JP3762058B2 - 非放射性誘電体線路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は非放射性誘電体線路に関し、例えばミリ波集積回路等に組み込まれて、高周波信号のガイドとして用いられる非放射性誘電体線路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の非放射性(Non Radiative Dielectricで、以下、NRDという)誘電体線路は、図7に示すように、誘電体線路1の上下に平行平板導体2、3を配置して構成され、このようなNRD誘電体線路は、平行平板導体2、3の間隔がλ/2以下のとき、波長がλより大きい高周波信号は遮断されて平行平板導体2、3間の空間には侵入できない。そして、平行平板導体2、3の間に誘電体線路1を挿入すると、その誘電体線路1に沿って高周波信号が伝搬でき、その高周波信号からの放射波は平行平板導体2、3の遮断効果によって抑制される。前記波長λは近似的に真空中を伝搬する高周波信号(電磁波)の波長に等しい。尚、図7において、誘電体線路1の理解を容易にするために、上側の平行平板導体3の一部を切り欠いて記載した。
【0003】
そして、図8(a)、(b)に示すように、誘電体線路1の中途にダイオード等の半導体素子が設けられ、NRD誘電体線路に、信号の周波数変換、スイッチング、減衰、検出等の機能を付加させていた。NRD誘電体線路に半導体素子を取り付けるには、図8(a)に示すように、誘電体基板4の一主面上に、外部への高周波信号の漏洩を防ぐチョークパターン5と高周波信号を受信する一対のアンテナパターン6を形成し、誘電体線路1内の高周波信号の伝搬路に位置する一対のアンテナパターン6間に、ダイオードなどの半導体素子7を配置し接続した構造となっている。図9に、図8(b)の平面図を示す。
【0004】
尚、図8(b)において、符号8は半導体素子7に駆動用のバイアス電圧を入力したり、信号を出力するための入出力導線、符号9は平行平板導体2に形成された貫通孔である。入出力導線8は、平行平板導体2に電気的に導通しない状態で貫通孔9を挿通し、バイアス回路、増幅回路等の電子回路に接続される。
【0005】
他のNRD誘電体線路として、ダイオード実装パターン部を誘電体線路の断面に接着し、チョークパターン部を別基板上に形成して、チョークパターン部を誘電体線路の両方又は片方の側面に貼付又は蒸着したものも提案されている(特開平8−8603号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の非放射性誘電体線路では、誘電体基板4に形成されたチョークパターン5や半導体素子7が外部に露出しており、製造工程や使用中にチョークパターン5や半導体素子7が脱落したり、チョークパターン5や半導体素子7にダメージを受ける危険があった。
【0007】
また、図9に示したように、誘電体基板4に搭載されたダイオードなどの半導体素子7の部分に誘電体線路1が当接する状態となるため、半導体素子7の厚みだけ誘電体基板4と誘電体線路1との間に空隙Lが形成され、インピーダンスのマッチングが十分にとれず、素子が機能する帯域幅が狭くなるという欠点があった。また、誘電体基板4と誘電体線路1との接続が不安定になるという欠点もあった。
【0008】
また、入出力導線8が誘電体基板4の端部に取り付けられており、この入出力導線8が平行平板導体2の貫通孔9を挿通し、信号を平行平板導体2、3の外部に導いていた。しかしながら、このような接続構造は製造工程が非常に煩雑で作業性が悪く、量産化を妨げていた。更に、誘電体基板4は厚さが薄く長さが長いため、しかも、上記したように、半導体素子7の厚みだけ誘電体基板4と誘電体線路1との間に空隙Lが形成されているので、正確に位置決めして固定するのが困難で、製造工程や使用中に位置ずれが生じたり、破損する危険性があった。
【0009】
更に、チョークパターン部を誘電体線路の両方又は片方の側面に貼付又は蒸着した従来例においては、入出力導線から高周波信号が外部に漏れたり、誘電体線路のチョークパターンを貼付した部分とそれ以外の部分のインピーダンスが異なるため、インピーダンス不整合による高周波信号の反射が起こるという問題点があった。
【0010】
