JP3762365B2 - 電気掃除機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸引した含塵空気中の塵の慣性を利用して、この塵を気流中から分離する塵分離部を備えた電気掃除機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、慣性分離作用により吸引した空気中の塵を分離する電気掃除機として、サイクロン式の電気掃除機が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
このサイクロン式電気掃除機は、上部が開口されたダストカップと、このカップ内を負圧にする電動送風機等を備えている。ダストカップの周壁には吸気口が形成され、この吸気口は含塵空気を取込む吸込み口体に吸気通路を介して連通している。
【0004】
吸込み口体から吸引された含塵空気は吸気通路を通ってダストカップ内にその吸気口から吸引される。このカップ内への吸引に伴ってダストカップ内に発生する旋回流によって、空気より質量が重い塵が遠心分離される。この一方で、空気は、旋回流が進行する方向とは逆方向にダストカップ内を反転上昇して、このカップの上部開口部に設けたフィルタを通り電動送風機に吸引されて、外部に排出される。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−104223号公報(段落0038、0045−0047、図1、図2)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に記載の電気掃除機では、吸気通路を通って吸引された空気は90度向きが変えられて吸気口からダストカップ内に入り、ここで下向きの旋回流となってダストカップの周壁に沿って回転され、この後空気が反転上昇してダストカップ外に流出して電動送風機に吸引されていく。このようにダストカップ内で空気の流れ方向が2度変えられることにより、この空気の風路損が大きい。しかも、空気はダストカップ内で旋回するので、その風路損は更に大きい。したがって、特許文献1に記載の電気掃除機では、電動送風機の能力を十分に発揮させることが難しい。
【0007】
更に、特許文献1に記載の電気掃除機で、反転上昇する気流中の塵を濾過するフィルタが目詰まりすると、風路抵抗が増えて吸引力及び風量が低下する。これに伴って遠心分離作用が低下するので、掃除性能が低下する。このため、フィルタを取外し可能とする構成が必要で、かつ、使用者は、不定期にフィルタ取外してその目詰まりを解消する作業を余儀なくされる。そこで、こうした手間を軽減できるようにすることが望まれている。
【0008】
一方、濾過を行うフィルタである紙パックを集塵室に装着する通常の電気掃除機にあっては、空気の流れ方向に大きな変化がないように吸気口、紙パック、電動送風機が略直線上に並んでいることにより、風路損は大きくならない。しかし、紙パックは粗塵から細塵にわたる多様な塵を濾過して溜めるので、この紙パック内に所定量の塵が溜まると、極端に風量が低下しやすい。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、塵を遠心分離するものに比べて風路損を小さくできるとともに、塵分離部が有するフィルタの目詰まりの進行を抑制可能で、かつ、風量の低下も抑制し易い電気掃除機を得ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、吸込み口を有しかつ電動送風機が内蔵された掃除機本体と、前記吸込み口から電動送風機の吸気口に至る風路中に設けられ前記吸込み口に吸込まれた含塵空気を空気と塵とを分離する塵分離部であって、前記吸込み口に対向して連通する入口をなす一端の開口とこの一端の開口に対向して出口をなす他端の開口とを有する筒状に形成され、かつ、周面に形成された分離開口に取付けられたフィルタを有する風路形成体、及びこの風路形成体の前記出口に対向する風当て壁部を有した筒状の案内部を備える塵分離部と、この塵分離部で分離されて前記案内部で導かれる塵を溜める塵溜め部と、前記塵分離部に対する空気の流入風路に前記風路形成体の入口及び出口に対向して設けられ、前記風路形成体の内径及び前記案内部の入口の開口径より小さい開口径の風路絞りと、を具備している。
