JP3757312B2 - マグネシウム合金又はアルミニウム合金用塑性加工油及び該加工油を用いた加工方法 - Google Patents

マグネシウム合金又はアルミニウム合金用塑性加工油及び該加工油を用いた加工方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネシウム合金又はアルミニウム合金用塑性加工油、該加工油を用いた加工方法及び得られた加工品に関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム合金は、比較的新しい金属材料であり、リサイクル法の成立によってリサイクルしにくいプラスチック材料からの置き換え、マグネシウム合金の持つ軽量性を利用した携帯電話やノート型パーソナルコンピューターなどの筐体部分の材質などとして利用範囲が増加している材料である。
【0003】
マグネシウム合金の主成分であるマグネシウムは、アルカリ土類金属に属し、反応性の高い金属として知られている。マグネシウムを合金にした場合、材料の伸び率が低いなどの特性を有しているため、塑性加工、特に冷間加工性能が低いという欠点を有している。
【0004】
従って、従来の加工技術としては、ダイキャスト法やチクソモールド法にて母材を成形し、後工程で鉱物油を基油として添加剤(塩素系、硫黄系、油性向上剤、安定剤など)を配合した水不溶性加工油剤を用いて、切削・研削が主流である。
【0005】
ダイキャスト加工は、材料を熱して液状にし、型へ流し込み冷却後その型に沿った金属塊を得る方法であり、以下のような欠点を有している。即ち、一度熱するため、成形物のトータル加工コストが高くなる;原料を高温に熱するため、作業の危険性が高い;薄手の材料を成形する場合、液流れ(溶融金属の流動性)が悪くなり、目的の形状が得られにくい;型流れが悪いと気泡が入り、材料としての性能が低下する(一般には“す”が入ると称する)、特にマグネシウム合金は冷却速度が速いためこの現象が顕著である;型へ鋳込むために型の隙間に溶けた金属が流れ込み、冷えると“バリ”が発生するので、バリを除去する必要があり、特にマグネシウム合金の場合は粉塵爆発事故が発生しやすい;通常用いられる離型剤は、エッチングによっても完全に除去することが困難であり、成形物に残存する離型剤は耐食性塗装などの塗装に悪影響を与える;離型剤を除去するためのエッチングにより、寸法精度が低下する;肉厚が厚くなると内部応力による反りなどが発生する。また、チクソモールド法においても、離型剤を使用することによる悪影響がある、金型の寿命が短い、肉厚が厚くなると内部応力による反りなどが発生するなどの欠点を有している。
【0006】
後工程の、切削・研削の際や、塑性加工に用いられる加工油に関しては、マグネシウム合金は難加工材であるため、従来の加工油には添加剤として塩素系化合物が添加されている。しかし、当該塩素系化合物は焼却時に環境汚染物質であるダイオキシンを発生させる可能性が高いことが判っており、切削油の日本工業規格(JIS)も2000年末に改訂され、塩素系の規格が廃止されている。また、従来の加工油では、鉱物油を使用しているため、環境下に廃棄、排出された場合、その成分が分解されにくく、環境破壊に繋がる可能性を有しているという欠点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、生分解性に優れ、マグネシウム合金などの加工に適した塑性加工油及び塑性加工法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、下記の各項に係る発明を提供するものである。
項1 生分解性油脂を主成分とする、マグネシウム合金又はアルミニウム合金用塑性加工油組成物。
項2 (A)生分解性油脂、(B)防錆・潤滑剤及び(C)極圧添加剤を含有する項1に記載の組成物。
項3 (A)生分解性油脂が、植物油脂、動物油脂及び合成エステル並びにこれらの硬化油脂の少なくとも1種であり、
(B) 防錆・潤滑剤が、アニオン系界面活性剤及び酸化パラフィンの少なくとも1種であり、
(C)極圧添加剤が、(C')硫黄系油脂及び硫黄系合成ポリオレフィン並びに(C'')リン系化合物の少なくとも1種である項1に記載の組成物。
項4 (A)生分解性油脂を組成物全重量の50重量%以上含む項1に記載の組成物。
