JP3753111B2 - 電気めっき治具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気めっき治具に関し、詳細には、例えばコンピュータのハードディスク用モータに使用されるリング状磁石等を被めっき物とする場合のめっきに適した電気めっき治具に関する。
【0002】
【従来の技術】
モータなどに使用されるリング状磁石などのように、比較的小型の被めっき物に電気めっきを行う場合は、バレルと呼ばれる容器に被めっき物を入れ、陰極をバレル内に配置してバレルを回転させながらめっきを施す「バレルめっき法」や、被めっき物を陰極を兼ねた治具に引っ掛けてめっきを施す「引っ掛けめっき法」によりめっきが行われてきた。
【0003】
しかし、バレルを用いるめっき法では、被めっき物を個別に制御できないことから、バッチ内でめっき製品ごとに膜厚のばらつきが生じやすいという問題がある。また、個々のめっき製品においても、均一な膜厚が得られず、部位により膜厚がばらつくことが多い。さらに、被めっき物の靭性(強度)が低い場合には、欠け割れを起こし易く、異物発生の原因となり易い。引っ掛け治具を用いるめっき法では、めっき製品に治具痕が残りやすく、均一かつ緻密なめっき被膜が得られないという問題がある。
【0004】
このため、バレルめっき法に関する改良技術として、例えば特許3021728号公報等が、また引っ掛けめっき法に関する改良技術として、例えば特開2001−131800号公報や特開2001−152388号公報等がそれぞれ提案されている。
【0005】
しかし、近年では、電子部品等のめっきに特に高い精度、すなわち、均一で、緻密な被膜形成が要求されるようになっており、従来のバレルを用いためっきや引っ掛け治具を用いためっきでは、この要求に十分に応えることができない。特に、被めっき物がリング形状などの内周面を有する形状をしていると、電気的に影となる内周面の膜厚が極端に薄くなってしまうという問題がある。この問題への対策として、特開2001−73198号公報では、中空部を有する被めっき物の中空部内に補助陽極を配備した電気めっき治具が提案されているが、陽極が溶出し易い材質の場合、陽極自体が部分的に剥離して脱落し、異物の発生原因になるという問題がある。
【0006】
ところで、電気めっきにおいては、めっき中を通して被めっき物と電極との接触(通電状態)を維持する必要がある。しかし、前記バレルめっきでは、多数の被めっき物をバレルに入れて回転させるため、一般に被めっき物への通電状態が悪い傾向にある。特に被めっき物が比重の小さな小物の場合、めっき液中での浮き上がり防止を兼ねて導電性を持った小径の金属球等を、バレル内に同容量程度同時に入れて対処する場合があるが、その場合でも比重の違いから通電状態にバラツキが発生してしまう。
【0007】
引っ掛け治具の場合は、電極を兼ねた治具に被めっき物を懸架するため、被めっき物との接触状態は一応確保できるものの、この種の治具の問題点として、前記したように治具痕が残るほか、被めっき物の比重が軽い場合は、めっき液の攪拌等によって被めっき物が治具から簡単に外れてしまい、めっき浴中に落下しやすいという問題がある。被めっき物がめっき浴中に落下すると、被めっき物から金属が溶出し、めっき性能に悪影響を与えることがあるため、引っ掛け治具を用いる場合は落下防止に細心の注意が必要になる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、高いめっき精度が求められる電子部品などに電気めっきを施す場合において、被めっき物への通電状態を維持し、緻密で均一な被膜を形成することが可能な電気めっき治具を提供することが求められている。これが本発明の課題である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の電気めっき治具の発明は、貫通開口を有する板状の遮蔽板の片面に、前記貫通開口を横断するように電極線を渡設し、二枚の前記遮蔽板を、前記貫通開口が重なり、かつ前記電極線が外側になるように重ね合わせ、前記開口部の壁と、前記電極線とにより画される空間を、被めっき物を個別に配置する部屋としたことを特徴とする。
【0010】
この電気めっき治具の発明によれば、貫通開口を有する二枚の遮蔽板を重ね合わせた簡単な構造でありながら、以下のような優れた効果が得られる。
【0011】
この電気めっき治具では、開口部の壁と、電極線と、により画される空間を、被めっき物を個別に配置する部屋とした。従来のバレルを用いためっきでは、バレル内で個々の被めっき物の動きを制御することが不可能であったため、均一な膜厚が得られず、製品ごと、あるいは部位ごとに膜厚がばらつくという問題があったが、本発明のめっき治具は、簡易な構造でありながら、めっき製品における被膜の膜厚制御が容易であり、膜厚のばらつきを抑えることができる。また、被めっき物同士がめっき中に衝突することがないため、靭性の低い材料でも欠け割れが起こり難い。また、引っ掛けめっき治具のように、めっき製品に治具痕が残ることもない。
【0012】
また、部屋の二面は電極線により画され、あたかも片面に電極線を備えた治具同士を貼り合わせたような構造であるため、対向する電極間に被めっき物を保持し、被めっき物の落下を防止することが可能になる。
【0013】
