JP3760671B2 - 熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液およびこれを用いた熱線・紫外線遮蔽膜 - Google Patents

熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液およびこれを用いた熱線・紫外線遮蔽膜 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス、プラスチック、その他の熱線・紫外線遮蔽機能を必要とする透明基材に応用可能な熱線・紫外線遮蔽材料に関するものであり、より詳しくは、太陽光線の特定の波長を選択的に吸収または反射する成分を含み、常温硬化が可能である熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液およびこれを用いて形成した熱線・紫外線遮蔽膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
太陽光線は、近赤外線(熱線)、可視光線、紫外線の3つに大きく分けられる。このうち、長波長領域の近赤外線は熱エネルギーとして人体に感じる光であり、室内、車内の温度上昇の原因となる。また、短波長領域の紫外線は、日焼け、しみ、発癌、視力障害など人体への悪影響があり、また、物品の機械的強度の低下、色褪せ等の外観劣化、食品劣化、印刷物の色調低下なども引き起こす。
【0003】
これらの不要な熱線や有害な紫外線を同時に遮蔽するために、熱線・紫外線遮蔽膜を基材上に形成し、熱線・紫外線遮蔽機能を有するガラス、プラスチック、フィルムなどが使用されている。
【0004】
従来の熱線・紫外線遮蔽膜には、貴金属(Au、Agなど)や銅(Cu)、窒化チタン(TiN)、アルミニウム(Al)などの伝導電子を多量にもつ金属材料が使用されているが、これらの材料では近赤外線だけでなく可視光領域の光も同時に反射もしくは吸収する性質があり、可視光透過率が低いという欠点があった。このため、建材、乗り物、電話ボックス等の透明基材にこれらの材料を利用する場合は、可視光領域の透過率を高くするために膜厚を薄くする必要があった。
【0005】
通常これらの材料を用いた薄膜の形成にはスパッタリング法や蒸着法が利用されるが、これらの方法では大がかりな真空装置を必要とするため生産性に劣り、膜の製造コストが高くなった。また、大面積の成膜が困難であった。
【0006】
熱線・紫外線遮蔽材料を含有する塗布液を用いて遮蔽膜を基材上に形成することで、簡単かつ低コストで熱線・紫外線遮蔽機能をもつ基材を製造することができる。例えば、光の波長よりも1桁以上微細な微粒子を分散した塗布液の開発が試みられているが、上記従来の金属材料では微粒子化による酸化が問題となり、また、Auの使用ではコストが高くなって好ましくない。
【0007】
また、可視光透過率が高く、かつ熱線遮蔽機能をもつ材料としてアンチモン含有酸化錫(ATO)や錫含有酸化インジウム(ITO)などが知られている。これを微細化して塗布液とすることも行われているが、近赤外光の遮蔽能はあまり大きくなく、十分な熱線遮蔽効果を得るためには多量の添加が必要であり、コストが高くなる。また膜強度が大きく低下してしまうため実用的でなかった。
【0008】
建築物の窓や自動車の窓ガラスなど、既に使用されている基材に対しても熱線・紫外線遮蔽材料を含有する塗布液を用いて熱線・紫外線遮蔽膜を形成し、熱線・紫外線遮蔽機能をもたせることができる。既に使用されている基材に対して熱線・紫外線遮蔽膜を形成する場合、常温で硬化が可能であれば、硬化に特別な装置を準備する必要がなく有利である。このように塗布液が常温硬化可能であって、しかも熱線及び紫外線を遮蔽する膜が形成できれば応用が広がるが、そのような塗布液は知られていなかった。
【0009】
紫外線吸収剤としては、短波長領域の紫外線を効率よく吸収する透明材料として、ベンゾフェノンやベンゾトリアゾールなどの有機紫外線吸収剤が知られている。これらの紫外線吸収剤は単独で塗膜を形成することができず、通常は、添加剤として用いられる。これら紫外線吸収剤は長期間使用すると蒸散などが起こり、基材の紫外線遮蔽能が劣化する問題があった。このため基材の紫外線遮蔽能を長時間持続させるためには紫外線吸収剤を多量に使用することが必要であった。
【0010】