項5 組成物全量を100重量%とした場合、(A)成分の含有量が50〜90重量%であり、(B)成分の含有量が2〜30重量%であり、(C')成分の含有量が2〜30重量%であり、(C'')成分の含有量が2〜30重量%であり、(B)成分、(C')成分及び(C'')成分の合計含有量が10〜50重量%である項3に記載の組成物。
項6 さらに、(D)有機亜鉛化合物及び(E)有機モリブデン系化合物を含有する項2に記載の組成物。
項7 生分解性が、CEC(欧州規格諮問委員会)規格L-33-T-82による試験において60%以上である項1に記載の組成物。
項8 マグネシウム合金又はアルミニウム合金に、項1に記載の組成物を塗布した後に冷間プレス加工することを特徴とするマグネシウム合金又はアルミニウム合金の加工方法。
項9 比重が1.7以下であるマグネシウム合金の、プレス加工品。
項10 筐体が、項9記載のプレス加工品からなる移動情報端末。
項10 筐体が、請求項9記載のプレス加工品からなる移動情報端末。
項11 筐体が、請求項9記載のプレス加工品からなるノート型パソコン。
項12 筐体が、請求項9記載のプレス加工品からなる映像機器。
項13 筐体及び内部機構部品の少なくとも1種が、請求項9記載のプレス加工品からなるロボット。
項14 筐体が、請求項9記載のプレス加工品からなる情報記録及び/又は再生装置。
項15 内部機構部品が、請求項9記載のプレス加工品からなるゲーム機器。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の組成物は、(A)生分解性油脂、(B)防錆・潤滑剤及び(C)極圧添加剤を含有している。以下、各成分について説明する。
【0011】
(A) 生分解性油脂
本発明の、主成分となる生分解性油脂は、現在生分解性評価試験として公にされているCEC(欧州規格諮問委員会)規格L-33-T-82による試験で分解性が60%以上程度、好ましくは80%以上程度の油脂である。上記試験による分解性が67%以上であれば、CECにおいて公式に通常生分解性油として認められているので、本発明の組成物の分解性が上記規格による試験で67%以上であるのがさらに好ましい。
【0012】
本発明の(A)成分である油脂としては、脂肪酸類のグリセリンエステルを主成分とするものを用いることができ、植物油脂、動物油脂及び合成エステル、並びにこれらの硬化油脂を用いることができる。
【0013】
本発明における油脂とは、脂肪酸類のグリセリンエステルを主成分とするものを指し、植物油脂、動物油脂、合成油脂およびこれらの硬化油脂を包合する。
【0014】
植物油脂としては、ヤシ油、パーム油、オリーブ油、大豆油、ナタネ油、棉実油、アマニ油、ヒマワリ油、サフラワー油、コーン油、ゴマ油、ヒマシ油などが挙げられる。
【0015】
動物油としては、牛脂、豚脂、骨油、イワシ油、サバ油、サメ肝油などが挙げられる。
【0016】
合成エステルとしては、飽和あるいは不飽和脂肪酸と一価、及び多価アルコールから合成されるエステルが挙げられる。脂肪酸の炭素数は、特に限定されるものではないが、通常、8〜18程度が好ましい。
【0017】
合成エステルとしては、特に、合成油脂が好ましく、飽和あるいは不飽和脂肪酸とグリセリンから合成されるモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドなどのグリセリンエステル誘導体が挙げられる。脂肪酸の炭素数は、特に限定されるものではないが、通常、8〜18程度が好ましい。
【0018】
硬化油脂としては、上記植物油脂、動物油脂および合成油脂を水素添加することでそのアルキル鎖中の不飽和結合の全部或いは一部を飽和結合へ還元したものが挙げられる。
【0019】
(B) 防錆・潤滑剤
(B)成分としては、アニオン系界面活性剤、酸化パラフィンなど、公知の防錆・潤滑剤から、特に限定されず選択して用いることができる。
【0020】
アニオン系界面活性剤としては、石油スルホネイト及び合成スルホネイトなどが挙げられる。
【0021】
