JP3762360B2 - 電気掃除機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸引した含塵空気中の塵の慣性を利用して、この塵を気流中から分離する塵分離部を備えた電気掃除機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、慣性分離作用により吸引した空気中の塵を分離する電気掃除機として、サイクロン式の電気掃除機が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
このサイクロン式電気掃除機は、上部が開口されたダストカップ(ダストボックス)と、このカップ内を負圧にする電動送風機等を備えている。ダストカップの周壁には吸気口が形成され、この吸気口は含塵空気を取込む吸込み口体に吸気通路を介して連通している。
【0004】
吸込み口体から吸引された含塵空気は吸気通路を通ってダストカップ内にその吸気口から吸引される。このカップ内への吸引に伴ってダストカップ内に発生する旋回流によって、空気より質量が重い塵が遠心分離される。この一方で、空気は、旋回流が進行する方向とは逆方向にダストカップ内を反転上昇して、このカップの上部開口を通り電動送風機に吸引されて、外部に排出される。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−104223号公報(段落0038、0045−0047、図1、図2)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に記載の電気掃除機では、吸気通路を通って吸引された空気は90度向きが変えられて吸気口からダストカップ内に入り、ここで下向きの旋回流となってダストカップの周壁に沿って回転され、この後空気が反転上昇してダストカップ外に流出して電動送風機に吸引されていく。このようにダストカップ内で空気の流れ方向が2度変えられることにより、風路損が大きい。しかも、空気はダストカップ内で旋回するので、その風路損は更に大きい。したがって、特許文献1に記載の電気掃除機では、電動送風機の能力を十分に発揮させることが難しい。
【0007】
一方、濾過を行うフィルタである紙パックを集塵室に装着する通常の電気掃除機にあっては、空気の流れ方向に大きな変化がないように吸気口、紙パック、電動送風機が略直線上に並んでいることにより、風路損は大きくならない。しかし、紙パックは粗塵から細塵にわたる多様な塵を濾過して溜めるので、この紙パック内に所定量の塵が溜まると、極端に風量が低下しやすい。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、サイクロン式分離を行うものに比べて風路損を小さくできるとともに、塵溜め部の入口部に塵が詰まることを抑制できる電気掃除機を得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、掃除機本体の吸込み口から電動送風機の吸気口に至る風路中に形成された負圧室部内に、前記吸込み口に吸込まれた含塵空気を空気と塵とに分離する塵分離部を設け、この塵分離部で分離された塵を塵溜め部に溜める電気掃除機であって、前記塵分離部は、前記吸込み口に対向して連通する一端開口と、この一端開口の後側でこの一端開口に対向する他端開口とを有する筒状に形成され、かつ、周面に形成された分離開口に取付けられたフィルタを有する風路形成体、及びこの風路形成体の前記他端開口に対向する風当て壁部を有して前記風路形成体と前記塵溜め部とを連通して設けられ前記風路形成体で分離された塵を前記塵溜め部に導く筒状の案内部とを備え、前記塵溜め部が、その内部空間を囲む環状壁と底面を閉じる底板とを有しているとともに、前記環状壁がその周方向に沿って湾曲又は傾斜する斜状壁を含んでおり、前記塵溜め部を、前記塵分離部の下側で、かつ、前記風路形成体の他端開口より後方に突出させて設け、この塵溜め部の前記突出した部分でかつ前記塵溜め部の前後方向と直交する幅方向一端側部分に、前記負圧室部に突出する上向きの導入隆起部を形成し、前記導入隆起部と前記風路形成体の他端開口とにわたる前記案内部を前記塵溜め部の突出部分上で斜めに設けて、前記斜状壁に斜め下向きの気流が吹き当たるようにこの案内部の出口を前記斜状壁に斜め上方から対向させ、前記塵溜め部と負圧室部とを区画した前記塵溜め部の天井壁に前記塵溜め部と負圧室部とを連通する通気開口を設けている。
