JP3754127B2 - 静的強度に対し動的強度の高い熱延鋼板の製造方法 - Google Patents
静的強度に対し動的強度の高い熱延鋼板の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3754127B2 JP3754127B2 JP10924496A JP10924496A JP3754127B2 JP 3754127 B2 JP3754127 B2 JP 3754127B2 JP 10924496 A JP10924496 A JP 10924496A JP 10924496 A JP10924496 A JP 10924496A JP 3754127 B2 JP3754127 B2 JP 3754127B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- strength
- hot
- steel sheet
- less
- rolled steel
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の軽量化および安全性向上を達成するのに適した高強度鋼板に関するものであり、静的強度に対し動的強度の高いことを特徴とする熱延鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の安全性向上の観点から衝突時の安全性に対する要求もますます厳しくなりつつある。自動車の軽量化と衝突時の衝撃吸収特性の向上とを両立させるためには、自動車の強度部材として高強度鋼板を使用することが適するが、一般に、高強度鋼板は強度の低い鋼板に較べ成形性に劣るため、自動車の設計時の自由度を減少させる。
【0003】
このような観点から、加工性に優れた高強度鋼板の開発が進められ、例えば特公昭58−48616号公報にみられるように、鋼板の組織をフェライト相とマルテンサイト相の複合組織とする提案や、特公平5−24205号公報にみられるように、鋼板の組織をフェライト相とオーステナイト相の複合組織とする提案がなされている。
【0004】
前述の高強度鋼板の強度は、通常の引張試験で測定された強度のことを示し、ひずみ速度が約10-3(s-1)と非常に遅い領域での強度(静的強度)を表す。
鋼板の強度はひずみ速度に依存し、ひずみ速度が大きくなるにつれ強度が増加すること、また、この増加の程度は鋼板の種類に依存することが従来から知られている。つまり、鋼板の安全性の観点から高強度鋼板を開発する場合には、衝突時に対応すると推定されるひずみ速度(103 (s-1)程度)での強度(動的強度)で材料特性を評価する必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の高強度鋼板の開発においては、このような点には特に注意を払っていなかった。また衝突時の鋼板は、成形・塗装・その後の塗装焼付の工程を経ていることから、特にこの工程を経てからの高ひずみ速度での変形時の強度が重要となるが、このような観点で開発された鋼板、特に熱延鋼板は見当たらない。
【0006】
以上の説明からわかるように、衝突安全性に優れた鋼板に求められる特性は鋼板の成形・塗装焼付後の動的強度と成形前の静的強度の比である静動比(=動的強度/静的強度)が高いことにある。本発明では、従来の高強度鋼板より高い静動比を持つ高強度熱延鋼板を製造することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、種々の実験・研究を重ねた結果、鋼材の成分を適切に調整し、フェライト相と5〜30%のマルテンサイト相からなる組織を形成させることで静動比の向上が可能であることを見出した。
【0008】
(削除)
【0009】
(削除)
【0010】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、
C :0.02〜0.15%、 Si:0.5〜1.3%、
Mn:0.8〜2.0%、 P :0.08%以下、
S :0.01%以下
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を、熱間圧延終了温度が760℃〜950℃となるように熱間圧延を行い、その後の冷却において770〜600℃の範囲で15℃/s以下の冷却速度となる時間を2〜15秒とり、その後30℃/s以上の冷却速度で200℃以下まで冷却して、組織がフェライト相と5〜30%のマルテンサイト相の2相からなり、10-3(s-1)のひずみ速度で変形したときの強度σS(MPa )と、予ひずみE(%)を与え、温度T(℃)で時間t(分)処理した後、ひずみ速度103 (s-1)で変形したときの最大強度σD(MPa )との比σD/σSが
σD/σS≧600/σS+0.2
+535E(t1/2 )exp{−5000/(T+273)}
であることを特徴とする、静的強度に対し動的強度の高い熱延鋼板の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
まず、鋼成分を限定した理由について述べる。
Cは、鋼板の組織に強く影響を与える元素であり、その含有量が少なくなると目的とするマルテンサイト相を得るのが困難になる。また、添加量が多くなると強度が高くなりすぎ成形性を劣化させる。そのため、C量は0.02%以上、0.15%以下とする。
【0012】
Siは、固溶強化元素であり鋼板の強度の調整を可能とすること、炭化物形成を抑えることでマルテンサイト組織形成を容易にすること、また、高速変形時の強度上昇を促進すること等から、0.5%以上添加する。しかし、添加量が多くなると強度が高くなりすぎ成形性を劣化させ、かつ静動比を低下させるため、1.3%以下とする。
【0013】
Mnは、Siと同様に固溶強化元素であり強度調整に有効である。また、オーステナイト安定化元素でありマルテンサイトの生成を容易にすることや、高速変形時の強度上昇を促進することから、0.8%以上とする。しかしながら、むやみに含有量を増加させると、成形性の劣化を招き、かつ静動比を低下させることから、2.0%以下とする。
【0014】
Pは、マルテンサイト生成にあまり大きな影響を与えずに強度調整をするために添加するが、その含有量が多くなると成形性が劣化するため、0.08%以下とする。
