JP3755403B2 - 磁性体材料の変態状態の計測方法、及び磁性体材料の変態状態の計測装置 - Google Patents

磁性体材料の変態状態の計測方法、及び磁性体材料の変態状態の計測装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄鋼をはじめとする磁性体材料の成分や加工履歴や熱処理履歴の影響を受けずに、磁気的特性の変化を検出することにより、磁性体材料の変態率または変態層厚さの如き材料特性を計測する方法、及び変態状態を計測する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄鋼業における鋼板、鋼管等の製造プロセスにおいて、製品の機械的強度や物理的特性に大きく影響を与える組織、とりわけ変態状態を一定に保つことは、高い品質を維持するために重要な事項である。たとえば、熱間鋼の冷却過程においては、高温状態におけるオーステナイト(γ)相からフェライト(α)相への変態が、加熱過程においてはフェライト相からオーステナイト相への変態が、表面から徐々に内部に進んでいくが、変態の時期、及び変態している層の厚さを監視することは、鋼材の材質を管理する上で極めて重要であり、これらをオンラインで計測するセンサの開発が望まれている。
【0003】
従来、オンラインにおける変態状態の測定方法として、フェライト相とオーステナイト相の電磁気的特性の変化を利用した検出方法が提案されている。
例えば、特開平8−62181号公報には、図8に示すように、励磁コイル22と検出コイル23を被測定鋼板21の両側に対向させ、被測定鋼板21内を通過する磁束の減衰率が鋼板の磁気的特性により変化する性質を利用して、演算処理装置24により変態率を得る方法が開示されている。
【0004】
また、特開平2−42402号公報には、図9に示すように、励磁コイル22と検出コイル23を被測定鋼板21の同一側に配置し、相互誘導により生じる磁束量が被測定鋼板21の磁気的特性により変化する性質を利用して、演算処理装置24により変態率を得る方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの従来方法には以下のような問題があった。
▲1▼対象の鉄鋼材料の成分・加工履歴・熱履歴の影響を受ける。
フェライト層とオーステナイト層の厚さの割合等を、磁気特性を利用して検出するためには、各層における透磁率を正確に知る必要がある。ところが、透磁率は、結晶粒径・固溶量・析出量・転位密度などによって決定される。従って、透磁率は鉄鋼材料の成分や製造条件の影響を受けて変化し、容易にその値を知ることはできない。さらに、透磁率は偏析や加工の影響により、材料内で不均一となっている可能性がある。
【0006】
そのため、従来の方法では、鋼種や製造条件ごとに検量線を設けて透磁率をこの検量線より求めるか、別途手段により透磁率を求める必要があり、演算が煩雑になるという問題があった。また、対象の鉄鋼材料の成分・結晶粒径が偏析している場合や、結晶粒径が粗い場合には、透磁率のバラツキに起因して測定精度が低下するという問題があった。
▲2▼測定範囲が狭い。
交流磁化に基づく計測では、鉄鋼材料の透磁率が高いことと表皮効果の影響から鉄鋼材料への磁場の侵入は数mm程度であり、厚板材やスラブへの適用が制限されるという問題点があった。
▲3▼ノイズや残留磁化の影響を受ける。
直流磁化に基づく計測では、磁場は比較的深い領域まで侵入するものの、外乱ノイズや、鋼板自身の残留磁化の影響をキャンセルできないため、測定精度が悪いという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、被測定材料における結晶粒径・固溶量・析出量・転位密度の影響を受けず、かつ測定範囲が広く、加えて外乱ノイズや、鋼板自身の残留磁化の影響を受けない磁性体材料の材料特性の計測方法及び磁性体材料の変態状態の計測方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための第1の手段は、磁性体材料の変態状態を、それらの結晶状態に応じて変化する強磁性状態と非磁性状態との透磁率の違いによる磁束の変化に着目して電磁気的に計測する方法であって、被測定磁性体材料を、当該被測定磁性体材料の磁化状態が回転磁化領域となるような強度の直流磁場を印加して磁化し、この状態にある被測定磁性体材料の電磁気的特性を、交流磁場を用いて測定することにより、変態状態の計測を行うことを特徴とする磁性体材料の変態状態の計測方法である
