JP3749092B2 - 冷媒封入方法および空気調和機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、冷媒として非共沸混合冷媒を用いる空気調和機、及び空気調和機における冷媒封入方法に関し、特に、室外ユニットと室内ユニットとを接続する配管が長い場合に冷媒回路内を循環する低沸点成分組成を変化させ、性能低下を抑制することができる空気調和機、及び空気調和機における冷媒封入方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、一般に、ビルなどの建物に設置される個別分散型空調機であるビル用マルチエアコンでは、大型ビルなどに設置される場合、室外ユニットと室内ユニットとを接続する配管が長くなり、特に冷房運転の場合に、室内ユニット出口から室外ユニット入口に至る配管での圧力損失が大きくなり、圧縮機の吸入圧力が低下して性能低下が生じるという問題があった。
【0003】
この配管が長い場合における性能低下を抑制する空気調和機として、たとえば特開平10−160267号公報に記載されたものがある。この空気調和機における冷凍サイクルは、凝縮器により熱交換された液冷媒を貯留して高沸点成分に富む冷媒を分岐する冷媒量調節器と、分岐された高沸点成分に富む冷媒と他方の主冷凍サイクルの冷媒とを熱交換させる過冷却器とを備えている。ここで、冷媒量調節器が余剰冷媒を貯留することによって、室内外ユニットを接続する配管の長さに関わらず、冷凍サイクル内の冷媒量を調整することができるとともに、主冷凍サイクルには、低沸点成分に富む冷媒が流れ、過冷却器によって熱交換されることによって能力が向上し、室内外ユニットを接続する配管が長くなっても圧力損失による能力低下が小さい空気調和機を提供することができるというものである。
【0004】
さらに詳述すると、図9は、従来の空気調和機の構成を示す図である。図9において、この空気調和機は、圧縮機100、凝縮器101、減圧装置106、蒸発器104が順次接続された冷凍サイクルを構成し、凝縮圧力調整弁107、冷媒量調節器102および過冷却器103を有し、非共沸混合冷媒(例えばR407C;R32/R125/R134a=23/25/52重量%)が用いられる。
【0005】
図9において、凝縮圧力調整弁107は、凝縮器101出口および圧縮機100出口にそれぞれ接続された配管上に設置され、冷媒量調節器102は、凝縮圧力調整弁107の下流側に接続される。過冷却器103は、冷媒量調節器102の下部出口aおよび上部出口bにそれぞれ接続される。また、冷媒量調節器102の下部出口aと過冷却器103との間には、減圧装置105が設けられる。
【0006】
冷媒量調節器102の下部出口aから分岐された液冷媒は、減圧装置105によって膨張され、低圧低温になった後、過冷却器103に送られる。一方、冷媒量調節器102の上部出口bから流出した主冷凍サイクルの気液混合冷媒は、低圧低温になった液冷媒によって過冷却器103内で過冷却され、さらに主減圧装置106および蒸発器104を介して圧縮機100に戻る。
【0007】
冷媒量調節器102内において、冷媒は、下部の液部分と上部のガス部分とに分離しており、液部分には混合冷媒の高沸点成分に富む冷媒が、他の成分冷媒に比して凝縮しやすいために、多く含まれている。冷媒量調節器102の下部出口aから液冷媒として分岐された冷媒は、過冷却器103において主冷凍サイクルの気液混合冷媒と熱交換を行った後、圧縮機100側まで接続されたバイパス管cを通って圧縮機100に戻る。
【0008】
ここで、バイパス管cを含む分岐回路側には、R134aの組成が高い液冷媒が送られ、主冷媒回路側は、逆にR32の組成が高い冷媒が送られ、過冷却器103において互いに熱交換を行うことになる。この結果、主冷媒回路側の冷媒は、過冷却器103によって過冷却され、減圧装置106によって膨張した後、蒸発器104において蒸発し、低圧蒸気配管を通過して室外ユニットに戻る。また、分岐回路側の冷媒は、減圧装置105によって減圧され、過冷却器103内で蒸発して高乾き度状態となり、再び主冷媒回路の冷媒と混合される。
【0009】
これによって、蒸発器104には、性能の高いR32成分に富む冷媒が送られるので、標準組成のR407C時に比べ、蒸発器104側の冷却能力が増大する。また、低圧蒸気配管内では、密度の大きなR32成分に富む冷媒の圧力損失が小さく、室内外ユニットを接続する配管が長距離となっても、能力低下を小さくすることができる。
【0010】
このようにして、従来の空気調和機では、非共沸混合冷媒を用いる冷凍サイクルにおいて、主冷凍サイクルに効率の高い低沸点成分に富む冷媒が流れ、高沸点成分に富む冷媒で過冷却器によって熱交換されるため、蒸発器側の能力が増加し、室内外ユニットを接続する配管が長距離となっても、圧力損失による能力低下を小さくすることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の空気調和機では、低沸点成分と高沸点成分との分離を、高圧側に設けられた冷媒量調整器102を用いて行っているため、一段の蒸留操作に対応した成分変化しか期待できないことに加え、冷媒量調整器102が高圧側に設置されことから、可変できる低沸点成分組成の変化幅が小さくなるという問題点があった。
【0012】
また、冷媒量調整器102によって低沸点成分組成を変化させるため、冷凍サイクルの運転中以外のときに低沸点成分組成を変化させることができないという問題点があった。
【0013】
さらに、冷媒量調節器102内の冷媒は、余剰冷媒となるため、冷媒回路内に必要以上の冷媒を充填しなければならないという問題点があった。
【0014】
また、冷媒回路内に組成検知回路が設けられていないため、低沸点成分組成をあらかじめ設定された目標値に確実に近づけることが困難であるという問題点があった。
【0015】