【0010】
本発明において塵分離部は、空気と塵との運動エネルギーが異なることに基づく慣性力の差を利用して空気から塵を分離する直進流式の慣性分離装置を指しており、サイクロン式の慣性分離装置は含まない。
【0011】
本発明において塵分離部のフィルタには、紙、綿、布、グラスウール、不織布、発泡合成樹脂等の濾材を、単層又は複数種積層したもの等を使用できる他、ネットを好適に使用できる。このフィルタの分離風路に臨む面に、この面への塵の付着を抑制するとともに付着した塵を剥れ易くする低摩擦係数の表面加工層を設けることは妨げない。
【0012】
本発明において、塵溜め部の導入隆起部は、実施形態で説明するものに制約されることはないが、塵分離部から電動送風機の吸気口に至る気流を乱さないように、例えば、風路形成体の投影領域を略避けて設けることが好ましく、更に、塵溜め部の容積を拡大するために、塵溜め部の奥行き向全体にわたって設けることが好ましい。
【0013】
本発明では、塵分離部で直進流式の慣性分離を行うので、風路損が小さい。更に、塵分離部の斜めの案内部で塵溜め部内にその導入隆起部を通して斜め下向きに気流及び塵を導入させ、塵溜め部の内周面自体をガイドとしてこの内周面に沿う旋回流を作るので、気流が急激に曲がらないようにできるとともに、塵溜め部内に旋回流を形成するためのガイドを、塵溜め部内に突出させて塵溜め部の入口部に設ける必要がない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図1ないし図9を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0015】
図1中符号10で示す電気掃除機が備える掃除機本体20には、可撓性の吸塵ホース21の一端部が着脱可能に接続され、このホース21は他端部に手元操作部22を備えている。手元操作部22には伸縮可能な延長管23が着脱可能に接続され、延長管23の先端部には吸込み口体24が着脱可能に接続される。手元操作部22はハンドル22Aを有し、このハンドル22Aには遠隔操作用の操作スイッチ22Bが設けられている。
【0016】
図1ないし図3に示すように掃除機本体20は、本体ケース30と、本体ケース30に着脱自在に取付けられる集塵容器(ダストカップ)50と、蓋体40とを備えている。蓋体40はその後部が本体ケース30の前部にヒンジ結合されて上下方向に開閉可能に設けられている。
【0017】
本体ケース30は、後側の電動部34と前側の載置部35とを備えていて、図2に示すように電動部34には電動送風機33が内蔵されている。載置部35は、電動部34の下部から前方へ一体に突出されていて、上方に開放する凹状をなす皿状に形成されている。この載置部35には集塵容器50が着脱自在に載置される。蓋体40が閉じられることによって、蓋体40と載置部35とが集塵容器50を挟持して固定するようになっている。
【0018】
図3(B)に示すように電動部34の前面は開口され、この開口34Aは電動送風機33の吸気口33Aに対向するとともに連通している。開口34Aには後述するフィルタ80をその下流側から押えるためのリブを放射状に有したフィルタ押え34Bが設けられている。
【0019】
本体ケース30の幅方向両側壁には、本体ケース30の前側上部から後側下部にわたる斜状の膨出部36(一方のみ図示)が夫々一体に形成され、これら膨出部36の下端部に後輪37が回転自在に取付けられている。両膨出部36と本体ケース30の両側壁の前側部分には複数の排気孔からなる排気部38が設けられている。これらの排気部38は図示しない排気風路を介して電動送風機33の排気口33B(図2参照)と連通している。電動送風機33の排気口33Bから排気される空気は排気風路を介して排気部38から外に排気される。
【0020】
本体ケース30の電動部34には電動送風機33の下側に位置して図示しないバッテリー39が内蔵されている。バッテリー39の電力は電動送風機33等に供給される。なお、図示のバッテリーに代えて同部分にコードリールを配置して、このリールを介して商用交流電源の電力を電動送風機33等に供給することも可能である。
【0021】
