JP3752211B2 - 光ファイバテープ心線分離工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケーブル内に収容された多心線光ファイバテープ心線(以下「光ファイバテープ心線」と称する)を個々の光ファイバ心線に分離する分離工具に関する。
【0002】
【従来技術】
特許第2768783号公報に、テープ心線に傷を入れ、せん断力によりテープ心線を分離する工具が提案されている。この分離工具は、主として光ファイバテープ心線の端末部分での単心分離の用途に使用されるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、近年、光加入線路網の構築が急速に進んでいる。一般住宅に光ファイバを引き込む場合、多くの光ファイバ心線が収容されたスロット型アクセスケーブルから必要な光ファイバ心線を取り出して、各戸の軒先まで光ファイバ心線を配線(引き落とし)するためのドロップケーブルに接続する。図14(a)にスロット型アクセスケーブルの一例を示す。光ファイバケーブル30が支持線31により連結部材32を介して吊り下げられている。この光ファイバケーブル30は外被(シース)33と、ケーブルコア35と、このコアに設けられたSZスロット34に収容された光ファイバテープ心線の積層体から成る。光ファイバテープ心線は、複数の光ファイバ心線を平面的に配列し一体的に被覆した多心線である。
【0004】
図14(b)に図14(a)に示すA−A'線方向断面図を示す。図をわかり易くするため、断面部のハッチングは省略している。支持線31は単行線39を複数本撚り合わせて構成されており、複数のスロット34内には、複数の光ファイバ心線を一体的化した光ファイバテープ心線36が、多数収容されている(例えば、図14(b)では、4心線光ファイバテープ心線を5層に積層したものを示している)。図14(c)は各戸毎に光ファイバ心線を引き落とすためのドロップケーブルの一例を示す断面図である。ドロップケーブルは、光ファイバ心線42及び2本の銅線43とからなるケーブル本体部と、ケーブル本体を支持する支持線41とからなる。
【0005】
光ファイバの戸別軒先への引き落としは、1加入1心線が最低単位となるため、スロット型アクセスケーブルから任意の一つの光ファイバ心線を取り出して、ドロップケーブルに接続することが望ましい。そのためにはスロット型アクセスケーブルに収容されている光ファイバテープ心線36を単心の光ファイバ心線に分離し、接続する光ファイバ心線を取り出す必要がある。
【0006】
光ファイバケーブル30から分岐のための光ファイバ心線を取り出すためには、図示するように外被33を剥き、SZスロット34から光ファイバテープ心線36を取り出し、これを個々の心線に分離し、分離された心線を切断してドロップケーブルに接続する作業を行なう。しかし、上述したように、従来の分離工具は構造上分離工具自体の形状が大きく、この工具によりクロージャ内に収容された光ファイバテープ心線を中間部で取りだし単心線に分離しようとすると、ケーブル各部及びケーブルから取り出される他の光ファイバテープ心線が干渉して、作業性が悪い。すなわち、従来の分離工具は、光ファイバテープ心線の中間部において、光ファイバ心線の品質を損なうことなく単心に分離する工具には適していない。
【0007】
そのため、従来、1個の光ファイバ心線の需要(「1心の需要」と称する)であっても、各ドロップケーブルに1個の光ファイバテープ心線を割り振っていた。しかしこれでは、例えば、4個の光ファイバ心線からなる光ファイバテープ心線の場合には、3個の光ファイバ心線が無駄になる。かかる無駄をなくし、光ファイバ資源を有効に利用するため、クロージャ内のテープ心線を中間で分離できるコンパクトで、作業性に優れた分離工具が求められている。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みて為されたもので、作業性に優れており、光ファイバテープ心線の中間部で単心の光ファイバ心線に正確に分離することができるコンパクトな光ファイバテープ心線分離工具を提供することをその目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、溝状部内に保持した光ファイバテープ心線を長手方向に移動させることにより、溝状部内に突出し摺動方向に所定の間隔を持って配設された分割刃により光ファイバテープ心線を単心の光ファイバ心線に分離する分離工具を提供することにより上記課題を達成するものである。
