JP4058878B2 - 常温硬化性日射遮蔽膜形成用塗布液およびこれを用いた日射遮蔽膜ならびに日射遮蔽機能を有する基材 - Google Patents

常温硬化性日射遮蔽膜形成用塗布液およびこれを用いた日射遮蔽膜ならびに日射遮蔽機能を有する基材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス、プラスチック、その他の日射遮蔽機能を必要とする透明基材に応用可能な日射遮蔽材料に関するものであり、より詳細には特定の常温硬化性組成物を成分として含み、特定の近赤外光遮蔽成分を含む常温で硬化可能な日射遮蔽膜形成用塗布液およびこれを用いて形成した表面硬度の高い日射遮蔽膜ならびに日射遮蔽機能を有する基材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
太陽光線は、近赤外線、可視光線、紫外線の3つに大きく分けることができ、このうち長波長領域の近赤外線(熱線)は熱エネルギーとして人体に感じる波長領域の光であり、室内、車内の温度上昇の原因ともなるものである。
また短波長領域の紫外線は、日焼け、しみ、そばかす、発癌、視力障害など人体への悪影響があり、物品の機械的強度の低下、色褪せなどの外観の劣化、食品の劣化、印刷物の色調の低下なども引き起こすものである。
これらの不要な熱線や有害な紫外線を遮蔽するために、日射遮蔽膜を形成して日射遮蔽機能を持たせたガラス基板、プラスチック板、フィルムなどの透明基材が使用されている。
【0003】
従来から、前記日射遮蔽材料として金、銀、銅、アルミニウムなどのような伝導電子を多量に持つ材料を応用した日射遮蔽膜が用いられている。
通常これらの材料を用いた薄膜の形成にはスパッタリング法や蒸着法が利用されているが、これらの方法では大がかりな真空装置を必要とするため生産性が劣り、膜の製造コストが高くなり、また大面積の成膜が困難であった。
一方、日射遮蔽材料を含有する塗布液を用いて日射遮蔽膜を基材上に形成することによって簡単、かつ低コストで日射遮蔽機能を持たせた透明基材を製造することも提案されている。この場合、例えば光の波長よりも1桁以上小さい微細な微粒子を分散した塗布液の製造が試みられているが、従来の金属材料では微粒子化による酸化が問題となり、またAuを用いた場合にはコストが高くなり好ましくなかった。
【0004】
そして特開平11−693984号公報には、六ホウ化物は自由電子を多量に保有しており、これらを微粒子化し高度に分散させることによって可視光領域に透過率の極大を持つとともに、可視光領域に近い近赤外領域に強いプラズマ反射を発現して透過率の極小を持つようになることが開示されている。
この現象を応用して、六ホウ化物は日射遮蔽材料として利用可能なことが知られている。またこれらの材料は近赤外線と紫外線の遮蔽能を持つが、紫外線遮蔽能は比較的小さく、十分な紫外線遮蔽能を持たせようとすると可視光透過率まで低下してしまう。
さて建物の窓や乗り物の窓のような、既に使用されている透明基材に対して日射遮蔽機能を持たせるためには、日射遮蔽材料を含有する塗布液を用いて日射遮蔽膜を形成する方法が簡便で好ましいが、このような工法では塗布液が常温で硬化可能であることが必要となる。そしてこの塗布液の常温硬化が可能であれば、工場での使用においても特別な硬化装置を使用する必要がなくなり、コスト的にも有利となる。
【0005】
またホテルの窓や自動車の窓のような用途では掃除や開閉のため表面が傷つき易く、硬化後の膜の表面硬度が必要となる。
そして有機系のバインダーを用いた塗布液の中には常温で硬化可能であるものもあるが、塗布、硬化後の膜強度が弱いので実用的でなく、反面シリケートなどの無機系のバインダーでは硬化後の膜強度は実用的であるが、常温硬化しないため、硬化させるには加熱が必要となり、また膜厚が厚い場合は硬化時の収縮が大きくクラックが生じてしまう。
