JP3749874B2 - 光変調器制御装置およびそれを用いた光送信装置ならびに光変調器の制御方法および制御プログラム記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光変調器制御装置およびそれを用いた光送信装置ならびに光変調器の制御方法およびそれに使用する制御プログラム記録媒体に係り、特に電気/光変換器として使用されるマッハツェンダ型光変調器(以下、MZ変調器と記す)から出力される光信号を安定化する制御技術に関するもので、例えば長距離高速光ファイバー通信ネットワークに使用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の高速光ファイバーを用いた光通信システムにおける光送信装置の変調方式としては、変調入力に合わせて半導体レーザの駆動電流に強弱をつけることにより、電気−光変換を行う直接変調方式がある。しかし、この直接変調方式は、伝送速度が速くなるにつれて、出力光信号の波長変動(チャーピング)の影響や光ファイバー内の分散により、長距離伝送が困難になった。
【0003】
そこで、原理的に波長変動を起こさない外部変調器であるMZ変調器が使用されるようになってきている。また、MZ変調器を使用した光送信装置では、光通信システムが常時安定な動作をするように、温度変動、経時変化等に対する送信出力(光信号)の安定化が必要となる。
【0004】
図1は、MZ変調器の入力電気信号の振幅に対応して変化する駆動電圧と出力光信号の関係(光透過特性)一例を示す。ここでは、入力信号が二値のデジタル信号であるものとして説明する。
【0005】
図1において、光透過率が最大値(ピーク)の時の駆動電圧と光透過率が最小値(零)の時の駆動電圧との差をVπ、光透過率が最大値と最小値の中間値で傾きが正である点をQUAD点、このQUAD点に対する駆動電圧をQUAD電圧Vquadと呼ぶものとする。
【0006】
また、入力信号の各論理値に対応したMZ変調器の駆動電圧をV0 、V1 、これらの中間値(V0 +V1 )/2をバイアス電圧Vb (MZ変調器の動作点)と呼ぶものとする。
【0007】
図1中、光透過特性AはMZ変調器の動作点が最適(入力信号と光透過特性との関係が最適)な場合を示し、その場合の出力光信号をA´に示している。
【0008】
このようにMZ変調器の光透過率が最小、最大となる駆動電圧V0 、V1 でMZ変調器を駆動することにより、効率的な光変調を行うことができ、消光比の高い光信号を送信することができる。この時、V1 とV0 の差はVπに等しく、Vb はVquadに等しいという関係がある。
【0009】
一方、MZ変調器は、印加される直流バイアス電圧、環境温度、経時変化などにより、光透過特性にDCドリフトと呼ばれる変化(動作点ドリフト)を生じ、出力光信号が劣化する原因になる場合がある。
【0010】
図1中、BおよびB´は、AおよびA´に示した初期状態からDCドリフトを生じた場合の光透過特性および出力光信号を示している。つまり、DCドリフトは、光透過特性が図1中の横軸方向にずれる現象である。
【0011】
DCドリフトを生じた場合に、駆動電圧が初期状態と同じであったとすると、出力光信号B´の波形もその消光比も劣化するので、DCドリフトを補償する必要がある。即ち、DCドリフトを生じた場合には、そのドリフト量を駆動電圧変化量と考え、その電圧変化量ΔVb だけ駆動電圧V0 、V1 それぞれの値を変化させることにより、DCドリフトに対して補償を行う必要がある。この補償は、バイアス電圧Vb をΔVb だけ変化させることにより等価的に実現できる。
【0012】
上記したMZ変調器のDCドリフトを補償して安定に動作させる従来の制御方式は、例えば特開平3-251815公報「外部変調器の制御方式」に開示されており、例えば図14に示すように構成されている。
【0013】
この制御方式の原理は、まず、低周波重畳手段141 で規準周波数を持つ低周波信号(規準信号)を入力信号に重畳(規準信号で入力信号を振幅変調)し、その出力信号を駆動回路142 を介してMZ変調器143 に入力する。
【0014】
MZ変調器143 は、駆動回路142 から与えられる信号により半導体レーザ144の出射光を変調して光信号に変換して出力する。この光信号の一部が分岐されて入力する低周波信号検出手段145 では、モニター用のフォトダイオードで電気信号に変換する。この電気信号には規準信号の周波数成分が含まれており、この規準信号の周波数成分は、MZ変調器143 の動作点ドリフトの方向によって位相が180 °異なる。この周波数成分を含む信号を規準信号と乗算し、同期検波を行うと、動作点ドリフトの方向に応じた正負の直流成分(誤差信号)を検出することができる。そこで、この直流成分が零になるように、制御手段146 でMZ変調器143 の動作点を制御することによって動作点を最適に保持することができる。この場合、ドリフト補償の動作が比較的に速いという特長がある。
【0015】
なお、動作点ドリフトが無い場合には、MZ変調器143 から出力される光信号は、規準周波数の2倍の周波数で振幅変調された光信号となり、規準信号の周波数成分が含まれないので、この場合には直流成分が検出されない。
【0016】
しかし、上記したような従来の制御方式は、高周波の入力信号に低周波の正弦波信号を重畳するように変調した駆動信号でMZ変調器143 を駆動するので、この駆動信号の最大振幅まで線形的にゲインを変化できるダイナミックレンジの広い駆動回路(可変利得アンプ)142 が必要不可欠となる。このような広いダイナミックレンジを持つ高出力かつ高速の可変利得アンプは、技術的に実現が困難であり、高価である。
【0017】
また、入力信号の各論理値に対応したMZ変調器143 の駆動電圧V0 、V1 の差が、光透過率が最大値の時の駆動電圧と光透過率が最小値の時の駆動電圧との差Vπに等しい場合(Vb がVquadに等しい、つまり、MZ変調器143 の動作点が最適である場合)でないと、制御動作が正しく行われない。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように従来のMZ型光変調器の制御方式は、入力信号変調用のダイナミックレンジの広い高価な可変利得アンプが必要不可欠となるという問題があった。また、MZ変調器の駆動電圧V0 、V1 の差がVπと等しくなければ制御動作が正しく行われないという問題があった。
【0019】
