JP3758995B2 - 脂取りシートおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、顔面に浮き出した皮膚の脂分(皮脂分)を拭き取るための化粧用脂取りシートなどに使用できる脂取りシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
顔面、特に鼻、頬、額、眉間等の部位に浮き出した皮脂分を拭き取って顔面を清浄に保ったり、化粧料の馴染み及びのりを良くすることを目的として、様々なタイプの化粧用脂取り紙が従来から使用されている。脂取り紙の中でも、最も一般的に使用されている脂取り紙は、麻、合成パルプ等の吸脂性を有する植物繊維から得られた紙類である。
これらの紙類からなる脂取り紙は、高い吸脂性を有しているが、その反面、使用した繊維材料が硬く、また表面粗さが粗いため、皮膚に対する刺激が強いという欠点があった。また、使用した際に皮脂分の吸収状態、すなわち、拭き取りの効果を容易かつ正確に確認できないという問題を有していた。
そこで、これらの問題を解決するため、実開平4−45591号公報、特開平6−319664号公報、実開平5−18392号公報、特公昭56−8606号公報等の考案または発明が提案されているが、いずれも充分に満足できる程度にまで、皮膚に対する刺激を和らげるとともに、拭き取り効果を容易かつ正確に確認できなかった。そのため、依然として、皮膚に対する刺激が弱く、拭き取り効果を容易かつ正確に確認できるものが求められている。
【0003】
上記のような繊維材における課題を解決する為、特開平11−239517号公報では、紙類ではなく、樹脂フィルムを用いた脂取りシートが提案されている。この脂取りシートは、プラスチックフィルムを延伸し、多孔質化したものであり、表面が滑らかで、吸脂性を持ち、かつ皮脂分を吸脂した際に透明性が向上するため、その拭き取り効果を容易かつ正確に確認できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この脂取りシートは、その製法上、吸脂部の隙間がシート間を連通しており、吸脂した皮脂分がシート間を浸透して拭き取り面と反対の面に染み出すことがある。そのため、脂分が使用者の手に付着して、手がべたつくという問題があった。また、この脂取りシートの製造方法では、延伸工程等の張力がかかる工程を通過するため工程中に避け等が発生することがあり、フィルム強度を高くしなければならなかった。そのため、工程中の引裂け、破断を防ぐため、強度の高い樹脂フィルムを使用する必要があった。その結果、使用者が容易にカットできるロールタイプの脂取りシートに使用するのが困難になる等、用途展開が困難であった。
【0005】
本発明は、吸脂性に優れ、かつ、拭き取り面と反対の面への皮脂の染み出しがなく、目的に応じて使用する樹脂フィルムの物性を自由に選択できる脂取りシートを提供することを目的とする。さらに、吸脂した際に拭き取り効果を容易かつ正確に確認できる脂取りシートを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願請求項1の脂取りシートは、樹脂フィルム基材の少なくとも片面に、多孔質である多孔質層が形成されているものであって、前記多孔質層は、平均粒子径が0.01〜20μmの微粒子と樹脂バインダとを含むものである。
また、本願請求項2の脂取りシートは、一方の面側よりも他方の面側に、平均粒子径0.01〜20μmの微粒子が多く含まれた樹脂層である。
また、前記微粒子を構成する成分と前記樹脂バインダとは透明であり、かつ前記多孔質層は前記微粒子を構成する成分および前記樹脂バインダよりも透明性が低いことが好ましい。
また、前記多孔質層の厚みは、1〜100μmであることが好ましい。
また、前記樹脂フィルム基材は、透明であることが好ましい。
