JP3761004B2 - 錆発生環境下における耐摩耗性に優れた高靱性材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉末冶金法により成形、製造し、所定の焼き入れ、焼き戻しを行うことにより、特に錆発生環境下における耐摩耗性に優れ、かつ高周波焼き入れ性の良好な高靱性材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、缶詰めを封印する際のシーミングロールや木材廃材の破砕整形用ダイスなどは、水・水蒸気等の弱腐食環境下で錆の発生し易い状況で使用され、かつ摺動による摩耗や高面圧による剥離等が問題となるが、これら特性は、相反する傾向にある。これらの一般的用途には、冷間ダイス鋼のSKD11系の工具鋼が使用され、耐錆性の必要な用途には、SUS420J2、SUS440C等のマルテンサイト系のステンレス鋼が使用されてきた。また、これら材料の特性を改善すべく提案されている材料として、特開昭63−169358号公報、特開平1−75653号公報、特開平3−277747号公報、特開平4−2744号公報及び特開平5−86435号公報がある。
【0003】
しかし、これらの材料は、高耐食・高耐摩工具部品材料としての提案であり、耐食性は、各種強酸における強腐食環境においての評価であり、弱腐食環境下の耐発錆性とは、似て異な特性であり、その結果は、大きく異なってくる。最近の使用環境の厳格化に伴い、従来の材料では、特に耐発錆性と共に、耐摩耗性および靱性のバランスが不十分なため、各種工具の短寿命化のみならず工具表面の発錆および摩耗による製品不良の発生が問題となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したように、従来材は、発錆と摩耗の交互作用を考慮し設計された材料でないこともあり、特に、耐発錆性と耐摩耗性等に一長一短があり、十分な特性を満足していない。例えば、冷間ダイス鋼は、耐発錆性が不十分であり、マルテンサイト系ステンレス鋼は、耐摩耗性が劣る等の短所があり、また従来の提案材料は、強酸等の耐食用途として開発された材料であり、発錆環境下では、異なった結果となり、十分な目的を達成出来ない。
【0005】
更に、SKD11、SUS440C等には、数十μmの巨大共晶炭化物が存在しているため、靱性不足による割れ・欠け・切損による破損事故や発錆・摩耗の交互作用から起こる偏摩耗による表面肌の劣化により発錆し易い等のほか、高周波焼き入れ性が悪いという欠点があった。
発錆と摩耗の交互作用による摩耗量を評価する方法は従来存在しなかったが、本発明はこの点に着目し、新しく実験的に評価する方法を見出し、特に錆発生環境下における耐摩耗性に優れ、更には高周波焼き入れ性の良好な高靱性材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は前項で述べた発錆と摩耗の交互作用を実験的に評価するため実施例に示すような実験を数多く行い、錆発生環境下における摩耗量として以下の錆摩耗の式を見出した。すなわち、M=1000/{−7.63+7.58×C(%)+0.45×Cr(%)−1.60×Mo(%)+2.20×W(%)+1.34×V(%)−0.50×Nb(%)}について34≦M≦50を満足し、同時に化学成分として重量%で、C:2.0〜3.0%、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:15.0〜30.0%、Mo+1/2W:2.0%以下、かつV:3.0〜8.0%、Nb:3.0%以下の1種または2種をV+1/2Nbで3.0〜8.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる合金粉末を各種成形法により製造した材料で、60HRC以上の硬さに焼き入れ、焼き戻しを行うことによって、前記目的を達成することに成功したものである。
【0007】
本発明は、錆発生−摩耗−新界面創出−錆発生の繰り返しにより増長される錆発生環境下での摩耗量を評価したものは従来に無く、新しく実験的に錆摩耗として評価し、小さく押さえるための最適特性値を見出すこと、およびこれの改善のために添加される元素により劣化する靱性をいかにバランスさせるかにある。そのためには、炭化物の組成、析出状態、析出量、およびマトリックス中の固溶成分等について配慮した最適成分設計を行うと共に、その製造方法についても決めなければならない。