多量の紫外線吸収剤を使用すると紫外線吸収剤が表面にしみ出したり(以下これを、「ブリードアウト」という。)、基材に曇りが生じたりするため、塗膜形成の目的に対しては実用化の障害となっていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、透明基材に応用でき、常温での塗膜形成が可能な熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液およびこれを用いて形成できる、熱線・紫外線遮蔽能が高く、紫外線吸収剤のブリードアウトのない熱線・紫外線遮蔽膜を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者らは上記従来の問題点を解決するため、近赤外光遮蔽材料として自由電子を多量に保有するLaB6やGdB6のような6ホウ化物微粒子に着目し、更に紫外線遮蔽材料として硬化性紫外線吸収剤を含む組成物を合成し、これらを含む熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液および熱線・紫外線遮蔽膜を発明するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液は、近赤外線遮蔽材料と、硬化性紫外線吸収剤と、希釈溶媒と、硬化触媒とを含有し、常温で硬化可能である熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液であって、該近赤外光遮蔽材料がCeB 、GdB 、TbB 、DyB 、HoB 、YB 、SmB 、EuB 、ErB 、TmB 、YbB 、LuB 、SrB 、CaB 、LaB 、PrB 、及びNdB から選ばれた1種以上の平均粒径200nm以下の6ホウ化物微粒子からなり、該硬化性紫外線吸収剤は少なくとも2、2’、4、4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンとイソシアノ基をもつアルコキシシランとを触媒の存在下で反応させて得られた一般式(1)で示される硬化性紫外線吸収剤であり、該反応で得られた硬化性紫外線吸収剤を含む合成物の含有量が塗布液の0 . 5〜53wt%であることを特徴とする。
【0014】
【化2】
Figure 0003760671
【0015】
但し、一般式(1)中のXは、加水分解によってシラノールを生じるアルコキシル基を示し、一般式(1)中のRは、炭素数1〜3のアルキレン鎖を示す。
【0016】
加水分解によってシラノールを生じるアルコキシル基Xには、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0017】
前記硬化性紫外線吸収剤の含有量は、塗布液に対して0.5〜53wt%であることが好ましい。
【0018】
また、前記熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液には、CeO2、ZnO、Fe23、及び、FeOOHのうちの1種以上からなる平均粒径100nm以下の微粒子の無機紫外線遮蔽成分を更に含有させてもよい。
【0019】
また、前記熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液には、固形分として更に、アクリル樹脂、または/及び、コロイダルシリカを含めてもよい。
【0020】
また、本発明の熱線・紫外線遮蔽膜は、上記いずれかの熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液を基材に塗布し、硬化して得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液及び膜における近赤外光遮蔽材料は、6ホウ化物(CeB6、GdB6、TbB6、DyB6、HoB6、YB6、SmB6、EuB6、ErB6、TmB6、YbB6、LuB6、SrB6、CaB6、LaB6、PrB6、NdB6)微粒子であり、これらの1種単独で、あるいは2種以上が混合されて使用される。
【0022】
これら6ホウ化物微粒子は暗い青紫色などを呈する粉末であるが、粒径が可視光波長に比べて十分小さく、薄膜中に分散した状態においては膜に可視光透過性が生じる。しかし赤外光の遮蔽能は十分強く保持できる。実験によれば、これらの微粒子を十分細かく且つ均一に分散した膜では、透過率が波長400〜700nmの間に極大値をもち、且つ700〜1800nmの間に極小値をもつことが観察される。可視光波長が380〜780nmであり、視感度が550nm付近をピークとする釣鐘型であることを考慮すると、このような膜では可視光を有効に透過しそれ以外の波長の光を有効に吸収・反射することが理解できる。
【0023】
6ホウ化物微粒子の平均粒径は200nm以下が良く、100nm以下がより好ましい。平均粒径が200nmを超えると微粒子同士の凝集傾向が強くなり、塗布液中の微粒子の沈降の原因となるからである。また、200nmを超える粒子もしくはそれらの凝集した粗大粒子の存在は、それによる光散乱により可視光透過率低下の原因となるので好ましくない。
【0024】
6ホウ化物微粒子は近赤外線と紫外線の遮蔽能をもつが、紫外線の吸収は比較的小さい。このため、十分な紫外線吸収能をもたせるためには紫外線吸収剤の添加が必要である。
