JP3756064B2 - 救命具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、救命具に関するものであり、特に人体に装着することで遭難者が水没するのを防止するための救命具に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、船舶に搭載される救命設備のうちの1つに救命胴衣がある。これは、浮力材料としてのカポックを綿布などで被覆したものに着用のための紐を付したものである。また、近年では、上衣のように着用する形式の救命具も使用されている。
【0003】
ところで、船舶の乗組員が海への落下の危険性のある作業を行う時には救命具の着用が義務付けられている場合がある。また、義務付けられていない場合であっても、落水の危険性のある作業を行う時には救命具の着用が好ましい。
【0004】
しかし、従来の着用救命具は、人体の胴体の前部及び後部更には首回りなどに浮力発生部材を装着するものであるため、上半身が束縛され、所要の作業を遂行するには邪魔になるものである。このため、ともすれば、作業効率を優先させて救命具の装着を怠ることもあり、その場合には落水の際の救助が困難になる。
【0005】
以上のように、従来の救命具は、作業者が未だ落水していない通常状態(この状態においては、救命機能を必要としない)においても、水中での所要の浮力発生が可能なような形態となっているために、胴回りに嵩高の部材を固定することになり、これに起因して作業者が着用を敬遠しがちになるのである。
【0006】
また、着用形式の救命具のうちには落水後に膨張して浮力を発生させるものもあるが、これとても通常状態で胴回りを束縛するものであるので、作業者が着用を敬遠しがちになることには変わりがない。
【0007】
そこで、本発明は、通常状態では作業の邪魔になることがなく、落水の際には所要の浮力を発生して良好に救命機能を発揮し得る、改良された救命具を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記目的を達成するものとして、
人体に装着するためのベルトと、該ベルトに取り付けられたケースと、該ケースに収容された加圧気体発生源と、該加圧気体発生源から加圧気体を導入する気体導入口を有するエアバッグと、該エアバッグの気体導入口と前記加圧気体発生源との間に介在し前記ケースに収容された加圧気体導入開始制御手段と、前記エアバッグを前記ケース及び/または前記ベルトに対して直接的または間接的に取り付けるための取り付け手段とを備えており、
前記エアバッグは人体頭部の挿通開口を有しており、
前記取り付け手段は環状に形成された部分を含む帯状部材からなり、該帯状部材は前記環状に形成された部分のうちの対向する2つの部分において前記エアバッグに固着されており、前記帯状部材は前記環状に形成された部分に付設された固着部を含んでおり、該固着部は前記ケース及び/または前記ベルトに固着されており、
前記取付手段は、前記加圧気体の導入により膨張した後においても前記気体導入口を前記ケース内に位置させるようにして前記エアバッグを前記ケース及び/または前記ベルトに対して取り付けていることを特徴とする救命具、
が提供される。
【0011】
ここで、前記帯状部材は、前記環状に形成された部分のうちの一部が前記エアバッグに固着されることなく係止用ループ部を形成しているものとすることができる。
【0012】
以上のような本発明の一態様においては、前記加圧気体導入開始制御手段は水に浸漬したことを検知して前記加圧気体発生源から前記エアバッグの気体導入口への前記加圧気体の導入を開始させるものである。本発明の一態様においては、前記加圧気体導入開始制御手段は手動操作部材を備えており、該手動操作部材を操作することによっても前記加圧気体発生源から前記エアバッグの気体導入口への前記加圧気体の導入を開始させことができるものである。
【0013】
本発明の一態様においては、前記加圧気体発生源はガスボンベである。本発明の一態様においては、前記エアバッグには該エアバッグ内への気体吹き込みのための逆止め弁付き気体吹き込み管が取り付けられている。
【0014】
また、本発明の一態様においては、前記ケースは、前記ベルトに取り付けられ且つ折り畳まれた前記エアバッグを収容するケース本体と、該ケース本体に付されたケース蓋とを有しており、該ケース蓋は前記ケース本体の開口を塞ぐようにして前記ケース本体に係止されており、前記ケース蓋は前記折り畳まれたエアバッグへの前記加圧気体の導入により該エアバッグが膨張する際の圧力により前記ケース本体への係止を解除されて前記ケース本体の開口を開放するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施の形態を説明する。