蓋体40は、平面視がほぼ楕円形に形成された天板41と、この天板41の周囲に一体に形成された周壁42とを有している。周壁42の前部には吸塵ホース21を着脱可能に接続する吸込み口43を有した接続パイプ44(図2参照)が設けられている。接続パイプ44は、前後方向に延びており、その一端開口(前端)は吸込み口43をなし、他端(後端)45は開口している。
【0022】
図4ないし図7に示すように集塵容器50は、一面例えば図4において右側に位置する後面に開口51を有している。更に、集塵容器50は、開口51と対向する例えば前面の壁50aに吸気入口52を有する容器ケース体53と、この容器ケース体53に設けられた把手部54とを有している。把手部54は例えば吸気入口52の下方に位置して壁50aに設けられている。
【0023】
容器ケース体53は、このケース体53の下部で形成した塵溜め部(集塵部)55と、この塵溜め部55の主として上方に形成された負圧室部(負圧空間)56と、この負圧室部56内に設けられた第1塵分離部61と、この塵分離部61で分離された塵埃を塵溜め部55へ導く案内部63とを有している。
【0024】
塵溜め部55の底面は開放されている。塵溜め部55の底部には、底板57が軸J回りに開閉可能に取付けられており、この底板57を開けることにより塵溜め部55内に蓄積された塵埃を捨てることができる。底板57の閉じ状態は、把手部54に設けた操作釦の押し込みに連動する図示しない機構を介して解除されるようになっている。図4中符号74は底板57の内面に固定された環状のシール材を示し、これにより底板57を閉じた状態での塵溜め部55の下端部の気密が図られている。
【0025】
塵溜め部55と負圧室部56とは、開口51に寄って設けられた第1の壁60とこの壁60から折れ曲がって壁50aに連続する第2の壁58とで区画されている。図5ないし図7に示すように塵溜め部55の幅方向一端側部分には、負圧室部56内に突出する上向きの導入隆起部75が設けられている。この隆起部75は塵溜め部55の奥行き方向(図4及び図7では前後方向)全体にわたって設けられ、それにより、塵溜め部55の塵溜め可能な容積を拡大している。導入隆起部75は、第2の壁58の幅方向略中央位置から塵溜め部55の幅方向一端に向けて次第に上昇する斜状の壁部75aを有し、この壁部75aに接続口76(図5参照)が形成されている。
【0026】
図8に例示するように塵溜め部55は、前記壁50aを含む円弧状壁部77と、この壁77に対向する前記第1の壁60と、これら両壁77、60間を一体に繋いだ斜状壁78、79とを有している。これら各壁60、77〜79は例えば略楕円環状をなして連続して、塵溜め部55の内部空間を囲んでいる。このように略楕円環状壁を塵溜め部55が有することは、塵溜め部55の内周面に沿う気流の円滑な旋回性を高めて、この塵溜め部55での粗塵の遠心分離性能を向上できる点で好ましい。一方の斜状壁78の斜め上方に対向して接続口76が位置されている。斜状壁78は、本実施形態では湾曲壁で形成したが、円弧状壁部77及び第1の壁60に対して夫々鈍角をなして連続する傾斜壁で形成することもできるとともに、他方の斜状壁79も同様である。
【0027】
図4において塵溜め部55の天井壁をなしている第2の壁58には、塵溜め部55と負圧室部56とを連通する通気開口59が形成されている。図7及び図8に例示するように通気開口59は塵溜め部55の略中央部に対向して設けられている。これにより、通気開口59を通り抜ける気流に粗塵が含まれないようにできる。更に、通気開口59は図4に示すように第1塵分離部61の後述するフィルタF2にその下方から対向している。この通気開口59には、例えばネットで作られて、所定の大きさ以上の塵が負圧室部56に流入することを防止するフィルタF1が取付けられている。
【0028】
第1塵分離部61は、慣性分離作用で空気と塵とを分離する直進流式の慣性分離装置をなすものであって、分離風路62aを形成する筒状の風路形成体62と、これに連続する筒状の案内部63とを有している。
【0029】
風路形成体62は、例えば一端及び他端をともに開口した中空円錐台状であって、その全周にわたって複数の分離開口64を等間隔に有しているとともに、これらの分離開口64を塞ぐフィルタF2(図4及び図5参照)を有している。