また、前記多孔質層が前記樹脂フィルム基材の片面に形成され、視覚性、表面粗さから選ばれる少なくとも1つによって、樹脂フィルム基材面と多孔質層とが区別されることが好ましい。
また、前記樹脂フィルム基材は無孔質であり、多孔質層表面から吸脂した脂分を浸透させないことが好ましい。
また、前記樹脂フィルム基材は、有機フィラーおよび/または無機フィラーを含むことが好ましい。
また、前記微粒子は、無機微粒子であることが好ましい。
また、当該脂取りシートの厚みは、5〜200μmであることが好ましい。
また、該脂取りシートは、ロール状に巻回されることができる。
【0007】
本願請求項12の脂取りシートの製造方法は、樹脂フィルム基材の少なくとも片面に、平均粒子径0.01〜20μmの微粒子が水系または溶剤系樹脂溶液中に分散した稀釈樹脂溶液を塗布し、乾燥させて多孔質層を形成して脂取りシートを製造することを特徴とする。
また、本願請求項13の脂取りシートの製造方法は、水系または溶剤系稀釈樹脂溶液を、樹脂が接着しないように表面処理が施された離型紙上に塗布し、乾燥させることによって樹脂フィルム基材を得て、この樹脂フィルム基材に、平均粒子径0.01〜20μmの微粒子が水系または溶剤系樹脂液中に分散した稀釈樹脂溶液を塗布し、乾燥させて多孔質層を形成させ、この多孔質層が形成された樹脂基材フィルムを前記離型紙から剥離して脂取りシートを製造することを特徴とする。
また、本願請求項14の脂取りシートの製造方法は、樹脂が接着しないように表面処理が施された離型紙に、平均粒子径0.01〜20μmの微粒子が水系または溶剤系樹脂液中に分散した稀釈樹脂溶液を塗布し、乾燥させ、得られた乾燥物を離型紙から剥離して脂取りシートを製造することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態例)
本発明の第1実施形態の脂取りシートについて説明する。第1実施形態の脂取りシートは、本願請求項1の脂取りシートであって、樹脂フィルム基材の少なくとも片面に、多孔質である多孔質層が形成されたものである。この多孔質層は、多孔質であることによって脂分を吸収できる。
多孔質層は、平均粒子径が0.01〜20μmの微粒子と樹脂バインダとを含む。微粒子は、多孔質化するために用いられ、樹脂バインダは微粒子を固定するのに用いられる。
なお、ここで、平均粒子径とは、重量平均粒子径のことである。
多孔質層の厚みは、1〜100μmであることが好ましい。1μm未満であると、透明性向上が困難となることがあり、100μmを超えると、吸脂できる量が多くなりすぎて吸脂時に容易に透明性が向上しないことがある。
【0009】
多孔質層に含まれる微粒子の平均粒子径は、作業性および多孔質層表面の滑らかさの観点から0.01〜20μmである。0.01μm未満であることにより、脂取りシートを製造する際の作業性が悪化し、20μmを超えることにより、多孔質層表面が粗くなることがあり、使用時にざらついた感触を与えてしまう。また、多孔質層の隙間が大きくなりすぎて、吸脂時に容易に透明性が向上しない。
また、微粒子は多孔質であってもよいし、無孔質であってもよい。また、有機微粒子であってもよいし、無機微粒子であってもよい。しかしながら、各種加工条件下で安定性が高く安価である点から、無機微粒子であることが好ましい。その中でも、無機微粒子自体が吸脂性を持ち、かつ肌に対する刺激性が少ない点から多孔性であることが好ましく、多孔質の二酸化ケイ素(多孔質シリカ)が特に好ましい。
【0010】
樹脂バインダとしては、任意の樹脂を使用できるが、例えばポリウレタン、フェノール樹脂、ポリウレア、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリスルフィド、ポリビニルエステル、ポリアセタール、フッ素系樹脂などが挙げられる。樹脂バインダには、顔料、染料などの添加剤が含まれていてもよい。
【0011】