【0011】
本発明において塵分離部は、吸引した空気と塵との運動エネルギーが異なることに基づく慣性力の差を利用して空気から塵を分離する直進流式の慣性分離装置を指しており、反転流式の遠心分離装置は含まない。
【0012】
本発明において塵分離部のフィルタには、紙、綿、布、グラスウール、不織布、発泡合成樹脂等の濾材を、単層又は複数種積層したもの等を使用できる他、ネットを好適に使用できる。しかも、風路形成体の内側空間に臨むフィルタ面に、この面への塵の付着を抑制するとともに付着した塵を剥れ易くする低摩擦係数の表面加工層を設けることは妨げない。
【0013】
本発明において、塵分離部に対する空気の流入風路には、必要な都度、風路形成体の上流側近傍の吸込み口に着脱されるアタッチメントを好適に使用できる。この流入風路に設けられる風路絞りは、風路形成体を通るジェットを形成して風路形成体のフィルタに付着した塵を取除く気流制御をするものである。この気流制御は、直進流式の慣性分離を行う通常の使用時に風路形成体を流れる気流の状態に比較して、フィルタに付着した塵を除去するに足る乱流の発生を伴う流れ状態を得ることを指している。この気流制御の有効性をより確実にするために、風路絞りは可能な限り風路形成体の入口に寄せて設けることが好ましい。
【0014】
本発明では、塵分離部で直進流式の慣性分離を行うので、風路損が小さい。更に、塵分離部の分離開口を通って電動送風機の吸気口に向かう気流中の塵はフィルタに付着する。しかし、塵分離部の上流側で風路絞りが機能した時には、風路形成体を流通するジェットの形成に伴い、フィルタに付着している塵が除去されるように風路形成体内の気流が制御される。これにより、フィルタを有した塵分離部を取出すことなく、フィルタに付着した塵を除去する目詰まり改善が可能であり、これに伴い風路形成体内を通る気流の風量低下を抑制できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図1ないし図7を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0016】
図1中符号10で示す電気掃除機が備える掃除機本体20には、可撓性の吸塵ホース21の一端部が着脱可能に接続され、このホース21は他端部に手元操作部22を備えている。手元操作部22には伸縮可能な延長管23が着脱可能に接続され、延長管23の先端部には吸込み口体24が着脱可能に接続される。手元操作部22はハンドル22Aを有し、このハンドル22Aには遠隔操作用の操作スイッチ22Bが設けられている。
【0017】
図1ないし図3に示すように掃除機本体20は、本体ケース30と、本体ケース30に着脱自在に取付けられる集塵容器(ダストカップ)50と、蓋体40とを備えている。蓋体40はその後部が本体ケース30の前部にヒンジ結合されて上下方向に開閉可能に設けられている。
【0018】
本体ケース30は、後側の電動部34と前側の載置部35とを備えている。図2に示すように電動部34には電動送風機33が内蔵されていて、この電動送風機33の吸気口33Aはその大方が電動部34の上部側に寄っている。載置部35は、電動部34の下部から前方へ一体に突出されていて、上方に開放する凹状をなす皿状に形成されている。この載置部35には集塵容器50が着脱自在に載置される。蓋体40が閉じられることによって、蓋体40と載置部35とが集塵容器50を挟持して固定するようになっている。
【0019】
図3(B)に示すように電動部34の前面は開口され、この開口34Aは電動送風機33の吸気口33Aに対向するとともに連通している。開口34Aには後述するフィルタ80をその下流側から押えるためのリブを放射状に有したフィルタ押え34Bが設けられている。
【0020】
本体ケース30の幅方向両側壁には、本体ケース30の前側上部から後側下部にわたる斜状の膨出部36(一方のみ図示)が夫々一体に形成され、これら膨出部36の下端部に後輪37が回転自在に取付けられている。両膨出部36と本体ケース30の両側壁の前側部分には複数の排気孔からなる排気部38が設けられている。これらの排気部38は図示しない排気風路を介して電動送風機33の排気口33B(図2参照)と連通している。電動送風機33の排気口33Bから排気される空気は排気風路を介して排気部38から外に排気される。