このように常温硬化が可能であるとともに、その硬化膜が十分な表面強度を与えるという両方の特性を有する日射遮蔽膜形成用塗布液がなかったため、その開発が待望されているのが現状であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記従来の技術の問題点を解決し、既存の透明基材に適応でき、常温での塗膜形成が可能で、かつ優れた膜強度を得られる日射遮蔽膜形成用塗布液、およびこれを用いて形成された日射遮蔽能が高く表面硬度の高い日射遮蔽膜ならびに日射遮蔽機能を有する基材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは鋭意研究を重ねた結果、グリシドキシプロピル基含有アルコキシシランとアミノプロピル基含有アルコキシシランを混合反応させてなる物質をバインダー成分として用い、さらに近赤外光遮蔽成分として自由電子を多量に保有する六ホウ化物を用いることにより、前記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の実施態様に係る日射遮蔽膜は、バインダー成分、希釈溶媒、硬化触媒および近赤外光遮蔽成分とを含有する日射遮蔽膜形成用塗布液であって、前記バインダー成分の少なくとも1種がグリシドキシプロピル基含有アルコキシシランとアミノプロピル基含有アルコキシシランを混合反応させてなる下記する化学式1で示される物質であり、かつ前記近赤外光遮蔽成分が六ホウ化物の中から選ばれた少なくとも1種からなる平均粒径200nm以下の微粒子である日射遮蔽膜形成用塗布液を透明基材に塗布し、常温で硬化させてなる日射遮蔽膜であって、可視光透過率τvが69.8%以上、日射透過率τeが66.2%以下であり、テーバー摩耗試験機で摩耗輪CS 10fを用いて荷重250g、50回転の摩耗試験前後のへイズの変化量(ΔH)が6.2%以下であることを特徴とするものである。
【化1】
Figure 0004058878
(式中、X1、X2はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの加水分解によってシラノールを生じるアルコキシル基を示し、Y1、Y2はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のアルキル基を示し、かつa、b、c、dはそれぞれ1≦a≦3、a+b=3、1≦c≦3、c+d=3の関係を満たす数である。)
【0009】
また、本発明の第1の実施態様に係る他の日射遮蔽膜は、前記六ホウ化物はCeB 、GdB 、TbB 、DyB 、HoB 、YB 、SmB 、EuB 、ErB 、TmB 、YbB 、LuB 、SrB 、CrB 、LaB 、PrB またはNdBであることを特徴とし、さらに紫外線遮蔽成分としてべンゾフェノン系および/またはべンゾトリアゾール系の有機紫外線吸収剤を0.5重量%以上で7重量%以下含有することを特徴とし、さらに紫外線遮蔽成分として平均粒径が100nm以下のCeO 、ZnO、Fe およびFeOOH微粒子の中から選ばれた少なくとも1種からなる無機紫外線遮蔽成分を含有することを特徴とするものである。
【0010】
更に、本発明の第2の実施態様に係る日射遮蔽機能を有する基材は、上記記載の常温で硬化可能な日射遮蔽膜が少なくとも片面に形成され、かつ透明性を有することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の第3の実施態様に係る常温で硬化可能な日射遮蔽膜形成用塗布液は、上記記載の常温で硬化可能な日射遮蔽膜が得られる、バインダー成分、希釈溶媒、硬化触媒および近赤外光遮蔽成分とを含有する日射遮蔽膜形成用塗布液であって、前記バインダー成分の少なくとも1種がグリシドキシプロピル基含有アルコキシシランとアミノプロピル基含有アルコキシシランを混合反応させてなる下記する化学式1で示される物質であり、かつ前記近赤外光遮蔽成分がCeB 、GdB 、TbB 、DyB 、HoB 、YB 、SmB 、EuB 、ErB 、TmB 、YbB 、LuB 、SrB 、CrB 、LaB 、PrB またはNdB の中から選ばれた少なくとも1種からなる平均粒径200nm以下の微粒子であり、硬化触媒が三弗化ホウ素ピペリジンであることを特徴とする常温で硬化可能な日射遮蔽膜形成用塗布液。
【化1】
Figure 0004058878