本発明は上記の問題点を解決すべくなされたもので、入力信号変調用のダイナミックレンジの広い高価な可変利得アンプを必要としない簡易な構成により、MZ型光変調器の駆動電圧V0 、V1 の差がVπに等しいか否かに拘らず、MZ型光変調器の動作点ドリフトを補償し得る光変調器制御装置およびそれを用いた光送信装置ならびに光変調器の制御方法およびプログラム記録媒体を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る第1の光変調器制御装置は、二値のデジタル信号である入力信号に応じた駆動電圧を発生する駆動回路と、前記入力信号よりも周波数が十分に低い低周波信号を発生する低周波発振器と、前記低周波信号を重畳した直流バイアス電圧および前記駆動電圧が与えられ、前記駆動電圧に応じて入力光を変調し、前記入力信号を光信号に変換するマッハツェンダ型光変調器と、前記マッハツェンダ型光変調器から出力される光信号を前記入力信号の高周波成分のみを平均化した電気信号に変換し、前記平均化した電気信号から前記低周波信号の周波数成分を取り出すとともに前記低周波発振器から出力する低周波信号と乗算し、乗算出力信号の直流成分を取り出す低周波信号検出手段と、前記低周波信号検出手段で取り出された直流成分が最大になるように前記直流バイアス電圧を制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る第2の光変調器制御装置は、二値のデジタル信号である入力信号に応じた駆動電圧を発生する駆動回路と、前記入力信号よりも周波数が十分に低い第1の低周波信号および第2の低周波信号をそれぞれ発生する第1の低周波発振器および第2の低周波発振器と、前記第1の低周波信号および第2の低周波信号を重畳した直流バイアス電圧および前記駆動電圧が与えられ、前記駆動電圧に応じて入力光を変調し、前記入力信号を光信号に変換するマッハツェンダ型光変調器と、前記マッハツェンダ型光変調器から出力される光信号を前記入力信号の高周波成分のみを平均化した信号に変換し、前記平均化した信号から前記第1の低周波信号および第2の低周波信号の周波数成分を取り出し、前記第1の低周波発振器から出力する第1の低周波信号と乗算し、乗算出力信号の直流成分および前記第2の低周波信号の周波数成分を取り出す第1の低周波信号検出手段と、前記第1の低周波信号検出手段から出力される信号に含まれる前記第2の低周波信号の周波数成分を検出し、前記第2の低周波発振器から出力する第2の低周波信号の位相と比較して前記マッハツェンダ型光変調器の動作点ドリフト方向を検出する第2の低周波信号検出手段と、前記第2の低周波信号検出手段により検出されたマッハツェンダ型光変調器の動作点ドリフト方向に応じて前記マッハツェンダ型光変調器の動作点をドリフト方向と同方向に制御し、前記第1の低周波信号検出手段で取り出された直流成分が最大になるように前記直流バイアス電圧を制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る第3の光変調器制御装置は、二値のデジタル信号である入力信号に応じた駆動電圧を発生する駆動回路と、前記駆動電圧および直流バイアス電圧が与えられ、前記駆動電圧に応じて入力光を変調し、前記入力信号を光信号に変換するマッハツェンダ型光変調器と、前記マッハツェンダ型光変調器から出力される光信号の時間平均を表わす平均光出力レベルを検出する光検出手段と、前記入力信号の振幅を入力信号よりも十分に低い周波数で二値的に変化させるための制御信号を生成する機能を含み、前記入力信号の振幅を二値的に変化させる前後で前記光検出手段により検出された平均光出力レベルの差し、この検出結果に基づいて前記直流バイアス電圧を制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【0023】
本発明に係る光送信装置は、本発明に係る光変調器制御装置と、前記マッハツェンダ型光変調器の入力光を出射する光源と、前記マッハツェンダ型光変調器から出力される光信号を光通信ファイバーに送信する手段とを具備することを特徴とする。
【0024】
本発明に係る第1の光変調器の制御方法は、二値のデジタル信号である入力信号に応じた駆動電圧とともに入力信号よりも周波数が十分に低い低周波信号を重畳した直流バイアス電圧をマッハツェンダ型光変調器に与えることによって入力光を駆動電圧に応じて変調して入力信号を光信号に変換する第1のステップと、前記マッハツェンダ型光変調器から出力される光信号を入力信号の高周波成分のみを平均化した電気信号に変換し、平均化した電気信号から低周波信号の周波数成分を取り出すとともに前記直流バイアス電圧に重畳した低周波信号と乗算してその直流成分を取り出す第2のステップと、前記第2のステップにより取り出された直流成分が最大になるように前記直流バイアス電圧を制御する第3のステップとを具備することを特徴とする。
【0025】
本発明に係る第2の光変調器の制御方法は、二値のデジタル信号である入力信号に応じた駆動電圧とともに入力信号よりも周波数が十分に低い第1の低周波信号および第2の低周波信号を重畳した直流バイアス電圧をマッハツェンダ型光変調器に与えることによって入力光を駆動電圧に応じて変調して入力信号を光信号に変換する第1のステップと、前記マッハツェンダ型光変調器から出力される光信号を入力信号の高周波成分のみを平均化した電気信号に変換し、平均化した電気信号から第1の低周波信号および第2の低周波信号の周波数成分を取り出し、前記直流バイアス電圧に重畳した第1の低周波信号と乗算してその直流成分および第2の低周波信号の周波数成分を取り出す第2のステップと、前記第2のステップにより取り出された第2の低周波信号の周波数成分を検出し、前記直流バイアス電圧に重畳した第2の低周波信号と乗算してその直流成分を取り出し、この直流成分の極性から前記マッハツェンダ型光変調器の動作点ドリフト方向を検出するす第3のステップと、前記第3のステップにより検出された前記マッハツェンダ型光変調器の動作点ドリフト方向に応じて前記マッハツェンダ型光変調器の動作点をドリフト方向と同方向に制御し、前記第2のステップにより取り出された直流成分が最大になるように前記直流バイアス電圧を制御する第4のステップとを具備することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る第3の光変調器の制御方法は、二値のデジタル信号である入力信号に応じた駆動電圧とともに直流バイアス電圧をマッハツェンダ型光変調器に与えることによって入力光を駆動電圧に応じて変調して入力信号を光信号に変換し、入力信号の振幅を二値的に変化させる前後での光変調器の光信号出力平均パワーの差に基づいて直流バイアス電圧を制御することを特徴とする。
【0027】
本発明に係る光変調器の制御プログラム記録媒体は、マイクロコントロールユニットに対して、光変調器の入力信号の振幅を二値的に変化させる前後での光変調器の光信号出力平均パワーの差に基づいて前記光変調器の直流バイアス電圧を制御させるためのプログラムを記録したことを特徴とする。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0029】
