JP3760126B2 - ロータリポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、互いに逆方向に回転する2つのロータが内部に備えられ且つ流体物を吸入する吸入口及び吸入した流体物を吐出する吐出口が形成されるポンプ部と、前記2つのロータの回転を同期させるための駆動部と、前記ポンプ部から前記駆動部に亘って備えられ且つ前記ロータを軸支するシャフトと、から構成されると共に、前記ポンプ部と前記駆動部との間に、前記ポンプ部内の流体物が前記ポンプ部外に漏れ出すことを防止するためのメカニカルシール部を備えたロータリポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
流体物にエネルギーを与えて流動させることにより流体物を移送する装置として、ポンプが知られている。ポンプには、様々な種類のものがあるが、中でも広く用いられているものとして、ロータリポンプがある。ロータリポンプは、ポンプ部内で互いに逆方向に回転する2つのロータの回転によって流体物を流動させるものであるが、この2つのロータは、非接触で回転するため、流体物の汚染がなく、また機械的摩擦損失も少ない。このような特徴を有するため、特に、粘性の高い流体物や固形物を含む流体物等を移送する際に多く使用されている。
【0003】
また、ロータリポンプは、流体物がその内部を流動するポンプ部とロータの回転を同期させるためのギア機構等が内蔵される駆動部とから構成されており、このポンプ部と駆動部との間には、図6に示すような、ポンプ部2内の流体物がポンプ部2外に漏れ出すことを防止するためメカニカルシール部65が備えられている。このメカニカルシール部65は、ポンプ部2側に固定されるシールリング73と、ロータを軸支するシャフト4と共に回転する従動リング85と、を有しており、このシールリング73と従動リング85とが密着した状態で摺動するようになっている。
【0004】
ロータリポンプを運転させた際、ポンプ部2内の流体物は、シャフト4とポンプ部2に形成されたシャフト挿通穴12との間の隙間、及びシャフト4とメカニカルシール部65を構成するフローティングシート68のシャフト貫通部69との間の隙間を通ってメカニカルシール部65内に浸入するが、上記したように、シールリング73と従動リング85とが密着しているため、ポンプ部2外へ漏れ出すことはない。このように、メカニカルシール部65によってポンプ部2内の流体物がポンプ部2外に漏れ出すことを防止している。
【0005】
このように、メカニカルシール部65によって、ポンプ部内の流体物がポンプ部2外に漏れ出すことはないが、ロータリポンプを長時間使用するに従い、メカニカルシール部65内には流体物が次第に堆積してくる。従って、この堆積物を除去するためにメカニカルシール部65の内部を洗浄する必要がある。しかし、前述のように、ロータリポンプでは、粘性の高い流体物や固形物を含む流体物等に対して使用することが多く、このような流体の堆積物は除去し難いため、従来、ロータリポンプを使用後に分解して洗浄するか、あるいは、ロータリポンプを分解しない場合には、ロータリポンプを運転して洗浄液をポンプ部内で長時間流動させることにより、メカニカルシール部65内を洗浄していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ロータリポンプを分解して洗浄し、再び組み立てる作業は、手間と時間がかかるものであるため多大の費用が必要になるという問題があった。また、分解しない場合でも、洗浄のためにロータリポンプを長時間運転することにより、そのために多大な費用が必要になるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、ロータリポンプを分解することなく、短時間でメカニカルシール部内を充分に洗浄することができるロータリポンプを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明においては、互いに逆方向に回転する2つのロータが内部に備えられ且つ流体物を吸入する吸入口及び吸入した流体物を吐出する吐出口が形成されるポンプ部と、前記2つのロータの回転を同期させるための駆動部と、前記ポンプ部から前記駆動部に亘って備えられ且つ前記ロータを軸支するシャフトと、から構成されると共に、前記ポンプ部と前記駆動部との間に、前記ポンプ部内の流体物が前記ポンプ部