【0010】
本発明の第一の態様にかかる光ファイバテープ心線分離工具は、複数の光ファイバ心線を平面的に配列し一体的に被覆した多心線からなるファイバテープ心線を、単心の光ファイバ心線に分離する工具であって、(a)第1の部材と第2の部材とにより光ファイバテープ心線を挟み込み長手方向に摺動可能に保持する保持部材と、(b)第1の部材または第2の部材のいずれか一方に配設され、第1の部材及び第2の部材で挟んだ状態で光ファイバテープ心線の一部を収容し、光ファイバテープを長手方向に通過させる溝状部と、(c)第1の部材または第2の部材の少なくとも一方に設けられ、溝状部に収容される光ファイバテープ心線に向かって突出し、光ファイバテープ心線の長手方向に1.5mm以上の間隔を置いて配置され、溝状部を通過させることにより光ファイバテープ心線を単心の光ファイバ心線に分離する複数の分割刃とを備えることを特徴とする。
【0011】
この態様により、光ファイバテープ心線を溝部内に挟みこみ摺動させるだけで、単心の光ファイバ心線への分離が可能となる。また、溝状部内に突出する複数の分割刃のみで分離するという単純な構造であるため、小型化も可能である。さらに、複数の分割刃を摺動方向(光ファイバテープ心線の長手方向)に1.5mm以上の間隔をおいてずらして配置することにより、個々の分割刃が光ファイバテープ心線に挿入されることにより発生する幅方向への応力が、外側に逃がされる。そのため、分割刃に生じる摺動時の摩擦力が軽減され、正確な分割が可能となるのみならず、比較的小さな力で光ファイバテープ心線を移動させることができ、単心への分離操作が容易となる。隣り合う分割刃の間隔は、光ファイバテープ心線を一体化するために被覆する外皮部材の材質、光ファイバ心線の径等によって決定される分割刃への応力、摺動摩擦力に応じて確定することが可能であるが、間隔を1.5mm以上とすることにより、現在、汎用されている光ファイバテープ心線を、大きな品質の低下を生じさせることなく確実に単心に分離することが可能となる。この場合において、分割刃の間隔が全て同じである必要はない。
【0012】
本発明の他の態様にかかる光ファイバテープ心線分離工具は、光ファイバテープ心線を収容し通過させる溝状部が、第1の部材と第2の部材とに分割して配設されていることを特徴とする。本態様により、光ファイバテープ心線が上面及び下面から均等に保持されるため、より正確に光ファイバテープ心線を摺動することが可能となる。
【0013】
本発明の他の態様にかかる光ファイバテープ心線分離工具は、第1の部材及び第2の部材のそれぞれに複数の分割刃が設けられ、第1の部材の分割刃及び第2の部材の分割刃は溝状部に収容される光ファイバテープ心線を挟んで互いに対抗する位置に配設されていることを特徴とする。本態様によると、光ファイバテープ心線が上面及び下面から均等に分割されるため、より正確かつ滑らかに分離することが可能となる。
【0014】
本発明の他の態様にかかる光ファイバテープ心線分離工具は、第1の部材及び第2の部材に分割刃が設けられる場合において、分割刃の光ファイバテープ心線への挿入深さdmmと光ファイバテープ心線の厚みtmmの関係が、0.09≦d/t≦0.5であることを特徴とする。本態様によると、正確な光ファイバ心線への分離が可能となる。すなわち、d/t<0.09では正確な分離ができ無い場合が発生し、d/t>0.5では、上下の分割刃が干渉してしまう。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図1から図13を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例に係る分離工具の外観を示す斜視図を示す。本実施例にかかる分離工具は、第1の部材1と、第2の部材2とが、クロスされてほぼ中央部で軸3により回転可能に固定された構成となっている。第2の部材2の先端部には溝状部7が設けられており、第1の部材と第2の部材が互いに係合したときに溝状部7の上部開口が第1の部材により閉じられる。
【0016】
光ファイバテープ心線(以下、適宜「テープ心線」と略称する)を単心線に分離する際には、第2の部材2に設けられた溝状部7にテープ心線を収容して第1の部材1及び第2の部材により挟み込み、テープ心線を長手方向に摺動可能に保持する。第1の部材及び第2の部材の他端部には、第1の把持部10及び第2の把持部20が設けられている。把持部10及び20を互いに近づける方向に回転させ閉じると、溝上部7が設けられた他端部が閉じ、溝状部7内にテープ心線の一部が摺動可能に保持される。