このような樹脂バインダの量は、微粒子の組成、比重や見かけ比重、粒子径、微粒子自体の細孔の有無などによって多孔質層の性質が変化するため、限定することは容易ではないが、樹脂バインダ量を多くしすぎると、微粒子間の隙間が埋まってしまい、容易に透明性が向上しないことがあり、少なくしすぎると微粒子間の結合が弱くなり多孔質層の形成が困難となることがある。そのため、吸脂性を持たせ、拭き取り効果が容易かつ正確に確認できるように、微粒子と樹脂バインダとの比率を調整して任意の空間率の多孔質層を形成させることが好ましい。
【0012】
微粒子と樹脂バインダとによって形成された多孔質層は、吸脂すると透明性が向上する。また、濃色化、鮮明色化し、光沢が向上する。これは、吸脂前では、多孔質層は多孔質化によって微粒子と微粒子との間に隙間が形成されおり、この隙間によって光が乱反射するので透明性が低くなるが、吸脂すると隙間が脂分で満たされたり、脂取りシート表面が脂分で被覆されるため、乱反射が抑制されて透明性が向上したり、屈折率が変化し、濃色化、鮮明色化、光沢が向上するなどして視覚的に変化するためである。
また、微粒子を構成する成分と樹脂バインダとは透明であり、多孔質層は微粒子および樹脂バインダよりも透明性が低いことが好ましい。微粒子を構成する成分と樹脂バインダとは透明であり、多孔質層は微粒子および樹脂バインダよりも透明性が低いと、多孔質層が吸脂した際に、透明性がさらに向上し、さらに濃色化、鮮明色化し、光沢がさらに向上する。
【0013】
このような多孔質層が表面上に形成される樹脂フィルム基材としては特に限定されないが、樹脂フィルム基材が透明であることが好ましい。樹脂フィルム基材が透明であると、多孔質層の透明性が向上した際に脂取りシート全体の透明性が向上するので、拭き取り効果をさらに容易かつ正確に確認できる。
【0014】
このような樹脂フィルム基材としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリウレア、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリスルフィド、ポリビニルエステル、ポリアセタール、フッ素系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリ塩化ビニルなどの脆性樹脂が好ましい。ポリ塩化ビニルなどの脆性樹脂を樹脂フィルム基材として使用すると、最終的に得られる脂取りシートを容易に引き裂くことができる。
また、樹脂フィルム基材の材料と樹脂バインダの材料とが同じであってもよい。
【0015】
また、樹脂フィルム基材中には、有機フィラーおよび/または無機フィラーを添加することが好ましい。樹脂フィルム基材中に有機フィラーおよび/または無機フィラーを添加すると、樹脂フィルム基材をさらに脆性的にして、最終的に得られる脂取りシートをさらに容易に引裂くことができる。有機フィラーおよび無機フィラーとしては、球状、繊維状、鱗片状等いずれの形状のものであってもよい。
また、有機フィラーおよび/または無機フィラーを含有する場合には、吸脂した皮脂が樹脂フィルム基材中を浸透しないように、その添加量を調整することが好ましい。有機フィラーおよび/または無機フィラーの添加量は、樹脂フィルム基材の組成、厚み及び添加物の組成、大きさなどにもよるが、例えば、樹脂フィルム基材が30μmのポリウレタン樹脂シートであり、有機フィラーおよび/また無機フィラーとして3μmのガラス粒子を用いた場合には、ポリウレタン樹脂の重量に対し、ガラス粒子を10〜80重量%程度添加することが好ましい。
【0016】
また、樹脂フィルム基材は、吸脂した際の多孔質層の透明性向上を阻害せず、拭き取り効果を容易に確認できれば特に制限はなく、無孔質、多孔質のいずれであってもよいが、無孔質フィルムを用いることが好ましい。無孔質フィルムを用いると、吸脂時に脂分が樹脂フィルムを浸透して拭き取り面と反対の面に染み出すことがなく、手に付着して不快感を与えることがない。