また、例えば部屋が反転する場合でも反対側の電極に被めっき物を接触させることが可能になるほか、めっき浴中で被めっき物が浮き上がった場合でも上側の電極に接触させることが可能になる。従って、めっき時間のほぼ全域を通して被めっき物が通電された状態を確保し、良好な被膜形成が行える。
【0014】
さらに、部屋は積層した遮蔽板に形成されているため、部屋内では所望の遮蔽作用が得られる。例えば内周面を有する被めっき物の場合、外周面を遮蔽できるので、従来の電気めっきにおける課題であった電気的に影となる内周面の被膜形成と外周面の被膜形成が同等になるような制御も可能になり、内外周の膜厚差を小さくすることができる。
【0015】
しかも、この電気めっき治具は、遮蔽板を重ねるという簡易な構造であるため、電極線の配備も容易である。
【0016】
請求項2に記載の電気めっき治具の発明は、請求項1において、前記重ね合わされた遮蔽板の両面の電極線は、導電性の固定具により、互いに電気的に接続した状態で固定されていることを特徴とする。
この特徴によれば、遮蔽板の両面の電極線を互いに電気的に接続した状態で固定したので、複雑な配線をせずに、簡易な配線で遮蔽板両面の電極線をともに導通状態におくことができる。また、導電性の固定具を金属性のボルト等を用いて電気的に導通した状態で構造物的に簡単に固定できるため、固定具自体を被覆することが可能となり、従って無駄な金属析出を抑えることができる。このように、簡易な構造で請求項1の効果が得られる。
【0017】
請求項3に記載の電気めっき治具の発明は、請求項1または請求項2において、前記開口部の両端に渡設された電極線間の距離が、前記開口部の壁の高さよりも小さく形成されていることを特徴とする。
【0018】
この特徴によれば、開口部の両端に渡設された電極線間の距離を、開口部の壁の高さ、すなわち部屋の高さよりも短く形成したので、非導電性材料でできた部屋の壁による遮蔽効果が確実になり、その結果均一な膜厚を得ることができる。つまり、電極線によって支持される被めっき物は、開口部内に隠れた状態となり、電気的に十分に均一な遮蔽効果が得られる。
【0019】
請求項4に記載の電気めっき治具の発明は、請求項3において、前記電極線は、前記遮蔽板に形成された溝部に埋設されていることを特徴とする。この特徴によれば、電極線を遮蔽板に埋設したので、電極線間の距離を、開口部の壁の高さよりも短く形成できるとともに、電極線をしっかりと固定することが可能になり、撓みや歪み、ずれ等を防止できる。
【0020】
請求項5に記載の電気めっき治具の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項において、前記二枚の遮蔽板は一体となって被めっき物の支持体を形成するとともに、該支持体は、回動可能に設けられていることを特徴とする。
【0021】
この特徴によれば、部屋が回動可能な支持体に設けられるため、支持体の回動に伴い部屋の中で被めっき物を移動させることが可能になり、遮蔽作用を均一にして膜厚の偏りを抑えることが可能になる。また、電極線を対向配備しているため、支持体の回動に伴って被めっき物を部屋ごと反転させることができるので、被めっき物の天地両面(リング形状や円筒形状の場合は端面)の膜厚を均一にすることができる。
【0022】
請求項6に記載の電気めっき治具の発明は、請求項5において、前記部屋は、前記支持体の回動に伴い部屋内を移動する被めっき物を一定時間安定的に支持する少なくとも二つの安定位置を有し、該少なくとも二つの安定位置のうち、一の安定位置から他の一の安定位置へ被めっき物が移動する途中で、前記部屋の壁面の少なくとも1箇所の当接部位に被めっき物が接触する構造であることを特徴とする。
【0023】
この特徴によれば、部屋内の一の安定位置から他の一の安定位置へ被めっき物が移動する際に、部屋の壁面へ接触する構造にすることにより、簡単な構成で、被めっき物に一定方向の回転を与えることができる。また、回転量の制御も部屋の形状によって容易に行うことができる。
【0024】
請求項7に記載の電気めっき治具の発明は、請求項5において、前記部屋の形状は、前記支持体が回動しても前記一の安定位置と前記他の一の安定位置とを結ぶ線が鉛直方向と重なることがない形状であることを特徴とする。
【0025】
この特徴によれば、部屋の形状を、一の安定位置と他の一の安定位置とを結ぶ線が鉛直方向と重なることがない形状にすることにより、支持体の回動動作の中で、被めっき物が重力により一の安定位置から他の一の安定位置へ移動する途中で部屋の壁面に接触する構造を容易に作り出すことができ、被めっき物に一定方向の回転を与えることができる。
【0026】
請求項8に記載の電気めっき治具の発明は、請求項1から請求項7のいずれか1項において、被めっき物の形状が、内周面を有する形状であることを特徴とする。本発明の電気めっき治具は、めっき被膜の膜厚制御が可能であるため、被めっき物が内周面を有する形状、例えばリング形状や円筒形状をした被めっき物にめっきを施す場合、内周面と、それ以外の外周面や端面との膜厚差を低減する事が可能であるため、特に有効である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電気めっき治具100の概要を示す斜視図である。この電気めっき治具100は、電気めっき用の治具であり、左右のフレーム13a、13bの間に回動自在に支持体としての2つのトレイ10a、10bを備えている。このトレイ10a、10bには、それぞれ被めっき物のワーク70を配置する部屋として複数のセル30が形成されている。
