JP3755411B2 - 工具回転径検出方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械において加工に用いる工具の回転時における工具回転径を検出する工具回転径検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばマシンニングセンタ等の工作機械で工作物を加工する場合、工具チップ(切削刃)を工具取付部の外周部に取付けて加工することがある。図9は、工具チップ(切削刃)を用いて工作物の穴開け加工を行う状態を示す図である。
工具チップ(切削刃)は多角形状に形成されており、例えば図9に示すように、工具チップ102の角部102aで工作物100の加工を行う。この場合、工具チップ102の角部102aは、工具取付具101の外周よりも半径方向の外側に突出している。このような工作機械では、加工精度を向上させるために、工具チップ102の角部102aの回転径、すなわち工具の回転径の最大値(以下、「工具回転径」という)を検出する必要がある。
ここで、工具回転径を検出する必要性について説明する。
工具を工具主軸に挿着した時には、工具回転径は、工具の工具主軸への取付け状態によって変化する。また、工具の最外周部の刃先形状は、加工中に刃先が摩耗したり、刃先垂れが起るために、加工前後では変化する。このため、最大回転径、すなわち工具回転径が変化する。工具回転径は加工精度に影響するため、工具回転径を検出する必要がある。
従来では、工具回転径を検出する場合、工具の回転を停止させた状態で、作業者がツールプリセッタやマイクロメータ等の測定器具を用いて、手作業で角部102aの回転径を検出していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の工具径検出方法は、作業者が手作業で工具回転径を検出するため、面倒であり、時間もかかる。
そこで、工具チップ(切削刃)が取付けられているような工具の工具回転径を自動で検出できる工具回転径検出装置が要望される。工具回転径を自動的に検出できる工具回転径検出方法としては、例えばBLUM社製(ドイツ)のレーザビーム式寸法計測装置等の光学式寸法計測装置を用いる方法が知られている。レーザビーム式寸法計測装置は、レーザビーム(光線)を発光器から受光器に向けて発光し、レーザビーム(光線)が工具で遮光される時の受光強度によって工具の両端の位置を検出する。そして、検出された工具の両端の位置に基づいて工具回転径を検出する。レーザビーム式寸法計測装置は、工具が回転している状態で、工具の回転径を検出することが可能である。
しかしながら、工具の回転軸に沿った各位置での回転径が同じ工具(例えば、円柱形状の工具)の場合には、1箇所の回転径を検出すれば工具回転径を検出することができるが、工具の回転軸に沿った位置によって回転径が異なる工具では、工具の回転径が最大となる位置で、工具の回転径を検出する必要がある。したがって、工具の回転軸に沿った位置によって回転径が異なる工具の工具回転径を光学式寸法計測装置によって検出する場合、工具の回転軸に沿って工具を単位距離シフトさせた多数の位置で工具の回転径を検出する必要があるため、検出に時間がかかる。
本発明は、このような問題点を解決するために創案されたものであり、工具の回転軸に沿った位置によって回転径が異なる工具の工具回転径を自動的に、短時間で検出することができる工具回転径検出方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するための本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの工具回転径検出方法である。
請求項1に記載の工具回転径検出方法では、工具を回転させた状態で、工具の回転軸に沿った検出区間内の、予め設定した所定数の回転径検出位置における回転径を検出し、検出された回転径の中から最大の回転径を検出する処理を、最大回転径の回転径検出位置新たな基準位置とするとともに、検出区間を順次狭めながら複数回行うことよって、工具回転径を求める。
請求項1に記載の工具回転径検出方法を用いれば、回転径を検出する回転径検出位置の数を少なくすることができるため、自動的に、短時間で工具回転径を検出することができる。
また、本発明の工具回転径検出方法では、前記検出処理を所定条件が満足されるまで繰り返し実行するようにした方法である。繰り返し実行により最大回転径の位置を含む回転軸方向の範囲が絞られ、高精度な工具回転径検出が可能となる。