【0017】
また、樹脂フィルム基材は、延伸、未延伸のいずれであってもよく、製造面、コスト面等から適宜選択することが好ましい。また、シートタイプ、ロールタイプなどの脂取りシートの製品形態から適宜選択することが好ましい。なお、ここで、ロールタイプとは、消費者に提供する段階でシート状の脂取りシートを巻きロール状にしたものをいい。シートタイプとはあらかじめ設定した大きさにカットしたものをいう。
また、拭き取り効果をさらに容易かつ正確にできるようにするため、樹脂フィルム基材の色相を多孔質層の色相と全く異なるようにしてもよい。ただし、この場合、多孔質層の透明性の低い部分のむらが目立たないようにする必要がある。
【0018】
脂取りシートにおいて、樹脂フィルム基材の片面のみ多孔質層を形成する場合には、吸脂前であっても使用者が樹脂フィルム基材面と多孔質層面とを容易に判別できる様に、染料や顔料などの着色剤、柔軟剤などの添加剤を樹脂フィルム基材や多孔質層に添加して、これら2層の視覚性、表面粗さから選ばれる1つによって、樹脂フィルム基材面と多孔質層面とが区別されることが好ましい。
ここで、視覚性とは、色相、光沢、光線透過性、光線反射性など視覚的に判別できることをいう。
【0019】
また、脂取りシートの厚みは5〜200μmであることが好ましい。5μm未満では、脂取りシートの使用時の取り扱いが困難となることがあり、200μmを超えると、大きくなりすぎて携帯性などが低下することがある。
【0020】
このような脂取りシートは、ロール状に巻かれており、かつ任意の部分で引き裂くことができることが好ましい。このような製品形態は、ロールタイプといい、コンパクトで、かつ簡単に必要量を取り出すことができる。このようなロールタイプでは、シートを簡単に引裂けることが重要となり、シートの強度が弱いことが好ましい。
【0021】
次に、脂取りシートの製造方法について説明する。脂取りシートの製造方法では、樹脂フィルム基材の少なくとも片面に、平均粒子径0.01〜20μmの微粒子が水系または溶剤系樹脂溶液中に分散した稀釈樹脂溶液を塗布し、乾燥させて多孔質層を形成する。稀釈樹脂溶液を塗布する方法は特に制限されない。
ここで、水系または溶剤系樹脂溶液とは、水または溶剤に樹脂バインダが溶解した溶液のことである。この樹脂バインダには、必要に応じて、架橋剤、触媒、顔料、界面活性剤など任意の添加剤を添加してもよい。
【0022】
上述した第1実施形態の脂取りシートにあっては、樹脂フィルム基材の少なくとも片面に、多孔質である多孔質層が形成されているものであり、この多孔質層の多孔質によって脂分を十分に吸収できる。また、多孔質層が吸脂すると透明性が向上したり、濃色化、鮮明色化し、光沢が向上するので、拭き取り効果を容易かつ正確に確認できる。また、樹脂フィルム基材は脂分を浸透しないので、使用者の手に脂分が付着することがなく、不快感を与えることがない。また、樹脂フィルム基材を自由に選択できるので、シートの引裂き強度を下げることができ、ロールタイプの製品形態にも使用できる。その結果、用途展開を広げることができる。
また、多孔質層は、平均粒子径が0.01〜20μmの微粒子と樹脂バインダとを含むので、微粒子の間に隙間が生じ、これを樹脂バインダによって固定するので、容易に多孔質化することができる。
また、微粒子を構成する成分と樹脂バインダとは透明であり、かつ多孔質層は前記微粒子を構成する成分および前記樹脂バインダよりも透明性が低いと、多孔質層が吸脂した際に、多孔質の隙間に脂分が満たされて、多孔質化によって生じていた可視光の乱反射や吸収が抑制され、多孔質層の透明性がさらに向上したり、さらに濃色化、鮮明色化したり、光沢がさらに向上するなどして視覚的にさらに変化する。その結果、拭き取り効果をさらに容易かつ正確に確認できる。
【0023】
