JP3752918B2 - カラー陰極線管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、テレビジョン、コンピュータディスプレイ等に用いられるカラー陰極線管に関し、特に、そのシャドウマスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近のカラー陰極線管は、外光の映り込みが少なく見栄えが良いという点から、フェイスパネルが平面化してきており、これに伴い、シャドウマスクも平面化している。シャドウマスクが平面化してくると、シャドウマスク本体をマスクフレームで支持するのみではシャドウマスクの平面を維持できない。
【0003】
また、単にマスクフレームで支持するのみでは、外部からの振動により容易にシャドウマスクが振動してしまい、カラー陰極線管の表示画像に悪影響を与える。このため、シャドウマスクに一定の張力を加えてマスクフレームに架張保持することが行われている。
【0004】
一方、シャドウマスクに電子ビームが衝突することにより、熱膨張してシャドウマスク面が変形するドーミング現象が生じるが、シャドウマスク面が平面化することにより、特に画面両端部近傍においてドーミングによる電子ビームの変位量が大きくなる。このような点において、前記のシャドウマスクの架張保持によれば、電子ビームの衝突による熱膨張を張力で吸収させることができる。
【0005】
しかし、架張型シャドウマスクでは、ドーミング現象による色むらを防止することはできるが、スピーカーからの振動伝搬等の外部から伝わるシャドウマスクの振動を、シャドウマスクに加えた張力のみでは完全に抑えることができない。
【0006】
このようなシャドウマスクの振動を低減するために、ダンパーワイヤーをシャドウマスク面に架張したり、このダンパーワイヤーとシャドウマスクとを溶接したりすること等が行われている。しかし、このようなダンパーワイヤーを用いるとカラー陰極線管の表示画像にその影が映ってしまい画像品位が低下する。このような問題を生じさせずに振動を吸収する手段が、現在までに種々提案されている。
【0007】
例えば特表平3−500591号公報には、シャドウマスクの周辺部分に固定された剛体手段と、この剛体手段に接続されかつシャドウマスクから離れている抵抗性手段とを含む振動減衰装置が提案されている。このような振動減衰装置を備えることにより、シャドウマスクからの振動エネルギーは、シャドウマスクと固着された剛体手段によって抽出され、この抽出された振動エネルギーは抵抗性手段に伝わり、そこで消滅することになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記のような振動減衰装置を備えた従来のカラー陰極線管には、以下のような問題があった。
【0009】
前記のような振動減衰装置は、剛体手段は溶接等によりシャドウマスクと一体に固着されている。このため剛体手段自体には、振動エネルギーを消滅させる作用はなく、剛体手段はあくまで振動エネルギーの抽出手段である。抽出された振動エネルギーの消滅は、別途設けられた抵抗性手段に振動エネルギーが伝わることにより初めて可能になる。したがって、このような振動減衰装置は、構造が複雑であり、コスト、生産性の面で障害となるものであった。
【0010】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、簡単な構造で、シャドウマスクの振動を減衰できるカラー陰極線管を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のカラー陰極線管は、張力の印加されたシャドウマスクがマスクフレームに保持されて内装されているカラー陰極線管において、前記シャドウマスクに遊動可能な状態で取り付けられた振動減衰体が、窪みを有し、前記窪みで折り曲げられている。
【0012】
このようにすることにより、振動減衰体を容易に形成することができる。
【0013】
また、本発明のカラー陰極線管は、前記振動減衰体が、前記窪みで折り曲げられることで略枠状に形成されている。
【0014】
このようにすることにより、振動減衰体をシャドウマスクに容易に取り付けることができる。
【0015】
さらに、本発明のカラー陰極線管は、前記窪みが、切り込みもしくは圧縮により形成されている。
【0016】
このようにすることにより、容易に窪みを形成することができる。
【0017】
また、本発明のカラー陰極線管は、前記窪みの深さが、前記振動減衰体の厚みに対して50%以下である。
【0018】