【0025】
本発明における硬化性紫外線吸収剤は、2、2’、4、4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンとγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランやγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアノ基をもつアルコキシシランをジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、ジオクチルスズジラウレート等の触媒の存在下で反応させて合成される反応物で、一般式(1)で表される。
【0026】
本発明の硬化性紫外線吸収剤は分子内にベンゾフェノン系の骨格をもち、これが紫外線の吸収に寄与する。また、分子端のアルコキシル基は加水分解して反応性の高いシラノールを生じ、これが縮合重合することによって自身で高分子化、あるいは他のバインダー成分と結合することができる。なおこの硬化性紫外線吸収剤はアルコキシル基が加水分解し、シラノールが縮合重合したオリゴマーの形態でも存在しうる。
【0027】
本発明の熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液は、この硬化性紫外線吸収剤を少なくとも一種類含有するものであるが、その硬化は硬化性紫外線吸収剤のアルコシキル基の加水分解とそれに続くシラノールの縮合重合による高分子化によって起こり、他のバインダー成分は必須ではない。このように紫外線吸収剤自体が重合し堅牢な塗膜を形成するため紫外線吸収剤のブリードアウトはない。
【0028】
また、この硬化性紫外線吸収剤には湿気硬化性があるが、常温での硬化速度を実用的なものとするために、硬化触媒の添加が必須である。硬化触媒としてはパラトルエンスルホン酸などの一般的な酸触媒を用いることができる。
【0029】
熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液中の希釈溶媒は特に限定されるものではなく、塗布条件や、塗布環境、塗布液中の固形分の種類に合わせて選択可能である。例えば、メタノール、エタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類など各種溶媒が使用可能である。また用途によって1種または2種以上の溶媒を組み合わせて使用しても良い。
【0030】
また、塗布液中の硬化性紫外線吸収剤を含む合成物の含有量、即ち、少なくとも2、2’、4、4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンとイソシアノ基をもつアルコキシシランとを触媒の存在下で反応させて得られた硬化性紫外線吸収剤を含む合成物(下記実施例では合成液とも称す)の含有量は、塗布液の0 . 5〜53wt%とする。ZnO、CeO、Fe、FeOOHなどの無機紫外線吸収剤と併用しない場合は、12〜53wt%であることが望ましい。含有量が12wt%未満であると塗布硬化して得られる熱線・紫外線遮蔽膜の紫外線遮蔽能が低く、53wt%を越えるとその他の固形分を添加しない場合でも塗布液の粘度が上昇し塗布性が悪化する。
【0031】
但し、ZnO、CeO2、Fe23、FeOOHなどの無機紫外線吸収剤と併用して用いられる場合は、塗布液中の濃度はこれより低くても良く、0.5〜12wt%の添加濃度でも充分実用性のある日射遮蔽膜形成用塗布液として使用可能である。
【0032】
塗布液中の固形分としては、近赤外線遮蔽材料、硬化性紫外線吸収剤を含む合成物、硬化触媒が含まれ、また上記無機紫外線吸収剤を含むことができるが、更に、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の有機樹脂、コロイダルシリカ、Al、TiO、ZrO等の無機超微粒子、種々のシランカップリング剤等を1種または2種以上添加しても良い。これによって塗布液の塗布性の改良、塗布膜の硬度の改良、基材への密着力の改良などが成される。
【0033】
本発明の塗布液をガラス、プラスチック板、フィルムなどの基材に塗布し常温で硬化させることによって、基材上に長期間安定な紫外線遮蔽能をもつ熱線・紫外線遮蔽膜を形成することができる。塗布液の塗布方法は特に限定されるものではなく、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、布や刷毛による方法等、液を平坦にかつ薄く均一に塗布できる方法であればいかなる方法でもよい。
【0034】
基材上に形成された熱線・紫外線遮蔽膜は、基材に長期間安定な熱線・紫外線遮蔽機能を付与するとともに、基材そのものの紫外線による劣化を抑制する。
【0035】
【実施例】
以下に本発明の実施例、比較例を示して本発明を更に詳細に説明する。
