JP3758051B2 - 中空円筒体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空円筒体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、金属板からなる部品を複雑な形状に加工しようとすると、レーザ、切削、研削、プレスなどの加工方法によりその加工が行われている。例えば本願出願人による出願番号特願平6−16594号の明細書に開示される「流量制御回動弁及びその製造方法」があり、この製造方法によると、図9および図10に示すような流量制御回動弁のカラー102を形成するため、長方形の薄板からなる金属板をプレス加工などにより加工し、孔部114、115、116および凹部126、127を形成している。そして、例えば凹部126、127はパンチ(金型)を用いてつぶすように形成されると、その周囲には肉が逃げることにより盛上がり部126a、127aができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した特願平6−16594号の明細書に開示されるカラー102の凹部126、127をパンチなどにより形成すると、凹部126、127の周囲にできる盛上がり部126a、127aによって、若干の肉を逃がすことができるものの、所定深さになるまでパンチ加重を増大させた場合、パンチ自体に割れが生じ、所望のつぶし量を得ることができないという問題を生ずる。
【0004】
また、盛上がり部126a、127aが許容される高さを越えて盛上がると、後工程で盛上がり部126a、127aを削る必要が生じ、製造コストの増大を招くという問題がある。
さらに、切削加工により凹部126、127を加工することも考えられるが、これによると加工費が高く製造コストが増大するという問題が新たに生ずる。
【0005】
本発明の目的は、複雑な形状の部品の精密加工性および生産性を向上させる中空円筒体の製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するための本発明は、請求項1記載の手段を採用する。
この手段によると、金属板に押圧部材を押圧し凹部を形成するとき、押圧方向に直交する面上の金属板の幅方向両側への金属流れが規制されることから、凹部を形成するときに押出される肉をこの二方向以外に逃がすことができる。これにより、押圧部材の加圧により押出される肉が十分に流れないことによる押圧部材への反力が減少することから、押圧部材に過剰な加重が加わることを防止できる。そのため押圧部材の破損を防ぐ効果がある。したがって、所望の深さを有する凹部を形成することができ、複雑な形状の部品の精密加工性および生産性を向上させる効果がある。
【0007】
請求項2記載の手段を採用することにより、金属板の凹部はローラ圧延により形成され、ローラ軸方向の金属流れが規制されることから、凹部を形成するときに流れようとする肉をローラ進行方向に逃がすことができる。これにより、所望の深さを有する凹部を形成することができ、さらに凹部の底部に孔部を形成する工程と、この孔部の凹部側周囲に凸部を形成する工程とを含むことによって、複雑な形状の部品の精密加工性をより向上できる効果がある。また、リボン状を有し圧延の前後に巻回される金属板を用いることにより、搬送、保管が容易になるため、さらに生産性を向上させる効果がある。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
平板から中空円筒体を形成する製造方法の一実施例を図1〜図7に基づいて説明する。
図1は、中空円筒体としてのカラー2の湾曲前の展開図を示すもので、まずこのカラー2の製造方法について説明する。
【0010】
図1および図2に示すように、ステンレス鋼板からなる湾曲前のカラー2は長方形状の薄板である。そして、長手方向に向かって幅方向を軸とするようにして湾曲されることにより、中空円筒体としてのカラー2が形成される。つまり、長手方向の辺を湾曲辺21とし幅方向の辺を非湾曲辺22として、図1において上下方向に丸めるようにしてカラー2が形成される。
【0011】