(式中、X1、X2はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの加水分解によってシラノールを生じるアルコキシル基を示し、Y1、Y2はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のアルキル基を示し、かつa、b、c、dはそれぞれ1≦a≦3、a+b=3、1≦c≦3、c+d=3の関係を満たす数である。)
更に、本発明の第3の実施態様に係る常温で硬化可能な他の日射遮蔽膜形成用塗布液は、さらに紫外線遮蔽成分としてべンゾフェノン系および/またはべンゾトリアゾール系の有機紫外線吸収剤を0.5重量%以上で7重量%以下含有することを特徴とし、さらに紫外線遮蔽成分として平均粒径が100nm以下のCeO 、ZnO、Fe およびFeOOH微粒子の中から選ばれた少なくとも1種からなる無機紫外線遮蔽成分を含有することを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず本発明において近赤外遮蔽成分として用いられる六ホウ化物微粒子としては、CeB、GdB、TbB、DyB、HoB、YB、SmB、EuB、ErB、TmB、YbB、LuB、SrB、CrB、LaB、PrB、NdB微粒子が挙げられ、これら微粒子は単独あるいは2種以上を混合して使用することもできる。
これら六ホウ化物微粒子は、暗い青紫などに着色した粉末であるが、粒径が可視光波長に比べて十分に小さく、薄膜中に分散した状態では膜に可視光透過性が生じるが、近赤外光遮蔽能は十分強く保持できる。
【0013】
本発明者らの実験によればこれらの微粒子を十分細かく、かつ均一に分散した膜では、透過率が波長400〜700nmの間に極大値を持ち、かつ700〜1800nmの間に極小値を持つことが観察された。可視光波長が380〜780nmであり、視感度が550nm付近をピークとする釣鐘型であることを考慮すると、このような膜では可視光を有効に透過し、それ以外の波長の光を有効に吸収・反射することが理解できる。
【0014】
六ホウ化物微粒子の平均粒径は200nm以下、好ましくは100nm以下とする必要がある。その理由は、平均粒径が200nmを超えると微粒子同士の凝集傾向が強くなり、塗布液中の微粒子の沈降の原因となるからであり、また平均粒径が200nmを超える微粒子もしくはそれらの凝集した粗大粒子の存在は、それによる光散乱によって可視光透過率の低下の原因となるので好ましくない。なお平均粒径は200nm以下、好ましくは100nm以下であれば、小さいほど好ましいが現在の技術では商業的に製造できる最小粒径はせいぜい2nm程度である。
【0015】
つぎに本発明において用いられるバインダー成分の少なくとも1種はグリシドキシプロピル基を含有するアルコキシシランとアミノプロピル基を含有するアルコキシシランを混合反応させて得られたものである。グリシドキシプロピル基を含有するアルコキシシランとしては、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどを挙げることができ、またアミノプロピル基を含有するアルコキシシランとしては、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
得られた反応物の基本構造は下記する化学式1で示される。
【0016】
【化1】
Figure 0004058878
(式中、X1、X2はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基の加水分解によってシラノールを生じるアルコキシル基を示し、Y1、Y2はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のアルキル基を示し、またa、b、c、dはそれぞれ1≦a≦3、a+b=3、1≦c≦3、c+d=3の関係を満たす数である。)
【0017】
すなわち、本発明のバインダー成分は、前記化学式1に示す基本構造における分子両端にアルコキシル基を持ち、分子内にフレキシブルなメチレン鎖を持つ。このアルコキシル基は室温で加水分解して反応性の高いシラノールを生じ、これが縮合重合することによって自身で高分子化、あるいは他の成分と結合することができる。また分子中のメチレン鎖は縮合重合時の歪みを吸収し塗膜のクラックを押さえる。