【0021】
本体ケース30の電動部34には電動送風機33の下側に位置して図示しないバッテリー39が内蔵されている。バッテリー39の電力は電動送風機33等に供給される。なお、図示のバッテリーに代えて同部分にコードリールを配置して、このリールを介して商用交流電源の電力を電動送風機33等に供給することも可能である。
【0022】
蓋体40は、平面視がほぼ楕円形に形成された天板41と、この天板41の周囲に一体に形成された周壁42とを有している。周壁42の前部には吸塵ホース21の接続管部21a(図1参照)が着脱可能に接続するパイプ状の吸込み口43(図2参照)が設けられている。吸込み口43は、前後方向に延びており、その一端(前端)及び他端(後端)はいずれも開口している。
【0023】
図4ないし図6に示すように集塵容器50は、一面例えば図4において右側に位置する後面の略全体を開放してなる開口51を有している。更に、集塵容器50は、開口51と対向する例えば前面の壁に吸気入口52を有する容器ケース体53と、この容器ケース体53に設けられた把手部54とを有している。吸気入口52は吸込み口43の下流側開口(後端開口)に連通する。把手部54は例えば吸気入口52の下方に位置して形成されている。
【0024】
容器ケース体53は、このケース体53の下部で形成した塵溜め部(集塵部)55と、この塵溜め部55の主として上方に形成された負圧室部(負圧空間)56と、この負圧室部56内に設けられた第1の塵分離部61と、この塵分離部61で分離された塵埃を塵溜め部55へ導く案内部63とを有している。
【0025】
塵溜め部55の底面は開放されている。塵溜め部55の底部には、内面に閉鎖時の気密を図るシールゴム57aが取付けられた底板57が軸J回りに開閉可能に取付けられている。この底板57を開けることにより、塵溜め部55内に蓄積された塵埃を捨てることができる。底板57の閉じ状態は、把手部54に設けた操作釦の押し込みに連動する図示しない機構を介して解除されるようになっている。
【0026】
図4及び図5に示すように塵溜め部55と負圧室部56とは、開口51に寄った起立壁60とこの壁60の上端から折れ曲がって容器ケース体53の内面に連続する天井壁58とで区画されている。塵溜め部55の天井壁58には塵溜め部55と負圧室部56とを連通する通気開口59が形成されている。通気開口59は塵溜め部55の略中央部に対向して設けられている。この通気開口59には例えばネットで作られたフィルタF1が取付けられている。
【0027】
天井壁58の起立壁60側にはこれら両壁58、60にわたる接続穴58A(図4及び図5参照)が形成されている。この接続穴58Aの下方には塵溜め部55内で旋回流を発生させるためのガイド壁55G(図4参照)が設けられている。
【0028】
塵分離部61は、慣性分離作用で空気と塵とを分離する直進流式の慣性分離装置をなすものであって、分離風路62aを形成する筒状の風路形成体62と、案内部63とを有している。
【0029】
図4ないし図6に示すように風路形成体62は、一端及び他端をともに開口した中空円錐台状であって、その全周にわたって複数の分離開口64を等間隔に有しているとともに、これらの分離開口64を塞ぐフィルタF2(図2及び図4参照)を有している。詳しくは、風路形成体62は、大小一対の円形枠部W1、W2と、これら枠部W1、W2を連結した複数のリブW3とで構成されたフレームを備えている。各分離開口64は両枠部W1、W2及びリブW3によって囲まれた空間で作られている。フィルタF2は、例えばネットで作られていて、前記フレームの内周面に沿って筒状に取付けられている。したがって、風路形成体62はあたかもざるの軸方向両端を開口した構造をなしていて、この形成体62によって囲まれた内側空間により分離風路62aが形成されている。
【0030】
分離風路62aは掃除機本体20の軸方向(本実施形態では前後方向)に直線状に延びている。この分離風路62aは、風路形成体62の分離開口64、容器ケース体53の負圧室部56、及び本体ケース30の電動部34の開口34Aを、順次介して電動送風機33の吸気口33Aに連通している。
【0031】