外に漏れ出すことを防止するためのメカニカルシール部を備えたロータリポンプにおいて、前記ポンプ部内に形成されるポンプ室の駆動部側の壁面には、前記シャフトが挿通されるシャフト挿通穴が形成されると共に、前記メカニカルシール部は、前記シャフトが貫通するシャフト貫通穴が形成されるフローティングシートを有し、前記シャフト挿通穴の前記吐出口側及び吸入口側の周面には、前記流体物が流入する第1流入溝及び前記流体物が流出する第1流出溝がそれぞれ形成されると共に、前記シャフト貫通穴の前記第1流入溝及び第1流出溝と対応する位置の周面には、前記流体物が流入する第2流入溝及び前記流体物が流出する第2流出溝がそれぞれ形成されていることを特徴とする。このように構成することにより、ロータリポンプを運転して洗浄液をポンプ室で流動させることによりメカニカルシール部内を洗浄する際、ポンプ室の洗浄液が第1流入溝及び第2流入溝を通ってメカニカルシール部に浸入し易く、また、メカニカルシール部内に浸入した洗浄液は、第2流出溝及び第1流出溝を通って再びポンプ室に流出し易くなる。このように、メカニカルシール部内での洗浄液の液交換の効率が向上するため、ロータリポンプを分解することなく、メカニカルシール部内の洗浄を短時間で行うことができ、洗浄のための費用を削減することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明においては、前記ポンプ室の駆動部側の壁面には、前記流体物を前記第1流入溝に流入し易くする流入誘導溝及び前記流体物を前記第1流出溝から流出し易くする流出誘導溝が、それぞれ第1流入溝及び第1流出溝に連通して形成されていることを特徴とする。このように構成することにより、ロータリポンプを運転して洗浄液をポンプ室で流動させることによりメカニカルシール部内を洗浄する際、洗浄液が更にメカニカルシール部に浸入し易く、また、更にメカニカルシール部内から再びポンプ室に流出し易くなる。このため、メカニカルシール部内の洗浄をより短時間で行うことができ、洗浄のための費用を大幅に削減することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、図1乃至図5を参照して、実施形態に係るロータリポンプ1について説明する。図1は、ロータリポンプ1の全体の斜視図であり、図2は、ロータリポンプ1のポンプ部2の分解斜視図であり、図3は、ロータリポンプ1の縦断面図であり、図4は、図3のA−Aにおける横断面図とその側面図であり、図5は、ポンプ室17での駆動側ロータ60,従動側ロータ61及び流体物の動きを示す断面図である。
【0011】
図1および図2において、ロータリポンプ1は、駆動側ロータ60及び従動側ロータ61(以下、ロータ60,61という場合がある)が内蔵されて流体物を吸入して吐出する部分であるポンプ部2と、ロータ60,61の回転を同期させる機構が内蔵される駆動部3と、ポンプ部2及び駆動部3に亘って装着されてロータ60,61を軸支する駆動シャフト4及び従動シャフト5(以下、シャフト4,5という場合がある)と、から構成されている。
【0012】
まず、ポンプ部2について説明すると、ポンプ部2は、ポンプ部2の基体をなすポンプ部本体6と、ポンプ部本体6の前面側(図中、左側)を覆うポンプ部カバー7とから構成されている。ポンプ部本体6は、断面がほぼコ字状にステンレス合金等により形成されるものであり、その中心部分には、2つのロータ60,61が収納されるポンプ室17が形成されている。ポンプ部本体6の一側方(図中、右側)には、流体物をポンプ室17に流入するための吸入口8が、他側方(図中、左側)には、流体物をポンプ室17から吐出するための吐出口9が、それぞれポンプ室17に連通して形成されている。また、ポンプ室17の駆動部3側の壁面には、駆動シャフト4,従動シャフト5がそれぞれ挿通されるシャフト挿通穴12が2箇所形成されている。このシャフト挿通穴12は、図4(A)に示すように、ポンプ室17側の径が駆動部3側の径よりも小さく、その縦断面が段付きの形状になっており、駆動部3側、即ち、大径側には、後に詳述するメカニカルシール部65が取り付けられるようになっている。
【0013】
