JP3747112B2 - 減衰特性を有する磁気バネ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の永久磁石を有する磁気バネに関し、更に詳しくは、複数の永久磁石の反発力を利用した減衰特性を有する磁気バネに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、様々な形で振動モデルが提案され実用化されている。一般的に、振動特性には、負荷質量依存性と入力依存性がある。負荷質量依存性は荷重−変位特性の曲率と相関があり、入力依存性は荷重−変位特性のヒステリシスと相関があると考えられている。
【0003】
自動車用サスペンションシステムを例にとれば、道路条件、操縦安定性、インピーダンス(の差)条件などがサスペンションシステムのバネ定数など乗り心地に関する調整のポイントになる。すべての条件下で最適を求めるとすれば、能動的制御が必要となる。悪路走行と高速走行では、低周波大振幅の領域で大きな差が生じる。減衰性が低い場合は、変位の伝達率が高くなり、共振点は低周波側へ移動する。減衰性を上げるには、ダンパーの減衰比を大きくするか、あるいは、バネ定数を小さくする必要がある。そのため、従来の受動的な振動モデルでは、その性能に限界が生じる。
【0004】
具体的な例として、サスペンションシートについて述べる。サスペンションシートとは、主に土工機械、リクリエ−ショナルビークル(RV)等のオフロード車、及び、トラック、バス等の長距離走行車両に搭載され、除振機構を持つシートであり、除振機構としては、例えば金属バネ、エアサスペンション、エアダンパ等が使用されている。これらのシートは、約1.5〜12Hz、特に3〜5Hzの範囲内の振動絶縁性の改善に注目されてきた。そのため、サスペンションシートの共振周波数は、1〜2.5Hzの間に設定されている。
【0005】
図51に従来のサスペンションシートの振動特性を示す。図51において、(a)は剛体シートを、(b)はサスペンションシートを、(c)はバネリッチシートを、(d)はダンパーの無いサスペンションシートを示している。
【0006】
バネ定数の小さい(柔らかいバネ)シートでは、衝撃や低周波の振動に暴露されたときに大きな動的変位が発生する。例えば、ペダルの踏み込み等のドライバーの運転操作を妨げないように、サスペンション機構のストロークは、通常100mm以下に制限されている。そのため、大きく変位したときサスペンションの端部まで達し、底付き感が発生する。
【0007】
また、1994年にStilesは、底付きがサスペンションシートの性能に及ぼす影響を調査するためトラクターで実車走行評価実験を行った。その結果、サスペンションシートの45%がドライバーに加わる加速度を上昇させ、底付きによる振動絶縁性の劣化が明らかにされている。底付き感、及び、車両への急激で瞬間的な衝撃荷重が加わった時の対処法としてショックアブソーバが使用されている。
【0008】
最近では、シートにアクチュエータを取り付け、振動をアクティブ制御することにより着座感を向上したアクティブサスペンションシートも提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、金属バネ、エアサスペンション、エアダンパ等を使用した除振機構は、車体フロアから伝わる振動のうち4〜20Hzの振動の周波数を低下させて着座感あるいは使用感をさらに向上させることはできなかった。
【0010】
また、上記アクティブサスペンションシートは重たく高価であるばかりでなく、アクチュエータを常に作動させておく必要があり、アクチュエータをOFFにすると振動がアクチュエータを介して乗員に直接伝わり、着座感が損なわれるという問題があった。
【0011】
さらに、ショックアブソーバを使用したサスペンションシートにおいて、減衰が大きすぎるとサスペンションの減衰域、共振周波数の約1.4倍以上で、シート本来の振動絶縁性を劣化させる可能性がある。
【0012】
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、永久磁石を利用した減衰特性を有する磁気バネを提供することにより、安価で簡素な構成の動特性制御系あるいは高能率機関を実現することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のうちで請求項1に記載の発明は、同一磁極が対向する第1及び第2の永久磁石を互いに離間せしめ、該第1及び第2の永久磁石が最も接近した最近接位置と最も離間した最離間位置との間で上記第1の永久磁石を上記第2の永久磁石に対し往復運動させる機構と、上記第1の永久磁石の摺動とともに上記第1の永久磁石が上記第2の永久磁石に向かって接近するにつれて上記第1及び第2の永久磁石間の対向面積を増大させる一方、上記第1の永久磁石が上記第2の永久磁石から離反するにつれて上記第1及び第2の永久磁石間の対向面積を減少させる手段と、上記対向面積の増加を遅らせる位相遅れ発生手段とを設け、上記第1の永久磁石に入力が加えられ、上記第1の永久磁石が第2の永久磁石に向かって接近すると、上記第1及び第2の永久磁石の対向面積が増加して、上記位相遅れ発生手段により離反方向に最近接位置を過ぎた位置で最大反発力を発生させ、その後、上記第1の永久磁石は上記第2の永久磁石との反発力により上記第2の永久磁石から離反しながら対向面積を減少させるようにしたことを特徴とする磁気バネである。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、互いに平行に延在する基台と頂板を設け、上記第1の永久磁石を上記基台に摺動自在に取り付ける一方、上記第2の永久磁石を上記頂板に固定し、上記機構により上記基台を上記頂板に対し往復運動させるようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、上記位相遅れ発生手段は、中央部が上記基台に枢着されたレバーと、該レバーの一端部に取り付けられたバランスウェイトとを有し、上記レバーの他端部に上記第1の永久磁石を枢着するとともに、上記レバーの一端部に対する上記バランスウェイトの位置を調節できるようにしたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、上記レバーを、第1アームと第2アームとを有するL字状レバーにより構成し、上記第1アームの一端を上記第1の永久磁石に枢着する一方、上記第2アームに上記バランスウェイトを取り付けるとともに、上記第1アームと上記第2アームの連結部を上記基台に枢着したことを特徴とする。