図4に示すように風路形成体62の大径な入口をなす一端の円形枠部W1の径は、吸込み口43及び容器ケース体53の吸気入口52の径より大きく形成されている。風路形成体62はその円形枠部W1の内側に吸気入口52が位置するように容器ケース体53に接続されている。風路形成体62の小径な出口をなす他端の円形枠部W2の径は、吸気入口52の径とほぼ同一に形成されている。これにより、風路形成体62の径は一端から他端に行くにしたがって直線的に漸減している。なお、風路形成体62の円形枠部W2の径は、吸気入口52の径より小さくてもよいが、吸気入口52の径以上とする方が好ましい。
【0032】
風路形成体62の軸線と、掃除機本体20の吸込み口43の軸線とはほぼ一直線状に連続し、これらの軸線延長線上に電動送風機33の吸気口33Aが向き合うように設けられている。これにより、吸込み口43と、容器ケース体53の吸気入口52と、風路形成体62と、容器ケース体55の開口51と、電動送風機33の吸気口33Aとは、ほぼ同一高さ位置において掃除機本体20の軸方向(本実施形態では前後方向)に沿って順次配設されている。
【0033】
図4等に示すように案内部63は風路形成体62の円形枠部W2に連続して設けられている。詳しくは、案内部63は、円形枠部W2の外周に接続する入口63Aと、この入口63Aの上部から斜め下方に向かって延びた傾斜壁部63Bと、この傾斜壁部63Bの一端から湾曲して下方に延びるとともに入口63Aに対向する風当て壁部63Cとを有している。この案内部63の下部は、例えば上下方向に筒状をなして延びていて接続穴58Aに接続されている。この接続により、案内部63は分離風路62aと塵溜め部55とを連通している。
【0034】
入口63Aの開口径は、円形枠部W2と同様に吸気入口52の径より小さくてもよい。しかし、塵の引っ掛かりを抑制して塵の流通を円滑にできる点で吸気入口52の径以上とする方が好ましい。この場合、電動送風機33の入力電圧が1000ワットの条件下においては、入口63Aの径を30mmないし35mm、より好ましくは(33±1)mmに設定するとよい。
【0035】
前記起立壁60は容器ケース体53の開口51より少し内側(前側)に設けられて、開口51に所定の深さH(図4参照)を与えている。この深さHを利用して開口51内に第2の塵分離部をなすフィルタ80が着脱可能に装着されるようになっている。開口51部内へのフィルタ80の嵌め込み深さは、容器ケース体53に設けた規制手段、例えば図4に示すように容器ケース体53の天井部に形成した段部53A及び起立壁60の下端角部53Bで規制される。この規制によりフィルタ80は、立てて、好ましくは例えば垂直に近い角度で前傾して装着されるようになっている。
【0036】
容器ケース体53に取付けられたフィルタ80の上部は前記負圧室部56に臨んでおり、かつ、下部は起立壁60に近接して対向される。これにより、フィルタ80の下部と起立壁60の間には、上方の負圧室部56に比較して遥かに狭くしかも風路断面積が小さい空隙Gが形成される。
【0037】
図5及び図6に示すようにフィルタ80は、フィルタ枠81と、この枠81の内側全体を塞いで装着されるフィルタ要素82とを備えている。このフィルタ80は容器ケース体53の開口51にちょうど嵌入可能な大きさに作られている。フィルタ要素82は濾材をマット状にしたものであり、特に本実施形態では濾過面積を拡張するために波形形状に折り曲げたプリーツ形のフィルタ要素を用いている。このフィルタ要素82のメッシュは、前段のフィルタF1、F2のメッシュより細かい。
【0038】
図1及び図2中符号71は電気掃除機10が備えるアダプタを示し、これはフィルタF2の目詰まり解消の手入れをする場合、その都度、吸込み口43に取付けて用いられる。アダプタ71は、その使用時に風路形成体62への流入風路をなす筒状のアダプタ本体72の一端部側外面にカバー73を取付けている。アダプタ本体72の一端面には空気取り入れ口72aが開口されているとともに、アダプタ本体72の他端部は吸込み口43に着脱可能に挿し込み接続される挿入部72bとして機能するように作られている。カバー73は吸込み口43にアダプタ本体72を接続した時に上向きの姿勢となるように設けられている。
【0039】
