JP3755289B2 - 電子写真現像剤用キャリアとそれを用いた現像剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタ等に用いられる電子写真現像剤用キャリアとそれを用いた現像剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子写真画像形成方法で使用される現像剤としてキャリアとトナーからなる2成分現像剤が多く使用されている。
【0003】
近年、キャリアの耐久性及び画質、特に細線再現性の改良の点から鉄、マグネタイト、フェライト等の磁性体粒子に樹脂をコートしたコーティングキャリアが主流になっている。しかし、繰り返し画像を形成していくとコーティング樹脂が摩耗、剥離し、コアである磁性体粒子がキャリア表面に露出してくる。その結果、キャリアのトナーに対する帯電付与効果が著しく低下し、地カブリの発生及びトナーの機内飛散を生じる。
【0004】
又、トナーの構成成分の一部がキャリア表面に付着するいわゆるトナースペント現象が発生する。特に連続複写においては、トナーとキャリアに大きなせん断力がかかることから樹脂が摩耗、剥離し易く、かつトナースペント現象が加速される。それ故、2成分現像剤の耐久性を決定しているのはキャリアの耐久性である。
【0005】
そこで高耐久性コーティング樹脂としてシリコーン樹脂が注目されている。シリコーン樹脂は三次元架橋構造であるため耐摩耗性が大幅に向上し、かつ低表面エネルギー樹脂であるため、トナースペント現象が発生しにくく、高耐久化が達成される。
【0006】
特開平7−287422号公報には、シリコーン樹脂被覆キャリア粒子の表面に存在する金属原子が、0.1〜5個数%であることが、各環境での安定した帯電付与及び良好な帯電立ち上がりに効果があることが開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このキャリアを使用した場合、シリコーン樹脂被覆層に電荷が蓄積し、その結果現像剤の帯電量が上昇する現象、いわゆるチャージアップ現象を招くことがわかった。特に、この現象は低湿環境にて顕著であり画像濃度の低下につながる。
【0008】
本発明の目的は、低湿環境で長期に使用した場合にも、安定した画像を形成することができる電子写真現像剤用キャリアと、それを用いた現像剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記構成を採ることにより達成される。
【0010】
〔1〕 磁性粒子からなる芯材及び該芯材を被覆するシリコーン樹脂被覆層を有する電子写真現像剤用キャリアにおいて、該シリコーン樹脂被覆層を有する電子写真現像剤用キャリア粒子はESCA測定によるキャリア粒子表面に存在する鉄、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択される金属原子が、7〜20個数%であることを特徴とする電子写真現像剤用キャリア。
【0011】
〔2〕 〔1〕記載の電子写真現像剤用キャリアと樹脂トナーよりなることを特徴とする現像剤。
【0012】
〔3〕 前記磁性粒子がアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属からなる軽金属フェライトであることを特徴とする〔1〕記載の電子写真現像剤用キャリア。
【0013】
〔4〕 前記磁性粒子がマグネタイトであることを特徴とする〔1〕記載の電子写真現像剤用キャリア。
【0014】
本発明者らは、鋭意検討した結果、低湿環境での電荷蓄積に関して、キャリア表面に存在する金属原子の個数をある程度以上に制御することで、帯電の制御を容易に行うことが出来ることを突き止め、本発明を完成するに至ったものである。
【0015】
すなわち、キャリア表面にESCA測定による鉄、アルカリ金属及びアルカリ土類から選択される金属原子を7〜20個数%存在させることにより、電荷の蓄積を防止し、低湿環境でも長期に渡って安定した画像を形成することが可能になることを見いだしたのである。金属原子が7%より少ない場合は、キャリアの電荷蓄積防止能力はなく、20%を越えると電荷の蓄積はないが、帯電制御能を有するコーティング樹脂が少なくなり、所定の帯電量が得られない。その結果、地かぶりが発生することがわかった。
【0016】