また、第2発明は、請求項2に記載されたとおりの工具回転径検出方法である。
請求項2に記載の工具径検出処理方法では、前記ステップ(b)〜ステップ(d)を繰り返した際、前回のステップ(b)における所定数の回転径検出位置と、今回のステップ(b)における所定数の回転径検出位置とで、重なった位置となった回転径検出位置では、前回検出した工具回転径を用いる。
また、第3発明は、請求項3に記載されたとおりの工具回転径検出方法である。
請求項3に記載の工具径検出処理方法では、回転径を検出する回転径検出位置の間隔が設定値以下になることを検出処理の終了条件とする。これにより、回転径検出工程の回数が最適となる。
また、第4発明は、請求項4に記載されたとおりの工具回転径検出方法である。
請求項4に記載の工具回転径検出方法では、ステップ(b)〜ステップ(d)の回転径検出処理工程の繰り返し回数を検出処理の終了条件とする。このため、工具の回転径を検出する処理を終了させるための判断が簡単である。
また、第5発明は、請求項5に記載されたとおりの工具回転径検出方法である。
請求項5に記載の工具回転径検出方法では、直前の回転径検出処理工程における最大の回転径と今回の回転径検出処理工程における最大回転径の差が設定値以内にあることを検出処理の終了条件とする。このため、最適な状態で工具の回転径を検出する処理を終了させることができる。
また、第6発明は、請求項6に記載されたとおりの工具回転径検出方法である。
請求項6に記載の工具回転径検出方法では、所定数の回転径検出位置におけるn番目の回転径検出位置で回転径を検出した時に、(n−1)番目の回転径検出位置で検出した回転径がn番目の回転径検出位置で検出した回転径及び(n−2)番目の回転径検出位置で検出した回転径よりも大きいと判定される場合には、今回のステップ(c)において(n+1)番目以降の回転径検出位置での工具回転径の検出処理を中止し、前記(n−1)番目の回転径検出位置での工具回転径を今回のステップ(c)における最大の回転径とする。このため、回転径を検出する時間が一層短縮される。
また、第7発明は、請求項7に記載されたとおりの工具回転径検出方法である。
請求項7に記載の工具回転径検出方法では、光学式計測装置を用いて工具の回転径を検出する。これにより、簡単な構成で、安価に工具回転径を自動で検出することができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、図1〜図3を用いて説明する。本実施の形態では、4軸数値制御軸(NC軸)を備えるコンピュータ数値制御装置(CNC)付きのマシニングセンタ(以下、「工作機械」いう)1で用いられる工具7の回転径を検出する場合について説明する。図1は、サドル3bに光学式計測装置21を配設した工作機械1の概略図である。なお、工作機械1の駆動方向は、図1に矢印で示すX軸方向(紙面に対して前後方向)、Y軸方向(左右方向)、Z軸方向(上下方向)とする。また、図1の右上部に示したX、Y、Zの矢印の方向をプラス方向とする。図2aは、角部18aが直角形状の切削チップ18を工具7に取付けて回転させた状態で、φは工具7の工具回転径を示す。図2bは、角部18aが鋭角形状の切削チップ18を工具7に取付けて回転させた状態で、φは工具7の工具回転径を示す。図3は、光学式計測装置21を用いて工具7の回転径を検出する状態を示す概略図である。
【0006】
工作機械1は、工作物Wを載置するテーブル3aとこれを案内するサドル3bとを有し、サドル3b上に工具7の軸方向各位置における回転径を検出するための光学式計測装置21を備えている。
ベッド2及びサドル3bには、サドル3bとテーブル3aをX軸方向及びY軸方向に移動させる駆動用のX軸サーボモータ10及びY軸サーボモータ11がそれぞれ取付けられている。これにより、テーブル3aは、X軸方向とY軸方向に移動可能である。ベッド2に直立して固定されたコラム4には、主軸ヘッド5をZ軸方向(上下方向)に移動させる駆動用のZ軸サーボモータ12が取付けられている。主軸ヘッド5は、Z軸方向に移動可能である。
主軸ヘッド5には、工具主軸6を回転させる駆動用の主軸サーボモータ13が取付けられている。工具7は工具主軸6に挿着されている。工作物Wは、サドル3bとテーブル3aのX軸方向及びY軸方向の移動制御と、主軸ヘッド5のZ軸方向の移動制御と、主軸サーボモータ13の駆動による工具7の回転によって加工される。
【0007】