カラー2は、後述する圧延工程により形成される厚肉部2aおよび薄肉部2bをそれぞれ有する。厚肉部2aは湾曲辺21を長手方向の辺とする帯状に形成されており、湾曲前のカラー2の幅方向両側にそれぞれ位置する。一方、薄肉部2bはこの厚肉部2aを除いた部分、すなわち厚肉部2aに挟まれる部分に位置している。これらは、薄板のほぼ中央をその長手方向に向かって後述するローラ41により押しつぶすことにより形成される。
【0012】
カラー2の薄肉部2bには矩形状のポート孔が三箇所に形成され、このポート孔のうちの二つが流出ポート14、15、残りの一つが流入ポート16にそれぞれ割当てられる。これらのポート孔は図1で上方から流出ポート14、流出ポート15、流入ポート16の順に並び、後述するポート孔抜工程のせん断により形成される。
【0013】
図2に示すように、流出ポート14、15の周囲にはバーリング部14a、15aがそれぞれ形成される。このバーリング部14a、15aは薄肉部2bより所定高さだけ高くなるように形成される凸部であり、その高さは例えば0.5mmに設定される。このように流出ポート14、15の外周を薄肉部2bより一段高くするようにバーリング部14a、15aを形成することによって、流出ポート14、15の周囲に位置する薄肉部2bと流出ポート14、15との間を区切ることになる。これにより流出ポート14、15の周囲を異物受入用の凹部2cとして用いることができる。つまり、加工上では薄肉部2bである部分が、製品上では凹部2cとして用いられる。そして、後述する空気流量制御弁のカラーとしてこのカラー2が用いられた場合、流入空気中に混在する塵などをこの異物受入用の凹部2cに捕獲し溜込むことができる。
【0014】
一方、非湾曲辺22側には、前述した厚肉部2aと薄肉部2bとの境界付近において四隅に切欠部24がそれぞれ形成される。この切欠溝24を形成することにより厚肉部2aの両端が厚さ方向に変形可能となるため、カラー2が筒状にまるめて形成されたとき、この厚肉部2aの両端をより径方向内側に折曲げることができる。
【0015】
次に、湾曲前のカラー2の圧延工程を図3〜図7に基づいて説明する。
図3に示すように、湾曲前のカラー2は、異形圧延材料51に対してポート孔抜、バーリング、外形抜き、切断などの各加工が施され形成される。
この異形圧延材料51は、図4に示すようなロール形状に巻かれたリボン材50をローラ圧延することにより形成される。ここで、ローラ圧延前のリボン材50の板厚はt0 に設定されている。
【0016】
このリボン材50を図5に示すようなローラ圧延機の押圧部材としてのローラ41により所定深さの凹部としての長溝52ができるように圧延する。ローラ圧延機にはこのローラ41の他、リボン材50が所定長さ分だけ幅方向に変形するように規制する規制ローラ42を備えている。このようなローラ41、42を備えるローラ圧延機によってリボン材50に形成される長溝52が所定深さdになるように数回に渡って圧延される。なお、この圧延回数は、リボン材50の材質により左右され、例えば本実施例のステンレス鋼板では二回である。また硬度が低く伸展性が良好な材質よりリボン材がなる場合には一回でも良い。また、圧延工程の前後に図4に示すようなロール形状にリボン材50を巻くことにより、搬送を容易にし保管スペースを削減することができる。
【0017】
ここで、リボン材50が二回に渡ってローラ圧延される様子を図7に基づいて説明する。図7に示される破線による形状は圧延前のリボン材50の断面形状を示すものであり、二点鎖線で示す形状は圧延後の異形圧延材料51の断面形状を示すものである。
まず、圧延前のリボン材50をローラ41により所定深さdより浅く長溝ができるように第一回目の圧延が施される。この第一回目の圧延により図7に示す一点鎖線の形状が形成され、このときの厚肉部2aに相当する板厚は圧延前のリボン材50の板厚t0 より大きく圧延後の異形圧延材料51の板厚tよりも小さくなるように設定される。このように第一回目の圧延の板厚を所定範囲に設定するためリボン材50の両側に位置する規制ローラ42を設けており、ローラ41によりつぶされるリボン材50の金属流れがこの規制ローラ42によって規制される。つまり、つぶされたリボン材50の肉が幅方向に逃げようとしても、幅方向の両端に位置する規制ローラ42により規制され、つぶされた肉が所定間隔以上逃げられない。これにより幅方向の逃げ量が規制されるため、幅方向に逃げられない肉が厚さ方向に逃げ、その結果厚さ方向に盛り上がる。そのため、リボン材50の肉厚t0 よりも大きな肉厚にすることができる。ここで、リボン材50の幅方向は特許請求の範囲に記載の「任意の相反する二方向」に相当する。
