JP3762983B2 - Dnaヘリカーゼ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、5'-3' DNAヘリカーゼ活性を有する耐熱性酵素、該酵素をコードするDNA、該DNAを含む発現ベクター、及び該発現ベクターにより形質転換体、並びに該形質転換体を用いて上記酵素を生産する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
5'-3' DNAヘリカーゼ活性と構造特異的エンドヌクレアーゼ活性を有する酵素としては出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来のDna2が有名であり、その詳しい性質が最近報告された(S. Bae, K. Bae, J. Kim, and Y. Seo ''RPA governs endonuclease switchingduring processing of Okazaki fragments in eukaryotes'' (2001) Nature, 412,456-461.)
Dna2は複製起点での二重らせんの一本鎖への巻き戻しやラギング鎖での岡崎フラグメントの成熟、さらには二本鎖切断の修復に働き、DNA複製・修復に必須な酵素である。Dna2を含む種々のDNAヘリカーゼがウイルス、細菌、真核生物から発見されているが、多くが常温生物由来のため、室温以上では極めて不安定であり、二本鎖DNA熱変性条件下では速やかに熱失活する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、5'-3' DNAヘリカーゼ活性を有する耐熱性酵素が発見されれば、94℃以上での二本鎖DNA熱変性と急冷、酵素反応を同一チューブ内で行う事が可能となり、DNA増幅反応(PCR)等とDNA複製・修復共役系を組み合わせたい実験系の構築が可能となり、その結果、新規な試験管内遺伝子複製法、遺伝子変異法等の開発が可能になる。このため極限環境下においても、二重らせんの一本鎖への巻き戻しやラギング鎖での岡崎フラグメントの成熟、さらには二本鎖切断の修復を行いうる酵素は極めて重要な手段である。
したがって、本発明の課題は、耐熱性で、かつDNAヘリカーゼ活性を有し、さらに好ましくは構造特異的エンドヌクレアーゼ活性をも有する酵素を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、以上の課題を解決すべく、90-100℃で生育する超好熱性古細菌に着目し、その遺伝子配列から本酵素活性を示すと推測される遺伝子を見い出した。さらに、大腸菌を使ってその遺伝子から酵素を生産し、この酵素が高温(75℃以上)で比較的安定に存在し、かつDNAヘリカーゼ/構造特異的エンドヌクレアーゼ活性を示すことを確認し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明の要旨は以下の(1)〜(7)に係るものである。
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するか、または該アミノ酸配列における1個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ5’−3’ヘリカーゼ活性及び構造特異的エンドヌクレアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
(2)配列番号2に示される塩基配列からなるDNA。
(3)配列番号2で示される塩基配列の開始コドンがATGに置き換えられているDNA。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の記載のDNAを含有する発現ベクター。
(5)上記(4)に記載の発現ベクターによって形質転換された形質転換体。
(6)上記(5)記載の形質転換体を、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のDNAによりコードされる蛋白質の発現可能な条件下で培養することを特徴とする、5’−3’ヘリカーゼ活性及び構造特異的エンドヌクレアーゼ活性を有する蛋白質の生産方法。
(7)配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するか、または該アミノ酸配列における1個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ5’−3’ヘリカーゼ活性及び構造特異的エンドヌクレアーゼ活性を有する蛋白質。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を具体的に説明する。
