JP3749971B2 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に関し、特に、排気系の集合部に設置された空燃比センサの検出出力に基づいて各気筒の空燃比を推定すると共に、各気筒の空燃比に基づいて各気筒の空燃比のバラツキを減少させるように、前記多気筒内燃機関の各気筒に供給する気筒別燃料噴射量をフィードバック制御する燃料噴射制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関の燃料噴射制御装置においては、排気系に設けられた触媒装置による排気ガスの浄化率が理論空燃比で最大になることに着目し、排気系に設けられた空燃比センサにより空燃比を検出して、その検出値が理論空燃比となるように燃料噴射量をフィードバック制御している(特開昭59−101562号公報)。
【0003】
また、空燃比センサを多気筒内燃機関の排気系集合部に1個だけ設けて空燃比を検出しても、気筒毎の空燃比を正確に検出することができず、全気筒の空燃比の混合値が検出されるのみであるため、この検出値に基づいて空燃比をフィードバック制御するとエミッション悪化を招来するという問題がある。そこで、かかる課題を解決するために、排気系の理論モデルを構築しておき、1個の空燃比センサの検出出力をこの理論モデルに適用することによって気筒毎の空燃比を推定し、この推定値に基づいて各気筒の空燃比を目標値にフィードバック制御する技術がある(特開平5−180040号公報)。更にこの技術では、エンジン制御ユニット(ECU)のシステムクロックに同期して空燃比センサの検出出力を単純にサンプリングしたのでは、真の空燃比(排気系集合部の空燃比)を求めることができないという課題を解決するために、サンプリング動作ブロック(sel-Vと呼ばれる)を備えている。即ち、排気系集合部における排気ガスの挙動は機関回転数等に依存して変動するので、この排気ガスの挙動に追従し得るサンプリングタイミングを設定することによって、排気系集合部の空燃比を求めるようにしている。そして、このように求めた空燃比から気筒毎の空燃比を求め、更にこれら気筒毎の空燃比に基づいて上記の気筒別フィードバック制御を行っている。
【0004】
この技術によれば、気筒毎に空燃比を設定することができると共に、気筒毎に独立して複数個の空燃比センサを設ける必要がないため、簡素な構造を実現している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記サンプリング動作ブロックは、空燃比センサの経年変化に起因してその検出出力自体が初期の理想状態から次第にずれていくような場合には、適正なサンプリングタイミングを設定することが困難となり、次第に排気系集合部の空燃比を正確に検出することができなくなる。結果、適切な気筒別フィードバック制御も次第に困難となり、空燃比応答性の悪化及びエミッションの悪化を招来する。
【0006】
また、前記サンプリング動作ブロックは、イグニッションキーを「OFF」にし、再び「ON」にして機関の始動再開がなされた場合、イグニッションキー 「OFF」時に空燃比検出を停止する為、始動再開時のサンプリングタイミングを、経年変化している空燃比センサの特性に合ったサンプリングタイミングに設定することができず、空燃比を精度良く検出することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みて成されたものであり、空燃比センサの経年変化等が生じても、それに対応して適切な気筒別フィードバック制御を行うことができる内燃機関の燃料噴射量制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために本発明は、多気筒内燃機関の排気系集合部に配置され、前記多気筒内燃機関の各気筒から排出される混合気の空燃比を検出する空燃比検出手段と、前記多気筒内燃機関の排気系における空燃比の挙動を規定するモデルに基づいて、前記排出される混合気の空燃比を入力すると共に前記排気系の内部状態を観測するオブザーバを設定して、各気筒の空燃比を推定する各気筒空燃比推定手段と、前記推定された各気筒の空燃比に基づいて各気筒の空燃比のバラツキを減少させるように、前記多気筒内燃機関の各気筒に供給する気筒別燃料噴射量を補正する気筒別空燃比補正係数を算出する気筒別空燃比補正係数算出手段とを備えた内燃機関の燃料噴射量制御装置において、前記各気筒空燃比推定手段の前記排出される混合気の空燃比を検出する検出タイミングを前記空燃比検出手段の応答特性に応じて補正する補正量を求める手段と、前記補正量を学習且つ記憶し、学習して得られた学習後の補正量により前記各気筒空燃比推定手段の検出タイミングを求める手段とを具備する構成とした。
【0009】
【作用】
各気筒空燃比推定手段は、排気系における空燃比の挙動を規定するモデルに基づいて、排出される混合気の空燃比を入力すると共に排気系の内部状態を観測するオブザーバを設定して混合気の空燃比の挙動に追従する検出タイミングで各気筒の空燃比を推定するが、補正量を求める手段が、排出される混合気の空燃比検出する検出タイミングを空燃比検出手段の劣化等の応答特性に応じて補正する補正量を求め、更に、検出タイミングを求める手段が、補正量を学習して記憶し、この学習により得られた学習後の補正量により各気筒空燃比推定手段の検出タイミングを求める。
【0010】
【実施例】
本発明による内燃機関の燃料噴射制御装置の一実施例を図面と共に説明する。尚、典型例として4気筒内燃機関に適用されるものを説明する。
【0011】
図1は、この燃料噴射制御装置の全体構成を示す概略図である。同図において、吸気管12の先端に設けられたエアクリーナ14から導入される吸気が、スロットル弁16で流量調節されつつサージタンク18及び吸気マニホールド20を通り、更に気筒毎の吸気弁(図示せず)を介して、4気筒内燃機関10の各気筒に流入される。
【0012】
各気筒の上記吸気弁の近傍には、燃料噴射用のインジェクタ22が設けられ、吸気と噴射燃料との混合気が、気筒毎に設けられている点火プラグ(図示せず)で点火されて燃焼し、各ピストン(図示せず)を駆動する。
【0013】
燃焼後の排気ガスは、各気筒の排気弁(図示せず)を介して排気マニホールド24に排出され、更に排気マニホールド24の集合部に連結された排気管26を経て第1の三元触媒装置28と第2の三元触媒装置30で清浄化されて機関外に排出される。
【0014】
スロットル弁16は、アクセルペダルの踏み込み量等の運転状況に応じて回転するパルスモータMにより駆動制御され、吸気管12のスロットル弁16近傍には、電磁弁32の開閉量に応じて2次空気量を制御するバイパス路34が併設されている。尚、スロットル弁16は一般的に知られている機構と同様に、アクセルペダルと機械的に連動するものであっても良い。
【0015】
また、内燃機関10には、電磁弁(図示せず)の開閉量を制御することにより排気ガスの一部を吸気系へ環流させる排気環流機構(EGR機構)100と、燃料タンク38内で発生する蒸発燃料(パージガス)を電磁弁(図示せず)の開閉量に応じて吸気系へ供給するキャニスタパージ機構200が設けられている。
【0016】
更に、内燃機関10には、特開平2−275043号公報等に開示されているいわゆる可変バルブタイミング機構300が備えられており、機関回転数Ne及び吸気系における吸気圧力Pb等の運転状態を示すパラメータに応じて、内燃機関10のバルブタイミングV/Tが2種類のタイミング特性LoV/TとHiV/Tの間で可変制御される。
【0017】
更に、内燃機関10のディストリビュータ(図示せず)内にはピストン(図示せず)のクランク角度位置を検出するクランク角検出センサ40が設けられ、スロットル弁16の近傍にはそのスロットル開度θTHを検出するスロットル開度検出センサ42が設けられ、吸気管12にはスロットル弁16の下流側の吸気圧力(絶対圧力)Pbを検出する絶対圧センサ44とスロットル弁16の上流側の吸気温度を検出する吸気温度センサ46とが設けられている。内燃機関10の適宜の位置には、大気圧Paを検出する大気圧センサ48と機関冷却水の温度Twを検出する水温センサ50が設けられている。尚、図1中には示されていないが、可変バルブタイミング機構300中には、選択バルブタイミング特性を検出する検出センサ52が設けられている。そして、これらのセンサ40〜52の検出信号は制御ユニット36に逐一供給される。