【0009】
本手段における最大の特徴は、測定に際し、被測定磁性体材料を、当該被測定磁性体材料の微分透磁率の値を一定とするように、その磁化状態が回転磁化領域となるような強度の直流磁場を印加して磁化することである。被測定鋼板を直流磁化すると、図1に示したような磁化特性(B−H特性)に従って鋼板は磁化される。この磁化過程を詳しく考察してみると、(1)初期磁化領域、(2)磁壁移動領域、(3)回転磁化領域に大別することができる。
【0010】
▲1▼は、消磁の状態から磁化されるとき、弱い磁界のところで磁化が可逆的に変化する範囲であり、磁化変化は主として可逆磁壁移動に基づいている。▲2▼は、不連続磁化範囲とも呼ばれ、この範囲の磁化変化は多くの場合、磁壁の非可逆的な移動に基づいて起こっている。このような磁壁の非可逆的移動は、結晶粒界、欠陥、析出物、内部応力などによって生じ、ヒステリシスの原因となっている。▲3▼は、▲2▼の磁壁移動が全て終了、不連続磁化範囲を越えた範囲であり、磁化変化は可逆的となる。ここにおいて磁化は結晶の磁化容易方向から磁界方向への磁区磁化の回転によって行われる。
【0011】
つまり、磁化が材料の成分や材料の製造履歴の影響を受けるのは▲2▼の磁壁移動領域においてであり、▲1▼及び▲3▼の領域においては、鉄原子の結晶構造に依存して一義的に決まる可逆的な変化となる。従って、鉄原子の結晶構造を大きく変えるほどの成分の添加、または加工を施さない、通常製造される鉄鋼製品を考えた場合には、この領域では微分透磁率(磁化曲線の傾き)は一定の値に落ち着くと考えて差し支えない。
【0012】
図2は鉄鋼材料中の炭素含有量が変化した場合の磁化過程の変化を示した図である。この図からも分かるように、磁界の低い領域では、含有炭素量の違いにより微分透磁率すなわち磁化特性B−H曲線の傾きに差があるが、磁界の増加とともに微分透磁率はほぼ同一の値になっていく。
【0013】
そこで、▲3▼の回転磁化領域まで直流磁界を高めた状態にて、交流磁化時の磁気特性を測定することにより、鉄鋼材料の成分や製造履歴に起因した組織の差に依存することなく、正確な材料特性の測定を行うことができる。
【0014】
さらに、測定に交流磁化を用いることにより、外乱ノイズや、鋼板自身の残留磁気の影響をキャンセルすることができる。また、▲3▼の回転磁化領域においては鋼板の微分透磁率は小さくなっているので、磁束の浸透深さが大きくなり、厚さの厚い鋼板においても、材料特性を計測することができる。
【0015】
以上のことは、鋼板のみならず、鋼管においても成り立ち、さらに鉄鋼のみならず、磁性体材料一般について適用することができる。被測定磁性体材料の電磁気的特性を、交流磁場を用いて測定することにより、材料特性の計測を行う方法自体については、従来公知の方法を適宜使用することができる。
【0019】
変態状態(変体率、変態相の厚さ等)は、2つの層の透磁率の違いにより、磁束が変化することを利用して行われるが、本手段においては、当該被測定磁性体材料の磁化状態が回転磁化領域となるような強度の直流磁場を印加して磁化し、この状態にある被測定磁性体材料の電磁気的特性を、交流磁場を用いて測定することにより、変態状態の計測を行っている。
【0020】
よって、前述のごとく、磁性体材料の成分や製造履歴に起因した組織の差に依存することなく、正確な材料特性の測定を行うことができると共に、外乱ノイズや、磁性体材料自身の残留磁気の影響をキャンセルすることができ、かつ、厚さの厚い磁性体材料においても、変態状態を計測することができる。被測定磁性体材料の電磁気的特性を、交流磁場を用いて測定することにより、変態状態の計測を行う方法自体については、従来の公知の方法を選択して使用することができる。
【0025】
前記課題を解決するための第2の手段は、磁性体材料に、その磁化状態が回転磁化領域となるような強度の直流磁化を印加可能な直流磁化装置と、当該磁性体材料の磁化部分について、交流磁場を用いて電磁気的特性の測定を行うセンサと、そのセンサの出力から、前記磁性材料の変態状態を求める変態測定器とを有してなることを特徴とする磁性体材料の変態状態測定装置である。
【0026】