本発明の日射遮蔽膜形成用塗布液の硬化は、バインダー成分中のアルコキシル基の加水分解と、それに続くシラノールの縮合重合による高分子化によって起こる。このようにして形成されたシロキサン結合は強固であり、堅牢な塗膜を形成することができる。
【0018】
さらに日射遮蔽膜形成用塗布液中の希釈溶媒は特に限定されるものではなく塗布条件や、塗布環境、塗布液中の固形分の種類に合わせて選択可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソブチルアルコールなどのアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール類、酢酸メチルや酢酸エチルなどのエステル類、メチルエチルケトンやシクロヘキサノンなどのケトン類など各種溶媒が使用可能である。また用途によって1種または2種以上の溶媒を組み合わせて使用することもできる。
そしてこのバインダー成分には湿気硬化性があるが、常温での硬化速度を実用的なものとするために、日射遮蔽膜形成用塗布液には硬化触媒の添加が必要である。この硬化触媒としては三弗化ホウ素などが用いられ、触媒の添加量を変えることによって硬化時間を制御することが可能となり、応用範囲が広がることとなる。
【0019】
さらに形成される日射遮蔽膜の紫外線遮蔽能を強化するために、日射遮蔽膜形成用塗布液に紫外線遮蔽成分として有機紫外線吸収剤および/または無機紫外線遮蔽成分を含有させることもできる。
この際、紫外線遮蔽成分としての有機紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系とべンゾトリアゾール系の有機紫外線吸収剤のいずれか一方、または両方を含有させることができ、その含有量は0.5〜7重量%が好ましい。紫外線吸収剤の含有量が0.5重量%未満では形成される日射遮蔽膜の紫外線遮蔽能が十分ではなく、一方7重量%を超えると紫外線吸収剤が膜の表面に滲み出したり、曇りが生じたりするからである。
【0020】
また用途によっては紫外線遮蔽成分として無機紫外線遮蔽成分を含有させてもよく、この場合の無機紫外線遮蔽成分として平均粒径が100nm以下のCeO、ZnO、Fe、FeOOH微粒子の中から選ばれた1種もしくは2種以上を選択する。平均粒径を100nm以下とした理由は、粒径が100nmを超えると微粒子同士の凝集傾向が強くなり、塗布液中の微粒子の沈降の原因となり、また100nmを超える粒子もしくはそれらの凝集した粗大粒子の存在は、それによる光散乱によって可視光透過率の低下の原因となるので好ましくない。さらにFe、FeOOH微粒子を選択することによって、塗布膜に赤味や黄色味を持たせることも可能である。これらの無機紫外線遮蔽成分は経時変化が少ない。なお、無機紫外線遮蔽成分の平均粒径は小さいほど好ましいが、前記した理由と同様な理由により最小限の粒径は2nm程度である。
【0021】
そして本発明では前記した日射遮蔽膜形成用塗布液をガラス基板、プラスチック板、フィルムなどの透明基材の片面あるいは両面に塗布し常温で硬化させることによって前記透明基材の表面上に表面硬度の高い日射遮蔽能を持つ日射遮蔽膜を形成することができる。日射遮蔽膜形成用塗布液の塗布方法は特に限定されるものではなく、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、布や刷毛による塗布方法など、処理液を平坦で、薄く、かつ均一に塗布できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。
透明基材上に形成された日射遮蔽膜は、該基材に高い表面硬度と日射遮蔽機能を付与するとともに、前記基材そのものの紫外線による劣化を抑制する。
このようにして日射遮蔽膜が片面あるいは両面に形成された基材は高い表面硬度と日射遮蔽能を有するものである。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例とともにさらに詳細に説明する。なお以下の実施例および比較例の日射遮蔽膜形成用塗布液の構成成分を下記する表1に、また形成した膜の特性を表2に纏めて示した。
[実施例1]