<第1の実施形態>
図2は、本発明の第1の実施形態に係る光ファイバー通信用の光変調器制御装置を用いた光送信装置を示すブロック図である。なお、光変調器制御装置の回路部分は、例えば複数個の半導体装置からなるマルチチップモジュールにより構成される。
【0030】
図2において、駆動回路22は入力信号(電気信号)の振幅に応じて変化する駆動電圧を発生するものである。MZ変調器23は、駆動電圧に応じて光源21の出射光を変調し、電気−光変換を行うものであり、図1に示したような光透過特性を有する。低周波発振器24は、所定周波数(入力信号よりも周波数が十分に低い)の低周波信号を出力するものである。
【0031】
低周波信号検出手段25は、MZ変調器23の光出力を入力信号の高周波成分のみを平均化した信号に光電変換し、その平均化した電気信号から低周波信号の周波数成分を取り出す。そして、低周波信号の周波数成分の振幅に比例する直流電圧に変換し、その直流電圧がピーク値になる位置(ピーク位置)を検出するものである。上記ピーク位置では、MZ変調器23の動作点ドリフト後の最適の動作点となる。
【0032】
制御手段26は、動作点ドリフト後の最適の動作点(新しいQUAD点)でMZ変調器23が動作できるように制御する制御信号を駆動回路22に送出する。本実施形態では、MZ光変調器23の動作点を決める直流バイアス電圧に対して、低周波発振器24から与えられる低周波信号を加算する。この場合、MZ変調器23の光出力の平均パワーはバイアス電圧によって変わるので、バイアス電圧に低周波信号を加算すると、MZ光変調器23の光出力を入力信号の高周波成分のみを平均化した電気信号からその低周波信号の周波数成分を取り出すことが可能となる。
【0033】
そこで、低周波信号検出手段25は、MZ光変調器23の光出力から低周波信号の周波数成分を取り出し、その取り出された信号を低周波発振器24から出力される低周波信号と乗算し、低域通過フィルタを通すことにより直流電圧のみを残すことができる。この直流電圧の値は、低周波信号の周波数成分の振幅に比例する。また、動作点がQUAD点にある時(動作点ドリフトが無い時)に低周波信号の周波数成分の振幅が最大になるので、その時、直流電圧が最大の値になる。
【0034】
したがって、動作点ドリフトに応じて動作点ドリフト後の最適の動作点で動作するように、MZ光変調器23のバイアス電圧を変化させるような制御信号を制御手段26が駆動回路22に送出することにより、MZ変調器23から安定な光信号を送信することができる。
【0035】
図3は、図2の具体的な構成例を示している。
【0036】
図3において、光源31である半導体レーザの出射光はMZ変調器32に与えられる。入力信号は、所定の信号レベルを得る駆動アンプ33およびコンデンサ34を順に介してMZ変調器32の一方の変調入力端子に入力される。MZ変調器32の他方の変調入力端子と接地ノードとの間には、バイアスティ37および終端抵抗器38が直列に接続されている。
【0037】
一方、低周波発振器35から出力する所定周波数f1 の低周波信号は加算器36の一方の入力端子に入力される。この加算器36の出力信号は前記バイアスティ37に入力される。
【0038】
なお、前記駆動アンプ33、コンデンサ34、加算器36、バイアスティ37および終端抵抗器38は、図2中の駆動回路22に相当する。
【0039】
MZ変調器32は、光源31の出射光を上記駆動回路22から与えられる信号によって変調することにより、光信号に変換して出力する。この光信号は光分岐回路39により一部が分岐され、この分岐された光信号は、光−電気変換用のフォトダイオード40に入力されて電気信号に変換される。
【0040】
このように変換された電気信号は、前記低周波発振器35の出力周波数f1 の成分を選択増幅する帯域増幅器41およびコンデンサ42を順に介して乗算器43の一方の入力端子に入力される。乗算器43の他方の入力端子には低周波発振器35から出力する低周波信号が入力される。乗算器43の2つの入力信号は乗算され、前記周波数f1 以下の信号を通過させる低域通過フィルタ44を経ることにより直流成分だけが残される。この直流電圧は、光出力レベルに含まれた低周波信号の周波数成分の振幅に比例する。なお、動作点がQUAD点にある時(動作点ドリフトが無い時)には、その低周波信号の成分の振幅が最大になるので、直流成分が最大値となる。
【0041】
上記光分岐回路39、フォトダイオード40、帯域増幅器41、コンデンサ42、乗算器43および低域通過フィルタ44は、図2中の低周波信号検出手段25に相当する。
【0042】
この低周波信号検出手段25の出力信号は、試行錯誤方式等でピーク位置の値を求めるためのピーク位置検出回路45に制御され、制御電圧に変換される。この制御電圧は、差動アンプ46の一方の入力端子に入力される。差動アンプ46の他方の入力端子は、接地ノードに接続される。差動アンプ46の出力は、加算器36の他方の入力端子に入力される。なお、ピーク位置検出回路45および差動アンプ46は、図2中の制御手段26に相当する。
【0043】
なお、ピーク位置検出回路45は、例えばデジタル回路を用いて実現することができ、特にメモリーを持つプログラミング可能なマイクロコントロールユニットを使用すれば簡易に実現することができる。
【0044】
図4は、図2中のMZ変調器32から出力される光信号の平均パワーのバイアス電圧依存性を示す図である。
【0045】
図4に示すように、MZ変調器32の動作点を決めるバイアス電圧を変えることにより、MZ変調器32の光出力の平均パワーが周期的に変化する。MZ変調器32の動作点がQUAD点にある時に、MZ変調器32の光出力の平均パワーが最大値と最小値との真中となる。さらに、MZ変調器32のバイアス電圧も、光出力の平均パワーが最大の時のバイアス電圧と最小時のバイアス電圧の真中となる。
【0046】
なお、図4は平均パワーを示しており、駆動電圧V0 とV1 の差がVπと等しくない場合に光出力の平均パワーの絶対値が異なっても、グラフの位置関係は全く影響されない。
【0047】
図5は、図2中の低周波信号検出手段25および制御手段26の動作を説明するために示す図である。
【0048】
MZ光変調器23のバイアス電圧に低周波信号を加算した時のMZ変調器23の光出力を、低周波信号検出手段25で入力信号の高周波成分のみを平均化した電気信号に変換し、その平均化した電気信号から低周波信号の周波数成分を取り出している。
【0049】