本発明における、耐熱性の5'-3' DNAヘリカーゼ活性を有する酵素は、超好熱菌、好ましくは硫黄代謝好熱性古細菌の染色体DNAから得た上記酵素をコードする遺伝子をクローン化し、この遺伝子を発現ベクターに組み込み、さらに常法により大腸菌等の宿主に導入して形質転換体を得、これを培養することにより得られる。
本発明における耐熱性の5'-3' DNAヘリカーゼ活性を有する酵素蛋白質をコードする遺伝子及びその酵素蛋白質は、以下のようにして得られたものである。
【0007】
すなわち、上記硫黄代謝好熱性古細菌の一種であるパイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshi)(登録番号JCM9974)の染色体DNAを制限酵素HindIIIにより分解し、得られたDNA断片をベクターpBAC108L及びpFOS1に結合させて大腸菌に導入し、抗生物質クロラムフェニコール耐性の大腸菌集団をBACおよびFosmidライブラリーとし、さらに、ライブラリーからJCM9974菌株の染色体をカバーするクローンを選択し各クローンの整列化を行った。次いで、これら各クローンの塩基配列を決定した後、既知のDNAへリカーゼのモチーフを指標にして、各クローンの塩基配列の中から該モチーフを有する遺伝子(PH010)を見いだし、さらに、この遺伝子におけるDNAへリカーゼのオープンリーデイングフレーム(ORF)を決定し、パイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshi)(登録番号JCM9974)におけるDNAへリカーゼ遺伝子を同定した。
【0008】
このDNAヘリカーゼ遺伝子は、その開始コドンとしてTTGを有していた。そして該遺伝子を鋳型としてPCR増幅を行い、大腸菌用発現ベクターに組み込み、得られたDNAヘリカーゼ遺伝子を含む発現ベクターで大腸菌を形質転換させた。なお、PCR増幅においては、大腸菌用に、上記開始コドンTTGをATGに変更したアッパープライマーを使用した。形質転換された大腸菌により産生され、精製された蛋白質は、分子量約152000であり、5'-3'DNAヘリカーゼ活性を有していることを確認している。また、さらにエンドヌクレアーゼ活性についても調べた結果、本発明の蛋白質は、Mg2+イオンが所定濃度以上になるとエンドヌクレアーゼ活性を表し、また、該蛋白質のエンドヌクレアーゼ活性は、図8−A、Bから明らかなように、構造特異的であることも確認している。
この酵素の半減期は、50mトリス塩酸緩衝液(pH7.5)中で、75℃、30分以上であり、耐熱性に優れていた。
なお、以後当該酵素をDna2Phoと略記することがある。
【0009】
上記耐熱性の5'-3' DNAヘリカーゼ活性を有する酵素蛋白質のアミノ酸配列およびこの蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列は、それぞれ基本的には配列番号1および2に示されるものである。しかし、得られる蛋白質が、少なくとも5'-3'DNAヘリカーゼ活性を有している限りにおいて、使用する遺伝子の塩基配列を変更して該酵素蛋白質のアミノ酸配列の一部を変更してもよく、また、宿主等に応じて発現がし易いように遺伝子の塩基配列の一部を変更してもよい。
【0010】
本発明における酵素蛋白質の製造手段について説明すると、
まず、上記のようにして得られた5'-3' DNAヘリカーゼ活性を有する酵素蛋白質(Dna2Pho)をコードする遺伝子を、T4リガーゼ等のリガーゼを用いて発現ベクターに連結する。
使用する発現ベクターとしては、宿主が大腸菌の場合、ヒスチジンタグがC末端側についた融合蛋白質として発現するためpET21b等を使用できる。
次いで、5'-3' DNAヘリカーゼ活性を有する酵素蛋白質(Dna2Pho)をコードする遺伝子を含む発現ベクターを、宿主に導入し形質転換体を得る。
使用する宿主としては、例えば、大腸菌E.coli BL21(DE3)Codon Plus RIL等が用いられる。
【0011】
この後、得られた形質転換体を常法により培養し、培養液を遠心分離し集菌する。集菌された菌体を緩衝液に懸濁した後破砕し、上澄液を親和性クロマトグラフィー等を用いて、本発明の酵素蛋白質を分離精製する。