LaB(平均粒径67nm)10g、ジアセトンアルコール86gおよび微粒子分散用カップリング剤4gを混合し、直径4mmのジルコニアボールを用いて150時間のボールミル混合を行いLaB微粒子の分散液100gを作製した(A液)。
グリシドキシプロピルトリメトキシシラン600gとアミノプロピルトリエトキシシラン400gを混合し、マグネティックスターラーで1時間撹拌後、室温で14日間熟成させて目的のバインダー成分1000gを得た(合成液1)。
7.5gの合成液1と47.5gのイソブチルアルコール、25gのプロピレングリコールモノエチルエーテル、10gのA液を混合撹拌し、さらに触媒として三弗化ホウ素ピペリジンのイソブチルアルコール溶液(濃度1重量%)10gを加えて撹拌することによって日射遮蔽膜形成用塗布液を作製した。
この日射遮蔽膜形成用塗布液を3mmのソーダライム系ガラス基板上にバーコーターを用いて塗布し、常温で放置して日射遮蔽膜を得た。
【0023】
得られた日射遮蔽膜の透過率を日立製作所(社)製の分光光度計を用いて測定し、JIS R 3106にしたがって可視光透過率(τv)、日射透過率(τe)を、ISO 9050にしたがって紫外線透過率(τuv)を算出した。またテーバー摩耗試験機で摩耗輪CS 10fを用いて荷重250g、50回転の摩耗試験を行い、試験前後のへイズの変化量(ΔH)で膜の表面硬度を評価した。なおへイズは村上色彩技術研究所(社)製の反射・透過率計で測定した。
実施例1で得られた日射遮蔽膜形成用塗布液は常温で硬化可能であり、容易に日射遮蔽膜を得ることができた。また膜のτvは71.9%、τeは49.8%であり、可視光透過性があり、日射遮蔽能があることが分かった。τuvは31.4%であり紫外光の遮蔽能もあった。またΔHは4.8%であり表面硬度の非常に高い膜が形成されていた。
【0024】
[比較例1]
比較のため3mmのソーダライム系ガラス基板のみの測定も行った。
ソーダライム系ガラス基板のτvは90.3%、τeは87.3%、τuvは70.7%であった。
【0025】
[実施例2]
CeB(平均粒径46nm)10g、ジアセトンアルコール86gおよび微粒子分散用カップリング剤4gを混合し、直径4mmのジルコニアボールを用いて150時間のボールミル混合を行いCeB微粒子の分散液100gを作製した(B液)
グリシドキシプロピルトリエトキシシラン600gとアミノプロピルトリメトキシシラン400gを混合し、マグネティックスターラーで1時間撹拌後、室温で14日間熟成させて目的のバィンダー成分1000gを得た(合成液2)。
7.5gの合成液2と47.5gのイソブチルアルコール、25gのプロピレングリコールモノエチルエーテル、10gのB液を混合撹拌し、さらに触媒として三弗化ホウ素ピペリジンのイソブチルアルコール溶液(濃度1重量%)10gを加えて撹拌することによって日射遮蔽膜形成用塗布液を作製した。
つぎに実施例1と同様な手順で日射遮蔽膜を形成し、膜の評価を行った。
実施例2により得られた日射遮蔽膜のτvは69.8%、τeは46.2%であり、可視光透過性があって日射遮蔽能があることが分った。τuvは29.0%であり紫外光の遮蔽能もある。またΔHは5.2%であり表面硬度の非常に高い膜が形成されていた。
【0026】
[実施例3]
7.5gの合成液1と1gのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(UVA)、46.5gのイソブチルアルコール、25gのプロピレングリコールモノエチルエーテル、10gのA液を混合撹拌し、さらに触媒として三弗化ホウ素ピペリジンのイソブチルアルコール溶液(濃度1重量%)10gを加えて撹拌することによって日射遮蔽膜形成用塗布液を作製した。
つぎに実施例1と同様な手順で日射遮蔽膜を形成し、膜の評価を行った。
実施例3により得られた日射遮蔽膜のτvは72.0%、τeは50.1%であり、可視光透過性があって日射遮蔽能があることが分った。τuvは0.5%であり紫外光の遮蔽能は優れていた。またΔHは6.0%であり表面硬度の非常に高い膜が形成されていた。
【0027】
[実施例4]
