JP3755316B2 - β線線量計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、放射線管理区域で作業する業務従事者が携帯し、管理区域内での作業中に被曝した放射線量を測定する多機能個人警報線量計等に搭載されるβ線線量計に関する。
【0002】
【従来の技術】
多機能個人警報線量計は、放射線管理区域で作業する業務従事者が携帯し、管理区域内での作業中に被曝した放射線の線量を測定する個人警報線量計であって、従来からのγ線の線量を測定する機能に、β線の線量や中性子線の線量等を測定する機能が付加されたものである。
【0003】
放射線検出器でγ線以外の放射線の線量を測定する場合には、共存するγ線の干渉を受ける。放射線検出器で検出される電気パルス信号のエネルギーが大きいα線や中性子線等の場合には、大部分のγ線によるエネルギーより大きいエネルギーに検出の下限値(ディスクリレベル)を設定して干渉を避けるという方法が採用できる。しかし、β線の線量を測定する場合には、放射線検出器で検出される電気パルス信号のエネルギーがγ線の場合と余り変わらないので、エネルギーに検出の下限値を設定してもγ線の干渉成分を十分に除去することができず、γ線の干渉成分を補償することは不可欠である。
【0004】
従来技術によるβ線線量計においては、個人警報線量計には必ず備えられているγ線線量計の計数値を利用して、β線線量計のγ線による干渉成分が補償されている。
図4はこのようなβ線線量計を備えた多機能個人警報線量計の1例の構成を示すブロック図である。
【0005】
この多機能個人警報線量計は、β線計数回路1と、γ線計数回路2と、両回路の感度の違いを補償するための感度比を入力する感度比入力回路3と、測定した線量値等を表示する表示器4と、β線計数回路1及びγ線計数回路2の計数値を演算処理してβ線の線量値やγ線の線量値等を算出し、表示信号を出力し、外部回路と線量値データや各種情報を授受するμCPU5とから構成されている。
【0006】
β線計数回路1は、β線を電気パルス信号に変換するβ線検出器11と、この電気信号を増幅する増幅器12と、ノイズを除去し所定のエネルギー特性を得るために所定のエネルギー(ディスクリレベル)以上の電気パルス信号を弁別する波高弁別器13と、弁別された電気パルス信号を計数する計数回路14とで構成されている。なお、β線検出器11は共存するγ線も検出する。また、β線計数回路1のディスクリレベルは100keV程度である。
【0007】
γ線計数回路2は、β線やα線を遮蔽し且つγ線のエネルギー依存性を改善するためのフィルタを備え、且つγ線を電気パルス信号に変換するγ線検出器21と、この電気信号を増幅する増幅器22と、ノイズを除去し所定のエネルギー特性を得るために所定のエネルギー(ディスクリレベル)以上の電気パルス信号を弁別する波高弁別器23と、弁別された電気パルス信号を計数する計数回路24とで構成されている。なお、γ線計数回路2のディスクリレベルは40keV 程度である。
【0008】
β線計数回路1の計数値nB 及びγ線計数回路2の計数値nG からβ線の線量値NB を算出する場合には、
まず、β線を検出しているか否かをチェック(以下では有意の差のチェックという)するために、nG にその統計誤差(nG の平方根)を加えた値に、β線検出器11のγ線感度とγ線検出器21のγ線感度との比Bを乗じた値B(nG +nG 1/2 )と、nB とを比較し、nB の方が大きい場合に、β線計数回路1がβ線も検出しているとして、β線の線量値NB を次の計算式によって算出する。
【0009】
NB =A(nB −BnG )
ここで、Aはβ線計数回路1の計数値nB をβ線の線量値に換算する係数であり、Bは、先に述べた、β線検出器11のγ線感度とγ線検出器21のγ線感度との比で、感度比入力回路3に入力されている値である。これらの数値は、予め既知線量のβ線あるいはγ線を照射して決定される。
このようにして求めたβ線の線量値NB を以下では有意の測定値という。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術によるβ線線量計が出力するβ線の線量値は、業務従事者が例えば多機能個人警報線量計を携帯して放射線管理区域に入域してから退域するまでに被曝したβ線の全線量値のみであり、入域中のβ線の全計数値ΣnB とγの全計数値ΣnG とを用いて、有意の差のチェックをし、有意の差ありと判定さた場合に、上記の計算式にしたがって算出している。