【0018】
排気管26において、三元触媒装置28の上流側の部位には、第1の空燃比検出手段としての広域空燃比センサ54が装着され、三元触媒装置28,30の間には、第2の空燃比検出手段としてのO2 センサ56が装着されている。
【0019】
広域空燃比センサ54には、本特許出願人が先に行った特開平2−11842号公報等に開示されているLAFセンサが適用され、このLAFセンサ54は、リーンからリッチにわたる広範囲において排気ガス中の酸素濃度をリニアに検出することができる広域特性を有している。そして、このLAFセンサ54とO2 センサ56の各検出信号は、それぞれ所定カットオフ周波数に設定されたローパスフィルタ58,60を介して制御ユニット36に供給される。
【0020】
次に、図2の回路ブロック図に基づいて、制御ユニット36のシステム構成を説明する。制御ユニット36は、マイクロプロセッサ62と各種入出力ポートとを備え、中央制御部(以下、CPUコアと呼ぶ)64が、ROM76によりファームウェア化されている種々のアプリケーションプログラムを実行することにより、後述するフィードフォワード制御及びフィードバック制御を行うようになっている。
【0021】
LAFセンサ54の検出信号は上記ローパスフィルタ58を介して第1の検出回路66へ入力され、検出回路66はこの検出信号について所定の線型化処理を行うことにより、リーンからリッチにわたる広範囲における排気ガス中の酸素濃度に比例したリニアな空燃比(A/F)を求めて、マルチプレクサ68へ出力する。O2 センサ56からの検出信号は上記ローパスフィルタ60を介して第2の検出回路70に入力され、検出回路70はこの検出信号値を図3に示す如き特性曲線に適応することにより、内燃機関10に供給された混合気の空燃比が理論空燃比(λ=1)に対してリッチかリーンかを示す信号を発生してマルチプレクサ68へ出力する。また、前記各センサ42〜52からの検出信号もマルチプレクサ68に供給される。そして、各信号は、所定の切換えタイミングに同期してチャンネル切換えを行うマルチプレクサ68を介してA/D変換器72へ時分割転送されてデジタルデータに変換され、ランダムアクセスメモり(RAM)74の所定バッファ領域に格納されたり、CPUコア64の演算に供される。尚、この実施例では、A/D変換器72は、所定のクランク角度(例えば、15度)毎に第2の検出回路70からの検出信号をA/D変換する。
【0022】
更に、クランク角センサ40からの検出信号は、波形整形回路78で2値論理の矩形信号に波形整形された後、カウンタ80において計数され、その計数値もRAM74の所定バッファ領域に格納されたり、CPUコア64の演算に供される。
【0023】
読出し専用メモリ(ROM)76には、上記種々のアプリケーションプログラムや、前述のタイミング特性LoV/TとHiV/Tのマップデータ、後述する種々の検索用マップデータが予め記憶され、CPUコア64が、RAM74とROM76の各種データを適用しつつ上記のアプリケーションプログラムを実行することにより運転状態に応じた最適燃料噴射制御条件を求め、各駆動回路82〜88を介してインジェクタ22、電磁弁32、排気環流機構(EGR機構)100の前記電磁弁102、及びキャニスタパージ機構200の前記電磁弁202を制御する。
【0024】
図4は本実施例に係わる燃料噴射制御装置の機能を示すブロック線図であり、内燃機関10に対する吸気系の特性を補償するためのフィードフォワード制御系と、3系統のフィードバック制御系が備えられ、前記の各種アプリケーションプログラムが実行されることによって、かかるブロック線図と等価な制御機能が発揮される。
【0025】
即ち、図5に示すメインフローチャートの如く、ステップS400において、機関回転数Ne、吸気圧力Pb、スロットル開度θTH、冷却水温度Tw等の最新の各種センサ出力をRAM74へ読込み、ステップS500において上記フィードフォワード制御系の演算処理を行うことによって基本燃料噴射量TiM-Fを決定し、ステップS600において第1のフィードバック系の演算処理を行うことによって、目標空燃比KCMDと目標空燃比補正係数KCMDM 等を求め、ステップS700において第2のフィードバック系の演算処理を行うことによって、適応型フィードバック制御のための補正係数KSTRとKLAF等を求め、ステップS800において第3のフィードバック系の演算処理を行うことによって気筒別空燃比補正係数#nKLAFを求め、ステップS900において、基本燃料噴射量TiM-Fに目標空燃比補正係数KCMDM と各補正係数KSTR又はKLAFと#nKLAFを乗算等することによって、最終的な気筒別の出力燃料噴射量#nTout を決定してインジェクタ22を駆動するようになっている。尚、添字#nは各気筒を示し、出力燃料噴射量#nTout は、各気筒のインジェクタ22の開弁時間を規定するものである。更に、このメインフローチャートの処理は、TDCに同期して行われる。
【0026】
次に、各ブロック毎に機能を説明する。先ず、フィードフォワード制御系(図4中に「FFC」と示す)は、本出願人が先に提案した特願平6−197238号に開示されているので簡単に述べると、吸気系におけるスロットル弁16の下流から各気筒の吸入ポートまでの全ての実効容積(吸気管12の該当部分とサージタンク18等を含むチャンバ)についての流体力学モデル(数学モデル)等を構築し、スロットル開度θTHと吸気圧力Pbをこの流体力学モデルに適用することにより、定常運転状態のみならず過渡運転状態をも含めた全ての運転状態における最適な基本燃料噴射量TiM-Fを決定する。
【0027】
図6は基本燃料噴射量TiM-Fの演算ルーチン(図5のステップS500に対応する)を示すフローチャート、図7はこの演算ルーチンを説明するブロック線図であり、更にこれらの図に基いてフィードフォワード制御系の機能を説明する。ステップS502において機関が始動状態にあるか否か判断し、肯定されるときはステップS504において始動モードに対応する基本燃料噴射量TiM-Fを設定し、否定されるときはステップS506においてフューエルカット状態にあるか否か判断する。ここで肯定されるときはステップS508において燃料カット用の基本燃料噴射量TiM-F(=0)を設し、否定されるときは通常の運転状態に対応する基本燃料噴射量を設定すべくステップS510以降の処理へ移る。
【0028】
ステップS510では、機関回転数Neと吸気圧力PbをパラメータとしてROM76の所定マップを検索することにより、定常運転状態時の燃料噴射量(基準値)TiMを求める。即ち、予めスピードデンシティ方式に基づいて機関回転数Neと吸気圧力Pbをパラメータとする燃料噴射量TiMが求められ、かかる燃料噴射量TiMがROM76にマップデータとして格納されている。
【0029】
ステップS512では、スロットル開度θTHの値を一次遅れ伝達関数(1−B)/(Z−B)に適応することによって、スロットル開度θTHの一次遅れ値θTH-Dを演算する。即ち、過渡運転状態時には、スロットル開度θTHの変化が直接的に吸気ポートの吸入空気量に対応しないので、一次遅れ値θTH-Dをもって近似することにしている。尚、伝達関数中のBは係数である。
【0030】
ステップS514においては、図7に示す如く、予めROM76に格納されているマップを検索することにより、スロットル開度θTHに対応するスロットル投影面積(吸気管長手方向へのスロトル投影面積)Sと、スロットル開度θTH及び吸気圧力Pbに対応する補正係数(流量係数αと気体の膨張補正係数εの積)Cを求め、スロットル投影面積Sに補正係数Cを乗算することによって、定常運転状態時のスロットル有効開口面積Aを演算する。
【0031】
ステップS516においては、図7に示す如く、予めROM76に格納されているマップを検索することにより、スロットル開度の一次遅れ値θTH-Dに対応するスロットル投影面積Sと、一次遅れ値θTH-D及び吸気圧力Pbに対応する補正係数Cを求め、このスロットル投影面積Sに補正係数Cを乗算することによって、過渡運転状態時のスロットル有効開口面積ADELAY を演算する。
【0032】
ステップS518においては、バイパス路34の開口断面ABYPASSをも考慮して、
【0033】
【数1】
Figure 0003749971
【0034】