FeOOH微粒子(平均粒径30nm)15g、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)23g、ジアセトンアルコール(DAA)14g、メチルエチルケトン47.5g、およびチタネート系カップリング剤0.5gを混合し、直径4mmのジルコニアボールを用いて100時間のボールミル混合を行いFeOOHの分散液100gを作成した(C液)。
20gの合成液1と8.7gのC液、33.3gのイソブチルアルコール、25gのプロピレングリコールモノエチルエーテル、3gのA液を混合撹拌し、さらに触媒として三弗化ホウ素ピペリジンのイソブチルアルコール溶液(濃度1重量%)10gを加えて撹拌することによって日射遮蔽膜形成用塗布液を作製した。
つぎに実施例1と同様な手順で日射遮蔽膜を形成し、膜の評価を行った。
実施例4により得られた日射遮蔽膜のτvは77.2%、τeは59.3%であり、可視光透過性があって日射遮蔽能があることが分った。τuvは10.7%であり紫外光の遮蔽能は優れていた。またΔHは4.9%であり表面硬度の非常に高い膜が形成されていた。
【0028】
[実施例5]
20gの合成液1と8.7gのC液、2.6gのべンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、30.7gのイソブチルアルコール、25gのプロピレングリコールモノエチルエーテル、3gのA液を混合撹拌し、さらに触媒として三弗化ホウ素ピペリジンのイソブチルアルコール溶液(濃度1重量%)10gを加えて撹拌することによって日射遮蔽膜形成用塗布液を作製した。
つぎに実施例1と同様な手順で日射遮蔽膜を形成し、膜の評価を行った。
実施例5により得られた日射遮蔽膜のτvは77.2%、τeは59.4%であり、可視光透過性があって日射遮蔽能があることが分った。τuvは0.1%であり紫外光の遮蔽能は非常に優れていた。またΔHは5.5%であり表面硬度の非常に高い膜が形成されていた。
【0029】
[比較例2]
バインダーとしてラッカータイプの常温硬化ウレタン樹脂(溶剤はイソプロピルアルコールで固形分30%)を83.3g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を2.6g、イソブチルアルコールを11.1g、A液を3g混合撹拌することによって日射遮蔽膜形成用塗布液を作製した。
つぎに実施例1と同様な手順で日射遮蔽膜を形成し、膜の評価を行った。
比較例2により得られた日射遮蔽膜のτvは79.5%、τeは61.4%であり、可視光透過性があって日射遮蔽能があることが分かった。τuvは0.9%であり紫外光の遮蔽能は優れていたが、ΔHは30.0%であり表面硬度が非常に低く、爪でこすると傷がついた。
【0030】
[実施例6〜8]
実施例1のLaB微粒子を、それぞれPrB(平均粒径53nm)、NdB(平均粒径66nm)、GdB(平均粒径41nm)に替えた以外は実施例1と同様な手順で日射遮蔽膜形成用塗布液を作製し実施例6〜8とした。
つぎに実施例6〜8に係る日射遮蔽膜形成用塗布液を用いて実施例1と同様な手順で日射遮蔽膜を形成し、膜の評価を行った。
実施例6〜8により得られた日射遮蔽膜のτvは72.0〜73.1%、τeは50.1〜52.3%であり、可視光透過性があって日射遮蔽能があることが分った。τuvは32.0〜34.0%であり紫外光の遮蔽能もある。またΔHは5.3〜6.2%であり表面硬度の非常に高い膜が形成されていた。
【0031】
[比較例3]
CeBとして平均粒径212nmの粗大粒子を用いいた他は実施例2と同様な手順で日射遮蔽膜形成用塗布液を作製した。
つぎに実施例1と同様な手順で日射遮蔽膜を形成し、膜の評価を行った。
比較例3により得られた膜は可視光の散乱が強く、曇りがあって実用には向かなかった。
【0032】
【表1】
Figure 0004058878
【0033】
【表2】
Figure 0004058878
【0034】
【発明の効果】
以上述べた通り本発明によれば、常温で硬化し得る日射遮蔽膜形成用塗布液を得ることができ、また該塗布液により形成された日射遮蔽膜は表面強度が高く、また透明基材に高い表面強度と日射遮蔽能を付与することが可能となった。

Claims (8)

