JP3751393B2 - 管内面溝付伝熱管 - Google Patents

管内面溝付伝熱管 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はルームエアコン等に使用される熱交換器用伝熱管に関し、特に、蒸発器及び凝縮器として高性能である管内面溝付伝熱管に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱交換器に使用される伝熱管は、蒸発器及び凝縮器として使用される。即ち、伝熱管内部で冷媒液を蒸発させたり、冷媒ガスを凝縮させることにより、熱交換を行うものである。従来の金属管の内面に複数種の溝群を形成した伝熱管として、特開平3−13796号公報及び特開平4−158193号公報に記載された伝熱管がある。
【0003】
特開平3−13796号公報に記載された伝熱管においては、管の内面にて、その円周を4以上の偶数個に分割するように螺旋溝群が形成されており、これらの螺旋溝群は管軸方向に対する捩じれ角度が隣接間で相互に逆向きであるように形成されている。この伝熱管においては、ヘアピン加工により生じる溝群の傾斜方向の逆点がないため、ヘアピン加工された溝部分における伝熱性能の低下を防止することができる。また、凝縮時の凝縮液の集液作用により、管内の液膜厚が平準化し、溝合流部からの液の離脱が促進されるため、凝縮性能を向上させることができる。更に、伝熱管の内面において、螺旋溝群が管軸方向に一定の溝ピッチで形成されていると共に、管軸に沿って、これらの螺旋溝の間に、平坦部が適切に離間して設けられているので、ヘアピン曲げ加工性を向上させることができる。
【0004】
特開平4−158193号公報に記載された伝熱管においては、管の内面にて、管軸方向に沿って、一定間隔離間して複数種の凹凸群が形成されている。これらの凹凸群は凸部及び溝部からなり、これらの凸部及び溝部が交互に並列配置されている。そして、一の凹凸群と、当該凹凸群と隣合う凹凸群とは、溝のピッチ、溝の寸法、溝の形状及び管軸方向に対する溝方向のうち、少なくとも1以上の要素が異なるように形成されている。このため、管内の冷媒の流れがかく乱して、伝熱性能を向上させることができる。また、凹凸群を3つ以上設けると、伝熱性能を一層、向上させることができる。
【0005】
一方、金属管の内面に螺旋溝群と、この螺旋溝群と交差して管軸方向と平行な突条部とを設けた伝熱管として、特公平5−71874号公報及び特公平6−10594号公報に記載された伝熱管がある。特公平5−71874号公報に記載された伝熱管においては、螺旋溝群は管軸方向に対して同一の捩じれ角が形成されており、特公平6−10594号公報に記載された伝熱管においては、突条部の両側部に形成された螺旋溝群は、夫々、突条部に対して、対称的に形成されている。これらの伝熱管においては、内面に螺旋溝群と、この螺旋溝群と交差して管軸方向と平行である1つ以上の突条部とが設けられており、この突条部により溝内の冷媒液流を遮断して液膜を消失させることにより、伝熱性能を向上させることができる。また、管軸方向と平行な突条部が形成されているので、冷媒液の管軸方向の流れが円滑となり、管軸方向に対する圧力損失を低減させることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の伝熱管には以下に示す問題点がある。先ず、特開平3−13796号公報に記載された伝熱管においては、複数種の螺旋溝群が設けられており、これらの螺旋溝群は、隣接間で管軸方向に対して捩じれ角度が同一で相互に逆向きであるように形成されている。このため、一方の溝群による冷媒液は、逆向きの捩じれ角を有する他方の溝群により、冷媒液の流れが阻害される。このため、冷媒液を供給し、この冷媒液を蒸発させて熱交換を行う蒸発器においては、冷媒が管内壁全体に均一に広がらず、蒸発性能が低下してしまう。
【0007】
特開平4−158193号公報に記載された伝熱管においては、複数種の螺旋溝群が設けられており、これらの螺旋溝は、隣接間で管軸方向に対する溝のピッチ、溝の寸法、溝の形状及び管軸方向に対する溝群の捩じれ角度のうち、少なくとも1以上の要素が異なるように形成されている。このため、この従来の伝熱管においては、冷媒液の流れは阻害されないが、蒸発時には圧力損失を十分に低減できないので蒸発性能が低下してしまうと共に、凝縮時には凝縮液の排出性が十分でないので伝熱面と冷媒ガスとの接触性が低下して凝縮性能が低下してしまう。また、管軸方向に対して同一の捩じれ角度を有する螺旋溝群を管内面全体に設けると、凝縮時に凝縮液が伝熱面全体に広がり易くなり、伝熱面が凝縮液に覆われてしまい、凝縮性能が低下してしまう。
【0008】
特公平5−71874号公報に記載された伝熱管においては、複数の溝群が、管内面全体に同一方向に形成されている。このため、凝縮時に凝縮液が伝熱面全体に広がり易くなり、突条部により凝縮液を排出しても、伝熱面が凝縮液に覆われてしまうので、凝縮性能が低下してしまう。
【0009】
特公平6−10594号公報に記載された伝熱管においては、2種の溝群が突条部に対して隣接間で対称的に形成されている。このため、蒸発時に生じる一方の溝群による冷媒液の流れは、他方の溝群により、阻害されてしまうので、突条部により溝内の冷媒液流が遮断されると、伝熱面全体に冷媒液が広がらず、蒸発性能が低下してしまう。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、管内を通流する冷媒との間で熱交換を行う内面溝付伝熱管において、管内面に形成された2種の溝群の形状を夫々適切に設定すると共に、これらの溝群を有する2種の溝加工領域を複数組配置して、各溝加工領域間に管軸方向に延びる直線溝領域を配置することにより、蒸発性能及び凝縮性能が優れた管内面溝付伝熱管を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る管内面溝付伝熱管は、管内を通流する冷媒との間で熱交換を行う内面溝付伝熱管において、管内面に形成され管円周方向の溝ピッチが同一で管軸方向に対する捩じれ角度及び捩じれ方向が相異する第1及び第2の溝群を有し、これらの第1及び第2の溝群が形成された第1及び第2の溝加工領域は異なる幅で複数組配置され、各溝加工領域間には、管軸方向に延びる直線溝領域が配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、管内面に管軸方向に対する捩じれ角度及び捩じれ方向が相異する第1及び第2の溝群が形成され、これらの第1及び第2の溝群が形成された第1及び第2の溝加工領域は異なる幅で複数組配置されている。この伝熱管を蒸発器として使用する場合、伝熱管内に冷媒液が供給されると、この冷媒液は幅の広い溝加工領域内の溝群の捩じれ角度方向に沿った旋回流となる。この旋回流の方向と異なる方向の旋回流が他方の溝加工領域内の溝群により生じるが、この溝加工領域は幅が狭いと共に、捩じれ角度及び捩じれ方向が異なるので、幅の広い溝加工領域による旋回流に影響を与えない。このため、旋回流が伝熱管内壁全体に広がる。また、各溝加工領域間に管軸方向に延びる直線溝領域が配置されているので、冷媒液の管軸方向の流れが円滑となり、管軸方向に対する圧力損失を低減させることができる。従って、伝熱管の蒸発性能を優れたものにすることができる。一方、本発明の伝熱管を凝縮器として使用する場合、伝熱管に冷媒ガスが供給されると、この冷媒ガスは伝熱管内壁全体で凝縮して液化するが、液化初期の凝縮液は流れの慣性が小さい。このため、幅の広い溝加工領域の捩じれ角度方向に凝縮液の旋回流が生じても、幅の狭い溝加工領域の溝群により液化初期の段階で抑制される。更に、各溝加工領域間に管軸方向に延びる直線溝領域が配置されているので、溝群に沿って流れた凝縮液が直線溝領域に衝突すると、蒸気流により飛ばされて溝群内の凝縮液がなくなり、凝縮液の排出性が良好となる。このため、伝熱面全体が凝縮液により覆われることが確実に防止されるため、伝熱面は常に冷媒ガスと接触して連続的な凝縮が生じる。従って、伝熱管の凝縮性能を優れたものにすることができる。