【0011】
しかし、入域中の業務従事者の作業は、同じ場所での同じ作業には限られず、場所を移動する場合もあり、異なる種類の作業をする場合もある。このような場合には、被曝する放射線の種類や構成比率や強度が大きく変わることもある。
【0012】
したがって、入域中の全計数値ΣnB 及びΣnG で上記のチェックと計算をしてβ線の線量値を算出しようとすると、一般的に、γ線の計数値が支配的となって、一部の場所においてβ線を被曝していたにもかかわらず、β線計数回路1の全計数値ΣnB とγ線計数回路2の全計数値ΣnG との間に有意の差を認めることができなくなり、β線を被曝しているにもかかわらず、β線の線量値は零という測定結果を出力することが発生する。
【0013】
すなわち、測定時間の一部に有意の測定値があったにもかかわらず、全測定時間の計測値で有意の差をチェックしたために、有意の測定値が得られないという場合が発生する。
【0014】
以下のような場合がその例である。
説明を簡単にするために、β線計数回路の計数値nB もγ線計数回路の計数値nG に換算したものとし、γ線は一律に存在しているとする。
【0015】
ΣnG が1000カウントで、その内の1/10の時間だけβ線が20カウント分存在した場合を想定する。その1/10の時間だけで有意の差をチェックすると、nG は100 カウントであるから、統計誤差は10カウントであり、20カウント分のβ線は有意の測定値となる可能性が高い。しかし、全時間の計数値であるΣnG で有意の差をチェックすると、統計誤差は32カウントになるので、20カウント分のβ線は有意の測定値となる可能性が低い。
【0016】
このように、従来技術のβ線線量計では、γ線の計数値が大きくて、測定時間の一部だけにβ線が存在する場合には、β線が存在したにもかかわらず、測定値を零と出力する場合が発生する可能性が高い。
【0017】
また、β線検出器11は、入射するβ線のエネルギーをできる限り低減させないために、入射面にはγ線検出器21のようなフィルタを備えていない。したがって、β線検出器11のγ線感度のエネルギー依存性とγ線検出器21のγ線感度のエネルギー依存性とは異なっており、被曝するγ線のエネルギー分布の違いによって、感度比Bが一定値ではなくなる。そのために、一定値として算出される補償分BnG と正確な補償分との差分だけ、補償精度が低下する。
【0018】
更にまた、従来技術によるβ線線量計が出力するβ線の線量値は、全測定時間のβ線の線量値のみであるので、途中のトレンドが分からない。したがって、どこかにβ線が存在したか否かを知ることはできるが、どの作業場にβ線が存在したか等の作業環境の分析に役立てることはできない。
【0019】
この発明の課題は、上記のようなβ線を検出したとする判定の不確かさやγ線の干渉成分の補償精度の悪さや全測定時間のβ線の線量値のみである点を改良して、より測定精度が高く、且つβ線の線量値のトレンドが把握できるβ線線量計を提供することである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、γ線やβ線の線量を測定する多機能個人警報線量計に搭載されるβ線線量計であって、β線検出器を含むβ線計数回路を備え、γ線検出器を含むγ線計数回路のγ線の計数値によってβ線計数回路の計数値のγ線相当分を補償して、β線の線量を測定するβ線線量計において、測定の全時間を複数の分割単位に分割し、その分割単位毎に、その間に計数したβ線計数回路の計数値によって算出したβ線計数回路の線量値と、その間に計数したγ線計数回路の計数値にその統計誤差を加算した値によって算出したγ線計数回路の統計誤差加算線量値とを比較し、β線計数回路の線量値の方が大きい場合には、β線検出器がγ線に加えてβ線も検出したものとして、β線計数回路の線量値からγ線計数回路の計数値によって算出したγ線計数回路の線量値を差し引いた値が、その間のβ線の線量値であるとし、β線計数回路の線量値がγ線計数回路の