本発明の効果が得られるメカニズムに関しては明確では無いが、これら特定の金属原子の存在により、表面に蓄積した電荷がキャリア内部へ誘導され、結果として表面の電荷蓄積が抑制されたものと推定される。さらに、これら特定の金属原子は帯電の立ち上がりを抑制することが無く、むしろ、帯電立ち上がりに対してさらに好適な効果を付与することができ、環境変動に対してもさらに安定した帯電性を付与することが可能となり、結果として安定した画像品質を保持することができるのであろう。
【0017】
磁性粒子の構成
本発明で使用されるキャリアの核体粒子としては鉄粉、マグネタイト、各種フェライトが使用できる。好ましくはマグネタイトや各種フェライトである。フェライトとしては銅、亜鉛、ニッケル、マンガン等の重金属を含有するフェライトやアルカリ金属及び/又はアルカリ土類を含有する軽金属フェライトが好ましい。特に好ましくはアルカリ金属及び/又はアルカリ土類を含有する軽金属フェライトである。
【0018】
このキャリアの組成としては、Li、Na等のアルカリ金属及び/又はMg、Ca、Sr、Baのアルカリ土類を含有するものであり、具体的には下記組成を有するものである。
【0019】
(M2O)x(Fe2O3)1-xあるいは(MO)x(Fe2O3)1-x
さらに、このM2O及び/又はFe2O3の一部をアルカリ土類金属酸化物で置換したものであってもよい。Mとしては前述のLi、Na等のアルカリ金属及び/又はMg、Ca、Sr、Baのアルカリ土類を示す。
【0020】
また、xとしては30mole%以下、好ましくは25mole%以下であり、さらに置換されるアルカリ土類及び/又はアルカリ金属酸化物は1〜30mole%が好ましい。さらに好ましくは3〜25mole%である。
【0021】
この軽金属フェライトあるいはマグネタイトが好ましい理由としては本発明に於ける表面に存在する金属原子と類似の組成を有しており、表面より内部への電荷の浸透が容易になるためと推定される。それゆえ、表面に存在する金属原子と同じ金属を含有している磁性粒子が特に好ましい。
【0022】
キャリアの粒子径としては、体積平均粒径で10〜100μm、好ましくは20〜80μmである。さらに、キャリア自体が有する磁化特性としては、飽和磁化で20〜80emu/gがよい。
【0023】
キャリア粒子表面に金属原子を存在させる方法
本発明でのキャリア粒子表面に金属原子を存在させる方法としては、特に限定されるものでは無い。すなわち、シリコーン樹脂を磁性粒子へ被覆した後に、これら金属原子の酸化物、炭酸塩、窒化物などの粒子を加え、機械的エネルギーを繰り返し付与する方法、シリコーン樹脂を溶媒を用いて被覆する際に、その溶媒中へ上記金属原子の酸化物、炭酸塩、窒化物などの粒子を分散した後に磁性粒子に被覆する方法、シリコーン樹脂を磁性粒子へ被覆した後に機械的エネルギーを加え、適度にコーティング樹脂を摩耗させコア表面を露出させる方法等が挙げられる。
【0024】
金属原子の表面存在量測定方法
メチルエチルケトンで洗浄後、さらにメタノールで洗浄したキャリアを乾燥させサンプルとする。
【0025】
島津X線光電子分析装置(ESCA−1000 島津製作所製)を用いて、X線出力を10kV,30mAとし、珪素=Si2p、炭素=Cls、酸素=O1s、鉄=Fe2p3/2及び/又は軽金属(コア表面上の組成は均一と仮定し、主元素である元素を選択)の元素ピーク面積強度から元素比率を算出した。
【0026】
シリコーン樹脂
本発明に使用できるシリコーン樹脂は、好ましくは下記のごときものである。
【0027】
【化1】
【0028】
本発明に係るシリコーン樹脂は、一般式(1)、(2)で表されるセグメントの集合体であり、R5〜R8はそれぞれメチル基、エチル基、フェニル基、ビニル基から選ばれる炭化水素基を表す。接着性及び硬度の観点よリメチル基のものが特に好ましい。またアルキッド変成、アクリル変成、ポリエステル変成、フェノール変成、メラミン変成、ウレタン変成等の変成タイプを使用しても良い。
【0029】
一般式(1)、(2)で表されるセグメントの比は(1)/(2)=0/100〜70/30が好ましく、より好ましいのは0/100〜50/50である。
【0030】
(1)/(2)>70/30の場合、直鎖成分が多いために硬度が低下し、十分な耐久性が得られないこともある。
【0031】