【0008】
各成分の範囲とその限定理由について述べる。
Cは、Cr、Mo、W、V、Nb等と結合して炭化物を形成し、残はマトリックスを固溶強化し、本発明を構成する重要な元素である。2.0%未満では、炭化物量、固溶C量が少ないため耐摩耗性が不足し、3.0%を越えると炭化物量が多くなり、靱性が劣化するので2.0〜3.0%とする。
Siは、脱酸剤として添加され、マトリックスの強化にも寄与するが、2.0%を越えると靱性が劣化するので2.0%以下とする。
Mnは、Siと同様、脱酸剤として使用されると共に焼入性向上にも寄与するが、2.0%を越えると変態温度を下げ焼なまし硬さが低下しにくく、焼入れ後の残留オーステナイトが増加し焼入れ硬さを下げるので、2.0%以下とする。
【0009】
Crは、マトリックスに固溶して、焼入れ性を向上させると共に、特に耐発錆性の向上に大きく寄与し、かつ、炭化物を形成して耐摩耗性を付与する重要な成分である。15%未満では、目的とする耐発錆性を得るには不十分であり、30.0%を越えるとマトリックス中のCが不足し、焼入れ硬さが低下するため耐摩耗性を下げ、またネット状炭化物が多くなり、靱性も劣化させるので15.0〜30.0%とする。
MoとWは、Crと同様、炭化物を生成し、かつマトリックス中にも固溶して耐摩耗性および耐発錆性の向上に寄与する成分であるが、V、Nb添加によるCr炭化物の粒状化効果による靱性向上を阻害し、かつ高価な元素であることから、所要特性を満足させるために必要な上限をMo+1/2Wで2.0%とする。
【0010】
VとNbは、極めて硬質のMC炭化物を生成し、高温焼戻し時の二次硬化硬さを上げるため、耐摩耗性向上に大きく寄与する重要な成分である。また高温焼入れ時の結晶粒の粗大化を防止し、Cr炭化物を粒状化させるため、靱性向上に寄与する。VおよびNbの上記効果を出すには、V+1/2Nbで3.0%以上必要であり、それらの添加量が8.0%を越えると炭化物量が多くなり過ぎ、靱性、機械加工性および熱間加工性を劣化させる。よってその範囲は、V+1/2Nbで3.0〜8.0%とする。
【0011】
本発明の特徴である錆発生環境下における耐摩耗性に優れた材料、即ち錆発生−摩耗−新界面創出−錆発生の繰り返しにより増長される摩耗量を小さく押さえるためには、上記成分範囲で、かつこれらの成分バランスが、錆摩耗の式、M=1000/{−7.63+7.58×C(%)+0.45×Cr(%)−1.60×Mo(%)+2.20×W(%)+1.34×V(%)−0.50×Nb(%)}について34≦M≦50の式を満足することにより達成されることにある。
【0012】
次に、本発明材料の製造プロセスについて述べる。
上記発明成分は、高C、高Cr、高V(Nb)により構成されているため、溶製法により製造した場合、巨大共晶炭化物が生成し、靱性が大幅に劣化すると共に使用中の工具表面の粗度を劣化させ発錆を促進し、かつ冷間加工性、熱間加工性が悪化し製造困難となる。よってこの巨大共晶炭化物の析出しないガスまたは水アトマイズによる粉末冶金法により材料を製造する。
この合金粉末を既存の各種成形法(HIP法、熱間押し出し法、焼結法等)により固化成形し、所定の形状に粗加工後、所定の焼き入れ−焼き戻しを行いHRC60以上の硬さとする。焼き戻し温度は、低温戻しが望ましいが、曲がり等の対策として高温戻しの必要がある場合は、2回以上の処理を行う。
【0013】
【実施例】
表1に示す粉末法による供試材は、ガスアトマイズにより合金粉末を製造し、同粉末を直径150mmの軟鋼製カプセル内に充填し、脱気後密封してHIP(熱間静水圧プレス)処理を行った後、直径35mmに鍛伸することにより作成した。また溶製法による供試材は、ランニング鋼塊からのφ35圧延材または高周波誘導炉による100kg鋼塊を直径35mmに鍛伸することにより作成し、それぞれの試験に供した。
【0014】
【表1】
【0015】
(1)錆摩耗(錆発生環境下における耐摩耗性)評価試験
供試材を直径30mmに加工しロール試験片を作成し、表1に示す条件にて焼き入れ−焼き戻し処理を行い、仕上げ加工後、表2に示す試験条件により、水道水を滴下することで錆発生環境を作り出すと共に、相手ロールと接触、従動回転させることで摺動摩耗を起こしこれらにより試験片の重量減を測定し錆摩耗を評価した。試験結果を表1に示す。