図2に示すようにアダプタ本体72内には、風路絞り、つまり、オリフィス74aを形成する例えば板状の仕切り74が設けられている。オリフィス74aは、アダプタ本体72の例えば径方向中央部に位置されている。電動送風機33の入力電圧が1000ワットの条件下において、オリフィス74aより上流側部分のアダプタ本体72の開口径Aは、30mmないし35mm、より好ましくは(33±1)mmに設定される。オリフィス74aの開口径Bは、9mmないし13mm、より好ましくは(11±0.5)mmに設定するとよい。
【0040】
オリフィス74aの開口径Bを9mmないし13mmとすることは、後述の乱流を風路形成体62内に作るために必要とする速さ及び風量を有したジェットを得る上で好ましい。つまり、開口径Bが9mm未満である場合には、オリフィス74aにより作られる後述のジェットの風速は高まるが、風量が不足気味となり、又、開口径Bが13mmを超える場合には、風量は十分となるがオリフィス74aにより作られるジェットの風速が大きく低下してしまうので、いずれの場合でも所定の気流制御を行うに足りる仕事量を得るには適当ではない。
【0041】
カバー73の内側にはマイナスイオン発生器75が組み込まれている。この発生器75が有する放電針76は、アダプタ本体72を軸方向に貫通する空気取り込み用の流入風路内に突出されている。更に、カバー73の前記挿入部72b側には受電端子77がアダプタ本体72の軸方向に突出されている。この受電端子77は、挿入部72bを吸込み口43に挿し込み接続するに伴い、この吸込み口42に付設された電源端子78に挿し込まれて電気的に接続される。電源端子78は掃除機本体20内に配線された電線78aを介して図示しない電源回路部に接続されている。
【0042】
図1及び図2に示すようにカバー73の表面には、一対の操作スイッチ79a、79bが設けられている。一方の操作スイッチ79aは、アダプタ71を掃除機本体20に挿し込み接続した状態で電動送風機33及びマイナスイオン発生器75を共に駆動するために使用され、他方の操作スイッチ79bは、アダプタ71を掃除機本体20に挿し込み接続した状態で電動送風機33及びマイナスイオン発生器75の駆動を共に停止するために使用される。
【0043】
次に、上記のように構成された電気掃除機10の動作を説明する。
【0044】
図3(A)に示すように集塵容器50を本体ケース30の載置部35に載置した後、蓋板40を閉じてから、吸塵ホース21を蓋体40の吸込み口43に接続する。この吸塵ホース21には、既に延長管23を介して吸込み口体24が接続されている。
【0045】
この状態で、手元操作部22Aの操作スイッチ22Bを操作して、電動送風機33を駆動させると、本体ケース30の開口34Aを通じて容器ケース体53の負圧室部56が負圧となる。この負圧は、風路形成体62の分離開口64、風路形成体62の分離風路62a、容器ケース体53の吸気入口52、吸込み口43、吸塵ホース21、延長管23、及び吸込み口体24に順次作用するので、吸込み口体24から空気とともに塵埃が吸引される。
【0046】
吸引された塵埃及び空気は延長管23及び吸塵ホース21を介して蓋体40の吸込み口43へ吸引される。吸込み口43へ吸引された塵埃及び空気は、集塵容器50の吸気入口52を通って塵分離部61の風路形成体62の分離風路62aに吸引される。
【0047】
分離風路62aに吸引された空気の一部は、風路形成体62の分離開口64の第1フィルタF2を通って容器ケース体53の負圧室部56に吸引され、更に容器ケース体53の開口51に装着したフィルタ80を通って電動送風機33の吸気口33Aに吸引される。
【0048】
以上の空気の吸引において、掃除機本体20の前後方向に直線状に延びている分離風路62aに吸引された所定以上の質量のある塵は、その慣性により急激に方向を転換して分離開口64を通過することはできない。このため、前記質量のある塵は、分離開口64を通る空気と分離されて分離風路62aを直進し、案内部63の風当て壁部63Cに衝突するとともに案内部63に沿って塵溜め部55内へ導入される。
【0049】
これとともに、空気の一部は、前記質量のある塵と同様に案内部63を介して塵溜め部55内へ導入される。こうして導入された空気は、ガイド壁55Gによって塵溜め部55の内周面に沿って回転する下向きの旋回流となる。このため、塵溜め部55内へ導入された塵は前記旋回流により塵溜め部55の下部内周面に沿って圧縮されながら蓄積される。そして、塵溜め部55内に導入されて旋回流となった空気は、塵溜め部55内の中央部で上昇反転して、塵溜め部55の天井壁58の通気開口59を通って容器ケース体53の負圧室部56に吸引される。