本手段を用いると、前記第1の手段を容易に実現することができるので、前記第1の手段の作用効果を得ることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の例を図を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態の1例である材料特性を求める方法を実施するための装置の概要を示す図である。図3において1は被測定鋼板、2は直流磁化装置、3は交流磁化装置、4は磁場検出器、5は磁心、6は直流磁化コイル、7は交流磁化コイル、8はロックインアンプ、9は信号処理装置である。
【0028】
被測定鋼板1を、直流磁化装置2及び直流磁化コイル6で直流磁化する。さらに交流磁化装置3及び交流磁化コイル7により交流磁場を被測定鋼板1に加える。磁芯5は、直流磁化と交流磁化に共通して用いられる。交流磁場検出器4により、被測定鋼板1の表面における表面方向の交流磁場を検出する。そして、ロックインアンプ8により、検出された交流磁場信号と交流磁化信号との同期検波を行ってノイズ成分を除去することにより、交流磁場信号の強度を感度良く検出する。検出された交流磁場信号強度から、信号処理装置9において材料特性を演算して求める。
【0029】
次に、上記のごとく被測定鉄鋼材料を直流で回転磁化領域まで磁化した状態において、材質特性の一つである変態層の厚さを計測する例について説明する。
被測定対象の鉄鋼材料として、非磁性体である母層(オーステナイト相)の表層部に強磁性体である変態層(フェライト相)が生成している鋼板を考える。このような鋼板を交流磁化器3により交流磁場で励磁した場合、被測定鉄鋼材料を透る交流磁束の強度は、強磁性体である変態層の磁気抵抗に応じて増減する。つまり、変態層の磁気抵抗が増すと変態層内に交流磁束が流れにくくなり、鋼板表面近傍の交流の漏洩磁束量は増加する。逆に変態層の磁気抵抗が減ずると変態層内に交流磁束が流れやすくなり、鋼板表面近傍の交流の漏洩磁束量は減少する。
【0030】
ここで、強磁性体である変態層の磁気抵抗は、変態層の透磁率μと変態層厚みdの積に反比例するため、漏洩磁束量と変態層厚さとの関係は、おおよそ以下のように表せる。ここで、透磁率μは、鋼材を回転磁化領域で磁化した場合の交流磁場に対する透磁率すなわち回転磁化領域における微分透磁率であり、先に述べたとおり、この透磁率は対象鉄鋼材料の成分や製造履歴に起因した組織の差に依存することない。この透磁率μは事前に測定しておくことにより、既知の値として取り扱うことができる。
Φ=Φ0(1−αμd)…(1)
ここに、
Φ :鋼板表面における交流磁束量
Φ0:変態層がないときの鋼板表面における交流磁束量(既知の値)
α :定数
である。
従って、被測定鉄鋼材料表面近傍の交流の漏洩磁束Φを測定することにより、変態層の厚さdは式(1)から求めることができる。
【0031】
直流磁場の印加を用いない従来方式においては、透磁率μは初期磁化領域あるいは磁気壁移動領域の動作をするためその値は大きくなる。そのため、変態層が少しでも厚くなると、交流磁場はほとんど全て変態層を通過するため鋼板表面で検出される交流磁場信号は変態層の変化に対してほとんど変化しなくなり、変態層の厚さに対する感度が著しく低下する。すなわち、変態層の厚さの測定範囲が狭くなる。
【0032】
ところが、本発明のごとく、直流磁場で鋼板を回転磁化領域まで磁化すると透磁率は低くなるので、変態層の厚さが厚くなっても鋼板表面で検出される交流磁場信号の変化で変態層の厚さの変化を広範囲にとらえることができ、測定レンジを広くできる。
【0033】
なお、以上の実施の形態においては、磁場検出器8を被測定鋼板1に対して交流磁化コイル7と同じ側に設けているが、交流磁化コイル7と反対側に設け、透過交流磁束を検出するようにしてもよい。透過磁束量と変態層厚さとの関係も、(1)式で表されるような関係にあるので、透過磁束量を求め、これから(1)式を利用して変態層厚さを求めることができる。
【0034】
また、いずれの場合も、直流磁化コイル6と交流磁化コイル7は、被測定鋼板1に対して同じ側においても反対側においてもよいが、同じ側に置くことにより磁心を共有でき、さらには実施例で述べるようにコイルをも共有できるので、同じ側に置くほうが好ましい。
【0035】
磁化レベルとしては完全に回転磁化領域とすることが好ましいが、磁化装置の能力、透磁率の選定の都合、及び測定精度の兼ね合いにより、回転磁化過程が部分的に進行している回転磁化領域近傍でも、同様の効果が期待できることはいうまでもない。