【0017】
テープ心線を単心の光ファイバ心線に分離する場合、溝状部7内にテープ心線を収容し保持ながら長手方向に摺動させる。図2は、第2の部材2の先端部及び溝状部7を示す拡大部分斜視図である。溝状部7は、テープ心線の幅wより僅かに大きい幅w+αを有している。溝状部7は、テープ心線の左右及び上下の動きを規制しつつ長手方向に摺動通過させるものであるため、テープ心線の形状に適合する形状とすることが好ましい。テープ心線と分離工具は相対的に移動すれば良いので、摺動操作は、本分離工具を固定してテープ心線を移動させるようにしても、またテープ心線を固定して分離工具を移動させるようにしてもよい。本実施例では、溝状部7を上記部材の長手方向と略直角方向に設けた構造をその1例として示している。しかし、テープ心線を摺動させるための操作性の観点から、図1に破線8で示すような斜めに配置する構成としてもよい。このような構成により、体に密着させて使用することが容易となり、さらに安定した摺動操作が可能となる
【0018】
溝状部7の内部には、テープ心線を挟み込み摺動したときに、テープ心線の皮膜を加傷し分離するための分割刃が設けられている。本実施例では、3個の分割刃11〜13が設けられ、4個の光ファイバ心線を一体化したテープ心線を4つの単心線に分割する。分割刃11〜13の幅方向の位置は、テープ心線を構成する隣接する光ファイバ心線の中間位置に一つづつ配置され、各分割刃11〜13は光ファイバテープ心線の長手方向に所定の間隔を持って配置される。分割刃相互の配置間隔及び突出量については、後述する。
【0019】
分割刃は、テープ心線を上下から均等かつ滑らかに分割するためにテープ心線を挟みこむ第1の部材1と第2の部材2の双方に対抗するように設けることが好ましいが、何れか一方に上記加傷刃3を設ける構成とすることも可能である。また、3本の分割刃11〜3は横方向の位置をずらされて配置され、止めネジ4で固定されている。本実施例では、分割刃として針状の加傷刃を示しているが、針状に限らず、一定の長さがある板状の加傷刃でもよく、その本数は対象とする光ファイバテープ心線の心線数と分割する態様に応じて設定することができる。
また、この実施例では、溝状部7を第2の部材のみに設けているが、第1の部材に設けてもよく、また、溝状部7を分割して第1の部材及び第2の部材の双方に設けてもよい。
【0020】
本実施例では、第1の部材1と第2の部材2とは略角型の構成としている。必ずしもこのような略角型にする必要はないが、このような角型形状とすると人手で保持した際に、回転しにくい点という利点を有する。第1の部材1とその把持部10、第2の部材2とその把持部20は、人手で取扱いが容易なように中間部で回転軸3を備えた、てこ状部材を構成している。この構成により、少ない力でテープ心線を挟み保持できる。
【0021】
図2に示すように、第2の部材2には、位置合わせピン23、ガイドピン21、ガイドピン22が設けられている。位置合わせピン23は第1の部材1と第2の部材2が適正に嵌合するためのピンであり、第1の部材には対応する位置に図示しないピン孔が設けられている。また、ガイドピン21と22は上記溝状部7に光ファイバテープ心線が適正に挿入されるように担保するガイドピンであり、第1の部材1の対応する位置には図示しないピン孔が設けられている。分離工具は現場で人手により使用されるので、人手による保持が容易なような寸法、好ましくは全長150mm程度である。
【0022】
工具により挟み付けられた状態で、光ファイバテープ心線を矢印5で示す方向に人手あるいは機械的に引抜くことにより、光ファイバテープ心線に傷を付け、例えば4心線光ファイバテープ心線を単心線×4本に分離する。光ファイバテープ心線を引き抜のではなく、光ファイバテープ心線を固定し、工具を移動させることにより単心線に分離することも可能である。この例では、4心線光ファイバテープ心線を示しているが、テープ心線内の心線の本数は限定されない。但し、例えば2心線から32心線程度のテープ心線であることが好ましい。テープ心線から単心の光ファイバ心線への分離は、摺動操作のみにより完全に分離されることが望ましい。しかし、必ずしもその必要はなく、傷をつけられたテープ心線をその後適宜最終的に分離することができる程度に加傷するように構成してもよい。
【0023】