【0018】
この第一回目の圧延が終わると、第二回目のローラ圧延が施される。このとき、幅方向に位置する規制ローラ42の間隔は第一回目の圧延のときよりも広く設定される。そして第二回目のローラ圧延により所定深さdのつぶし量が得られるように圧延が施される。このとき第一回目のローラ圧延と同様、リボン材50の幅方向に肉が逃げようとするが、幅方向両側に位置する規制ローラ42によりその逃げ量が規制される。これにより、逃げた肉は板厚方向に盛り上がるためこの規制ローラ42の間隔を調整することにより所定の板厚tになるように板厚を設定することができる。このようにローラ41によりリボン材50の中央部分を長手方向に圧延することにより、リボン材50に厚肉部2aと薄肉部2bとを形成することができる。
【0019】
ローラ圧延によりつぶされた肉は長手方向および幅方向に逃げ、幅方向には長手方向より多く肉が逃げる。そのため、ローラ41により圧延するだけなく幅方向を規制ローラ42により規制することにより逃げた肉の幅方向の移動量を規制することができ、さらに板厚方向に肉を盛り上げることができる。したがって、従来、平板にパンチすることにより凹部を形成する場合に生じていた逃げた肉が四方に盛上がるということや、パンチ(金型)自体が割れるという問題を回避することができる。
【0020】
前述したように、二回に渡るローラ圧延によって所定深さdの長溝52が形成されると、この長溝52内に流出ポート14、15、流入ポート16がそれぞれ形成される。この各ポートの形成はポート孔抜工程によるせん断加工により行われる。各ポートが形成されると、流出ポート14、15の周囲にバーリング加工が施される。このバーリング加工によって流出ポート14、15の周囲にバーリング部14a、15aが形成され、前述したように流出ポート14、15とその周囲に位置する薄肉部2bとの間には薄肉部2bより一段高くなった凸状のバーリング部14a、bが位置することになる。
【0021】
バーリング加工が施されると、リボン状に形成されていたワ−クが所定長さに切断されるとともに所定の形状に外形抜きされる。このとき、前述した切欠溝24もともに形成される。このような各工程により湾曲前のカラー2が成形される。
次に、湾曲前のカラー2を所定の円筒状に曲げる工程を図3に基づいて説明する。
【0022】
湾曲前のカラー2は平板の状態を維持していることから、この平板状態からプレスにより前述したバーリング部14a、15aが径方向内側に位置するようにU字形状に曲げられる。これにより径方向断面形状において半円が形成される。U曲げされたワークをプレスによりさらにO字形状に曲げる。このO曲げにより所定の筒形状に形成され、カラー2の各加工が終了する。
【0023】
次に、前述したカラー2を用いた空気流量制御弁の構成を図8に基づいて説明する。図8には空気流量制御弁の軸方向組立断面図が示されている。
図8に示すように空気流量制御弁はガラス粉混入ナイロン樹脂成形体からなるハウジング1を有し、またハウジング1は両端開口円筒状のバルブ収容空間を形成するバルブハウジング部11を有する。このバルブハウジング部11の内周面11aには、前述したカラー2が密着するように設定されており、カラー2を介してバルブハウジング11の両端部に球軸受3が嵌入されている。これら球軸受3は回転軸4を回転自在に支持しており、弁体5が一対の球軸受3の間に位置し回転軸4に固定されている。
【0024】
弁体5の内側に位置する弁室6は、カラー2の流入ポート16およびハウジング部11の周壁に開口された流入孔10を通じて外部の空気流入空間に連通している。またこの弁室6は、カラー2の流出ポート14およびバルブハウジング部11の周壁に開口された主流出孔18を通じて外部の空気流出空間にも連通し、同様にカラー2の流出ポート15およびバルブハウジング部11の周壁に開口された副流出孔19を通じて図示しない流出用パイプにそれぞれ連通している。このような構成を採ることにより、主流出孔18および副流出孔19が弁体5の回動により開度調整され、これにより空気流量が制御される。