【0036】
実施例1 ・・・ LaB6微粒子(平均粒径67nm)10g、ジアセトンアルコール86g及び微粒子分散用カップリング剤4gを混合し、直径4mmのジルコニアボールを用いて150時間ボールミル混合をおこないLaB6微粒子の分散液100gを作製した(A液)。
【0037】
2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン57gとγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン77gをビーカーにとり、ジブチルスズジラウレートを1g加えてメカニカルスターラーで混合攪拌を行った。発熱反応が起こるがそのまま約1時間放置冷却し、目的の反応性紫外線吸収剤を含む赤褐色、高粘度の液を得た(合成液1)。
【0038】
13.5gの合成液1と13.1gのエタノールを混合攪拌し、均一に溶解した。更に溶媒としてエチレングリコールモノメチルエーテル43gとエチレングリコールモノブチルエーテル25g、硬化触媒としてパラトルエンスルホン酸(一水和物)0.4gを加えて混合攪拌した。更にA液を5g加えて混合攪拌し、熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液を得た。塗布液中の固形分は合成液1、硬化触媒、LaB 微粒子、カップリング剤であり、固形分割合は14.6wt%、LaBの含有量は0.5wt%、合成液1の含有量は13.5wt%である。
【0039】
この熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液を3mmのソーダライム系ガラス基板上にバーコーターを用いて塗布し、常温で硬化して塗布膜を得た。塗布膜の透過率を日立製作所製の分光光度計を用いて測定し、JIS R 3106に従って可視光透過率(τv)、日射透過率(τe)を、ISO 9050に従って紫外線透過率(τuv)を算出した。塗布硬化してから常温の室内に放置し、30日後に膜表面の観察を行ってブリードアウトの有無を調べた。またテーバー摩耗試験機で摩耗輪CS12fを用いて荷重250g、50回転の摩耗試験を行い、試験前後のヘイズの変化量(ΔH)で膜の摩耗強度を評価した。
【0040】
指触乾燥までの硬化時間は40分であった。τvは75.1%、τeは54.3%であり、可視光透過性があり、近赤外光の遮蔽能があることがわかった。τuvは0.03%であり紫外光の遮蔽能も優れている。
【0041】
30日後の膜面にブリードアウトは観察されなかった。すなわち上記塗布液は一般式(1)で示されるように、ベンゾフェノン骨格がイソシアノ基をもつアルコキシシランと酸素原子を介して結合しているために、紫外線吸収能を有するベンゾフェノン骨格がバインダー中に安定化してブリードアウトを抑制したものである。
【0042】
爪では全く傷がつかない強固な膜が形成されており、テーバー摩耗試験によるヘイズの劣化ΔH値は19%となった。
【0043】
以上の評価結果を表1にまとめて示す。以下の実施例、比較例でも同様の評価を行い、結果を表1に示す。
【0044】
実施例2 ・・・ CeB6微粒子(平均粒径46nm)10g、ジアセトンアルコール86g及び微粒子分散用カップリング剤4gを混合し、直径4mmのジルコニアボールを用いて150時間ボールミル混合をおこないLaB6微粒子の分散液100gを作製した(B液)。
【0045】
2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン57gとγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン77gをビーカーにとり、ジブチルスズジラウレートを1g加えてメカニカルスターラーで混合攪拌を行った。発熱反応が起こるがそのまま約1時間放置冷却し、目的の反応性紫外線吸収剤を含む赤褐色、高粘度の液を得た(合成液2)。
【0046】
13.5gの合成液2と13.1gのエタノールを混合攪拌し、均一に溶解した。更に溶媒としてエチレングリコールモノメチルエーテル43gとエチレングリコールモノブチルエーテル25g、硬化触媒としてパラトルエンスルホン酸(一水和物)0.4gを加えて混合攪拌した。更にB液を5g加えて混合攪拌し、熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液を得た。塗布液中の固形分は合成液2、硬化触媒、CeB 微粒子、カップリング剤であり、固形分割合は14.6wt%、CeBの含有量は0.5wt%、合成液2の含有量は13.5wt%である。
【0047】
この熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液を3mmのソーダライム系ガラス基板上にバーコーターを用いて塗布し、常温で硬化して熱線・紫外線遮蔽膜を得た。