また、多孔質層の厚みは、1〜100μmであると、多孔質層が吸脂した際に、多孔質層はさらに容易に透明性が向上する。
また、微粒子は、無機微粒子であると、加工安定性に優れているので、生産性が向上し、かつ安価であるため、コストが低下する。
また、樹脂フィルム基材は、透明であると、多孔質層が吸脂した際に、脂取りシート全体の透明性がさらに向上するので、拭き取り効果をさらに容易かつ正確に確認できる。
また、多孔質層が樹脂フィルム基材の片面に形成され、視覚性、表面粗さから選ばれる少なくとも1つによって、樹脂フィルム基材面と多孔質層とが区別されていると、使用者が拭き取り面を間違えることがない。
また、前記樹脂フィルム基材は無孔質であり、多孔質層表面から吸脂した脂分を浸透させないと、多孔質層が吸脂した脂分が使用者の手にさらに付着しにくくなる。
また、脂取りシートの厚みは、5〜200μmであると、脂取りシートの大きさが大きすぎず、また小さすぎないので、取り扱い性、携帯性が向上する。
また、脂取りシートは、ロール状に巻かれており、かつ自由な部分で引裂くことができると、使用者の取り扱い性がさらに向上する。
また、樹脂フィルム基材は、有機フィラーおよび/または無機フィラーを含むと、引き裂き強度がさらに低下するので、脂取りシートを容易に引き裂くことができ、使用者の取り扱い性がさらに向上する。
【0024】
また、上述した第1実施形態の脂取りシートの製造方法にあっては、樹脂フィルム基材の少なくとも片面に、平均粒子径0.01〜20μmの微粒子が水系または溶剤系樹脂溶液中に分散した稀釈樹脂溶液を塗布し、乾燥させて多孔質層を形成すると、容易に樹脂基材フィルムの上に多孔質層を形成できるので、多孔質層の配合の自由度を高くできる上に、脂取りシートを容易に製造できる。製造時において、樹脂フィルム基材の強度は必ずしも必要ない。
【0025】
また、上述した第1実施形態の脂取りシートは、他の方法で製造してもよい。他の製造方法では、水系または溶剤系稀釈樹脂溶液を、樹脂が接着しないように表面処理が施された離型紙上に塗布し、乾燥させることによって樹脂フィルム基材を得て、この樹脂フィルム基材に、平均粒子径0.01〜20μmの微粒子が水系または溶剤系樹脂液中に分散した稀釈樹脂溶液を塗布し、乾燥させて多孔質層を形成させ、この多孔質層が形成された樹脂基材フィルムを前記離型紙から剥離して脂取りシートを製造する。
【0026】
このような製造方法では、離型紙上に樹脂フィルム基材層を形成した後、樹脂フィルム基材層の上に、多孔質層が形成されるため、樹脂フィルム基材層と多孔質層が明確に分離されている。そのため、安定した性能の脂取りシートが得られ、また、吸脂時に、樹脂シート基材層を脂分が浸透し拭き取り面と反対の面に染み出すことを防止できる。
なお、これらの製造方法によって製造された脂取りシートはロールタイプのみならず、シートタイプの製品にも使用できる。また、脂取りシートをロールタイプの製品形態とする場合には、脂取りシートの巻き取りは適宜行えばよい。
【0027】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態の脂取りシートについて説明する。第2実施形態の脂取りシートは、本願請求項2の脂取りシートであって、一方の面側よりも他方の面側に、平均粒子径0.01〜20μmの微粒子が多く含まれた樹脂層からなるものである。他方の面側に微粒子が多く含まれることによって、他方の面側が多孔質となり、優れた吸脂性が発現する。また、一方の面側には微粒子が少なく、多孔質ではないため、吸脂した脂分が拭き取り面と反対の面に染み出しにくい。
なお、この脂取りシートに用いられる樹脂としては、例えばポリウレタン、フェノール樹脂、ポリウレア、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリスルフィド、ポリビニルエステル、ポリアセタール、フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0028】