工作機械1には、プログラム等を入力する入力装置(図示省略)と、情報を表示する表示装置(図示省略)が設けられている。入力装置を操作することによって、光学式計測装置21や、サドル3b、テーブル3a、主軸ヘッド5、工具主軸6等を動作させることができる。また、工具の回転径検出プログラムの作成及び編集時におけるプログラムデータや、テーブルの位置座標や工具径の計測値等は、表示装置で表示される。
【0008】
工作機械1には、4軸数値制御軸(NC軸)を制御するコンピュータ数値制御装置(CNC)(以下、「CNC」いう)9が設けられている。CNC9は、中央演算処理装置(CPU)(以下、「CPU」いう)17、記憶装置14、NC軸駆動ユニット15、せり出し制御ユニット16で構成されている。X軸サーボモータ10、Y軸サーボモータ11、Z軸サーボモータ12、主軸サーボモータ13の駆動は、CPU17やNC軸駆動ユニット15等によって制御される。
また、CNC9には、工具の回転径検出ルーチン(プログラム)、工具の回転径補正ルーチン(プログラム)やNC制御ルーチン(プログラム)、工具の位置や回転径等が記憶装置14に記憶され、これらのルーチンがCPU17により実行されるようになっている。
CPU17は、記憶装置14、NC軸駆動ユニット15、せり出し制御ユニット16とに連結されている。NC軸駆動ユニット15、せり出し制御ユニット16と、X軸サーボモータ10、Y軸サーボモータ11、Z軸サーボモータ12、主軸サーボモータ13は、コラム4に設けられている中継盤8を介して接続されている。
【0009】
工具主軸6に図略の自動工具交換装置により選択的に挿着される各種工具7には、例えば図2aと図2bに示すように、切削チップ18が備えられている。工作物Wは、切削チップ18の角部18aを用いて加工される。工具7の内部には、例えば、実公昭61−35365号公報に記載されるような公知のせり出し機構(図示省略)が設けられている。せり出し機構は、工具7を加工穴径に合わせたり、切削チップ18の角部18aの摩耗量を補正するため、切削チップ18を工具7の半径方向に移動させて、工具回転径を調節するための機構である。
なお、切削チップ18の移動調整は、せり出し制御ユニット16でせり出し機構を駆動させ、自動で制御されるようになっている。
【0010】
光学式計測装置21には、図3に示すように、レーザビーム(光線)を照射する発光器22(例えば、半導体レーザ素子)と、レーザビームを受光する受光器23(例えば、フォトダイオード)が設けられている。光学式計測装置21は、レーザビームの投射方向が工具7の軸方向とほぼ直交するようにサドル3bに配設されている。
光学式計測装置21は、図3に示すように、発光器22から照射されたレーザビームが、切削チップ18の先端(例えば、角部18a)によって遮光され、受光器23の受光強度が閾値(例えば、受光強度が通常時のレベルの半分)になると信号を出力し、その位置における切削チップ18の最先端の位置を検出することができる。光学式計測装置21からの出力信号は、インタフェイス(I/F)を介してCPU17に入力される。光学式計測装置21の検出信号は、その時点におけるサドル3bの位置をX軸サーボモータ10のエンコーダ(図示省略)から読み取るために利用される。
【0011】
次に、上述した光学式計測装置21を用いて、工具7の工具回転径を検出する工具回転径検出方法について、図4〜図8に基づいて説明する。
まず、工具7の回転径を検出する動作を説明する。
「1」図4aに示すように、工具7を回転させた状態でサドル3bをX軸のプラス方向からマイナス方向側に移動させ、光学式計測装置21のレーザビームが、切削チップ18のX軸方向プラス側の最先端で遮光される位置X1を検出する。「2」図4bに示すように、工具を回転させた状態で、サドル3bをX軸のマイナス方向からプラス方向側に移動させ、光学式計測装置21のレーザビームが、切削チップ18のX軸方向マイナス側の最先端で遮光される位置X2を検出する。「3」両位置X1、X2の距離|X1−X2|を求める。図5に示すように、|X1−X2|は、回転軸方向(Z軸方向)の任意の位置における回転径である。また、位置X1、X2は、光学式計測装置21が信号を出力する時点のサドル3bの位置をX軸サーボモータ10のエンコーダ(図示省略)から読み取ることにより得られる。
【0012】
次に、工具回転径を検出する処理を、図7及び図8のフローチャート図に基づいて説明する。以下では、図2に示されるような、切削チップ18を備える工具7の工具回転径を検出する場合について説明する。