統計誤差加算線量値以下である場合には、その間のβ線の線量値は零であるとするが、分割単位毎のβ線の線量値が零であるとした場合のβ線計数回路の線量値の合計値と、同じ場合のγ線計数回路の計数値の合計値にその統計誤差を加算した値によって算出したγ線計数回路の合算計数値による統計誤差加算線量値とを比較して、β線計数回路の線量値の合計値の方が大きい場合には、そのβ線計数回路の線量値の合計値から前記と同じ場合のγ線計数回路の計数値の合計値によって算出したγ線計数回路の線量値を差し引いた値が、分割単位毎のβ線の線量値が零であるとした場合全体のβ線の線量値であるとし、それ以外の場合には、分割単位毎のβ線の線量値が零であるとした場合全体のβ線の線量値は零であるとし、分割単位毎のβ線の線量値の合計値に、分割単位毎のβ線の線量値が零であるとした場合全体のβ線の線量値を加算した値が、β線の全線量値であるとする。
【0023】
分割単位毎に、有意の差をチェックしてβ線の線量値を算出し、更に、分割単位毎では有意の差なしとした場合を一括して、再度有意の差をチェックして、一括分のβ線の線量値を算出し、両者を合算した値がβ線の全線量値であるとするので、全測定時間の一括値によるγ線干渉の補償の不確かさや補償精度の悪さが大幅に改善され、且つβ線の線量値のトレンドが把握できる。
【0029】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、β線計数回路の計数値のγ線成分を補償するためのγ線計数回路が、γ線線量計のγ線計数回路のγ線検出器及び増幅器と、γ線線量計のγ線計数回路の波高弁別器及び計数回路に並列に設けられた補償専用の波高弁別器及び計数回路とで構成されている。
【0030】
補償専用の波高弁別器及び計数回路を備えることによって、β線計数回路のγ線感度のエネルギー依存性と、補償用γ線計数回路のγ線感度のエネルギー依存性とをある程度まで合致させることができるので、簡単な構成で、より高いγ線の補償精度を得ることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態は、基本的に、全測定時間を複数の分割単位に分割し、β線がほぼ確実に存在する(有意の差がある)分割単位とそうでない(有意の差がない)分割単位とに分け、β線がほぼ確実に存在する分割単位からβ線の線量値を算出する処理を行うものである。
【0032】
そして特に、上記の“そうでない分割単位”の計数値を一括することによって、統計誤差の割合を小さくし、その一括した計数値分のβ線の線量を分割単位と同じ評価の仕方でβ線の存在をチェックし、β線がほぼ確実に存在すると判断できる場合には、そのβ線の線量値を算出し、その線量値を、β線がほぼ確実に存在する分割単位毎に算出されたβ線の線量値の合計値に加え合わせて、測定時間全体のβ線の線量値とする。以下においてこの発明の実施例を説明する。なお、従来技術と同じ機能の部分には同じ符号を付した。
【0033】
〔第1の実施例〕
図1は、この発明によるβ線線量計の第1の実施例における計数値処理のフローチャートであり、図3はこの実施例を搭載した多機能個人警報線量計の構成を示すブロック図である。
まず、この実施例を搭載した多機能個人警報線量計の構成について図3を用いて説明する。
【0034】
この実施例は、β線計数回路1と、補償専用のγ線計数回路6と、両回路の感度の違いを補償するための感度比を入力する感度比入力回路3と、測定した線量値等を表示する表示器4と、β線計数回路1及び補償専用のγ線計数回路6等の計数値を演算処理してβ線の線量値やγ線の線量値等を算出し、表示信号を出力し、外部回路と線量値データや各種情報等を授受するμCPU5とから構成されている。
【0035】
β線計数回路1は、β線を電気パルス信号に変換するβ線検出器11と、この電気信号を増幅する増幅器12と、ノイズを除去し所定のエネルギー特性を得るために所定のエネルギー(ディスクリレベル)以上の電気パルス信号を弁別する波高弁別器13と、弁別された電気パルス信号を計数する計数回路14とで構成されている。なお、β線検出器11は共存するγ線も検出する。また、β線計数回路1のディスクリレベルは100keV程度である。
【0036】