バイアス電圧がQUAD点にある時に低周波信号の周波数成分の振幅が最大になる。また、動作点がVπの半分ドリフトした場合、図4に示したように動作点が光出力の平均パワーのピーク点にあり、低周波信号の周波数成分はf1 の2倍の周波数2・f1 を持つ成分となる。
【0050】
図6は、図3の回路の動作を説明するために示す特性図である。
【0051】
帯域増幅器41およびコンデンサ42から出力する低周波信号の成分を低周波発振器35から出力される低周波信号と乗算器43で乗算し、低周波信号の周波数成分の振幅に比例した直流電圧を低域通過フィルタ44から取り出している。
【0052】
動作点ドリフトが無い場合、バイアス電圧がQUAD点にあり、低周波信号の周波数成分f1 の振幅が最大となるので、直流電圧がピーク値となる。一方、動作点がVπの半分ドリフトした場合は、f1 の周波数成分が無いので、直流電圧が零になる。
【0053】
したがって、直流電圧がピーク値になる位置を検出するピーク位置検出回路45を使うことにより、動作点ドリフト後の最適の動作点を探すことができる。なお、図6に示した特性図から分るように、ピーク位置の左右は対称であるので、ピーク位置検出回路45の最初の動作は試行錯誤となる。この場合、メモリーを持つプログラミングできるようなマイクロコントロールユニットを使用すれば、より簡易に実現することができる。
【0054】
上記した第1の実施形態の光変調器制御装置およびそれを用いた光送信装置ならびに光変調器の制御方法によれば、二値のデジタル信号である入力信号に応じた駆動電圧とともに低周波信号を重畳した直流バイアス電圧をMZ型光変調器に与えることによって入力光を駆動電圧に応じて変調して入力信号を光信号に変換し、MZ型光変調器から出力される光信号を入力信号の高周波成分のみを平均化した電気信号に変換し、平均化した電気信号から低周波信号の周波数成分を取り出すとともに直流バイアス電圧に重畳した低周波信号と乗算してその直流成分を取り出し、この直流成分が最大になるように直流バイアス電圧を最適値に制御することを特徴とするものである。
【0055】
これにより、MZ型光変調器に印加される直流バイアス電圧、環境温度、経時変化などによるMZ変調器の動作点ドリフトに応じて、MZ変調器の動作点ドリフトを補償して最適の動作点で動作できるように制御し、動作点ドリフトに伴う出力光信号の消光比の劣化を防止することができる。この場合、入力信号変調用のダイナミックレンジの広い高価な可変利得アンプを必要とせず、簡易化、小型化が容易になる構成により、MZ型光変調器の駆動電圧V0 、V1 の差がVπに等しいか否かに拘らず、MZ型光変調器の動作点ドリフトを補償することができる。
【0056】
<第2の実施形態>
図7は、本発明の第2の実施形態に係る光ファイバー通信用の光送信装置を示すブロック図である。
【0057】
第2の実施形態の光送信装置は、第1の実施形態の光送信装置では低周波信号検出手段25で取り出された直流電圧がピーク値になる位置を検出する際に試行錯誤を必要とした点を改善し、試行錯誤を使用せずに動作点ドリフトの方向を区別できるようにしたものである。
【0058】
図7に示す光送信装置は、図2を参照して前述した光送信装置と比べて、(1)図2中の低周波発振器24に代えて第1の低周波発振器74および第2の低周波発振器75が設けられている点、(2)図2中の低周波信号検出手段25に代えて第1の低周波信号検出手段76が設けられており、さらに、第2の低周波信号検出手段77が設けられている点が異なり、その他の構成は同じであるので同じ名称を付している。
【0059】
即ち、図7において、71は光源、72は入力信号に応じた駆動電圧を発生する駆動回路、73は前記駆動電圧に応じて前記光源71の出射光を変調し、前記入力信号を光信号に変換するMZ変調器、74および75は入力信号よりも周波数が十分に低く、互いに周波数が異なる第1の低周波信号および第2の低周波信号をそれぞれ出力し、前記駆動回路72に送出する第1の低周波発振器(低周波発振器1)および第2の低周波発振器(低周波発振器2)である。本例では、前記第2の低周波発振器75の出力周波数f2 が第1の低周波発振器74の出力周波数f1 よりも少し低いものとする。
【0060】
76は、前記MZ変調器73から出力される光信号を前記入力信号の高周波成分のみを平均化した電気信号に変換し、前記平均化した電気信号から前記第1の低周波信号および第2の低周波信号の周波数成分を取り出し、前記第1の低周波発振器74から出力する第1の低周波信号と乗算し、乗算出力信号の直流成分および前記第2の低周波信号の周波数成分を取り出す第1の低周波信号検出手段(低周波信号検出手段1)である。
【0061】
77は、前記第1の低周波信号検出手段76から出力される信号に含まれる前記第2の低周波信号の周波数成分を検出し、前記第2の低周波発振器75から出力する第2の低周波信号の位相と比較して前記MZ変調器73の動作点ドリフト方向を検出する第2の低周波信号検出手段(低周波信号検出手段2)である。
【0062】
78は、前記MZ変調器73の動作点ドリフト方向に応じて、前記MZ変調器73の動作点をドリフト方向と同方向に制御するための制御信号を前記駆動回路72に送出する制御手段である。
【0063】
本実施形態では、駆動回路72に対して、第1の低周波発振器74からの第1の低周波信号だけでなく、それより周波数が低い第2の低周波信号も入力される。第1の実施形態と同様に、MZ変調器73の光出力の平均パワーはバイアス電圧によって変わるので、バイアス電圧に第1の低周波信号と第2の低周波信号を加算することにより、MZ光変調器73の光出力を入力信号の高周波成分のみを平均化した電気信号から低周波信号の周波数成分を取り出すことが可能となる。
【0064】
第1の低周波信号検出手段76は、第1の実施形態と同様に、MZ変調器73の光出力から低周波信号の周波数成分を取り出し、第1の低周波信号の周波数成分を直流電圧に変換するが、第1の低周波より周波数が低い第2の低周波信号の周波数成分はそのまま残る。
【0065】
このように残った第2の低周波信号の周波数成分を第2の低周波信号検出手段77で検出し、第2の低周波発振器75から出力する第2の低周波信号の位相と比較して動作点ドリフト方向を検出する。本実施形態では、制御手段78は、動作点ドリフト方向と同じ方向に駆動電圧が変化するように制御するための制御信号を駆動回路72に送出する。
【0066】
図8は、図7の具体的な構成例を示している。
【0067】
図8中、81は光源である半導体レーザ、82はMZ変調器、83は駆動アンプ、84はコンデンサ、85は第1の低周波発振器、86は加算器、87は第2の低周波発振器、88は第3の乗算器、89はバイアスティ、90は終端抵抗、91は光分岐回路、92はフォトダイオード、93は帯域増幅器、94はコンデンサ、95は第1の乗算器、96は第1の低域通過フィルタ、97はコンデンサ、98は第2の乗算器、99は第2の低域通過フィルタ、100 は差動アンプである。