【0036】
なお、交流測定において、直流磁化を同時に行う技術としては、従来から渦流探傷において行われている飽和磁化がある。例えば、「新非破壊検査便覧」(社団法人日本非破壊検査協会編、日刊工業新聞社刊)P.408にその記述がある。これは直流磁化をかけることで、欠陥の有無を判断する際に邪魔になる、強磁性体の磁気特性の局所的な不均一に起因するノイズ(通常ランダムに発生する)を低減するものである。
【0037】
一方、本発明における磁化は、数量的測定において、プロセス履歴や成分の違いなどに起因する被検査体全体に亘る透磁率のずれの影響を低減する技術であり、両者は異なる。その結果、本発明では、オン・オフ的な結果を得る渦流探傷とは技術内容が異なり、鉄鋼プロセスで実際に使用できるレベルの数量的測定を可能にしている。
【0038】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図を用いて説明する。図4は、本発明の実施例である変態層厚さ測定方法を実施するための装置の概要を示す図である。図4において、1は被測定鋼板、4は磁場検出器、8はロックインアンプ、9は信号処理装置、11は直流信号発生器、12は交流信号発生器、13は電力増幅器、14は磁化器、15は増幅器である。
【0039】
直流信号発生器11からの直流信号と交流信号発生器12からの交流信号とを重畳した信号を、電力増幅器13で増幅して磁化器14へ印加することにより、磁化器14に対向した被測定鋼板1が磁化される。ここで、直流磁場成分は被測定鋼板1が回転磁化領域に達するように十分な大きさの磁場としている。磁化器14は、図示するようにU字型を有しており、2つのヨークが被測定鋼板1に近接して設置される。この磁化器14のほぼ中央には、被測定鋼板1の面方向の磁束を検出するため、磁場検出器4が設置されている。この実施例では、磁場検出器4としてホール素子を用いている。
【0040】
磁場検出器4で検出された信号は、増幅器15で増幅された後ロックインアンプ8に入力される。ロックインアンプ8は、交流信号発生器12の出力信号に基づいて入力信号を同期検波し、交流磁場の振幅に対応する値を出力する。信号処理装置9は、入力された信号に基づいて、前記(1)式により変態層厚さを算出して出力する。
【0041】
本実施例において、直流励磁電流を1.7Aとして、鋼板の磁化を回転磁化領域にした場合の変態層厚さ測定結果を図5に示す。図5において、横軸は変態層の厚さを顕微鏡により実測した値であり、変態層厚さ評価値として示されている縦軸は、本実施例の方法で測定された変態層の厚さである。なお、交流の励磁電流は0.2A、周波数は10Hzとした。測定対象としては、炭素量を変化させた鋼板と熱処理(冷却速度)を変化させた鋼板を選定した。
【0042】
図5から、変態層の厚さは、対象の鋼板の成分や熱処理の方法などによる鋼板の組織の変化によらず、誤差が0.3mm以内の精度で正確に測定ができることがわかる。
【0043】
比較例として、磁化器への直流励磁電流を0.5Aと減少させた場合の変態層厚さ測定値と実測値との関係を図6に示す。図6における横軸と縦軸は、図5と同じものである。図6より、比較例においては、炭素量が大きく異なる鋼板を用いた場合や熱処理方法が異なる鋼板では、それらの影響を受け、測定値に大きな誤差を生じることがわかる。これは、直流励磁電流が0.5A程度では、鋼板の磁化が磁壁移動領域にあるため、微分透磁率が鋼板の成分や熱処理方法の違いの影響を大きく受けるためである。
【0044】
また、他の比較例として、磁化器への直流励磁電流を0Aとして、直流磁場を与えない場合の変態層厚さに対する検出信号の変化を図7に示す。この場合には、変態層の厚さが3mm以上になると、検出信号が飽和して変化せず、測定範囲が著しく小さくなる。これは、直流磁場が無い場合は、磁化過程が初期透磁率に近くなり大きな値となるため、変態層が少しでもあるとそこにほとんどすべての交流磁束が通過し、鋼板表面の交流磁束の変化が無くなるためである。
【0045】
なお、以上の実施例においては、変態層厚さを測定する例について説明したが、変態層厚さが一定とみなせる場合には、同様の手段により変態率を測定することができることが明らかである。このように、本発明においては、磁気特性の変動をなくしたり、キャンセルして一定にするようにすることにより、交流磁気特性と関係のあるその他の材料特性を、精度良く求めることができる。