Sは、含有量が多くなると高強度熱延鋼板の重要な特性のひとつである伸びフランジ性が劣化するため、0.01%以下とする。
【0015】
マルテンサイト量は、5〜30%と限定したが、これはSi添加量およびMn添加量とも関係しており、図1に示す研究成果から決定した。図1は、SiおよびMn量が異なる鋼を用い、様々なマルテンサイト量を有する鋼板を製造し、下記式(1)で定義した静動比を測定したものである。この図からわかるように、静動比を向上させるには、Si、Mn量を前述した範囲に限定した条件のもとでマルテンサイト量を5〜30%とする必要がある。
【0016】
熱延鋼板の特性を、σD/σS≧600/σS+0.2
+535E(t1/2 )exp{−5000/(T+273)}……(1)
で限定しているが、この式においてσDは予ひずみE(%)を与え温度T(℃)で時間t(分)処理した後、ひずみ速度103 (s-1)で変形したときの最大強度、σSは10-3(s-1)で変形した時の最大強度である。鋼材の特性は成形時に導入されるひずみおよびその後の塗装焼付処理において変化するが、この式はこの変化を考慮したときの値である。
【0017】
このような成分の鋼を鋳造し、得られた熱片スラブを直接または加熱した後、あるいは冷片を再加熱して熱間圧延を施す。熱間圧延は、通常の熱延工程、あるいは仕上圧延においてスラブを接合し圧延する連続化熱延工程のどちらでも可能である。
【0018】
熱間圧延の際の圧延終了温度は、760℃〜950℃とする。これは、760℃未満の温度で仕上げ圧延を施した場合には組織が混粒となり易く、成形性の劣化を招く恐れがあるためであり、950℃以下としたのは、この温度を越えて仕上圧延を施した場合には、その後の冷却過程での組織調整を難しくするためである。
【0019】
また、冷却過程で冷却速度15℃/sの冷却速度の領域を設けた場合に、熱間圧延終了温度の上限を950℃以下としたのは、この15℃/sの領域を設けることで、フェライト変態の促進を図ることが可能となることに起因する。
熱間圧延後の冷却速度を30℃/s以上としたのは、この冷却速度より遅い場合、冷却中にパーライトあるいは炭化物の析出が起こり、必要なマルテンサイトが得られないためである。
【0020】
また、冷却過程において770℃〜600℃の範囲で15℃/sとなる時間を2〜15秒とったのは、この処理により固溶炭素の少ない、置換型固溶強化型元素を含むポリゴナルフェライトを容易に生成させることができるためである。その後の冷却を、30℃/s以上の冷却速度で200℃以下まで冷却し巻取るのは、この段階での炭化物の析出を抑制しマルテンサイトを生成させるためである。この冷却速度以下、あるいは、200℃以上の温度で巻き取った場合には、適切なマルテンサイト量を確保することが困難となる。
【0021】
本発明は熱延鋼板だけでなく、これを素材とした表面処理鋼板に対しても適用可能である。
また、本発明鋼ではめっき性に害を与える元素は添加されておらず、容易に溶融亜鉛めっきを施すことができる。
【0022】
【実施例】
本発明の実施の形態を実施例により具体的に説明する。
表1に示す種々の化学成分の鋼を、実機にて、鋳造し、熱延して供試材を試作した。表3,5,7,11には、これら供試材の熱間圧延条件、高速変形前の予ひずみ量、熱処理温度、熱処理時間および得られた静動比を示す。なお、前述したように、予ひずみは成形時のひずみ、熱処理は、塗装焼付処理を想定している。
【0023】
【表1】
【0024】
(削除)
【0025】
【表3】
【0026】
(削除)
【0027】
【表5】
【0028】
(削除)
【0029】
【表7】
【0030】
(削除)
【0031】
(削除)
【0032】
(削除)
【0033】
【表11】
【0034】
(削除)
【0035】
表3,5,7,11は、鋼成分は本発明鋼の範囲内にあるが、製造条件としては本発明範囲外のものも含まれる。製造条件が本発明範囲内のものでは、得られた静動比は式(1)を満足するが、製造条件が本発明外のものでは式(1)を満足しないことがわかる。なお、表には式(1)の右辺から求まる値も示してある。
【0036】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、静的強度に対し動的強度が高い熱延鋼板の製造が可能となり、工業的に価値の大きなものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明鋼および比較鋼における、マルテンサイト量と式(1)で定義した静動比との相関を示す図表である。
Claims (1)
- 質量%で、
C :0.02〜0.15%、
Si:0.5〜1.3%、
Mn:0.8〜2.0%、
P :0.08%以下、
S :0.01%以下
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を、熱間圧延終了温度が760℃〜950℃となるように熱間圧延を行い、その後の冷却において770〜600℃の範囲で15℃/s以下の冷却速度となる時間を2〜15秒とり、その後30℃/s以上の冷却速度で200℃以下まで冷却して、組織がフェライト相と5〜30%のマルテンサイト相の2相からなり、10-3(s-1)のひずみ速度で変形したときの強度σS(MPa )と、予ひずみE(%)を与え、温度T(℃)で時間t(分)処理した後、ひずみ速度103 (s-1)で変形したときの最大強度σD(MPa )との比σD/σSが
σD/σS≧600/σS+0.2
+535E(t1/2 )exp{−5000/(T+273)}
であることを特徴とする、静的強度に対し動的強度の高い熱延鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10924496A JP3754127B2 (ja) | 1996-04-30 | 1996-04-30 | 静的強度に対し動的強度の高い熱延鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10924496A JP3754127B2 (ja) | 1996-04-30 | 1996-04-30 | 静的強度に対し動的強度の高い熱延鋼板の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09296247A JPH09296247A (ja) | 1997-11-18 |