本発明において特に着目すべきは、硫黄代謝好熱性古細菌から、初めて5'-3' DNAヘリカーゼ活性を有する酵素蛋白質(Dna2Pho)をコードする遺伝子を同定、単離したことである。従来上記した酵母における5'-3' DNAヘリカーゼ活性を有する酵素蛋白質(Dna2)の遺伝子と、硫黄代謝好熱性古細菌の対応遺伝子とは、相同部分が極めて少なく、該Dna2遺伝子の塩基配列を指標にして、硫黄代謝好熱性古細菌から、5'-3' DNAヘリカーゼ活性を有する酵素蛋白質の遺伝子を同定、単離することは難しい。しかし、本発明においては、パイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshi)から、5'-3' DNAヘリカーゼの遺伝子を同定、単離し、その塩基配列を明らかにしたことにより、例えばこの塩基配列をもとにプローブを作成し、これを用いて他の硫黄代謝好熱性古細菌、あるいはさらに超好熱菌における、耐熱性の5'-3' DNAヘリカーゼの遺伝子を得ることが容易に行いうる。さらに本発明の方法を用いてこれら耐熱性の5'-3' DNAヘリカーゼを得ることができる。
【0012】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は特にこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
〔菌の培養〕
JCM(理化学研究所、微生物系統保存施設)から分譲を受けたパイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshi)(登録番号JCM9974)を次の方法で培養した。
13.5gの食塩、4gのNa2SO4, 0.7 gのKCl, 0.2g のNaHCO3 、0.1gのKBr、30 mgのH3BO3、10gのMgCl2・6H2O、1.5g のCaCl2 、25mgのSrCl2、1.0mlのレザスリン溶液(0.2g/L)、1.0gの酵母エキス、5gのバクトペプトンを1Lに溶かし、この溶液のpHを6.8に調整し加圧殺菌した。ついで、乾熱滅菌した元素硫黄を0.2%となるように加え、この培地をアルゴンで飽和して嫌気性とした後、JCM9974株を植菌した。培地が嫌気性となったか否かはNa2S溶液を加えて、培養液中でNa2Sによるレザスリン溶液のピンク色が着色しないことにより確認した。この培養液を95℃で2〜4日培養し、その後遠心分離し集菌した。
【0013】
【実施例2】
〔染色体DNAの調整〕
パイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshi)JCM9974の染色体DNAは以下の方法により調製した。培養終了後5000rpm、10分間の遠心分離により菌体を集菌する。菌体を10mM Tris(pH 7.5) 1mM EDTA 溶液で2回洗浄後InCert Agarose(FMC社製)ブロック中に封入する。このブロックを1%N-lauroylsarcosine, 1mg/mlプロテアーゼK溶液中で処理することにより、染色体DNAはAgaroseブロック中に分離調製される。
【0014】
【実施例3】
〔染色体DNAを含むライブラリークローンの作製〕
実施例2で得られた染色体DNAを制限酵素HindIIIにより部分分解後アガロースゲル電気泳動により約40kb長の断片を調製した。このDNA断片と制限酵素HindIIIによって完全分解したBacベクターpBAC108L及びpFOS1とをT4リガーゼを用いて結合させた。前者のベクターを用いた場合には結合終了後のDNAをただちに大腸菌内へ電気孔窄法により導入した。後者のベクターpFOS1を用いた場合には結合終了後のDNAをGIGA Pack Gold (ストラタジーン社製)により試験管内でλファージ粒子内に詰め込み、この粒子を大腸菌に感染させることによりDNAを大腸菌内に導入した。これらの方法により得られた抗生物質クロラムフェニコール耐性の大腸菌集団をBAC及びFosmidライブラリーとした。ライブラリーからJCM9974の染色体をカバーするのに適したクローンを選択して、クローンの整列化を行った。
【0015】
【実施例4】
〔各BAC或いはFosmidクローンの塩基配列決定〕
整列化されたBAC或いはFosmidクローンについて順次以下の方法で塩基配列を決定していった。大腸菌より回収した各BAC或いはFosmidクローンのDNAを超音波処理することにより断片化し、アガロースゲル電気泳動により1kb及び2kb長のDNA断片を回収した。この断片をプラスミドベクターpUC118のHincII制限酵素部位に挿入したショットガンクローンを各BAC或いはFosmidクローン当たり500クローン作製した。各ショットガンクローンの塩基配列をパーキンエルマー、ABI社製自動塩基配列読み取り装置373または377を用いて決定していった。各ショットガンクローンから得られた塩基配列を塩基配列自動連結ソフトSequencherを用いて連結編集し、各BAC或いはFosmidクローンの全塩基配列を決定していった。