このようにすることにより、折り曲げやすく、かつ強度を保った振動減衰体とすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて具体的に説明する。図2に示した本実施の形態に係るカラー陰極線管1は、内面に蛍光体スクリーン面2が形成されたフェイスパネル3と、ファンネル4とから外囲器が構成されており、蛍光体スクリーン面2に対向したシャドウマスク5と、これを保持するマスクフレーム6とが内装されている。また、ファンネル4のネック部7には電子銃8が内装されており、電子銃8から射出される電子ビーム9を偏向走査するために、ファンネル4の外周面上には偏向ヨーク10が設けられる。ここで、シャドウマスク5は、3本の電子ビームが対応する色の蛍光体を照射するように色選別の役割を果たすものである。
【0020】
図3に、本実施の形態に係るカラー陰極線管のシャドウマスク組立体の斜視図を示す。
【0021】
マスクフレーム6は、2本のフレーム短辺部材6aと2本のフレーム長辺部材6bとで形成された長方形状の枠体である。ここでは、シャドウマスク5には短軸yに沿って一次元方向(矢印Y方向)の張力が与えられている。また、シャドウマスク5には、本図では図示していないが、規則正しく配列された略長方形の多数の電子ビーム通過孔が形成されている。なお、図中では、電子ビーム通過孔領域12を斜線で示している。
【0022】
ここで、カラー陰極線管は、一例として、アスペクト比が4:3の25型(画面対角約60cm)とし、シャドウマスクは、厚さ100μmの鉄材を用いた。また、シャドウマスクに印加するテンション量は、中央部付近で約600Kgとし、左右周辺部で約400Kgとした。
【0023】
シャドウマスク組立体は、シャドウマスク5の左右両端に振動減衰体11を有している。図4に示すように、振動減衰体11は、シャドウマスク5の電子ビーム通過孔領域12の外に形成された開孔13に取り付けられており、略コの字状の線状部材が開孔13に挿通して折り返されることで、略枠状に形成されている。
【0024】
ここで、振動減衰体11の折り返し部14には、図1(a)で示すように、窪み15が予め設けられている。この窪み15は、コの字状部材の隅部16よりも足部17側にあり、切り込みを入れることで形成される。足部17を、開孔13に挿入し、図1(b)のように窪み15で折り曲げることにより、略枠状の振動減衰体11が形成される。
【0025】
本実施の形態では、振動減衰体11は、シャドウマスク5の短辺フレーム部材6a付近において、電子ビーム通過孔領域12の外側に、長軸xに対して長辺フレーム部材6b側の位置に40mm離れた位置に均等に計4個配されている。また、振動減衰体は、全長が130mm、線径が0.9mm、重量0.7gの金属線材からなり、中央直線部の長さL1=70mm、折り返し高さL2=1.5mmとした。
【0026】
シャドウマスクの開孔13の径は振動減衰体11の部材径よりやや大きくしているため、シャドウマスク5と振動減衰体11との固着部分はなく、振動減衰体11はシャドウマスク5に取り付けられた状態で遊動可能である。
【0027】
このようにすることにより、シャドウマスク5が振動しても、振動減衰体11は、シャドウマスク5と一体となった動きはほとんどせず、振動減衰体11は、シャドウマスク5とは別個独立に振動することになる。すなわち、振動減衰体11は、シャドウマスク5と接触、摺動、または一時的な離間を繰り返しながら振動することになるため、シャドウマスク5の振動エネルギーは、このようなシャドウマスク5と振動減衰体11との接触、摺動による摩擦により、消費される。
【0028】
さらに、本実施の形態のように振動減衰体の折り返し部に窪みを設けることにより、振動減衰体の折り曲げ加工が容易になるとともに、振動減衰体を精度良く形成して取り付けることができる。
【0029】
折り返し部14に本実施の形態のような窪み15を設けない場合には、個々の振動減衰体の折り返し高さL2が異なる値になったり、折り返された足部17の方向性がばらつくなど、振動減衰体の組立精度が一定に保たれなくなってしまい、その結果、悪影響が生じる。例えば、L2が狭すぎると、振動減衰体が遊動不可能な状態でシャドウマスクに取り付けられてしまい振動減衰の役割を果たさなくなる。また、L2が広すぎると、振動減衰体が傾いた状態に取り付けられて、足部17の方向が電子ビーム通過孔領域12にまで及んでしまう場合が生じ、このとき足部17の影がビーム通過孔領域12に現れて、表示画像の妨げとなったりする恐れがある。
【0030】