【0048】
比較例1 ・・・ 比較のため3mmのソーダライム系ガラス基板のτv、τe、τuvも表1に示した。
【0049】
比較例2・・・紫外線吸収剤として2、2’、4、4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンを5g、樹脂バインダーとしてラッカータイプの常温硬化ウレタン樹脂(溶剤はイソプロピルアルコールで固形分30%)を16.7g、希釈剤としてイソブチルアルコール48.3gとプロピレングリコールモノエチルエーテル25gを混合攪拌した。更にA液を5g加えて混合攪拌し、熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液を得た。この塗布液中の固形分は紫外線吸収剤、ウレタン樹脂、LaB 微粒子、カップリング剤であり、固形分割合は10.7wt%、LaBの含有量は0.5wt%である。また、紫外線吸収剤の含有量は5wt%である。
【0050】
この熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液を3mmのソーダライム系ガラス基板上にバーコーターを用いて塗布し、常温で硬化して熱線及び紫外線遮蔽膜を得た。
【0051】
硬化30日後の観察でブリードアウトが見られた。これは紫外線吸収剤の2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンがバインダーと反応する機構なしにはバインダー中に安定して存在することができないことを示すものである。ΔHは32%であり膜強度は弱い。
【0052】
実施例3・・・9.0gの合成液1と8.7gのエタノールを混合攪拌し、均一に溶解した。更に溶媒としてエチレングリコールモノメチルエーテル48gとエチレングリコールモノブチルエーテル25g、硬化触媒としてパラトルエンスルホン酸(一水和物)0.3gを加えて混合攪拌した。更にA液5gと無機紫外線吸収剤であるFeOOH微粒子の分散液(固形分20wt%)を4g加えて混合攪拌し、熱線・紫外線遮蔽膜形成塗布液を得た。この塗布液中の固形分は合成液1、硬化触媒、LaB 微粒子、カップリング剤、FeOOH微粒子であり、固形分割合は10.8wt%、LaB含有量は0.5wt%、合成液1の含有量は9.0wt%である。
【0053】
この熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液を3mmのソーダライム系ガラス基板上にバーコーターを用いて塗布し、常温で硬化して熱線・紫外線遮蔽膜を得た。
【0054】
τuvは0.31%であり、硬化性紫外線吸収剤の量が少ない場合でも無機紫外線吸収剤の併用で充分な紫外線遮蔽能が得られることがわかる。
【0055】
比較例3・・・26gの合成液1と12.5gのエタノールを混合し、更に溶媒としてエチレングリコールモノブチルエーテル7.5g、硬化触媒としてパラトルエンスルホン酸(一水和物)0.25gを加えて混合攪拌した。更にA液2 . 5gを加えて混合攪拌し、熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液を得た。この塗布液中の固形分は合成液1、硬化触媒、LaB 微粒子、カップリング剤であり、固形分割合は54 . 6wt%、LaBの含有量は0.51wt%、合成液1の含有量は53.3wt%である。
【0056】
この熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液は粘度が高く、3mmのソーダライム系ガラス基板上に均一に塗布することができなかった。
【0057】
実施例4・・・13.5gの合成液1と13.1gのエタノールを混合攪拌し、均一に溶解した。更に溶媒としてエチレングリコールモノメチルエーテル40gとエチレングリコールモノブチルエーテル25g、硬化触媒としてパラトルエンスルホン酸(一水和物)0.4gを加えて混合攪拌した。更にA液5gと日産化学製コロイダルシリカ(溶剤はイソプロピルアルコールで固形分30%)15.0gを加えて混合攪拌し、熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液を得た。この塗布液中の固形分は合成液1、硬化触媒、LaB 微粒子、カップリング剤、コロイダルシリカであり、固形分割合は17 . 1wt%、LaBの含有量は0.45wt%、合成液1の含有量は12.1wt%である。
【0058】
この熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液を3mmのソーダライム系ガラス基板上にバーコーターを用いて塗布し、常温で硬化して熱線・紫外線遮蔽膜を得た。
ΔHは14%でコロイダルシリカの添加によって膜の摩耗強度が改善された。