光学式計測装置21を用いて工具7の工具回転径を検出する工具回転径検出プログラムは、記憶装置14に予め記憶されている。
ここで、図7及び図8のフローチャート図に用いられている変数の定義について説明する。変数iは、回転径検出処理工程の回数(i回目)を示す。変数jは、各回転径検出処理工程における回転径検出位置(j番目の検出位置)を示す。変数kは、各回転径検出処理工程における最大回転径の検出位置を示す。変数D[i]jは、j番目の回転径検出位置における回転径を示す。変数Dmaxは、D[i]jのなかで最大のものを示し、変数Dold[i]jは、前回の回転径検出処理工程におけるj番目の回転径検出位置の回転径を示す。変数z´は、各回転径検出処理工程における検出区間の基準位置を示す。定数aは、初回測定時における変数(基準位置)z´の正負(上下)両側の区間幅を示す。なお、定数aは、工具に対応させて予め設定しておいてもよいし、工具回転径検出時にオペレータが設定してもよい。変数wは、回転径検出処理工程における分割区間幅(回転径を検出する工具軸方向の間隔)を示す。
【0013】
工具回転径検出処理が開始されると、まず、ステップS1で、変数の初期値を設定する。例えば、基準位置z´を「z0」に、検出処理工程回数iを「0」に、最大値Dmaxを「0」に初期設定する。
次に、ステップS2では、i=i+1と設定する。この場合、i=0であるから、i=0+1=1、すなわち1回目の回転径検出処理工程を実行する。
次に、ステップS3では、基準位置z´を中心とした正負(Z軸)の両側に区間幅aを有する検出区間内における分割区間幅wを設定する。本実施の形態では、分割区間数を4(回転径検出位置を等間隔の5箇所)に設定しているため、分割区間幅wは、w=a/(2i)で演算する。ここで、i=1の場合、w=a/2となり、1回目の回転径検出処理工程では、分割区間幅がa/2に設定される。すなわち、1回目の回転径検出処理工程では、図6に示すように、検出区間「L1」で、回転径検出位置は、j=1の時に[z´+a]、j=2の時に[z´+a/2]、j=3の時に[z´]、j=4の時に[z´−a/2]、j=5の時に[z´−a]である。
なお、分割区間数や分割区間幅wの設定方法は適宜変更可能である。
【0014】
次に、ステップS4で、CPU17は、iが1であるか否か、すなわち回転径検出処理工程が1回目であるか否かを判断する。回転径検出処理工程が1回目(i=1)であれば、ステップS5に進み、2回目以降(i≧2)であれば、ステップS14に進む。
次に、ステップS5では、CPU17は、図4a及び図4b、図5に示した方法でZ軸に沿った検出区間L1内の各回転径検出位置(j=1〜5)における回転径を検出する。例えば、1番目(j=1)の回転径検出位置(z´+a)において、工具7の最先端の位置X1[1]1とX2[1]1を検出し、D[1]1=|X1[1]1−X2[1]1|を求める。求めたD[1]1は、記憶装置14のデータ領域に記憶される。同様の方法で2番目〜5番目の回転径検出位置(j=2〜5)へ主軸ヘッド5を順次シフトし、これら位置における回転径D[1]2〜D[1]5を求める。
【0015】
次に、ステップS6では、変数jを「0」に、変数kを「0」に設定する。
次に、ステップS7では、j=j+1を設定する。この場合、j=0であるから、j=0+1=1である。
次に、ステップS8では、jが5以下であるか否か(1番目〜5番目の回転径検出位置であるか否か)を判別する。本実施の形態では、1回の回転径検出処理工程では回転径を5箇所で検出しているため、jが5以下であるか否かを判別している。jが5以下であれば、ステップS9に進み、jが6以上であれば、ステップS12に進む。
【0016】
次に、ステップS9では、CPU17は、D[i]jがDmax以上であるか否かを判断する。この場合、j=1であるから、D[1]1がDmax以上であるか否かを判別する。 D[i]j≧Dmaxの場合には、ステップS10に進み、D[i]j <Dmaxの場合には、ステップS11に進む。この場合、Dmax=0に設定されているため、ステップS9の判断結果は「Yes」である。
次に、ステップS10では、CPU17は、D[i]jをDmaxとして記憶する。この場合、D[1]1をDmaxとして記憶する。そして、kを更新する。すなわち、DmaxであるD[i]jを検出した回転径検出位置jをkとして記憶する。この場合、k=1を記憶する。