【0030】
詳しくは、風路形成体62は、図7に示すように大小一対の円形枠部W1、W2と、これら枠部W1、W2を連結した複数のリブW3とで構成されたフレームを備えている。各分離開口64は両枠部W1、W2及びリブW3によって囲まれた空間で作られている。フィルタF2は、例えばネットで作られていて、前記フレームの内周面に沿って筒状に取付けられている。したがって、風路形成体62はあたかもざるの軸方向両端を開口した構造をなしていて、この形成体62によって囲まれた分離風路62aが形成されている。
【0031】
この分離風路62aは掃除機本体20の軸方向(本実施形態では前後方向)に直線状に延びている。分離風路62aは、風路形成体62の分離開口64、容器ケース体53の負圧室部56、及び本体ケース30の電動部34の開口34Aを、順次介して電動送風機33の吸気口33Aに連通している。
【0032】
図4及び図7に示すように風路形成体62の大径な一端開口62Aの径は容器ケース体53の吸気入口52の径より大きく形成されている。風路形成体62はその一端開口62Aの内側に吸気入口52が位置するように容器ケース体53に接続されている。風路形成体62の小径な他端開口62Bの径は吸気入口52の径とほぼ同一に形成されている。これにより、風路形成体62の径は一端から他端に行くにしたがって直線的に漸減している。なお、風路形成体62の他端開口62Bの径は吸気入口52の径より小さくてもよい。
【0033】
風路形成体62の軸線と、蓋体40の接続パイプ44の軸線とはほぼ一直線状に連続し、これらの軸線延長上に電動送風機33の吸気口33Aが向き合うように設けられている。蓋体40の接続パイプ44と、容器ケース体53の吸気入口52と、風路形成体62と、容器ケース体55の開口51と、電動送風機33の吸気口33Aとは、ほぼ同一高さ位置において掃除機本体20の軸方向(本実施形態では前後方向)に沿って順次配設されている。
【0034】
図4等に示すように案内部63は風路形成体62の他端開口62Bに連続して設けられている。詳しくは、案内部63は、その上部に風路形成体62の他端開口62Bの上部から斜め下方に向かって延びた傾斜壁部63Aと、この傾斜壁部63Aの一端から湾曲して下方に延びるとともに風路形成体62の他端開口62Bに対向する風当て壁部63Bとを有している。更に、案内部63は、風路形成体62の他端開口62Bに接合された開口63Dを有している。
【0035】
図5及び図6に示すように案内部63は、その上部から下部にわたって風路断面積を広げるように次第に大きく形成されていて、前記導入隆起部75に向けて斜めに設けられている。開口63Dと反対側の案内部63の開口、つまり出口63Cは接続口76を覆って斜状壁75aに接続されている。この接続により、案内部63は分離風路62aと塵溜め部55とを連通し、かつ、出口63Cは斜状壁78に斜め上方から対向している。
【0036】
起立している前記第1の壁60は容器ケース体53の開口51より少し内側(前側)に設けられて、開口51に所定の深さH(図4参照)を与えている。この深さHを利用して開口51内に微細塵捕捉用のフィルタ80が着脱可能に装着されている。
【0037】
図4、図6、図7に示すように第1の壁60の下端部外側にはフィルタ80を下側から支える支持壁71が一体に設けられ、この支持壁71と起立壁60の下端部外側との間に塵溜め部55から独立した微細塵溜め部72が形成されている。この溜め部72は、複数の支持リブ73によって複数の領域に区画されている。微細塵溜め部72の下端開口は、これを下方から行き止まり構造とする前記底板57を開けることにより、塵溜め部55とともに開放される。
【0038】
フィルタ80は、容器ケース体53の開口51部内に、例えば垂直に近い角度に立てて取外し可能に装着されている。取付けられたフィルタ80の上部は負圧室部56に臨んでおり、かつ、下部は第1の壁60に近接して対向される。これにより、フィルタ80の下部と壁60の間に形成される空隙Gは、その下側に連なって位置している微細塵溜め部72に連通されている。
【0039】
図9に示すようにフィルタ80は、フィルタ枠81と、この枠81の内側全体を塞いで装着されるフィルタ要素82とを備えている。フィルタ要素82には、そのメッシュが前段のフィルタF1、F2のメッシュより細かい濾材にプリーツ加工を施したものが用いられている。