【0017】
さらに、請求項5に記載の発明は、同一磁極が対向する第1及び第2の永久磁石を互いに離間せしめ、上記第1の永久磁石に隣接して設けられ2極磁石を構成する第3の永久磁石を、上記第2の永久磁石に隣接して設けられ2極磁石を構成する第4の永久磁石に対し同一磁極が対向するように互いに離間せしめ、上記第1及び第3の永久磁石は逆磁極を対向させて吸引力を作用させ、上記第1及び第2の永久磁石と上記第3及び第4の永久磁石がそれぞれ最も接近した最近接位置と最も離間した最離間位置との間で上記第1及び第3の永久磁石を上記第2及び第4の永久磁石に対し往復運動させる機構を設けるとともに、上記第3の永久磁石に一端部が連結され揺動自在に中央部が支持された揺動レバーと、該揺動レバーの他端部に取り付けられたバランスウェイトとにより上記第3の永久磁石の揺動手段を構成し、上記第1及び第3の永久磁石に入力が加えられ、上記第1及び第3の永久磁石が上記第2及び第4の永久磁石に向かってそれぞれ接近すると、上記バランスウェイトの慣性力により上記第1及び第3の永久磁石の吸引力に抗して上記第3の永久磁石が揺動し、上記最近接位置あるいはその近傍で最大反発力を発生させ、その後、上記第1及び第3の永久磁石はそれぞれ上記第2及び第4の永久磁石との反発力により上記第2及び第4の永久磁石から離反させるようにしたことを特徴とする磁気バネである。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、互いに平行に延在する基台と頂板を設け、上記第1の永久磁石を上記基台に固定し、上記第3の永久磁石を上記基台に揺動自在に取り付ける一方、上記第2及び第4の永久磁石を上記頂板に固定し、上記機構により上記基台を上記頂板に対し往復運動させるようにしたことを特徴とする。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、上記揺動手段は、上記揺動レバーの中央部を上記基台に枢着し、上記揺動レバーの他端部に上記バランスウェイトをその位置を調節できるように取り付けて構成したことを特徴とする。
【0020】
また、請求項8に記載の発明は、上記最近接位置を過ぎた位置で最大反発力を発生するようにしたことを特徴とする。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
互いに離間し同磁極を対向させた少なくとも二つの永久磁石を有する磁気バネ構造体の場合、離間した永久磁石同士は非接触のため、構造体自体の摩擦損失が無視できる程小さいとき可逆的で、その静特性は入力時(行き)と同一ライン上を非線形で出力され(帰り)、さらに、非接触対偶特有の自由度、浮上制御系の不安定度を利用することにより、小さな入力で静磁界(磁石の配置)を変化させることで負の減衰を生じやすい。
【0029】
本発明はこの事実に着目してなされたものであり、二つの永久磁石間の幾何学的寸法を運動行程内機構あるいは外力により入力側(行き)と出力側(帰り)で変化させ、その運動系内で反発力に変換させることにより、二つの永久磁石の平衡位置からの入力側の反発力より出力側の反発力を大きくしている。
【0030】
以下、その基本原理について説明する。
図1は、入力側と出力側における二つの永久磁石2,4の平衡位置を示した模式図で、図2は、いずれか一方の永久磁石に加えられた荷重と、二つの永久磁石の平衡位置からの変位量との関係を示した磁気バネ構造体の基本特性を示している。
【0031】
図1に示されるように、永久磁石2に対する永久磁石4の入力側の平衡位置とバネ定数をそれぞれx0,k1とし、出力側の平衡位置とバネ定数をそれぞれx1,k2とし、x0〜x1の間で対向面積を変化させると、各平衡位置では次の関係が成立する。
−k1/x0+mg=0
−k2/x1+mg=0
k2>k1
【0032】
従って、その静特性は、図2に示されるように負の減衰特性を示し、位置x1と位置x0におけるポテンシャルの差が発振のポテンシャルエネルギと考えることができる。
【0033】
また、図1のモデルを製作し、荷重と変位量との関係を、荷重を加える時間を変えて実測したところ、図3に示されるようなグラフが得られた。これは、二つの永久磁石2,4が最近接位置に近づくと、大きな反発力が作用すること、また、平衡位置からの変位量が微小に変化すると摩擦損失が磁気バネのダンパー効果により発生し、そのことにより減衰項が現れたものと解釈される。
【0034】
図3において、(a)は一定荷重を加えた場合のグラフで、(a)、(b)、(c)の順で荷重を加えた時間が短くなっている。すなわち、荷重の加え方により静特性が異なり、荷重を加える時間が長いほど力積が大きい。
【0035】
また、希土類磁石は、磁化の強さが磁界に依存しない。つまり、内部磁気モーメントが磁界による影響を受けにくいので、減磁曲線上で磁化の強さはほとんど変化せず、ほぼその飽和磁化の強さの値を保っている。従って、希土類磁石では、端面上に磁荷が均一に分布していると仮定したチャージモデルを用いて、入出力が考えられる。
【0036】
図4はその考え方を示しており、磁石を最小単位の磁石の集合と定義し、各単位磁石間の力の関係を三つに分類して計算したものである。
(a)吸引(r,mとも同一なので、2タイプを1つで定義する)
f(1)=(m2/r2)dx1dy1dx2dy2
fx (1)=f(1)cosθ
fz (1)=f(1)sinθ
(b)反発
fx (2)=f(2)cosθ
fz (2)=f(2)sinθ
(c)反発
fx (3)=f(3)cosθ
fz (3)=f(3)sinθ
従って、
−fx=2fx (1)−fx (2)−fx (3)
−fz=2fz (1)−fz (2)−fz (3)
ここで、クーロンの法則は次のように表されるので、
F=k(q1q2/r2) r:距離
q=MS q1,q2:磁荷
(m) M(m):磁化の強さ
S:面積
上記−fx,−fzを磁石の寸法の範囲で積分して力を求めることができる。
【0037】
これを図5に示されるように、対向する磁石を各磁気ギャップ毎に完全にラップした状態(x軸移動量=0mm)から完全にずれた状態(x軸移動量=50mm)まで移動させて計算したのが図6のグラフである。ただし、「内部磁気モーメントは一定」と定義してあるが、磁気ギャップが小さいときは磁石の周辺で乱れが生じるので、補正している。