図3は図1に示す分離工具を挟み付けた状態を示す正面図であり、図4は図3に示す分離工具を挟み付けた状態のB−B'線における長手方向の断面(縦断面)の一部を示す図である。溝状部7に第2の部材2に設けられた分割刃11〜13が下から上に突出しており、第1の部材1に設けられた分割刃14〜16が上から下に突出している。また、分割刃11及び14がねじ4により固定されている状態が示されている。図5は、テープ心線36が挟時されつつ矢印方向に摺動されることにより、光ファイバ心線の単線に分離される状態を示している。テープ心線36の分離にあたっては、図5に示すように分離工具によりテープ心線36を挟みこみ、テープ心線36が保持された状態で溝部7内を通過するように、テープ心線36または分離工具2を移動させる。これにより、テープ心線36の上下面に、分割刃に対応した切り込み17、18、19等が入り、単心線に分離される。
【0024】
次に、図6を用いて分割刃11〜13の配置について説明する。図6は、本発明の一実施形態にかかる溝状部7の分割刃の配置を説明するための図であり、溝状部7を開口部から見た平面図である。テープ心線36を破線で示している。分割刃11〜13は、それぞれのテープ心線36の幅方向に光ファイバ心線を単心に分割する間隔b1〜b4を持って配置され、摺動方向(テープ心線の長手方向)に所定の間隔a1、a2を持って配置される。b1〜b4は、光ファイバ心線の径等によって定まる。長手方向の間隔a1、a2は、必ずしも同じ間隔である必要はなく、テープを分割する際の摺動操作時にかかる応力、摺動摩擦等を考慮して定められる。この点については後述する。
【0025】
図7は、図4に示すC−C'線方向の断面図である。溝状部7内に収容されるテープ心線36を破線で示している。“t”はテープ心線の厚みを表し、“c1”は第1の部材1から突出する分割刃14〜16のテープ心線36の上面への挿入深さを、“c2”は第2の部材2から突出する分割刃11〜13のテープ心線36の下面への挿入深さを表している。
【0026】
図6、図7からわかるように、本発明に係る工具では、テープ心線36内の光ファイバ心線と光ファイバ心線の間に分割刃を入れ、矢印方向に移動させることにより、この分割刃11〜16の切り込みによって分割する。このように溝状部7に突出する分割刃のみによって分割する構成であり、他の複雑な機械的な機構を有しない。そのため、分離工具のサイズを小型し、コンパクトな操作性に優れた形状とすることが可能である。図8に、分離工具をテープ心線の長手方向に移動させることにより、テープ心線36の上面及び下面に生じる切りこみ17〜19及び27〜29のイメージ図を示す。図8では、下面の切込みが見えるように、テープ心線36の端面から切込みが入れられた状態を示しているが、実際には、連続したテープ心線の中間部分に切込みを入れ、単心の光ファイバ心線25に分離することができる。各分割刃はテープ心線の長手方向に所定の間隔を置いて設けられている。そのため、各分割刃による切込み最先端位置が、テープ心線の幅方向に対して所定の角度をもって斜めにずれた位置となることが重要な意味を持つ。
【0027】
次に、分割刃11〜13及び14〜16をテープ心線の長手方向に所定の間隔を置いて配置する理由について、図9及び図10を用いて説明する。図9(a)(b)は、分割刃を長手方向に対して間隔を置くことなく垂直に配置した場合の作用について説明する図であり、図10は、分割刃を長手方向に対して一定の間隔を置いて配置した場合の作用の違いについて説明する図である。分割刃44〜46を長手方向に対して間隔を明けずに配置した場合、図9(a)に示すように、テープ心線36の幅方向の同じ位置(摺動方向に垂直な位置)に同時に切りこみが入る。このように摺動方向に対して垂直な位置に同時に切りこみが入ると、図9(b)に示すように、分割刃46の切り込み挿入に伴うテープ被覆材38への応力f1が隣接する分割刃45を押圧し、分割刃45の切り込み挿入に伴う応力f2が隣接する分割刃46、44を押圧するので、摺動時における分割刃とテープ被覆部材38の摩擦が増大する。摺動摩擦が増大すると、分離工具使用時に大きな力が必要となり、作業性が低下するばかりでなく、被分離心線に誤って小さな径の曲がりが入り、損失変動が生じる恐れがある。
【0028】