【0068】
図8に示す光送信装置は、図3を参照して前述した光送信装置と比べて、次の点(1)〜(2)が異なり、その他は同じであるので同じ名称を付している。
【0069】
(1)ピーク位置検出回路45が省略されており、第2の低周波発振器87、第3の乗算器88、コンデンサ97、第2の乗算器98および第2の低域通過フィルタ99が追加されており、加算器36に代えて、入力端子が3つの加算器86が使用されている。
【0070】
第1の低周波発振器85、第2の低周波発振器87からそれぞれ対応して出力する所定周波数f1 、f2 の低周波信号は、第3の乗算器88の各入力端子に入力され、その乗算出力信号は加算器86の1つの入力端子(追加された入力端子)に入力される。
【0071】
(2)帯域増幅器93は、f1 −f2 からf1 までの周波数帯域を選択増幅するものである。第1の低域通過フィルタ96は、周波数f1 以下の信号を通過させるものであり、第2の低域通過フィルタ99は、周波数f2 以下の信号を通過させるものである。
【0072】
なお、図8中、光分岐回路91、フォトダイオード92、帯域増幅器93、コンデンサ94、第1の乗算器95および第1の低域通過フィルタ96は、図7中の第1の低周波信号検出手段76に相当する。また、コンデンサ97、第2の乗算器98および第2の低域通過フィルタ99は、図7中の第2の低周波信号検出手段77に相当する。
【0073】
図8の光送信装置の動作は、前述した第1の実施形態に係る図3の光送信装置の動作と基本的には同様であるが、若干異なる。
【0074】
即ち、MZ変調器82から出力される光信号は、低周波信号(f1 、f1 −f2 、f1 +f2 )の周波数成分が含まれる。上記f1 −f2 、f1 +f2 の周波数成分は、周波数f1 とf2 の低周波信号を乗算することによって生成される周波数成分である。
【0075】
MZ変調器82から出力される光信号は、光分岐回路91により一部が分岐して取り出され、フォトダイオード92に入力されて電気信号に変換される。このように変換された電気信号は、帯域増幅器93でf1 −f2 からf1 までの周波数帯域が選択増幅され、さらにコンデンサ94を介して第1の乗算器95の一方の入力端子に入力する。この第1の乗算器95の他方の入力端子には第1の低周波発振器85から出力する周波数f1 の低周波信号が入力する。
【0076】
第1の乗算器95の乗算出力信号は、第1の低域通過フィルタ96を経ることにより直流電圧と周波数f2 の低周波信号成分しか残らないことになる。この際、前述したように、f2 はf1 より少し低いことにより、f1 −f2 の周波数成分はf1 の周波数成分より周期が数倍長いので、f1 −f2 の周波数成分を無視し、第1の乗算器95の動作は図5に示したように考えればよい。
【0077】
前記第1の低域通過フィルタ96の出力信号はコンデンサ97を経て第2の乗算器98の一方の入力端子に入力され、第2の低周波発振器87の出力信号が第2の乗算器98の他方の入力端子に入力される。第2の乗算器98は、これらの2つの入力信号の位相差に応じた信号を出力し、この出力信号は、所定周波数f2 以下の信号を通過させる第2の低域通過フィルタ99を経て差動アンプ100 の一方の入力端子に入力される。
【0078】
図9は、図8中の回路の動作を説明するために示す図である。
【0079】
図9に示すように、バイアス電圧がQUAD点にある時に動作点が直流電圧のピーク点にあり、第1の低域通過フィルタ96の出力中に直流電圧と一緒に残った低周波の周波数成分はf2 の2倍の周波数2・f2 を持つことになる。
【0080】
したがって、この周波数成分は、第1の低域通過フィルタ96の出力信号と第2の低周波発振器87の出力信号とを乗算して第2の低域通過フィルタ99を経ることによって零となる。
【0081】
なお、f2 をf1 の半分より高い周波数に設定する場合、f2 の2倍の周波数を持つ成分は第2の低域通過フィルタ99を通らないので、動作点ドリフトが無い時にはf1 、f2 のいずれの成分も第2の低域通過フィルタ99からの出力は零になる。
【0082】
一方、動作点ドリフトが生じた場合には、第1の低域通過フィルタ96の出力中に残留した低周波f2 の成分と第2の低周波発振器87から出力する低周波信号との位相差は、動作点ドリフトの方向に応じて180 °異なる値となる。したがって、第2の低域通過フィルタ99の出力には、周波数f2 成分と第2の低周波発振器87が出力する低周波信号との位相差に応じた信号が得られる。
【0083】
このような動作点ドリフトに応じた信号が入力する差動アンプ100 は、加算回路86に入力する電圧を制御してMZ変調器82に入力するバイアス電圧を制御し、動作点ドリフトを補償したMZ変調器82の最適の動作点を保持する。
【0084】
なお、加算器86に第3の乗算器88の乗算出力信号を加える理由は、次の通りである。
【0085】
第1の乗算器95の一方の入力信号は帯域増幅器93で選択されたf1 −f2 からf1 までの周波数帯域の低周波信号であり、その周波数finは(f1 、f1 −f2 )であり、第1の乗算器95の他方の入力信号の周波数はf1 である。これにより、第1の乗算器95の乗算出力信号の周波数fout1は、f1 −finおよびf1 +finになる。
【0086】
ここで、f1 −finは、
f1 −f1 =0 …(1)
f1 −(f1 −f2 )=f2 …(2)
であり、f1 +finは、
f1 +f1 =2f1 …(3)
f1 +(f1 −f2 )=2f1 −f2 …(4)
である。この第1の乗算器95の乗算出力信号が第1の低域通過フィルタ96を経ることにより直流電圧と周波数f2 の低周波信号成分しか残らなくなる。
【0087】
上記したような動作を得るためには、第1の乗算器95の一方の入力信号の周波数finは帯域増幅器93で選択されたf1 −f2 からf1 までの周波数帯域の低周波信号(f1 、f1 −f2 )にしなければならない。そうするために、第3の乗算器88の乗算出力信号(周波数fout3はf1 −f2 およびf1 +f2 )を加算器86に加え、MZ変調器82から出力される光信号の低周波信号の周波数成分(f1 、f1 −f2 、f1 +f2 )のうちのf1 −f2 からf1 までの周波数帯域の低周波信号を帯域増幅器93で選択している。
【0088】
<第3の実施形態>
図10は、本発明の第3の実施形態に係る光ファイバー通信用の光送信装置を示すブロック図である。
【0089】