【0038】
上記計算結果は実測値とも略一致しており、図2のポイントaからbに移動させる力がx方向荷重で、出力はz方向荷重で表されており、不安定系故の入力<出力の関係が静的に明確になっている。
【0039】
また、図7は、図5に示される磁石の離間距離を3mmに保持し、完全にずれた状態から完全にラップした状態まで移動させ、さらにこの状態から完全にずれた状態まで移動した時の関係を表したグラフである。このグラフは、x方向荷重の絶対値は同じで出力方向が逆になって出てくる特性で、完全ラップ状態に近づく場合は抵抗つまり減衰となり、完全ラップ状態から完全にずれた状態に移行する場合は加速されることを示している。この特性を非接触ダンパに活用することで、従来のダンパでは達成できなかった人が認知できる低・中・高周波領域(0〜50Hz)の振動エネルギの低減つまり振動伝達率の改善が可能になった。
【0040】
また、図8に示されるように、対向する磁石の回転角度を変化させると、図9に示されるようなグラフが得られた。当然のことながら、対向面積が減少すると最大荷重が減少し、所定の入力を加えることによる面積変換を介して出力を変化させることが可能なことを示している。
【0041】
図10は、永久磁石としてネオジム系磁石を採用した場合の磁石間距離と荷重との関係を示すグラフであり、反発力は質量増加とともに増加する。ここで、反発力Fは、
F∝Br2×(幾何学的寸法) Br:磁化の強さ
で表され、幾何学的寸法とは、対向する磁石の離間距離、対向面積、磁束密度、磁界の強さ等により決定される寸法を意味する。磁石材料が同一の場合、磁化の強さ(Br)は一定であるので、幾何学的寸法を変化させることにより磁石の反発力を変えることができる。
【0042】
図11は、永久磁石2,4の対向面積を変化させることにより幾何学的寸法を変化させるようにした第一の具体的な磁気バネモデルを示している。
図11において、互いに平行に延在する基台6と頂板8とは、2本のリンク10a,10bからなる左右一対のXリンク10により互いに接続されている。リンク10a,10bの一端は、基台6と頂板8にそれぞれ枢着されるとともに、リンク10a,10bの他端は、頂板8に摺動自在に取り付けられた上部スライダ12と、基台6に摺動自在に取り付けられた下部スライダ14にそれぞれ枢着されている。
【0043】
また、基台6にはリニアウェイ16が固定され、永久磁石2が載置された磁石載置台18がリニアウェイ16に摺動自在に取り付けられる一方、もう一つの永久磁石4が頂板8に固定されている。基台6にはさらに支持台20が固定され、この支持台20に第1アーム22aと第2アーム22bからなるL字状レバー22の中央部が枢着されている。第1アーム22aの一端は磁石載置台18に枢着されるとともに、第2アーム22bにはバランスウェイト24が取り付けられている。
【0044】
上記構成において、基台6にある入力が加えられ、基台6が頂板8に向かって移動すると、バランスウェイト24の慣性力により磁石載置台18はリニアウェイ16に沿って図中右方向に移動する。その結果、二つの永久磁石2,4の対向面積が徐々に増加して、永久磁石2,4の最近接位置あるいはこの位置を過ぎた位置で最大反発力が発生するとともに、反発力により基台6は下方に移動する。基台6が頂板8に対し一往復する間に、図11の磁気バネは図3に示されるような負の減衰特性を示す。なお、バランスウェイト24は基台6に対し多少の位相遅れがあるので、最大反発力が発生する位置は、入力に応じてバランスウェイト24を第2アーム22bに対して移動させることにより適宜調節することができる。また、永久磁石4を上部スライダ12と連動させることにより、タイミング、対向面積の調節も可能である。
【0045】
図12は、二つの永久磁石2,4を基台6と頂板8にそれぞれ固定し、他の二つの永久磁石26,28間のギャップ(離間距離)を可変とすることにより、幾何学的寸法を変化させるようにしたものである。
図12において、永久磁石28は、永久磁石4とは逆にS極を下方に向けた状態で頂板8に固定される一方、永久磁石26は、永久磁石2とは逆にS極を上方に向けた状態で揺動レバー30の一端に固定されている。揺動レバー30は、その中央部が支持台20に揺動自在に取り付けられ、永久磁石26の反対側の揺動レバー30にはバランスウェイト24が取り付けられている。
【0046】
上記構成において、基台6に取り付けられた二つの永久磁石2,26は逆磁極を対向させているので、永久磁石2,26間に吸引力が働き、この吸引力がバランスバネとして作用する。基台6にある入力が加えられ、基台6が頂板8に向かって移動すると、バランスウェイト24の慣性力により、永久磁石26は永久磁石2との吸引力に抗して上方に向かって揺動する。その結果、永久磁石26,28間のギャップが徐々に変化して、その最近接位置あるいはこの位置を過ぎた位置で最大反発力が発生するとともに、反発力により基台6は下方に移動する。基台6が頂板8に対し一往復する間に、図12の磁気バネは図3に示されるような負の減衰特性を示す。なお、最大反発力が発生する位置は、入力に応じてバランスウェイト24を揺動レバー30に対して移動させることにより適宜調節することができることは図11のモデルと同様である。
【0047】
図13は、回転レバーを使用して対向する二つの永久磁石2,4の幾何学的寸法を変化させるようにしたものである。
図13において、永久磁石2は基台6に固定され、この永久磁石2に対向する永久磁石4は、基台6上に立設されたフレーム32に摺動自在に取り付けられた取付台34に固定されている。取付台34にはリンク36の一端が枢着され、その他端は、下部スライダ14の片側に固定された第1支持台38に枢着されている。
【0048】
また、下部スライダ14の反対側には第2支持台40が固定され、第2支持台40に一端が枢着されたレバー42の他端にはピン44が取り付けられている。このピン44は、リンク36の中間部に穿設された長孔36aに遊挿されるとともに、頂板8に枢着されたアーム46の下端に取り付けられている。
【0049】
上記構成において、基台6にある入力が加えられ基台6が頂板8に向かって移動すると、レバー42が図中矢印方向に回転し、二つの永久磁石2,4は互いに接近する。永久磁石2,4は同一磁極を対向させているので、レバー42の回転とともに反発力が徐々に増大し、永久磁石2,4が最近接位置を通過すると、その反発力により永久磁石2,4は互いに離反する。基台6が頂板8に対し一往復する間に、図13の磁気バネはレバー比が変わることで図3に示されるような負の減衰特性を示す。