【0028】
図2は、電気めっき治具100を正面から見た状態であり、ここではトレイ10aおよび10bが略垂直に立った状態を示しており、各セル30にはワーク70が配置されている。
フレーム13aには、第1歯車21、第2歯車23、第3歯車25が互いに係合した状態で配備されている。第2歯車23はトレイ10aに、また第3歯車25はトレイ10bに、それぞれフレーム13aの貫通穴(図示せず)を通して連結されている。第1歯車21は、フレーム13aを挟んで反対側の駆動モータ27と接続している。
【0029】
電気めっき治具100の上部には支柱15が設けられ、この部分を把持して移動やめっき浴への浸漬を行うことができる。電気めっき治具100の正面側と背面側は開放されており、また、底部にも開口部19が設けられ、めっき浴中に浸漬した状態でセル30内にめっき液が容易に侵入できる構造になっている。
【0030】
電気めっき治具100の左右フレーム13a、13bの上部には、前後4箇所に金属などの導電性材料で構成される引っ掛け部17が設けられ、めっき浴に浸漬した状態でこの引っ掛け部17をめっき槽50に渡した棒状物に懸架できるようになっている(図6参照)。
【0031】
また、歯車23(歯車25)の中心部は、ここでは図示しない配線が接続可能に構成されており、トレイ10のシャフト34(図3参照)までを電気的に接続可能にしている。
【0032】
ここで、図3〜図5を参照しながら、トレイ10(10a、10b)の詳細を説明する。図3はトレイ10の斜視図、図4は同展開斜視図である。本例のトレイ10には、一列7個のセル30が貫通した開口部として二列に形成されている。セル30は、平面視で角を丸めた四角形形状であり、後述するように、トレイ10がどの回動位置に変位した状態においても、一の安定位置と他の一の安定位置とを結ぶ線が鉛直方向と重なることがないように、斜めに形成されている。
【0033】
トレイ10の両面には、同じ列のセル30のすべてに渡設した状態で、片面4本ずつの陰極線33が配設されている。陰極線33は、例えばステンレス、鉄、銅、チタン、カーボンなどの導電性材料で構成され、両端部において同様に導電性の材料で形成された固定具31a、31bまたは固定具32a、32bに接合している。
【0034】
陰極線33は、各セル30の開口部両端、すなわち開口部の天部(上部)および底部(下部)において露出しており、セル30内に配置される被めっき物としてのワーク70に接触して通電させる作用とともに、ワーク70の落下を防止する落下防止手段としての機能も有している。ワーク70がめっき浴中に落下すると、ワーク70から金属が溶出し、めっき性能に悪影響を与えることがあるが、落下防止手段を設けることにより、かかる事態を防止することができる。また、めっき浴中でトレイ10を回動させると、ワーク70がセル30内で浮き上がり、下側の陰極線33から離れることがあるが、両面に陰極線33を配備することによって、浮き上がった状態でも上側の陰極線33に接触してワーク70の導通状態を確保できるという効果もある。なお、陰極線33の本数は、セル30の片側2本に限るものではなく、1本あるいは3本以上配備することもできる。また、陰極線33は並行な配置に限らず、例えば格子状に配備してもよい。
【0035】
前記したように、陰極線33は、セル30からワーク70が抜け落ちないように落下防止手段としても機能するが、陰極を他の位置、例えばセル30の内壁に配置するのであれば、陰極線33に替え、トレイ10の両側に落下防止手段として合成樹脂製の繊維や網などを配備することも可能である。
【0036】
固定具31a、31bは、それぞれシャフト34を備えている。このシャフト34は、回動軸として作用し、図示しない係合手段により第2歯車23または第3歯車25と係合できるようになっている。シャフト34は導電性を持つ固定具31a、31bと一体に形成されており、第2歯車23または第3歯車25の中心部を介して図示しない配線と電気的に接続可能になっている。また、固定具32a、32bは、シャフト34を有しない以外は固定具31a、31bと略同様の構成である。
【0037】
図4に示すように、トレイ10は2枚の基板11a、11bを重ね合わせた構造である。このように片面に陰極線33を配備した2枚の基板11a、11bを貼り合わせた構造にすることによって、簡単にトレイ10を製造できる。
【0038】
基板11a、11bには、重ね合わせた状態でセル30となる開口12が列状に形成されている。トレイ10を構成する基板11a、11bは、例えば合成樹脂などの非導電性材料により形成されているので、ワーク70を支持する機能のほか、遮蔽板としても作用する。また、トレイ10は、開口12以外の面積も十分に確保した構造になっている。これにより、トレイ10の回動の際にめっき浴を攪拌する作用を持たせている。基板11a、11bの片面には、それぞれ陰極線33が埋設できるような溝16が設けられている。
【0039】