【0050】
一方、重さの軽い塵は、塵分離部61の風路形成体62内の分離風路62aを直進することなく、電動送風機33の吸気負圧によって分離開口64のフィルタF2を通る空気に乗って流れていくので、フィルタF2の内周面に付着される。こうした軽い塵の付着によりフィルタF2の目詰まりが大きくなると、フィルタF2を通る風量は減少する。しかし、この減少分だけ負圧室部56の負圧が大きくなリ、天井壁58の通気開口59を通じて塵溜め部55内の負圧も大きくなる。このため、分離風路62aを直進する空気の風速及び風量が増加する。
【0051】
このように分離風路62aを直進する風速が大きくなると、その直進する空気がフィルタF2に付着した塵を剥がし易くなる。この際、筒状の風路形成体62の径が気流の入口から出口に行くにしたがって漸減していることにより、分離風路62aを直進する風は、フィルタF2の全面に一様に当たって分離風路62aの中央部に寄せられながら流動する。このため、フィルタF2の内面に付着した塵をより剥し易くできる。これにより剥された塵は、質量の大きい塵と同様に案内部63を通って塵溜め部55内へ導入され、この塵溜め部55内で空気から遠心分離されて蓄積される。
【0052】
既述のようにフィルタF2を通る風量が目詰まりにより減少しても、分離風路62aを直進する風量が増加するので、電動送風機33が吸引する風量は略一定に保たれる。このため、フィルタF2の目詰まりに拘りなく、常に所定の吸引力で塵埃を吸引することが可能である。
【0053】
更に、塵分離部61では、含塵空気を旋回させるとともにこの旋回流の進行方向を反転させながら塵と空気とを遠心分離させるものではなく、粗塵などの質量が大きい塵が直進しようとする慣性力を利用して、この塵を空気から分離するので、塵分離部61での風路損は小さなものとなる。しかも、吸気入口52と分離風路62aと容器ケース体53の開口51と電動送風機33の吸気口33Aとが、ほぼ同じ高さ位置にあって前後方向に順次並んで配置されていることにより、空気が分離風路62aからフィルタF2を通って容器ケース体53の負圧室部56に吸引されていく際、その空気の主な流れは、図2中矢印Qで代表して示すように大きく変わることがなく、ほぼ同じ高さ位置を略直線的に流れて、電動送風機33に吸引される。
【0054】
これにより風路損は更に小さくなリ、電動送風機33の機能を十分に発揮させることが可能である。更に、吸込み口43と筒状の風路形成体62とが一直線状に並んでいることにより、容器ケース体53の吸気入口52に向けて導入される空気の方向と風路形成体62の延びる方向とが略一直線状になるので、その風路損をより一層小さくできる。
【0055】
既述のように負圧室部56内の空気はフィルタ80を通過して電動送風機33に吸引されるので、フィルタF1、F2を通り抜けた微細な塵を、フィルタ80で捕捉できるとともに、これにより清浄になった空気を電動送風機33が吸引できる。
【0056】
以上の掃除動作では、濾過により塵分離をなすフィルタ80の上流側に、慣性分離作用により塵分離をなす塵分離部61を配置して、この塵分離部61で粗塵などを予め分離している。これにより、塵分離部61で除去すべき大きな塵がフィルタ80に付着して、この大きな塵を原因としてフィルタ80が早期に見掛け上の目詰まり状態となることを防止することが可能である。
【0057】
なお、フィルタ80にその上流側表面に付着している塵の多くは、電動送風機33の運転が停止されるに伴って、自重で落下する。落下した塵は、フィルタ枠81の下端部及び前記空隙G内に溜められる。
【0058】
既述した運転中でのフィルタF2内面の塵除去は完全ではないので、電気掃除機1の運転を停止した場合は、フィルタF2には塵等が付着されている状態にあるが、この状態は必要に応じて使用者により以下の手順で改善できる。
【0059】