本発明は、チョークパターンや半導体素子の破損を防止できるとともに、高周波信号の透過特性が良好な帯域幅を拡大することができ、さらに製造が容易で量産に適する非放射性誘電体線路を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の非放射性誘電体線路は、波長λの高周波信号を伝搬する誘電体線路と、この誘電体線路を挟持する一対の平行平板導体とから構成され、前記一対の平行平板導体の間隔が前記高周波信号の波長λの1/2以下である非放射性誘電体線路において、前記誘電体線路途中に、一対のアンテナパターンと、該アンテナパターン間に配置され電気的に接続される半導体素子と、前記一対のアンテナパターンにそれぞれ接続されるチョークパターンとを一対の誘電体板で挟持し該誘電体板同士を接着してなる誘電体基板を介装し、該誘電体基板の平坦な表面に前記誘電体線路をそれぞれ当接した状態で接着してなるものである。
【0012】
ここで、前記誘電体基板の前記平行平板導体側の表面に、前記チョークパターンと電気的に接続された表面電極を形成し、該表面電極に接続された導体が、前記平行平板導体に形成された貫通孔を該平行平板導体と非導通状態で挿通していることが望ましい。
【0013】
【作用】
従来においては、誘電体基板に搭載されたダイオード等の半導体素子に誘電体線路を当接し、誘電体線路途中に誘電体基板を介装していたため、誘電体基板の強度や安定性が悪く、製造または使用中に誘電体基板が位置ずれしたり、半導体素子やアンテナパターン、チョークパターンが破損していたが、本発明では、誘電体基板に、アンテナパターン、半導体素子およびチョークパターンを内蔵したため、これらの半導体素子やパターンを製造工程や使用中に保護することができるとともに、誘電体基板の強度が向上し、また誘電体線路が当接する部分は誘電体基板の平坦な表面であり、安定した状態で接続することができる。これにより、製造または使用中に誘電体基板が位置ずれすることがなく、誘電体基板を正確な位置に取り付けることができる。
【0014】
また、誘電体基板の平坦な表面に誘電体線路が当接するため、誘電体基板と誘電体線路との間に空隙が形成されることを防止することができ、誘電体基板と誘電体線路のインピーダンスマッチングが取りやすくなり、高周波信号の透過特性が良好な帯域幅を拡大することができる。
【0015】
また、本発明では、誘電体基板の表面に、チョークパターンと電気的に接続された表面電極を形成し、該表面電極に接続された導体が、平行平板導体に形成された貫通孔を該平行平板導体と非導通状態で挿通しているため、従来のように煩雑で不安定な導線の取り付けや取り回し工程を省略することができ、信頼性が高く、安価に量産することができる非放射性誘電体線路が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の非放射性誘電体線路の基本構成の斜視図を図1に示す。尚、図1において、誘電体線路の理解を容易にするために、上側の平行平板導体の記載は省略した。
【0017】
図1において、符号11は誘電体線路であり、符号12は下側の平行平板導体、13は誘電体基板を示している。
【0018】
そして、誘電体基板13は、図2に示すように、一対の誘電体板14、15により、一対のアンテナパターン17と、これらのアンテナパターン17間に配置された半導体素子18と、一対のアンテナパターン17にそれぞれ接続された一対のチョークパターン19とを挟持して構成されている。誘電体板14には、半導体素子18を収容するべく、半導体素子18の形状に合致した凹部20が形成されている。この凹部20の大きさには特に制限はないが、非放射性誘電体線路の特性を充分引き出し、半導体素子18の保護効果を確保するために、なるべく素子18の大きさと近いものが望ましい。
【0019】
半導体素子18の両側に形成されたチョークパターン19には、それぞれ信号取出用の表面電極21が電気的に接続されており、これらの信号取出用の表面電極21は、図1および図3に示すように、誘電体基板13の上面に形成されている。
【0020】
表面電極21は、誘電体基板13の上面にチョークパターン19を延長させて形成したり、別個の電極を形成する等して形成すればよく、表面電極21とチョークパターン19とを半田、導電性接着剤等を用いて接続する。
【0021】
これらの表面電極21には導体23が接続され、導体23が、上側の平行平板導体24に形成された貫通孔25を該平行平板導体24と非導通状態で挿通している。このような導体23は、バイアス回路、増幅回路等の他の電子回路に接続される。このような構成によれば生産性が高く量産に適している。この場合、必要に応じ、貫通孔25の内部を樹脂等の絶縁物質等で充填する、貫通孔25の内壁に絶縁物質等をコーティングする、又は導体23を絶縁チューブで被覆してもよい。
【0022】
本発明において、誘電体線路11はテフロン等の低損失樹脂材料、コージェライト等の低誘電率セラミック材料から成るのが好ましく、これらは低損失で加工が容易であり、量産に適している。また、誘電体線路11は一組の平行平板導体に複数設けても構わない。