シリコーン樹脂に他の添加物を添加しても良い。例えば架橋剤としては、一般に知られている脱アルコール型、脱酢酸型、脱オキシム型、脱アミド型、脱アミノキシ型、脱アセトン型等の低分子シラン化合物を使用することができる。
【0032】
硬化触媒として、Zn,Sn,Fe,Pb,Co,Ni,Al,Zrなどの金属石鹸、キレート化合物、蟻酸、酢酸などの有機酸、アミン等の塩基を使用することができる。荷電制御剤としアミノシランカップリング剤を添加しても良い。
【0033】
これらの添加物の添加量はシリコーン樹脂固形分100重量部に対して0.01〜30重量部であることが好ましい。
【0034】
コーティングするために用いられる溶剤は、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどである。
【0035】
樹脂被覆キャリア中のシリコーン樹脂被覆量としてはキャリアコア(芯材)に対して0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.1〜5重量%である。シリコーン樹脂被覆量が0.01重量%未満の場合、コア表面に均一な被覆層が形成できない可能性がある。一方、10重量%を越える場合は、キャリア粒子同士の造粒が生じ、流動性が著しく低下し、トナーとの混合性能が落ちる可能性がある。
【0036】
キャリア芯材にコーティング層を形成する方法としては、シリコーン樹脂を溶剤に溶解させた後、浸漬法、スプレードライ法等により表面に塗布し、乾燥により溶剤を除去する。その後焼き付けを行う場合には、焼き付け温度としては、150〜300℃程度であり、多くの場合好ましくは170〜280℃である。焼き付け温度が150℃未満の場合、シリコーン樹脂の架橋反応が十分進行せず、硬度が不十分になることもある。一方、300℃を越える場合、シリコーン樹脂の一部が分解し、均一な樹脂被覆層が得られないこともある。
【0037】
トナーの構成
一般的なトナー作製法においては、着色粒子(トナー)は結着樹脂と着色剤と必要に応じて使用されるその他の添加剤とを含有してなり、その平均粒径は体積平均粒径で通常、1〜30μm、好ましくは5〜15μmである。
【0038】
着色粒子(トナー)を構成する結着樹脂としては特に限定されず、従来公知の種々の樹脂が用いられる。例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0039】
着色粒子(トナー)を構成する着色剤としては特に限定されず、従来公知の種々の材料が使用される。例えばカーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオクサレート、ローズベンガル等が挙げられる。
【0040】
その他の添加剤としては、例えばサリチル酸誘導体、アゾ系金属錯体等の荷電制御剤や、低分子量ポリオレフィン、カルナウバワックス等の定着性改良剤等が挙げられる。
【0041】
また、流動性付与の観点から、無機微粒子を着色粒子に添加してもよい。無機微粒子としてはシリカ、チタニア、アルミナ等の無機酸化物粒子が好ましく、さらに、これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤等によって疎水化処理されていることが好ましい。
【0042】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0043】
〈芯材の製造1〉
Li2Oを22mole%、Fe2O3を78mole%を、湿式ボールミルで2時間粉砕、混合し乾燥させた後に、900℃で2時間保持することにより仮焼成し、これをボールミルで3時間粉砕し、スラリー化した。分散剤及びバインダーを添加し、スプレードライヤーにより造粒、乾燥し、その後1200℃、3時間本焼成を行い、体積平均粒径60μmのフェライト芯材粒子を得た。
【0044】
〈芯材の製造2〉
α−Fe2O3を粉砕した後、スラリーとした。このスラリーをスプレードライヤーにて噴霧、造粒した後、水素雰囲気下にて2時間焼結を行った。その後、解砕、分級の工程を経てマグネタイト芯材粒子を得た。
【0045】
〈キャリアの製造1〉
一般式(1)及び(2)においてR5〜R8=CH3であり、セグメント比率が(1)/(2)比=2/98のシリコーン樹脂(固形分50%)100重量部とγ−アミノプロピルトリメトキシシラン2重量部をトルエン溶剤中に添加した後、流動床を用いてフェライト芯材粒子に0.5wt%コーティングし、さらに190℃で3時間焼き付けを行い、コーティング粒子1を得た。次いで、コーティング粒子1を100gメカノミル(岡田精工製)に投入し、回転数1000rpm、攪拌時間5分の混合を行い、キャリア1を得た。このキャリア表面の金属原子量は13個数%であった。