【0040】
フィルタ枠81の下枠部81aには、閉塞部83と塵排出部として機能する切欠き部84とが、フィルタ要素82のプリーツに対応させて所定ピッチで交互に設けられている。切欠き部84はフィルタ枠81の前側(上流側)に開放して形成されている。図9において前側に指向するフィルタ要素82の裏面の上下方向に延びる溝82aの下端は、いずれも閉塞部83上に載置されて、この閉塞部83で閉じられている。これにより、フィルタ要素82の表裏面にわたる通気経路がフィルタ枠81の下部にできることが阻止されている。更に、図9において後側に指向するフィルタ要素82の表面の上下方向に延びる溝82bの下端は、切欠き部84を介して下方の微細塵溜め部72と連通されている。したがって、電動送風機33の運転停止に伴いフィルタ要素82の表面から自重などにより落下した微細塵は、微細塵溜め部72に溜められるようになっている。
【0041】
次に、上記のように構成された電気掃除機10の動作を説明する。
【0042】
図3(A)に示すように集塵容器50を本体ケース30の載置部35に載置した後、図2に示すように蓋体40を閉じてから、図1に示すように吸塵ホース21を蓋体40の吸込み口43に接続する。この吸塵ホース21には、既に延長管23を介して吸込み口体24が接続されている。
【0043】
この状態で、手元操作部22Aの操作スイッチ22Bを操作して、電動送風機33を駆動させると、電動部34の開口34Aを通じて容器ケース体53の負圧室部56が負圧となる。この負圧は、風路形成体62の分離開口64、風路形成体62の分離風路62a、容器ケース体53の吸気入口52、蓋体40の接続パイプ44、吸塵ホース21、延長管23、及び吸込み口体24に順次作用するので、吸込み口体24から空気とともに塵埃が吸引される。
【0044】
吸引された塵埃及び空気は延長管23及び吸塵ホース21を介して蓋体40の吸込み口43へ吸引される。吸込み口43へ吸引された塵埃及び空気は、集塵容器50の吸気入口52を通って塵分離部61の風路形成体62の分離風路62aに吸引される。
【0045】
分離風路62aに吸引された空気の一部は、風路形成体62の分離開口64の第1フィルタF2を通って容器ケース体53の負圧室部56に吸引され、更に容器ケース体53の開口51に装着したフィルタ80を通って電動送風機33の吸気口33Aに吸引される。
【0046】
以上の空気の吸引において、掃除機本体20の前後方向に直線状に延びている分離風路62aに吸引された所定以上の質量のある塵は、その慣性により急激に方向を転換して分離開口64を通過することはできない。このため、前記質量のある塵は、分離開口64を通る空気と分離されて分離風路62aを直進し、案内部63の風当て壁部63Bに衝突するとともに斜めの案内部63に沿って接続口76から塵溜め部55内へ導入される。
【0047】
これとともに、空気の一部が、前記質量のある塵と同様に斜めの案内部63に沿って接続口76から塵溜め部55内へ導入される。この場合、塵溜め部55に向かうに従い案内部63の風路断面積が次第に大きくなっているので、塵溜め部55に導かれる気流の風路抵抗は小さく、風路損が小さく円滑に導入できる。
【0048】
更に、案内部63が斜めであることにより、塵溜め部55内に対して導入隆起部75を通して斜め下向きに気流を導入させて、塵溜め部55内で気流を旋回させ易くできる。しかも、接続口76を通って斜め下向きに導入される気流は、その直後に斜状壁78に吹き当たり、この壁面をガイドとして塵溜め部55の略楕円形状の内周面に沿うように流れ方向を円滑に変えられる。したがって、塵溜め部55内にその略楕円形状内周面に沿う旋回流が容易に作られる。
【0049】
塵溜め部55内での以上の旋回流の形成によれば、気流が直角等急激に曲げられることがないので、風路損が小さい。しかも、塵溜め部55の入口部に内方に突出するガイド部材を設けて旋回流を作る構成ではなく、互いに連続している案内部63及び塵溜め部55自体を、旋回流を作るガイドとして利用しているので、構成が簡単である。それだけではなく、気流とともに塵溜め部55に流入する髪の毛のような長い塵や粗塵など所定以上の質量のある塵などが塵溜め部55の入口部で引っ掛かって詰まる恐れがない。
【0050】