【0025】
このようにカラー2内には、弁体5が回動可能に収容されているため、例えばカラー2の内周壁に流入空気中に含まれる塵などが付着すると、カラー2の内周壁と弁体5の外周壁との僅かな隙間に塵が侵入し、弁体5の回動を妨げスティックさせるおそれがある。そのため、圧延加工とバーリング加工とにより形成される前述の薄肉部2bからなる異物受入用の凹部2cをカラー2の内周壁に設けることにより、これらの塵をこの凹部2c内に捕獲することができる。これにより、カラー2の内周壁に付着した塵がこの凹部2cによって捕獲されるため、カラー2の内周壁と弁体5の外周壁との間に塵が侵入するのを防止し弁体5のスティック等を防ぐことができる。
【0026】
以上説明したように本実施例によると、リボン材50に長溝を形成するときリボン材50の幅方向の金属流れが規制ローラ42により規制され、この幅方向以外の金属流れが許容されることから、長溝を形成するときに押出される肉をこの幅方向以外に逃がすことができる。これにより、ローラ41の加圧により押出される肉が十分に流れないことによるローラ41への反力が減少することから、長溝を形成するローラ41に過剰な加重が加わることを防止できる。そのため、ローラ41の破損を防ぐことができる。したがって、所望の深さを有する長溝、つまり薄肉部2bを形成することができ、この薄肉部2bにバーリング加工等を施すことで、より複雑な精密加工が可能となり、生産性を向上させる効果がある。
【0027】
また、本実施例によると、圧延の前後にリボン材50を巻回することにより、帯状に長く形成される異形圧延材料51の搬送、保管が容易になる。これにより、さらに生産性を向上させる効果がある。
さらに、本実施例によると、空気流量制御弁に用いられるカラー2の内周壁には、圧延加工とバーリング加工とにより形成される異物受入用の凹部2cが形成される。これにより、流入空気中に含まれる塵などがカラー2の内周壁に付着しても、この凹部2c内に塵などを捕獲することができる。したがって、カラー2の内周壁と弁体5の外周壁との間に塵が侵入するのを防止し弁体5のスティック等を防ぐ効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による中空円筒体の製造方法を適用して製造したカラーの展開図である。
【図2】図1に示すII−II線断面図である。
【図3】本実施例によるカラーの製造方法の各工程を示す説明図である。
【図4】本実施例のカラーの製造方法に用いられるリボン材の斜視図である。
【図5】本実施例のリボン材の圧延工程を示す説明図である。
【図6】圧延工程により圧延された異形圧延材を示す説明図である。
【図7】圧延工程によりリボン材が圧延される様子を示す説明図である。
【図8】本実施例の中空円筒体の製造方法より製造されたカラーを適用した流量制御回転弁の軸方向組立断面図である。
【図9】従来例による中空円筒体の製造方法を適用して製造した中空円筒体の展開図である。
【図10】図9に示すX−X線断面図である。
【符号の説明】
2 カラー (中空円筒体)
2a 厚肉部
2b 薄肉部
2c 凹部
14、15 流出ポート (孔部)
14a、15a バーリング部(凸部)
16 流入ポート
41 ローラ (押圧部材)
52 長溝 (凹部)
Claims (3)
- 金属板に押圧部材を押圧しながら圧延し凹部を形成する工程と、
前記凹部の底部に孔部を形成する工程と、
前記孔部の前記凹部側周囲にバーリング加工により凸部を形成する工程と、
前記凸部を形成した金属板を円筒状に曲げる工程とを含み、
前記凹部を形成するとき押圧方向に直交する面上の前記金属板の幅方向両端面の幅方向への金属流れが規制され、かつ前記金属板表面の幅方向の前記押圧部材に押圧されない箇所の前記押圧方向と反対側への金属流れが許容されることを特徴とする中空円筒体の製造方法。 - 前記凹部はローラ圧延により形成され、ローラ軸方向の金属流れが規制されることを特徴とする請求項1記載の中空円筒体の製造方法。
- 前記金属流れが前記金属板の幅方向の両端に配置された2個のローラにより規制されることを特徴とする請求項2記載の中空円筒体の製造方法。
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