第2実施形態の脂取りシートの製造方法では、樹脂が接着しないように表面処理が施された離型紙に、平均粒子径0.01〜20μmの微粒子が水系または溶剤系樹脂液中に分散した稀釈樹脂溶液を塗布し、乾燥させ、得られた乾燥物を離型紙から剥離して脂取りシートを製造する。このようにすると、水系または溶剤系稀釈樹脂溶液を離型紙に塗布し、乾燥させた際に、樹脂バインダの大部分が離型紙と接する面側に沈み込む。そして、フィルム化すると、離型紙と接触している面側は微粒子が少なく、離型紙と接触していない面側は微粒子が多い樹脂層が形成される。
このような製造方法では、工程が簡素化されるので、脂取りシートを容易に製造できる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
(実施例1)
厚み50μの透明なポリエステルフィルム(延伸有り)上に、下記処方1記載の微粒子含有樹脂溶液を100g/m2 となるよう均一塗布し、120℃熱風乾燥して脂取りシートを得た。得られた脂取りシートの厚みは80μmであった。また、多孔質層の厚みは30μmであった。
(処方1)
ポリエステル系ポリウレタン 100重量部(固形分30重量%の溶剤稀釈溶液)
メチルエチルケトン 80重量部
多孔質シリカ 20重量部(平均粒子径;3μm、見かけ比重;0.17)
【0030】
[実施例2]
離型紙上にポリ塩化ビニル樹脂溶液(固形分20重量%の溶剤稀釈溶液)を100g/m2 となるよう均一塗布し、120℃熱風乾燥して、樹脂フィルム基材を得た。引き続き、この樹脂フィルム基材上に前記処方1記載の微粒子含有樹脂溶液を100g/m2 となるよう均一塗布し、120℃熱風乾燥した後、離型紙から剥離して脂取りシートを得た。
得られた脂取りシートの厚みは45μmであった。また、多孔質層の厚みは15μmであった。
【0031】
[比較例1]
厚み50μの透明なポリエステルフィルム上に下記処方2記載の粒子含有樹脂溶液を100g/m2 となるよう均一塗布し、120℃熱風乾燥して脂取りシートを得た。
(処方2)
ポリエステル系ポリウレタン 100部(固形分30重量%の溶剤稀釈溶液)
メチルエチルケトン 80部
二酸化ケイ素 30部(平均粒子径;25μm、見かけ比重;0.30)
【0032】
[比較例2]
脂取り紙として市販されているプラスチック材料の多孔質延伸フィルムをそのまま使用した。
【0033】
これらの脂取りシートについて、下記の方法で評価した。その評価結果を表1に示す。
[拭き取り効果の確認性評価]
脂取りシートを5×7cmにカットしたサンプルを作製し、実際に脂取りを行い、多孔質層の透明性向による拭き取り効果の確認性を目視で評価した。その際の判定は次の通りである。
○ ;非常に確認し易い、△;確認し易い、×;確認しにくい
[皮脂の染み出し性評価]
また、皮脂拭き取り面と反対の面への皮脂分の染み出しの有無を評価した。その際の判定は次の通りである。
○;染み出しなし、×;染み出しあり
[肌触り評価]
また、脂取りシートの肌触りを評価した。
○ ;肌触り良好、△;許容できる程度、×;ざらつき不快
[引裂け性評価]
また、脂取りシートの引裂け性を、通常のペーパーナイフの使用方法に準じて、二つ折りのシートの引き裂きを試みて、その後の状態を引裂き時の手応え、および切れた状態を目視で評価した。その際の判定は次の通りである。
○ ;容易に引裂け可能、×;引裂けしにくい
【0034】
【表1】
【0035】
実施例1および実施例2では、樹脂フィルム基材上に平均粒子径が0.01〜20μmの微粒子を含む多孔質層が形成されているので、拭き取り効果の確認性、皮脂の染み出し性、肌触りに優れていた。特に、実施例2では、樹脂フィルム基材としてポリ塩化ビニル樹脂を用いたので引裂け性が良好であった。
