JP3755745B2 - 粉体固型ファンデーション - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラッシュ撮影時や蛍光灯下での白浮きが無く、自然な隠蔽力が得られ、経時での色くすみや色むらが生じず、しかも塗布時の使用感触、特に平滑性に優れた粉体固型ファンデーションに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ファンデーションには、肌の色むらなどの欠点を隠すために、酸化チタン,酸化亜鉛などの白色粉体を配合することが従来から行われている。しかしながら、酸化チタンや酸化亜鉛は、多量に配合すると、伸びが重い、塗布時にぎらつきやテカリが生じる、フラッシュ撮影時や蛍光灯下で白浮きする等の問題があった。そこで、酸化チタンの全量若しくは一部を、硫酸バリウムに代替してファンデーションを調製する方法が試みられている(特開昭48−56833等)。
【0003】
しかしながら、硫酸バリウムは肌に塗布する際、肌上での伸び及び平滑感等において問題があった。かかる課題を解決するために、種々の試みがなされている。例えば、バタフライ状硫酸バリウム(特開平4−5215)、アモルファス状硫酸バリウム(特開平7−100402)、板状硫酸バリウム(特開平8−59232)、球状硫酸バリウム(特開平8−283124)等、硫酸バリウムの形状による検討や、硫酸バリウムの表面を、フッ素(特開平6−171932)、N−アシル塩基性アミノ酸(特開平5−39436)、酸化若しくは水酸化アルミニウム(特開平8−217635)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(特開平1−308819)、金属石けん及び有機ケイ素化合物(特開昭62−87237)、リン酸エステル変性ポリオルガノシロキサン(特開平9−136815)、ポリアクリレート(特開平9−52819)等で処理することによる表面改質手法などの検討がなされてきた。しかしながら、硫酸バリウムを含有する粉体固型ファンデーションにおいて、充分満足できる使用感を有するファンデーションは未だ得られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明においては、フラッシュ撮影時や蛍光灯下での白浮きが無く、自然な隠蔽力が得られ、経時での色くすみや色むらが生じず、しかも塗布時の使用感触、特に平滑性に優れた粉体固型ファンデーションを提供することを目的とした。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、先の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、N−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸で表面処理して得られる硫酸バリウムと、窒化硼素とをファンデーションに配合することにより、フラッシュ撮影時や蛍光灯下での白浮きが無く、自然な隠蔽力が得られ、経時での色くすみや色むらが生じず、しかも塗布時の使用感触、特に平滑性に優れた粉体固型ファンデーションが得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を説明する。
【0007】
本発明で使用するN−長鎖モノアシル塩基性アミノ酸で表面処理して得られる硫酸バリウムは、硫酸バリウムをN−長鎖モノアシル塩基性アミノ酸により表面処理することによって得られる。かかる硫酸バリウムとしては、化粧料に配合し得る原料であれば特にその種類,形状を問わないが、本発明の効果の点から、粒子径が3〜100μmである板状硫酸バリウムを用いることが好ましい。
【0008】
表面処理に用いられるN−長鎖モノアシル塩基性アミノ酸を構成する塩基性アミノ酸としては、α,γ−ジアミノ酪酸,オルニチン,リジン,アルギニン,ヒスチジンなどがあげられる。これらは、光学活性体であっても、ラセミ体であってもよい。長鎖アシル基としては、炭素数8〜22の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖脂肪族アシル基であって、単一鎖長のものであっても、混合鎖長のものであってもよい。具体的には、2−エチルヘキサノイル,カプリロイル、カプリノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、イソステアロイル、オレオイル、ベヘノイル、ココイル、牛脂脂肪酸アシル、硬化牛脂脂肪酸アシル、ヤシ油脂肪酸アシル等が挙げられる。