また、図4に示すようにシャフト挿通穴12のポンプ室17側、即ち、小径側であって吐出口9側の周面には、ポンプ室17内の流体物が流入する第1流入溝13が、吸入口8側の周面には、ポンプ室17へ流体物を流出させる第1流出溝14がそれぞれ形成されている。この第1流入溝13及び第1流出溝14は、図4(B)に示すように、その縦断面形状が円弧状に形成されるものである。なお、上記したように、流体物が流入する第1流入溝13が吐出口9側に形成されているのは、一見、逆のようであるが、後述するように、ポンプ室17内の圧力は、吸入口8側の圧力よりも吐出口9側の方が高いためである。
【0014】
また、ポンプ室17の駆動部3側の壁面には、図4に示すように、ポンプ室17の流体物を第1流入溝13に流入し易くするための流入誘導溝15及びポンプ室17へ流体物を流出し易くするための流出誘導溝16が、それぞれ第1流入溝13及び第1流出溝14に連通して形成されている。この流入誘導溝15及び流出誘導溝16は、図4(A)に示すように、その横断面において、底面一端部の隅角部が円弧状に形成され、また、図4(B)に示すように、その正面視において、一端部が半円形状に形成される溝状のものである。
【0015】
また、図2において、ポンプ部本体6の前面側には、駆動部3側に立設されて、駆動部3にポンプ部本体6を取り付けるための取付ロッド(図示しない)が挿通される取付穴10及び駆動部3にポンプ部本体6を取り付けるための取付ボルト19が埋設されるボルト挿入穴18が複数箇所(図の場合、それぞれ4箇所と2箇所)穿設されている。また、ボルト挿入穴18の側方には、ポンプ室カバー7を位置決めするための位置決めピン22が嵌入される位置決め穴11が複数箇所(図の場合、2個所)穿設されている。
【0016】
上記したポンプ部本体6の前面側を覆うポンプ部カバー7は、ステンレス合金等により、その外形がポンプ部本体6の外形とほぼ同じ形状に形成される平板状のものである。ポンプ部カバー7には、ポンプ室本体6の取付穴10及び位置決め穴11と対応する位置に、それぞれ前記取付ロッドが挿通される取付穴20及び位置決めピン22が嵌入される位置決め穴21が穿設されている。また、ポンプ部カバー7の内側面であるポンプ室17側(図2において、左側)の面には、ポンプ部本体6とポンプ部カバー7との間の気密状態を保つためのシール24が嵌入されるシール溝23が形成されている。
【0017】
次に、駆動部3について説明すると、図3において、駆動部3は、駆動部3の基体をなす駆動部本体30と、この駆動部本体30内部に取り付けられるシャフト支持部31と、から構成されている。駆動部本体30は、鋳鉄によって、ポンプ部2側が開放した中空形状に形成されるものであり、この中空部分が駆動室41として形成されている。この駆動室41の中程には、シャフト支持部31を取り付けるための取付部42が内側に向けて一体的に突設されている。また、駆動部本体30の後方側(図中、右側)であって駆動シャフト4が貫通する部分の内側には、駆動シャフト4を回転自在に軸支するボールベアリング33が、駆動シャフト4が貫通する部分の外側には、駆動部本体30と駆動シャフト4との間の気密状態を保つためのリップシール34がそれぞれ取り付けられている。また、駆動シャフト4を軸支するボールベアリング33の下方には、同様に、従動シャフト5を回転自在に軸支するボールベアリング33が取り付けられている。なお、従動シャフト5の後方側は、駆動シャフト4とは異なり、駆動部本体30から貫通していない。
【0018】
また、駆動部本体30の前面側には、ポンプ部本体6及びポンプ部カバー7を取り付けるための図示しない前記取付ロッドが、ポンプ部本体6の取付穴10と対応する位置に立設されると共に、ポンプ部本体6を位置決めするための位置決めピン32が嵌入される位置決め穴(図示しない)が穿設されている。
【0019】
上記した駆動部本体30に取り付けられるシャフト支持部31は、駆動シャフト4及び従動シャフト5の中央部付近を支持するものであり、駆動シャフト4及び従動シャフト5がそれぞれ挿通される開口部が形成されると共に、この開口部の前面側(図中、左側)には、シャフト支持部31と駆動シャフト4及び従動シャフト5との間の気密状態を保つためのリップシール40が取り付けられ、開口部の後面側には、駆動シャフト4及び従動シャフト5を回転自在に軸支するローラベアリング39が取り付けられている。このローラベアリング39は、シャフト支持部31に対して取付ボルト36によって取り付けられるベアリング押え35とシャフト支持部31との間に挟持されることにより、シャフト支持部31に対して固定されている。また、シャフト支持部31の取付部42に当接する面には、シャフト支持部31と取付部42との間の気密状態を保つためのシール38が嵌入されるシール溝37が形成されている。