【0046】
たとえば、材料特性の一つとして、鋼板中のSi含有量も求めることができる。すなわち、鋼板の磁化状態が回転磁化領域となるよう、直流磁化器により直流磁化を印加し、その磁化された部分について、渦電流センサにより渦電流測定を行い、予め求めておいた、渦電流センサの出力とSi濃度の相関関係に基づき、電子回路(計算機)によりSi濃度を求める。
【0047】
さらに、Si濃度測定等の場合は、回転磁化領域に磁化する方法に限らず、たとえば以下の方法により、透磁率を一定に保ちつつ測定することで同様の効果が期待できる。
【0048】
すなわち、直流磁化器により鋼板に直流磁界を印加し、その時下された部分の微分透磁率、又は微分透磁率と相関のある物理量を微分透磁率測定センサにより測定し、微分透磁率が一定になるよう、直流磁化の強さを制御する。そのような条件の下で、磁化された部分について、渦電流センサにより渦電流測定を行い、予め求めておいた、渦電流センサの出力とSi濃度の相関関係に基づき、電子回路(計算機)によりSi濃度を求める。
【0049】
なお、透磁率変動の影響を低減する手段として、課題を解決するための手段において採用されている2つの手法、すなわち、
(1)回転磁化領域まで直流磁化する手法
(2)回転磁化領域まで直流磁化せず、磁化レベルをコントロールし、微分透磁率を一定に保つ手法
のうち、前者の方が一般的に実現容易であり、実機を実現する上で有利である。その理由は、後者において透磁率を一定に保つためには、何らかの形で精度良く透磁率を測定する必要があるが、測定対象によっては、透磁率の測定は困難であるからである。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、被測定磁性体材料の成分や製造履歴に起因した組織の差に依存することなく、正確な材料特性、変態状態の測定をオンラインで行うことができる。また、外乱ノイズや、鋼板自身の残留磁気の影響をキャンセルすることができると共に、厚さの厚い材料においても、正確な測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼板の磁化特性過程(B−H特性)を示す図である。
【図2】鉄鋼材料中の炭素含有量が変化した場合の磁化過程の変化を示した図である。
【図3】本発明の実施の形態の1例である材料特性を求める方法を実施するための装置の概要を示す図である。
【図4】本発明の実施例である変態層厚さ測定方法を実施するための装置の概要を示す図である。
【図5】本発明の実施例により測定した変態層の厚さと変態層厚さの実測値との関係を示す図である。
【図6】直流磁化を弱めた比較例により測定した変態層の厚さと変態層厚さの実測値との関係を示す図である。
【図7】直流磁化が無い場合の、変態層厚さと交流磁束測定値との関係を示す図である。
【図8】従来の、鋼板の変態率を磁気特性を計測することによりオンラインで測定する方法の1例を示す図である。
【図9】従来の、鋼板の変態率を磁気特性を計測することによりオンラインで測定する方法の他の例を示す図である。
【符号の説明】
1…被測定鋼板
2…直流磁化装置
3…交流磁化装置
4…磁場検出器
5…磁心
6…直流磁化コイル
7…交流磁化コイル
8…ロックインアンプ
9…信号処理装置
11…直流信号発生器
12…交流信号発生器
13…電力増幅器
14…磁化器
15…増幅器

Claims (2)

  1. 磁性体材料の変態状態を、それらの結晶状態に応じて変化する強磁性状態と非磁性状態との透磁率の違いによる磁束の変化に着目して電磁気的に計測する方法であって、被測定磁性体材料を、当該被測定磁性体材料の磁化状態が回転磁化領域となるような強度の直流磁場を印加して磁化し、この状態にある被測定磁性体材料の電磁気的特性を、交流磁場を用いて測定することにより、変態状態の計測を行うことを特徴とする磁性体材料の変態状態の計測方法。
  2. 磁性体材料に、その磁化状態が回転磁化領域となるような強度の直流磁化を印加可能な直流磁化装置と、当該磁性体材料の磁化部分について、交流磁場を用いて電磁気的特性の測定を行うセンサと、そのセンサの出力から、前記磁性材料の変態状態を求める変態測定器とを有してなることを特徴とする磁性体材料の変態状態測定装置。
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