即ち、掃除機本体20の吸込み口43から吸塵ホース21を取外す代わりに、アダプタ71を吸込み口43に挿入して取付ける。この状態で、オン用の操作スイッチ79aを投入して、電動送風機33を駆動させる。これにより、アダプタ71の空気取入れ口72aから取込まれた空気がアダプタ本体72を軸方向に流通して風路形成体62内に吸込まれる。これ以降の掃除機本体20内での空気の流れは、以下説明する点を除いて、既に説明した通常の掃除動作の場合と同じである。
【0060】
アダプタ本体72の流入風路の一部は風路絞りで絞られている。このため、図7(A)に模擬的に示すようにオリフィス74aを境に下流側に高速でかつ所定風量のジェットの流れJが形成され、流れJは、その勢いにより周囲に殆ど拡散されることなく、分離風路62aの径方向中央部を流通し案内部63を経て塵溜め部55内に至る。このジェットの流れJの流速は例えば略116m/sであり、オリフィス74aを境に上流側の流速(通常掃除時の流速)は例えば略63m/sの約2倍である。
【0061】
塵溜め部55に流入したジェットの流れJは、塵溜め部55の壁面やガイド壁55G等で反射されて、分離風路62a内で最も圧力が低い部分に向けて逆流する。これにより、案内部63から分離風路62a内に逆流する気流Rは、フィルタF2の内面に沿って風路形成体62の小径部から大径部に向けて流動しつつ、その一部がフィルタF2及び分離開口64を通って負圧室部56に吸込まれ(この流出気流の流れを符号Sで示す。)る一方で、フィルタF2とジェットの流れJとの間で渦、つまり、乱流Tを形成して、その一部は再びジェットの流れJに乗って流動する。
【0062】
このように風路形成体62内に乱流Tが形成されて、フィルタF2に対して寝た方向、言い換えれば、フィルタF2に付着している塵をフィルタF2に押付ける方向ではなく、フィルタF2に付着している塵に剥がす力を与えるベクトルを有した流れが作用する。
【0063】
したがって、この気流の挙動によって、フィルタF2を備えた風路形成体62等を容器ケース体53から取外すことなく、フィルタF2内面に付着している塵を除去することが可能である。この場合、フィルタF2内面に付着している塵は膜状となっていることが多いので、塵を剥がすようして除去できる。そして、剥がされた膜状の塵は、その質量が大きい状態となっているので、ジェットの流れJによって塵受け部55に移送して溜められる。
【0064】
図7(B)は比較のためにアダプタ71を使用しない電気掃除機10の通常の運転状態での風路形成体62周りの気流の挙動を模擬的に示している。この場合、吸塵ホース21から流入する空気の流速は略63m/sである。この図7(B)に示すように、吸塵ホース21の接続管部21aから分離風路62aを軸方向に流通する気流は、殆ど乱れなく流通して案内部63に流入する一方で、案内部63に流入しない一部の気流は、フィルタF2に対して略直角に交差するようにこのフィルタF2及び分離開口64を通って分離風路62aから負圧室部56に流出する。これにより、既述のように電動送風機33の吸気負圧によって分離開口64のフィルタF2を通る空気に乗って流れていく軽い塵を、フィルタF2の内周面に捕捉できる。
【0065】
以上説明したフィルタF2の目詰まり改善動作と同時に、マイナスイオン発生器75が動作されるので、その放電針76から発生されるマイナスイオンが、アダプタ本体72を流通する気流に乗って運ばれる。
【0066】
一般に、電気掃除機10の運転に伴い流動する気流が接する部品、特に集塵ケース50等のように合成樹脂製の部品や各種のフィルタは、気流との摩擦によって発生する静電気でプラスに帯電して、帯電されたプラスイオンの電荷により塵を吸い付けて保持することが知られている。このため、以上のようにマイナスイオンを供給することで、前記合成樹脂製部品等の帯電状態を中和することが可能となり、フィルタF2に付着した塵を既述の逆流を伴う気流制御によってより容易かつ確実に除去することが可能となる。勿論、その他の部分での前記中和に伴い、例えばフィルタ80からの塵の自重落下や、底蓋57を開けた時の塵溜め部55からの塵の自重落下なども促進することが可能である。
【0067】
なお、フィルタF2の目詰リ改善及びマイナスイオンの供給を停止したい場合には、アダプタ71のオフ用操作スイッチ79bを投入して電源供給を断てばよい。
【0068】