補償専用のγ線計数回路6は、γ線を電気パルス信号に変換する補償専用のγ線検出器61と、この電気信号を増幅する増幅器62と、ノイズを除去し所定のエネルギー特性を得るために所定のエネルギー(ディスクリレベル)以上の電気パルス信号を弁別する波高弁別器63と、弁別された電気パルス信号を計数する計数回路64とで構成されている。
【0037】
γ線計数回路2は、γ線の線量を測定する専用の計数回路であって、β線やα線を遮蔽し且つγ線のエネルギー特性を改善するためのフィルタを備え、γ線を電気パルス信号に変換するγ線検出器21と、この電気信号を増幅する増幅器22と、ノイズを除去し所定のエネルギー特性を得るために所定のエネルギー(ディスクリレベル)以上の電気パルス信号を弁別する波高弁別器23と、弁別された電気パルス信号を計数する計数回路24とで構成されている。なお、γ線計数回路2のディスクリレベルは40keV 程度である。
【0038】
補償専用のγ線検出器61は、γ線の干渉を十分に補償するために、β線検出器のγ線感度のエネルギー依存性にできる限り近いγ線感度のエネルギー依存性をもつように作成されている。すなわち、β線を遮蔽するための遮蔽体は、β線は遮蔽するがγ線には影響が少ない原子量の小さい金属、例えばアルミで製作されている。また、補償専用のγ線検出器61の大きさはβ線検出器11と同じにされ、増幅器62、波高弁別器63及び計数回路64はβ線計数回路1と同じ機能のものが使用されている。更に、補償専用のγ線計数回路6の波高弁別器63のディスクリレベルは、γ線計数回路2の波高弁別器23のディスクリレベルとは異なり、β線計数回路1の波高弁別器13のディスクリレベルに近い。
【0039】
次に、図1により、この実施例における計数値処理について説明する。
この実施例においては、一定時間間隔毎に、β線計数回路1が計数した計数値nB から線量値AnB を算出し、補償専用のγ線計数回路6が計数した計数値nG にその統計誤差Cを加算した値から統計誤差加算線量値AB(nG +C)を算出〔データ処理〕する。統計誤差Cとしては、通常、nG の平方根が使われる。一定時間間隔のデータ格納時刻になったら、β線計数回路の線量値AnB と統計誤差加算線量値AB(nG +C)とを比較〔有意の差のチェック〕し、β線計数回路の線量値AnB が大きい場合を、β線を検出したものとして、(AnB −ABnG )をその一定時間間隔内のβ線の線量値とし、その値をその時刻と一緒にメモリーに格納する。AnB がAB(nG +C)以下の場合には、β線はないものとして、0をその時刻と一緒にメモリーに格納する。これらの一定時間間隔毎のβ線の線量値が積算されてその時点までのβ線の総線量値とされ、放射線管理区域内での作業が終了すると、その最終積算値が入域中のβ線の全線量値とされる。
【0040】
図2は、この実施例における各線量値の時間経過の1例を示すグラフであり、(a)は30分間隔毎のβ線計数回路1の線量値AnB (白棒)及び補償専用のγ線計数回路6の統計誤差加算線量値AB(nG +C)(ハッチング棒)を示す棒グラフ、(b)はβ線計数回路1の線量値AnB から補償専用のγ線計数回路6の統計誤差加算線量値AB(nG +C)を差し引いた値(図2では差分)を示す棒グラフとβ線の積算線量値を示す折れ線グラフである。この例は、10時過ぎ頃と12時30分頃にβ線の存在する環境で作業し、その他の時刻にはγ線のみに近い環境で作業した例である。
【0041】
この実施例では、30分間隔毎のβ線計数回路1の線量値の中から有意な差があると認められる線量値を選び出して、それに対応する補償専用のγ線計数回路6計数値によって算出した線量値を差し引いてβ線の線量値とし、有意な差ありと認められない線量値に対してはβ線はないものとして、それらのβ線の線量値のトレンドをメモリーに記憶させ、それらの合計でβ線の総線量値としている。したがって、一定時間間隔毎にβ線の存在をチェックするので、入域時間全体でγ線の干渉を補償する場合に比べて、確実にβ線の存在を把握することができ、且つβ線の線量値のトレンドも把握できる。
【0042】
〔第2の実施例〕