(B) 石油スルホネイトとしては、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、ジナフチルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩などが挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸のアルキル基としては、特に限定されることはないが、炭素数8〜18程度のアルキル基が好ましく、炭素数10〜14程度のアルキル基が好ましい。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、バリウム、マグネシウムなどが挙げられる。より具体的には、ナトリウムスルホネイト、カルシウムスルホネイトが挙げられる。
【0022】
合成スルホネイトとしては、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、ジアルキルナフタレンスルホン酸,そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩については、上記の石油スルホネイトの例示として記載されたものを用いることができる。ジアルキルナフタレンスルホン酸,そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等としては、アルキル基の炭素数が8〜18程度のものが挙げられ、アルカリ金属としてはナトリウム、カリウムなど、アルカリ土類金属としてはカルシウム、バリウム、マグネシウムなどが例示できる。アルカリ金属としては、カルシウムがより好ましい。より具体的には、ジノニルナフタレンスルホン酸及びその塩が挙げられる。
【0023】
酸化パラフィンとしては、炭素数20〜40程度のパラフィン系炭化水素を酸化させ、カルボキシル基などの極性基を付加したものであればよい。
【0024】
(C) 極圧添加剤
極圧添加剤としては、従来塑性加工油に用いられているものであれば、特に限定されず用いることができ、例えば、硫黄系油脂、硫黄系合成ポリオレフィン、リン系化合物を用いることができる。
【0025】
(C')硫黄系油脂及び硫黄系合成ポリオレフィン
硫黄系油脂及び硫黄系合成ポリオレフィンとしては、分子内に硫黄原子を有し、(A)成分に溶解又は均一に分散して、極圧性や優れた潤滑性を発揮しうるものであればよく、特に制限されず従来用いられている硫黄系極圧添加剤の中から適宜選択することができる。硫化油脂としては、(A)成分について例示したような上記油脂を常法に従って硫化すればよく、例えば、硫化ナタネ油,硫化ヒマシ油,硫化大豆油などが挙げられる。硫黄分としては、特に限定されるものではないが、8〜15重量%程度が好ましい。
【0026】
硫化ポリオレフィンとしては、例えば、下記の一般式(I)
1 −Sx −R2 ・・・(I)
(式中、R1は炭素数2〜15のアルケニル基、R2は炭素数2〜15のアルキル基又はアルケニル基を示し、xは1〜8の整数を示す。)で表される化合物の重合体を挙げることができる。式(I)の化合物は、炭素数2〜15のオレフィン又はその2〜4量体を、硫黄,塩化硫黄等の硫化剤と反応させることによって得られる。オレフィンとしては、プロピレン、イソブテン、ジイソブテンなどが好ましく例示できる。硫化ポリオレフィンは、常法に従って式(I)の化合物を、重合度が2〜50程度となるように重合させて得ることができる。
【0027】
(C') リン系化合物
リン系化合物としては、特に限定されず従来用いられているリン系極圧添加剤から適宜選択すればよく、例えばトリオクチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリオレイルホスフェートなどのリン酸エステル(アルキル基の炭素数8〜18程度)、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェートなどの酸性リン酸エステル(原料となるアルコールの炭素数6〜12程度)などが挙げられる。
【0028】
本発明組成物には、上記(A)〜(C)成分以外に、必要に応じて(D)有機亜鉛化合物又は(E)有機モリブデン系化合物を配合することができる。これら成分を加えると、加工のスピードを速くすることができ、また、加工時の焼き付き性能が向上するので好ましい。
【0029】