一方、比較例1では、平均粒子径が20μmを超える微粒子を使用したので、拭き取り効果の確認性、肌触りが劣っていた。
また、比較例2では、多孔質延伸フィルムを使用したため、皮脂の染み出しが認められた。
【0036】
【発明の効果】
本発明の脂取りシートによれば、優れた吸脂性を有している上に、脂分が拭き取り面と反対の面に浸透しないので、使用者の手を汚さない。また、引裂け性が高いので、使用者が任意の大きさに容易にカットできる。また、このような脂取りシートは、ロールタイプ、シートタイプ等の様々な商品展開が可能となる。また、多孔質層によって、拭き取り効果を容易かつ正確に確認できる。
また、本発明の脂取りシートの製造方法によれば、上述した脂取りシートを容易に製造できる。
Claims (14)
- 樹脂フィルム基材の少なくとも片面に、多孔質である多孔質層が形成されている脂取りシートであって、
前記多孔質層は、平均粒子径が0.01〜20μmの微粒子と樹脂バインダとを含むことを特徴とする脂取りシート。 - 一方の面側よりも他方の面側に、平均粒子径0.01〜20μmの微粒子が多く含まれた樹脂層からなることを特徴とする脂取りシート。
- 前記微粒子を構成する成分と前記樹脂バインダとは透明であり、かつ前記多孔質層は前記微粒子を構成する成分および前記樹脂バインダよりも透明性が低いことを特徴とする請求項1に記載の脂取りシート。
- 前記多孔質層の厚みは、1〜100μmであることを特徴とする請求項1または3に記載の脂取りシート。
- 前記樹脂フィルム基材は、透明であることを特徴とする請求項1,3,4のいずれかに記載の脂取りシート。
- 前記多孔質層が前記樹脂フィルム基材の片面に形成され、視覚性、表面粗さから選ばれる少なくとも1つによって、樹脂フィルム基材面と多孔質層面とが区別されることを特徴とする請求項1,3〜5のいずれかに記載の脂取りシート。
- 前記樹脂フィルム基材は無孔質であり、多孔質層表面から吸脂した脂分を浸透させないことを特徴とする請求項1,3〜6のいずれかに記載の脂取りシート。
- 前記樹脂フィルム基材は、有機フィラーおよび/または無機フィラーを含むことを特徴とする請求項1,3〜7のいずれかに記載の脂取りシート。
- 前記微粒子は、無機微粒子であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の脂取りシート。
- 当該脂取りシートの厚みは、5〜200μmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の脂取りシート。
- 当該脂取りシートは、ロール状に巻回されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の脂取りシート。
- 樹脂フィルム基材の少なくとも片面に、平均粒子径0.01〜20μmの微粒子が水系または溶剤系樹脂溶液中に分散した稀釈樹脂溶液を塗布し、乾燥させて、多孔質層を形成することを特徴とする脂取りシートの製造方法。
- 水系または溶剤系稀釈樹脂溶液を、樹脂が接着しないように表面処理が施された離型紙上に塗布し、乾燥させることによって樹脂フィルム基材を得て、この樹脂フィルム基材に、平均粒子径0.01〜20μmの微粒子が水系または溶剤系樹脂液中に分散した稀釈樹脂溶液を塗布し、乾燥させて多孔質層を形成させ、この多孔質層が形成された樹脂基材フィルムを前記離型紙から剥離して脂取りシートを製造することを特徴とする脂取りシートの製造方法。
- 樹脂が接着しないように表面処理が施された離型紙に、平均粒子径0.01〜20μmの微粒子が水系または溶剤系樹脂液中に分散した稀釈樹脂溶液を塗布し、乾燥させ、得られた乾燥物を前記離型紙から剥離して脂取りシートを製造することを特徴とする脂取りシートの製造方法。
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