この発明は上記に鑑みてなされたもので、配管の長さに応じて冷媒回路内を循環する低沸点成分組成を調整し、配管が長い場合における性能低下を抑制することができる冷媒封入方法および空気調和機を得ることを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明にかかる冷媒封入方法は、少なくとも圧縮機および室外熱交換器を有した室外ユニットと、少なくとも室内熱交換器を有した室内ユニットとを配管によって接続し、冷媒として非共沸混合冷媒を用いる冷媒回路を形成した空気調和機における冷媒封入方法において、前記配管の長さに対応し、前記冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分組成を増加させる冷媒封入量を決定する決定工程と、前記決定工程によって決定された冷媒封入量を前記冷媒回路に封入する封入工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、決定工程が、前記配管の長さに対応し、前記冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分組成を増加させる冷媒封入量を決定し、封入工程が、前記決定工程によって決定された冷媒封入量を前記冷媒回路に封入するようにしている。
【0018】
つぎの発明にかかる冷媒封入方法は、上記の発明において、前記決定工程は、前記配管の長さと予め設定された低沸点成分組成の目標値との関係をもとに該低沸点成分組成の目標値を算出する目標値算出工程と、前記目標値に一致する低沸点成分組成をもつ冷媒封入量を決定する冷媒封入量決定工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、前記決定工程が、目標値算出工程によって、前記配管の長さと予め設定された低沸点成分組成の目標値との関係をもとに該低沸点成分組成の目標値を算出し、冷媒封入量決定工程によって、前記目標値に一致する低沸点成分組成をもつ冷媒封入量を決定するようにしている。
【0020】
つぎの発明にかかる冷媒封入方法は、上記の発明において、前記封入工程は、前記冷媒回路を循環する低沸点成分組成を検知する検知工程と、前記冷媒封入量の低沸点成分組成を前記目標値に調整する組成調整工程とを含むことを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、前記封入工程が、検知工程によって、前記冷媒回路を循環する低沸点成分組成を検知し、組成調整工程が、前記冷媒封入量の低沸点成分組成を前記目標値に調整するようにしている。
【0022】
つぎの発明にかかる空気調和機は、少なくとも圧縮機および室外熱交換器を有した室外ユニットと、少なくとも室内熱交換器を有した室内ユニットとを配管によって接続し、冷媒として非共沸混合冷媒を用いる冷媒回路を形成した空気調和機において、前記冷媒回路の低圧側に設けられ、該冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分と高沸点成分とを分離して該低沸点成分の組成を調整する組成調整手段を備え、前記配管の長さに対応し、前記冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分組成を増加させて前記冷媒回路に封入したことを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、組成調整手段が、前記冷媒回路の低圧側に設けられ、該冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分と高沸点成分とを分離して該低沸点成分の組成を調整し、かつ、前記配管の長さに対応し、前記冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分組成を増加させて前記冷媒回路に封入するようにしている。
【0024】
つぎの発明にかかる空気調和機は、上記の発明において、前記組成調整手段は、アキュムレータであることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、前記組成調整手段として、アキュムレータを用いるようにしている。
【0026】
つぎの発明にかかる空気調和機は、少なくとも圧縮機および室外熱交換器を有した室外ユニットと、少なくとも室内熱交換器を有した室内ユニットとを配管によって接続し、冷媒として非共沸混合冷媒を用いる冷媒回路を形成した空気調和機において、気液接触面積が大きい充填材を用いて気液分離による蒸留処理を行う充填塔を用い、前記冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分と高沸点成分とを分離して該低沸点成分の組成を調整する組成調整手段を備え、前記配管の長さに対応して前記組成調整手段による前記低沸点成分の組成目標値を変化させる制御を行う組成調整制御手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、組成調整手段が、気液接触面積が大きい充填材を用いて気液分離による蒸留処理を行う充填塔を用い、前記冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分と高沸点成分とを分離して該低沸点成分の組成を調整し、かつ、前記配管の長さに対応し、前記冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分組成を増加させて前記冷媒回路に封入するようにしている。
【0030】
つぎの発明にかかる空気調和機は、上記の発明において、前記冷媒回路を循環する低沸点成分組成を検知する検知手段をさらに備え、前記組成調整制御手段は、前記検知手段による検知結果をもとに、前記低沸点成分の組成を前記配管の長さに応じた所定値に制御することを特徴とする。
【0031】
この発明によれば、検知手段が、前記冷媒回路を循環する低沸点成分組成を検知し、組成調整制御手段が、前記検知手段による検知結果をもとに、前記低沸点成分の組成を前記配管の長さに応じた所定値に制御するようにしている。
【0032】
つぎの発明にかかる空気調和機は、上記の発明において、前記組成調整手段は、着脱自在であることを特徴とする。
【0033】