【0020】
次に、駆動シャフト4及び従動シャフト5について説明するが、駆動シャフト4と従動シャフト5とは、その形状が若干相違しているだけであるため、まず駆動シャフト4について説明し、その後、相違する部分について説明する。
【0021】
駆動シャフト4は、ステンレス合金等により、棒状に形成されるものである。駆動シャフト4のポンプ部2側の先端部分には、駆動シャフト4に駆動側ロータ60を取り付けた際に、駆動側ロータ60を固定するためのロータナット63が螺着されるネジ部45が形成されている。このネジ部45に隣接する部分には、駆動側ロータ60が挿入されるスプライン部46が形成されている。このスプライン部46の周回は、凹凸形状に形成されているが、駆動側ロータ60の中心にも、このスプライン部46と対応する凹凸形状のスプライン穴62(図2参照)が形成されている。このため、駆動側ロータ60のスプライン穴62に駆動シャフト4のスプライン部46を嵌入させて駆動側ロータ60を取り付けることにより、駆動シャフト4が回転した際、駆動シャフト4の回転を駆動側ロータ60に伝達することができる。
【0022】
また、スプライン部46の駆動部3側に隣接する部分には、ポンプ部2内の流体物がポンプ部2外に漏れ出すことを防止するための後述するメカニカルシール部65が取り付けられる、メカニカルシール取付部47が形成されている。また、メカニカルシール取付部47の駆動部3側に隣接する部分には、段差部48を介してローラベアリング39,スペーサ92,駆動ギア90及びギアナット93が取り付けられる、ギア取付部49が形成されている。このギア取付部49には、駆動シャフト4の回転を駆動ギア90に伝達するためのキー53が埋設されており、また、ギア取付部49のギアナット93の取付部分には、ギアナット93が螺着するように、ネジ部が形成されている。
【0023】
また、ギア取付部49の駆動部3側に隣接する部分には、中間部50が形成され、この中間部50の駆動部3側に隣接する部分には、駆動部3のボールベアリング33により支持される支持部51が形成されている。更に、支持部51の駆動部3側に隣接する部分であって、駆動シャフト4の端部には、駆動装置(図示しない)と連結される連結部52が形成されている。この連結部52には、駆動装置の回転を駆動シャフト4に伝達するためのキー54が埋設されている。
【0024】
駆動シャフト4は、上記したような形状で形成されるものであるが、従動シャフト5は、駆動シャフト4から連結部52を削除し、支持部51を駆動部3から突出しない長さにしたものであり、その他の形状は、駆動シャフト4とまったく同様である。なお、従動シャフト5に取り付けられるロータ及びギアは、それぞれ従動側ロータ61及び従動ギア91であるが、これらは、名称が相違するだけであり、形状,構造等は、駆動側ロータ60及び駆動ギア90とまったく同様である。
【0025】
また、駆動側ロータ60及び従動側ロータ61は、ステンレス合金等により、二葉のまゆ形(図示省略)に形成されるものであり、その中心には、前述のように、シャフト4,5のスプライン部46が嵌入されるスプライン穴62が形成されている。なお、駆動側ロータ60及び従動側ロータ61は、二葉のまゆ形に形成されるものに限らず、三葉のものや、あるいは、ギア形状に形成されるもの等であってもよい。
【0026】
次に、本発明の要部を構成するメカニカルシール部65について説明する。メカニカルシール部65は、図3に示すように、ポンプ部2と駆動部3との間に備えられるものであり、ポンプ部2内の流体物が駆動部3内に漏れ出すことを防止するためのものである。メカニカルシール部65は、図4に示すように、ポンプ部2に固定される固定部66と、駆動シャフト4及び従動シャフト5に取り付けられて、シャフト4,5と共に回転する回転部67と、から構成されている。なお、メカニカルシール部65は、駆動シャフト4及び従動シャフト5のいずれにも備えられているが、まったく同様のものである。
【0027】
まず、固定部66は、取付ボルト75によってポンプ部本体6の駆動部3側に取り付けられるフローティングシート68と、フローティングシート68の駆動部3側の端部に取り付けられるシールリング73と、フローティングシート68のポンプ部2側の端部近傍の周回に嵌入されるシール72と、フローティングシート68とポンプ部本体6との間に装着されるウェーブワッシャ74と、から構成されている。