(D)有機亜鉛化合物としては、通常塑性加工油の添加剤として用いられているものであれば特に限定されず選択することができる。例えば、ジチオリン酸亜鉛、ジアルキルジチオ亜鉛などが挙げられる。
【0030】
(E)有機モリブデン系化合物としては、通常塑性加工油の添加剤として用いられているものであれば特に限定されず選択することができる。例えば、ジチオカルバミン酸モリブデンなどが挙げられる。
【0031】
本発明の組成物における各成分の配合量は、塑性加工油、特にプレス加工油として利用できるものであれば特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。例えば、各成分の配合量は粘性が、塑性加工油、特にプレス加工油として利用可能な程度、例えば、動粘度が5〜10000(mm2/S,40℃)程度、好ましくは22〜200(mm2/S,40℃)程度となるような範囲とすることができる。
【0032】
より具体的には、(A)成分を、組成物全量を100重量%とした場合、組成物全重量の50重量%以上程度含むのが好ましく、さらに60重量%以上程度含むのが好ましい。より好ましい組成は、組成物全量を100重量%とした場合、(A)成分の含有量が50〜90重量%程度であり、(B)成分の含有量が2〜30重量%程度であり、(C')成分の含有量が2〜30重量%程度であり、(C'')成分の含有量が2〜30重量%程度であり、(B)成分、(C')成分及び(C'')成分の合計量が10〜50重量%程度であるのが好ましい。さらに好ましい範囲としては、組成物全量を100重量%とした場合、(A)成分の含有量が75〜85重量%程度であり、(B)成分の含有量が5〜10重量%程度であり、(C')成分の含有量が10〜15重量%程度であり、(C'')成分の含有量が5〜10重量%程度であり、(B)成分、(C')成分及び(C'')成分の合計量が15〜25重量%程度であるのが好ましい。
【0033】
また、(D)成分、(E)成分を含む場合は、(A)成分の含有量が50〜90重量%程度であり、(B)成分の含有量が2〜30重量%程度であり、(C')成分の含有量が2〜30重量%程度であり、(C'')成分の含有量が2〜30重量%程度であり、(D)成分の含有量が2〜30重量%程度であり、(E)成分の含有量が2〜30重量%程度であり、 (B)成分、(C')成分、(C'')成分、(D)成分及び(E)成分の合計量が10〜50重量%程度であるのが好ましい。
【0034】
本発明の塑性加工油組成物には、上記成分以外に、本発明の所期の目的を妨げない限り、通常塑性加工油、特にプレス油組成物に含まれる成分、例えば、酸化防止剤、消泡剤などを配合することができる。
【0035】
本発明の塑性加工油組成物は、マグネシウム合金の塑性加工に適している。また、通常、マグネシウム合金の塑性加工油はアルミニウム合金の塑性加工油としても用いることができるので、本発明の塑性加工油組成物も、アルミニウム合金の塑性加工油として用いることもできる。
【0036】
本発明の塑性加工油組成物は、プレス加工、絞り加工、打ち抜き加工、引き抜き加工、曲げ加工,押し出し加工、張り出し加工、バーリング加工などの塑性加工法の加工油として用いることができる。これら加工法の中でも、冷間プレス加工法、熱間プレス加工法、温間プレス加工法などのプレス加工法に好ましく用いることができる。プレス加工は離型剤が不要であるため、得られた成形品は塗装性に優れており、また、離型剤除去のためのエッチングが不要であるので寸法精度が高い。さらに、プレス加工は、ダイキャスト法やチクソモールド法と比べ、生産性が高く、設備コストが低く、製造中に“す”が入ったり“バリ”が生じたりするおそれがない。これらプレス加工法の中でも、特殊な金型や特殊な機構の加工機械(プレス機械)を使用する必要がなく、また、被加工材料の温度を上げる必要がなく、加工速度を高くできるので量産性が高く工業的に優れた方法である冷間プレス加工法が好ましい。
【0037】