【0023】
前記半導体素子18としては、高周波半導体ダイオード、ガンダイオード、インパットダイオード、可変容量ダイオード、ショットキーダイオード、バラクタダイオード、PINダイオード等を使用でき、これらのダイオードに限らず、半導体素子18がインダクタ、キャパシタ、トランジスタ等の機能を有するものでもよい。また、半導体素子18は、誘電体線路11の中途であればどこにあってもよい。
【0024】
前記平行平板導体12は、高い電気伝導度及び加工性の点で、Cu、Al、Fe、SUS(ステンレス)、Ag、Au、Pt等の導体板、あるいはこられの導体層を表面に形成した絶縁板でもよい。
【0025】
また、アンテナパターン17とチョークパターン19は、高い電気伝導度を有するAu、Cu、Al等の材料が好ましい。
【0026】
本発明のチョークパターン19は蒸着法等で成膜するか、チョークパターン19の形状に成形した薄い金属板を張り付けて構成する。このチョークパターン19は、基本的に1/4波長チョークパターンとすることにより高周波信号を阻止するインダクタ(チョークコイル)と等価なものとなり、高周波信号は外部へ漏洩しない。また、このチョークパターン19は、上記と同様の効果が得られるものであれば、1/4波長チョークパターン以外のパターンでも構わない。
【0027】
以上のように構成された非放射性誘電体線路では、アンテナパターン17、半導体素子18、チョークパターン19を内蔵する誘電体基板13を、誘電体線路11途中に介装したため、チョークパターン19等の素子を製造工程や使用中のダメージから保護することができる。
【0028】
また、本発明では、誘電体板14、15により、アンテナパターン17、半導体素子18およびチョークパターン19を挟持して誘電体基板13を構成したため、誘電体基板13の強度が向上し、また誘電体線路11が当接する部分は誘電体基板13の平坦な表面であり、安定した状態で接続することができる。これにより、製造または使用中に誘電体基板13が位置ずれすることがなく、誘電体基板13を正確な位置に取り付けることができる。
【0029】
また、誘電体基板13の平坦な表面に誘電体線路11が当接するため、誘電体基板13と誘電体線路11との間に空隙が形成されることを防止でき、誘電体基板13と誘電体線路11のインピーダンスマッチングが取りやすくなり、高周波信号の透過特性が良好な帯域幅を拡大することができる。
【0030】
また、本発明では、誘電体基板13の表面に、チョークパターン19と電気的に接続された表面電極21を形成し、該表面電極21に接続された導体23が、平行平板導体12に形成された貫通孔25を該平行平板導体12と非導通状態で挿通しているため、従来のように煩雑で不安定な導線の取り付けや取り回し工程を省略することができ、信頼性が高く、安価に量産することができる非放射性誘電体線路が得られる。
【0031】
尚、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更は何等差し支えない。
【0032】
また、外部への電磁波の漏洩による損失を考慮しなくても良い場合や、外部にチョーク回路を設けた場合は、図6に示すようにチョークパターンを省略することもできる。つまり、誘電体基板13は、誘電体板14、15により、アンテナパターン17、半導体素子18を挟持して構成されている。
【0033】
さらに、本発明では、図2のように、例えば一方の誘電体板15のアンテナパターン17上に半導体素子18を取り付けた後、他方の誘電体板14を半導体素子18を挟み込むように接着するが、この接着は充分な接着強度が保てるものならばどのような方法でも良い。
【0034】
【実施例】
図1のNRD誘電体線路を以下のようにして作製した。Cuから成り、100×100×8mmの2枚の平行平板導体12、24を用意した。
【0035】
次に、誘電体板14、15の材料として厚さ0.3mmのテフロンシートを用い、図2に示すように誘電体基板13を形成した。つまり、先ず、誘電体板15にアンテナパターン17、チョークパターン19を金を蒸着して形成した。また、これらと同時にチョークパターン19に接続する表面電極21を、誘電体板15の上面に形成した。
【0036】
半導体素子18として高周波用のビームリード型のPINダイオードを使用し、誘電体板15のアンテナパターン17の間に導電性接着剤を用いて接着した。
【0037】
他方の誘電体板14にはこのダイオードに合わせた大きさの凹部20を作成し、ダイオードを取り付けた誘電体板15に接着剤によって張り付けた。
