図7】実施例1で得られた軟性眼内レンズの概略を示す平面図である。
【図8】図7に示したC−C線方向の断面の概略を示す断面図である。
【図9】熱処理用の有底の穴を光学部に形成するために成形型に設けられる突起の例の概略を拡大して示す側面図である。
【符号の説明】
1 成形型の下型
2 下型の内部底面
3,40 熱処理用の有底の穴を光学部に形成するための突起
5 針状部材保持部
10 重合体
11 針状部材
20 光学部
21 熱処理用の有底の穴
22 支持部用部材挿入孔
30 軟性眼内レンズ
31 支持部
31a 支持部用部材
Claims (6)
- 熱処理用の有底の穴を光学部に形成するための突起と、光学部の側面から該光学部の内部に支持部用部材の一端を挿入するための支持部用部材挿入孔を形成するための針状部材と、この針状部材をその一端が成形型の内部空間に突出するようにして着脱自在に保持する針状部材保持部とを備えた成形型内で、前記針状部材保持部によって前記針状部材を着脱自在に保持しつつ、眼内挿入時に変形可能な軟性高分子材料の液状原料を重合させて、光学部の側面近傍に底面を有し、光学部の光学面の縁部に開口する前記熱処理用の有底の穴と前記支持部用部材挿入孔とを備え、前記熱処理用の有底の穴が前記支持部用部材挿入孔の途中で該支持部用部材挿入孔と交差している光学部を得る第1の工程と、
前記第1の工程で得られた光学部の前記支持部用部材挿入孔に支持部用部材の一端を挿入し、この状態下で前記熱処理用の有底の穴を通して前記支持部用部材の前記一端に熱を加えて、該一端と前記光学部とを前記熱処理用の有底の穴の底部周辺で熱融着させる第2の工程と
を含むことを特徴とする軟性眼内レンズの製造方法。 - 軟性高分子材料の液状原料として、シリコーン樹脂,アクリル樹脂およびヒドロゲルより選ばれる一種用の液状原料を用いる、請求項1に記載の方法。
- 支持部用部材として、ポリメチルメタクリレート,メチルメタクリレート系共重合体,ポリプロピレン,ポリアミド,フッ素系樹脂,ポリイミドおよびポリカーボネートより選ばれる一種からなるフィラメントの弧状成形物を用いる、請求項1または請求項2に記載の方法。
- 熱処理用の有底の穴を光学部に形成するための突起と、支持部用部材をその一端が成形型の内部空間に突出するようにして着脱自在に保持する支持部用部材保持部とを備えた成形型内で、前記支持部用部材保持部によって前記支持部用部材を着脱自在に保持しつつ、眼内挿入時に変形可能な軟性高分子材料の液状原料を重合させて、光学部の側面近傍に底面を有し、光学部の光学面の縁部に開口する前記熱処理用の有底の穴を有する光学部と、この光学部の側面から前記熱処理用の有底の穴を横断するようにして該光学部の内部に一端を挿入した状態で配設された支持部用部材からなる支持部とを備えた第1の軟性眼内レンズを得る工程と、
前記第1の軟性眼内レンズに設けられている前記熱処理用の有底の穴を通して前記支持部用部材の前記一端に熱を加え、該一端と前記光学部とを前記熱処理用の有底の穴の底部周辺で熱融着させて、光学部と該光学部に固着された支持部とを備えた第2の軟性眼内レンズを得る工程と
を含むことを特徴とする軟性眼内レンズの製造方法。 - 軟性高分子材料の液状原料として、シリコーン樹脂,アクリル樹脂およびヒドロゲルより選ばれる一種用の液状原料を用いる、請求項4に記載の方法。
- 支持部用部材として、ポリメチルメタクリレート,メチルメタクリレート系共重合体,ポリプロピレン,ポリアミド,フッ素系樹脂,ポリイミドおよびポリカーボネートより選ばれる一種からなるフィラメントの弧状成形物を用いる、請求項4または請求項5に記載の方法。
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