この発明によれば、前記組成調整手段を、着脱自在としている。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる冷媒封入方法および空気調和機の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0035】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1である空気調和機の構成を示す図である。図1において、この空気調和機は、室外ユニット1、室内ユニット2、室外ユニット1と室内ユニット2とを接続する配管である蒸気配管3および液配管4とを有する。また、冷媒回路内には、冷媒として非共沸混合冷媒(たとえば、R407C;R32/R125/R134a=23/25/52重量%)が充填される。ここで、R407Cの構成成分のうち、R32およびR125が低沸点成分であり、R134aが高沸点成分である。
【0036】
室外ユニット1内には、冷媒ガスを圧縮する圧縮機10、冷房運転と暖房運転との冷媒流路切換え装置である四方弁11、室外熱交換器12、外気を強制的に室外熱交換器12の外表面に送風する図示しない送風機、冷房運転時に室外熱交換器12から流出した冷媒液を過冷却する過冷却器13、過冷却液の一部を減圧して二相状態の湿り蒸気にする減圧装置14、冷媒の過充填時などに圧縮機10への液戻りを防止するアキュムレータ15、およびこれらを接続するための配管が内蔵されている。また、室外ユニット1内の各部を制御する制御部C1を有する。制御部C1は、組成調整制御部CCを有し、組成調整制御部CCは、後述する低沸点成分組成の調整制御を行う。
【0037】
四方弁11の第1口11aは、圧縮機10の吐出側に接続され、四方弁11の第2口11bは、室外熱交換器12の一端に接続され、四方弁11の第3口11cは、アキュムレータ15を介して圧縮機10の吸入側に接続され、四方弁11の第4口11dは、室内ユニット2に接続される蒸気配管3に接続される。また、室外ユニット1は、蒸気側接続口1Aおよび液側接続口1Bによって蒸気配管3および液配管4を介して室内ユニット2に接続される。
【0038】
また、室内ユニット2には、高温高圧の冷媒液を減圧して二相状態の湿り蒸気にする絞り装置21、室内熱交換器20、室内空気を強制的に室内熱交換器20の外表面に送風する図示しない送風機、およびこれらを接続する配管が内蔵されている。さらに、室内熱交換器20の蒸気側には、第1の温度検出器61が、液側には、第2の温度検出器62が設けられている。室内熱交換器20の一端は、減圧装置21を介して液配管4に接続され、他端は蒸気配管3に接続される。また、室内ユニット2内の各部を制御する制御部C2を有し、制御部C1に接続される。なお、この実施の形態1では、室内ユニット2を1台としているが、1台の室外ユニット1に対して複数台の室内ユニット2が設置される構成としてもよい。
【0039】
ここで、まずこの空気調和機が冷房運転を行う場合について説明する。この場合、実線で示すように、室外ユニット1内部の四方弁11は、第1口11aと第2口11bとが連通し、第3口11cと第4口11dとが連通するように設定される。なお、減圧装置14,21の開度設定については後述する。
【0040】
圧縮機10から吐出された高温高圧の蒸気冷媒は、室外熱交換器12によって凝縮液化され、過冷却器13に流入する。過冷却器13に流入した液冷媒は、後述する低圧低温の二相冷媒に放熱して、自ら過冷却液となり、液側接続口1Bおよび液配管4を介して室内ユニット2に流入する。一方、過冷却器13から流出した液冷媒の一部は、減圧装置14で減圧されて低圧低温の二相冷媒となり、過冷却器13によって、室外熱交換器12を出た液冷媒から吸熱し、自ら蒸発気化して配管30を介してアキュムレータ15の入口部に流入する。
【0041】
また、室内ユニット2に流入した液冷媒は、減圧装置21によって減圧されて低圧低温の二相冷媒になる。この二相冷媒は、室内熱交換器20によって、図示しない室内空気から吸熱し、自ら蒸発気化する。この低温低圧の蒸気冷媒は、蒸気配管3、蒸気側接続口1A、四方弁11の第4口11dから第3口11cを介して、過冷却器13を通過したガス冷媒と合流後、アキュムレータ15から圧縮機10の吸入側へ戻る。この時、図示しない室内送風機によって室内熱交換器20へ送り込まれた室内空気は、低温低圧の二相冷媒によって冷却されて室内へ吹き出され、室内を冷房する。
【0042】
ここで、減圧装置21の開度は、室内熱交換器20の蒸気側にある第1の温度検出器61の検出値T1と、液側にある第2の温度検出器62の検出値T2との差(T1−T2)とが、あらかじめ設定されている目標値SH1に近づくように制御される。目標値SH1は、室内熱交換器20内における冷媒の圧力損失に伴う温度降下と室内熱交換器20の蒸気側出口での目標とする冷媒状態によって決められる。たとえば、R407C、R417Aなどのフロン系非共沸混合冷媒などのように、ある圧力下での気液二相状態において、ガスの質量流量比率(乾き度)が大きくなるにつれて温度が上昇し、飽和液と飽和ガスとで温度差が数℃となる冷媒では、この飽和液から飽和ガスまでの温度上昇分Tgr[deg]を考慮に入れて、目標値SH1を決定する。たとえば、室内熱交換器20の入口から出口までの圧力損失に伴う温度降下が2[deg]、室内熱交換器20のガス側出口での冷媒の過熱度を3[deg]、飽和液から飽和ガスまでの温度上昇分Tgr=5[deg]とすると目標値SH1は、SH1=3−2+5=6[deg]となる。この減圧装置21の開度制御は、減圧装置14にも適用される。
【0043】
つぎに、この空気調和機の暖房運転時の動作について説明する。この場合、点線で示すように、室外ユニット1内部の四方弁11の第1口11aと第4口11dとが連通し、第2口11bと第3口11cとが連通するように設定され、減圧装置14は全閉に設定される。なお、減圧装置21の開度設定については、後述する。
【0044】
圧縮機10で圧縮され高温高圧となった冷媒は、四方弁11の第1口11a、第4口11d、蒸気側接続口1A、蒸気配管3を介して室内熱交換器20に流入する。ここで、高温高圧の冷媒は、図示しない室内空気に放熱して室内を暖房すると共に自ら凝縮液化する。この凝縮液化した中温高圧の液冷媒は、減圧装置21によって減圧され、低温低圧の気液二相冷媒になって液配管4および液側接続口1Bを介して室外熱交換器12に流入する。ここで、低温低圧の気液二相冷媒は、図示しない室外送風機によって送り込まれる外気から吸熱するとともに、自ら蒸発する。この低温低圧の蒸気冷媒は、四方弁11の第2口11b、第3口11c、およびアキュムレータ15を介して圧縮機10の吸入側に戻る。