【0016】
図1は本発明による救命具の一実施形態のエアバッグ展開状態を示す一部切欠模式的正面図であり、図2はその中央縦断面図である。図3は本実施形態のエアバッグ折り畳み状態を示す模式的側面図であり、図4はその斜視図である。
【0017】
本実施形態では、人体の腰まわりに装着されるベルト2に、ケース4が取り付けられている。ケース4は、ケース本体4aとケース蓋4bとを有している。ケース本体4aは、ベルト2を挿通することで該ベルト2に取り付けられるループ部4a−1を有し、ケース蓋4bを係止するための本体側係止部材4a−2を有し、側部に形成されたは通水小孔4a−3を有している。尚、ケース本体4aはベルトに対して縫い付けなどにより固着されていてもよい。また、ケース蓋4bは、本体側係止部材4a−2と係止される蓋側係止部材4b−1を有しており、ケース本体4aの開口を塞ぐようにして該ケース本体4aに係止することができる。ケース4の大きさは、例えば高さ約10cm、横幅約20cm、厚さ約5cmである。
【0018】
ケース本体4aには炭酸ガスボンベ等の加圧気体発生源6が収容されており、またケース本体4aにはエアバッグ8が取り付けられている。エアバッグ8は加圧気体発生源6からの加圧気体を導入する気体導入口を有しており、該気体導入口と加圧気体発生源6との間には加圧気体導入開始制御手段10が介在している。図3に示されているように、ケース本体4aには折り畳まれたエアバッグ8を収容することができる。尚、ケース本体4aに対するエアバッグ8の取り付けは、ケース本体4aに対して縫い付けなどにより直接的に行ってもよいし、ケース本体4aに対して加圧気体発生源6や加圧気体導入開始制御手段10を取り付けておき、これに対して取り付けることでケース本体4aに対して間接的に取り付けてもよい。
【0019】
エアバッグ8は、ケース4に対して取り付けられている部分(即ち、図1及び図2における下部)とは反対側(即ち、図1及び図2における上側)において切欠部12を形成するように突出した1対の突出部14,15を有する形状をなしている。そして、この1対の突出部14,15どうしを接続する接続部材16が設けられている。接続部材16は、一端が突出部14に取り付けられており、他端が突出部15に対して係合フック17を介して着脱可能に取り付けられている。
【0020】
エアバッグ8の突出部14には、エアバッグ8内への空気等の気体吹き込みのための逆止め弁付き気体吹き込み管18が取り付けられている。気体吹き込み管18の吹き込み口は切欠部12の近くに位置している。
【0021】
加圧気体導入開始制御手段10は、水に浸漬したことを検知して自動的に直ちに加圧気体発生源6からエアバッグ8の気体導入口への加圧気体の導入を開始させるものであり、このような制御手段10としては公知の手段を利用することができる。尚、万一、この自動的な加圧気体の導入開始の機能が不調の場合に備えて、加圧気体導入開始制御手段10は、手動操作部材20を備えている。この手動操作部材20を引っ張る手動操作を行うことによっても、加圧気体発生源6からエアバッグ8の気体導入口への加圧気体の導入を開始させことができる。
【0022】
次に、本実施形態の救命具の動作を、図5〜図7を参照して説明する。エアバッグ8は、加圧気体(気体吹き込み管18からの吹き込み空気を含む)の導入されていない時には、図1〜3に示されているような形状をなしており、使用時には図3に示されているように折り畳まれてケース4に収容される。
【0023】
図6は、救命具を装着した作業者Hが落水していない通常状態を示す。即ち、作業者Hは、ベルト2を胴に巻いて装着し、ケース4を腹部上に位置させる。この時には、作業者Hはベルト2の装着による束縛を受けるが、その負担は軽く、胸部、背部、肩部及び首部は実質上全く束縛されていないので、所望の作業を遂行するに支障はない。
【0024】
図7は、救命具を装着した作業者Hが落水した状態を示す。この時には、先ず、ケース4の通水小孔4a−3などからケース4内へと水が入り込み、これを検知した加圧気体導入開始制御手段10は加圧気体発生源6からエアバッグ8の気体導入口への加圧気体の導入を開始させる。これにより、エアバッグ8内に加圧気体が充満し、エアバッグ8が膨張し、ケース蓋4bはその膨張の際の圧力によりケース本体4aへの係止を解除されて(即ち本体側係止部材4a−2と蓋側係止部材4b−1との係止が解除されて)ケース本体4aの開口を開放する。これにより、エアバッグは図5に示されるような形状となり、膨張したエアバッグ8が作業者の胴体の前側に位置することになる。