図10において、光源である半導体レーザ10からの出射光は外部変調器であるMZ型変調器11に入力される。一方、入力信号は、制御入力に応じて出力電圧の振幅Vppを変化させることが可能な出力可変アンプ101 によって増幅され、この出力可変アンプ101 の出力電圧に応じて前記半導体レーザ10からの出力光をMZ型変調器11で変調する。
【0090】
MZ型変調器11の出力光は、光分岐器12により二分岐され、一方は光信号として出力され、もう一方は光信号モニタ用のフォトダイオード13に入力される。このフォトダイオード13は、入力した光信号を光パワーに比例した電流に変換する。電流/電圧変換アンプ14は、フォトダイオード13の出力電流を電圧に変換して光出力モニタ電圧Vavを出力する。フォトダイオード13と電流/電圧変換アンプ14は、MZ型変調器11の光出力パワーの時間平均値Pavを検出するものであり、往々にして高価となる高速な応答特性は必要としない。
【0091】
上記電流/電圧変換アンプ14の出力電圧Vavは、制御部102 に送出される。この制御部102 は、本実施例においては、MCU(マイクロコントロールユニット)16とA/Dコンバータ15、D/Aコンバータ17,18 で構成され、入力された電圧値VavをA/Dコンバータ15でデジタル信号に変換した後、例えばMCUが内蔵するメモリ領域に記憶する。
【0092】
また、制御部102 は、出力可変アンプ101 の出力振幅を制御するためのVpp制御信号を生成し、D/Aコンバータ18によりアナログ信号に変換して出力可変アンプ101 に送出する。さらに、制御部102 は、Vavに基づいてバイアス制御信号を生成し、D/Aコンバータ17によりアナログ信号に変換して差動アンプ19に送出する。上記バイアス制御信号は、差動アンプ19により増幅され、バイアス回路20を介してMZ型変調器11の直流バイアス電圧Vb として印加される。
【0093】
図11は、図10に示したMZ型変調器11の駆動電圧の振幅を変動させた場合の入力信号とその出力光信号の関係を示す特性図である。
【0094】
図12は、図10に示したMZ型変調器11の直流バイアス電圧Vb と平均パワー出力の差ΔPavの関係を示す特性図である。
【0095】
以下、図10に示したMZ型変調器11の制御方法の動作原理について、図11および図12を参照して説明する。
【0096】
図11中、AおよびA´は、出力可変アンプ101 の出力振幅VppがVπに等しい場合の駆動電圧波形および出力光信号波形を示している。また、BおよびB´は、出力可変アンプ101 の出力振幅VppをVπより微小量ΔV(ΔV>0)だけ大きくした場合の入力電圧波形および出力光信号波形を示している。
【0097】
また、MZ型変調器11の駆動電圧の振幅VppがVπの時の出力光信号パワーの時間平均値をPav1とし、VppをVπ+ΔVとした時の出力光信号パワーの時間平均値をPav2とし、その差(Pav2−Pav1)をΔPavとして示している。
【0098】
図12において、平均パワーの差ΔPav=0になるバイアス電圧Vboptは、MZ型変調器11の光透過特性と入力信号が光変調器の入力として最適な関係にある場合のバイアス値であり、前記QUAD電圧Vquadに一致する。
【0099】
MZ型変調器11のDCドリフトによって、図1に示したようにMZ型変調器11の光透過特性が初期の最適な状態から左方向(負方向)にずれ、Vb がVquadに対して正側に位置してしまった場合は、ΔPav<0になる。上記とは逆に、MZ型変調器11の光透過特性が初期の最適な状態から右方向(正方向)にずれ、VbがVquadに対して負側に位置してしまった場合は、ΔPav>0になる。
【0100】
従って、Vppを変化させる前後での平均パワーの差ΔPavを検出し、その値が零となるようにバイアス電圧Vb を制御すれば、Vb を最適バイアス電圧であるVquadに一致させることが可能になる。
【0101】
図13は、図10に示した光変調器制御装置における制御手段による制御手順の一例を示すフローチャートである。この制御は、本発明に係る記録媒体に記録された制御プログラムを例えばマイクロコントロールユニットに書き込み、この制御プログラムによってマイクロコントロールユニットを実行させることによって実現される。
【0102】
次に、図10乃至図13を参照しながら、制御手順の一例を説明する。
【0103】
(1)第1のステップS501において、Vb を0Vに初期設定する。
【0104】
(2)第2のステップS502において、ΔV、Vπ、ΔVb など制御に必要な定数を外部メモリから読み込む。
【0105】
(3)第3のステップS503において、出力可変アンプ101 の出力振幅VppをVπに設定する。
【0106】
(4)第4のステップS504において、光出力パワーの時間平均値(実際は電圧値Vav)を参照し、Pav1としてMCU16に内蔵されるメモリ領域等に格納する。
【0107】
(5)第5のステップS505において、出力可変アンプ101 の出力振幅VppをVπ+ΔVに設定する。
【0108】
(6)第6のステップS506において、光出力パワーの時間平均値(実際は電圧値Vav)を参照し、Pav2としてMCU16に内蔵されるメモリ領域等に格納する。
【0109】
(7)第7のステップS507において、ΔPav=Pav2−Pav1の値を計算し、その値(条件)によって分岐する。
【0110】
(8―1)ΔPavが許容誤差ε(正値)よりも大きい時には、Vb を増加させ、Vb +ΔVb ×ΔPavに設定する(第8のステップS508)。ここで、ΔVb >0である。即ち、ΔPavが大きいほどVb を大きく増加させる。
【0111】
(8−2)ΔPavが許容誤差−εよりも小さい時には、Vb を減少させ、Vb −ΔVb ×ΔPavに設定する(第8のステップS509)。即ち、ΔPavが大きいほどVb を大きく減少させる。
【0112】
(8−3)ΔPavがε以下、−ε以上の時には、Vb が最適動作点にあるとみなし、バイアス電圧の値は変更せずに(第8のステップS510)、制御をT1 秒間待機(Wait)する(第9のステップS511)。
【0113】
(9)第3のステップS503に戻り、(3)〜(8)の制御を繰り返し行う。
【0114】
以上述べた制御手順により、周囲温度変化や経時変化によってMZ型変調器11の光透過特性が変化しても、常に最適な動作を維持することができる。
【0115】
即ち、上記した第3の実施形態の光変調器制御装置およびそれを用いた光送信装置ならびに光変調器の制御方法によれば、二値のデジタル信号である入力信号に応じた駆動電圧とともに直流バイアス電圧をMZ型光変調器11に与えることによって入力光を駆動電圧に応じて変調して入力信号を光信号に変換し、入力信号の振幅を二値的に変化させる前後での光変調器の光信号出力平均パワーの差に基づいて直流バイアス電圧を制御することを特徴とするものである。