【0016】
【実施例5】
〔Dna2Pho遺伝子の同定〕
上記で決定された各BAC或いはFosmidクローンの塩基配列の大型計算機による解析を行い、DNAヘリカーゼモチーフを含む機能未知タンパク質をコードする遺伝子(PH0109)を同定した。さらに、このORFの5'上流域を精査し、超好熱性古細菌の開始コドンがATGのみではなくTTGから始まる可能性を考慮して、TTGを開始コドンとしPH0109よりN末端側に122残基長い当該遺伝子を同定した(配列番号2)。
【0017】
【実施例6】
〔発現プラスミドの構築〕
構造遺伝子領域の前後に制限酵素(NdeIとSalI)サイトを構築する目的でDNAプライマーを合成し、PCRでその遺伝子の前後に制限酵素サイトを導入した。また、開始コドンをTTGからATGに変更した。
Upper primer,5'-GTAGAGGTGGAAACATATGGAATTTGGGGAGTTACATCCCAGCG-3'(下線部はNdeIサイトを示す。)
Lower primer, 5'-CTCGAGTGCGGCCGCAAGCTTGTCGACCTCTCCAGCCCACCTAAACAC-3'(下線部はSalIサイトを示す。)
【0018】
PCR反応後、制限酵素(NdeIとSalI)で完全分解(37℃で2時間)した後、その構造遺伝子を精製した。
pET21b(Novagen社製)を制限酵素NdeIとXhoIで切断・精製した後、上記の構造遺伝子(Dna2Pho)とT4リガーゼで16℃、2時間反応させ連結した。連結したDNAの一部をE. coli-XL1-BlueMRF' のコンピテントセルに導入し形質転換体のコロニーを得た。得られたコロニーからプラスミドをアルカリ法で精製し発現プラスミド、pET21b/Dna2Phoを得た。この発現プラスミドを用いるとDna2PhoはC末端にヒスチジンタグが付加された融合タンパク質として生産される。
【0019】
【実施例7】
〔組換え遺伝子の発現〕
大腸菌(E. coli BL21(DE3) CodonPlus RIL, Novagen社製)のコンピテントセルを融解して、二本のファルコンチューブに各々0.1mlづつ移す。その中に上記の発現プラスミド溶液0.005mlを別々に加え氷中に30分間放置した後42度でヒートショックを30秒間行い、SOCmedium 0.9mlを加え、37度で1時間振とう培養する。その後アンピシリンを含む2YT寒天プレートに適量まき、37度で一晩培養し、形質転換体E. coli BL21(DE3) CodonPlus RIL/pET21b/Dna2Phoを得た。
当該形質転換体をアンピシリンを含む2YT培地(2リットル)で660nmの吸収が0.4に達するまで37℃で培養した後、IPTG(Isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)を1mMになるように加え、30℃で4時間培養した。培養後遠心分離(6,000rpm,20min)で集菌した。
【0020】
【実施例8】
〔Dna2Phoの精製〕
8リットル培養液から集菌した菌体に2倍量の40mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、1錠のプロテアーゼ阻害剤(Complete EDTA-free, Roche社製)、0.5mgのDnase RQ1(プロメガ社製)を加え懸濁液を得た。得られた懸濁液を超音波破砕し、37℃で10分保温した後、遠心分離(11,000 rpm、20分)により上清液を得た。この上清液を用いNi-カラム(Novagen, His・Bind metal chelation resin & His・Bind buffer kitを使用)による親和性クロマトグラムを行った。ここで得られた0.5 Mイミダゾール溶出画分(20ml)を、再度75℃で10分加熱処理し、遠心分離(11,000 rpm、20分)により上清液を得た。次にこの上清液を20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、2.5M NaClで平衡化したHiTrap phenyl sepharose(ファルマシア社製)カラムに吸着させ、同緩衝液中のNaCl濃度を2.5Mから1Mに低下させることにより、目的タンパク質の溶出を行った。さらに、セントリプレップYM-50 (アミコン社)で2mlまで濃縮し、これを20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、100mM NaClで透析し、精製サンプルとした。
【0021】
【実施例9】
〔酵素反応条件〕
(1)DNAヘリカーゼ反応
20μlの酵素反応液中には50mMのHEPES緩衝液(pH7.5)、2mM ATP、0.01% BSA、ラベル化DNA、1mM MgCl2、1mM DTT、所定量の酵素が含まれる。この酵素反応液を50℃、1時間加温し、EDTAを終濃度10mM加える事により反応停止させた。反応産物は1/10容のx10 loading buffer (Takara社製)と混和後、15% polyacrylamide gel 電気泳動(PAGE)で分析した。この電気泳動パターンをPhosphoImager(Bio-Rad社製)でオートラジオグラフィー化し、反応物の分子種と量を測定した。
【0022】
(2)DNAヘリカーゼ反応における巻き戻し方向の決定
ラベル化DNAとして図1に示す様に2種の基質を調整した。まず、63merオリゴヌクレオチドを相補的一本鎖M13 DNAと各々アニールさせ、オリゴヌクレオチドの3'端をKlenow fragment(Takara社製)と[α-32P]dATPを用いてラベル化した。他方、上記63merオリゴヌクレオチドの5'端を T4 polynucleotide kinaseと[γ-32P]ATPを用いてラベル化し、これをを相補的一本鎖M13 DNAと各々アニールさせものも調整した。これら2種のラベル化DNAを相補鎖のまん中に設計されたSmaIサイトで切断することにより、5'-3'方向性と3'-5'方向性を決定するためのラベル化DNA基質 (a)と(b)を作成した。
他の条件は上記DNAヘリカーゼ反応と同一であった。
【0023】
(3)一本鎖DNA依存的ATPase活性の測定
20μlの酵素反応液中には50mMのHEPES緩衝液(pH7.5)、10μM ATP、50nM [γ-32P]ATP、0.01% BSA、dsDNAあるいはssDNA、1mM MgCl2、1mM DTT、所定量の酵素が含まれる。この酵素反応液を50℃、30分間加温し、EDTAを終濃度10mM加える事により反応停止させた。反応産物は薄層クロマトプレートにスポット後、展開液(1Mギ酸、0.5M LiCl)で展開し、分離パターンをPhosphoImager(Bio-Rad社製)でオートラジオグラフィー化し、反応物の分子種と量を測定した。
【0024】
(4)エンドヌクレアーゼ活性の測定
反応液の組成と容量はDNAヘリカーゼ反応と同一であるが、MgCl2濃度を10mMに上昇させた。基質としては図2に示す4種(c, d, e, f)を用いた。
基質cは70merのssDNAであり、5’端をT4 polynucleotide kinaseと[γ-32P]ATPを用いてラベル化したものである。
基質dは58merのssDNAの5’端に12merのRNAを結合せしめたRNA−DNAハイブリッド1本鎖分子である。
基質eは5’端をラベル化したssDNAの3’端に相補的ssDNAをアニールして調製したものである。
基質fは5’端をラベル化したssDNAの5’端に相補的ssDNAをアニールして調製したものである。
【0025】
この酵素反応液を50℃、2時間まで加温し、停止液 (90% formamide,0.2M EDTA (pH8.0) 10mg/ml BPB)を10ml加える事により反応停止させた。これを100℃加温、氷中急冷後、7M尿素を含む15%polyacrylamide gel 電気泳動(PAGE)で分析した。この電気泳動パターンをPhosphoImager(Bio-Rad社製)でオートラジオグラフィー化し、反応物の分子種と量を測定した。
【0026】
【実施例12】
〔酵素の諸性質〕
(1)タンパク質化学的性質
当該酵素は上記の精製プロセスで完全に精製され、SDS-PAGEで分子量約150KDaの単一バンドを示した(図3)。当該酵素は1310アミノ酸残基より構成され(配列番号1)、そのアミノ酸配列から予測される分子量は151,660 Daである。また、酵母Dna2との相同性は極めて低く、C末端側に7ケ所の保存性モチーフが局在していた(図4)。
【0027】
(2)DNAヘリカーゼ活性
当該酵素は50℃、1時間反応で、DNAヘリカーゼ活性を示した。活性発現にはATPとMg2+イオンの共存が必須であった。また、Mg2+イオンが5mM以上になるとヘリカーゼ活性と共にヌクレアーゼ活性が観察された(図5)。