【0050】
図14は、永久磁石の極変換を利用して幾何学的寸法を変化させるようにした磁気バネを示している。
図14において、基台6に回動自在に取り付けられた永久磁石2には小径プーリ48が一体的に固定されており、このプーリ48は、基台6に回動自在に固定された大径プーリ50にベルト52で連結されている。プーリ50の中心にはリンク54の一端が固定されるとともに、リンク54の他端にはバランスウェイト24が取り付けられたレバー56が固定されている。なお、バランスウェイト24の下端位置は、頂板8にブラケット58を介して取り付けられたバネ部材60により規制されている。
【0051】
上記構成において、基台6にある入力が加えられ基台6が頂板8に向かって移動すると、バランスウェイト24の慣性力により、大径プーリ50が図中矢印方向に回転し、ベルト52を介して永久磁石2が同一方向に回転する。その結果、永久磁石2のS極が、頂板8に固定された永久磁石4のN極に引き寄せられるが、バランスウェイト24が多少の位相遅れの後追随すると、永久磁石2が矢印の逆方向に回転することとなり、永久磁石2のN極が対向する。同一磁極が対向することにより反発力が発生し、基台6が頂板8から離反するように下降するが、基台6が一往復する間に、図14の磁気バネは図3に示されるような負の減衰特性を示す。
【0052】
図15は、永久磁石の磁束密度を変化させることにより幾何学的寸法を変化させるようにした磁気バネを示している。
図15において、基台6に固定された第1支持プレート62と、この第1支持プレート62と所定距離離間して平行に延在する第2支持プレート64に、複数の遮蔽板66の両端がそれぞれ枢着されている。第2支持プレート64の一端は、アーム68を介してL字状レバー70の中間部に枢着されるとともに、L字状レバー70の一端は、基台6に固定された支持台72に枢着され、その他端側にはバランスウェイト24が取り付けられている。
【0053】
上記構成において、基台6にある入力が加えられ基台6が頂板8に向かって移動すると、バランスウェイト24の慣性力により、第2支持プレート64が図中矢印方向に移動し、永久磁石2の上方が遮蔽板66によりある程度遮蔽される。その結果、基台6に取り付けられた永久磁石2の磁束密度が低下し、頂板8に取り付けられた永久磁石4との反発力が減少する。
【0054】
バランスウェイト24が多少の位相遅れの後追随すると、第2支持プレート64は矢印の逆方向に移動するので、永久磁石2の上方が開放されて永久磁石2,4の反発力が増大し、基台6が頂板8から離反するように下降するが、基台6が一往復する間に、図15の磁気バネは図3に示されるような負の減衰特性を示す。
【0055】
次に、上記磁気バネの動特性を図16に示される簡略化した基本モデルを状態方程式で説明する。
図16の入力Fが、永久磁石の面積変換等の幾何学的寸法変化によってもたらされた力である。
【0056】
また、図17は、対向面積50×25mm2、厚さ10mmの二つの永久磁石(Nd−Fe−B系)を互いに反発し合うように対向させたとき、磁石表面間距離(x)と反発力(f)の関係を示したものである。実線はLevenberg-Marquardtアルゴリズムを使用し、回帰分析を行った結果で、f=66/xの関係によく従うことを示している。即ち、磁石間に働く反発力はk/xで与えられる。
【0057】
このことを考慮して、磁気バネ特性の関数化を行い、運動方程式を立案した。まず、図16に示される1自由度バネ・質量・ダッシュポット系の質量に時間tの関数の励振力が作用する場合を考える。図16において、上部永久磁石4の質量とこの磁石4に加わる荷重を合わせた質量をm、バネ定数をk、減衰係数をr、質量mに入力される調和振動をF(t)とすると、運動方程式は次のようになる。
【数1】
これを書き直すと、
【数2】
となる。
次に、この一般式を本発明のモデルに適用する。磁気バネの反発力は、一般式のkxではなく、実測値及び解析結果よりk/xとなる(磁石間距離5〜100mmに限定)。さらに、このモデルが特性を発揮するには、付加質量により平衡点に達する必要があるので、重量項mgが付加される。したがって、その状態方程式は、
【数3】
と表される。
【0058】
ここで、平衡位置をx0、平衡位置からの変位をyとすると、
【数2】
【0059】
ここで、k/x0 2=k′とおくと、
【数3】
【0060】
調和振動をF(t)=Fei ω tとおき、y=xei ω tとおくと、
【数4】
ここで、φは位相遅れを示す。
【数5】
従って、固有振動数(共振周波数)ω0は、
【数6】
となる。固有振動数とバネ定数の関係が、金属バネとは逆の関係になっている。つまり、非線形であるため、動作点の設定位置及び磁気回路の調整で、荷重−変位特性の最適な曲率を求めることができれば、共振点を一定にすることができる。
【0061】
ここで、式(2)はさらに、次のように表すこともできる。
【数7】
yをxとおいて、3次の項まで考慮すると、
【数8】
【0062】
式(3)には、2次の項に−bx2という減衰項が表れているが、式(3)をさらに簡単なイメージに置き換えると、
【数9】
【0063】
ここで、x=x0cosωtとおくと、
【数10】
【0064】
つまり、微小振動領域では、周期的な外力に対して、絶えず一定の反発力((b/2)x0 2)が加わっていて、その力で周期的外力を減衰させることになる。つまり、永久磁石の運動の軌跡を調整することにより、ダンパー機構を付与しなくても減衰効果を得ることができる。
【0065】
そこで、図18の装置を使用して、磁石単体の動特性を調べたところ図19及び図20に示されるような結果が得られた。
【0066】
図18の装置は、二つの永久磁石2,4を互いに対向せしめ、面積変換することなくXリンク10を介してその離間距離を変更するようにした装置である。
【0067】
また、図19及び図20において、横軸は周波数(Hz)を示し、縦軸は振動伝達率(G/G)を示している。また、図19において、(a),(b),(c),(d),(e),(f)はそれぞれ、50×50×10mm,50×50×15mm,50×50×20mm,75×75×15mm,75×75×20mm,75×75×25mmの磁石を使用して、同じ負荷30kgを加えているのに対し、図20においては、50×50×20mmの同じ磁石を使用して、53kgと80kgの異なる負荷を加えたものである。