JP3754127B2 true JP3754127B2 (ja) | 2006-03-08 |
Family
ID=14505278
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10924496A Expired - Fee Related JP3754127B2 (ja) | 1996-04-30 | 1996-04-30 | 静的強度に対し動的強度の高い熱延鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3754127B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4369545B2 (ja) | 1998-11-30 | 2009-11-25 | 新日本製鐵株式会社 | ひずみ速度依存性に優れたフェライト系薄鋼板およびそれを用いた自動車 |
-
1996
- 1996-04-30 JP JP10924496A patent/JP3754127B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH09296247A (ja) | 1997-11-18 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CN112292472B (zh) | 耐碰撞特性优异的高强度钢板及其制造方法 | |
JP5272548B2 (ja) | 降伏強度が低く、材質変動の小さい高強度冷延鋼板の製造方法 | |
JPH0474824A (ja) | 焼付硬化性と加工性に優れた熱延鋼板の製造方法 | |
JP3915460B2 (ja) | 高強度熱延鋼板およびその製造方法 | |
JP6515386B2 (ja) | 熱延鋼板およびその製造方法 | |
JP3864663B2 (ja) | 高強度薄鋼板の製造方法 | |
JPH03277741A (ja) | 加工性、常温非時効性及び焼付け硬化性に優れる複合組織冷延鋼板とその製造方法 | |
JPH0770650A (ja) | 極めて深絞り性に優れる冷延鋼板の製造方法 | |
JP4385754B2 (ja) | 成形性および曲げ加工性に優れる超高強度鋼板及びその製造方法 | |
JP3754127B2 (ja) | 静的強度に対し動的強度の高い熱延鋼板の製造方法 | |
JP3734187B2 (ja) | 静的強度に対し動的強度が高い冷延鋼板およびその製造方法 | |
JPH1036917A (ja) | 伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法 | |
JP2745922B2 (ja) | 焼付硬化性に優れた非時効性深絞り用冷延鋼板とその製造方法 | |
KR101657835B1 (ko) | 프레스 성형성이 우수한 고강도 열연강판 및 그 제조방법 | |
JP3911075B2 (ja) | 焼付硬化性に優れる超深絞り用鋼板の製造方法 | |
JP3596045B2 (ja) | 成形性に優れる焼付硬化型冷延鋼板の製造方法 | |
JPH0681045A (ja) | 加工性および焼付硬化性に優れた冷延鋼板の製造方法 | |
JPH04120243A (ja) | 高張力冷延鋼板及びその製造方法 | |
JPH0152452B2 (ja) | ||
JP2001089816A (ja) | 高強度熱延鋼板の製造方法 | |
JP4332960B2 (ja) | 高加工性軟質冷延鋼板の製造方法 | |
JP3673367B2 (ja) | 衝突安全性に優れた440MPa級熱延鋼板およびその製造方法 | |
JP3873579B2 (ja) | 高加工性熱延鋼板の製造方法 | |
JPH108201A (ja) | 深絞り用鋼板及びその製造方法 | |
JP2640065B2 (ja) | 加工性の良好な730N/mm2以上の強度を有する高強度熱延鋼板とその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20021015 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20051116 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20051215 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081222 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091222 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101222 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101222 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111222 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111222 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121222 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121222 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131222 Year of fee payment: 8 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131222 Year of fee payment: 8 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131222 Year of fee payment: 8 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |