JP3748319B2 - 車両の姿勢制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車の姿勢安定制御に関する。本発明は、ヨーあるいはロールなどの走行中の車両の挙動を観測し、車両の姿勢が安定な方向になるように自動制御する装置に利用する。本発明は、連続的に観測される車両の挙動にしたがって、車両が横すべり状態や転倒状態になる前に、車両の姿勢を安定方向に修正するように、各車輪のブレーキ圧力の配分を自動的に調節制御する装置に関する。本発明は、車両が走行する路面の摩擦係数(μ)が小さいときの制御に関する。本発明は、バス・トラックなど積荷状態のパラメタが随時変化する商業車両に利用するに適する。
【0002】
【従来の技術】
従来から知られている車両安定化制御装置(VSC)の代表的な例は、横すべり防止装置であり、運転者がハンドル操作を行うと、その操舵角から運転者が進もうとしている針路を読取り、その針路に対して車速が大きすぎると、運転者がブレーキペダルを踏まなくとも自動的に減速のための制御が行われ、さらに針路から外れないように左右のブレーキ圧力の配分を変更するなどの制御が行われる。
【0003】
すでに知られている車両姿勢安定化装置(特開昭63−279976号公報、特開平2−112755号公報)を説明すると、車両の走行中に運転者が操舵を行うと、車両の向きが変化し車両にロールが生じる。このとき操舵による旋回内輪のタイヤが路面のグリップ限界を越えると、内輪がいわゆるホイール・リフト傾向となり、車両が横すべりをはじめる。例えば、直線走行状態から運転者が左に操舵を行うと車両は右に傾斜する。このとき、正常な状態ではその操舵に応じて車両が旋回するが、走行速度に対して操舵の速さが大きすぎると、車両は右に傾斜しながら左車輪が浮きぎみな状態となり、運転者の意図する方向より右寄りに進行することになる。このような車両の挙動は、走行レーンの逸脱や、極端な場合には車両の横転を招く原因となる。
【0004】
通常走行状態において、操舵の大きさと速さ、車両の速度、車両の横移動の速さ、および車両の向きの変化の速さ(ヨーレイト、垂直軸まわりの車両の回転加速度)を検出して演算することにより、車輪の横すべり開始点または内輪のホイールリフト開始点を予測し、横すべりあるいはホイールリフトが始まる前に車輪のブレーキ圧力を制御する装置が開発された。この車輪のブレーキ圧力制御は、必ずしも全輪同一のブレーキ圧力ではなく、一つの車輪について大きいあるいは小さいブレーキ圧力を印加して、車両の横すべりを防止するものである。このような装置は、原理的な構造や設計のみならず、経済性および耐久性などもよく検討され、乗用車については市販品に実装される段階に達した。
【0005】
本願出願人は、これを改良する装置として特願平9−131347号(本願出願時において未公開、以下「先願」という)を出願した。この改良は、バスやトラックなどの商業車両に上述の原理に基づく装置を装備するためのものである。乗用車の場合には、車両重量(例えば1トン)に対する乗客の増減による重量の変化(例えば150kg)は小さく(例えば15%)、しかも座席位置が低いから乗客が増減しても全体の重心位置が大きく変化することはない。ところが、商業車では、車両重量に対して最大乗車人員の重量あるいは最大積載量は100%を越える値となり、しかも車両全体の重心位置が乗客の位置や積荷の状態で大きく変化する。定期バスとして使用される車両では、全重量や重心位置は停留所ごとに変化する。
【0006】
したがって、商業車両では姿勢制御のために車両の現在の状態を表す車両モデルが必要であり、上記先願の発明では、この車両モデルの中に蓄積される数値は、走行中の車両の挙動にしたがって随時自動的に変更することになった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明者らは、上記先願の発明についてシミュレーションを含む試験を繰り返し行ったところ、次のような問題に気付いた。すなわち、車両が走行する路面の摩擦係数(μ)が大きい路面では、車両が横すべりする限界は、横方向加速度およびヨーレイトのかなり大きい領域にあり、加速度センサおよびヨーレイトセンサに検出される値は雑音に埋まることなく正当に観測できる。しかし、車両が走行する路面の摩擦係数(μ)が小さい路面、たとえば圧雪路面、アイスバーンなどでは、車両が横すべりする限界は、横方向加速度およびヨーレイトの小さい領域にある。
【0008】