【0116】
これにより、MZ型光変調器11に印加される直流バイアス電圧、環境温度、経時変化などによるMZ型変調器11の動作点ドリフトに応じて、MZ型変調器11の動作点ドリフトを補償して最適の動作点で動作できるように制御し、動作点ドリフトに伴う出力光信号の消光比の劣化を防止することができる。
【0117】
この場合、出力可変アンプ101 は、例えば駆動電流の大きさを少し変化させるだけで出力信号の振幅を二値的に変化させることが可能であり、従来例のように正弦波で入力信号を振幅変調するためのダイナミックレンジの広い高価な可変利得アンプを必要とせず、簡易化、小型化が容易になる。しかも、同期検波を行わないので、この点でも回路構成が簡単になり、部品点数が少なくなり、小型化が容易になる。
【0118】
また、第1の実施形態および第2の実施形態と同様に、MZ型光変調器11の駆動電圧V0 、V1 の差がVπに等しいか否かに拘らず、MZ型光変調器11の動作点ドリフトを補償することができる。
【0119】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、入力信号変調用のダイナミックレンジの広い高価な可変利得アンプを必要としない簡易な構成により、MZ型光変調器の入力信号の振幅に拘らず、周囲温度や経時変化などによるMZ型光変調器の動作点ドリフトに対応して最適の動作点を保持するように補償し、MZ型光変調器から安定な光信号を出力し、出力消光比の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】MZ型変調器の入力電気信号と出力光信号の関係(光透過特性)の一例を示す図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る光ファイバー通信用の光変調器制御装置を用いた光送信装置を示すブロック図。
【図3】図2の具体的な構成例を示す図。
【図4】図2中のMZ変調器から出力される光信号の平均パワーのバイアス電圧依存性を示す図。
【図5】図2中の低周波信号検出手段および制御手段の動作を説明するために光出力から取り出される低周波信号の周波数成分を示す図。
【図6】図3中の回路の動作を説明するために低周波信号と乗算した結果の直流電圧を示す図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る光ファイバー通信用の光送信装置を示すブロック図。
【図8】図7の具体的な構成例を示す図。
【図9】図8中の回路の動作を説明するために第1の低周波信号検出手段により検出された直流電圧と一緒に残った第2の低周波信号の周波数成分を示す図。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る光ファイバー通信用の光送信装置を示すブロック図。
【図11】図10に示したMZ型変調器の制御方法の動作原理を説明するためにMZ型変調器の駆動電圧の振幅を変動させた場合の入力信号と出力光信号との関係を示す特性図。
【図12】図10に示したMZ型変調器の制御方法の動作原理を説明するためにMZ型変調器の直流バイアス電圧と平均パワー出力の差の関係を示す特性図。
【図13】図10の光変調器制御装置の制御手段による制御手順の一例を示すフローチャート。
【図14】MZ変調器のDCドリフトを補償して安定に動作させる従来の制御方式の一例を示すブロック図。
【符号の説明】
31…半導体レーザ(光源)、
32…MZ型変調器(マッハツェンダ型光変調器)、
33…駆動アンプ(駆動回路の一部)、
34…コンデンサ(駆動回路の一部)、
35…低周波発振器、
36…加算器、
37…バイアスティ、
38…終端抵抗、
39…光分岐回路、
40…モニター用のフォトダイオード(低周波信号検出手段の一部)、
41…帯域増幅器(低周波信号検出手段の一部)、
42…コンデンサ(低周波信号検出手段の一部)、
43…乗算器(低周波信号検出手段の一部)、
44…低域通過フィルタ(低周波信号検出手段の一部)、
45…ピーク位置検出回路(制御手段の一部、例えばMCU)、
46…差動アンプ(制御手段の一部)。
Claims (14)
- 二値のデジタル信号である入力信号に応じた駆動電圧を発生する駆動回路と、
前記入力信号よりも周波数が十分に低い低周波信号を発生する低周波発振器と、
前記低周波信号を重畳した直流バイアス電圧および前記駆動電圧が与えられ、前記駆動電圧に応じて入力光を変調し、前記入力信号を光信号に変換するマッハツェンダ型光変調器と、
前記マッハツェンダ型光変調器から出力される光信号を前記入力信号の高周波成分のみを平均化した電気信号に変換し、前記平均化した電気信号から前記低周波信号の周波数成分を取り出すとともに前記低周波発振器から出力する低周波信号と乗算し、乗算出力信号の直流成分を取り出す低周波信号検出手段と、
前記低周波信号検出手段で取り出された直流成分が最大になるように前記直流バイアス電圧を制御する制御手段
とを具備することを特徴とする光変調器制御装置。 - 前記制御手段はマイクロコントロールユニットが用いられることを特徴とする請求項1記載の光変調器制御装置。
- 前記低周波発振器および前記低周波信号検出手段の一部にマイクロコントロールユニットが用いられることを特徴とする請求項2記載の光変調器制御装置。
- 二値のデジタル信号である入力信号に応じた駆動電圧を発生する駆動回路と、
前記入力信号よりも周波数が十分に低い第1の低周波信号および第2の低周波信号をそれぞれ発生する第1の低周波発振器および第2の低周波発振器と、
前記第1の低周波信号および第2の低周波信号を重畳した直流バイアス電圧および前記駆動電圧が与えられ、前記駆動電圧に応じて入力光を変調し、前記入力信号を光信号に変換するマッハツェンダ型光変調器と、
前記マッハツェンダ型光変調器から出力される光信号を前記入力信号の高周波成分のみを平均化した電気信号に変換し、前記平均化した電気信号から前記第1の低周波信号および第2の低周波信号の周波数成分を取り出し、前記第1の低周波発振器から出力する第1の低周波信号と乗算し、乗算出力信号の直流成分および前記第2の低周波信号の周波数成分を取り出す第1の低周波信号検出手段と、
前記第1の低周波信号検出手段から出力される電気信号に含まれる前記第2の低周波信号の周波数成分を検出し、前記第2の低周波発振器から出力する第2の低周波信号の位相と比較して前記マッハツェンダ型光変調器の動作点ドリフト方向を検出する第2の低周波信号検出手段と、
前記第2の低周波信号検出手段により検出されたマッハツェンダ型光変調器の動作点ドリフト方向に応じて前記マッハツェンダ型光変調器の動作点をドリフト方向と同方向に制御し、動作点ドリフトを補償するように前記直流バイアス電圧を制御する制御手段