この実施例は、第1の実施例における一定時間間隔毎のγ線の干渉の補償を、作業場毎あるいは作業内容毎のγ線の干渉の補償に変えたものである。すなわち、図2における横軸の時刻を作業場あるいは作業内容に置き換えたものである。作業場毎あるいは作業内容毎にすれば、同じような放射線の環境条件での計測値をまとめることになり、β線計数回路の線量値の中から有意な差と認められる線量値を選び出すのにより有効な手段となる。何故なら、一定時間間隔毎にβ線計数回路の線量値の中から有意な差と認められる線量値を選び出す、第1の実施例の場合には、その時間間隔の途中で放射線の環境条件が変わる場合が含まれるので、その場合には有意の差のチェックが曖昧になるからである。
したがって、この実施例によれば、β線の線量値の測定精度が第1の実施例の測定精度より向上する可能性が高い。
【0043】
〔第3の実施例〕
この実施例は、第1の実施例における一定時間間隔毎のγ線の干渉の補償を、補償専用のγ線計数回路6の計数値が所定値、例えば100 カウント、に達した時点毎に変えたものである。すなわち、図2における横軸の時刻を補償専用のγ線計数回路6の所定計数値到達時点毎に置き換えたものである。γ線の干渉の補償を、補償専用のγ線計数回路6の計数値が所定値に達した時点毎にすれば、補償専用のγ線計数回路6の統計誤差加算線量値が一定値となり、その精度が一定となる。一定時間間隔毎に補償する第1の実施例の場合には、その間の補償専用のγ線計数回路6の計数値が変化するから、統計誤差の精度がばらつき、有意の差のチェックがこの実施例の場合より曖昧になる場合を含むことになる。
したがって、この実施例によれば、β線の線量値の測定精度が第1の実施例の測定精度より向上する可能性が高い。
【0044】
以上の3つの実施例においては、γ線の干渉を補償するために補償専用のγ線計数回路6を備えているが、従来技術の場合と同様に、γ線計数回路2の計数値によって図1に示すフローにしたがってγ線の干渉を補償することも可能である。この場合には、γ線感度のエネルギー依存性の違いが誤差を生ずるが、従来技術のβ線線量計と同じ構成であるので、上記3つの実施例に比べて構成が簡単であり、従来技術のβ線線量計に比べれば明らかに測定精度が向上する。
【0045】
〔第4の実施例〕
図5は、第4の実施例のβ線線量計を搭載した多機能個人警報線量計の構成を示すブロック図である。
この実施例が第1から第3の実施例と異なる点は、この実施例のγ線補償用のγ線計数回路(図5では補償用γ線計数回路)7が、γ線線量計のγ線計数回路2のγ線検出器21及び増幅器22と、γ線線量計のγ線計数回路2の波高弁別器23及び計数回路24に並列に設けられた補償専用の波高弁別器73及び計数回路74とで構成されていることである。
【0046】
この実施例のγ線補償用のγ線計数回路7は、第1から第3の実施例の補償専用のγ線計数回路6に比べて、補償専用のγ線検出器61と増幅器62が不要となる分だけその構成が簡単であるが、γ線計数回路2のγ線検出器21を使用するので、γ線計数回路7のγ線感度のエネルギー依存性をディスクリレベルの調整でβ線検出器11のγ線感度のエネルギー依存性にある程度近づけることはできても、補償専用のγ線計数回路6の場合ほどに近づけることは難しい。したがって、従来技術によるβ線線量計に比べると、その測定精度は相当に向上するが、第1から第3の実施例ほどには向上しない。
【0047】
〔第5の実施例〕
この実施例は、上記4つの実施例とは全線量値の算出方法が異なる。
上記4つの実施例においては、分割単位毎に、β線計数回路の計数値と補償用のγ線計数回路の計数値との間の有意の差をチェックして、β線の線量値を算出し、その合計でβ線の全線量値としている。
【0048】
この実施例の場合には、上記4つの実施例の場合のβ線の全線量値の算出に加えて、分割単位毎の有意の差のチェックで有意の差なしとした分割単位の計数値を一括し、個々の分割単位毎に実施したのと同じ有意の差のチェックを実施して、有意の差なしの分割単位一括のβ線の線量値を算出する。この実施例におけるβ線の全線量値は、上記4つの実施例の場合のβ線の全線量値に、有意の差なしの分割単位一括のβ線の線量値を加算した合計値とする。
【0049】
有意の差なしの分割単位一括で有意の差をチェックすれば、一括にすることによって計数値が大きくなるので、分割単位毎の場合より統計誤差の割合が小さくなり、分割単位毎では有意の差なしとなった中に存在したβ線を有意の差ありとして取り出すことができる。