により、定常運転状態時の有効開口面積Aと過渡運転状態時の有効開口面積ADELAY との比RATIO-A を演算する。
【0035】
ステップS520においては、燃料噴射量TiMに比RATIO-A を乗算することによって、定常運転状態時及び過渡運転状態時に適応する燃料噴射量TiM-F’を求める。即ち、比RATIO-A の値は、定常運転状態では1となり、過渡運転状態では1を除く或る値になるので、定常運転状態と過渡運転状態との両者に対応するものである。よって、燃料噴射量TiMに比RATIO-A を乗算することによって、定常運転状態時及び過渡運転状態時に適応する燃料噴射量TiM-F’が求まる。
【0036】
ステップS522においては、機関回転数Neと吸気圧力Pb、吸気温度及び冷却水温度Tw、パージガス濃度PUG、排気ガスの還流率等のパラメータに基づいて、ROM76の所定マップを検索することにより補正係数KTOTALを求め、更に、燃料噴射量TiM-F’に補正係数KTOTALを乗算することにより、EGR機構100とキャニスタパージ機構200の影響を補償した基本燃料噴射量TiM-Fを決定する。
【0037】
このように、このフィードフォワード制御系は、運転状態の変化に伴ってシリンダ流入空気量が変動しても、スロットル開度θTHと吸気圧力Pbからそのシリンダ流入空気量に対応する最適な基本燃料噴射量TiM-Fを決定する。
【0038】
次に、第1のフィードバック系を説明する。このフィードバック系は、図4中の「KCMD」と「KCMD補正」及び「KCMDM]で示す機能ブロックを備え、図8に示すフローチャート(図5のステップS600に対応する)に従って演算処理を行う。
【0039】
先ず、図8のステップS602において、機関回転数Neと吸気圧力PbをパラメータとしてROM76の所定マップを検索することにより、空燃比の基本値KBSを求める。即ち、この基本値KBSは、機関回転数Neと吸気圧力Pbをパラメータとして、定常運転状態時にO2 センサ56の出力から求めることができる空燃比のデータであり、予めROM76に格納されている。尚、このマップにはアイドル運転状態時に対応する基本値も格納されている。更に、機関の低負荷時にその機関へ供給する空燃比を大きく(当量比で言えば小さく)して燃焼特性を向上させるための所謂リーンバーン機関にあっては、リーンバーン用の基本値も格納されている。
【0040】
ステップS604においては、内蔵されているタイマ回路(図示せず)の値を参照することにより、機関始動後のリーンバーン制御が実行されているか否かを判定し、リーンバーン制御期間であれば、リーン補正係数を例えば0.89、そうでない場合には1.0とする。
【0041】
かかる判定を行うのは次の理由による。本実施例に係る内燃機関10には可変バルブタイミング機構300が設けられており、始動後のクランキング期間(始動期間)では、各気筒の吸気弁の一方の動作を休止させることによって、目標空燃比を理論空燃比よりもややリーン側に設定するリーンバーン制御を行い、この結果、触媒装置が未だ活性化していない始動期間であっても、炭化水素(HC)の増加を抑制することができるという効果を発揮させるようにしているからである。尚、気筒毎に2個の吸気弁を有している通常の内燃機関(可変バルブタイミング機構を備えない内燃機関)にあっては、機関始動後に目標空燃比をリーン側に設定すると、機関内の燃焼が不安定となって失火を招来することとなるが、かかる可変バルブタイミング機構300を備えた本実施例の内燃機関にあっては、吸気弁の一方を休止させることに伴って燃焼室内に所謂スワールと呼ばれる渦流ができるので、機関の始動直後にリーン化を行っても安定した燃焼が得られる。ステップS606において、スロットル開度が全開(WOT)であるか否か判定し、この判定結果に応じて全開増量補正値を算出し、更にステップS608において、冷却水温度Twが高いか否か判定し、この判定結果に応じて増量補正係数KTWOT を演算する。尚、この増量補正係数KTWOT には、高水温時の機関保護のための補正係数値も含まれる。
【0042】
ステップS610では、補正係数KTWOT を基本値KBSに乗算することによってその基本値KBSを補正すると共に、数2に示す演算によって目標空燃比KCMDを決定する。即ち、図3に示す如く、理論空燃比近傍のO2 センサ56の出力が線形特性を備える範囲内(縦軸に破線で示す)において、空燃比の微小制御を行うためのウインドウ(以下、DKCMD-OFFSETとする)を設定した後、補正後の上記基本値KBSにこのウインドウ値DKCMD-OFFSETを加算することにより、目標空燃比KCMDを求める。
【0043】
【数2】
Figure 0003749971
【0044】
次に、ステップS612において、目標空燃比KCMD(k) (ここで、kは時刻)のリミット処理を行った後、ステップS614において、その目標空燃比KCMD(k) が1ないしその付近の値にあるか否かを判断し、肯定されるときはステップS616において、O2 センサ54の活性化判断を行う。尚、この活性化判断は、図示しない別ルーチンで実行され、O2 センサ56の検出信号の電圧変化を検出することで行う。
【0045】
次に、ステップS618において、MIDO2 制御用の値DKCMD を演算する。ここで、MIDO2 制御とは、三元触媒装置28の下流側のO2 センサ56の出力により上流側のLAFセンサ54の目標空燃比KCMD(k) を可変とする作業を意味する。詳しくは図3に示す如く、所定の比較電圧VrefMとO2 センサ56の出力電圧VO2Mの偏差にPID制御則を用いて値DKCMD を算出することで行う。尚、比較電圧VrefMは、大気圧Pa、水温Tw、排気ボリューム(機関回転数Neおよび吸気圧力Pbより求めることが可能)などに応じて求められる。
【0046】
更に、上記のウインドウ値DKCMD-OFFSETは、三元触媒装置28,30の浄化率を最適状態に維持するために付加されるオフセット値であり、触媒装置固有の特性に起因して相違するので、三元触媒装置28の特性を勘案して決定される。また、ウインドウ値DKCMD-OFFSETは、触媒装置28,30の経年劣化によっても変化することから、値DKCMD の毎回の算出値を用いて加重平均により学習する。具体的には、
【0047】
【数3】
Figure 0003749971
【0048】
の演算式により求められる。ここで、Wは重み係数、kは時刻であり、より具体的には制御サイクルを示す。即ち、目標空燃比KCMDをウインドウ値DKCMD-OFFSETの前回算出値で学習演算することにより、触媒装置28,30の経年劣化の影響を受けることなく、それらの浄化率が最適となる空燃比にフィードバック制御するようにしている。
【0049】
次に、ステップS620において、上記算出した値DKCMD(k)に目標空燃比KCMD(k) を加算して、新たな目標空燃比KCMD(k) を設定(更新)し、次に、ステップS622において、更新後の目標空燃比KCMD(k) に基づいてROM76中の所定テーブルを検索することにより、補正係数KETCを求める。補正係数KETCは、気化熱で吸入空気の充填効率が相違するのを補償するためにある。具体的には、求めた補正係数KETCに目標空燃比KCMD (k)を乗算することにより、補正された(更新された)目標空燃比補正係数KCMDM(k)を算出する。即ち、この制御においては目標空燃比を当量比で示すと共に、それに充填効率補正を施した値を目標空燃比補正係数KCMDM(k)としている。
【0050】
尚、上記ステップS614で否定されるときは、制御すべき目標空燃比KCMD(k) が理論空燃比に対して大きくずれているときであり、例えばリーンバーン運転状態時であることから、直ちにステップS622へジャンプする。
【0051】
最後にステップS624において、目標空燃比補正係数KCMD(k) のリミット処理を行い、そして、図4に示すように、フィードフォワード制御系からの基本燃料噴射量TiM-Fに目標空燃比補正係数KCMDM(k)を乗算することにより、要求燃料噴射量Tcyl を算出する。
【0052】
このように、第1のフィードバック系の機能は、定常運転状態における空燃比の基本値KBSについてO2 センサ56の出力に基づく上記所定の補正処理を行うことによって、目標空燃比KCMDと目標空燃比補正係数KCMDM を求めると共に、基本燃料噴射量TiM-Fに目標空燃比補正係数KCMDM を乗算することにより、触媒装置に対する理想的な空燃比を設定し得る要求燃料噴射量Tcyl を算出する。