【0028】
フローティングシート68は、フランジを有する円筒形状に形成されるものであり、その中心には、シャフト4,5が貫通するシャフト貫通穴69が、シャフト4,5の径よりもやや大きい径で穿設されている。このシャフト貫通穴69の周面には、図4(A)に示すように、互いに対面する位置にそれぞれ第2流入溝70及び第2流出溝71が貫通して形成されている。この第2流入溝70及び第2流出溝71の形状は、前記第1流入溝13及び第1流出溝14と同様、その縦断面形状が円弧状に形成されるものである。また、フローティングシート68の駆動部3側の端部には、超硬金属等により形成される円環形状のシールリング73が埋設されている。
【0029】
また、回転部67は、シャフト4,5に止めネジ81によって固定されるカラー80と、固定ピン82によりカラー80に固定されるリング支え83と、シャフト4,5とリング支え83との間に嵌入されるシール84と、リング支え83のポンプ部2側の端部に埋設される従動リング85と、から構成されている。
【0030】
カラー80は、ポンプ部2側に凸部を有する円筒形状に形成されるものであり、この凸部は、リング支え83の後述する凹部に嵌合するものである。また、カラー80の外周面には、止めネジ81が螺着されるネジ穴が形成されており、このネジ穴に螺合させた止めネジ81を締め込むことにより、止めネジ81の先端をシャフト4,5に押し当て、カラー80をシャフト4,5に対して固定するものである。
【0031】
また、リング支え83は、駆動部3側に凹部を有する円筒形状に形成されるものであり、この凹部にカラー80の凸部が嵌合することにより、凹部と凸部との間にシール84が嵌入される空間が形成される。また、リング支え83は、固定ピン82によってカラー80に対して固定されているため、シャフト4,5に対して固定されることとなる。更に、リング支え83のポンプ部2側の端部には、セラミック等により形成される円環形状の従動リング85が埋設されている。このため、従動リング85もシャフト4,5に対して固定されることとなる。
【0032】
上記のように、メカニカルシール部65の固定部66及び回転部67は、個別に構成されるものであるが、組み立てられた際には、シールリング73と従動リング85が密着し、シャフト4,5が回転することにより、シールリング73と従動リング85が互いに摺動するものである。
【0033】
次に、ロータリポンプ1の動作及び作用について説明する。上記したように、駆動シャフト4には、駆動装置が接続されており、その駆動装置によって駆動シャフト4が回転せしめられるようになっている。駆動装置により、駆動シャフト4が回転すると、駆動シャフト4に取り付けられる駆動ギア90が回転し、この駆動ギア90の回転に伴い、従動ギア91も回転せしめられる。駆動ギア90と従動ギア91とは、前述したように、まったく同様の形状であるため、駆動シャフト4と従動シャフト5は、まったく同じ回転速度で回転する。従って、駆動シャフト4及び従動シャフト5にそれぞれ取り付けられる駆動側ロータ60及び従動側ロータ61もまったく同じ回転速度で回転するため、駆動側ロータ60と従動側ロータ61との位相も変わることがない。
【0034】
このようなロータリーポンプ1を運転した状態を図5に示すと、矢印に示すように駆動側ロータ60は、反時計方向に回転し、従動側ロータ61は、時計方向に回転する。このように回転するロータ60,61によって吸入口8から吸入された流体物は、ロータ60,61とポンプ室17の壁面との間に形成された空間に送り込まれる。ロータ60,61とポンプ室17の壁面との間に形成された空間において、ロータ60,61の回転に伴い流体物が吐出される吐出口9部分まで流動した流体物は、その圧力が上昇している。即ち、ポンプ室17内では、吸入口8側よりも吐出口9側の方が圧力が高くなっている。
【0035】
このため、ポンプ室17内に送り込まれた流体物の一部が、図4の矢印で示すように、圧力の高い吐出口9側に形成された流入誘導溝15,第1流入溝13及び第2流入溝70を通ってメカニカルシール部65内に浸入した後、吸入口8側に形成された第2流出溝71,第1流出溝14及び流出誘導溝16を通って、再びポンプ室17内へ流出することとなる。
【0036】