【0068】
図19及び図20は磁気バネの非線形特性を示したもので、両図から、負荷質量が同一の場合は、磁石の対向面積が大きくなると磁石間距離が大きくなり、共振点は低周波域へ移行し、振動伝達率も下がる。つまり、金属バネや空気バネとは逆の挙動を示す。一方、磁石サイズが同じ場合には、負荷質量が変わっても共振点は変化せず、負荷質量を大きくすると振動伝達率は下がっている。つまり、負荷の軽重で共振点における振動伝達率に大小が生ずることがわかる。
【0069】
以上のことから、固有振動数が同一になる荷重−変位曲線を設計することで、低周波領域のみであるが、負荷質量が変動しても共振点を一定に保ち、振動伝達率を小さく抑えることができる。これらは、式(4)、(5)、(6)で述べているバネ定数kと負荷質量mによる減衰効果である。
【0070】
また、図21は比較例としての、従来の乗用車シートの動特性を示すグラフであり、振動伝達率が全体として高く、負荷の変動にともない共振点及び振動伝達率はともに変動している。
【0071】
ところで、上記式(1)において、対向する永久磁石間の幾何学的寸法を運動行程内機構(反発系の中で、永久磁石を動かすメカニズム)あるいは外力により変化させると、バネ定数kは、図22に示されるように、時間とともに変化する長方形波k(t)であって、周期T=2π/ωにおいて、+k’と−k’の値を1/2周期毎に交互にとる。従って、式(1)は次のように表される。
【数11】
(i)0<t<π/ωにおいて、
【数12】
(ii)π/ω≦t<2π/ωにおいて、
【数13】
【0072】
ここで、0<t<π/ωの時の平衡位置をx0、平衡位置からの変位をy1とすると、
【数14】
【0073】
ここで、(n−k’)/x0 2=k1′とおくと、
【数15】
【0074】
調和振動をF(t)=Fei ω tとおき、y1=xei ω tとおくと、
【数16】
ここで、φは位相遅れを示す。
【数17】
従って、共振周波数ω0は、
【数18】
【0075】
同様に、π/ω≦t<2π/ωの時、
【数19】
従って、y1<y2で、発散することとなる。
【0076】
一般に、自励振動系は負の粘性減衰を有するバネ−質量系と置き換えることができ、振動中に外部から振動エネルギが導入されるが、実際に発生する振動は、質点に空気抵抗や各種の抵抗が発生し、エネルギを消失する。
【0077】
しかしながら、本発明の負の減衰特性を有する磁気バネに外力として振動エネルギが導入されると、上記したように、y1<y2で発散し、発散し続けると振幅が次第に増大し系が破壊されるか、あるいは、変位の増大とともに大きくなる減衰項を上記状態方程式に追加することにより、正の減衰が作用し負の減衰と釣り合った状態で定常的な振動を行うようになる。すなわち、バネ定数k(t)と同様、減衰係数も可変で、式(1)はさらに次のように書き直すこともできる。
【数20】
【0078】
本発明の磁気バネを有する振動系は、持続振動、発散振動を誘発するエネルギ変化・変換系が振動系内部に存在しており、上記状態方程式に正の減衰項を機構的に加えることにより、さらに次の状態方程式を得ることができる。
【数21】
【0079】
この状態方程式は、r2≠0の時、xが増大すると左辺3項が大きくなり、かつ、バネ項の減衰項により正の減衰が働く。従って、永久磁石による内部励振特性として、変位が小さい時は負の減衰で、変位の増大とともに正の減衰が働き、正と負の減衰がつりあう振幅で振動が定常的になる。
【0080】
また、振動系の質量、減衰係数、バネ定数のうち一つ以上について、その大きさが時間とともに変化する場合、これによって生じる振動を係数励振振動と呼ばれているが、上記式(7),(8),(9)は励振源自体が振動する係数励振振動となっており、系内の非振動的エネルギが系内部で振動的な励振に変換されて振動を発生させる。
【0081】
通常は供給エネルギは動力エネルギの一部が変換したものであるから、動力エネルギに上限があると供給エネルギにも限りがあり、これが消費エネルギに等しくなった時点で振幅が抑えられる。永久磁石によるポテンシャルエネルギは、その系の動力エネルギとは独立しており、消費エネルギとの格差を広げることができるが、永久磁石の質量当たりの最大エネルギ積が増大すれば、さらにこの格差を大幅に広げることも可能で、1サイクル中で、負の減衰による供給エネルギを減衰による消費エネルギよりも大きくすることにより、振動エネルギは増大する。
【0082】
前述したように、式(1)において、減衰係数r及びバネ定数(係数)kは自由に制御することが可能で、例えば図1の模式図において、永久磁石4が最下端にある時、永久磁石2との対向面積を最大とすることで振幅を減衰でき、磁力ブレーキ、動吸振器等に応用することができる。また、最下端から最上端に向かって永久磁石4が離れ出してから対向面積を最大にすることで反発力を増大することができるので、発電機やアンプ等に応用することもできる。
【0083】
また、上記状態方程式の解から分かるように、本発明の係数励振振動系は、負荷の変動によって固有振動数が変化しても、励振振動数を移動させることで振幅の変動を少なくすることができる。すなわち、励振振動数を可変とし、手動又は自動的に共振振動数を追尾させて、常に周波数特性の共振振動数が低下するところで動作させることが可能で、自動車用シートの除振装置として使用することにより、振動絶縁性が向上でき、その個別性能を改善することができる。例えば、共振点を4Hz以下に下げることもできる。また、負の減衰を利用することによる低周波の改善と永久磁石の持つ非線形特性を特化させることによる体重差の吸収が可能となる。
【0084】
ここで、ウレタンとファイバを組み合わせたパッドあるいは本発明の磁気バネ構造を採用したベッド型除振ユニットを使用して振動実験を行ったところ、図23に示されるような結果が得られた。
【0085】
図23のグラフからわかるように、パッドとともに本発明の磁気バネ構造を採用したものは、パッドのみを採用したものに比べ、共振周波数が半分以下の3Hzまで減少し、除振ユニットとして極めて有効であることが認められた。さらに、セミアクティブ制御を行うことにより、共振点における振動伝達率を1/3程度に減少することができた。
【0086】
さらに、図24のマグレブ(magnetic levitation:磁気浮上)ユニットの動特性を調べたところ、図25のような結果が得られた。
【0087】
図24のマグレブユニットは、基台74の上に複数の揺動レバー76を介してシート78を揺動自在に支承し、基台74の上面に二つの永久磁石80,82を所定距離離間せしめて固定する一方、この永久磁石80,82に対し同磁極が対向する永久磁極84をシート78の下面に固定している。なお、永久磁極80,82,84としては、75×75×25mmのものを使用した。
【0088】
このマグレブユニットに53kg,75kg,80kgの異なる負荷を加えたが、図25に示されるように、負荷の変動による振動伝達率の差を小さく抑えることができるとともに、共振点を略一致させることができた。
【0089】
また、乗用車用シート、サスペンションシートA、サスペンションシートB、及び、本発明にかかるマグレブユニットの乗り心地評価を調べたところ、図26のような結果が得られた。なお、マグレブユニットの負荷は53kgとし、75×75×25mmの永久磁石を使用した。また、図中、「固定」はシートをサスペンションに固定しただけの状態を示すとともに、ウレタン、ゲル、スチレンはユニットの上に取り付けたクッション材を示している。
【0090】
ここで、乗り心地評価定数として、”SAE paper 820309”に記載され次式で表される乗り心地指数R(Ride Number)を使用した。
R=K/(A・B・fn)
変数A,B,fnはシートの伝達関数(T.F.)から求められ、それぞれ次の値を示している。
A: T.F.の最大値
B: 10HzにおけるT.F.値
fn:共振周波数あるいはAが現れた周波数
K: 全く異なったシートを表現する乗り心地係数(多様なシートを使用し たので、K値は"1”と定めた)
ISO乗り心地評価は小さい数値で乗り心地が良いことを表すのに対し、上記乗り心地指数Rはその数値が大きいほど良い乗り心地を意味している。
【0091】
図26からわかるように、乗り心地評価をしたシートのうち、乗用車用シートは0.2〜0.3(オールウレタン系)、0.3〜0.5(バネ系)、体重調整を行ったサスペンションシートは0.5〜0.7の値を示し、本発明のマグレブユニットの乗り心地は他のシートより良く、53kgの負荷に対して0.75〜1.60の乗り心地評価定数が得られた。
【0092】
また、図27は負荷を変えた場合のマグレブユニットの乗り心地評価定数を示しており、この図からわかるように、どの負荷に対しても0.7以上の乗り心地評価定数が得られ、本発明にかかるマグレブユニットの乗り心地の良さを示している。
【0093】
また、図28は、乗用車用シート、サスペンションシートA、サスペンションシートB、及び、本発明にかかるマグレブユニットの動特性を示しており,図中、(a)は乗用車用シート、(b),(c)はサスペンションシートAにそれぞれ53kg及び75kgの負荷を加えたもの、(d),(e)はサスペンションシートBにそれぞれ45kg及び75kgの負荷を加えたもの、(f),(g)は本発明にかかるマグレブユニットにおいてクッション材を変えたもの、(h)は本発明にかかるマグレブユニットをセミアクティブ制御したものをそれぞれ示している。
【0094】
図28からわかるように、マグレブユニットの共振点は2〜3Hzの間にあり、低・高周波領域の振動伝達率も小さいことがわかる。さらに、セミアクティブ制御を行うことにより、共振点をさらに減少させることができるとともに、その振動伝達率を広範囲の周波数領域において低減できることが確認できた。
【0095】
また、本発明の非線形振動系あるいは係数励振振動系に衝突振動を活用することもできる。
衝突は、摩擦とともに代表的な機械系の非線形現象であり、衝突を生ずると物体の変形抵抗のように急に運動を妨げるものが作用するので、急速に減速して非常に大きな加速度を生ずる。磁気バネも衝突と同一の現象(疑似)を起こしている。
【0096】
物体がある運動エネルギを持って衝突すると接触部の変形、すなわち、塑性変形仕事、接触表面の摩擦仕事、物体内部への弾性波動、外部への音響エネルギとして散逸し、残りが弾性エネルギに変換し、運動エネルギに再変換される。前述したように、磁気バネの場合、非接触のため大きな損失がなく、その静特性として同一ライン上を非線形で帰り、負の減衰を生じさせやすい。
【0097】
例えば、マグレブユニットでストッパに当たらない場合は、加速度に変換され+αの反発力で自励させたり、非接触故の低減衰振動ながら、人体に悪影響を与えない振動特性を示す。さらに、金属バネとの組合せにより、加速度が減衰を越える場合ハードバネによる完全弾性衝突を誘発させ自励させて、2次共振を防ぐこともできる。エネルギ損失分は磁場のポテンシャルエネルギの変換によって補うこともできる。
【0098】
また、一般的な防振の基本原理として、質量効果、振動絶縁、振動減衰、振動干渉、伝播の指向性を考慮する必要があり、弾性支持すると、上下動や横揺れを惹起するので、防振基礎を重たくかつ大きくし、支持スパンを長くとればよい。また、粘性ダンパ、摩擦ダンパの併用で減衰を与えると、衝撃によって与えられたエネルギをダンパ等で次の衝撃までに速やかに消散して振れを減衰させることができる。
【0099】
さらに、摩擦減衰を抑えるために、ストッパを弾性支持することにより対向衝撃を利用して防振とエネルギ変換を行い、磁気バネの反発力不足を補うこともできる。
【0100】
図29は、ストッパを弾性支持した場合のモデルを示しており、弾性支持部材のバネ定数kを所定の加速度あるいは振幅を吸収可能で、かつ、可変とし、バネ定数kを適宜調節して共振点を調節できるようにしたものである。
【0101】
この構成は、所定値以下の加速度あるいは振幅がストッパに加わると、弾性支持部材が弾性変形することにより摩擦減衰を抑制し、その対向衝撃を利用して磁気バネの反発力不足を補償するとともに、除振性能を向上させることができる。
【0102】
図30は、対向面積50×25mm2、厚さ10mmの磁石で、摩擦ロスを極力小さく抑えたスライド型原理モデルの入出力の実験値を示したものであり、このときの負荷質量は3.135kgであった。
【0103】
同様に、面積変換率80%(対向面積:250→1250mm2)のスライド型から、面積変化の度合いが非線形の回転型で、面積変換率を50%(対向面積:625→1250mm2)に変えた場合を考える。
【0104】