【0059】
実施例5・・・13.5gの合成液1と13.1gのエタノールを混合攪拌し、均一に溶解した。更に溶媒としてエチレングリコールモノメチルエーテル40gとエチレングリコールモノブチルエーテル25g、硬化触媒としてパラトルエンスルホン酸(一水和物)0.4gを加えて混合攪拌した。更にA液5gとアクリル樹脂をジアセトンアルコールで加熱溶解した溶液(固形分30wt%)15.0gを加えて混合攪拌し、熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液を得た。この塗布液中の固形分は合成液1、硬化触媒、LaB 微粒子、カップリング剤、アクリル樹脂であり、固形分割合は17 . 1wt%、LaBの含有量は0.45wt%、合成液1の含有量は12.1wt%である。
【0060】
この熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液を3mmのソーダライム系ガラス基板上にバーコーターを用いて塗布し、常温で硬化して熱線・紫外線遮蔽膜を得た。
【0061】
アクリル樹脂の添加により熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液の粘度を調整することができ、塗布性が改良された。
【0062】
実施例6〜実施例8 ・・・ 実施例1のLaB6微粒子を、PrB6(平均粒径53nm)、NdB6(平均粒径66nm)、GdB6(平均粒径41nm) に替えたほかは、実施例1と全く同じ手順で熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液を作製、塗布し、熱線・紫外線遮蔽膜を得た。
【0063】
比較例4 ・・・ CeB6として平均粒径が212nmの粗大粒子を用いたほかは実施例2と全く同じ手順で熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液を作製、塗布し、熱線・紫外線遮蔽膜を得た。得られた膜は可視光の散乱が強く曇りがあり、実用には向かない。
【0064】
【表1】
Figure 0003760671
【0065】
【発明の効果】
以上示したように、新規の硬化性紫外線吸収剤を用い、近赤外光遮蔽材料として6ホウ化物微粒子を添加するることで、常温で硬化し、紫外線吸収剤のブリードアウトが無い熱線・紫外線遮蔽膜、及びこれを形成するための熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液が提供できた。本発明により、基材に長期間安定な熱線・紫外線遮蔽機能を簡便な方法で付与することが可能となった。

Claims (4)

  1. 近赤外線遮蔽材料と、硬化性紫外線吸収剤と、希釈溶媒と、硬化触媒とを含有し、常温で硬化可能である熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液であって、該近赤外光遮蔽材料がCeB 、GdB 、TbB 、DyB 、HoB 、YB 、SmB 、EuB 、ErB 、TmB 、YbB 、LuB 、SrB 、CaB 、LaB 、PrB 、及びNdB から選ばれた1種以上の平均粒径200nm以下の6ホウ化物微粒子からなり、該硬化性紫外線吸収剤は少なくとも2、2’、4、4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンとイソシアノ基をもつアルコキシシランとを触媒の存在下で反応させて得られた一般式(1)で示される硬化性紫外線吸収剤であり、該反応で得られた硬化性紫外線吸収剤を含む合成物の含有量が塗布液の0 . 5〜53wt%であることを特徴とする熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液。
    Figure 0003760671
    但し、一般式(1)中のXは、加水分解によってシラノールを生じるアルコキシル基を示し、一般式(1)中のRは、炭素数1〜3のアルキレン鎖を示す。
  2. CeO 、ZnO、Fe 、及び、FeOOHのうちの1種以上からなる平均粒径100nm以下の微粒子の無機紫外線遮蔽成分を更に含有する、請求項1に記載の熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液。
  3. 更に、アクリル樹脂、または/及び、コロイダルシリカを含む、請求項1または請求項2に記載の熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱線・紫外線遮蔽膜形成用塗布液を基材に塗布し、硬化して得られる熱線・紫外線遮蔽膜
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