固定具31a、31b(32a、32b)は、金属製ボルト等により、ねじ穴36、および突片35に形成されたねじ穴38において、トレイ10を構成する基板11a(11b)に固定されている。そして、固定具31aと固定具32a、および固定具31bと固定具32bは、二枚の樹脂板11a、11bを挟み込むようにして装着される。つまり、図4中、上側の固定具31aと下側の固定具32aは、上下の突片35のねじ穴38を貫通する金属製ボルト等を介して電気的な接続状態が確保できるように構成されている。このようにトレイ10を構成する導電性を持った固定具に無駄な金属析出を抑えるための被覆を施しながら、金属製ボルト等を介しての通電を可能としている。
【0040】
図5は、トレイ10の要部断面図であり、セル30内にリング状のワーク70を配置した状態である。ワーク70は、同図中、下側の陰極線33c、33dと接触した状態でセル30内に置かれている。トレイ10が回動して天地反転した状態になると、ワーク70も天地反転し、陰極線33a、33bに接触することが理解される。
【0041】
セル30内のワーク70は、めっき中にセル30を構成する非導電性の基板11a、11bにより遮蔽される。特に、ワーク70の外周面70aがセル30の壁面に当接もしくは近接した状態になると、非導電性のセル30の壁により外周面70aにおける当接部位もしくは近接部位には被膜が形成されにくくなる。このため、例えばリング状など内周面70bと外周面70aを有するワーク70において、内外周の膜厚を均一に制御できるようになる。
【0042】
図5から見て取れるように、本例では十分な遮蔽効果を得るために、ワーク70の高さh1よりも、非導電性のセル30の壁面の高さHを大きくしている。例えば、h1=Hとした場合は、遮蔽が不十分になり、ワーク70の特に上下面付近の外周面において膜厚が厚く形成されてしまうことがあるが、h1<Hとすることにより遮蔽効果が確実になり、その結果均一な膜厚が得られる。
【0043】
また、同様に十分な遮蔽効果を得るために、陰極線33がセル30内に食い込むように配設されている。
すなわち、陰極線33は基板11aおよび11bに形成した溝16(図4参照)内に埋設されるように装着されており、セル30の内部に陰極線33が突出した状態になる。従って、上下の陰極線33間の距離h2は、セル30の壁面の高さHよりも小さくなる。その結果、陰極線33に支持されるワーク70は、セル30内に納まり、その壁面に隠れるようになるので、十分な遮蔽効果が得られる。また、基板11aおよび11bに形成した溝16内に陰極線33を埋設することで、陰極線33をしっかりと固定することが可能となり、撓みや歪み、ずれ等を防止できる。
【0044】
なお、本例では、上下の陰極線33間の距離h2とワーク70の高さh1との差を1mm程度に設定している。このh2とh1の差が大きくなり過ぎると、トレイ10の動作とは無関係にワーク70がセル30内で反転したり、縦横が入れ替わったりして、一方向の回転を制御できなくなることがあるので、ワーク70の形状に応じて上下の陰極線33間の距離h2を調整することが好ましい。
【0045】
図6は、電気めっき治具100をめっき槽50に配置した状態である。電気めっき治具100は、4箇所の引っ掛け部17において、棒60a、60bに掛架され、所定位置まで浸漬される。前記したようにシャフト34は第2歯車23または第3歯車25の中心部を介して外部と電気的に接続可能になっているため、該中心部まで配線を施すことにより、トレイ10a、10bの陰極線33まで通電される。そして、電気めっき治具100の両側に陽極41を配備することにより、電気化学反応が生じてめっき浴50中の金属イオンが陰極線33に接触しているワーク70の表面に析出して被膜が形成される。
【0046】
電気めっき治具100を用いてめっきを行う場合、第1歯車21は、駆動モータ27により所定の速度で回動する。第1歯車21の動きは、一方向への回転でも、正逆方向への回転でも、あるいは回転まで至らない揺動でもよい。なお、駆動モータ27を設けない場合は、この動作を手動で行うこともできる。第1歯車21の回動は、第2歯車23に伝達され、第2歯車23を回動させる。同様に第2歯車23の回動は、第3歯車25に伝えられ、第3歯車25を回動させる。例えば、第1歯車21が、図6中矢印で示す方向に回転するとき、第2歯車23、第3歯車25は、それぞれ矢印の方向に回転する。
【0047】
第2歯車23および第3歯車25の回動は、シャフト34を介してトレイ10a、10bにそのまま伝達され、トレイ10a、10bが回動(回転または揺動)する。
【0048】
図7に、トレイ10の回動と、セル30内のワーク70の動きを示す。なお、ここでは説明の便宜上、トレイ10の片側の列のセル30のみを図示することにした。まず、トレイ10が図7(a)に示すA位置からB位置まで、図中細い矢印で示す方向に回転する場合を考える。A位置では、セル30内のワーク70は、最も端部よりの位置、つまり、セル30の内壁面に当接した位置にある。トレイ10がB位置まで回転するに従って、セル30内のワーク70は、太い矢印で示す方向に向け、少しずつ基端側にセル30内を移動していく。より具体的には、ここでは図示しない陰極線33に摺接しながら移動することになる。
【0049】
トレイ10がC位置まで回転すると、セル30内のワーク70は完全に基端側よりの位置、つまりセル30における先の壁面とは対向する壁面に当接した状態になる。
【0050】