【0046】
〈キャリアの製造2〉
キャリアの製造1に使用したシリコーン樹脂(固形分50%)100重量部と、メチル−γ−アミノプロピルジメトキシンラン3重量部を、トルエン溶剤中に添加した後、流動床を用いてマグネタイト芯材粒子に0.8wt%コーティングし、さらに200℃で3時間焼き付けを行い、コーティング粒子2を得た。次いで、コーティング粒子2を100gメカノミルに投入し、回転数2000rpm、攪拌時間30分混合し、キャリア2を得た。このキャリア表面の金属原子量は8個数%であった。
【0047】
〈キャリアの製造3〜5〉
表1に示した条件以外は、キャリアの製造1と同様にしてキャリア3〜5を得た。
【0048】
【表1】
【0049】
〈トナーの製造〉
ステレンアクリル樹脂100重量部に対してカーボンブラック10重量部、低分子量ポリプロピレン3重量部及び4級アンモニウム塩化合物を1重量部添加し、混合した後に溶融混練、粉砕、分級を行い、体積平均粒径が8.5μmの着色粒子を得た。
【0050】
次いで、この着色粒子100重量部に対して、疎水性シリカ微粒子を0.8wt%添加し、高速攪拌機により混合しトナーを得た。
【0051】
〈現像剤の調製〉
トナーと各々のキャリアを組み合わせて、トナー含有量が4.0wt%になるように調整し、表2のような現像剤1〜5を得た。
【0052】
【表2】
【0053】
〈現像剤の評価〉
評価項目及び方法について以下に示す。
【0054】
(評価項目)
▲1▼帯電量
測定する現像剤1gをステンレススチール製のメッシュを張ったセルに入れ、窒素ガス圧0.2kg/cm2で6sec間ブローし、残ったキャリアの電荷及びブローされたトナーの重量を測定することにより、現像剤の帯電量(μc/g)を求めた。初期と20万コピー後の帯電量を比較し、差が少ない程良好と判断した。
【0055】
▲2▼画像濃度
マクベス濃度計(RD−918 マクベス社製)により、転写紙の白地部分(反射濃度0.00)に対応するコピー画像のベタ黒部分の反射濃度を測定し画像濃度1.25以上は良好と判断した。
【0056】
▲3▼かぶり
サクラデンシトメーター(コニカ社製)により、転写紙の白地部分(反射濃度0.000)に対応するコピー画像の白地部分の濃度を測定した。
【0057】
(評価結果)
複写機konica7050(コニカ社製)の改造機を使用して、LL環境(温度15℃、湿度20%)にて20万コピーの実写評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
実施例1〜3では、長期間に渡って使用しても電荷の蓄積は無く、画像濃度の高い高画質な画像が得られた。一方、比較例1は、初期は問題ないが、コピー数が増えるにつれ帯電量が高くなり、画像濃度も低くなった。比較例2は初期の時点で帯電量が低いため、カブリが多く評価を中止した。
【0060】
【発明の効果】
本発明により、低湿環境で長期に使用した場合にも安定した画像を形成することができる電子写真現像剤用キャリアとそれを用いた現像剤を提供することが出来る。
Claims (4)
- 磁性粒子からなる芯材及び該芯材を被覆するシリコーン樹脂被覆層を有する電子写真現像剤用キャリアにおいて、該シリコーン樹脂被覆層を有する電子写真現像剤用キャリア粒子はESCA測定によるキャリア粒子表面に存在する鉄、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択される金属原子が、7〜20個数%であることを特徴とする電子写真現像剤用キャリア。
- 請求項1記載の電子写真現像剤用キャリアと樹脂トナーよりなることを特徴とする現像剤。
- 前記磁性粒子がアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属からなる軽金属フェライトであることを特徴とする請求項1記載の電子写真現像剤用キャリア。
- 前記磁性粒子がマグネタイトであることを特徴とする請求項1記載の電子写真現像剤用キャリア。
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