【0045】
ここで、室内ユニット2内の減圧装置21の開度は、圧縮機10の吐出側配管中に設置された図示しない高圧圧力に対する飽和温度TC1と室内熱交換器20の液側出口に設置される第2の温度検出器62の検出値TL1との差、すなわち過冷却度(TC1−TL1)が、あらかじめ設定されている室内熱交換器20の出口過冷却度SCin1に近づくように制御される。なお、室内熱交換器20の出口過冷却度SCin1は、室内熱交換器20で十分な暖房能力が得られるように10〜15℃程度に設定されることが望ましい。
【0046】
つぎに、冷房運転時に冷媒回路内を循環する低沸点成分の組成を増加させる処理について説明する。この実施の形態1では、冷媒回路内を循環する低沸点成分を所望の組成まで増加させるために、低圧低温状態にあるアキュムレータ15を用いる。実際には、図1に示した空気調和機の設置時に、冷媒回路内に要求される必要冷媒量に比して多い冷媒を封入(過充填)し、冷房運転中にアキュムレータ15内に余剰冷媒を蓄積させ、その余剰冷媒率(アキュムレータ15に蓄積される余剰冷媒量を全冷媒封入量で除した値)が所定値になるように冷媒封入量を決定する。
【0047】
ここで、図2に示すフローチャートを参照して、冷媒封入量決定処理手順について説明する。まず、大型ビルなどの配管が長くなる建物に、図1に示した空気調和機を設置する場合、室外ユニット1と室内ユニット2との設置条件から決定される配管長のデータを入力する(ステップST1)。その後、この配管長に対応し、性能低下を許容値以下に抑えることができる低沸点成分(R32)の組成目標値を算出する(ステップST2)。
【0048】
この低沸点成分(R32)の組成目標値の算出は、たとえば、図3(a)に示すように、配管長が50m未満の場合、低沸点成分(R32)の組成目標値を封入組成と同一とし、50m以上の場合、低沸点成分(R32)の組成目標値を33重量%の一定値として決定する。また、図3(b)に示すように、低沸点成分(R32)の組成目標値を、配管長が50m未満の領域では23重量%、50m以上100m未満の領域では28重量%、100m以上の領域では33重量%とするように、段階的に組成目標値を変化させるようにしてもよい。さらに、図3(c)に示すように、低沸点成分(R32)の組成目標値を、配管長が50mを超える領域では、配管長が200m時における低沸点成分(R32)の組成が33重量%となるように直線的に変化させるようにしてもよい。なお、図3(a)〜図3(c)に示した、23重量%や28重量%などの組成目標値は、これに限定されるものではない。さらに、図3(c)に示す直線は、曲線としてもよく、あるいは関数的に任意の特性曲線としてもよい。
【0049】
低沸点成分(R32)の組成目標値が算出される(ステップST2)と、この組成目標値と余剰冷媒率との関係を用いて、必要とされる余剰冷媒率を算出する(ステップST3)。ここで、余剰冷媒率(アキュムレータ15に蓄積される余剰冷媒量を全冷媒封入量で除した値)と低沸点成分(R32)の組成との関係は、図4に示す関係をもつ。なお、図4に示した関係は、実験結果である。図4において、横軸は、低沸点成分(R32)の組成(重量%)を示し、縦軸は、余剰冷媒率を示している。図4に示すように、低沸点成分(R32)の組成の増加とともに、余剰冷媒率は、直線的に増加する。この関係をもとに、たとえば、低沸点成分(R32)の組成目標値が33重量%である場合、余剰冷媒率が「0.65」となる冷媒量を冷媒回路に封入すればよいことがわかる。
【0050】
ここで、低沸点成分(R32)の組成と余剰冷媒率の関係が、図4に示す関係を有することを、2成分系の非共沸混合冷媒であるR32/134aの気液平衡線図を用いて説明する。図5は、R32/134aの気液平衡線図を示す図である。図5において、横軸は、R32の重量組成割合を示し、縦軸は温度を示している。図5では、圧力の異なる2種類の線図ア,イを示し、それぞれ「a」が露点曲線、「b」が沸点曲線を示している。また、線図アは、圧力が2MPa(=20.4kg/cm2)時の気液平衡線図を示し、線図イは、圧力が0.5MPa(=5.1kg/cm2)時の気液平衡線図を示している。
【0051】
ここで、図1に示したアキュムレータ15は、低圧部に設置されるため、線図イを用いて説明する。たとえば、R32の重量組成割合が「0.3」の冷媒を冷凍サイクルに充填する場合(点線ウ)、図1に示すように、アキュムータ15内では、下部に高沸点成分(R134a)に富む液冷媒15bが蓄積され、上部には低沸点成分(R32)に富む蒸気冷媒15aが存在する気液平衡状態となる。このアキュムレータ15内の乾き度(全重量に対するガス重量の比率)を、たとえば「0.5」程度とすれば、この時高沸点成分に富む液冷媒の組成は「A」となり、低沸点成分に富む蒸気冷媒の組成は「D」となる。一方、図1に示すように、圧縮機10は、吸入配管15dの先端部15cからアキュムレータ15上部に存在する低沸点成分に富む蒸気冷媒を主に吸入するため、冷凍サイクル内を循環する低沸点成分(R32)の組成が増加する。
【0052】
また、余剰冷媒率も増加する。すなわち、アキュムレータ15内の余剰冷媒量が増加することは、アキュムレータ15内の乾き度が減少することに対応しており、図5の気液平衡線図イにおいて、「A」が「A'」に、「D」が「D'」に変化することに対応している。したがって、余剰冷媒率が増加すると、圧縮機10が吸入する低沸点成分に富む蒸気冷媒の組成が高くなり、冷媒回路を循環する低沸点成分組成が増大して、図4に示す線図が得られる。
【0053】
なお、図9に示した従来の空気調和機では、冷媒量調節器102が冷凍サイクルの高圧側に設置されており、このときの気液平衡線図は、曲線アのようになる。これに対し、この実施の形態1では、上述したように、低圧部で冷媒を貯留するため、気液平衡線図は、曲線イのようになる。たとえば、低沸点成分(R32)重量組成比率が「0.3」の冷媒を充填した場合(点線ウ)、同一乾き度に対して線図アでは液冷媒組成が「B」、蒸気冷媒組成が「C」であるのに対し、線図イでは液冷媒組成が「A'」、蒸気冷媒組成が「D'」となるため、高圧側で気液分離する従来の空気調和機に比して、組成変動幅を大きくすることができ、低沸点成分(R32)組成を増加させることができる。