トレイ10が、図7(b)に示すD位置になるとワーク70は反転し、セル30の反対側の陰極線33に当接した状態になる。D位置から、さらにトレイ10が細い矢印方向に回転しE位置までくると、反転したワーク70は再びトレイ10の端部側へ向けセル30内を太い矢印で示す方向に移動していく。トレイ10がさらに回転してF位置までくると、ワーク70はセル30の内壁に当接した状態となり、やがて再び反転して図7(a)のA位置の状態まで戻る。このように、トレイ10の回転により、ワーク70はセル30内を移動するとともに、トレイ30が反転するとワーク70も反転する。なお、図7(a)、(b)における太い矢印は、セル30内におけるワーク70の動きの方向を示すものであるが、この動きは重力によって与えられる。
【0051】
図8は、本発明電気めっき治具100におけるワーク70の動きを説明するための模式図である。ここでは、適宜図7も参照しながら説明する。なお、図8(a)〜(d)において、太い矢印は、ワーク70の移動方向を、細い円弧の矢印はワーク70の回転方向を示す。また、各図の側部に描かれた両端に矢印を持つ線Yは、トレイ10の基端部(回動中心)と端部を最短距離で結ぶ線方向を示している(以下、「Y軸」と記すことがある)。
【0052】
まず、図8(a)では、ワーク70はセル30内の一の安定位置に支持された状態である。このときセル30は図7(a)のA位置にあると仮定する。
【0053】
図8(a)の状態から、トレイ10が図7(a)のB位置を過ぎてC位置までに変位するに従い、セル30内のワーク70は、トレイ10の基端部側へ向けセル30内を移動していく。具体的には、セル30の下部に配設された陰極線33(図示せず)に摺接しながら図8(a)の太い矢印方向にセル30の対向壁面まで移動する。そして、セル30内の対向部壁面に衝突したワーク70は、図8(b)に示すように、壁面に沿うように回転しながら太い矢印で示す方向に移動していき、このセル30における他の安定位置まで到達する[図8(c)の位置]。
【0054】
さらにトレイ10を回転させ、図7(b)のD位置、E位置を経てF位置まで変位させた場合、ワーク70は天地反転し、図8(c)において太い矢印で示す方向に移動していく。具体的には下部に配設された電極に摺接しながらセル30の対向部壁面まで移動する。トレイ10の回転により、セル30の対向部壁面に衝突したワーク70は、壁面に沿うように回転しながら、図8(d)中の太い矢印で示す方向に移動していき、このセル30における元の安定位置まで到達する[図8(a)の状態]。
【0055】
以上の動作を繰返すことにより、ワーク70はセル30中を一方向に非連続的に回転しながら移動していく。トレイ10を回転させた場合に限らず、360°未満の角度で揺動させた場合でも、ワーク70が自重によりセル30内を移動する角度であれば、同様に一方向の回転が得られる。この一方向の回転は、トレイ10の回動ベクトル軸に対して直角なベクトルを持つ回転である。この回転により、内周面70bを有するリング状のワーク70において、内外周に均一な膜厚のめっきが施される。
【0056】
すなわち、ワーク70の回転により、ワーク70の外周面70aがセル30の壁面と当接する部位が順次変わる結果、均一な遮蔽効果により外周面70aの膜厚は均一になる。
また、ワーク70の外周面70aはセル30の壁により適宜遮蔽されるので、被膜形成が抑制され、外周面70aのめっき被膜のみが厚くなることがなく、めっき被膜が形成されにくいワーク70の内周面70bとの膜厚差を小さく改善することができる。
さらに、ワーク70の端面における陰極線33との接触部位は、ワーク70の回転に伴って短時間で変わっていくため、陰極線33と固着することがない。通常、ワーク70の被膜が電極に固着すると、被膜の欠損(めっき剥がれ)を引き起こし、装飾めっきとしての外観的な不具合や金属系被めっき物の錆び発生要因となることが知られているが、本発明ではかかる事態を防止でき、治具痕も一切残らない。
【0057】
また、トレイ10が180℃以上回転する場合には、落下防止手段(陰極線33)をセル30の上下に配置することにより、ワーク70の両端面が交互に陰極線33に接触することになるため(図7参照)、ワーク70の両端面の膜厚も均一にすることが可能になる。
【0058】
図8では、平面視が四角形のセル30をY軸に対して斜めになるように、例えば角度θをもたせて配置しているが、同じ四角形でもY軸との角度θを変えることにより(これは、セル30の形状を変えることを意味する)回転量を調節できることは同図から容易に理解される。
【0059】
図8に示すように、トレイ10の回動に伴ってセル30内におけるワーク70は重力によって移動する。この移動を利用し、ワーク70の移動経路がY軸[図8参照]と重ならないように工夫することにより、セル30内でワーク70を一定方向に回転させることが可能になる。このことは、トレイ10が回動途中で起立した状態になることを考えると容易に理解できる。トレイ10が起立した状態(図7のC位置、F位置)では、Y軸は鉛直方向と重なる。従って、例えばセル30内における安定位置を結ぶ線がY軸と重なる場合(例えば、平面視で真円や菱形の場合など)、セル30内のワーク70は、自由落下に近い状態でY軸に沿って最短距離で移動してしまう。このような動きの場合、セル30内でワーク70を一方向に回転させることは出来ない。仮に回転が生じたとしても、その方向を制御できないため、回転量の制御も不可能になる。
【0060】
しかし、ワーク70のセル30内における一の安定位置[図8(a)の位置]と他の一の安定位置[図8(c)の位置]を結ぶ直線がY軸(鉛直方向)と重ならないようにすれば、移動途中でワーク70をセル30の壁面に接触させて回転を与えることが可能になる。この回転は一定方向であるため、回転量の制御も容易になる。しかもワーク70の回転は、トレイ10の回動とセル30の形状により与えられるため、複雑な機構は必要としない。
【0061】
セル30の形状(平面視)は、四角形に限るものではない。図9に、セル30の形状(平面視)の例を示す。図中、(a)は平行四辺形、(b)は台形、(c)は5角形、(d)は三角形、(e)は楕円形、(f)はトラック形を示し、矢印はワーク70の移動方向を示す。矢印の長短は、移動距離の長短を示しており、破線は回転を伴わない移動を示す。図9から見て取れるように、セル30の形状によりワーク70の回転量を変化させることができる。また、セル30の形状が同じならば、ワーク70の回転は常に一方向である。
【0062】
セル30内でワーク70を効率よく回転させるためには、図8および図9に例示したように、セル30の形状をY軸に対して非線対称な形状にすることが好ましい。このようにすると、一の安定位置である図8(a)の位置と、他の一の安定位置である図8(c)の位置とを結ぶ線が鉛直方向と重なることがない形状のセル30を容易に作り出すことができる。つまり、トレイ10の回動動作の中で、ワーク70が重力により一の安定位置から他の一の安定位置へ移動する途中で、セル30の壁面の少なくとも1箇所の当接部位に接触するような構造になりやすいので、被めっき物に回転を与えることが可能になる。このようにワーク70を配置するセル30の形状を制御することによって、所望の回転をワーク70に与え、均一な被膜を形成することが可能になる。
【0063】
本発明の電気めっき治具100を用いためっきは、通常のめっき工程と条件に従い実施できる。本発明電気めっき治具100により電気めっきを行う場合の概要を例示すると、まず、ワーク70をセル30内にセットし、必要に応じて洗浄を行った後、所定電流の下で無光沢電気めっきや半光沢電気めっきもしくは光沢電気めっきを行う。めっき物は、洗浄した後、乾燥することにより、最終めっき製品が得られる。
【0064】
被めっき物としてのワーク70としては、例えば円板状、円筒状、リング状、球などのセル30内で周方向に回転し易い形状のものが好ましい。特に電気めっきにおいては、円筒状、リング状などの内周面70bを有し、従来の治具を用いためっきでは内外周で膜厚が不均一になりやすい形状のワーク70に有効である。
【0065】
被めっき物の材質としては、金属でも非金属でもよいが、金属と非金属の複合物や空孔を伴う金属など、通常の治具では精密なめっきを施しにくい材質に対しても有効である。かかる材質としては、例えば焼結合金、樹脂と粉末金属の複合物、鋳造合金等を挙げることができ、より具体的には、例えば焼結磁石、ボンド磁石、鋳造磁石等が挙げられる。
【0066】
上記磁石原料としては、例えば以下の[1]〜[6]が挙げられるが、特にこれに限定はされない。
[1]R(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうち少なくとも1種)と、Coを主とする遷移金属とを基本成分とするもの。
[2]R(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)と、Feを主とする遷移金属(TM)と、Bとを基本成分とするもの。
[3]R(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうち少なくとも1種)と、Feを主とする遷移金属(TM)と、Nを主とする格子間元素とを基本成分とするもの。
[4]R(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうち少なくとも1種)とFe等の遷移金属(TM)とを基本成分とし、ソフト磁性相とハード磁性相とが相隣接して(粒界相を介して隣接する場合も含む)存在する複合組織(特に、ナノコンポジット組織と呼ばれるものがある)を有するもの。
[5]前記[1]〜[4]の組成のもののうち、少なくとも2種を混合したもの。
[6]前記[1]〜[4]の組成のもののうち、少なくとも1種とフェライト粉末(例えば、SrO・6Fe2O3等のSr―フェライト等)を混合したもの。
また、ボンド磁石に使用される結合樹脂(バインダー)としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、一般的にナイロンと称されるポリアミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0067】
本発明の電気めっき治具100は、非常に均一なめっき被膜を簡易な構造で形成させることができるとともに、治具痕等に起因するめっき被膜の欠損が生じないことから、ハードディスク用モータに用いるリング状磁石などの高寸法精度、高防錆、防発塵等が要求される用途で使用されるワーク70のめっきに最適である。
【0068】
【実施例】
次に、実施例、比較例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに制約されるものではない。
【0069】
本発明の電気めっき治具100と、バレル治具等を用いてそれぞれ電気めっきを行い、得られためっき製品の膜厚や外観を比較した。めっきの条件は以下の通りである。
【0070】
<被めっき物>
被めっき物には、外径19mm、内径17mm、高さ3.6mmのリング状希土類ボンド磁石を用いた。
この磁石においては、合金組成がR−TM−B系合金で構成される磁石粉末(MQI社製のMQP−B粉末)と、エポキシ樹脂と、少量のヒドラジン系酸化防止剤とを混合し、これらを常温で30分間混練して、ボンド磁石用組成物(コンパウンド)を作製した。
このとき、磁石粉末、エポキシ樹脂、ヒドラジン系酸化防止剤の配合比率(重量比率)は、それぞれ95wt%、4wt%、1wt%であった。
次いで、このコンパウンドを秤量してプレス装置の金型内に充填し、無磁場中にて、常温にて、圧力1370MPaで圧縮成形してから、170℃でエポキシ樹脂を加熱硬化させ、円筒状のボンド磁石を得た。このボンド磁石に対して、その高さ方向の研磨処理を施した。その後、ボンド磁石を、バレル研磨法により各稜がR0.2になるまで研磨し、これを磁石本体とした。
【0071】
<めっき条件>
(1)本発明電気めっき治具:
被めっき物を図1の電気めっき治具にセットし、洗浄後、50℃の無光沢ワット浴を用いて無光沢電気めっきを2A/dm2で30分間行い、次いで50℃の光沢ワット浴で光沢電気めっきを2A/dm2で20分間行った。得られためっき製品は、超音波水洗浄、湯洗浄等の洗浄を行った後、乾燥した。
1バッチあたりの処理個数は28個とし、めっき中のトレイ10の回転速度は3〜4rpmとした。
【0072】
(2)バレル法:
バレル治具(既知の構成のもの)を用いた。被めっき物をバレル治具にセットし、洗浄後、50℃の無光沢ワット浴を用いて無光沢電気めっきを1A/dm2で100分間行い、次いで50℃の光沢ワット浴で光沢電気めっきを1A/dm2で60分間行った。得られためっき製品は、超音波水洗浄、湯洗浄等の洗浄を行った後、乾燥した。
【0073】
1バッチ(バレル)あたりの処理個数は30個とし、同時にバレル内に直径5mmのニッケル球を200ml投入した。また、めっき中のバレルの回転速度は3〜4rpmとした。
【0074】
(3)片面陰極治具によるめっき:
図10に示す構成の片面陰極の電気めっき治具を用いた。この治具は、合成樹脂等の非導電性板状部材(図4および図5の基板11に準じる)に形成されたセル130内に個別にワーク70を支持するものであり、ワーク70の下端が陰極線133に接触するように配置する。めっき浴中の陽極の配置は図3に準ずる。
【0075】
被めっき物を電気めっき治具にセットし、洗浄後、50℃の無光沢ワット浴を用いて無光沢電気めっきを2A/dm2で30分間行い、次いで50℃の光沢ワット浴で光沢電気めっきを2A/dm2で20分間行った。得られためっき製品は、超音波水洗浄、湯洗浄等の洗浄を行った後、乾燥した。
【0076】
1バッチあたりの処理個数は10個とし、めっき時間中は、30秒に1回の頻度で手動により揺動した。なお、ここでいう「揺動」は治具が陰極線133に固着しないように水平方向にずらすことをいう。揺動後は、セル130の壁面とのギャップが均等になるように、出来るだけセル130の中央にワーク70が位置するようにした。
【0077】
(4)補助陽極治具によるめっき:
図11に示す構成の補助陽極を備えた電気めっき治具を用いた。この治具は、陰極を兼ねる円環状支持具131の中央にニッケル製の補助陽極135を備えるもので、ワーク70は、円環状支持具131に設けた3つのリブ137により外周において3点支持されて配置される。めっき浴中の陽極の配置は図3に準ずる。
【0078】
被めっき物を電気めっき治具にセットし、洗浄後、50℃の無光沢ワット浴を用いて無光沢電気めっきを1A/dm2で60分間行い、次いで50℃の光沢ワット浴で光沢電気めっきを2A/dm2で20分間行った。得られためっき製品は、超音波水洗浄、湯洗浄等の洗浄を行った後、乾燥した。
【0079】
1バッチあたりの処理個数は16個とし、めっき時間中は、静止状態に置いた。なお、外周にはリブ137との当接による治具痕が残るため、後述するめっき膜厚の測定ではその部分を避けて測定した。
【0080】
<測定および結果>
(1) 得られためっき製品について、外周面、内周面、端面A、端面Bの膜厚を測定するとともに外観を目視にて観察した。その結果を表1および図12に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1および図12から見て取れるように、本発明電気めっき治具100を用いてめっきを施しためっき製品は、外周、内周、端面A、端面Bにおける膜厚差が少なく、均一であった。また、トレイ10の回動に伴いワーク70がセル30内を転動することにより、治具痕も残らなかった。
【0083】
これに対して、バレル治具によるめっきでは、内周面と外周面の膜厚のばらつきが大きかった。また、片面陰極治具(図10)によるめっきでは、両端面の膜厚の不均一さが顕著であった。これは、下側の端面Aと上側の端面Bで遮蔽効果に差が生じるためと考えられる。
【0084】
補助陽極治具(図11)を用いためっきでは、膜厚のばらつきはさほど大きくないが、めっき製品への異物の付着が見られた。この異物は、補助陽極135に使用したニッケルが脱離したものと考えられる。また、前記したように外周面に治具痕が残った。
なお、別途、図11における補助陽極として不溶性陽極材料(SUS、チタン−白金、カーボンなど)を使用した場合についても試験を行ったが、陽極効果は殆ど得られず、内外周の膜厚差を改善することは出来なかった。
【0085】
(2)本発明電気めっき治具100によるめっき製品と、片面陰極治具によるめっき製品について部位による膜厚のばらつきを調べた。
【0086】
得られためっき製品の中から任意に抽出したサンプルについて、図13に示す12箇所における膜厚を測定した。本発明電気めっき治具100による場合の結果を図14に、片面陰極治具(図10)による場合の結果を図15に、それぞれ示す。
【0087】
この結果から、本発明電気めっき治具100により得られるめっき製品は、片面陰極治具(図10)を用いるめっき製品に比べて▲1▼内周、外周、端面A、端面Bにおける膜厚のばらつきが少なく、かつ▲2▼部位ごとの膜厚のばらつきも少ないことが示された。
【0088】
以上、本発明を種々の実施形態に関して述べたが、本発明は上記実施形態に制約されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、他の実施形態についても適用可能である。
【0089】
【発明の効果】
本発明の電気めっき治具によれば、簡易な構造でありながら、めっき製品における被膜の膜厚を制御しやすく、製品ごとの膜厚のばらつきを抑えることができる。また、被めっき物同士がめっき中に衝突することがないため、靭性の低い材料でも欠け割れが起こり難い。また、引っ掛けめっき法のように、めっき製品に治具痕が残ることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気めっき治具の斜視図である。
【図2】図1の電気めっき治具のトレイを起立させた状態の正面図である。
【図3】トレイの斜視図である。
【図4】トレイの展開斜視図である。
【図5】トレイの要部断面図である。
【図6】図1の電気めっき治具の使用状態の説明に供する図面である。
【図7】トレイの回動動作とワークの移動の説明に供する図面である。
【図8】セル内におけるワークの移動の説明に供する図面である。
【図9】セルの形状の例を説明する図面である。
【図10】片面陰極治具の説明に供する図面である。
【図11】補助陽極治具の説明に供する図面である。
【図12】電気めっき治具の相違による部位ごとの膜厚を示すグラフ図である。
【図13】めっきを施したリング状磁石の膜厚の測定部位を示す図面である。
【図14】本発明電気めっき治具によりめっきを施した場合の部位ごとの膜厚を示すグラフ図である。
【図15】片面陰極治具を用いてめっきを施した場合の部位ごとの膜厚を示すグラフ図である。
【符号の説明】
10 トレイ
12 開口
30 セル
13 フレーム
15 把持部
16 溝
17 引っ掛け部
19 開口部
21 第1歯車
23 第2歯車
25 第3歯車
31a、31b 固定具
32a、32b 固定具
33 陰極線
34 シャフト
35 突片
36 ねじ穴
38 ねじ穴
41 陽極
50 めっき槽
51 めっき液
60a、60b 棒
70 ワーク
130 セル
131 円環状支持具
133 陰極線
135 補助陽極
137 リブ
Claims (8)
- 貫通開口を有する板状の遮蔽板の片面に、前記貫通開口を横断するように電極線を渡設し、
二枚の前記遮蔽板を、前記貫通開口が重なり、かつ前記電極線が外側になるように重ね合わせ、
前記開口部の壁と、前記電極線とにより画される空間を、被めっき物を個別に配置する部屋としたことを特徴とする、電気めっき治具。 - 請求項1において、前記重ね合わされた遮蔽板の両面の電極線は、導電性の固定具により、互いに電気的に接続した状態で固定されていることを特徴とする、電気めっき治具。
- 請求項1または請求項2において、前記開口部の両端に渡設された電極線間の距離が、前記開口部の壁の高さよりも小さく形成されていることを特徴とする、電気めっき治具。
- 請求項3において、前記電極線は、前記遮蔽板に形成された溝部に埋設されていることを特徴とする、電気めっき治具。
- 請求項1から請求項4のいずれか1項において、前記二枚の遮蔽板は一体となって被めっき物の支持体を形成するとともに、該支持体は、回動可能に設けられていることを特徴とする、電気めっき治具。
- 請求項5において、前記部屋は、前記支持体の回動に伴い部屋内を移動する被めっき物を安定的に支持する少なくとも二つの安定位置を有し、
該少なくとも二つの安定位置のうち、一の安定位置から他の一の安定位置へ被めっき物が移動する途中で、前記部屋の壁面の少なくとも1箇所の当接部位に被めっき物が接触する構造であることを特徴とする、電気めっき治具。 - 請求項5において、前記部屋の形状は、前記支持体が回動しても前記一の安定位置と前記他の一の安定位置とを結ぶ線が鉛直方向と重なることがない形状であることを特徴とする、電気めっき治具。
- 請求項1から請求項7のいずれか1項において、被めっき物の形状が、内周面を有する形状であることを特徴とする、電気めっき治具。
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