したがって、加速度センサおよびヨーレイトセンサに検出される値が雑音と同等程度、あるいは雑音レベル以下であるときの状態を的確に観測しなければならないことになる。このように雑音と挙動データとの分離が不十分であるときには、その挙動データに基づく制御は不確定になり、必ずしも適正な制御を行うことができなくなる。一方、横すべり防止あるいは横転防止のための姿勢制御は、通常の路面を走行する場合より滑りやすい路面を走行する場合に必要なものであり、滑りやすい路面で適正な姿勢制御を行うことができないことは不都合なことである。
【0009】
本発明はこのような背景に行われたものであって、車両が滑りやすい路面を走行するときにも、その路面に応じて適正な制御を行うことができる姿勢制御装置を提供することを目的とする。本発明は、新たなセンサなどのハードウエアを追加することなく、滑りやすい路面を走行する場合にも、適正な姿勢制御を行うことができる装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、連続的に観測される車両の挙動を路面の摩擦係数の大きさに対応させて各センサの出力または数値モデルの数値を重みづけにより選択し、運転操作入力および外乱入力を安全側に修正することを特徴とする。
【0011】
すなわち、本発明は、車両の運転操作入力およびその車両の挙動データを入力としその車両の運動状態を演算出力する車両安定化制御装置(VSC)と、この車両安定化制御装置の演算出力にしたがって運転操作入力および外乱入力を安全側に修正する修正入力をその車両に与える制御手段(EBS)とを備え、前記車両安定化制御装置は、その車両の物理特性を数値として保持する数値モデルと、その車両の運転操作入力をデータとして取込み伝達関数によりその車両の応答を推測演算するオブザーバとを含む車両の姿勢制御装置において、その車両が走行する路面の摩擦係数(μ)を推定する手段と、その車両の各センサ出力を前記挙動データとして前記車両安定化制御装置に与えるインタフェース手段とを備え、そのインタフェース手段は、前記摩擦係数の値が大きいときには各センサ出力を、その摩擦係数の値が小さいときには前記数値モデルが保持する数値を、それぞれ重み付け選択する手段を含むことを特徴とする。
【0012】
前記重み付け選択する手段は、摩擦係数の値の段階的区分に対応して重み量が設定されることが望ましい。
【0013】
姿勢制御の被制御対象である車両には、操舵、制動、加速、その他の運転操作入力が与えられる。車両はこの運転操作入力に対し応答し、これが挙動データとして各センサから出力される。この車両には、例えば、ヨーレイトセンサ、ロールレイトセンサ、横方向加速度センサ、前後方向加速度センサおよび車輪回転検出センサが設けられている。
【0014】
車両安定化制御装置(VSC)は、このような車両の運転操作入力および車両の挙動データを入力し、オブザーバが数値モデルに保持されている車両の物理特性との比較を行い伝達関数によりその車両の応答を推測演算する。すなわち、前輪横すべり、後輪横すべり、ホイールリフトなどについての可能性を演算する。所定の基準を越えてその可能性が大きいときには、安全側に行うべき制御量を演算し、ABS手段を含む電子制御制動装置(EBS)にその演算結果を伝達する。
【0015】
電子制御制動装置(EBS)はABS手段による演算結果と総合して修正量を演算し、これを車両に対し修正入力として供給する。例えば、そのときの車両の挙動によって、左後輪のみ制動を行う、あるいは全輪制動であるが右前輪の制動量を小さくするなどの制御が行われる。
【0016】
このような横すべり防止あるいは横転防止のための姿勢制御において、車両が走行する路面の摩擦係数(μ)を推定し、摩擦係数の値が大きい路面のときには、車両が横すべりを起こす限界は横方向加速度あるいはヨーレートの大きい領域にあって、検出された値が雑音とは明確に区別できるデータが得られるので、、各センサからの出力を取込み、その出力にしたがって車両の姿勢安定制御を行う。
【0017】
また、摩擦係数が小さくすべりやすい路面のときには、車両が横すべりする限界は横方向加速度あるいはヨーレイトの小さい領域にあって、検出された値が雑音レベルと同程度かそれ以下の区別しにくいデータである可能性が高いので、数値モデルが保持している数値を選択し、その数値にしたがって車両の姿勢制御を行う。
【0018】
このとき、センサ出力と数値モデルからの数値とをはっきり切り分けるのではなく、重みづけをもって選択する。すなわち、この各センサからの出力および数値モデルが保持する数値を1:0あるいは0:1として採り込むのではなく、路面の摩擦係数(μ)が高いときには1:0としていたものを、路面の摩擦係数が低くなったとき(例えば、μが0.1以下あるいは0.05以下など)に0.2:0.8あるいは0.3:0.7として重みづけをして採用する。これは、摩擦係数(μ)の値を段階的に区分しておき、この区分に対応して重み量を段階的に設定しておけば、各センサ出力および数値モデルが保持する数値に対する重み付け選択が容易になる。
【0019】
これにより、新たなセンサなどのハードウェアを追加することなく、車両が圧雪路面あるいはアイスバーンのような滑りやすい路面を走行するときであっても、その路面に応じた適正な姿勢制御を行うことができ、安全な走行を行うことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
【0021】
【実施例】
次に、本発明実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明による姿勢制御装置の全体構成例を示す図である。車両1は本発明姿勢制御装置の被制御対象である。車両1には、操舵、制動、加速、その他の運転操作入力が与えられ、それに対する応答が車両1の挙動である。この車両1には本発明の姿勢制御装置2が搭載される。
【0022】
本発明実施例姿勢制御装置2は、車両1の運転操作入力およびその車両の挙動データを入力としその車両の運動状態を演算出力する車両安定化制御装置(VSC)3と、この車両安定化制御装置3の演算出力にしたがって運転操作入力および外乱入力を安全側に修正する修正入力をその車両に与える電子制御制動装置(EBS)4とが備えられる。
【0023】
車両安定化制御装置3には、その車両の物理特性を数値として保持する数値モデル5と、車両1の運転操作入力をデータとして取込み伝達関数によりその車両の応答を推測演算するオブザーバ6とが含まれ、さらに、本発明の特徴として、その車両が走行する路面の摩擦係数(μ)を推定する摩擦係数推定手段7と、その車両の各センサ出力を挙動データとして車両安定化制御装置3に与えるインタフェース手段8とが備えられ、このインタフェース手段8には、摩擦係数の値が大きいときには各センサ出力を、その摩擦係数の値が小さいときには数値モデル5が保持する数値を、それぞれ重み付け選択する手段が含まれる。前記重み付け選択する手段には、摩擦係数の値の段階的区分に対応して重み量が設定される。
【0024】
電子制御装置4は従来のABS手段に代表される装置である。すなわち、すでに装備されているABS手段を利用する形態で本発明が実施される。
【0025】
その車両の挙動をデータとして観測するために、その車両1に搭載されたセンサ類11からは挙動データが出力される。挙動データは、速度、横方向加速度、ヨーレイト、ロールレイト、車輪回転情報、その他である。
【0026】
車両安定化制御装置3は、運転操作入力および挙動データを入力として、車両の挙動を予測演算し、その結果を電子制御制動装置4に与える。電子制御制動装置4は、同じく運転操作入力および挙動データを取込み、それに加えて車両安定化制御装置(VSC)3の出力を取込み、車両1に対する運転操作入力および外乱入力に対する安全方向への自動制御出力を送出し、これは修正入力となる。
【0027】
ここで、このように構成された本発明実施例姿勢制御装置による車両安定化制御動作を図1を参照して説明する。
【0028】
インタフェース手段8がセンサ類11から車両1の挙動を示す挙動データを入力し、摩擦係数推定手段7が車両1が走行している路面の摩擦係数を推定する。車輪に発生する路面摩擦係数μは車両の加速時または制動時に推定演算することができる。
【0029】
すなわち、加速時における推定演算の場合には、左右駆動輪の回転速度および従動輪の回転速度をそれぞれ検出記録し、左右駆動輪の回転速度差分を演算して、この回転速度差分の時間微分値を演算する。次いで、加速が行われている時間内の着目する時間区間で演算した時間微分値が最大値を示す時刻を求め、この時刻のわずか前の時刻における従動輪の回転加速度を演算し、この従動輪の回転加速度に対する回転速度差分の時間微分値の最大値の大きさに対応して路面摩擦係数μの値を推定演算する。
【0030】
また、制動時における推定演算の場合には、制動が行われた複数の車輪について車輪回転速度を検出記録し、制動操作入力に対してABS(Antilock Brake
System :自動制動制御装置)が作動した車輪についての回転速度の時間微分値およびABSが作動しない車輪についての回転速度の時間微分値を演算する。次いで、このABSが作動しない車輪の回転速度の時間微分値に対するABSが作動した車輪の回転速度の時間微分値のマイナス側振幅値に対応して路面摩擦係数μの値を推定演算する。
【0031】
インタフェース手段8は、この推定された摩擦係数が大きいときには、車両が横すべりする限界は横方向加速度およびヨーレイトのかなり大きい領域にあるために、加速度センサおよびヨーレイトセンサに検出されるレベルが雑音レベルよりも大きく正当に計測されるので、センサ類11からの出力に按分係数(何%にあたるか)を乗じて重み付けを大きくしこれにより制御条件を設定する。
【0032】
また、路面の摩擦係数の値が小さいときには、圧雪路面やアイスバーンのように滑りやすい状態にあって、車両が横すべりする限界は横方向加速度およびヨーレイトの小さい領域にあって、加速度センサおよびヨーレイトセンサに検出される値が雑音と同じレベルかそれ以下にあり的確な数値が得られない状態にあるので、数値モデル5が保持している数値に按分係数を乗じて重み付けを大きくして制御条件を設定する。
【0033】
このように路面の状態に応じた車両挙動の検出を行うことによって車両の安定化制御の精度が高められ、安全性および信頼性が向上される。
【0034】
図2は本発明にかかわる車両のハードウェア・システム構成図である。制御回路51はプログラム制御されるコンピュータ回路を含む車両に搭載された電子装置であり、この中に図1に示す姿勢制御装置2が実装される。
【0035】
この車両にはヨーレイトセンサ52、横方向加速度センサ53、ロールレイトセンサ60、および前後方向加速度センサ61が実装され、これらの各検出出力は制御回路51に接続されている。4個の車輪54にはそれぞれ車輪回転センサ55が取付けられ、これらの検出出力も制御回路51に接続される。ブレーキ・ブースタ・アクチュエータ56にはブレーキ圧センサ57が取付けられ、この検出出力は同じく制御回路51に接続される。操舵ハンドル58には操舵角センサ59が取付けられ、その出力は制御回路51に接続される。内燃機関を制御するガバナ62にはガバナセンサ63が組み込まれ、ガバナ62の状態を検出しその検出出力は制御回路51に接続される。図3は本実施例における前記各センサの車両への実装例を示す斜視図である。
【0036】
図2および図3には2軸構造の車両が示されているが、大型車両の場合には3軸あるいは4軸構造が用いられる。図4は本発明実施例装置を3軸車両に装備した場合のハードウェア・システム構成を示したものであり、図5は本発明実施例装置を4軸車両に装備した場合のハードウェア構成を示したものである。
【0037】
3軸構造の場合には、車輪回転センサ55、ブレーキ・ブースタ・アクチュエータ56およびブレーキ圧センサ57が3軸それぞれの車輪54に取付けられ、4軸構造の場合には、4軸それぞれの車輪54に取付けられる。
【0038】
制御回路51の制御フローの一例は、通常制御について図6に示すとおりである。この挙動データの取込みは自己回帰法(AR法)により実行される。すなわち、過去M時点前までのデータに逆上り、過去のデータに各時点毎の重み係数A(m)を乗じた値で表されるところにその特徴がある。
【0039】
また、積荷の状態が変わり、あるいは搭乗者の数や搭乗者の位置が変わると、図7に例示する制御が行われて、車両モデルのパラメータが更新される。この更新は常に修正の要否を監視することにより自動的に実行される。この挙動データの取込みについても自己回帰法(AR法)により実行される。図7に示す更新モードのプロセスは図6に示すステップS9の中で実行される。
【0040】
図8は本発明実施例にかかわる入力データの一例を示したもので、(a)には操舵角、(b)にはヨーレイト、(c)には横すべり角が示されている。横軸は時間(秒)である。横軸は(a),(b),(c)に共通である。操舵ハンドル58が操作されると、操舵角センサ59がこれを検出し(a)に示す入力データを制御回路51に送出する。この操舵操作にともなってヨーレイトセンサ52がヨーレイトを検出し(b)に示す入力データを制御回路51に送出する。同時に横方向加速度センサ53が横すべり角を検出し(c)に示す入力データを制御回路51に送出する。すなわち図8に示す(a)は入力であり、同(b)および(c)は車両の振る舞い(ビヘービア)を表す応答である。
【0041】
制御回路51はこれらのデータに基づいてこの車両の伝達関数を演算する。伝達関数は複素関数であり、現実的な一例を示すと、横軸に周波数をとり縦軸に振幅および位相を表示することにより表示することができる。比較的単純なモデルで考えると、振幅特性は周波数に対してなだらかな右下がりの曲線になり、位相特性は対応して右下がりの曲線になる。図9(a)および(b)はヨーレートについて振幅および位相の周波数特性を例示する図である。図10(a)および(b)は横すべり角について振幅および位相の周波数特性を例示する図である。これらは実際のデータに基づいて本発明の手法により演算された伝達関数を示す図である。
【0042】
ここで車両の姿勢制御および更新について述べる。このようにして伝達関数が定まると、この伝達関数を用いて車両の動特性を演算し、あらかじめ設定した一定の基準を越える異常な動きが予測される場合に、各車輪に異なるブレーキ圧力を与えて、車両の異常な動きを抑圧するような姿勢制御が行われる。これは従来から乗用車で実用化されている手法と同様であるので、ここでは詳しい説明を省略する。本発明は、この技術を商用車(トラック・バス)に実施するものであり、商用車では、積み荷の状況、乗客の人数配置などにより、車両の応答を表す伝達関数そのものが変動する。すなわち伝達関数の更新を行うことにした。