したがって、この実施例によれば、β線の全線量値の測定精度が向上する。
【0050】
以上の実施例においては、β線を検出したとする条件として、β線計数回路の線量値AnB が統計誤差加算線量値AB(nG +C)より大きい場合のみとしているが、この条件では、β線の線量値は過少評価になる。しかし、γ線も含めた総線量という観点から見れば、β線の線量を零としている場合のβ線の線量値は十分に小さいと判断できるので、この過少評価は現実問題としては殆ど問題ないと考えられる。
同様の考え方に立てば、有意の差のチェックに使用した2つの数値の差、すなわち〔AnB −AB(nG +C)〕をβ線の線量値とすることも可能である。
【0053】
【発明の効果】
請求項1の発明は、γ線やβ線の線量を測定する多機能個人警報線量計に搭載されるβ線線量計であって、β線検出器を含むβ線計数回路を備え、γ線検出器を含むγ線計数回路のγ線の計数値によってβ線計数回路の計数値のγ線成分を補償して、β線の線量を測定するβ線線量計において、測定の全時間を複数の分割単位に分割し、その分割単位毎に、その間に計数したβ線計数回路の計数値によって算出したβ線計数回路の線量値と、その間に計数したγ線計数回路の計数値にその統計誤差を加算した値によって算出したγ線計数回路の統計誤差加算線量値とを比較し、β線計数回路の線量値の方が大きい場合には、β線検出器がγ線に加えてβ線も検出したものとして、β線計数回路の線量値からγ線計数回路の計数値によって算出したγ線計数回路の線量値を差し引いた値が、その間のβ線の線量値であるとし、β線計数回路の線量値がγ線計数回路の統計誤差加算線量値以下である場合には、その間のβ線の線量値は零であるとするが、分割単位毎のβ線の線量値が零であるとした場合のβ線計数回路の線量値の合計値と、同じ場合のγ線計数回路の計数値の合計値にその統計誤差を加算した値によって算出したγ線計数回路の合算計数値による統計誤差加算線量値とを比較して、β線計数回路の線量値の合計値の方が大きい場合には、そのβ線計数回路の線量値の合計値から前記と同じ場合のγ線計数回路の計数値の合計値によって算出したγ線計数回路の線量値を差し引いた値が、分割単位毎のβ線の線量値が零であるとした場合全体のβ線の線量値であるとし、それ以外の場合には、分割単位毎のβ線の線量値が零であるとした場合全体のβ線の線量値は零であるとし、分割単位毎のβ線の線量値の合計値に、分割単位毎のβ線の線量値が零であるとした場合全体のβ線の線量値を加算した値が、β線の全線量値であるとする。
【0054】
このような請求項1の発明によれば、分割単位毎に、有意の差をチェックしてβ線の線量値を算出し、更に、分割単位毎ではβ線を検出していないとした場合を一括して、再度有意の差をチェックし、一括分のβ線の線量値を算出し、両者を合算した値がβ線の全線量値であるとするので、全測定時間の一括値によるγ線干渉の補償の不確かさや補償精度の悪さが大幅に改善される。したがって、測定精度が更に高く、且つβ線の線量値のトレンドが把握できるβ線線量計を提供することができる。
【0062】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、β線計数回路の計数値のγ線成分を補償するためのγ線計数回路が、γ線線量計のγ線計数回路のγ線検出器及び増幅器と、γ線線量計のγ線計数回路の波高弁別器及び計数回路に並列に設けられた補償専用の波高弁別器及び計数回路とで構成されている。
【0063】
このような請求項2の発明によれば、補償専用の波高弁別器及び計数回路を備えることによって、β線計数回路のγ線感度のエネルギー依存性と、補償用γ線計数回路のγ線感度のエネルギー依存性とをある程度まで合致させることができるので、簡単な構成で、より高いγ線の補償精度をもち、且つβ線の線量値のトレンドが把握できるβ線線量計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるβ線線量計の第1の実施例における計数値処理のフローチャート