【0013】
また、請求項2のように、前記溝加工領域の幅をW1及びW2(W1/W2とする)としたとき、W1/W2は1.1乃至3.0であることが好ましい。
【0014】
W1/W2が1.1未満の場合には、冷媒流が発生しても、相互に捩じれ方向の異なる溝群同士により、冷媒流の流れは部分的に打ち消されてしまう。このため、旋回流が生じにくくなり、蒸発性能の向上が低下する。一方、W1/W2が3.0を超える場合には、凝縮時の冷媒流が幅の広い溝加工領域の溝群の影響を受けるので、凝縮液の旋回流が生じやすくなり、伝熱面が部分的に凝縮液で覆われてしまう。このため、凝縮性能の向上が低下する。従って、W1/W2を1.1乃至3.0とすると、蒸発性能及び凝縮性能を一層、優れたものにすることができる。
【0015】
更に、請求項3のように、前記溝加工領域の幅が広い方の捩じれ角度をθ1、狭い方の捩じれ角度をθ2としたとき、θ1<θ2で、隣接溝加工領域間で捩じれ方向が逆向きであり、4°≦θ1≦25°、8°≦θ2≦45°であると、特に、冷房能力の優れた伝熱管を得ることができる。即ち、θ1<θ2である場合において、θ1<4°であるか、又はθ2<8°であると、蒸発時の圧力損失が小さく、蒸発性能が高くなるが、凝縮時の集液効果が低下して凝縮性能の向上が低下する。一方、θ1>25°であるか又はθ2>45°であると、凝縮性能が高くなるが、蒸発時の圧力損失が高くなり、熱交換器の設計が難しくなる。従って、θ1<θ2で、隣接溝加工領域間で捩じれ方向が逆向きであり、4°≦θ1≦25°、8°≦θ2≦45°であると、特に、蒸発性能が一層優れるので、冷房能力を優れたものにすることができる。
【0016】
更にまた、請求項4のように、前記溝加工領域の幅が広い方の捩じれ角度をθ1、狭い方の捩じれ角度をθ2としたとき、θ1>θ2で、隣接溝加工領域間で捩じれ方向が逆向きであり、8°≦θ1≦45°、4°≦θ2≦25°であると、特に、暖房能力の優れた伝熱管を得ることができる。即ち、θ1>θ2である場合において、θ1<8°であるか、又はθ2<4°であると、蒸発時の圧力損失が小さく、蒸発性能が高くなるが、凝縮時の集液効果が低下して凝縮性能の向上が低下する。一方、θ1>25°であるか、又はθ2>45°であると、凝縮性能が高くなるが、蒸発時の圧力損失が高くなり、蒸発性能の向上が低下する。従って、θ1>θ2で、隣接溝加工領域間で捩じれ方向が逆向きであり、8°≦θ1≦45°、4°≦θ2≦25°であると、特に、凝縮性能が一層優れるので、暖房能力を優れたものにすることができる。
【0017】
更にまた、請求項5のように、前記直線溝領域の幅をW3、前記第1及び第2の溝加工領域の管円周方向の溝ピッチをPとすると、W3/P比は1.0乃至3.0であることが好ましい。
【0018】
W3/P比が1.0未満の場合には、溝加工領域に対する直線溝領域の断面積比が小さくなり、冷媒液流の抵抗が大きくなるので、蒸発時の圧力損失が増加すると共に凝縮時の冷媒液の排出性の低下となる。一方、W3/P比が3.0を超える場合には、管内の溝加工領域の表面積が小さくなるため、蒸発性能及び凝縮性能の向上が低下する。従って、W3/P比を1.0乃至3.0とするのが好ましい。
【0019】
更にまた、請求項6のように、前記直線溝領域の肉厚をt0、前記第1及び第2の溝加工領域の平均肉厚をtとしたとき、0.9t≦t0≦1.1tであることが好ましい。この場合には、直線溝領域の肉厚を溝加工領域の底肉厚に等しくすると、内圧等により伝熱管に割れが生じる。0.9t≦t0≦1.1tであると、内圧等を受けて伝熱管が押し広げられても、応力集中が緩和され、強度低下を防止することができる。なお、第1及び第2溝加工領域の平均肉厚tは、図3に示すように、溝群の凹凸を平坦にした場合における溝の厚さと底肉厚tbとを合わせた厚さである。
【0020】
更にまた、請求項7のように、前記第1溝加工領域及び第2溝加工領域の肉厚は夫々前記直線溝領域に近づくにつれ厚くなることが好ましい。第1溝加工領域及び第2溝加工領域の肉厚を直線溝領域に近づくにつれ、厚く形成すると、冷媒液の流動性が確保されて、高い伝熱性能を維持することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の実施例に係る伝熱管の内面を展開した状態を示す模式図であり、図2はその断面図である。本発明に係る伝熱管においては、その内面に幅W1の溝加工領域1と幅W2の溝加工領域2とが、交互に配置されており、これらの溝加工領域1と溝加工領域2との間には、幅W3の直線溝領域3が管軸方向に延びて配置されている。なお、幅W1は幅W2より大きい。図1、2に示すように、溝加工領域1、2においては、溝群が形成されており、この溝群は溝凸部4及び溝凹部5からなり、これらの溝凸部4及び溝凹部5は交互に形成されている。また、溝凸部4及び溝凹部5は夫々ピッチPで形成されている。そして、溝加工領域1内の溝群は、管軸方向に対して捩じれ角度θ1で螺旋状に形成されており、溝加工領域2内の溝群は、管軸方向に対して捩じれ角度θ2をなすと共に捩じれ方向は溝加工領域1の捩じれ方向と逆方向であるように螺旋状に形成されている。なお、捩じれ角度θ2は捩じれ角度θ1と異なる。図3は伝熱管の一部を拡大した状態を示す断面図である。溝加工領域1、2内の溝群は、肉厚が底肉厚(溝加工領域内で最も小さい肉厚)tbから直線溝領域3に接近するにつれ厚くなっており、平均肉厚がtであるように形成されている。そして、直線溝領域においては、その肉厚はt0であり、0.9t≦t0≦1.1tである。
【0022】
このように構成された伝熱管を、先ず、蒸発器として使用する場合、伝熱管内に冷媒液が供給されると、この冷媒液は溝加工領域1内の溝群の捩じれ角度θ1の方向に沿った旋回流となる。この旋回流の方向と異なる方向の旋回流が溝加工領域2内の溝群により生じるが、この溝加工領域2は幅が狭いと共に、捩じれ角度が異なるので、幅の広い溝加工領域1による旋回流に影響を与えない。このため、旋回流が伝熱管内壁全体に広がる。また、溝加工領域1と溝加工領域2との間に管軸方向に延びる直線溝領域3が配置されているので、冷媒液の管軸方向の流れが円滑となり、管軸方向に対する圧力損失を低減させることができる。従って、伝熱管の蒸発性能を優れたものにすることができる。なお、捩じれ角度θ1を小さくすると、冷媒液の流量を少なくしても冷媒の旋回流が生じやすくなり、捩じれ角度θ2の溝群により乱流が生じるため、蒸発性能を、一層優れたものにすることができる。
【0023】
一方、凝縮器として使用する場合、伝熱管に冷媒ガスが供給されると、この冷媒ガスは伝熱管内壁全体で凝縮して液化するが、液化初期の凝縮液は流れの慣性が小さい。このため、溝加工領域1の捩じれ角度θ1の方向に凝縮液の旋回流が生じても、溝加工領域2の溝群により液化初期の段階で抑制される。更に、溝加工領域1と溝加工領域2との間に管軸方向に延びる直線溝領域3が配置されているので、溝群に沿って流れた凝縮液が直線溝領域3に衝突すると、蒸気流により飛ばされて溝群内の凝縮液がなくなり、凝縮液の排出性が良好となる。このため、伝熱面全体が凝縮液により覆われることが確実に防止されるため、伝熱面は常に冷媒ガスと接触して連続的な凝縮が生じる。従って、伝熱管の凝縮性能を優れたものにすることができる。
【0024】
更にまた、直線溝領域3は、その肉厚が溝加工領域の平均肉厚に対して所定範囲であるように形成されている。このため、内力等により伝熱管が押し広げられても、応力集中が緩和され、強度低下を防止することができる。しかしながら、この場合においては、溝群が直線溝領域3に堰き止められる構造となるので、冷媒液の流れが阻害されて、蒸発性能及び凝縮性能の向上が低下するが、本実施例においては、溝加工領域1、2の肉厚が夫々直線溝領域3に近づくにつれ厚く形成されているので、冷媒液の流動性が確保されて、一層高い伝熱性能が維持される。
【0025】
なお、本発明においては、管内面における溝加工領域1と溝加工領域2とは交互に配置される必要はなく、本発明の効果が損なわない範囲で任意に順序を組みかえてもよい。但し、この場合には直線溝領域3は各溝加工領域間に配置される。
【0026】
【実施例】
以下、本発明に係る管内面溝付伝熱管を製造し、その特性を比較例と比較して具体的に説明する。
【0027】
第1実施例
先ず、銅板の一方側の表面に、ロール圧延により深さ0.2mmの溝群をピッチ0.2mmで成形し、2つの溝加工領域について、形状を変化させて形成した。即ち、これらの2つの溝加工領域について、図1に示すように、広い幅(幅W1)の溝加工領域1においては、溝群の捩じれ角度θ1を管軸方向に対して2乃至60°の範囲で、右ネジ方向となるように形成し、狭い幅(幅W2)の溝加工領域2においては、溝群の捩じれ角度θ2を管軸方向に対して2乃至60°の範囲で、左ネジ方向となるように形成し、これらの溝加工領域の幅比(W1/W2)を1.0乃至3.5の範囲で種々に変化させて形成した。そして、溝加工領域1と溝加工領域2との間に管軸方向には管軸方向に延びる直線溝領域3を配置した。次に、溝形成面を内側にして湾曲させ、銅板端部同士を突き合わせて高周波溶接することにより外径7mmの伝熱管を得た。この伝熱管を長さ3000mの二重管式熱交換機(以下、これを単に外管という)の内側に配置した後、伝熱管内に冷媒を供給し、伝熱管と外管との間である環状部に水を供給して熱交換を行い、伝熱性能(蒸発性能及び凝縮性能)を評価した。これらの伝熱性能の結果について図4に示す。図4は縦軸に2つの溝加工領域の幅比W1/W2をとり、横軸に伝熱性能比(蒸発性能比及び凝縮性能比)をとって両者の関係を示すグラフ図である。なお、伝熱性能比は幅W1とW2とが等しい場合の伝熱性能値を基準とした相対値を示す。
【0028】
図4から明らかなように、W1/W2が1.1乃至3.0の範囲にある場合には、蒸発性能及び凝縮性能は、一層優れたものになる。これに対し、W1/W2が1.1未満であると、蒸発性能及び凝縮性能の向上が共に低下し、W1/W2が3.0を超えると、蒸発性能は高く優れているものの、凝縮性能が低下した。
【0029】
第2実施例
先ず、銅板の一方側の表面に、ロール圧延により深さ0.2mmの溝群をピッチ0.2mmで成形しながら、幅の異なる2つの溝加工領域について形状を変化させて形成した。即ち、これらの2つの溝加工領域について、図1に示すように、幅W1の溝加工領域1の捩じれ角度θ1を管軸方向に対して2乃至60°の範囲で種々に変化させて設定して右ネジ方向となるようにし、幅W2の溝加工領域2の捩じれ角度θ2を管軸方向に対して2乃至60°の範囲で種々に変化させて設定して左ネジ方向となるように形成した。なお、これらの溝加工領域の幅比(W1/W2)は2.0とした。そして、溝加工領域1と溝加工領域2との間に管軸方向に延びる直線溝領域3を配置した。次に、溝形成面を内側にして湾曲させ、銅板端部同士を突き合わせて高周波溶接することにより外径7mmの伝熱管を得た。この伝熱管を長さ3000mの外管の内側に配置した後、伝熱管内に30kg/時間の流量で冷媒を供給し、伝熱管と外管との間である環状部に水を供給して熱交換を行い、伝熱性能(蒸発性能及び凝縮性能)と圧力損失比とを評価した。以上、これらの結果について下記表1に溝の形状(捩じれ角度θ1、θ2)と伝熱性能及び圧力損失比とを夫々示す。なお、伝熱性能比は幅W1とW2とが等しい場合の伝熱性能値を基準とした相対値を示す。
【0030】
【表1】
Figure 0003751393
【0031】
表1に示すように、捩じれ角度θ1が捩じれ角度θ2より小さい場合 、本実施例1及び2は蒸発性能及び凝縮性能がいずれも良好であるが、特に、蒸発性能が極めて優れていた。これに対し、比較例においては、比較例1は、捩じれ角度θ1が所定値より小さいため、凝縮性能の向上が小さく、比較例2は、捩じれ角度θ1、θ2が共に所定値より大きいため、蒸発時の圧力損失比が高くなった。
【0032】
一方、捩じれ角度θ1が捩じれ角度θ2より大きい場合 、実施例3及び4においては、蒸発性能及び凝縮性能はいずれも良好であるが、特に、凝縮性能が優れていた。
【0033】
これに対し、比較例においては、蒸発性能及び凝縮性能は良好であるものの、比較例3は、捩じれ角度θ1、θ2が共に所定値より小さいため、凝縮性能の向上が小さく、比較例4は、捩じれ角度θ1、θ2が共に所定値より大きいため、蒸発時の圧力損失比の低減が小さくなった。
【0034】
第3実施例
先ず、銅板の一方側の表面に、ロール圧延により深さ0.2mmの溝群をピッチ0.2mmで形成した。そして、2つの溝加工領域において、図1に示すように、これらの幅比(W1/W2)を1.0乃至3.5となるように設定し、捩じれ角度θ1、θ2を、夫々、2乃至60°の範囲にし、溝加工領域1の捩じれ方向及び溝加工領域2の捩じれ方向を、夫々、右ネジ方向及び左ネジ方向となるように形成した。その後、溝加工領域1、2をその形状を種々に変化させて形成した。即ち、直線溝領域3を配置して溝加工領域1、2の肉厚を直線溝領域3に近づくにつれ厚く形成したものを実施例5とし、その比較例として、直線溝領域3を配置して溝加工領域1、2の肉厚を一定としたもの、直線溝領域3を配置して溝加工領域1、2の肉厚を底肉厚tb(溝加工領域内で最も薄い部分の肉厚)としたもの及び直線溝領域3を配置しないものを、夫々、比較例5、6、7とした。次に、溝形成面を内側にして湾曲させ、銅板端部同士を突き合わせて高周波溶接して外径7mmの伝熱管を得た。これらの伝熱管を長さ3000mの外管の内側に配置した後、伝熱管内に冷媒を供給し、伝熱管と外管との間である環状部に水を供給して熱交換を行い、冷媒流量に対する伝熱性能(蒸発性能及び凝縮性能)を評価した。以上、これらの結果について図5、6に示す。図5は横軸に冷媒流量をとり、縦軸に蒸発性能比をとって両者の関係を示すグラフ図であり、図6は横軸に冷媒流量をとり、縦軸に蒸発性能比をとって両者の関係を示すグラフ図である。なお、伝熱性能比は幅W1とW2とが等しい場合の伝熱性能値を基準とした相対値を示す。
【0035】
図5、6に示すように、本発明の実施例5においては、蒸発性能及び凝縮性能が、極めて優れていた。一方、比較例5〜7は実施例5に比して蒸発性能及び凝縮性能が劣るが、管軸方向に延びる直線溝領域が配置されている比較例5、6は直線溝領域が配置されていない比較例7と比較すると、蒸発性能及び凝縮性能が優れていた。
【0036】
第4実施例
先ず、銅板の一方側の表面に、ロール圧延により深さ0.2mmの溝群をピッチ0.2mmで形成した。そして、2つの溝加工領域においては、これらの幅比(W1/W2)を1.1乃至3.0となるように設定し、捩じれ角度θ1、θ2を、夫々、4乃至45°の範囲にし、2つの溝加工領域間の管軸方向に延びる直線溝領域の幅W3を溝ピッチPに対して、W3/Pが0.8乃至3.5となるように設定した。次に、溝形成面を内側にして湾曲させ、銅板両端部同士を突き合わせて高周波溶接して外径7mmの伝熱管を得た。これらの伝熱管について前述の方法で伝熱性能(凝縮性能及び蒸発性能)を評価した。下記表2に溝の形状を示すW3/P、伝熱性能比及び圧力性能比を夫々示す。なお、伝熱性能比は幅W1とW2とが等しい場合の伝熱性能値を基準とした相対値を示す。
【0037】
【表2】
Figure 0003751393
【0038】
上記表2に示すように、実施例6においては、蒸発性能及び凝縮性能が一層優れたものになる。これに対し、比較例8においては、W3/Pが1.0未満であるため、蒸発時の圧力損失が増加し、凝縮液の排出性が低下して凝縮性能が低下した。比較例9においては、W3/Pが3.0を超えているので、伝熱面積が減少し、凝縮性能及び蒸発性能が共に低くなった。
【0039】
第5実施例
先ず、銅板の一方側の表面に、ロール圧延により深さ0.2mmの溝をピッチ0.2mmで形成した。2つの溝加工領域においては、これらの幅比(W1/W2)を1.0乃至3.5となるように設定し、捩じれ角度θ1、θ2を、夫々、2乃至60°の範囲にし、溝加工領域1の捩じれ方向及び溝加工領域2の捩じれ方向を、夫々、右ネジ方向及び左ネジ方向となるようにした。なお、溝加工領域1、2において、平均肉厚を0.3mmとし、底肉厚を0.25mmとした。その後、2つの溝加工領域の間に管軸方向に延びる直線溝領域3を、その肉厚t0を種々に変化させて形成した。次に、溝形成面を内側にして湾曲させ、銅板端部同士を突き合わせて高周波溶接して外径7mmの伝熱管を得た。そして、伝熱管の耐圧力値を評価し、その破裂部位を調べた。下記表3に溝加工領域の肉厚t0、耐圧力及び破裂部位を夫々示す。
【0040】
【表3】
Figure 0003751393
【0041】
表3に示すように、実施例7においては、直線溝領域の肉厚t0が所定範囲にあるので、耐圧力が16.7MPa(メガパスカル)と高く、破裂部位も溝加工領域であった。これに対し、比較例10、11においては、破裂部位が直線溝領域であるため、耐圧力も低い値を示した。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る管内面溝付伝熱管においては、管内面に管軸方向に対する捩じれ角度及び捩じれ方向が相異する第1及び第2の溝群が形成され、これらの第1及び第2の溝群が形成された第1及び第2の溝加工領域は異なる幅で複数組配置されていると共に、各溝加工領域間には管軸方向に延びる直線溝領域が配置されているので、伝熱管の蒸発性能及び凝縮性能をいずれも優れたものにすることができる。そして、伝熱管の凝縮性能を優れたものにすることができるため、熱交換器の設計自由度を高めることができると共に、省エネルギー化及び高効率化を図ることができる。
【0043】
また、請求項2のように、第1溝加工領域の幅W1と第2溝加工領域の幅W2との比であるW1/W2を所定範囲にすると、蒸発性能及び凝縮性能を更に一層優れたものにすることができる。
【0044】
更に、請求項3のように、第1溝加工領域の捩じれ角度θ1を第2溝加工領域の捩じれ角度θ2より小さくして、隣接溝加工領域間で捩じれ方向を逆向きにし、θ1及びθ2を所定範囲にすると、特に、蒸発性能が更に向上し、冷房能力を優れたものにすることができる。
【0045】
更にまた、請求項4のように、第1溝加工領域の捩じれ角度θ1を第2溝加工領域の捩じれ角度θ2より大きくして、隣接溝加工領域間で捩じれ方向を逆向きにし、θ1及びθ2を所定範囲にすると、特に、凝縮性能が向上し、暖房能力を優れたものにすることができる。
【0046】
更にまた、請求項5のように、直線溝領域の幅W3を溝ピッチPに対して所定範囲に設定すると、更に一層、蒸発性能及び凝縮性能を向上させることができる。
【0047】
更にまた、請求項6のように、直線溝領域の肉厚t0を溝加工領域の平均肉厚tに対して所定範囲に設定すると、内力等により伝熱管が押し広げられても、応力集中が緩和され、強度低下を防止することができる。
【0048】
更にまた、請求項7のように、溝加工領域の肉厚を直線溝領域に近づくにつれて厚く形成すると、冷媒液の流動性が確保されて、高い伝熱性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る管内面溝付伝熱管の内面を展開して示す模式図である。
【図2】本発明の実施例に係る管内面溝付伝熱管の断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る管内面溝付伝熱管の一部を拡大して示す断面図である。
【図4】縦軸に溝加工領域の幅比W1/W2をとり、横軸に伝熱性能比をとって、W1/W2と伝熱性能比との関係を示すグラフ図である。
【図5】縦軸に冷媒流量をとり、横軸に蒸発性能比をとって、冷媒流量と蒸発性能比との関係を示すグラフ図である。
【図6】縦軸に冷媒流量をとり、横軸に凝縮性能比をとって、冷媒流量と凝縮性能比との関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1、2;溝加工領域
3;直線溝領域
4;溝凸部
5;溝凹部

Claims (7)

  1. 管内を通流する冷媒との間で熱交換を行う内面溝付伝熱管において、管内面に形成され管円周方向の溝ピッチが同一で管軸方向に対する捩じれ角度及び捩じれ方向が相異する第1及び第2の溝群を有し、これらの第1及び第2の溝群が形成された第1及び第2の溝加工領域は異なる幅で複数組配置され、各溝加工領域間には、管軸方向に延びる直線溝領域が配置されていることを特徴とする管内面溝付伝熱管。
  2. 前記溝加工領域の幅をW1及びW2(W1>W2とする)としたとき、W1/W2は1.1乃至3.0であることを特徴とする請求項1に記載の管内面溝付伝熱管。
  3. 前記溝加工領域の幅が広い方の捩じれ角度をθ1、狭い方の捩じれ角度をθ2としたとき、θ1<θ2で、隣接溝加工領域間で捩じれ方向が逆向きであり、4°≦θ1≦25°、8°≦θ2≦45°であることを特徴とする請求項1又は2に記載の管内面溝付伝熱管。
  4. 前記溝加工領域の幅が広い方の捩じれ角度をθ1、狭い方の捩じれ角度をθ2としたとき、θ1>θ2で、隣接溝加工領域間で捩じれ方向が逆向きであり、8°≦θ1≦45°、4°≦θ2≦25°であることを特徴とする請求項1又は2に記載の管内面溝付伝熱管。
  5. 前記直線溝領域の幅をW3、前記第1及び第2の溝加工領域の管円周方向の溝ピッチをPとすると、W3/P比は1.0乃至3.0であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の管内面溝付伝熱管。
  6. 前記直線溝領域の肉厚をt0、前記第1及び第2の溝加工領域の平均肉厚をtとしたとき、0.9t≦t0≦1.1tであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の管内面溝付伝熱管。
  7. 前記第1溝加工領域及び第2溝加工領域の肉厚は夫々前記直線溝領域に近づくにつれ厚くなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の管内面溝付伝熱管。
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