【0025】
作業者Hは、図7に示されるように、エアバッグ8により形成される切欠部12から頭部を前方へと出し、後頭部を接続部材16にもたれかけるようにする。エアバッグ8の浮力により、作業者Hは図示されているような仰臥姿勢で頭部を水面より上に維持して、安定した状態で救助を待つことができる。
【0026】
上記接続部材16は、予め2つのエアバッグ突出部14,15を接続していてもよいし、膨張前は係合フック17による係合を解除してケース4内に収容しておき、エアバッグ膨張後に該エアバッグ8による浮力を得た作業者Hが自力で係合フック17による係合操作を行ってもよい。
【0027】
また、万一、加圧気体導入開始制御手段10による自動的な水検出に基づく加圧気体導入開始の動作が不調の場合には、救命具を装着している作業者Hが手動操作部材20を引くことで加圧気体導入を開始することができる。また、加圧気体発生源6からエアバッグ8へ導入される加圧気体の量が不十分な場合、あるいは時間経過とともにエアバッグ8から気体が漏れた場合など、エアバッグ8の体積が縮小して発生浮力が減少するおそれのある時には、作業者Hが空気吹き込み管18から自己の呼気をエアバッグ8へ注入して該エアバッグ8を膨張させることができる。
【0028】
落水した作業者Hを救助する際には、救助船から投下される救助ロープの先端に固定された係留フックを接続部材16に係合することで、容易に救助船への引き寄せ及び引き上げが可能となる。
【0029】
図8は本発明による救命具の更に別の実施形態を示す模式的部分正面図である。本実施形態では、エアバッグ8の形状が上記図1〜7の実施形態のものと異なる。エアバッグ8には、接続部材16が一体的に造り込まれている。即ち、エアバッグ8の突出部14,15どうしを連結する接続部材16をも、エアバッグ8の成形の際に同等の材質例えばゴムなどで一体的に成形することで、接続部材16を造り込むのである。尚。この場合、接続部材16の部分を中空となしておけば、接続部材16内にも加圧気体を導入することができる。このようにエアバッグ8と接続部材16とが一体化された場合にも、エアバッグ8は本発明でいう切欠部12及び1対の突出部14,15を有するものである。尚、切欠部12は、人体頭部の挿通開口として利用される。
【0030】
図9は本発明による救命具のいま1つの実施形態を示す一部切欠模式的正面図であり、図10はその部分縦断面図である。
【0031】
本実施形態は、上記図1〜8に関し説明した実施形態と同様に、ベルト2、ケース4、加圧気体発生源6、エアバッグ8及び加圧気体導入開始制御手段10を備えている。
【0032】
本実施形態では、エアバッグ8は馬蹄形をなしており、その一端に気体導入口が形成されている。該気体導入口は、加圧気体導入開始制御手段10を介して加圧気体発生源6に接続されている。エアバッグ8は、その馬蹄形の中央に人体頭部の挿通開口32を有している。即ち、この挿通開口32は、上記の実施形態の切欠部12と同様な機能を有する。
【0033】
また、本実施形態では、エアバッグ8をケース4及び/またはベルト2に対して直接的または間接的に取り付けるための取り付け手段としての帯状部材30を備えている。該帯状部材30は、環状に形成されており、この環状をなす部分のうちの対向する2つの部分(左右の部分)がエアバッグ8に縫い付けなどにより固着されている。帯状部材30は、環状をなす部分の下部に付設された固着部30aを備えており、該固着部はケース4の内部側から該ケース及びベルト2に対して縫い付けなどにより固着されている。そして、帯状部材30の環状をなす部分の上部は、エアバッグ8に固着されておらず、係止用ループ部30bを形成している。
【0034】
帯状部材30は、例えば合成繊維製の高い引っ張り強度を持つものである。従って、エアバッグ8をベルト2に対して強固に取り付けることができ、更に、救助船から投下される救助ロープの先端に固定された係留フックを係止用ループ部30bに係合することで、エアバッグ8を損傷することなく係留フックからの力を人体に確実に伝達して容易且つ確実に救助船へ引き寄せ及び引き上げることが可能となる。
【0035】
本実施形態のその他の構成及び作用は、逆止め弁付き気体吹き込み管18及び手動操作部材20を有することを含めて、先に説明した実施形態と同様である。
【0036】
本実施形態では、ケース4及びベルト2へのエアバッグ8の取り付けのために帯状部材30が使用されているので、エアバッグ8自体のケース4及び/またはベルト2の取り付け強度をそれほど強化することなしに、実使用条件下でもエアバッグ8を人体に対して強固に保持することができる。