このようにロータリポンプ1を稼動させることにより、ポンプ室17内を流動する流体物の一部がメカニカルシール部65内に浸入し、浸入した流体物がメカニカルシール65内で堆積する。この堆積した流体物を除去するため、メカニカルシール部65内を洗浄する必要があるが、メカニカルシール部65内を洗浄する方法として、ロータリポンプ1を運転して洗浄液をポンプ室17で流動させる方法がある。この方法によりメカニカルシール部65内を洗浄する際、本実施形態においては、ポンプ室17の洗浄液が流入誘導溝15,第1流入溝13及び第2流入溝70を通ってメカニカルシール部65に浸入し易く、また、メカニカルシール部65内に浸入した洗浄液は、第2流出溝71,第1流出溝14及び流出誘導溝16を通って再びポンプ室17に流出し易くなるため、メカニカルシール部65内での洗浄液の液交換の効率が向上するものである。
【0037】
次に、上記した洗浄方法により行った洗浄試験について、表1を参照して説明する。表1は、流入誘導溝15及び流出誘導溝16,第1流入溝13及び第1流出溝14,第2流入溝70及び第2流出溝71の有無による洗浄結果を示す表である。
【0038】
【表1】
【0039】
まず、試験方法は、ポンプ部2を駆動部3から取り外し、ポンプ部2の固定部66の内周面及びシャフト挿通穴12の内周面と、シャフト4,5の固定部66が挿通される箇所(メカニカルシール取付部47の一部)及び従動リング85の内周面と、にでんぷん糊を塗布した後、ポンプ部2を駆動部3に組付けて洗浄試験を行い、再びポンプ部2を駆動部3から取り外してでんぷん糊の残量を調べた。
【0040】
試験条件は、洗浄液を水とし、ロータリポンプの回転数を600rpm、洗浄時間を3分あるいは1分とした。また、試験を行うロータリポンプは、第1流入溝13及び第1流出溝14,流入誘導溝15及び流出誘導溝16,第2流入溝70及び第2流出溝71のすべてが施されているもの(実施例1)、第1流入溝13及び第1流出溝14,第2流入溝70及び第2流出溝71が施されているもの(実施例2)、第2流入溝70及び第2流出溝71が施されているもの(比較例)、第1流入溝13及び第1流出溝14,流入誘導溝15及び流出誘導溝16,第2流入溝70及び第2流出溝71のすべてが施されていないもの(従来品)を用いた。
【0041】
表1に示す洗浄試験の結果より、以下のことが判明した。まず、実施例1については、1分間の洗浄でメカニカルシール部65内のでんぷん糊は、ほぼ除去されて残留していなかった。これは、流入誘導溝15,第1流入溝13及び第2流入溝70によって形成される流入経路によって洗浄液がポンプ部2からメカニカルシール部65内に浸入し易く、また、第2流出溝71,第1流出溝14及び流出誘導溝16によって形成される流出経路によって洗浄液がメカニカルシール部65からポンプ部2へ流出し易くなり、メカニカルシール部65内での洗浄液の液交換の効率が非常に高いためであると考えられる。
【0042】
また、実施例2については、3分間の洗浄でメカニカルシール部65内のでんぷん糊は、ほぼ除去されて残留していなかった。これは、第1流入溝13及び第2流入溝70によって形成される流入経路によって洗浄液がポンプ部2からメカニカルシール部65内に浸入し易く、また、第2流出溝71及び第1流出溝14によって形成される流出経路によって洗浄液がメカニカルシール部65からポンプ部2へ流出し易くなり、実施例1ほどではないが、メカニカルシール部65内での洗浄液の液交換の効率が高いためであると考えられる。
【0043】
また、比較例については、3分間の洗浄でメカニカルシール部65内のでんぷん糊は、少々残留していた。これは、流入誘導溝15及び第1流入溝13が形成されていないため、洗浄液がポンプ室2からメカニカルシール部65内に浸入し難く、また、流出誘導溝16及び第1流出溝14が形成されていないため、洗浄液がメカニカルシール部65からポンプ室2へ流出し難くなり、洗浄液の液交換の効率が実施例1,2と比較して高くならないが、第2流入溝70及び第2流出溝71が形成されていることにより、メカニカルシール部65内では、洗浄液が流動し易くなるため、ある程度メカニカルシール部65内を洗浄できるためと考えられる。
【0044】
また、従来品については、3分間の洗浄でメカニカルシール部65内のでんぷん糊は、僅かに除去されるだけで残留していた。これは、洗浄液がシャフト4,5とシャフト挿通穴12との隙間からメカニカルシール部65内に僅かに浸入するだけであり、また、メカニカルシール部65内に浸入した洗浄液もシャフト4,5とフローティングシート68との間の隙間内で流動するだけであるため、洗浄性も洗浄液の液交換の効率も低いためであると考えられる。