【0028】
(3)DNAヘリカーゼ反応における巻き戻し方向
図6に示すように、Dna2Phoは5'-3'方向の巻き戻し活性を示した。
【0029】
(4)一本鎖DNA依存的ATPase活性
図7に示すように、Dna2Phoは一本鎖DNA共存下でのみATPase活性を示した。二本鎖DNAではその効果はなかった。
【0030】
(5)エンドヌクレアーゼ活性
図8−Aに示すように、一本鎖DNA基質cは経時的に1merまで分解されるが、5'端にRNA分子を含む一本鎖基質dは全く消化されなかった。また、一本鎖DNA基質cの切断パターンにおいて、ラベル化1merの出現より46merの方が速やかに出現することから、切断はエンド型でおきることが明らかになった。さらに図8−Bに示すように、5'端が一本鎖の基質eは3'端が一本鎖の基質fに較べ速やかに消化された。以上の結果より、Dna2Phoは基質の5'端が一本鎖か二本鎖かまたDNAかRNAを識別し、一本鎖DNAの場合にその内部をエンド型に切断する構造特異的エンドヌクレアーゼであることが明らかになった。
【0031】
(6)耐熱性
本酵素の半減期は、50mトリス塩酸緩衝液(pH7.5)中で、75℃、30分以上であり、Dna2と比べ著しい耐熱性を示した。
【0032】
【発明の効果】
本発明により得られる酵素蛋白質は、5'-3' DNAヘリカーゼ活性に加え構造特異的なエンドヌクレアーゼ活性をも有し、かつ耐熱性に優れている。したがって本発明は、DNA増幅反応(PCR)等とDNA複製・修復共役系を組み合わせた新たな実験系の構築に道を拓くものあり、その結果、新規な試験管内遺伝子複製法、遺伝子変異法等の開発を可能とするものである。
【0033】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酵素蛋白質について、DNAヘリカーゼ反応における巻き戻し方向の決定のために行った2種の基質の調整工程を示す模式図である。
【図2】本発明の酵素蛋白質について、エンドヌクレアーゼ活性を調べるために用いた基質の概略構造を示す図である。
【図3】精製されたDna2PhoのSDS−PAGEの結果を示す図である。
【図4】酵母Dna2と本発明のDna2Phoとの間で保存される配列モチーフを示す図である。
【図5】本発明の酵素蛋白質がDNAヘリカーゼ活性を有することを示す、各酵素反応産物の電気泳動パターンのオートラジオグラフィー化した写真である。
【図6】本発明の酵素蛋白質がDNAヘリカーゼ反応において巻き戻し方向が5’−3’方向であることを示す、各酵素反応産物の電気泳動パターンをオートラジオグラフィー化した写真である。
【図7】本発明の酵素蛋白質が一本鎖依存的ATPase活性を有することを示す、各酵素反応産物の電気泳動パターンをオートラジオグラフィーかした写真である。
【図8】本発明の酵素蛋白質のエンドヌクレアーゼ活性が基質構造に特異的であることを示す、各酵素反応産物の電気泳動パターンをオートラジオグラフィー化した写真である。
Claims (7)
- 配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するか、または該アミノ酸配列における1個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ5’−3’ヘリカーゼ活性及び構造特異的エンドヌクレアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
- 配列番号2に示される塩基配列からなるDNA。
- 配列番号2で示される塩基配列の開始コドンがATGに置き換えられているDNA。
- 請求項1〜3のいずれか一項記載の記載のDNAを含有する発現ベクター。
- 請求項4に記載の発現ベクターによって形質転換された形質転換体。
- 請求項5記載の形質転換体を、請求項1〜3のいずれか一項の記載のDNAによりコードされる蛋白質の発現可能な条件下で培養することを特徴とする、5’−3’ヘリカーゼ活性及び構造特異的エンドヌクレアーゼ活性を有する蛋白質の生産方法。
- 配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するか、または該アミノ酸配列における1個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ5’−3’ヘリカーゼ活性及び構造特異的エンドヌクレアーゼ活性を有する蛋白質。
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