【0054】
つぎに、余剰冷媒率が算出される(ステップST3)と、この余剰冷媒率から冷媒封入量を算出する(ステップST4)。一般に、室外ユニット1と室内ユニット2との配管長と、必要冷媒量との関係はあらかじめ把握されており、配管長に適した必要冷媒量が求められる。この必要冷媒量と余剰冷媒率とから、対象とする冷媒回路に封入されるべき冷媒封入量(必要冷媒量と、余剰冷媒率から求められる余剰冷媒量との合計)が算出される。
【0055】
その後、算出された冷媒封入量を冷凍サイクルに充填し(ステップST5)、これによって、所望の低沸点成分(R32)組成が得られ、配管が長い場合においても性能低下を抑制することができる。
【0056】
ところで、この実施の形態1では、冷媒を過充填することによって冷媒回路内を循環する低沸点成分組成を増加させるため、冷房運転時にはアキュムレータ内に常に余剰冷媒が蓄積される。そこで、たとえば、あらかじめアキュムレータ15の前後に開閉弁を備え、冷房運転時に低沸点成分組成が増加した状態でアキュムレータ15の前後の開閉弁を閉止し、アキュムレータ15内の余剰冷媒を、冷媒回路から切り離して他の用途に再利用する構成としてもよい。なお、暖房運転時には、一般に、室外熱交換器12に比べて内容積の小さい室内熱交換器20が凝縮器として、室外熱交換器12が蒸発器として動作するため、冷房運転時に比べて必要な冷媒量が少なくなり冷媒量不足などの現象を引き起こすことはない。
【0057】
また、この実施の形態1では、過冷却器13によって室外熱交換器12を通過した液冷媒を過冷却状態とするために、従来の空気調和機と同様に、冷房運転時の室内熱交換器20内のエンタルピー差を大きくすることができ、室内熱交換器20を流れる冷媒流量を低減することができるため、延長配管が長い場合の性能低下を抑制することができる。
【0058】
さらに、あらじめ冷媒回路内の低沸点成分(R32)組成を検知する循環組成検知回路が設置されている場合、冷媒回路の低沸点成分組成を検知し、この検知値が所望の循環組成となるまで冷媒回路内に冷媒を追加充填するようにしてもよい。
【0059】
この実施の形態1によれば、低圧状態にあるアキュムレータ15を用いて、冷媒回路内を循環する低沸点成分の組成を増加させるようにしたため、通常の冷媒回路構成と同様の構成で、配管が長い場合にも性能低下を抑制できる空気調和機を得ることができる。また、配管の長さと、圧損を減らす、予め設定された低沸点成分組成の目標値との関係を用いて、配管の長さに対する低沸点成分組成の目標値を演算し、冷媒回路を循環する低沸点成分組成が目標値と一致するように冷媒封入量を決定したため、配管の長さに応じて低沸点成分組成を変化させることができ、配管が長い場合にも性能低下を抑制できる。
【0060】
実施の形態2.
つぎに、この発明の実施の形態2について説明する。図6は、この発明の実施の形態2である空気調和機の構成を示す図である。図6において、この空気調和機は、実施の形態1と同様に、室外ユニット1、室内ユニット2、室外ユニット1と室内ユニット2とを接続する接続配管の蒸気配管3、および液配管4とにより構成されている。また、冷媒として、たとえばR407C(=R32/R125/R134a(23/25/52重量%))が充填される。
【0061】
室外ユニット1内には、実施の形態1で示した圧縮機10、四方弁11、室外熱交換器12、過冷却器13、減圧装置14、およびアキュムレータ15に加え、冷媒回路を循環する低沸点成分(R32)組成を所定の組成に調整する組成調整器である充填塔50、冷房運転時に室外熱交換器12を通過した気液二相冷媒を蒸気と液とに分離し、分離された液冷媒の一部を充填塔50の頂部に供給する気液分離器51、充填塔50の下部から高沸点成分に富む液冷媒を蓄積する液溜め容器52、充填塔50の頂部に供給される液冷媒の流量を制御する減圧装置53、充填塔50頂部から主冷媒回路へ戻す蒸気冷媒の流量を制御する減圧装置54、圧縮機10から吐出される蒸気冷媒の一部を用いて液溜め容器52内の液冷媒を加熱する加熱器16、加熱器16に供給する蒸気冷媒の流量を制御する減圧装置55、液溜め容器52内から主冷媒回路へ戻す液冷媒の流量を制御する減圧装置56が設けられる。なお、この実施の形態2では、蒸気または液の流量を制御する減圧装置53〜56として、外部から開度制御が可能な電子式膨張弁を使用する場合について説明する。
【0062】
充填塔50の内部には、マクマホンやラシヒリングなど充填塔50内での気液接触面積を増加させる充填材が収納されている。また、この充填材が充填される充填部は、その上部および下部を、たとえば、供給される液冷媒の均一分散が可能となるように、多孔板50a、50bによって固定され、上下方向に移動しない構造となっている。また、四方弁11の接続状態、室外ユニット1と室内ユニット2との接続状態、室内ユニット2の構成は、実施の形態1と同じである。
【0063】
上述したように、図6に示した空気調和機では、冷媒回路内を循環する低沸点成分(R32)組成を所望の組成まで増加させるために充填塔50を用いている。また、運転モードとして、通常冷房運転、組成調整冷房運転、および暖房運転の3つの運転モードを備えている。まず、通常冷房運転について説明する。この場合、電子式膨張弁53〜56を全閉とする。室外ユニット1内部の四方弁11の設定、減圧装置14,21の開度設定については実施の形態1と同じである。この場合、圧縮機10から吐出された高温高圧の蒸気冷媒は、室外熱交換器12で凝縮液化され、気液分離器51に流入する。気液分離器51を通過した二相冷媒は、過冷却器13に流入し、低圧低温の二相冷媒に放熱して、自ら過冷却液となり、液側接続口1Bおよび液配管4を介して室内ユニット2に流入する。また、過冷却器13から流出した液冷媒の一部は、減圧装置14で減圧されて低圧低温の二相冷媒となり、過冷却器13において、気液分離器51を通過した二相冷媒から吸熱し、自ら蒸発気化し、四方弁11とアキュムレータ15との間の配管に流入する。
【0064】
一方、室内ユニット2に流入した液冷媒は、減圧装置21で減圧されて低圧低温の二相冷媒となる。この二相冷媒は、室内熱交換器20で、図示しない室内送風機によって送り込まれた室内空気から吸熱し、自ら蒸発する。この低温低圧の蒸気冷媒は、蒸気配管3、蒸気側接続口1A、四方弁11の第4口11dから第3口11cを介して、過冷却器13を通過した蒸気冷媒と合流し、アキュムレータ15を通って圧縮機10の吸入側へ戻る。この時、図示しない室内送風機によって室内熱交換器20へ送り込まれた室内空気は、低温低圧の二相冷媒によって冷却されて室内へ吹き出され、室内を冷房する。
【0065】
つぎに、充填塔50を用いた組成調整冷房運転について説明する。この場合、電子式膨張弁53〜55は、それぞれ充填塔50内で適切な物質交換が行われる開度に設定され、電子式膨張弁56は全閉に設定される。室外ユニット1内部の四方弁11の設定、減圧装置14,21の開度設定は、通常冷房運転の場合と同じである。このとき、圧縮機10から吐出された高温高圧の蒸気冷媒は、室外熱交換器12で凝縮液化され、気液分離器51に流入する。気液分離器51で分離された液冷媒の一部は、電子式膨張弁53で減圧された後、充填塔50に上部から流入する。一方、主冷媒回路を循環する液冷媒は、気液分離器51で乾き度が増加して二相冷媒となり、過冷却器13に流入する。過冷却器13に流入した液冷媒は低圧低温の二相冷媒に放熱して自ら過冷却液となり、液側接続口1Bおよび液配管4を介して室内ユニット2に流入する。また、過冷却器13から流出した液冷媒の一部は、減圧装置14によって減圧されて低圧低温の二相冷媒となり、過冷却器13で室外熱交換器12を通過した液冷媒から吸熱し、自ら蒸発気化し、四方弁11とアキュムレータ15との間の配管に流入する。
【0066】
また、室内ユニット2に流入した液冷媒は、減圧装置21で減圧されて低圧低温の二相冷媒となる。この二相冷媒は、室内熱交換器20において、図示しない室内送風機によって送り込まれた室内空気から吸熱し、自ら蒸発する。この低温低圧の蒸気冷媒は、蒸気配管3および蒸気側接続口1Aを経た後、加熱器16により液溜め容器52内の液冷媒を加熱後に流入する液冷媒および充填塔50頂部から流入する蒸気冷媒と合流し、さらに、四方弁11の第4口11dから第3口11cを介して過冷却器13を通過したガス冷媒と合流した後、アキュムレータ15を通って圧縮機10の吸入側へ戻る。この時、図示しない室内送風機によって室内熱交換器20へ送り込まれた室内空気は、低温低圧の二相冷媒によって冷却されて室内へ吹き出され、室内を冷房する。
【0067】
ここで、充填塔50内における冷媒の流れについて説明する。気液分離器51で分離された液冷媒は、電子式膨張弁53で減圧された後、充填塔上部50dに流入する。この液冷媒は、充填塔50内を、重力によって下降し、液溜め容器52内において発生した充填塔下部50cから上昇する蒸気冷媒と熱および物質の交換を行い、自ら高沸点成分に富む冷媒液となって、充填塔下部50cに蓄積される。充填塔下部50cに蓄積した高沸点成分に富む液冷媒は、配管によって接続された液溜め容器52内に移動する。一方、液溜め容器52内に蓄積された液冷媒の一部は、加熱器16によって圧縮機10の吐出ガスの一部と熱交換して蒸発し、蒸発した蒸気冷媒は、配管によって接続された充填塔下部50cに流入する。この蒸気冷媒は充填塔50内を上昇し、充填塔上部50dから下降してきた液冷媒と熱および物質の交換を行い、自ら低沸点成分に富む蒸気冷媒となって充填塔上部50dに至る。この低沸点成分に富む蒸気冷媒は、電子式膨張弁54によって減圧された後、主冷媒回路に合流する。また、圧縮機10の吐出ガスの一部は、液溜め容器52内の液冷媒を加熱した後、自ら凝縮液化し、電子式膨張弁55で減圧された後、主冷媒回路に合流する。
【0068】
このようにして、時間の経過とともに、液溜め容器52内に高沸点成分(R134a)に富む冷媒が徐々に蓄積され、冷媒回路を循環する低沸点成分組成が増加する。ここで、組成調整冷房運転を行う時間は、実施の形態1と同様に、低沸点成分(R32)組成と運転時間との関係をあらかじめ把握しておき、低沸点成分組成が目標値となるように運転時間を決定するようにすればよい。ここで、低沸点成分の組成目標値は、室内ユニット2の運転台数や外気温度などの情報に応じて変化させるようにする。さらに、冷媒回路内に組成検知回路を設け、低沸点成分組成の検知値が、組成目標値に一致するまで組成調整冷房運転を実施するようにしてもよい。
【0069】
つぎに、暖房運転について説明する。この場合、電子式膨張弁14,53〜56は、全閉に設定される。四方弁11の設定および減圧装置14,21の開度設定は、実施の形態1と同じである。
【0070】
圧縮機10によって圧縮され高温高圧となった冷媒は、四方弁11の第1口11a、第4口11d、蒸気側接続口1A、蒸気配管3を介して、室内熱交換器20に流入する。ここで、高温高圧の冷媒は、図示しない室内送風機によって送り込まれる室内空気に放熱して室内を暖房するとともに、自ら凝縮液化する。この凝縮液化した中温高圧の液冷媒は、減圧装置21で減圧され、低温低圧の気液二相冷媒となって液配管4、液側接続口1B、過冷却器13、気液分離器51を介して室外熱交換器12に流入する。ここで、低温低圧の気液二相冷媒は、図示しない室外送風機によって送り込まれる外気から吸熱するとともに、自ら蒸発する。この低温低圧の蒸気冷媒は、四方弁11の第2口11b、第3口11c、およびアキュムレータ15を介して、圧縮機10の吸入側に戻る。この場合、過冷却器13および気液分離器51は、減圧装置14および電子式膨張弁53が全閉となっているため、冷房運転時に発揮した機能は発揮しない。
【0071】
この実施の形態2では、冷媒回路内を循環する低沸点成分組成を所望の組成まで増加させる手段として、実施の形態1で示したアキュムレータ15の代わりに充填塔50を用いている。一般に、充填塔50は、気液分離による蒸留操作を複数回繰り返したことに相当するため、アキュムレータ15を用いる場合に比べ、低沸点成分組成をより大きくすることができる。このため、配管が長い場合に、冷媒回路内を循環する低沸点成分組成を、実施の形態1に比して大きく設定することができ、配管が長い場合にも性能低下を大幅に抑制することができる。
【0072】
また、この実施の形態では、冷房運転中に組成調整を行うため、室内ユニット2の運転台数や外気温度などの運転状況に応じて組成を変化させることができる。また。この実施の形態では、高沸点成分(R134a)冷媒を液溜め容器52に蓄積させる構成としたが、室内ユニット2が複数台設置され、かつ停止している室内ユニットが存在する場合、停止室内ユニット内に高沸点成分(R134a)を蓄積させることによって、液溜め容器52を小型化することができ、組成調整ユニットを小さくすることができる。
【0073】
さらに、この実施の形態では、過冷却器13を用いて気液分離器51を通過した二相冷媒を過冷却状態とすることができるため、実施の形態1と同様に、配管が長い場合の性能低下を抑制することができる。
【0074】
なお、この実施の形態では、蒸気または液の流量を制御する減圧装置として、電子式膨張弁を用いるようにしているが、たとえば、毛細管と電磁弁との組み合わせなどを用いることで同等の機能を実現することができる。
【0075】
この実施の形態によれば、組成調整手段として充填塔50を用いるため、安価かつ簡易な構成で広範囲に低沸点成分組成を増加させることができる。また、冷媒回路内に組成検知回路を設け、低沸点成分組成の検知値が目標値と一致するまで組成調整冷房運転を実施することによって、低沸点成分組成を確実に目標値に近づけることができ、配管が長い場合にも性能低下を抑制することができる。
【0076】
実施の形態3.
つぎに、この発明の実施の形態3について説明する。図7は、この発明の実施の形態3である空気調和機の構成を示す図である。図7において、この空気調和機は、実施の形態2と同じ動作を行うが、実施の形態2に示した充填塔50を含む組成調整回路60を設け、組成調整ユニット6として開閉弁71〜73を介して接続口61〜63により主冷媒回路から着脱可能としている。その他の構成は実施の形態2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0077】
組成調整ユニット6および組成調整回路60は、図8に示す構成をもつ。すなわち、組成調整回路60は、冷媒回路を循環する低沸点成分(R32)の組成を所定の組成に調整する組成調整器として、たとえば充填塔50、充填塔50の下部から高沸点成分に富む液冷媒を蓄積する液溜め容器52、充填塔50の頂部に供給される液冷媒の流量を制御する減圧装置53、充填塔50頂部から主冷媒回路に戻す蒸気冷媒の流量を制御する減圧装置54、圧縮機10から吐出される蒸気冷媒の一部を用いて液溜め容器52内の液冷媒を加熱する加熱器16、加熱器16に供給する蒸気冷媒の流量を制御する減圧装置55、液溜め容器52内から主冷媒回路に戻す液冷媒の流量を制御する減圧装置56を有し、開閉弁71〜73を介して接続口61〜63によって、主冷媒回路に接続可能な組成調整ユニット6を形成している。
【0078】
図7および図8において、この空気調和機を新規に設置する場合、まず、低沸点成分組成が目標値となるように開閉弁71〜73を開放し、組成調整運転を実施する。つぎに、組成調整運転が終了した状態、すなわち低沸点成分組成が目標値まで増加した状態において開閉弁71〜73を閉止し、組成調整ユニット6を接続口61〜63にて主冷媒回路から切り離す。切り離された充填塔50および液溜め容器52内には、高沸点成分であるR134aに富む冷媒が蓄積されているため、その後の冷房運転時には、組成調整運転を行うことなく、低沸点成分組成を増加させることができる。また、切り離された充填塔50や液溜め容器52内の冷媒は、回収して再生利用することができる。
【0079】
この実施の形態3では、組成調整運転を空調機の設置時のみに行い、組成調整運転後は、組成調整ユニットを主冷媒回路から切り離す構成としたため、その後の冷房運転時には、組成調整運転を行うことなく、低沸点成分組成を増加させることができる。また、組成調整ユニット6は、繰り返し使用することができるため、通常の冷媒回路に接続口61〜63を設けることによって、安価かつ簡易な構成によって、低沸点成分組成を大幅に増加させることができ、配管長が長い場合にも性能低下を抑制することができる。
【0080】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、決定工程が、前記配管の長さに対応し、前記冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分組成を増加させる冷媒封入量を決定し、封入工程が、前記決定工程によって決定された冷媒封入量を前記冷媒回路に封入するようにしているので、配管が長い場合であっても空気調和機の性能低下を抑止することができるという効果を奏する。
【0081】
つぎの発明によれば、前記決定工程が、目標値算出工程によって、前記配管の長さと予め設定された低沸点成分組成の目標値との関係をもとに該低沸点成分組成の目標値を算出し、冷媒封入量決定工程によって、前記目標値に一致する低沸点成分組成をもつ冷媒封入量を決定するようにしているので、簡易かつ柔軟に空気調和機の性能低下を抑止することができるという効果を奏する。
【0082】
つぎの発明によれば、前記封入工程が、検知工程によって、前記冷媒回路を循環する低沸点成分組成を検知し、組成調整工程が、前記冷媒封入量の低沸点成分組成を前記目標値に調整するようにしているので、配管が長い場合であっても空気調和機の性能低下を抑止することができるという効果を奏する。
【0083】
つぎの発明によれば、組成調整手段が、前記冷媒回路の低圧側に設けられ、該冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分と高沸点成分とを分離して該低沸点成分の組成を調整するようにしているので、低沸点成分組成の変化幅を大きくすることができ、冷凍サイクル運転中以外であっても、低沸点成分の組成を変化させることができ、前記配管の長さに対応し、前記冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分組成を増加させて前記冷媒回路に封入するようにしているので、配管が長い場合であっても空気調和機の性能低下を抑止することができるという効果を奏する。
【0084】
つぎの発明によれば、前記組成調整手段として、アキュムレータを用いるようにしているので、簡易な構成によって低沸点成分の組成幅を大きくすることができ、しかも冷凍サイクル運転中以外であっても、低沸点成分の組成を変化させることができるという効果を奏する。
【0085】
つぎの発明によれば、組成調整手段が、気液接触面積が大きい充填材を用いて気液分離による蒸留処理を行う充填塔を用い、前記冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分と高沸点成分とを分離して該低沸点成分の組成を調整するようにしているので、低沸点成分の組成幅をさらに大きく変化させることができ、また、前記配管の長さに対応して前記組成調整手段による前記低沸点成分の組成目標値を変化させる制御を行う組成調整制御手段をさらに備え、組成調整制御手段が、前記配管の長さに対応して前記組成調整手段による前記低沸点成分の組成目標値を変化させる制御を行うようにしているので、配管が長い場合であっても空気調和機の性能低下を抑止することができるという効果を奏する。
【0087】
つぎの発明によれば、検知手段が、前記冷媒回路を循環する低沸点成分組成を検知し、組成調整制御手段が、前記検知手段による検知結果をもとに、前記低沸点成分の組成を前記配管の長さに応じた所定値に制御するようにしているので、配管が長い場合であっても空気調和機の性能低下を抑止することができるという効果を奏する。
【0088】
つぎの発明によれば、前記組成調整手段を、着脱自在としているので、簡易な構成で、かつ柔軟に低沸点成分組成を変化させることができ、配管が長い場合であっても、空気調和機の性能低下を抑止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1である空気調和機の構成を示す図である。
【図2】 図1に示した空気調和機による冷媒封入処理手順を示すフローチャートである。
【図3】 配管長と低沸点成分組成との関係を示す図である。
【図4】 低沸点成分組成と余剰冷媒率との関係を示す図である。
【図5】 2成分系の非共沸混合冷媒であるR32/134aの気液平衡線図である。
【図6】 この発明の実施の形態2である空気調和機の構成を示す図である。
【図7】 この発明の実施の形態3である空気調和機の構成を示す図である。
【図8】 図7に示した組成調整ユニットの詳細構成を示す図である。
【図9】 従来の空気調和機の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 室外ユニット、2 室内ユニット、3 蒸気配管、4 液配管、6 組成調整ユニット、10 圧縮器、11 四方弁、12 室外熱交換器、13 過冷却器、14,53〜56 減圧装置、15 アキュムレータ、16 加熱器、20 室内熱交換器、21 絞り装置、61,62 温度検出器、30 配管、50 充填塔、51 気液分離器、52 液溜め容器、60 組成調整回路、61〜63 接続口、71〜73 開閉弁。

Claims (8)

  1. 少なくとも圧縮機および室外熱交換器を有した室外ユニットと、少なくとも室内熱交換器を有した室内ユニットとを配管によって接続し、冷媒として非共沸混合冷媒を用いる冷媒回路を形成した空気調和機における冷媒封入方法において、
    前記配管の長さに対応し、前記冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分組成を増加させる冷媒封入量を決定する決定工程と、
    前記決定工程によって決定された冷媒封入量を前記冷媒回路に封入する封入工程と、
    を含むことを特徴とする冷媒封入方法。
  2. 前記決定工程は、
    前記配管の長さと予め設定された低沸点成分組成の目標値との関係をもとに該低沸点成分組成の目標値を算出する目標値算出工程と、
    前記目標値に一致する低沸点成分組成をもつ冷媒封入量を決定する冷媒封入量決定工程と、
    を含むことを特徴とする請求項1に記載の冷媒封入方法。
  3. 前記封入工程は、
    前記冷媒回路を循環する低沸点成分組成を検知する検知工程と、
    前記冷媒封入量の低沸点成分組成を前記目標値に調整する組成調整工程と、
    を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の冷媒封入方法。
  4. 少なくとも圧縮機および室外熱交換器を有した室外ユニットと、少なくとも室内熱交換器を有した室内ユニットとを配管によって接続し、冷媒として非共沸混合冷媒を用いる冷媒回路を形成した空気調和機において、
    前記冷媒回路の低圧側に設けられ、該冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分と高沸点成分とを分離して該低沸点成分の組成を調整する組成調整手段を備え
    前記配管の長さに対応し、前記冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分組成を増加させて前記冷媒回路に封入したことを特徴とする空気調和機。
  5. 前記組成調整手段は、アキュムレータであることを特徴とする請求項4に記載の空気調和機。
  6. 少なくとも圧縮機および室外熱交換器を有した室外ユニットと、少なくとも室内熱交換器を有した室内ユニットとを配管によって接続し、冷媒として非共沸混合冷媒を用いる冷媒回路を形成した空気調和機において、
    気液接触面積が大きい充填材を用いて気液分離による蒸留処理を行う充填塔を用い、前記冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうちの低沸点成分と高沸点成分とを分離して該低沸点成分の組成を調整する組成調整手段を備え
    前記配管の長さに対応して前記組成調整手段による前記低沸点成分の組成目標値を変化させる制御を行う組成調整制御手段をさらに備えたことを特徴とする空気調和機。
  7. 前記冷媒回路を循環する低沸点成分組成を検知する検知手段をさらに備え、
    前記組成調整制御手段は、前記検知手段による検知結果をもとに、前記低沸点成分の組成を前記配管の長さに応じた所定値に制御することを特徴とする請求項に記載の空気調和機。
  8. 前記組成調整手段は、着脱自在であることを特徴とする請求項6又は7に記載の空気調和機。
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