【図2】第1の実施例の実測データの1例を示し、(a)は30分間隔毎のβ線計数回路の線量値(白棒)及び補償専用のγ線計数回路の統計誤差加算線量値(ハッチング棒)を示す棒グラフ、(b)はβ線計数回路の線量値から補償専用のγ線計数回路の統計誤差加算線量値を差し引いた値を示す棒グラフ及びβ線の積算線量値を示す折れ線グラフ
【図3】第1の実施例のβ線線量計を搭載した多機能個人警報線量計の構成を示すブロック図
【図4】多機能個人警報線量計の従来例の構成を示すブロック図
【図5】第4の実施例のβ線線量計を搭載した多機能個人警報線量計の構成を示すブロック図
【符号の説明】
1 β線計数回路
11 β線検出器 12 増幅器
13 波高弁別器 14 計数回路
2 γ線計数回路
21 γ線検出器 22 増幅器
23 波高弁別器 24 計数回路
3 感度比入力回路
4 表示器
5 μCPU
6 補償専用γ線計数回路
61 補償専用γ線検出器 62 増幅器
63 波高弁別器 64 計数回路
7 補償用γ線計数回路
73 波高弁別器 74 計数回路
Claims (2)
- γ線やβ線の線量を測定する多機能個人警報線量計に搭載されるβ線線量計であって、β線検出器を含むβ線計数回路を備え、γ線検出器を含むγ線計数回路のγ線の計数値によってβ線計数回路の計数値のγ線成分を補償して、β線の線量を測定するβ線線量計において、
測定の全時間を複数の分割単位に分割し、
その分割単位毎に、その間に計数したβ線計数回路の計数値によって算出したβ線計数回路の線量値と、その間に計数したγ線計数回路の計数値にその統計誤差を加算した値によって算出したγ線計数回路の統計誤差加算線量値とを比較し、
β線計数回路の線量値の方が大きい場合には、β線検出器がγ線に加えてβ線も検出したものとして、β線計数回路の線量値からγ線計数回路の計数値によって算出したγ線計数回路の線量値を差し引いた値が、その間のβ線の線量値であるとし、
β線計数回路の線量値がγ線計数回路の統計誤差加算線量値以下である場合には、その間のβ線の線量値は零であるとするが、
分割単位毎のβ線の線量値が零であるとした場合のβ線計数回路の線量値の合計値と、同じ場合のγ線計数回路の計数値の合計値にその統計誤差を加算した値によって算出したγ線計数回路の合算計数値による統計誤差加算線量値とを比較して、β線計数回路の線量値の合計値の方が大きい場合には、そのβ線計数回路の線量値の合計値から前記と同じ場合のγ線計数回路の計数値の合計値によって算出したγ線計数回路の線量値を差し引いた値が、分割単位毎のβ線の線量値が零であるとした場合全体のβ線の線量値であるとし、それ以外の場合には、分割単位毎のβ線の線量値が零であるとした場合全体のβ線の線量値は零であるとし、
分割単位毎のβ線の線量値の合計値に、分割単位毎のβ線の線量値が零であるとした場合全体のβ線の線量値を加算した値が、β線の全線量値であるとすることを特徴とするβ線線量計。 - β線計数回路の計数値のγ線成分を補償するためのγ線計数回路が、γ線線量計のγ線計数回路のγ線検出器及び増幅器と、γ線線量計のγ線計数回路の波高弁別器及び計数回路に並列に設けられた補償専用の波高弁別器及び計数回路とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のβ線線量計。
Priority Applications (1)
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JP35411798A JP3755316B2 (ja) | 1998-12-14 | 1998-12-14 | β線線量計 |
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JP2013246073A (ja) * | 2012-05-28 | 2013-12-09 | Sharp Corp | 放射線測定装置 |
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1998
- 1998-12-14 JP JP35411798A patent/JP3755316B2/ja not_active Expired - Lifetime
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