本発明は前記一実施形態には制約されない。例えば、前記一実施形態では、オリフィスの開口面積が変化しない風路絞りをアダプタに取付けたが、これに代えて以下の構成を採用可能である。例えば流入風路の径方向両側又は全周から流入風路の径方向中心に向けて移動可能な複数の可動仕切り要素(風路絞り要素)を設けて、これらを径方向に同期して移動させる連動機構を、モータの動力や手動で動作させる構成とする。これにより、所定開口面積のオリフィスを作る絞り位置と、気流の妨げとならないように流入風路を全開する全開位置とにわたって各風路絞り要素を選択的に移動させることができる。このような可動式の風路絞りは、アダプタに設けてもよいが、吸塵ホースの接続管部或いは掃除機本体の吸込み口に組込んで実施できる。このようにする場合には吸塵ホースとアダプタとを一々差し替える手間を要することなく、通常の使用とフィルタの目詰り改善とを切換えることができて、取扱い上便利である。又、風路形成体は中空円錐台形状に限らず、径に殆ど変化がない円筒状であってもよい。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、塵を遠心分離するものに比べて風路損を小さくできるとともに、塵分離部が有するフィルタの目詰まりの進行を抑制可能で、かつ、風量の低下も抑制し易い電気掃除機を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気掃除機を示す斜視図。
【図2】図1の電気掃除機の掃除機本体を一部断面して示す側面図。
【図3】(A)は蓋体を開けた状態で図2の掃除機本体を示す側面図。
(B)は蓋体を開けるとともに集塵容器を取外した状態で図2の掃除機本体を示す斜視図。
【図4】図1の電気掃除機が備える集塵容器にフィルタを取付けた状態を示す縦断面図。
【図5】図4の集塵容器とこれに取付けられるフィルタとを分離して後側から見て示す斜視図。
【図6】図4の集塵容器にフィルタを取付けた状態を示す横断平面図。
【図7】(A)はアダプタ使用下で図1の電気掃除機が備える風路形成体に対する気流の挙動を模擬的に示した図。
(B)はアダプタ非使用下で図1の電気掃除機が備える風路形成体に対する気流の挙動を模擬的に示した図。
【符号の説明】
10…電気掃除機
20…掃除機本体
33…電動送風機
33A…吸気口
43…吸込み口
50…集塵容器(ダストカップ)
52…吸気入口
53…容器ケース体
55…塵溜め部
56…負圧室部(負圧空間)
57…底板
60…起立壁
61…塵分離部
62…風路形成体
62a…分離風路
63…案内部
63A…案内部の入口
63C…風当て壁部
64…分離開口
71…アダプタ
72…アダプタ本体(流入風路)
72a…アダプタ本体の空気取入れ口
72b…アダプタ本体の挿入部
74…仕切り(風路絞り)
74a…オリフィス
A…アダプタ本体の上流側部分の開口径
B…オリフィスの開口径
J…ジェットの流れ
R…逆流する気流
S…流出気流
T…乱流

Claims (3)

  1. 吸込み口を有しかつ電動送風機が内蔵された掃除機本体と、
    前記吸込み口から電動送風機の吸気口に至る風路中に設けられ前記吸込み口に吸込まれた含塵空気を空気と塵とを分離する塵分離部であって、前記吸込み口に対向して連通する入口をなす一端の開口とこの一端の開口に対向して出口をなす他端の開口とを有する筒状に形成され、かつ、周面に形成された分離開口に取付けられたフィルタを有する風路形成体、及びこの風路形成体の前記出口に対向する風当て壁部を有した筒状の案内部を備える塵分離部と、
    この塵分離部で分離されて前記案内部で導かれる塵を溜める塵溜め部と、
    前記塵分離部に対する空気の流入風路に前記風路形成体の入口及び出口に対向して設けられ、前記風路形成体の内径及び前記案内部の入口の開口径より小さい開口径の風路絞りと、
    を具備する電気掃除機
  2. 前記吸込み口に着脱可能に接続されるアダプタを備え、このアダプタに前記風路絞りが設けられている請求項1に記載の電気掃除機。
  3. 前記アダプタの前記風路絞りより上流側部分の開口径と、前記案内部の入口の開口径とが、夫々30mmないし35mmであるとともに、前記風路絞りが作るオリフィスの孔径が9mmないし13mmである請求項2に記載の電気掃除機。
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