図31は、対向面積50×25mm2、厚さ10mmの磁石を対向させ、一方の磁石の重心位置を回転中心として面積変換させた回転型原理モデルの入出力の実験値を示しており、図32は、同じ回転型原理モデルの入力と出力の実験値を表したものである。
【0105】
永久磁石を使用したエネルギー取り出しは、(見かけ上の出力/入力)の差を大きくしていくことで、見かけ上エネルギーを生み出していることになる。図33は、入出力原理モデルの要点を示す。非接触系であるため、加速度も活用でき、より大きなエネルギーを見かけ上生み出すことができる。
磁石間に働く反発力は、仮想仕事の原理が適用され、磁石の移動による蓄積磁気エネルギーの変化分と磁石の移動による仕事量が等しくなっている。磁気エネルギーの引き出し方が倍力アクチュエータのポイントになる。
【0106】
つまり、無限遠にある永久磁石を、ある有限の位置に設置するために仕事が必要になる。一度設置すると、例えば、反発系の永久磁石の対向する面積を変えることをトリガーとすることで、その設置に使われた仕事、即ち蓄積された磁気エネルギーを開放して出力として利用し、アンプのように力を増幅させることができる。
【0107】
電気的エネルギーを入力することで、増幅するトランジスタと同じ効果となるが、このアンプの特徴は蓄積された磁気エネルギーを効率よく力学的エネルギーに変換し、利用することにある。即ち、見かけ上、小さな入力(仕事)で大きな出力(仕事)をすることになる。
【0108】
仕事Wは、
W=Wg(h)+Wm(h)=mgh+Wm(h)
で表される。
エネルギーの変化分ΔWは、
ΔW=mg・Δh+ΔWm(h)
となる。
mg・Δh≫ΔW
であるため、
mg・Δh−ΔW=−ΔWm(h)>0
ΔWm(h)は蓄積磁気エネルギーの減少分を示す。
回転型モデルは、
−ΔWm(h)≒ΔW
となり
mg・Δh≒2ΔW
となっている。
【0109】
また、蓄積磁気エネルギーは、磁石間距離が小さく磁束密度が一様とすると、Wm(h)=1/2BHV=B2Sh/(2μ0)
となる。このときのBは空隙部の磁束密度、Hは空隙部の磁界、Vは空隙部の体積、hは空隙部の距離、Sは磁石断面積を示す。磁石のΔhだけの移動による蓄積磁気エネルギーの変化分は、
ΔWm(h)=B2SΔh/(2μ0)
となる。磁石間の反発力をFとすると、移動による仕事量は、FΔhとなる。
ΔWm(h)=FΔh
となり、反発力Fは、
F=B2S/(2μ0) (N)
で表される。Br=1.0T、対向面積100×100mm2、厚さ10mmをチャージモデルで計算すると、図34が得られる。
【0110】
また、図35は、反発力の変化の様子を示しており、使用した磁石は、対向面積50×25mm2、厚さ10mmである。
【0111】
同様に、金属バネモデルで考えてみる。
図36は、図37で示す金属バネモデルで、mg=10N、k=1N/mm、L=200mmに設定し、摩擦0で機械的変形なしの理想状態の計算値である。
【0112】
静的には、金属バネ、空気バネ、磁気バネは同じ傾向を示す。しかしながら、磁気浮上対偶は、従来の機械的対偶に比べて低次対偶となり、非線形性及び加速度の活用という面を加えると、効率を含めて実用上大きな差が生じる。図38は回転型の原理モデルを、図39はスライド型の原理モデルを示している。
図38の回転型原理モデルにおいて、下部永久磁石2は基台90に回動自在に取り付けられており、上部永久磁石4はスライダ92に上下方向に摺動自在に取り付けられている。従って、互いに対向する二つの永久磁石2,4は、その離間距離あるいは対向面積を変更することにより、図35に示されるような荷重−変位特性を示す。
【0113】
一方、図39のスライド型原理モデルにおいて、下部永久磁石2は基台90に水平方向に摺動自在に取り付けられており、上部永久磁石4はスライダ92に上下方向に摺動自在に取り付けられている。従って、互いに対向する二つの永久磁石2,4は、その離間距離あるいは対向面積を変更することにより、図36に示されるような入出力仕事特性を示す。
【0114】
そこで、図11の磁気バネモデルの加振装置あるいは駆動装置としての特性を調べたところ、図40及び図41のような結果が得られた。
詳述すると、図11の磁気バネモデルにおいて、磁石載置台18、L字状レバー22、バランスウェイト24を取り除いた状態で、図40の加速度を得るためには図中点線で示される推力が必要であった。一方、磁石載置台18、L字状レバー22、バランスウェイト24を取り付け、バランスウェイト24の位置を調節した図11の磁気バネモデルの場合、実線で示される入力で前記加速度を得ることができ、周波数約5.5Hzにおける最小入力時大きな(0.9〜1G)加速度を生み出すことができた。また、振幅についても、図41に示されるように、かなり増幅することができた。
【0115】
すなわち、反発系の永久磁石の対向面積等いわゆる幾何学的寸法を変化させることにより、その磁気バネの共振周波数を利用して、小さな駆動力(入力)で大きな加速度及び振幅を得ることができる。図11の磁気バネモデルで言えば、ギャップ量と対向面積が変数になる。例えば、ギャップ量(入力)の変化に応じてバランスウェイト24により二つの永久磁石2,4の対向面積を追従させることにより、磁気バネのバネ定数の任意の共振点に追従させることが可能である。
【0116】
減衰特性を付与するために、電磁誘導による磁気力の応用を考える。まず、図42を参照して金属導体中の磁場について述べる。図42において、(a)は円柱状磁石と金属導体の座標を、(b)は円柱状磁石の円柱座標を、(c)は金属導体中の電流密度をそれぞれ示している。
【0117】
図42(a)に示されるように、半径aで磁化Mの円柱状磁石で下面の任意の点(x,y)が、導体中の任意の点(ξ,0,z)に作る磁場dHLは、
【数22】
dsは点(x,y)を含む微小面積である。
z成分は、
【数23】
であるから、
【数24】
【0118】
図42(b)に示されるように、円柱座標を使うと、
x=r・cos(ψ)・y=r・sin(ψ)ds=rdψdr
であるから、
【数25】
上面が作る磁界Hz uは、磁石の厚さをhとして、
【数26】
になる。
【0119】
以上のようにして、導体中(ξ,0,z)における磁場の垂直成分Hz(ξ,0,z)は、
Hz(ξ,0,z)=Hz L(ξ,0,z)+Hz u(ξ,0,z)
から求めることができる。
【0120】
次に、導体中の誘導電流について述べる。磁石が接近すると、下向き(z方向)の磁束が増加するので、それを妨げる方向に起電力eが生じる。
