JP3752115B2 - 高周波誘導加熱ユニット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波誘導加熱ユニットに関し、特に圧延ロールの局部加熱等に好適に用いられる高周波誘導加熱ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、熱間圧延処理の圧延工程では、圧延ロールのロール幅のうち被圧延板材が通過する部分と被圧延板材が通過しない部分との間に温度差が生じ、熱膨張差によってロール幅方向におけるロール径に差違が生じてしまう。そのため、従来から、熱間圧延設備では、圧延ロールの熱膨張をロール幅方向において一定に保つために、圧延ロールの低温部を非接触で局部加熱する高周波誘導加熱装置が用いられている。
【0003】
図9は、従来から用いられている高周波誘導加熱装置を示すブロック構成図である。この高周波誘導加熱装置100は、加熱コイル105に高周波電流を供給することによって加熱対象物を誘導加熱するための装置であり、加熱コイル105のほか、高周波電源101と、整合コンデンサ103とを備える。高周波電源101は、50Hz又は60Hzの商用周波数電力を所定周波数の高周波電力に変換するためのものであり、その出力インピーダンスを負荷回路のインピーダンスにマッチングさせるための高周波整合変圧器102を介して、整合コンデンサ103と接続されている。整合コンデンサ103は、電流変成器104を介して加熱コイル105と接続されている。この電流変成器104は加熱コイル105のインピーダンスを増大させるためのものである。これら高周波電源101、高周波整合変圧器102、整合コンデンサ103、電流変成器104、及び加熱コイル105は、いずれも個別ユニットとして構成されており、それぞれ高周波給電線106によって接続されている。
【0004】
ここで、高周波誘導加熱装置100の整合コンデンサ103は、加熱周波数f周辺での負荷回路の力率を向上させるために用いられる。すなわち、加熱コイル105のインダクタンスLに伴うリアクタンスXL(=2πfL)は、一般に、加熱コイル105の抵抗値Rに比べて十分大きな値であるため、加熱コイル105の力率(≒R/XL)は極めて小さな値となってしまう。そのため、加熱周波数f付近に共振周波数を有する共振回路を加熱コイル105と共に構成するように、所定の電気容量Cを有する整合コンデンサ103が配置される。このように共振回路を構成することによって、加熱コイル105に対する効率的な電力供給が可能となる。
【0005】
また、この高周波誘導加熱装置100の作動時には、大量の高周波電流が流れること等に伴う損失によって各ユニット101〜105が発熱してしまうため、各ユニット101〜105を冷却するための冷却水循環装置107が高周波誘導加熱装置100付近に配置される。この冷却水循環装置107は、還流式循環ポンプ108と、熱交換器109とを備えており、還流式循環ポンプ108は各ユニット101〜105に対して冷却水を循環させ、熱交換器109は各ユニット101〜105を循環して昇温した冷却水を再冷却する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、圧延ロールの近傍には、ロール駆動のための電気系、油圧動力系、冷却水系、被圧延板材のガイド、ロール径測定センサ等の多数の機器が配置される。従って、圧延ロールを局部加熱するための装置の設置スペースは、一定の大きさに限定されざるを得ない。
【0007】
しかしながら、従来の高周波誘導加熱装置は、一定の大きさを持つ複数の個別ユニットによって構成されており、上記のような狭いスペースに装置全体を配置することは困難であった。これらの個別ユニットのうち、高周波整合変圧器及び電流変成器は、高周波電源及び加熱コイルのインピーダンス等を予め調整することにより省略可能であるものの、整合コンデンサは負荷回路の力率を向上させるために必須のユニットであるため、整合コンデンサを圧延ロール等から離れた位置に配置し、加熱コイルと整合コンデンサとを接続する給電線の距離を長くする必要があった。高周波電流供給時には、加熱コイルと整合コンデンサとの間には大きな共振電流が流れるため、これらを接続する給電線が長い場合、給電線において損失及び電圧低下を生じやすく、周辺機器を加熱してしまうという問題も生じていた。
【0008】
また、加熱コイルと整合コンデンサとを接続する給電線が長い場合、負荷回路(加熱コイル及び整合コンデンサ)の力率が低下し、負荷回路に対して高周波電源から大電流を供給しなければならないため、高周波電源等と負荷回路とを大径の給電線で接続する必要が生じてしまう。上述のように圧延ロールを局部加熱するためには、加熱コイルをロール幅方向に移動可能な構造とする必要があるが、大径の給電線では、曲げ半径を小さくすることが困難であり可撓性が低いため、局部加熱処理の作業性が悪かった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決して、小型化及び低損失化を実現し、作業性を向上することができる高周波誘導加熱ユニットを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明による高周波誘導加熱ユニットは、高周波電源から所定周波数の高周波電流の供給を受けて加熱処理を行なう高周波誘導加熱ユニットにおいて、内部に冷却流体が循環供給される加熱コイルと、互いに平行かつ向かい合うように、それぞれが前記加熱コイルの一部分に対して電気的導通可能に立設される導体板と、前記導体板の向かい合う面の一部分同士に挟設されると共に、前記加熱コイルに嵌合され、前記加熱コイルを流れる前記高周波電流によって高周波磁束が形成される磁心と、前記各導体板間の前記磁心が挟設される部分以外の部分に挟設された複数の誘電部材と、を備え、前記各導体板と前記各誘電部材とは、それぞれ所定の電気容量を有するコンデンサを構成し、前記加熱コイルと共に、前記所定周波数付近に共振周波数を有する共振回路を構成するようにしたものである。
【0011】
この高周波誘導加熱ユニットでは、複数の導体板が互いに平行かつ向かい合うように加熱コイルに固定されている。これらの導体板は、加熱コイル内を流通する冷却流体の冷熱によって磁心を冷却するための冷却板としての役割を果すと共に、各導体板間に誘電部材が挿入されることによって整合コンデンサの電極としての役割も果す。このように加熱コイルと整合コンデンサとを一体化することによって、負荷回路の小型化を図ることができる。また、加熱コイルと整合コンデンサとを接続するための給電線は不要となるため、給電線における損失及び電圧降下が発生せず、負荷回路の力率をほぼ1.0に保つことができる。従って、負荷回路に供給する電流が小さくて済むため、高周波電源から電流を供給する給電線を小径にし可撓性を高くすることができ、加熱処理の作業性を向上することが可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明による高周波誘導加熱ユニットの実施形態について説明する。なお、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1、図2、及び図3は、それぞれ第1の実施形態による高周波誘導加熱ユニットを示す側面図、底面図及び立面図である。この高周波誘導加熱ユニット1は、コイル導体3と、複数の導体板4と、複数の鉄心(磁心)5と、複数の誘電部材6とを備える。
【0014】
図4は、コイル導体3の形状を示す斜視図である。コイル導体3は内部に中空部39を有する一本の中空角銅管から構成されており、矩形状(本実施形態においては長方形状)に形成された巻数1回のコイル部31と、コイル部31の表辺に対して略直角をなすように屈曲された電流供給部33とを備える。各電流供給部33の上端は給電線(図示せず)を介して高周波電源(図示せず)と接続されている。本実施形態による高周波誘導加熱ユニット1は、負荷力率がほぼ1.0であるため大電流を供給する必要はなく、給電線には小径で可撓性の高い同軸ケーブル等を用いることができる。また、コイル導体3の中空部39は、冷却流路(図示せず)を介して冷却水循環装置(図示せず)と接続されており、誘導加熱処理時には中空部39に冷却水が通水される。
【0015】
コイル部31の各コイル長辺35には、複数(本実施形態においては各コイル長辺35につき6枚ずつ)の導体板4が所定間隔で配置されている。各導体板4は、それぞれ所定の高さh1を有する長方形の銅板であり、一辺にコイル導体3の断面とほぼ同一の形状の凹部が形成されている。これらの導体板4は、凹部がコイル長辺35と嵌合するように配置され、ロウ付けによってコイル長辺35上に固定されている。誘導加熱処理時には、コイル導体3内の中空部39を流通する冷却水の冷熱が各導体板4に伝導する。
【0016】
各導体板4の間には、複数(本実施形態においては各コイル長辺35につき5個ずつ)のU字型鉄心5が挿入されている。これらの鉄心5には、フェライトコア又は積層珪素鋼板等の磁気抵抗の小さな材質が用いられており、U字型の凹部がコイル長辺35と嵌合するように配置されている。誘導加熱処理時には、各鉄心5は、隣接する導体板4を介してコイル導体3の中空部39を通水する冷却水によって冷却されるため、各鉄心5の磁気抵抗の増大が抑制される。図5に示されるように、各鉄心5の高さh2は各導体板4の高さh1より低いため、各鉄心5の上方には各導体板4同士が向かい合う空間が形成される。
【0017】
各鉄心5の上方の空間には、面積Sを有する1対の補助電極板7が各導体板4に設置されており、各補助電極板7の間隔は所定値dとされる。また、各補助電極板7間には、比誘電率εSを有する誘電部材6が挿入されている。これによって、向かい合う導体板4(及び補助電極板7)とその間に挿入された誘電部材6とは、所定の電気容量C0を有するコンデンサ部を構成する。
【0018】
このように、コイル部31上方の空間に補助電極板7及び誘電部材6が設置された後、両端の導体板4の外側に配置された複数(本実施形態においては4枚)の支持板91と止具93とによって固定される。また、本実施形態による高周波誘導加熱ユニット1では、図3に示されるように、コイル短辺37を屈曲して、各コイル長辺35上の鉄心5間を角度αとした状態に形成される。このように相対する鉄心5間に一定の角度をつけることによって、圧延ロールのような曲面であっても効率よく加熱することができる。
【0019】
図6は、本実施形態による高周波誘導加熱ユニットの要部の等価回路図である。本実施形態による高周波誘導加熱ユニット1は、同図に示されるように、各導体板4によってコイル部31が分割され、その中にコンデンサが形成された構造を有している。すなわち、この高周波誘導加熱ユニット1は、コイルと整合コンデンサとが一体化されている。
【0020】
図6に示す等価回路図において、各導体板4によって分割されたコイル部31の各部分の抵抗値R0は、導体自体の抵抗値をR1、加熱対象物を加熱することによる損失分をR2とすると、R0=R1+R2…(1)によって与えられる。また、L0は各導体板4によって分割されたコイル部31の各部分のインダクタンスを表わす。本実施形態では、コイル部31の各部分と各コンデンサ部とが、加熱対象に応じた加熱周波数f0付近に共振周波数を有する共振回路を構成するように、上記R0及びL0に基づいて各コンデンサ部の電気容量C0が設定される。
【0021】
各コンデンサ部の電気容量C0は、真空の比誘電率ε0、誘電部材6の比誘電率εS、補助電極板7の面積S及び間隔dを用いて、C0=ε0・εS・S/d…(2)と表わすことができる。このうち、補助電極板7の面積Sは、ユニット全体の大きさ及び必要とされる冷却能力等によって制限を受けるため、補助電極板7の間隔d及び挿入される誘電部材6の比誘電率εSを調整することによって、共振回路として成立するためのコンデンサの電気容量C0が確保される。
【0022】
次に、本実施形態による高周波誘導加熱ユニット1の作用について説明する。図7は、本実施形態による高周波誘導加熱ユニット1を用いて圧延ロールを誘導加熱する処理を示す模式図である。同図に示すように、高周波誘導加熱ユニット1を加熱対象である圧延ロール95の近傍に配置したのち、高周波電源(図示せず)からコイル導体3に所定周波数f0の高周波電流を供給する。これにより、コイル部31と各コンデンサ部との間には大きな共振電流が流れ、各鉄心5内には、同図中矢印で示されるような高周波磁束が形成される。これに伴って、圧延ロール95においても高周波磁束が発生し、磁束の変化により圧延ロール95表面に渦電流が発生して圧延ロール95表面が加熱される。
【0023】
また、このとき、冷却水循環装置(図示せず)からコイル導体3内部の中空部39に冷却水が循環供給されており、各導体板4を介して各鉄心5が冷却される。これによって、各鉄心5内の磁気抵抗の増加が抑制される。
【0024】
本実施形態による高周波誘導加熱ユニット1は、加熱コイルと整合コンデンサとが一体化されているため、圧延ロールの加熱等のようにスペースが狭い場合であっても用いることができる。また、コイルと整合コンデンサとを接続するための給電線は必要ないため、給電線における損失及び電圧降下が発生せず、負荷回路の力率をほぼ1.0に保つことができる。従って、負荷回路に供給する電流が小さくて済むため、高周波電源から電流を供給する給電線に小径かつ高可撓性の給電線を用いることができ、加熱処理の作業性を向上することが可能になる。
【0025】
次に、本発明による第2の実施形態について説明する。図8は、第2の実施形態による高周波誘導加熱ユニットを示す側面図である。この高周波誘導加熱ユニット2は、コイル導体3と、複数の導体板4と、複数の鉄心5と、平行平板コンデンサ8とを備える。
【0026】
本実施形態では、図5に示されるように、コイル部31上に複数の導体板4及び複数の鉄心5が第1の実施形態と同様に配置され、支持板91及び止具93によって固定される。
【0027】