なお、本実施の形態では、窪み15で折り返した状態での折り返し高さL2を1.5mmとしたが、これに限るものではない。他の好ましい例としては、図5に示すように、窪み15で折り返した後に、下方から力を加えてさらに足部17を折り曲げることによって、折り返し高さL2が1.5mmになるようにしてもよい。また、折り返し高さL2は1.5mmに限るものではないが、この値が小さすぎると振動減衰体の遊動が困難となって振動減衰の効果が少なくなり、逆に大きすぎると振動減衰体が大きく遊動しすぎて表示画像の妨げとなる。例えば、本実施の形態のようにテンション量400〜600Kg程度、板厚100μmのシャドウマスクに、線径1mm前後の振動減衰体を取り付ける際には、折り返し高さL2は0.6mm〜2mmの範囲がよい。但し、この値L2は、シャドウマスクのテンション量や板厚、振動減衰体の重量や大きさによって、適宜選定することができる。
【0031】
さらに、本実施の形態では、窪み15を切り込みにより形成しているが、例えば、図6に示すように、何らかの装置で振動減衰体を挟んで圧縮させることで形成した窪み15としても、同様の作用効果を得ることができる。また、窪み15の深さは、折り曲げやすくかつ振動減衰体の強度を保つことが可能な量として、振動減衰体の厚みに対して50%以下であることが好ましい。また、振動減衰体は、線状のものに限らず、幅の狭い板状等であっても、本発明は適用されうる。
【0032】
またさらに、本実施の形態では、窪みを振動減衰体の折り返し部14に設けた例を示したが、この窪みをコの字状部材の隅部16にも設けることにより、振動減衰体をコの字状に形成する際の折り曲げを容易にすることができることは言うまでもない。
【0033】
また、本実施の形態では、振動減衰体11をシャドウマスク5の電子ビーム通過孔領域外に計4個取り付けた例を示したが、電子ビーム通過孔領域内に振動減衰体を取り付けてもよい。この場合、カラー陰極線管の表示画像に影響が生じないように、有孔領域内の電子ビーム通過孔以外の部分に振動減衰体を取り付ける必要がある。また、振動減衰体の個数は、4個に限るものではなく、カラー陰極線管の大きさ、シャドウマスクのテンション量や厚み、振動減衰体の重量等によって、適宜決めることができる。
【0034】
また、本実施の形態では、複数の開孔を有するシャドウマスクを用いて説明したが、長いスリットおきに細条素体が配列されているアパーチャグリルと呼ばれるタイプのシャドウマスクであっても、本発明は適用される。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、シャドウマスクに取り付けられた振動減衰体が、遊動可能にシャドウマスクに取り付けられていることにより、シャドウマスクの振動エネルギーが、シャドウマスクと振動減衰体との接触、摺動による摩擦により消費されるので、簡単な構成によってシャドウマスクの振動を減衰させることができる。
【0036】
さらに、振動減衰体の折り返し部に窪みを設けることにより、振動減衰体の折り曲げ加工が容易になるとともに、振動減衰体を精度良く取り付けることができるため、振動減衰効果が安定して得られ、また、振動減衰体が表示画像の妨げとならないカラー陰極線管を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明に係るカラー陰極線管の振動減衰体の窪みを示す図
(b)本発明に係るカラー陰極線管の振動減衰体の形状を示す図
【図2】本発明に係るカラー陰極線管の部分断面図
【図3】本発明に係るカラー陰極線管のシャドウマスク組立体の斜視図
【図4】本発明に係るカラー陰極線管の振動減衰体の取付け部分を示す図
【図5】本発明に係るカラー陰極線管の振動減衰体の他の形状を示す図
【図6】本発明に係るカラー陰極線管の振動減衰体の窪みの他の例を示す図
【符号の説明】
1 カラー陰極線管
5 シャドウマスク
6 マスクフレーム
11 振動減衰体
15 窪み
Claims (5)
- 張力の印加されたシャドウマスクがマスクフレームに保持されて内装されているカラー陰極線管において、前記シャドウマスクに遊動可能な状態で取り付けられた振動減衰体が、窪みを有し、前記窪みで折り曲げられていることを特徴とするカラー陰極線管。
- 前記振動減衰体が、前記窪みで折り曲げられることで略枠状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のカラー陰極線管。
- 前記窪みが、切り込みにより形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のカラー陰極線管。
- 前記窪みが、圧縮により形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のカラー陰極線管。
- 前記窪みの深さが、前記振動減衰体の厚みに対して50%以下であることを特徴とする請求項1〜4記載のカラー陰極線管。
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