次に、ステップS11では、D[i]jをDold[i]jに記憶して、ステップS7に戻る。この場合、D[1]1をDold[1]1として記憶する。
【0017】
次に、ステップS12では、次の回転径検出処理工程における検出区間の基準位置z´を設定するため、z´=z´+2w−(k−1)wを演算する。図6に示す例の場合、1回目の回転径検出処理工程では、回転径の最大値が3番目の検出位置にあったと記憶されており、k=3が記憶されているため、2回目のz´は、1回目のz´と同じ位置になる。
次に、ステップS13で、CPU17は、ステップS3で求めた分割区間幅wが、設定値δ未満であるか否かを判別する。分割区間幅wが設定値δ未満であれば検出処理を終了し、設定値δ以上であればステップS2に戻る。これにより、分割区間幅wが設定値δ未満になるまで回転径検出処理工程が繰り返される。
なお、設定値δは、任意に設定される設定値であり、例えば加工時における工具7の工具径許容誤差等を考慮して決定される。
【0018】
次に、ステップS2では、工程回数iを、i=i+1により求める。この場合、i=1+1=2であり、2回目の回転径処理工程を行う。2回目の回転径検出処理工程では、1回目の回転径検出処理工程と同等の処理を行う。
なお、2回目の回転径検出処理工程では、ステップS4の判定結果が「No」となるため、ステップS14に進む。
ステップS14では、前回の回転径検出処理工程(この場合、1回目の回転径検出処理工程)における回転径検出位置が今回の回転径検出処理工程(この場合、2回目の回転径検出処理工程)における回転径検出位置と同じであれば、前回検出した回転径を用いる。このように、既に検出している回転径を用いることにより、回転径検出時間を短縮することができる。
図6に示す例では、2回目の回転径検出処理工程における1番目、3番目、5場目(j=1、3、5)の回転径検出位置と1回目の回転径検出処理工程における2番目、3番目、4番目(j=k−1、k、k+1)の回転径検出位置と同じであるため、D[2]1としてDold[2]k-1を用い、D[2]3としてDold[2]kを用い、D[2]5としてDold[2]k+1を用いる。
なお、ステップS14では、今回の回転径検出位置が、前回の回転径検出位置だけでなく、それまでの回転径検出位置と同じか否かを判断するようにしてもよい。
【0019】
ステップS14の処理を行った後、ステップS15に進む。ステップS15では、ステップS14で前回の回転径検出処理工程で検出した回転径を用いることができなかった回転径検出位置の回転径を検出する。図6に示す例では、2番目(j=2)、4番目(j=4)の回転径検出位置で、ステップS5で検出した方法と同様の方法で、回転径D[2]2、D[2]4を検出する。例えば、2番目の回転径検出位置における工具7の先端位置X1[2]2とX2[2]2を検出し、D[2]2=|X1[2]2−X2[2]2|を求める。
ステップS15の処理を行った後、ステップS6以下の処理を行う。
以上のような回転径検出処理工程を、分割区間幅wが設定地δ未満になるまで、工程回数iを1づず増加させて行う。
【0020】
以上の実施の形態では、図7に示すステップS5では、全ての回転径検出位置(j=1〜5)で回転径を検出したが、一部を省略することもできる。
例えば、通常、工具(切削チップ)の回転径の軌跡は、図6に示すように、極大値が1つである。すなわち、回転径の極大値は、その回転径検出処理工程における最大回転径とみなすことができる。したがって、回転径が極大値であることを検出されると、それ以後の回転径の検出を省略することができる。
例えば、ステップS5において、j番目の回転径D[1]jを検出した時、「j−1」番目の回転径D[1]j-1が、j番目の回転径D[1]j及び「j−2」番目の回転径D[1]j-2より大きい場合(例えば、D[1]j-1>D[1]j、且つD[1]j-1>D[1]j-2)には、j+1番目以降の回転径検出位置での回転径の検出処理を中止(i回目の回転径検出処理工程を終了)する。
以上のようにして求められた工具7の回転径Dmaxは、CPU17が工具径補正ルーチンを実行する際に使用される。このルーチンでは、回転径Dmaxとその工具について予め登録されたその工具の呼び回転径とに基づいて偏差量が求められ、周知(せり出し機構については、例えば前述した実公昭61−35365号公報に記載されている)のように工具7のせり出し機構の一部を回転不能に拘束した状態でせり出し制御ユニット16が主軸サーボモータ13を偏差量に応じた回転角度だけ回転するように制御し、切削チップ18尖端の位置を工具7に対し半径方向に位置補正する。これにより、工具7の実際の回転径は呼び回転径に正確に一致される。