【0053】
次に、第2のフィードバック系を説明する。このフィードバック系は、図4中の「STR」で示す適応型制御器と、「PIDC」で示すPID制御器と、「切替SW」で示す切替機構を備え、以下に述べるこれらの機能は、CPUコア64による所定アプリケーションプログラムの実行によって実現される。尚、このフィードバック系は、特願平6−340021号に詳細に開示されているので、ここではその概略を説明する。
【0054】
このフィードバック系は、前記フィードフォワード系で演算された基本燃料噴射量TiMに目標空燃比補正係数KCMDM を乗算することにより要求燃料噴射量Tcyl を求めただけでは、内燃機関10の応答遅れ等に起因して目標空燃比KCMDが鈍された空燃比となってしまうので、目標空燃比KCMDから空燃比の応答を動的に補償する目的で、適応制御器STRを用いてフィードバック補正係数KSTRを求め、このフィードバック補正係数KSTRにより要求燃料噴射量Tcyl を更に補正するようにしている。更に、適応制御器STRは制御の応答性が比較的高いので、運転状態に応じて目標空燃比KCMDが大きく変動するような場合には却って制御量が発振して制御の安定性が低下するという問題を招来することから、制御が不安定となるような場合には、PID制御器PIDCにより求めたフィードバック補正係数KLAFで要求燃料噴射量Tcyl を補正する。そして、運転状態に応じてこれらのフィードバック補正係数KSTRとKLAFを切換えて適用するために、切換機構が設けられている。更に、異なる制御則に基づいて決定されたフィードバック補正係数を切り換えるときは、それぞれの特性が異なることから、補正係数に段差が生じて操作量が急変し、制御量が不安定となって制御の安定性が低下する恐れがあるので、切換機構は、その切り換えを滑らかに実行することによって、フィードバック補正係数に不連続を生じないようにしている。
【0055】
先ず、PID制御器PIDCは、サンプリング動作ブロック(図中に「sel-V」と示す)で推定される排気系集合部の空燃比(以下、検出空燃比KACTと呼ぶ)に基づいて目標空燃比KCMDを動的に補償する。ここで、サンプリング動作ブロックsel-Vは、LAFセンサ54の検出信号から上記検出空燃比KACTを演算する機能を有しており、後述する第3のフィードバック系においても、この検出空燃比KACTを用いて所定のフィードバック制御を行うようになっている。尚、サンプリング動作ブロックsel-Vの詳細は第3のフィードバック系と共に説明することとする。
【0056】
PID制御器PIDCの処理を述べると、先ず、目標空燃比KCMDと検出空燃比KACTの制御偏差DKAFを、
【0057】
【数4】
Figure 0003749971
【0058】
と求める。尚、d’はKCMDがKACTに反映されるまでの無駄時間を示す。よって、KCMD(k-d')は無駄時間制御周期前の目標空燃比を示す。KACT(k) は今回制御周期の検出空燃比を示す。また、この明細書での空燃比は、目標値KCMDも検出値KACTも実際には当量比、即ち、Mst/M=1/λで示している(Mstは理論空燃比、Mは空気消費量Aと燃料消費量Fの比A/F、λは空気過剰率)。
【0059】
次いで、それに所定の係数を乗じてP項KLAFP(k)、I項KLAFI(k)、及びD項KLAFD(k)を、
【0060】
【数5】
Figure 0003749971
【0061】
と求める。
【0062】
このように、P項は偏差DKAF(k) に比例ゲインKPを乗じて求め、I項は偏差に積分ゲインKIを乗じて得た値をフィードバック補正係数の前回値KLAF(k) に加算することによって求め、D項は偏差の今回値DKAF(k) と前回値DKAF(k-1) の差に微分ゲインKDを乗じることによって求める。尚、各ゲインKP,KI,KDは、機関回転数Neと吸気圧力Pbをパラメータとして所定のマップ検索により求められる。更に、数6に示す如く、これらの値を合算し、更にオフセット分1.0を加算することにより、PID制御器PIDCのPID制御則によるフィードバック補正係数の今回値KLAF(k) を求める。
【0063】
【数6】
Figure 0003749971
【0064】
次に、適応制御器STRの機能を図9に基づいて説明する。適応制御器STRは、STRコントローラとパラメータ調整機構とを有し、STRコントローラは、第1のフィードバック系からの目標空燃比KCMD(k) と前記サンプリング動作ブロック(sel−V)からの検出空燃比KACT(k) とを入力すると共に、ランダウらの提案したパラメータ調整則(機構)によって同定された係数ベクトルを受け取って適応デジタル信号処理を行うことにより、フィードバック補正係数KSTR(k) を算出する。換言すれば、漸化式を用いてフィードバック補正係数KSTR(k) を算出する。
【0065】
この手法によれば、いわゆる適応システムを線形ブロックと非線形ブロックとから構成される等価フィードバック系に変換し、非線形ブロックについては入出力に関するポポフの積分不等式が成立し、線形ブロックは強正実となるように調整則を決めることによって、適応システムの安定が保証されることとなる。尚、かかる手法は、例えば、「コンピュートロール」(コロナ社刊)No.27.28頁〜41頁、ないし「自動制御ハンドブック」(オーム社刊)703頁〜707頁に記載されている。
【0066】
このランダウらの調整則を用いた適応制御技術を以下説明すると、ランダウらの調整則では、離散系の制御対象の伝達関数A(Z-1)/B(Z-1)の分母分子の多項式を数7で▲1▼▲2▼のようにおいたとき、適応パラメータθハット (k)および適応パラメータ調整機構への入力ζ(k) は、数7で▲3▼▲4▼のように定められる。数7では、m=1,n=1,d=3の場合、即ち、1次系で3制御サイクル分の無駄時間を持つプラントを例にとった。ここでのkは時刻、より具体的には、制御サイクルを示す。
【0067】
【数7】
Figure 0003749971
【0068】
ここで適応パラメータθハット (k)は、数8で表される。また数8中のΓ(k) およびeアスタリスク(K) は、それぞれゲイン行列および同定誤差信号であり、数9および数10のような漸化式で表される。
【0069】
【数8】
Figure 0003749971
【0070】
【数9】
Figure 0003749971
【0071】
【数10】
Figure 0003749971
【0072】
また数9中のλ1(k),λ2(k)の選び方により、種々の具体的なアルゴリズムが与えられる。λ1(k)=1,λ2(k)=λ(0<λ<2)とすると漸減ゲインアルゴリズム(λ=1の場合には最小自乗法)、λ1(k)=λ1(0<λ1<1)、λ2(k)=λ2(0<λ2<λ) とすると可変ゲインアルゴリズム(λ2=1の場合には重み付き最小自乗法)、λ1(k)/λ2(k)=σとおき、λ3が数11のように表されるとき、λ1(k)=λ3とおくと固定トレースアルゴリズムとなる。またλ1(k)=1,λ2(k)=0のとき固定ゲインアルゴリズムとなる。この場合は数9から明らかな如く、Γ(k) =Γ(k-1) となり、よってΓ(k) =Γの固定値となる。
【0073】
【数11】
Figure 0003749971
【0074】
ここで、図9にあっては、前記したSTRコントローラ(適応制御器)と適応パラメータ調整機構とは燃料噴射量演算系の外におかれ、検出空燃比KACT(k)が目標空燃比KCMD(k-d')(ここでd’は前述の如くKCMDがKACTに反映されるまでの無駄時間)に適応的に一致するように動作してフィードバック補正係数KSTR(k) を演算する。即ち、STRコントローラは、適応パラメータ調整機構によって適応的に同定された係数ベクトルθハット(k) を受け取って目標空燃比KCMD(k-d')に一致するようにフィードバック補償器を形成する。
【0075】
このように、フィードバック補正係数KSTR(k) および検出空燃比KACT(k) が求められて適応パラメータ調整機構に入力され、そこで適応パラメータθハット(k) が算出されてSTRコントローラに入力される。STRコントローラには入力として目標空燃比KCMD(k) が与えられ、検出空燃比KACT(k) が目標空燃比KCMD(k) に一致するように漸化式を用いて数12に示すフィードバック補正係数KSTR(k) を算出する。