以上のように塵溜め部55の内周面に沿って回転する下向きの旋回流によって、導入された塵が、塵溜め部55内で遠心分離されるとともに、塵溜め部55の下部内周面に沿って圧縮されながら蓄積される。この一方で、塵溜め部55内に導入されて旋回流となった空気は、塵溜め部55内の中央部で上昇反転して、塵溜め部55の通気開口59を通って容器ケース体53の負圧室部56に吸引される。この場合、通気開口59は塵溜め部55のほぼ中央部に対向して壁58に設けられているので、塵溜め部55内に蓄積された塵が通気開口59のフィルタF1に付着することは少ない。そして、負圧室部56に吸引された気流は、容器ケース体53の開口51に装着したフィルタ80を通って電動送風機33の吸気口33Aに吸引される。
【0051】
一方、重さの軽い塵は、塵分離部61の風路形成体62内の分離風路62aを直進することなく、電動送風機33の吸気負圧によって分離開口64のフィルタF2を通る気流に乗って流れていくので、フィルタF2の内周面に付着される。こうした軽い塵の付着によりフィルタF2の目詰まりが大きくなると、フィルタF2を通る風量は減少する。しかし、この減少分だけ負圧室部56の負圧が大きくなリ、第2の壁58の通気開口59を通じて塵溜め部55内の負圧も大きくなる。このため、分離風路62aを直進する空気の風速及び風量が増加する。
【0052】
このようにフィルタF2を通る風量が目詰まりにより減少しても、分離風路62aを直進する風量が増加するので、電動送風機33が吸引する風量は略一定に保たれる。このため、フィルタF2の目詰まりに拘りなく、常に所定の吸引力で塵埃を吸引することが可能である。
【0053】
更に、分離風路62aを直進する風速が大きくなると、その直進する空気がフィルタF2に付着した塵を剥がし易くなる。この際、筒状の風路形成体62の径が上流側の開口62Aから下流側の開口62Bに行くにしたがって漸減していることにより、分離風路62aを直進する風は、フィルタF2の全面に一様に当たって分離風路62aの中央部に寄せられながら流動する。このため、フィルタF2の内面に付着した塵をより剥し易くできる。しかも、既述のようにフィルタF2の外周面には、塵溜め部55から通気開口59を通って電動送風機33の吸気口33Aに至ろうとする空気が吹き当たっているので、フィルタF2の内面に付着した塵をより剥し易くできる。なお、以上のようにフィルタF2の内面から剥された塵は、質量の大きい塵と同様に案内部63を通って塵溜め部55内へ導入され、この塵溜め部55内で空気から遠心分離されて蓄積される。
【0054】
以上のように塵分離部61では、含塵空気を旋回させるとともにこの旋回流の進行方向を反転させながら塵と空気とを遠心分離させるものではなく、粗塵などの質量が大きい塵が直進しようとする慣性力を利用して、この塵を空気から分離するので、塵分離部61での風路損は小さなものとなる。しかも、吸気入口52と分離風路62aと容器ケース体53の開口51と電動送風機33の吸気口33Aとが、ほぼ同じ高さ位置にあって前後方向に順次並んで配置されていることにより、空気が分離風路62aからフィルタF2を通って容器ケース体53の負圧室部56に吸引されていく際、その空気の主な流れは、図3中矢印Qで代表して示すように大きく変わることがなく、ほぼ同じ高さ位置を略直線的に流れて、電動送風機33に吸引される。
【0055】
これにより風路損は更に小さくなリ、電動送風機33の機能を十分に発揮させることが可能である。更に、蓋体40の接続パイプ44と筒状の風路形成体62とが一直線状に並んでいることにより、容器ケース体53の吸気入口52に向けて導入される空気の方向と風路形成体62の延びる方向とが略一直線状になるので、その風路損をより一層小さくできる。
【0056】
既述のように負圧室部56内の空気はフィルタ80を通過して電動送風機33に吸引されるので、フィルタF1、F2を通り抜けた微細な塵を、フィルタ80で捕捉できるとともに、これにより清浄になった空気を電動送風機33が吸引できる。しかも、以上の掃除動作では、濾過による塵分離をなすフィルタ80の上流側に、直進流慣性分離作用により塵分離をなす塵分離部61を配置して、この塵分離部61で粗塵などを予め分離している。これにより、大きな塵がフィルタ80に付着して、この大きな塵を原因としてフィルタ80が早期に見掛け上の目詰まり状態となることを防止することが可能である。