【0045】
以上、実施形態について詳細に説明してきたが、本実施形態においては、互いに逆方向に回転する2つのロータ60,61が内部に備えられ且つ流体物を吸入する吸入口8及び吸入した流体物を吐出する吐出口9が形成されるポンプ部2と、前記2つのロータ60,61の回転を同期させるための駆動部3と、前記ポンプ部2から前記駆動部3に亘って備えられ且つ前記ロータ60,61を軸支するシャフト4,5と、から構成されると共に、前記ポンプ部2と前記駆動部3との間に、前記ポンプ部2内の流体物が前記ポンプ部2外に漏れ出すことを防止するためのメカニカルシール部65を備えたロータリポンプ1において、前記ポンプ部2内に形成されるポンプ室17の駆動部3側の側面には、前記シャフト4,5が挿通されるシャフト挿通穴12が形成されると共に、前記メカニカルシール部65は、前記シャフト4,5が貫通するシャフト貫通穴69が形成されるフローティングシート68を有し、前記シャフト挿通穴12の前記吐出口9側及び吸入口8側の周面には、前記流体物が流入する第1流入溝13及び前記流体物が流出する第1流出溝14がそれぞれ形成されると共に、前記シャフト貫通穴69の前記第1流入溝13及び第1流出溝14と対応する位置の周面には、前記流体物が流入する第2流入溝70及び前記流体物が流出する第2流出溝71がそれぞれ形成されていることにより、ロータリポンプ1を運転して洗浄液をポンプ室17で流動させることによりメカニカルシール部65内を洗浄する際、ポンプ室17の洗浄液が第1流入溝13及び第2流入溝70を通ってメカニカルシール部65に浸入し易く、また、メカニカルシール部65内に浸入した洗浄液は、第2流出溝71及び第1流出溝14を通って再びポンプ室17に流出し易くなる。このように、メカニカルシール部65内での洗浄液の液交換の効率が向上するため、ロータリポンプ1を分解することなく、メカニカルシール部65内の洗浄を短時間で行うことができ、洗浄のための費用を削減することができる。
【0046】
また、本実施形態においては、前記ポンプ室17の駆動部3側の壁面には、前記流体物を前記第1流入溝13に流入し易くする流入誘導溝15及び前記流体物を前記第1流出溝14から流出し易くする流出誘導溝16が、それぞれ第1流入溝13及び第1流出溝14に連通して形成されていることにより、ロータリポンプ1を運転して洗浄液をポンプ室17で流動させることによりメカニカルシール部65内を洗浄する際、洗浄液が更にメカニカルシール部65に浸入し易く、また、更にメカニカルシール部65内から再びポンプ室17に流出し易くなる。このため、メカニカルシール部65内の洗浄をより短時間で行うことができ、洗浄のための費用を大幅に削減することができる。
【0047】
なお、上記したロータリーポンプ1の実施形態は、メカニカルシール部65内の洗浄性を高めたものであるが、メカニカルシール部65に限らず、ポンプ室17内全体の洗浄性を高めるために、ポンプ室17の表面等に樹脂コーティングを施すことが考えられる。即ち、流体物が接する部品の接液面に樹脂コーティングを施すことにより、接液面に堆積した流体物や汚れ等を落ち易くし、洗浄性を高めるものである。このように、洗浄性を高めるための樹脂コーティングの材料として、従来、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP),テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA),テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素樹脂が用いられている。これらのフッ素樹脂を接液面にコーティングしたポンプは、接液面の洗浄性が高いため、洗浄が困難な液体、例えば、接着剤,インク等の粘着性・固着性が高い液体に対しても使用することができる。
【0048】
ところが、上記したフッ素樹脂は、高絶縁体で静電気を他に逃がすことができずに帯電し易いため、フッ素樹脂コーティングを施した接液面には、静電気が帯電し易かった。このため、フッ素樹脂コーティングを施したポンプを高分子溶液等の特殊な溶液に使用した場合、静電気によって溶液の物性が変化したり、あるいは、引火する等の問題が発生していた。
【0049】