冷間プレス加工を適用するマグネシウム合金の組成は、通常、Li:5〜16%, Y,Zn, Al, Ag, Mn, Si,Ca,Zr,ランタノイドの少なくとも1種:6%以下, Mg:残部である。アルミニウム合金としては、例えば、JIS H4000による合金番号が、1085, 1080, 1070, 1050, 1100, 1200, 1N00, 1N30, 2014, 2017, 2219, 2024, 3003, 3203, 3004, 3104, 3005, 3105, 5005, 5052, 5652, 5154, 5254, 5454, 5082, 5182, 5083, 5086, 5N01, 6061, 7075, 7N01, 8021, 8079 などが通常用いられる。これらアルミニウム合金の中でも、特に合金番号が1050及び5052のものが好ましく用いられる。これら合金の形状は、プレス加工品の形状に応じて適宜選択できる。合金は通常板状のものを加工するが、板の厚さについては、プレス加工品の用途などに応じて適宜選択できるが、通常、0.3〜10mm程度である。
【0038】
塑性加工は、本発明の塑性加工油を用いて常法に従って行うことができ、例えば、冷間プレス法は、合金に本発明の加工油組成物を塗布し、次いで50 kg/cm2〜5,000 kg/cm2(4.9MPa〜490MPa)程度の圧力をかけて0.1〜10秒程度の処理時間で金型成形することができる。加工油の塗布量は、所望の形状に加工できるような量であれば特に限定されず適宜設定できるものであるが、通常0.1〜50mg/cm2程度であればよい。加工油の塗布は、通常プレス加工される板の中央にプレス油を滴下して、プレスする際に時に上記したような量となるように板の全面に広がるようにすればよい。滴下する以外にも、噴霧塗布、静電塗布などの常法に従って塗布を行うことができる。
【0039】
本発明の塑性加工油を用いると、絞り比(ブランク径/パンチ径の値)が、1.7以上、好ましくは1.8以上のプレス加工品が得られる。また、本発明の塑性加工油を用いると、厚みが0.5mm以下、好ましくは0.4mm以下のプレス加工品を得ることができる。さらに、冷間プレス加工に用いる合金は比重が低く、例えば、得られたプレス加工品の比重が1.7以下程度、好ましくは1.6以下程度、より好ましくは1.5以下程度となる。
【0040】
成形品の形状は特に限定されず、用途に応じた形状であればよい。
【0041】
成形品は、さらに、最終的な製品に用いることができる。例えば、携帯電話、PHS、PDA(Personal Digital Assistance)などの移動情報端末;ノート型パソコン;デジタルビデオ、デジタルカメラなどの映像機器;産業ロボット、エンターテインメントロボット[例えば、AIBO、ASIMO、ピノ(いずれも登録商標)などの、人間や動物を模したロボット]などのロボット;CDプレイヤー、MDプレイヤー、ポータブルカセットディスク、ポータブルDVDなどの情報記録及び/又は再生装置;ゲーム機器[例えば、プレイステーション(登録商標)などの家庭用ゲーム機器]の、筐体部分、内部機構部品(例えば、ゲーム機器の内部ピックアップ)などの用途に用いることができる。また、該成形品は、自動車部品、航空宇宙産業用部品(人工衛星の筐体、太陽電池用パドルの支え、宇宙ステーションの構造材)などとしても用いることができる。
【0042】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をより詳細に説明する。
【0043】
実施例1
本発明塑性加工油組成物
トリメチロールプロパントリオレエート 70重量%
カルシウム合成スルホネイト 7重量%
硫化ラード 15重量%
リン酸エステル 8重量%
上記組成に従って、各成分を混合して本発明の塑性加工油組成物を得た。
【0044】
上記組成の塑性加工油を用いて、下記の成形条件にて、その成形性を評価した。 比較のために、市販の塑性加工用オイル、G3181(日本工作油(株)製、商品名)を比較例1として用い、G3080(日本工作油(株)製、商品名)を比較例2として用いた。
【0045】
マグネシウム合金( Li:9%, Y:1%, Mg:90% )を用いた LDR( 限界絞り比: Limiting Drawing Ratio) 試験
下記の条件に従って、LDR試験を行った。
試験に供したプレスマシン:35tクランクプレス
金型:単発ダイセット型
合金の膜厚:0.5mm
パンチ径:28.8mm
コーナーR:0.5
クリアランス:片側0.5mm
ダイ寸法:29.8mm
ダイR:2.0R
しわ押さえ力:90kgf
下側バネ加重:500kgf