これに対して、図10に示すようにテープ心線長手方向に一定の間隔を持って分割刃14〜16を配置すると、図10(a)に示すように、光ファイバ心線37が順次単心線に分離される。その理由は図10(b)に示すように、まず分割刃14〜16及び11〜13の幅方向には他の分割刃が存在しないため、例えば、分割刃16の挿入に伴う応力は他の分割刃15、14により止められることなく右方向に逃がされて分割刃の摺動摩擦は軽減される。一方、溝状部7の側壁等とテープ心線36の被覆部材38との適度の摺動摩擦により、各光ファイバ心線37がテープ心線36から分離される。溝状部7の幅はテープ心線36の幅wよりもαだけ大きくしてあり、このαはこのような作用を奏するように、分割刃の厚みを考慮して定められる。
【0029】
表1に、分割刃の間隔を変えた場合の摩擦力と、その分離工具を使用して実際にクロージャ内のテープ心線を分割した場合における伝送損失変動の測定結果を示す。分割作業はクロージャ内の被分割テープ心線を分離工具により挟みつけ、工具をテープ心線の長手方向に動かして、加傷して分割を行なった。損失変動は50回中、測定中心波長1.55μmで1.0dB以上の損失が何回発生したかを示している。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示すように、分割刃の間隔が1.5mm以上となる場合、摩擦力は350g以下となり、クロージャ内での単心分離作業で問題となるような損失変動(1・0dB以上)は測定されなかった。分割時の摩擦力が大きい場合には、分割作業に大きな力を必要とし、工具の微妙な動かし方によっては、テープ心線に大きな力がかかってしまう。その力によってテープ心線に曲げが入り、損失の増加を引き起こすものと考えられる。表1より、分割刃の間隔を1.5mm以上にすると、より安全確実に単心分離を行なうことが可能となることがわかる。
【0032】
次に分割刃のテープ心線への挿入深さについて説明する。本発明の分離工具は、分割刃のみで光ファイバの分割を行なうため、分割刃の挿入量(深さ)の設定が重要となる。表2に分割刃の挿入深さを変えた分割作業を行なった場合における単心分離の状況(単心分離性)と、単心に分離された光ファイバ心線のダメージの状況を示す。単心分離性は、分離作業を行なったときに、テープ心線内の単心に分離された全ての光ファイバ心線が完全に分離されている状態を「可」とし、1本でも分離不良がある場合には不可とした。また、光ファイバ心線のダメージについては、分離後の心線の破断強度を測定して、そのダメージの有無を確認した。表2は、テープ心線の厚さtは0.32mmのものを使用し、上下に分割刃を設けて分離する場合についてのデータを示している。
【0033】
【表2】
【0034】
表2に示すように、テープ心線の厚みをtとし、挿入深さdとしたときのd/tの関係が、0.09≦d/t≦0.5のときに、分離性がよくダメージもない良好で安定した分離作業が可能となる。
【0035】
図11は、本発明の他の実施例として、第1の部材1と第2の部材2に分割した溝状部50及び51を設けた分離工具を示している。図12は、本発明のさらに他の実施形態を示す斜視図であり、複数の溝状部52〜54を有している。溝状部52〜54は、多心線からなるテープ心線の種類に応じて設けられている。図12では、外側から内側にかけて、心線数が多いテープ心線を分離するための溝状部が設けられている。しかし、その逆に外側の溝状部52を心線数の多いテープ心線のための溝状部とすることも可能である。図13は、本発明に係る分離工具のさらに他の実施形態を示す図である。この実施形態では、図1の例と異なりハンドル部がなく、第1の部材1と第2の部材2は、それぞれの端部で回転軸3で相互に連結され、例えば人手により第1の部材1と第2の部材2を押し付けて光ファイバ心線の分離を行なう構造である。工具の部材が簡略されて図示されており、図1の実施例と機構的には何ら変わりはない。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかる分離工具によると、分割刃をテープ心線の摺動方向に所定の間隔を持って配置する構造としたことにより、光ファイバテープ心線を分割する際の摩擦を少なくすることが可能となり、分離作業性が向上し、かつ分離作業に伴なう光ファイバ心線の品質劣化を防止することが可能となる。さらに、本は発明の分離工具では、分割刃の光ファイバテープ心線への挿入深さを所定の範囲としたため、単心分離性を良くし、光ファイバ心線にダメージを与えることなく分離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る捜索支援システムの全体構成を示す概念図である。