このような問題を解決するため、導電材を添加することにより体積抵抗率及び表面抵抗率を低下させたフッ素樹脂をポンプの接液面にコーティングしてもよい。このように構成することで、高い洗浄性を保持しながら静電気の帯電を防止できるため、高分子溶液等の特殊な溶液に対しても使用することができる。
【0050】
なお、フッ素樹脂に添加する導電材として、カーボン系(カーボンブラック等)フィラー,金属系(銅,ニッケル等)フィラー,金属酸化物系(酸化チタン等)フィラー,蒸着系(無機ガラス等)フィラー等があり、これらの導電材を添加することにより、体積抵抗率及び表面抵抗率が1010Ω・cm以上であるものを106〜109Ω・cmに低下させることができるため、静電気の帯電を防止することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上、説明したところから明らかなように、請求項1に記載の発明においては、ロータリポンプを運転して洗浄液をポンプ室で流動させることによりメカニカルシール部内を洗浄する際、ポンプ室の洗浄液が第1流入溝及び第2流入溝を通ってメカニカルシール部に浸入し易く、また、メカニカルシール部内に浸入した洗浄液は、第2流出溝及び第1流出溝を通って再びポンプ室に流出し易くなる。このように、メカニカルシール部内での洗浄液の液交換の効率が向上するため、ロータリポンプを分解することなく、メカニカルシール部内の洗浄を短時間で行うことができ、洗浄のための費用を削減することができる。
【0052】
また、請求項2に記載の発明においては、ロータリポンプを運転して洗浄液をポンプ室で流動させることによりメカニカルシール部内を洗浄する際、洗浄液が更にメカニカルシール部に浸入し易く、また、更にメカニカルシール部内から再びポンプ室に流出し易くなる。このため、メカニカルシール部内の洗浄をより短時間で行うことができ、洗浄のための費用を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ロータリポンプの全体の斜視図である。
【図2】 ロータリポンプのポンプ部の分解斜視図である。
【図3】 ロータリポンプの縦断面図である。
【図4】 図3のA−Aにおける横断面図とその側面図である。
【図5】 ポンプ室での駆動側ロータ,従動側ロータ及び流体物の動きを示す断面図である。
【図6】 従来のロータリポンプのメカニカルシール部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 ロータリポンプ
2 ポンプ部
3 駆動部
4 駆動シャフト
5 従動シャフト
8 吸入口
9 吐出口
12 シャフト挿通穴
13 第1流入溝
14 第1流出溝
15 流入誘導溝
16 流出誘導溝
17 ポンプ室
60 駆動側ロータ
61 従動側ロータ
65 メカニカルシール部
68 フローティングシート
69 シャフト貫通穴
70 第2流入溝
71 第2流出溝
Claims (2)
- 互いに逆方向に回転する2つのロータが内部に備えられ且つ流体物を吸入する吸入口及び吸入した流体物を吐出する吐出口が形成されるポンプ部と、前記2つのロータの回転を同期させるための駆動部と、前記ポンプ部から前記駆動部に亘って備えられ且つ前記ロータを軸支するシャフトと、から構成されると共に、前記ポンプ部と前記駆動部との間に、前記ポンプ部内の流体物が前記ポンプ部外に漏れ出すことを防止するためのメカニカルシール部を備えたロータリポンプにおいて、
前記ポンプ部内に形成されるポンプ室の駆動部側の壁面には、前記シャフトが挿通されるシャフト挿通穴が形成されると共に、前記メカニカルシール部は、前記シャフトが貫通するシャフト貫通穴が形成されるフローティングシートを有し、
前記シャフト挿通穴の前記吐出口側及び吸入口側の周面には、前記流体物が流入する第1流入溝及び前記流体物が流出する第1流出溝がそれぞれ形成されると共に、前記シャフト貫通穴の前記第1流入溝及び第1流出溝と対応する位置の周面には、前記流体物が流入する第2流入溝及び前記流体物が流出する第2流出溝がそれぞれ形成されていることを特徴とするロータリポンプ。 - 前記ポンプ室の駆動部側の壁面には、前記流体物を前記第1流入溝に流入し易くする流入誘導溝及び前記流体物を前記第1流出溝から流出し易くする流出誘導溝が、それぞれ第1流入溝及び第1流出溝に連通して形成されていることを特徴とする請求項1記載のロータリポンプ。
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