長鎖アシル基の塩基性アミノ酸ヘの結合部位はα位のアミノ基あるいはω位のアミノ基であるが、アルギニン及びヒスチジンにおいてはα位のアミノ基に限定される。具体例としては、Nε−2−エチルヘキサノイリルジン、Nε−ラウロイルリジン、Nε−ココイルリジン、Nε−パルミトイルリジン、Nε−イソステアロイルリジン、Nε−硬化牛脂脂肪酸アシルリジン、Nα−カプリロイルリジン、Nα−ラウロイルリジン、Nα−ミリストイルリジン、Nα−オレオイルリジン、Nα−ベヘノイルリジン、Nδ−ココイルオルニチン、Nδ−ステアロイルオルニチン、Nδ−牛脂脂肪酸アシルオルニチン、Nα−エチルヘキサノイルオルニチン、Nα−ラウロイルオルニチン、Nα−イソステアロイルオルニチン、Nγ−パルミトイル−α,γ−ジアミノ酪酸、Nα−牛脂脂肪酸アシル−α,γ−ジアミノ酪酸、Nα−カプロイルアルギニン、Nα−ラウロイルアルギニン、Nα−パルミトイルアルギニン、Nα−硬化牛脂脂肪酸アシルアルギニン、Nα−ココイルヒスチジン、Nα−イソステアロイルヒスチジン等が挙げられるが、これらの例に限定されない。
【0009】
硫酸バリウム粉体をN−モノ長鎖脂肪族アシル塩基性アミノ酸で処理する方法としては乾式法及び湿式法のいずれの方法も用いることができる。乾式法は簡便且つ効果的であって、N−モノ長鎖脂肪族アシル塩基性アミノ酸の微細粉末を硫酸バリウム粉体と撹拌混合するか、もしくはN−モノ長鎖脂肪族アシル塩基性アミノ酸と硫酸バリウム粉体を混合した後、共粉砕することによって、硫酸バリウム粉体の表面を容易に処理することができる。湿式法はN−モノ長鎖脂肪族アシル塩基性アミノ酸が中性付近の水及び通常の油に殆ど溶解しないため、塩化カルシウムを可溶化剤として用いてN−モノ長鎖脂肪族アシル塩基性アミノ酸を有機溶剤に溶解した後、硫酸バリウム粉体を接触させ、更に水洗して塩化カルシウムを除去して乾燥することにより、硫酸バリウム粉体の表面を処理することができる。あるいは酸性もしくはアルカリ性の水または水性溶媒中にN−モノ長鎖脂肪族アシル塩基性アミノ酸を溶解して、硫酸バリウム粉体を接触させた後、中性付近まで中和して硫酸バリウム粉体表面にN−モノ長鎖脂肪族アシル塩基性アミノ酸を析出付着させ、中和によって生じた塩を水洗により除去し、乾燥することによっても同様の表面処理を行うことがができる(特開昭61−7202号、同61−10503号)。
【0010】
硫酸バリウム粉体に対するN−モノ長鎖脂肪族アシル塩基性アミノ酸の処理量は好ましくは0.05〜20重量%、より好ましくは0.5〜15重量%である。0.05重量%未満では表面処理効果が充分でなく、また20重量%を超えても処理効果はそれほど向上しない。
【0011】
本発明で用いる窒化硼素は、平均粒子径0.1〜30μmの板状粉体であり、市販品として、商品名セラムブランシュSHP−4、セラムブランシュSHP−5、セラムブランシュSHP−6、セラムブランシュSHP−7(いずれも水島合金鉄製)、ルーブシャイン#500,ルーブシャイン#700(共に川崎製鉄製)、トレセラムT−BN(東レ製)等がある。窒化硼素はそのまま用いてもよいが、フッ素処理,シリコーン処理,金属石けん処理,アシルリジン処理等の表面処理を施した窒化硼素を用いることにより、粉体固型ファンデーションに撥水性などの性能を付与したり、使用感を改善することができる。本発明においては、金属石けん処理窒化硼素を用いることが、使用感及び化粧持続性の点から好ましい。かかる金属石けん処理窒化硼素としては、窒化硼素100重量部に対して、0.1〜20重量部の金属石けんを被覆した、金属石けん処理窒化硼素を用いることが好ましい。
【0012】
N−長鎖モノアシル塩基性アミノ酸で処理した硫酸バリウム、及び窒化硼素の粉体固形化粧料への配合量は、特に限定されるものではないが、粉体固形化粧料全量に対してそれぞれ、25.0〜50重量%、及び5〜15重量%の範囲とすることが好ましい。
【0013】
本発明の粉体固形ファンデーションには、N−長鎖モノアシル塩基性アミノ酸で処理した硫酸バリウム及び窒化硼素の他に、その使用目的に応じて任意の成分を適宜配合することができる。そのような成分としては、油分,保湿剤,界面活性剤,ビタミン類,美白剤,細胞賦活剤,抗炎症剤,抗酸化剤,紫外線吸収剤,樹脂,粉体,色素,防腐剤等、一般に化粧料に使用できる成分が挙げられる。
【0014】
【実施例】
実施例により本発明を詳しく説明する。
【0015】
[実施例1] 粉体固型ファンデーション
(1)5重量%N−ラウロイルリジン処理
硫酸バリウム(平均粒子径15μm) 48.4(重量%)
(2)7重量%ステアリン酸アルミニウム処理窒化硼素 14.0
(3)3重量%ジメチルシロキサン処理マイカ 15.0
(4)3重量%ジメチルシロキサン処理ベンガラ 3.0