  1. バインダー成分、希釈溶媒、硬化触媒および近赤外光遮蔽成分とを含有する日射遮蔽膜形成用塗布液であって、前記バインダー成分の少なくとも1種がグリシドキシプロピル基含有アルコキシシランとアミノプロピル基含有アルコキシシランを混合反応させてなる下記する化学式1で示される物質であり、かつ前記近赤外光遮蔽成分が六ホウ化物の中から選ばれた少なくとも1種からなる平均粒径200nm以下の微粒子である日射遮蔽膜形成用塗布液を透明基材に塗布し、常温で硬化させてなる日射遮蔽膜であって、可視光透過率τvが69.8%以上、日射透過率τeが66.2%以下であり、テーバー摩耗試験機で摩耗輪CS 10fを用いて荷重250g、50回転の摩耗試験前後のへイズの変化量(ΔH)が6.2%以下であることを特徴とする日射遮蔽膜。
    Figure 0004058878
    (式中、X1、X2はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの加水分解によってシラノールを生じるアルコキシル基を示し、Y1、Y2はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のアルキル基を示し、かつa、b、c、dはそれぞれ1≦a≦3、a+b=3、1≦c≦3、c+d=3の関係を満たす数である。)
  2. 前記六ホウ化物はCeB 、GdB 、TbB 、DyB 、HoB 、YB 、SmB 、EuB 、ErB 、TmB 、YbB 、LuB 、SrB 、CrB 、LaB 、PrB またはNdBであることを特徴とする請求項1記載の常温で硬化可能な日射遮蔽膜。
  3. さらに紫外線遮蔽成分としてべンゾフェノン系および/またはべンゾトリアゾール系の有機紫外線吸収剤を0.5重量%以上で7重量%以下含有することを特徴とする請求項1または2記載の常温で硬化可能な日射遮蔽膜。
  4. さらに紫外線遮蔽成分として平均粒径が100nm以下のCeO 、ZnO、Fe およびFeOOH微粒子の中から選ばれた少なくとも1種からなる無機紫外線遮蔽成分を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の常温で硬化可能な日射遮蔽膜。
  5. 請求項1〜4記載の常温で硬化可能な日射遮蔽膜が少なくとも片面に形成され、かつ透明性を有することを特徴とする日射遮蔽機能を有する基材。
  6. 請求項1〜4記載の常温で硬化可能な日射遮蔽膜が得られる、バインダー成分、希釈溶媒、硬化触媒および近赤外光遮蔽成分とを含有する日射遮蔽膜形成用塗布液であって、前記バインダー成分の少なくとも1種がグリシドキシプロピル基含有アルコキシシランとアミノプロピル基含有アルコキシシランを混合反応させてなる下記する化学式1で示される物質であり、かつ前記近赤外光遮蔽成分がCeB 、GdB 、TbB 、DyB 、HoB 、YB 、SmB 、EuB 、ErB 、TmB 、YbB 、LuB 、SrB 、CrB 、LaB 、PrB またはNdB の中から選ばれた少なくとも1種からなる平均粒径200nm以下の微粒子であり、硬化触媒が三弗化ホウ素ピペリジンであることを特徴とする常温で硬化可能な日射遮蔽膜形成用塗布液。
    Figure 0004058878
    (式中、X1、X2はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの加水分解によってシラノールを生じるアルコキシル基を示し、Y1、Y2はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のアルキル基を示し、かつa、b、c、dはそれぞれ1≦a≦3、a+b=3、1≦c≦3、c+d=3の関係を満たす数である。)
  7. さらに紫外線遮蔽成分としてべンゾフェノン系および/またはべンゾトリアゾール系の有機紫外線吸収剤を0.5重量%以上で7重量%以下含有することを特徴とする請求項6記載の常温で硬化可能な日射遮蔽膜形成用塗布液。
  8. さらに紫外線遮蔽成分として平均粒径が100nm以下のCeO 、ZnO、Fe およびFeOOH微粒子の中から選ばれた少なくとも1種からなる無機紫外線遮蔽成分を含有することを特徴とする請求項6〜7に記載の常温で硬化可能な日射遮蔽膜形成用塗布液。
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