【0037】
【発明の効果】
以上の様に、本発明の救命具によれば、通常状態では作業の邪魔になることがなく、落水の際には所要の浮力を発生して良好に救命機能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による救命具の一実施形態のエアバッグ展開状態を示す一部切欠模式的正面図である。
【図2】図1の中央縦断面図である。
【図3】本発明による救命具の一実施形態のエアバッグ折り畳み状態を示す模式的側面図である。
【図4】図3の斜視図である。
【図5】本発明による救命具の一実施形態のエアバッグ膨張状態を示す模式的斜視図である。
【図6】本発明による救命具の一実施形態の動作説明のための模式図である。
【図7】本発明による救命具の一実施形態の動作説明のための模式図である。
【図8】本発明による救命具の更に別の実施形態を示す模式的部分正面図である。
【図9】本発明による救命具のいま1つの実施形態を示す一部切欠模式的正面図である。
【図10】図9の部分縦断面図である。
【符号の説明】
2 ベルト
4 ケース
4a ケース本体
4b ケース蓋
4a−1 ループ部
4a−2 本体側係止部材
4a−3 通水小孔
6 加圧気体発生源
8 エアバッグ
10 加圧気体導入開始制御手段
12 切欠部
14,15 突出部
16 接続部材
17 係合フック
18 逆止め弁付き気体吹き込み管
20 手動操作部材
30 帯状部材
30a 固着部
30b 係止用ループ部
32 人体頭部挿通開口
H 作業者
Claims (7)
- 人体に装着するためのベルトと、該ベルトに取り付けられたケースと、該ケースに収容された加圧気体発生源と、該加圧気体発生源から加圧気体を導入する気体導入口を有するエアバッグと、該エアバッグの気体導入口と前記加圧気体発生源との間に介在し前記ケースに収容された加圧気体導入開始制御手段と、前記エアバッグを前記ケース及び/または前記ベルトに対して直接的または間接的に取り付けるための取り付け手段とを備えており、
前記エアバッグは人体頭部の挿通開口を有しており、
前記取り付け手段は環状に形成された部分を含む帯状部材からなり、該帯状部材は前記環状に形成された部分のうちの対向する2つの部分において前記エアバッグに固着されており、前記帯状部材は前記環状に形成された部分に付設された固着部を含んでおり、該固着部は前記ケース及び/または前記ベルトに固着されており、
前記取付手段は、前記加圧気体の導入により膨張した後においても前記気体導入口を前記ケース内に位置させるようにして前記エアバッグを前記ケース及び/または前記ベルトに対して取り付けていることを特徴とする救命具。 - 前記帯状部材は、前記環状に形成された部分のうちの一部が前記エアバッグに固着されることなく係止用ループ部を形成していることを特徴とする、請求項1に記載の救命具。
- 前記加圧気体導入開始制御手段は水に浸漬したことを検知して前記加圧気体発生源から前記エアバッグの気体導入口への前記加圧気体の導入を開始させるものであることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載の救命具。
- 前記加圧気体導入開始制御手段は手動操作部材を備えており、該手動操作部材を操作することによっても前記加圧気体発生源から前記エアバッグの気体導入口への前記加圧気体の導入を開始させることができるものであることを特徴とする、請求項3に記載の救命具。
- 前記加圧気体発生源はガスボンベであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の救命具。
- 前記エアバッグには該エアバッグ内への気体吹き込みのための逆止め弁付き気体吹き込み管が取り付けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の救命具。
- 前記ケースは、前記ベルトに取り付けられ且つ折り畳まれた前記エアバッグを収容するケース本体と、該ケース本体に付されたケース蓋とを有しており、該ケース蓋は前記ケース本体の開口を塞ぐようにして前記ケース本体に係止されており、前記ケース蓋は前記折り畳まれたエアバッグへの前記加圧気体の導入により該エアバッグが膨張する際の圧力により前記ケース本体への係止を解除されて前記ケース本体の開口を開放するものであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の救命具。
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