錆摩耗量Mは、錆摩耗の式、M=1000/{−7.63+7.58×C(%)+0.45×Cr(%)−1.60×Mo(%)+2.20×W(%)+1.34×V(%)−0.50×Nb(%)}と強い相関があり、M値が50以下において、50mg以下の摩耗量に低位安定することが分かる。
【0016】
【表2】
【0017】
(2)靱性評価試験
上記供試材から10R,2mmCノッチのシャルピー衝撃試験用TPを切り出し、表1の熱処理条件により、焼き入れ−焼き戻し処理を行った後試験に供した。その試験結果を表1に示す。
錆・摩耗の式、M=50以下の成分系において、溶製材の靱性は特に低いことから、粉末冶金法による材料が適していることが分かる。また、錆・摩耗の式が34を下回る成分系の材料は、シャルピー衝撃値が10J/cm未満の低い靱性値となる。
【0018】
(3)高周波焼き入れ性評価試験
上記、錆発生環境下の耐摩耗試験用試験片の焼き入れ条件において、焼き入れ時の加熱時間を通常の20分から5分に短縮した時の熱処理硬さの測定結果を表1に示す。
【0019】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明による材料は、錆と摩耗の交互作用により増長される摩耗量を抑制する指標となる錆摩耗の式とその有効範囲を見出すことにより、錆発生環境下における耐摩耗性に優れ、かつ高靱性、更には高周波焼き入れ性も良好であることから、広範囲の用途にその効果を発揮可能であることから、その工業的価値は極めて大きい。
Claims (1)
- 重量%で、
C :2.0〜3.0%
Si:2.0%以下
Mn:2.0%以下
Cr:15.0〜30.0%
Mo+1/2W:2.0%以下
かつ、
V:3.0〜8.0%
Nb:3.0%以下
の1種または2種をV+1/2Nbで3.0〜8.0%を含有し、
錆摩耗の式、M=1000/{−7.63+7.58×C(%)+0.45×Cr(%)−1.60×Mo(%)+2.20×W(%)+1.34×V(%)−0.50×Nb(%)}について34≦M≦50を満足し、
残部Feおよび不可避的不純物からなる合金粉末を各種成形法により製造した後、焼入、焼戻しすることを特徴とする錆発生環境下における耐摩耗性に優れた高靱性材料。
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JP10216696A JP3761004B2 (ja) | 1996-04-24 | 1996-04-24 | 錆発生環境下における耐摩耗性に優れた高靱性材料 |
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JP10216696A JP3761004B2 (ja) | 1996-04-24 | 1996-04-24 | 錆発生環境下における耐摩耗性に優れた高靱性材料 |
Publications (2)
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JPH09291346A JPH09291346A (ja) | 1997-11-11 |
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ID=14320132
Family Applications (1)
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JP10216696A Expired - Lifetime JP3761004B2 (ja) | 1996-04-24 | 1996-04-24 | 錆発生環境下における耐摩耗性に優れた高靱性材料 |
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AU2002326185A1 (en) * | 2002-08-26 | 2004-03-11 | Hanyang Hak Won Co., Ltd. | Fe-based hardfacing alloy |
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1996
- 1996-04-24 JP JP10216696A patent/JP3761004B2/ja not_active Expired - Lifetime
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