従って、その後NC制御ルーチンが実行されボーリング加工が行われるとき、工作物Wには目標とする直径の穴が精密に仕上げ加工されるようになる。
【0021】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更してもよい。
例えば、本実施の形態では、4軸数値制御軸(NC軸)を備えるコンピュータ数値制御装置(CNC)付きのマシニングセンタ(工作機械)1の工具7の回転径を検出する場合を用いて説明したが、工作機械の種類については、種々変更可能である。
また、切削チップ18を取付けた工具7の工具回転径を検出したが、工具回転軸に沿った位置によって回転径が異なる工具であれば工具の種類、形状については、種々変更可能である。
また、切削チップ18の角部18aを、工具7の回転径で最も大きくなる位置としたが、回転径が最も大きくなる工具7の位置については、切削チップ18の角部18aに限定しない。
また、CNC9にせり出し制御ユニット16を、工具7の内部にせり出し機構を設けたが、せり出し制御ユニット16とせり出し機構は省略してもよい。せり出し機構を内蔵していない工具を使用してその工具径よりもかなり大径の穴を加工する場合では、工具の回転中心が加工すべき穴中心の廻りを周回運動するオービット加工が行われる。このオービット加工では、サドル3bとテーブル3aを同時2軸制御し、高速回転している工具の中心が工作物Wに対し相対的に加工すべき穴中心と同心の円軌跡上を移動するように制御される。この円軌跡は、工具の呼び回転径と加工すべき穴の仕上げ径によりその半径が決定されるが、工具径検出ルーチンにより求められた工具の回転径Dmaxと呼び回転径との偏差量に応じて円軌跡を径方向内側あるいは外側に補正し、この補正した円軌跡に沿って高速回転状態の工具を周回運動させることにより、目標径の穴を精密に仕上げ加工することが可能となる。
また、レーザビーム式の光学式計測装置21を用いて工具7の工具回転径を検出したが、工具7の最先端の位置を検出する計測装置については、他の光学式計測装置等種々の計測装置を用いることができる。
また、サドル3bに光学式計測装置21を配設し、サドル3bと主軸ヘッド5を移動させて工具7の位置を検出したが、工具7の位置の検出方法については、種々変更可能である。
また、光学式計測装置21では、レーザビームの受光強度が発光強度の半分になるときに工具7の最先端で遮光される位置を検出したが、閾値については、適宜変更可能である。
また、工具の回転径を検出する処理方法は、図7及び図8のフローチャート図に示した方法に限定されない。
また、分割区間幅wはw=a/(2i)で演算し、分割区間数を4(回転径検出位置を5箇所)に設定したが、分割区間幅wを求める演算式w=a/(2i)と分割区間数については、種々変更可能である。
また、回転径検出位置を等間隔に設定したが、回転径検出位置の間隔は等間隔でなくてもよい。
また、基準位置を検出区間の中央位置に設定したが、基準位置の設定は種々変更可能である。
また、最大回転径を検出する方法は、実施の形態で説明した方法に限定されない。
また、分割区間幅が設定値未満(あるいは、以下)になった場合に回転径検出処理を終了させたが、回転径検出処理を終了させる条件(所定条件)としては、これに限定されず種々の条件を用いることができる。例えば、回転径検出処理工程を所定回数行ったことを所定条件とする。この方法を用いれば、工程回数のみを監視すればよいため、回転径検出処理を終了させる処理が簡単である。あるいは、前回の回転径検出処理工程における最大回転径と今回の回転径検出処理工程における最大回転径との差が設定以内になったことを所定条件とする。この方法を用いれば、回転径検出処理を、工具の形状等に応じてた最適な状態で終了させることができる。
【0022】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明による工具の回転径検出方法を用いれば、工具回転軸に沿った位置によって回転径が異なる工具の工具回転径を自動的に、短時間で検出することができる。このため、工作物の加工時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による工具回転径検出方法を実施する工作機械の概略図である。