【0057】
本発明は前記一実施形態には制約されない。例えば、風路形成体62は円筒や角筒等の直管状であってもよい。しかも、前記一実施形態で微細塵分離部をなすフィルタ80は、本体ケース30に取外し可能に支持し、本体ケース30に集塵容器50を取付けるに伴って、この容器50の容器ケース体53が有する開口51に嵌り込むようにすることも可能である。又、前記一実施形態で、導入隆起部75と対をなす他の隆起部を塵溜め部55の幅方向(奥行き方向と直交する方向)他端側部分に設けて、塵溜め部55の容積を更に拡大することも妨げない。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、サイクロン式分離を行うものに比べて風路損を小さくできるとともに、塵溜め部の入口部に塵が詰まることを抑制できる電気掃除機を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気掃除機を示す斜視図。
【図2】図1の電気掃除機の掃除機本体を一部断面して示す側面図。
【図3】(A)は蓋体を開けた状態で図2の掃除機本体を示す側面図。(B)は蓋体を開けるとともに集塵容器を取外した状態で図2の掃除機本体を示す斜視図。
【図4】図1の電気掃除機が備える集塵容器に微細塵捕捉用フィルタを取付けた状態を示す縦断面図。
【図5】図1の電気掃除機が備える集塵容器を一部切欠いて示す後面図。
【図6】図5の集塵容器を後側から見て示す斜視図。
【図7】図4の集塵容器を示す横断平面図。
【図8】図4の集塵容器を示す底面図。
【図9】図4の集塵容器に取付けられる微細塵捕捉用フィルタの一部を分解して示す斜視図。
【符号の説明】
10…電気掃除機
20…掃除機本体
33…電動送風機
33A…吸気口
43…吸込み口
50…集塵容器(ダストカップ)
55…塵溜め部
56…負圧室部(負圧空間)
58…塵溜め部を区画する第1の壁
59…通気開口
60…塵溜め部を区画する第2の壁
61…塵分離部
62…風路形成体
62a…分離風路
62A…分離風路の一端開口
62B…分離風路の他端開口
63…案内部
63A…案内部の傾斜壁部
63B…案内部の風当て壁部
63C…案内部の出口
64…分離開口
75…導入隆起部
76…接続口
77…円弧状壁部
78…斜状壁
F2…フィルタ
Claims (3)
- 掃除機本体の吸込み口から電動送風機の吸気口に至る風路中に形成された負圧室部内に、前記吸込み口に吸込まれた含塵空気を空気と塵とに分離する塵分離部を設け、この塵分離部で分離された塵を塵溜め部に溜める電気掃除機であって、
前記塵分離部は、前記吸込み口に対向して連通する一端開口と、この一端開口の後側でこの一端開口に対向する他端開口とを有する筒状に形成され、かつ、周面に形成された分離開口に取付けられたフィルタを有する風路形成体、及びこの風路形成体の前記他端開口に対向する風当て壁部を有して前記風路形成体と前記塵溜め部とを連通して設けられ前記風路形成体で分離された塵を前記塵溜め部に導く筒状の案内部とを備え、
前記塵溜め部が、その内部空間を囲む環状壁と底面を閉じる底板とを有しているとともに、前記環状壁がその周方向に沿って湾曲又は傾斜する斜状壁を含んでおり、
前記塵溜め部を、前記塵分離部の下側で、かつ、前記風路形成体の他端開口より後方に突出させて設け、
この塵溜め部の前記突出した部分でかつ前記塵溜め部の前後方向と直交する幅方向一端側部分に、前記負圧室部に突出する上向きの導入隆起部を形成し、
前記導入隆起部と前記風路形成体の他端開口とにわたる前記案内部を前記塵溜め部の突出部分上で斜めに設けて、前記斜状壁に斜め下向きの気流が吹き当たるようにこの案内部の出口を前記斜状壁に斜め上方から対向させ、
前記塵溜め部と負圧室部とを区画した前記塵溜め部の天井壁に前記塵溜め部と負圧室部とを連通する通気開口を設けた電気掃除機。 - 請求項1に記載の電気掃除機において、前記案内部の風路断面積が前記導入隆起部に向けて次第に広がっている。
- 請求項1又は2に記載の電気掃除機において、前記導入隆起部が斜状の壁部を有し、前記案内部の出口が前記斜状の壁部に設けた接続口を覆って接続されている。
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