平行平板コンデンサ8は、平行かつ向かい合うように配置され、内部に中空部71を有する複数(本実施形態においては3枚)の電極板7と、各電極板7の間に挿入された誘電部材6とを備える。この平行平板コンデンサ8は、一端側の電極板7を複数の導体板4上に載せるようにして一方のコイル長辺35の上方に配置されており、各電極板7は電流供給部33に固定されている。高周波電流供給時には、コイル導体3の中空部39のほか、平行平板コンデンサ8の電極板7内の中空部71にも冷却水が循環供給される。また、この平行平板コンデンサ8の電気容量C0は、第1の実施形態と同様に、加熱対象に応じた加熱周波数f0付近に共振周波数を有する共振回路をコイル部31と共に構成するように設定されている。
【0028】
本実施形態による高周波誘導加熱ユニット2が第1の実施形態による高周波誘導加熱ユニット1と異なる点は、コイル部31の近傍に整合コンデンサとして既製の平行平板コンデンサ8が配置され、コイル部31と平行平板コンデンサ8とが共振回路を構成する点である。このように、既製のコンデンサを用いる場合であっても、コイルとコンデンサとがほぼ一体化されているため、圧延ロールの加熱等のようにスペースが狭い場合であっても用いることができる。また、コイルとコンデンサを接続する部分は短い電流供給部33のみであるため、損失及び電圧降下の発生が減少し、負荷回路の力率をほぼ1.0に保つことができる。従って、負荷回路に供給する電流が小さくて済むため、高周波電源から電流を供給する給電線に小径かつ高可撓性の給電線を用いることができ、加熱処理の作業性を向上することが可能になる。
【0029】
本発明による高周波誘導加熱ユニットは、上記実施形態に限定されず、他の条件等に応じたさまざまな変形態様をとることが可能である。また、圧延ロール以外の他の加熱対象物に対しても、本発明による高周波誘導加熱ユニットを用いることができる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による高周波誘導加熱ユニットは、加熱コイルと整合コンデンサとが一体構造とされているため、設置スペースが狭い場合であっても用いることができる。また、このような構造を有することにより、負荷回路(共振回路)における損失や電圧降下が低減するため、負荷回路の力率をほぼ1.0に保ち、効率的な電力供給をすることができる。従って、負荷回路に供給する電流が小さくて済むため、高周波電源から電流を供給する給電線に小径かつ高可撓性の給電線を用いることができ、作業性を向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態による高周波誘導加熱ユニットの側面図である。
【図2】第1の実施形態による高周波誘導加熱ユニットの底面図である。
【図3】第1の実施形態による高周波誘導加熱ユニットの立面図である。
【図4】第1及び第2の実施形態によるコイル導体の形状を示す斜視図である。
【図5】第1及び第2の実施形態による高周波誘導加熱ユニットにおけるコイル導体、鉄心及び導体板の配置を示す側面図である。
【図6】第1の実施形態による高周波誘導加熱ユニットの要部の等価回路図である。
【図7】第1の実施形態による高周波誘導加熱ユニットの作動時を示す模式図である。
【図8】第2の実施形態による高周波誘導加熱ユニットの側面図である。
【図9】従来の高周波誘導加熱装置の構成図である。
【符号の説明】
1…高周波誘導加熱ユニット、2…高周波誘導加熱ユニット、3…コイル導体、4…導体板、5…鉄心、6…誘電部材、7…(補助)電極板、8…平行平板コンデンサ、31…コイル部、33…電流供給部、35…コイル長辺、37…コイル短辺、39…中空部、71…中空部、91…支持板、93…止具、95…圧延ロール、100…高周波誘導加熱装置、101…高周波電源、102…高周波整合変圧器、103…整合コンデンサ、104…電流変成器、105…加熱コイル、106…高周波給電線、107…冷却水循環装置、108…還流式循環ポンプ、109…熱交換器
Claims (1)
- 高周波電源から所定周波数の高周波電流の供給を受けて加熱処理を行なう高周波誘導加熱ユニットにおいて、
内部に冷却流体が循環供給される加熱コイルと、
互いに平行かつ向かい合うように、それぞれが前記加熱コイルの一部分に対して電気的導通可能に立設される導体板と、
前記導体板の向かい合う面の一部分同士に挟設されると共に、前記加熱コイルに嵌合され、前記加熱コイルを流れる前記高周波電流によって高周波磁束が形成される磁心と、
前記各導体板間の前記磁心が挟設される部分以外の部分に挟設された複数の誘電部材と、
を備え、
前記各導体板と前記各誘電部材とは、それぞれ所定の電気容量を有するコンデンサを構成し、前記加熱コイルと共に、前記所定周波数付近に共振周波数を有する共振回路を構成することを特徴とする高周波誘導加熱ユニット。
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