回転数:40rpm
加工温度:室温
塗油量:5mg/cm2
結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
Figure 0003757312
【0047】
表1中、絞り比は、ブランク径/パンチ径の値を示す。
【0048】
また、表中「○」は合金が割れず絞り加工可能であることを示し、「×」は合金が割れて絞り加工が不可能なことを示す。
【0049】
通常、絞り比が1.8以上あれば絞り加工を適用することができるので、本発明の塑性加工油組成物を用いると、室温であっても、マグネシウム合金に対して優れた塑性加工性が得られることがわかる。
【0050】
アルミニウム合金( 1050 H24 JIS H4000 )を用いた LDR 試験
上記試験と同様にして、アルミニウム合金を用いてLDR試験を行った。比較例3においては、市販の塑性加工用オイル G3181(日本工作油(株)製、商品名)を用いた。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
Figure 0003757312
【0052】
通常、絞り比が1.8以上あれば絞り加工を適用することができるので、本発明の塑性加工油組成物を用いると、室温であっても、アルミニウム合金に対して優れた塑性加工性が得られることがわかる。
【0053】
CEC(欧州規格諮問委員会)規格L-33-T-82による試験において、比較例1〜3で用いた油は、生分解性が40%程度であったが、上記実施例で用いた塑性加工油組成物は、生分解性が80%以上であった。
【0054】
【発明の効果】
本発明の塑性加工油組成物は、生分解性の油脂を主成分としているため、環境に対する負荷が少ない。また、本発明の塑性加工油によれば、マグネシウム合金やアルミニウム合金の塑性加工油として用いた場合、塑性加工、特に、冷間加工であっても、優れた加工性が得られる。プレス加工法により得られた加工品は、ダイキャスト法やチクソモールド法により得られた加工品のように離型剤の除去や、離型剤が加工に残存することがないので好ましい。

Claims (7)

  1. (A) 植物油脂、動物油脂及び合成エステル並びにこれらの硬化油脂の少なくとも1種の生分解性油脂、
    (B) アニオン系界面活性剤及び酸化パラフィンの少なくとも1種の防錆・潤滑剤及び
    (C)(C') 硫黄系油脂及び硫黄系合成ポリオレフィン並びに (C'') リン系化合物の少なくとも1種の極圧添加剤を含有し、
    組成物全量を100重量%とした場合、 (A) 成分の含有量が50〜90重量%であり、 (B) 成分の含有量が2〜30重量%であり、 (C') 成分の含有量が2〜30重量%であり、 (C'') 成分の含有量が2〜30重量%であり、 (B) 成分、 (C') 成分及び (C'') 成分の合計含有量が10〜50重量%である、
    マグネシウム合金用塑性加工油組成物。
  2. (A) 成分が合成エステルである、請求項1に記載のマグネシウム合金用塑性加工油組成物。
  3. 合成エステルが、炭素数8〜18の飽和あるいは不飽和脂肪酸とグリセリンから合成されるモノグリセリド、ジグリセリド、又はトリグリセリドである、請求項2に記載のマグネシウム合金用塑性加工油組成物。
  4. (A) 成分がトリメチロールプロパントリオレエートであり、 (B) 成分がカルシウム合成スルホネイトであり、 (C') 成分が硫化ラードであり、 (C'') 成分がリン酸エステルである、請求項1乃至3のいずれかに記載のマグネシウム合金用塑性加工油組成物。
  5. さらに、(D)有機亜鉛化合物及び(E)有機モリブデン系化合物を含有する請求項1乃至4のいずれかに記載のマグネシウム合金用塑性加工油組成物。
  6. 生分解性が、CEC(欧州規格諮問委員会)規格L-33-T-82による試験において60%以上である請求項1乃至5のいずれかに記載のマグネシウム合金用塑性加工油組成物。
  7. マグネシウム合金に、請求項1乃至6のいずれかに記載のマグネシウム合金用塑性加工油組成物を塗布した後に冷間プレス加工することを特徴とするマグネシウム合金の加工方法
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