(5)3重量%ジメチルシロキサン処理黄酸化鉄 1.0
(6)3重量%ジメチルシロキサン処理黒酸化鉄 0.5
(7)ジメチルポリシロキサン(6cs) 12.0
(8)流動パラフィン 5.0
(9)イソステアリン酸ソルビタン 1.0
(10)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
製法:(1)〜(6)の成分を混合,均質化し、粉体相とする。(7)〜(10)の成分を混合,溶解,均一化して粉体相に添加して混練した後、アトマイザーで粉砕する。篩過した後金皿に充填し、圧縮成型する。
【0016】
[比較例1,2,3]
実施例1に示した粉体固型ファンデーションの処方を基に、表1に示した内容で比較例1〜比較例3にかかる粉体固型ファンデーションを調製した
【0017】
【表1】
Figure 0003755745
【0018】
Figure 0003755745
Figure 0003755745
製法:(1)〜(17)の成分を混合,均質化し、粉体相とする。(18)〜(29)の成分を混合,溶解,均一化して粉体相に添加して混練した後、アトマイザーで粉砕する。篩過した後金皿に充填し、圧縮成型する。
【0019】
実施例1,実施例2、及び表1に示した比較例1〜比較例3を用いて官能評価による使用感の評価を行った。評価は、官能評価専門評価員5名に各実施例及び比較例のそれぞれのサンプルをブラインドにて使用させ、フラッシュ撮影時の白浮き,蛍光灯下での白浮き,隠蔽力,仕上がりの自然さ,使用時の滑らかさ,経時での色くすみ,経時での色むらの7項目について、以下の基準に従い合議により行った。以上の結果は、表2にまとめて示した。
【0020】
[フラッシュ撮影時の白浮き],[蛍光灯下での白浮き]
白浮きが認められない:○
白浮きが少し認められる:△
白浮きが明らかに認められる:×
【0021】
[隠蔽力]
隠蔽力がちょうどいい:○
隠蔽力が少し、足りない若しくは強すぎる:△
隠蔽力が明らかに、足りない若しくは強すぎる:△
【0022】
[仕上がりの自然さ]
仕上がりが自然である:○
仕上がりが少し不自然である:△
仕上がりが不自然である:×
【0023】
[使用時の滑らかさ]
非常に滑りがよい:○
滑りが普通である:△
滑りが悪い:×
【0024】
[経時での色くすみ],[経時での色むら]
殆ど気にならない:○
少し気になる:△
気になる:×
【0025】
【表2】
Figure 0003755745
【0026】
表2に示したとおり、N−ライロイルリジンで処理した硫酸バリウムを未処理の硫酸バリウムに代替した比較例1は、白浮きは認められなかったが、使用時の滑りがわるく、がさついた使用感になっていた。またN−ラウロイルリジンで処理した硫酸バリウムを酸化チタンとタルクに代替した比較例2は、白浮きが目立っていて、隠蔽力がありすぎ、経時での色くすみ,色むらが気になる等、全ての評価項目で良好な結果が得られなかった。さらに、窒化硼素をタルクに代替した比較例3においては、白浮きが認められず、仕上がりも自然であったが、使用時の滑りが悪く、がさついた使用感になっていた。これに対し、本発明の実施例1及び実施例2は、白浮きが無く,適度な隠蔽力を有し仕上がりが自然で、使用時の滑りが良く、しかも経時での色くすみ,色むらの気にならず、全ての評価項目において良好な結果が得られた。
【0027】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明により、フラッシュ撮影時や蛍光灯下での白浮きが無く、自然な隠蔽力が得られ、経時での色くすみや色むらが生じず、しかも塗布時の使用感触、特に平滑性に優れた粉体固型ファンデーションを得ることができた。

Claims (3)

  1. N−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸で表面処理して得られる硫酸バリウムと、金属石けん処理窒化硼素5〜15重量%含有する圧縮成型により製造された粉体固型ファンデーション。
  2. 硫酸バリウムが、粒子径が3〜100μmの板状硫酸バリウムであることを特徴とする、請求項1に記載の圧縮成型により製造された粉体固型ファンデーション。
  3. N−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸で表面処理して得られる硫酸バリウムを25〜50重量%、窒化硼素を5〜15重量%含有する、請求項1又は請求項2に記載の圧縮成型により製造された粉体固型ファンデーション。
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