【0043】
図9はこれを説明する図であり、すでに数値モデルに伝達関数として破線で示す特性の関数が蓄積されているものとする。これは積み荷が最大積載量の約3分の1程度の標準的な形態の場合のモデルである。これに対して新たに追加の積み荷が積載されたとしよう。そうすると、総重量も重心位置も変化する。これにより当然に同じ操舵に対する車両の応答はちがってくる。すなわちすでに蓄積されている伝達関数は変更しなければならない。そこで、センサに現れる車両の振る舞いにしたがって伝達関数を改めて演算すると実線で示すように、すでに蓄積されている伝達関数とは異なる特性が現れる。この演算は図7で説明したように自動的に実行される。そしてその差分つまり図9に斜線を施す領域があらかじめ設定された限界値より大きいときには、蓄積されているモデルそのものを実線で示すように、現在の状態を示す新たな演算値に更新する。これは図7で説明したとおり自動的に実行される。このような自動的な蓄積されている伝達関数の数値モデルを更新することにより、積み荷が変動したときや搭乗人員が変動したときなどにも、適正な姿勢制御を実行することができるようになる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、車両が圧雪路面やアイスバーンのような滑りやすい路面を走行するときであっても、新たなセンサなどのハードウェアを追加することなく、その路面に応じた適正な車両の安定化をはかることができ、適正な姿勢制御を行って走行安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による姿勢制御装置の全体構成例を示す図。
【図2】本発明にかかわるハードウエア・システム構成図。
【図3】本発明実施例における各センサの車両への実装例を示す斜視図。
【図4】本発明実施例装置を3軸車両に装備した場合のハードウェア・システム構成図。
【図5】本発明実施例装置を4軸車両に装備した場合のハードウェア・システム構成図。
【図6】本発明実施例制御回路の通常制御を説明するフローチャート。
【図7】本発明実施例制御回路の車両モデルのパラメータ更新を説明するフローチャート。
【図8】(a)、(b)および(c)は本発明実施例にかかわる操舵角、ヨーレイトおよび横すべり角の入力データを示す図。
【図9】(a)および(b)は本発明実施例にかかわる利得および位相によって表された伝達関数の一例を示す図。
【図10】(a)および(b)は本発明実施例にかかわる利得および位置によって表された伝達関数の別の例を示す図。
【符号の説明】
1 車両
2 姿勢制御装置
3 車両安定化制御装置(VSC)
4 電子制御制動装置 (EBS)
5 数値モデル
6 オブザーバ
7 摩擦係数推定手段
8 インタフェース手段
11 センサ類
51 制御回路
52 ヨーレイトセンサ
53 横方向加速度センサ
54 車輪
55 車輪回転センサ
56 ブレーキ・ブースタ・アクチュエータ
57 ブレーキ圧センサ
58 操舵ハンドル
59 操舵角センサ
60 ロールレイトセンサ
61 前後方向加速度センサ
62 ガバナ
63 ガバナセンサ
Claims (2)
- 車両の運転操作入力およびその車両の挙動データを入力としその車両の運動状態を演算出力する車両安定化制御装置(VSC)と、この車両安定化制御装置の演算出力にしたがって運転操作入力および外乱入力を安全側に修正する修正入力をその車両に与える制御手段(EBS)とを備え、前記車両安定化制御装置は、その車両の物理特性を数値として保持する数値モデルと、その車両の運転操作入力をデータとして取込み伝達関数によりその車両の応答を推測演算するオブザーバとを含む車両の姿勢制御装置において、
その車両が走行する路面の摩擦係数(μ)を推定する手段と、その車両の各センサ出力を前記挙動データとして前記車両安定化制御装置に与えるインタフェース手段とを備え、
そのインタフェース手段は、前記摩擦係数の値に応じ、前記摩擦係数の値が大きいときには各センサ出力の重み付けを大きくし、その摩擦係数の値が小さいときには前記数値モデルが保持する前記各センサ出力に対応する数値の重み付けを大きくして前記車両安定化制御装置に与える重み付け選択手段を含む
ことを特徴とする車両の姿勢制御装置。 - 前記重み付け選択手段は、摩擦係数の値の段階的区分に対応して重み量が設定された請求項1記載の車両の姿勢制御装置。
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