とを具備することを特徴とする光変調器制御装置。 - 前記制御手段はマイクロコントロールユニットが用いられることを特徴とする請求項4記載の光変調器制御装置。
- 前記第1の低周波発振器および第2の低周波発振器の少なくとも一方と前記第1の低周波信号検出手段および第2の低周波信号検出手段の少なくとも一方の一部がマイクロコントロールユニットであることを特徴とする請求項5記載の光変調器制御装置。
- 二値のデジタル信号である入力信号に応じた駆動電圧を発生する出力可変駆動回路と、
前記駆動電圧および直流バイアス電圧が与えられ、前記駆動電圧に応じて入力光を変調し、前記入力信号を光信号に変換するマッハツェンダ型光変調器と、
前記マッハツェンダ型光変調器から出力される光信号の時間平均を表わす平均光出力レベルを検出する光検出手段と、
前記出力可変駆動回路の出力振幅を入力信号よりも十分に低い周波数で二値的に変化させるための制御信号を生成する機能を含み、前記入力信号の振幅を二値的に変化させる前後で前記光検出手段により検出された平均光出力レベルの差を検出し、この検出結果に基づいて前記直流バイアス電圧を制御する制御手段
とを具備することを特徴とする光変調器制御装置。 - 前記制御手段はマイクロコントロールユニットが用いられることを特徴とする請求項7記載の光変調器制御装置。
- 前記制御手段は、
前記直流バイアス電圧Vb を0Vに初期設定する第1の制御手段と、
制御に必要な定数を外部メモリから読み込む第2の制御手段と、
前記出力可変駆動回路の出力振幅VppをVπに設定する第3の制御手段と、
第3の制御手段による制御後の光出力パワーの時間平均値を参照し、第1の平均光出力パワーPav1としてマイクロコントロールユニットに内蔵されるメモリ領域等に格納する第4の制御手段と、
前記出力可変駆動回路の出力振幅VppをVπ+ΔVに設定する第5の制御手段と、
第5の制御手段による制御後の光出力パワーの時間平均値を参照し、第2の平均光出力パワーPav2としてマイクロコントロールユニットに内蔵されるメモリ領域等に格納する第6の制御手段と、
前記2つの平均光出力パワーの差ΔPav(=Pav2−Pav1)の値を計算し、その値によって条件分岐する第7の制御手段と、
前記ΔPavが許容誤差ε(正値)よりも大きい時には、Vb を増加させ、Vb+ΔVb (ΔVb >0)に設定するように制御し、前記ΔPavが許容誤差−εよりも小さい時には、Vb を減少させ、Vb −ΔVb に設定するように制御し、前記ΔPavがε以下、−ε以上の時には、Vb が最適動作点にあるとみなし、バイアス電圧Vb の値は変更せずに、制御を所定時間待機する第8の制御手段と、
前記第8の制御手段による制御の後に前記第3の制御手段による制御から第8の制御手段による制御を繰り返し行う手段
とを具備することを特徴とする請求項8記載の光変調器制御装置。 - 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光変調器制御装置と、
前記マッハツェンダ型光変調器の入力光を出射する光源と、
前記マッハツェンダ型光変調器から出力される光信号を光通信ファイバーに送信する手段
とを具備することを特徴とする光送信装置。 - 二値のデジタル信号である入力信号に応じた駆動電圧とともに入力信号よりも周波数が十分に低い低周波信号を重畳した直流バイアス電圧をマッハツェンダ型光変調器に与えることによって入力光を駆動電圧に応じて変調して入力信号を光信号に変換する第1のステップと、
前記マッハツェンダ型光変調器から出力される光信号を入力信号の高周波成分のみを平均化した電気信号に変換し、平均化した電気信号から低周波信号の周波数成分を取り出すとともに前記直流バイアス電圧に重畳した低周波信号と乗算してその直流成分を取り出す第2のステップと、
前記第2のステップにより取り出された直流成分が最大になるように前記直流バイアス電圧を制御する第3のステップ
とを具備することを特徴とする光変調器の制御方法。 - 二値のデジタル信号である入力信号に応じた駆動電圧とともに入力信号よりも周波数が十分に低い第1の低周波信号および第2の低周波信号を重畳した直流バイアス電圧をマッハツェンダ型光変調器に与えることによって入力光を駆動電圧に応じて変調して入力信号を光信号に変換する第1のステップと、
前記マッハツェンダ型光変調器から出力される光信号を入力信号の高周波成分のみを平均化した電気信号に変換し、平均化した電気信号から第1の低周波信号および第2の低周波信号の周波数成分を取り出し、前記直流バイアス電圧に重畳した第1の低周波信号と乗算してその直流成分および第2の低周波信号の周波数成分を取り出す第2のステップと、
前記第2のステップにより取り出された第2の低周波信号の周波数成分を検出し、前記直流バイアス電圧に重畳した第2の低周波信号と乗算してその直流成分を取り出し、この直流成分の極性から前記マッハツェンダ型光変調器の動作点ドリフト方向を検出する第3のステップと、
前記第3のステップにより検出された前記マッハツェンダ型光変調器の動作点ドリフト方向に応じて前記マッハツェンダ型光変調器の動作点をドリフト方向と同方向に制御し、動作点ドリフトを補償するように前記直流バイアス電圧を制御する第4のステップ
とを具備することを特徴とする光変調器の制御方法。 - 二値のデジタル信号である入力信号に応じた駆動電圧とともに直流バイアス電圧をマッハツェンダ型光変調器に与えることによって入力光を駆動電圧に応じて変調して入力信号を光信号に変換する第1のステップと、
前記マッハツェンダ型光変調器から出力される光信号の時間平均を表わす平均光出力パワーを検出する第2のステップと、
前記入力信号の振幅を入力信号よりも十分に低い周波数で二値的に変化させるための制御信号を生成する機能を含み、前記入力信号の振幅を二値的に変化させる前後で前記第2のステップにより検出された平均光出力パワーの差を検出し、この検出結果に基づいて前記直流バイアス電圧を制御する第3のステップ
とを具備することを特徴とする光変調器の制御方法。 - マイクロコントロールユニットに対して、
入力信号により駆動されるマッハツェンダ型光変調器から出力される光信号の時間平均を表わす平均光出力レベルを検出させる機能と、
前記入力信号の振幅を入力信号よりも十分に低い周波数で二値的に変化させるための制御信号を生成させる機能と、
前記入力信号の振幅を二値的に変化させる前後で前記検出された平均光出力レベルの差を検出させ、この検出結果に基づいて前記マッハツェンダ型光変調器の直流バイアス電圧を制御させる機能
を実現させるためのプログラムを記録したことを特徴とする光変調器の制御プログラム記録媒体。
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