【図2】図2aは、角部が直角形状の切削チップを工具に取付け、図2bは、角部が鋭角形状の切削チップを工具に取付けて、工具を回転させている状態を示す図である。
【図3】光学式計測装置を用いて工具の回転径を検出する状態を示す概略図である。
【図4】図4aは、レーザビームが切削チップの最先端で遮光される位置X1、図4bは、位置X2を検出する状態を示す図である。
【図5】工具の回転径を検出する原理を説明する図である。
【図6】光学式計測装置を用いて工具の回転径を検出する動作を説明する図である。
【図7】工具回転径を検出する処理の一例を示すフローチャート図(前半)である。
【図8】工具回転径を検出する処理の一例を示すフローチャート図(後半)である。
【図9】工具チップ(切削刃)を用いて工作物の穴開けの加工を行う状態を示す図である。
【符号の説明】
1…工作機械
3a…テーブル
3b…サドル
7…工具
9…CNC
14…記憶装置
17…CPU
18…切削チップ
21…光学式計測装置

Claims (7)

  1. 工具の回転時における工具回転径を検出する工具回転径検出方法であって、
    (a)工具の回転軸に沿った任意の位置を基準位置z´に設定するステップと、
    (b)前記回転軸に沿って、前記基準位置z´を含み互いに所定の区間幅wだけ離れた、予め設定した所定数の回転径検出位置を設定するステップと、
    (c)前記所定数の回転径検出位置でそれぞれ前記工具回転径を検出して最大の回転径を求めるステップと、
    (d)前記所定数の回転径検出位置の中から前記最大の回転径となった位置を新たな基準位置z´に設定し、前記区間幅wを1/2とした新たな区間幅wを設定するステップとを有し、
    前記ステップ(b)〜ステップ(d)を所定条件が満足されるまで繰り返し実行し、最後に実行された前記ステップ(c)で検出された最大の回転径を前記工具回転径とすることを特徴とする工具回転径検出方法。
  2. 請求項1に記載の工具回転径検出方法であって、
    前記ステップ(b)〜ステップ(d)を繰り返した際、
    前回のステップ(b)における所定数の回転径検出位置と、今回のステップ(b)における所定数の回転径検出位置とで、
    重なった位置となった回転径検出位置では、前回検出した工具回転径を用いることを特徴とする工具回転径検出方法。
  3. 請求項1または2に記載の工具回転径検出方法であって、
    前記所定条件は、前記ステップ(d)で設定した新たな区間幅wが設定値以下になったとき満足されることを特徴とする工具回転径検出方法。
  4. 請求項1または2に記載の工具回転径検出方法であって、
    前記所定条件は、前記ステップ(b)〜ステップ(d)が所定回数繰り返されたとき満足されることを特徴とする工具回転径検出方法。
  5. 請求項1または2に記載の工具径検出方法であって、
    前記所定条件は、前記ステップ(b)〜ステップ(d)を繰り返す際、前回のステップ(c)で検出された最大の回転径と今回のステップ(c)で検出された最大の回転径の差が設定値以内になったとき満足されることを特徴とする工具回転径検出方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の工具回転径検出方法であって、
    前記ステップ(c)では、前記所定数の回転径検出位置におけるn番目の回転径検出位置で検出した時に、(n−1)番目の回転径検出位置で検出した回転径がn番目及び(n−2)番目の回転径検出位置で検出した回転径より大きいと判定される場合には、今回のステップ(c)において(n+1)番目以降の回転径検出位置での工具回転径の検出処理を中止し、前記(n−1)番目の回転径検出位置での工具回転径を今回のステップ(c)における最大の回転径とすることを特徴とする工具回転径検出方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の工具回転径検出方法であって、
    前記ステップ(c)では、発光器及び受光器を使用し、発光器から受光器に照射される光線に対し相対的に前記工具を回転軸線方向の前記所定数の回転径検出位置に順次位置決めし、これら各位置決め位置において前記工具を前記光線を横断する方向に光線に対し相対的に移動させて工具の両端の位置を検出し、検出した位置に基づいて回転径を検出することを特徴とする工具回転径検出方法。
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