【図2】本発明にかかる第2の部材2の先端部及び溝状部7を示す拡大部分斜視図である。
【図3】図1に示す分離工具を挟み付けた状態を示す正面図である。
【図4】図3に示す分離工具を挟み付けた状態のB−B'線における長手方向の断面(縦断面)の一部を示す図である。
【図5】テープ心線36が挟時されつつ矢印方向に摺動されることにより、光ファイバ心線の単線に分離される状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる溝状部7の分割刃の位置を説明するための図であり、溝状部7を開口部から見た平面図である。
【図7】図4に示すC−C'線方向の断面図である。
【図8】本分離工具を摺動することにより光ファイバテープ心線の上面及び下面に生じる切込みのイメージ図を示す斜視図である。
【図9】分割刃を長手方向に対して間隔を置くことなく垂直に配置した場合の作用について説明するためのイメージ図である。
【図10】分割刃を長手方向に対して一定の間隔を置いて配置した場合の作用の違いについて説明するためのイメージ図である。
【図11】第1の部材1と第2の部材2に分割した溝状部50及び51を設けた本発明の他の実施例にかかる分離工具を示す斜視図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る分離工具のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図14】(a)はスロット型アクセスケーブルの一例を示す図であり、(b)は(a)に示すA−A'線方向の断面図、(c)は各戸毎に光ファイバ心線を引き落とすためのドロップケーブルの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 第1の部材
2 第2の部材
3 回転軸
4 分割刃の止めネジ
7 溝状部
10、20 把持部
11〜16 分割刃
17〜19、27〜29 切込み
21、22 溝に光ファイバ心線を適正に挿入するためのガイドピン
23 上部材と下部材とを適正に位置決めするためのピン
30 光ファイバケーブル
35 光ファイバケーブルのコア
36 光ファイバテープ心線
37 光ファイバ心線
Claims (4)
- 複数の光ファイバ心線を平面的に配列し一体的に被覆した多心線からなる光ファイバテープ心線を、単心の光ファイバ心線に分離する工具であって、
(a)第1の部材と第2の部材とにより前記光ファイバテープ心線を挟み込み長手方向に摺動可能に保持する保持部材と、
(b)少なくとも前記第1の部材または前記第2の部材のいずれか一方に配設され、前記第1の部材及び前記第2の部材で挟んだ状態で前記光ファイバテープ心線の一部を収容し、前記光ファイバテープを長手方向に通過させる溝状部と、
(c)前記第1の部材または前記第2の部材の少なくとも一方に設けられ、前記溝状部に収容される前記光ファイバテープ心線に向かって突出し、前記溝状部を通過させることにより前記光ファイバテープ心線を前記単心の光ファイバ心線に分離する複数の分割刃と、を備える光ファイバ心線分離工具であって、
前記複数の分割刃が、前記光ファイバテープ心線の配列ピッチに応じて前記光ファイバテープ心線の幅方向の異なる位置に配置され、当該幅方向において隣りに位置する他の前記分割刃と前記光ファイバテープ心線の長手方向に対して1.5mm以上の間隔を置いて配置されることを特徴とする光ファイバ心線分離工具。 - 前記光ファイバテープ心線を収容し通過させる溝状部が、前記第1の部材と前記第2の部材とに分割して配設されていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバテープ心線分離工具。
- 前記第1の部材及び前記第2の部材のそれぞれに前記分割刃が設けられ、前記第1の部材及び前記第2の部材に設けられる前記分割刃は前記溝状部に収容される前記光ファイバテープ心線を挟んで互いに対抗する位置に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバテープ心線分離工具。
- 前記分割刃の前記テープ芯線への挿入深さdmmと前記テープ芯線の厚みtmmの関係が、0.09≦d/t≦0.5からなることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバテープ芯線分離具。
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