【0038】
この後、コージェライトから成り、高さ2.25mm×巾1mmの誘電体線路11を下側の平行平板導体12上に配置するとともに、誘電体基板13を、誘電体線路11がチョークパターン19の中央部を横切るように誘電体線路11の途中に介装し、接着した。
【0039】
そして、図4に示すように、誘電体板15の上面に形成された表面電極21にテフロンチューブで被覆した導体23を接続し、上側の平行平板導体24に、表面電極21に対応するように貫通孔25を形成し、導体23を平行平板導体24の貫通孔25を挿通せしめた。
【0040】
一方、本発明者等は、図8の従来品を、コーディライトから成る誘電体線路及び誘電体基板、Auから成るチョークパターン及びアンテナパターン、ビームリード型PINダイオードを用いて作製し、ミリ波(数10〜数100GHz帯)透過特性について、上記本発明のものと比較したグラフを図5に示す。このグラフより、本発明の非放射性誘電体線路では、高周波信号の透過特性が良好な帯域幅を従来品よりも拡大できることが判る。
【0041】
【発明の効果】
本発明の非放射性誘電体導波路では、誘電体基板に、アンテナパターン、半導体素子およびチョークパターンを内蔵したため、これらの半導体素子やパターンを製造工程や使用中に保護することができるとともに、誘電体基板の強度が向上し、また誘電体線路が当接する部分は誘電体基板の平坦な表面であり、安定した状態で接続することができる。これにより、製造または使用中に誘電体基板が位置ずれすることがなく、誘電体基板を正確な位置に取り付けることができる。
【0042】
また、誘電体基板の平坦な表面に誘電体線路が当接するため、誘電体基板と誘電体線路との間に空隙が形成されることを防止することができ、誘電体基板と誘電体線路のインピーダンスマッチングが取りやすくなり、高周波信号の透過特性が良好な帯域幅を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の非放射性誘電体線路を示す斜視図である。
【図2】図1の誘電体基板の構成を示す分解斜視図である。
【図3】図1の非放射性誘電体線路の平面図である。
【図4】誘電体基板の表面電極に接続された導体が、上側の平行平板導体の貫通孔を挿通している状態を示す断面図である。
【図5】非放射性誘電体線路のミリ波(数10〜数100GHz帯)透過特性を示すグラフである。
【図6】チョークパターンを形成しない場合の誘電体基板を示す斜視図である。
【図7】従来の非放射性誘電体線路を示す斜視図である。
【図8】従来の非放射性誘電体線路を示す斜視図である。
【図9】図8の非放射性誘電体線路の平面図である。
【符号の説明】
11・・・誘電体線路
12・・・下側の平行平板導体
13・・・誘電体基板
14、15・・・誘電体板
17・・・アンテナパターン
18・・・半導体素子
19・・・チョークパターン
20・・・凹部
21・・・表面電極
23・・導体
24・・・上側の平行平板導体
25・・・貫通孔
Claims (2)
- 波長λの高周波信号を伝搬する誘電体線路と、この誘電体線路を挟持する一対の平行平板導体とから構成され、前記一対の平行平板導体の間隔が前記高周波信号の波長λの1/2以下である非放射性誘電体線路において、前記誘電体線路途中に、一対のアンテナパターンと、該アンテナパターン間に配置され電気的に接続される半導体素子と、前記一対のアンテナパターンにそれぞれ接続されるチョークパターンとを一対の誘電体板で挟持し該誘電体板同士を接着してなる誘電体基板を介装し、該誘電体基板の平坦な表面に前記誘電体線路をそれぞれ当接した状態で接着してなることを特徴とする非放射性誘電体線路。
- 前記誘電体基板の前記平行平板導体側の表面に、前記チョークパターンと電気的に接続された表面電極を形成し、該表面電極に接続された導体が、前記平行平板導体に形成された貫通孔を該平行平板導体と非導通状態で挿通していることを特徴とする請求項1記載の非放射性誘電体線路。
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JPH1168418A JPH1168418A (ja) | 1999-03-09 |
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- 1997-08-22 JP JP22617397A patent/JP3762058B2/ja not_active Expired - Fee Related
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