【0076】
【数12】
Figure 0003749971
【0077】
演算されたフィードバック補正係数KSTR(k) は、切換機構を介して要求燃料噴射量Tcyl に乗算され、その補正された燃料噴射量Tcyl ’が更に後述する第3のフィードバック制御系の気筒別空燃比補正係数#nKLAFで補正されることにより、気筒別出力燃料噴射量#nTout が求められる。
【0078】
尚、切換機構は、所定の切換えフラグFKSTR に同期して切換え処理し、目標空燃比KCMDが大きく変動するような運転状態にあっては、フィードバック補正係数KLAF(k) を切換え選択して要求燃料噴射量Tcyl に乗算し、目標空燃比KCMDが大きく変動しない運転状態にあっては、フィードバック補正係数KSTR(k) を切換え選択して、要求燃料噴射量Tcyl に乗算する。即ち、要求燃料噴射量Tcyl は、フィードバック補正係数KSTR又はKLAFにより補正される。
【0079】
次に、第3のフィードバック系を説明する。このフィードバック系は基本的には、サンプリング動作ブロック「sel-V」が推定する排気系集合部の空燃比、即ち、検出空燃比KACTにオブザーバ(図4中にOBSVと示す)を適用することにより、気筒別空燃比#nKACTを求め、更に、PID制御則(図4中にPIDと示す)により気筒別空燃比#nKACTから気筒毎の空燃比補正係数#nKLAFを算出する。尚、添字#nは各気筒を示す。そして、気筒別空燃比補正係数#nKLAFを燃料噴射量Tcyl ’に乗算することによって、各気筒の空燃比を均一化することができる出力燃料噴射量#nTout を設定し、ひいては三元触媒28,30の排気ガス清浄効率の向上を図るようにしたものである。即ち、この第3のフィードバック系は、空燃比が各気筒でバラツクのをフィードバック補正するものである。まず、このフィードバック系の動作を説明する前に、サンプリング動作ブロック「sel-V」及びオブザーバについて説明する。
【0080】
排気ガスは排気行程で排出されることから、多気筒内燃機関10の排気系集合部において空燃比の挙動をみると、明らかに空燃比はTDCに同期する。従って、排気系の集合部に単一のLAFセンサ54を設けて空燃比をサンプリングするときもTDCに同期して行う必要があることとなる。しかし、LAFセンサ54の検出出力を処理する制御ユニット(ECU)36のサンプルタイミングによっては空燃比の挙動を正確に捉えられない場合が生じる。
【0081】
即ち、例えば、TDCに対して排気系集合部の空燃比が図10のようであるとき、制御ユニット36で認識する空燃比は図11に示す如く、サンプリングタイミングによっては全く違った値となってしまう。更に、その空燃比の変化は、排気ガスがLAFセンサ54に到達するまでの時間やLAFセンサ54の反応時間によっても相違する。その内、LAFセンサ54までの到達時間は排気ガス圧力、排気ガスボリュームなどに依存して変化する。更に、TDCに同期してサンプリングすることはクランク角度に基づいてサンプリングすることになるので、必然的に機関回転数Neの影響を受けざるを得ない。このように、空燃比の検出値は機関の運転状態に依存するところが大きい。このような課題を解決するために、サンプリング動作ブロックsel-VとオブザーバOBSVが設けられている。
【0082】
排気系集合部に設けられた単一のLAFセンサ54の検出信号から各気筒の空燃比を精度良く分離抽出するためには、LAFセンサ54の検出応答遅れを正確に解明する必要がある。そこで、図12に示すように、この遅れを擬似的に1次遅れ系でモデル化すると、その状態方程式は数13で示すことができる。
【0083】
【数13】
Figure 0003749971
【0084】
これを周期ΔTで離散化すると、数14で示すようになる。図13は数14をブロック線図で表したものである。
【0085】
【数14】
Figure 0003749971
【0086】
従って、数14を用いることによってLAFセンサ54の検出出力から真の空燃比を求めることができる。即ち、数14を変形すれば数15に示すようになるので、時刻kのときの値から時刻k−1のときの値を数16のように逆算することができる。
【0087】
【数15】
Figure 0003749971
【0088】
【数16】
Figure 0003749971
【0089】
具体的には数15をZ変換を用いて伝達関数で示せば数17のようになるので、その逆伝達関数を今回のLAFセンサ54の検出出力LAF(k) に乗じることによって前回の入力空燃比をリアルタイムに推定することができる。図14にそのリアルタイムのA/F推定器のブロック線図を示す。
【0090】
【数17】
Figure 0003749971
【0091】
続いて、上記の如く求めた真の空燃比に基づいて各気筒の空燃比を分離抽出する手法について説明すると、排気系の集合部の空燃比を各気筒の空燃比の時間的な寄与度を考慮した加重平均であると考え、時刻kのときの値を、数18のように表した。尚、F(燃料量)を制御量としたため、ここでは『燃空比F/A』を用いているが、後の説明においては理解の便宜のため、支障ない限り「空燃比」を用いる。尚、空燃比(ないしは燃空比)は、先に数17で求めた応答遅れを補正した真の値を意味する。
【0092】
【数18】
Figure 0003749971
【0093】
即ち、集合部の空燃比は、気筒ごとの過去の燃焼履歴に重みC(例えば直近に燃焼した気筒は40%、その前が30%...など)を乗じたものの合算で表した。このモデルをブロック線図であらわすと、図15のようになる。
【0094】
また、その状態方程式は数19のようになる。
【0095】
【数19】
Figure 0003749971
【0096】
また集合部の空燃比をy(k) とおくと、出力方程式は数20のように表すことができる。
【0097】
【数20】
Figure 0003749971
【0098】
上記において、u(k) は観測不可能のため、この状態方程式からオブザーバを設計してもx(k) は観測することができない。そこで4TDC前(即ち、同一気筒)の空燃比は急激に変化しない定常運転状態にあると仮定してx(k+1 ) =x(k-3) とすると、数21のようになる。
【0099】
【数21】
Figure 0003749971
【0100】
そして、かかるモデルについてシミュレーションすると、モデル出力値がLAFセンサ54出力の実測値に対して良好に追従するという結果が得られ、上記モデルが多気筒内燃機関の排気系を良くモデル化していることを検証することができた。
【0101】
よって、数22で示される状態方程式と出力方程式(数20)にてx(k) を観察する通常のカルマンフィルタの問題に帰着する。その荷重行列Q,Rを数23のように置いてリカッチの方程式を解くと、ゲイン行列Kは数24のようになる。
【0102】
【数22】
Figure 0003749971
【0103】
【数23】
Figure 0003749971
【0104】
【数24】
Figure 0003749971
【0105】
これよりA−KCを求めると、数25のようになる。
【0106】
【数25】
Figure 0003749971
【0107】
ところで、一般的なオブザーバの構成は図16に示されるようになるが、今回のモデルでは入力u(k) がないので、図17に示すようにy(k) のみを入力とする構成となり、これを数式で表すと数26のようになる。
【0108】
【数26】
Figure 0003749971
【0109】
ここで、y(k) を入力するとオブザーバ、即ちカルマンフィルタのシステム行列は数27のように表される。
【0110】
【数27】
Figure 0003749971
【0111】
今回のモデルで、リカッチ方程式の荷重配分Rの要素:Qの要素=1:1のとき、カルマンフィルタのシステム行列Sは、数28で与えられる。
【0112】
【数28】
Figure 0003749971
【0113】
図18に上記したモデルとオブザーバを組み合わせたものを示す。シミュレーションの結果によれば、集合部空燃比より各気筒の空燃比を的確に抽出することができることが検証された。
【0114】
このように、オブザーバによって、集合部空燃比A/F(即ち、A/FとはKACTと等価である)より各気筒別空燃比♯nA/Fを推定すること(各気筒空燃比推定手段)ができたことから、PID制御則を用いて空燃比を気筒別に制御するための気筒別空燃比補正係数♯nKLAFを演算すること(気筒別空燃比補正係数算出手段)が可能となる。
【0115】
具体的には、図19に示すように、排気系集合部の空燃比(即ち、KACT)を気筒毎の空燃比補正係数#n気筒別空燃比の全気筒についての平均値の前回演算値で除算して求めた目標値と、上記オブザーバの気筒毎の推定値#nA/Fと、の偏差を解消するようにPID制御則を用いて求める。即ち、数29に示す如く、PID制御則に適用する上記目標値KCMDOBSVは、前回TDC時に推定された各気筒の空燃比補正係数#1KLAF〜#4KLAFの平均値で、今回求められた検出空燃比KACTを除算することによって求められる。
【0116】
【数29】
Figure 0003749971
【0117】
一方、気筒別空燃比補正係数#nKLAFは、数30に示すように、各気筒#n毎に、検出空燃比#nKACT(m) と目標値KCMDOBSVとの偏差#nDKACT(m)を求めると共に、今回求められた偏差#nDKACT(m)と前回求められた偏差#nDKACT(m-1)との偏差(2回微分に相当する)#nDDKACTを求め、更に、これらの演算結果を適用することによって、各気筒#nに該当するPID制御則のKP項とKI項及びKD項を求め、最後に、これらのKP項とKI項及びKD項を適用して、気筒別空燃比補正係数#nKLAFを求める。尚、#nは各気筒#1〜#4を示し、mは、4TDC毎の時点を示す。即ち、気筒別空燃比補正係数#nKLAFは、それぞれ4TDCに1回演算される。尚、次式中、基準ゲインであるKPOBSV項とKIOBSV項及びKDOBSV項は、機関がアイドリング動作のときと、それ以外の動作時とでは、それぞれ異なった値に設定され、ROM76に予めデータマップとして格納されているので、かかる演算の際に運転状態に応じてマップ検索されるようになっている。
【0118】
【数30】
Figure 0003749971
【0119】
これにより、各気筒の空燃比は集合部空燃比に収束し、集合部空燃比は目標空燃比に収束することとなって、結果的に全ての気筒の空燃比が目標空燃比に収束する。ここで、各気筒の出力燃料噴射量#nTout (インジェクタの開弁時間で規定される)は、
【0120】
【数31】
Figure 0003749971
【0121】
で求められる(nは気筒)。
【0122】
以上の説明では、サンプリング動作ブロックsel-Vとオブザーバ及び第3のフィードバック系との基本原理を述べたが、より具体的な動作を図20及び図21のフローチャートと共に説明する。
【0123】
先ず、図20のフロー・チャートに基づいて、排気系集合部の空燃比A/F (即ち、KACT)を求めるまでの動作を説明する。尚、この処理は、実際には、図5に示すルーチン中のステップS400の中で予め実行されることにより、ステップ700及びステップS800の処理で検出空燃比KACT及び推定値#nA/Fを用いることができるようになっている。
【0124】
図20において、S402では、機関回転数Ne、吸気圧力Pb、バルブタイミングV/T を読み出し、次いでS404とS406に進んでHiV/TとLoV/T用のタイミングマップを検索する。
【0125】
図25はそのタイミングマップの特性を示す説明図であり、図示の如く特性は、機関回転数Neが低くないしは吸気圧力(負圧)Pbが高いほど早いクランク角度でサンプリングされた値を選択するように設定される。ここで、「早い」とは前のTDC位置により近い位置でサンプリングされた値(換言すれば古い値)を意味する。逆に、機関回転数Neが高くないしは吸気圧力Pbが低いほど遅いクランク角度、即ち、後のTDC位置に近いクランク角度でサンプリングされた値(換言すれば新しい値)を選択するように設定する。即ち、LAFセンサ出力は図11に示したように、実際の空燃比の変局点に可能な限り近い位置でサンプリングするのが最良であるが、その変局点、例えば最初のピーク値は、センサの反応時間を一定と仮定すれば、図26に示すように、機関回転数Neが低くなるほど早いクランク角度で生じる。また、負荷が高いほど排気ガス圧力や排気ガスボリュームが増加し、従って排気ガスの流速が増してLAFセンサ54への到達時間が早まるものと予想される。その意味から、サンプルタイミングを図25に示すように設定した。
【0126】
更に、バルブタイミングに関しては、機関回転数の任意の値Ne1をLo側についてNe1-Lo 、Hi側についてNe1-Hi とし、吸気圧力についてもその任意の値をLo側についてPb1-Lo 、Hi側についてPb1-Hi とすると、マップ特性は、
Pb1-Lo >Pb1-Hi
Ne1-Lo >Ne1-Hi
とする。即ち、HiV/T にあっては排気弁の開き時点がLoV/T のそれより早いため、機関回転数ないし吸気圧力の値が同一であれば、早期のサンプリング値を選択するように、マップ特性が設定される。
【0127】
次に、ステップS408において、HiV/Tに対応する処理とLoV/Tに対応する処理に分岐し、HiV/Tの場合にはステップS410に移行し、LoV/Tの場合にはステップS412へ移行する。尚、いずれの処理も基本原理は同じであるので、LoV/Tの場合の処理を代表して述べることとする。
【0128】
ステップS412においては、機関回転数Neが所定の上限値NeOBSV(この実施例では、3500rpm)より小さいか否か判断し、肯定されるときはステップS414ないしS416の処理へ移行し、ステップS414,S416においては、吸気圧力Pbが所定の上限値PbOBSV1 と下限値PbOBSV2 (この実施例では、PbOBSV1 =160mmHg、PbOBSV2 =660mmHg)の範囲内にあるか否か判断し、肯定されるときはステップS418の処理へ移行する。ステップS418では、EGR機構100が動作領域中にあるか否か判断し、肯定されるときはS420において、機関回転数Neと吸気圧力Pbに基づいて所定のタイミングマップを検索することにより、EGR用HiV/TのサンプリングタイミングSELVを求める。一方、ステップS418で否定されるときは、ステップS422において、EGR無しのHiV/TサンプリングタイミングSELVを求める。そして、ステップS426の処理へ移行する。
【0129】
尚、ステップS412〜S416で否定される場合には、ステップS424において、サンプリングタイミングSELVが所定値に固定される。尚、ステップS424において、このサンプリングタイミングSELVには前回周期の(直前の)サンプリングタイミングを用いてもよい。そして、ステップS426の処理へ移行する。
【0130】
次に、ステップS426において、LAFセンサ54の特性変化等があるか否かの判断を行う。尚、この特性変化等の判定は、図21と共に後述する別個のルーチンで行われ、後述の警報フラグWARNG が“1”のときに特性変化有りと判断する。
【0131】
そして、ステップS426において、肯定されるときはステップS428へ処理が移行して、LAFセンサ54の劣化の程度(度合い)を示す特性値SELVc をマップ検索する。図27は、LAFセンサ54の応答特性tmCYL に対する特性値SELVc を概略的に示す。即ち、エンジンに供給する混合気の空燃比を理論空燃比にフィードバック制御時のLAFセンサ54の反転時間(周期)tmCYL を逐次計測し、この時間tmCYL をパラメータとして特性値SELVc をマップ検索する。
【0132】
尚、本発明にあっては、LAFセンサ54の特性劣化等を、この反転時間に限って判断するものではない。例えば、理論空燃比(14.7:1)の状態からフューエルカットされてリーン状態となった場合に、LAFセンサ54の検出出力が定常状態になったときの検出値LAF が、予め決められているLAFセンサの標準特性値IPFCから外れていると、特性劣化等を生じていると判断するようにしてもよい。この場合には、図27中の値tmCYL が、検出値LAF と標準特性値IPFCとの差の値( LAF−IPFC)となる。
【0133】
次に、ステップS430では、ステップS420、S422、S424のいずれかで求められたサンプリングタイミングSELVを補正するための補正量ΔSEL をマップ検索する。図28は、ROM76に予め記憶されている補正量ΔSEL のメモリマップを概念的に示している。即ち、予め決められた特性値SELVc 毎に階層化された補正量ΔSEL のデータ群を機関回転数Neと吸気圧力Pbをパラメータとしてマップ検索するようになっている。
【0134】
更に詳述すれば、ある値の特性値SELVcに対しては、機関回転数Neの高低と吸気圧力Pbの高低に応じた複数の補正量ΔSEL1,1〜ΔSELq,pが予め実験的に求められており、他の値の特性値SELVcに対しても同様に、機関回転数Neの高低と吸気圧力Pbの高低に応じた他種類の補正量ΔSELのデータ群が予め実験的に求められ、かかる複数組みのデータ群がROM76に予め格納されている。
このように、特性値SELVcに応じて、データ群の組みを選択し、その選択した組み中の補正量ΔSELを機関回転数Neと吸気圧力Pbをパラメータとして検索することにより、LAFセンサ54の特性劣化等に対応する補正量ΔSELを迅速に求めること(補正量を求める手段)ができる。尚、これらの各補正量ΔSELは、次式に基づいて予め演算されたものである。
【0135】
【数32】
Figure 0003749971
【0136】
次に、ステップS432においては、ステップS430で求められた今回の補正量ΔSEL(k)について学習処理する。例えば、過去に求められたm個の補正量ΔSEL(k-m-1)〜ΔSEL(k-1)及び今回の補正量ΔSEL(k)の加算平均値を求め、この加算平均後の値ΔSEL を学習値とする。更に、この学習された値ΔSEL をE2 PROM等の不揮発性メモリに記憶する。
【0137】
次に、ステップS434において、次式に示す如く、サンプリングタイミングSELVに学習後の補正量ΔSELを加算することにより、補正後のサンプリング動作タイミングSELVFを求める(検出タイミングを求める手段)
【0138】
【数33】
Figure 0003749971
【0139】
そして、ステップS436において、サンプリング動作ブロックSEL-Vが、このサンプリング動作タイミングSELVF に基づいてLAFセンサ54の出力をサンプリングすることにより、排気系集合部の空燃比(つまり、KACT)を精度良く求める。
【0140】
尚、上記ステップS426において否定される場合(LAFセンサ54の特性が劣化等しない場合)には、補正量ΔSEL =0として、直接にステップS432の処理へ移行して学習及び記憶処理が行われる。
【0141】
また、ステップS410のHiV/Tタイミングに対応する処理において、ステップS426〜S432と同等の処理を行うために、HiV/Tタイミング専用の補正量ΔSEL のデータマップを予め格納しておいてもよいし、図27と図28に示すLoV/T用のデータマップを共通に検索するようにしてもよい。
【0142】
以上のステップS402〜S436の処理が、サンプリング動作ブロックsel-Vに相当する。従って、図29の下部に示すように、CPUコア64はLAFセンサ54の最大値と最小値を正確に認識することができる。そして、この構成によりオブザーバOBSVを用いて各気筒の空燃比#nA/Fを推定するときも、実際の集合部空燃KACTの挙動に近似する値を使用することができてオブザーバの推定精度が向上し、それに伴って、気筒別フィードバック制御の信頼性を向上させることができる。更に、前述した第2のフィードバック系にあっても、この排気系空燃比KACTに基づいてPID制御則と適応制御則による補正係数KLAFとKSTRを求めることができ、制御の信頼性の向上が図られる。
【0143】
また、補正量ΔSEL を学習し、この学習された補正量ΔSEL に基づいてサンプリング動作タイミングSELVF を求めるので、LAFセンサ54の特性の変化傾向に追従したサンプリング動作タイミングSELVF を設定することができる。
【0144】
また、直近で求められた補正量ΔSEL を次の周期まで不揮発性メモリに記憶することにより、例えば、イグニッションキーを「OFF」にし、再び「ON」にして機関を始動する場合に、その補正量ΔSEL を読出してサンプリング動作タイミングSELVを演算することができるので、新たに補正量ΔSEL を求める必要がなくなり、迅速にLAFセンサ54の特性変化に対応したエンジン制御を行うことができ、排気ガスの浄化性能の向上を図ることができる。
【0145】
尚、車載バッテリーを取り代えた場合には、補正量ΔSEL を0に設定して、新規に算出するようになっている。これは、バッテリーの出力電圧の変化に伴いLAFセンサ54の出力特性も変化するので、かかる影響を回避するためである。次に、LAFセンサ54の劣化を判定するための動作を図21と共に説明する。まず、図22及び図23に基づいて原理を説明する。LAFセンサ54は、例えば、理論空燃比(14.7:1)で出力電流が0、リーンになるに従ってプラス側に増加し、リッチになるに従ってマイナス側に増加するという特性を有している。そこで、目標空燃比KCMDを理論空燃比に固定し、第2フィードバック系の目標空燃比補正係数KLAFを図22に示す如く周期的に変化させて、空燃比をリーンないしリッチに変化させることによって得られる検出空燃比KACTの変化周期に基づいて、劣化の判断を行う。即ち、正常なLAFセンサによって得られる検出空燃比KACTの正規の周期に対して、劣化したLAFセンサによって得られる検出空燃比KACTの周期は応答性遅延に起因して長くなる等の症状を起こす。
【0146】
したがって、かかるLAFセンサの応答性の変化に着目し、予め決められた劣化判定期間tmWAVEの間に、検出空燃比KACTが目標空燃比KCMDをゼロクロスする回数、換言すれば、検出空燃比KACTの反転回数NWAVE を計測し、この反転回数NWAVE で判定期間tmWAVEを除算することによって、検出空燃比KACTの1周期tmCYCLを求め、劣化判定の基準周期tmCYCLOKより長いときは劣化していると判断する。尚、この実施例では、劣化判定の基準周期tmCYCLOKを正規の周期tmCYCSTDの1.5倍に設定した。即ち、図23に示すように、LAFセンサの応答周期とエミッションとに相関関係があり、正規の周期tmCYCSTDの1.5倍程度をエミッション悪化の許容限界とした。
【0147】
次に、図21のフローチャートに基づいてLAFセンサ54の劣化を判定するための動作を説明する。
【0148】
まず、ステップS450において、LAFセンサ54の劣化判定を実施することが可能か否かの判断を行う。即ち、正常なLAFセンサが活性化状態にあるのと同条件において劣化判定を行うために、吸気圧力Pbと機関回転数Ne、大気温度Ta及び冷却水温Tw等の全てが所定の範囲内にあれば、LAFセンサが活性化状態にあると判断してステップS452へ移行し、かかる条件を満足しない場合にはステップS476に移行して、劣化判定可能フラグLFRPMLを“0”(判定不可)にして終了する。
【0149】
一方、ステップS452においては、検出空燃比KACTが反転したか否かを判断する。実際には、目標空燃比補正係数KLAFが増加から減少又は減少から増加のいずれかに変化した時点を検知することによって、この反転の有無を判断する。
【0150】
反転した場合には、ステップS454へ移行し、検出空燃比KACTが目標空燃比KCMD(14.7:1)より大きいか否か判断し、大きいときはステップS456において、劣化判定可能フラグLFRPM を“1”(判定可能)にセットしてステップS458へ移行し、前回の処理で劣化判定可能フラグLFRPM が“1”となっているかを判断する。
【0151】
ステップS458で否定される場合は、今回初めて検出空燃比KACTが反転したことになるので、ステップS460で反転回数NWAVE を“0”にリセットし、更にステップS462において判定期間tmWAVEをリセットすることにより、反転回数の計測開始可能状態にする。
【0152】
一方、ステップS458において肯定されるときは、ステップS464において反転回数NWAVE に1加算する。
【0153】
続いて、ステップS466において、計測時間tmWAVEが所定の決められた時間tmWAVET に達したか否かの判断を行い、未だ達していないときは、計測を継続し、時間に達した場合には、ステップS468において、計測時間tmWAVEを反転回数NWAVE で除算することにより、反転周期tmCYC を求める。
【0154】
次に、ステップS470において、求められた反転周期tmCYC が劣化判定の基準周期tmCYCLOKより大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS472において、LAFセンサ54の劣化を示す警報フラグWARNG を“1”にセットし、続いてステップS474において、劣化判定可能フラグLFRPMLを“0”にセットして処理を完了する。
【0155】
このようにして得られる警報フラグWARNG が“1”か否かを、図20中のステップS426において判断することにより、LAFセンサ54の劣化に対応した空燃比フィードバック制御がなされる。
【0156】
次に、図5中のステップS800における気筒別フィードバック制御の動作を図24のフローチャートに基づいて説明する。尚、本実施例の内燃機関10にはバルブタイミング機構300が設けられているので、バルブタイミングHiV/TとLoV/Tに応じて気筒別の空燃比#nA/Fを推定した後、気筒別フィードバック補正係数#nKLAFを求めるようになっている。
【0157】
図24において、ステップS802では、図20の処理で求められたHiV/T用の排気系集合部の空燃比KACTをオブザーバ行列の演算に適用することにより、HiV/T用の気筒別空燃比#nA/Fを求め、続いてステップS804に進んで、LoV/T用の排気系集合部の空燃比KACTをオブザーバ行列の演算に適用することによりLoV/T用の気筒別空燃比#nA/Fを求める。
【0158】
続いてS806に進んで現在のバルブタイミングV/T を判断し、判断結果に応じてステップS808または810に進んで、HiV/T用またはLoV/T用のいずれかの気筒別空燃比#A/Fを選択する。このように、ステップS802〜S810においては、バルブタイミングV/T に応じた気筒別空燃比#nA/Fを求めるために、オブザーバOBSVによる気筒別空燃比推定処理が行われる。次に、ステップS812において、PID制御則を用いてこれらの気筒別空燃比#nA/Fから気筒別フィードバック補正係数#nKLAFを演算し、気筒別の出力燃料噴射量#nTout を求めて、TDC周期のフィードバック制御が完了する。 このように、この実施例によれば、LAFセンサ54の特性劣化等の変化があっても、それに追従したサンプリングタイミングで排気系集合部の空燃比を求めることができるので、精度良く気筒別フィードバック制御を行うことができる。
【0159】
【発明の効果】
本発明の内燃機関の燃料噴射量制御装置によれば、空燃比検出手段の検出出力から混合気の空燃比の挙動に追従した検出タイミングで各気筒の空燃比を推定するが、排出される混合気の空燃比検出する検出タイミングを空燃比検出手段の劣化等の応答性に応じて補正する補正量を求め補正量を学習且つ記憶することにより得られる学習後の補正量により各気筒空燃比推定手段の検出タイミングを求めるので、空燃比検出手段の特性変化に合ったサンプリングタイミングで混合気の空燃比を推定することを可能にし、よって、常に高精度のフィードバック制御を可能にする。
【0160】
更に、イグニッションがオフとなっても、推定タイミングが記憶されているので、イグニッションがオンとなった直後からその推定タイミングに基づいて高精度で空燃比の推定を開始することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係わる内燃機関の燃料噴射装置の全体構成を示す概略構成図である。
【図2】図1中の制御ユニットの構成を示すブロック図である。
【図3】図1中の空燃比センサ出力特性を示す説明図である。
【図4】実施例に係わる内燃機関の燃料噴射装置の機能を示すブロック線図である。
【図5】燃料噴射装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】フィードフォワード系の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】フィードフォワード系の機能を説明するためのブロック図である。
【図8】第1のフィードバック系の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】第2のフィードバック系の機能を説明するためのブロック図である。
【図10】多気筒内燃機関のTDCと排気系集合部の空燃比との関係を示す説明図である。
【図11】実際の空燃比に対するサンプリングタイミングの良否を示す説明図である。
【図12】LAFセンサのモデルを示すブロック図である。
【図13】LAFセンサのモデルを更に示すブロック図である。
【図14】LAFセンサのZ変換表示モデルを示すブロック図である。
【図15】空燃比推定器を示すブロック線図である。
【図16】一般的なオブザーバを示すブロック線図である。
【図17】実施例に係わるオブザーバの構成を示すブロック線図である。
【図18】空燃比推定器とオブザーバとを組合わせた構成を示すブロック線図である。
【図19】第3のフィードバック系の機能を示すブロック線図である。
【図20】サンプリング動作ブロック(sel-V)における検出空燃比のサンプリング動作を示すフローチャートである。
【図21】LAFセンサの劣化判定動作を示すフローチャートである。
【図22】LAFセンサの劣化判定の原理を説明するための説明図である。
【図23】LAFセンサの劣化判定の原理を更に説明するための説明図である。
【図24】第3のフィードバック系において気筒別空燃比補正係数を求める動作を説明するフローチャートである。
【図25】サンプリング動作ブロック(sel-V) のサンプリング動作で使用するタイミングマップの特性を示す説明図である。
【図26】機関回転数と機関負荷に対するLAFセンサ出力特性を示す説明図である。
【図27】LAFセンサの応答特性に対する特性値の関係を示す説明図である。
【図28】LAFセンサのサンプリング動作タイミングを補正するために検索される補正量のデータマップ構造を示す説明図である。
【図29】サンプリング動作ブロック(sel-V)のサンプリング動作を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
10…内燃機関、12…吸気管、14…エアクリーナ、16…スロットル弁、
18…サージタンク、20…吸気マニホールド、22…インジェクタ、24…排気マニホールド、26…排気管、28,30…触媒装置、32…電磁弁、34…バイパス路、36…エンジン制御ユニット、38…燃料タンク、40…クランク角検出センサ、42…スロットル開度検出センサ、44…絶対圧センサ、46…吸気温度センサ、48…大気圧センサ、50…水温センサ、52…タイミング検出センサ、54…空燃比検出センサ(LAFセンサ)、56…O2 センサ、
58,60…ローパスフィルタ、62…マイクロプロセッサ、64…CPUコア、66…検出回路、68…マルチプレクサ、70…検出回路、72…A/D変換器、74…RAM、76…ROM、78…波形整形回路、80…カウンタ、82〜88…駆動回路、100…EGR機構、102…電磁弁、200…キャニスタパージ機構、202…電磁弁、300…バルブタイミング機構。

Claims (1)

  1. 多気筒内燃機関の排気系集合部に配置され、前記多気筒内燃機関の各気筒から排出される混合気の空燃比を検出する空燃比検出手段と、前記多気筒内燃機関の排気系における空燃比の挙動を規定するモデルに基づいて、前記排出される混合気の空燃比を入力すると共に前記排気系の内部状態を観測するオブザーバを設定して、各気筒の空燃比を推定する各気筒空燃比推定手段と、前記推定された各気筒の空燃比に基づいて各気筒の空燃比のバラツキを減少させるように、前記多気筒内燃機関の各気筒に供給する気筒別燃料噴射量を補正する気筒別空燃比補正係数を算出する気筒別空燃比補正係数算出手段とを備えた内燃機関の燃料噴射量制御装置において、
    前記各気筒空燃比推定手段の前記排出される混合気の空燃比を検出する検出タイミングを前記空燃比検出手段の応答特性に応じて補正する補正量を求める手段と、前記補正量を学習且つ記憶し、学習して得られた学習後の補正量により前記各気筒空燃比推定手段の検出タイミングを求める手段とを具備することを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
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