【数27】
ここに、φ(R,z)は、導体中、半径Rで囲まれた領域内の磁束である。接近する速度をvとすると、
v=−dz/dt=−Δz/Δt ∴Δt=Δz/|v|
式(10)より、円周Rに沿う電圧Vは、
V=|e|=v・Δφ(R,z)/Δz=v・dφ(R,z)/dz …(11)
となる。
【0121】
磁束φ(R,z)は、以下のように決定される。
図42(c)に示されるように、半径ξの円周と半径ξ+dξの円周で囲まれた部分の磁界は、Hz(ξ,0,z)で与えられ、その面積は2πξ・dξであるから、
Δφ(ξ,z)=μ0Hz(ξ,0,z)・2πξ・dξ
∴φ(ξ,z)=∫0 Rμ0Hz(ξ,0,z)・2πξ・dξ
となる。
【0122】
電気抵抗率をρ、電圧をV、電流をI、回路の断面積をS、回路の長さをd=2πRとすると、電流密度Jは、
J(R,z)=1/s=V/(ρd)=V/(2πR・ρ) …(12)
式(12)に式(11)を代入して、
J(R,z)=v/(2πR・ρ)・dφ(R,z)/dz …(13)
【0123】
次に、磁石と導体との相互作用エネルギーについて述べる。磁束が変化したことにより、導体中に増加した電流エネルギー、即ち磁気エネルギー密度umは、
【数28】
である。
【0124】
電流密度Jに働く力は、
fz(R,z)=∂υm(R,z)/∂z
である。
従って、半径Rの全電流I(R)に働くFz(R)は、
【数29】
となり、ここに、z1は磁石下面から導体上面までの距離、z2は導体下面までの距離である。
【0125】
式(13)、(14)、(15)より
【数30】
全体に働く力は、
【数31】
で与えられる。
ここに、φ(R,z)は、導体中半径Rで囲まれた領域内の磁束で、z1、z2は、それぞれ導体上面、下面の座標で、Fzは導体の厚さT=z2−z1に依存する。
【0126】
図43は、サスペンションシート用除振装置に応用した事例であり、(a)は除振装置全体を、(b)は(a)の除振装置の側面図で、上下方向の減衰構造を、(c)は(a)の除振装置の上部に揺動自在に取り付けられた水平方向の除振ユニットを示している。図中、2,4,94,96は永久磁石を示しており、98は導体としての銅板を示している。
【0127】
この除振装置は、上下方向のバネ性を永久磁石2,4による反発系で得て、それを平行リンク100,100で支持し、前後及び上下方向の電磁誘導による減衰構造が着脱できるサスペンションシート用除振装置である。また、銅板98の板厚を変えることで電磁誘導による減衰力を変化させることができる。
【0128】
図44は、前後方向に対する減衰力効果の有無による振動特性を比較したグラフであり、低周波領域における振動伝達率が電磁誘導によりある程度抑制されている。
【0129】
本発明にかかる磁気バネ構造体においては反発磁極が対向しているので、磁石は互いに減磁界中に置かれていることに相当し、使用中に減磁することが心配される。減磁対策として、疑似的消磁構造、即ち磁極が交互に並ぶように配置することにより減磁界が小さくなる。
このとき、磁壁に相当する交互磁石間で漏れ磁界が生じ、対向磁石が接近したとき、より強い反発力が得られることになる。従って、対向磁石間の距離の関数としての反発力は、交互磁石数に依存する。図45はこの様子を示したものである。
【0130】
図45において、(a)単極,(b)2極,(c)3極,(d)田形4極の磁石配置は、対向面積(75×75mm2)、体積(75×75×25mm3)及びBr値(11.7KG)は同一であるが、パーミアンス係数が下記のように異なっている。なお、(e)は(d)田形4極における矢印方向から見た図である。
パーミアンス係数
(a) 0.10
(b) 0.37
(c) 0.54
(d) 0.49
【0131】
図46は、(a)〜(d)のそれぞれの磁石配置における磁石間距離と反発力との関係を示したグラフである。このグラフからわかるように、対向磁石が互いに接近した場合には、上述したように磁壁に相当する交互磁石間で漏れ磁界が生じることから、極数が多いほど反発力が大きい。
【0132】
次に、サスペンションシート用除振装置を使用して、田形4極と2極の振動特性を比較したところ図47のような結果が得られた。このグラフからわかるように、田形4極は吸引力による減衰効果もあり、2極より内臓、脊柱の共振周波数帯の振動伝達率を下げている。なお、加振条件は、加速度一定で0.3G、LOG-SWEEPのサイン波を使用し、負荷質量は53kgに設定した。
【0133】
従来、自動車用シートで使用されている平衡点まわりのkは10〜30N/mmの間にあり、負荷質量が増すと底付き傾向となる。逆に、負荷質量が減少すると、共振周波数が内臓あるいは脊柱の共振方向にずれたり、振動伝達率が上昇する。そのため、バネ、減衰機能を付与するウレタンフォームをパッド層に用い、金属バネでソフトバネリッチ構造としている。また、減衰機能を強化するためには、ショックアブソーバーを用いている。これらの各種機能部品を使用し、自動車用シートは、振動絶縁性、減衰性、人体支持圧、姿勢保持性をバランスさせている。
【0134】
しかしながら、2〜3.5Hzの低周波域で振動伝達率が1.0G/G以下で、高周波域での2次共振がなく、かつ、フワフワ感もないという特性を両立させることは困難とされている。
【0135】
その対応策として、図48に示されるように、金属バネと空気バネとは逆の挙動を示す磁気バネ特性を用いることで、滑らかな固有振動数変化と荷重−たわみ特性が設計できる。また、図49に示されるような特性を有するサスペンションユニットで、図50に示されるように、2〜3.5Hzで振動伝達率が1.0G/Gをきり、3.5〜50Hz間で0.4G/Gをきる理想的な状態を達成できた。
【0136】
以上より、本発明にかかる磁気バネをサスペンションシートに組み込むことにより、
(1)低周波域2〜3.5Hzで振動伝達率2.0G/G以下という条件下でのサスペンションシートでは、体重調整、ダンパーのハード・ソフト調整機能が不要になる。
(2)低周波域2〜3.5Hzで振動伝達率1.0G/G以下という条件下でのサスペンションシートでは、体重調整が必要になる。
(3)底付き対応機能として磁気バネ特性を組み合わせることで、加速度一定で0.3G、LOG-SWEEPのサイン波では、サスペンションユニットは、高周波域5〜50Hzで高い振動絶縁性を達成できる。
【0137】
一方、負の減衰特性の入出力の関係を倍力機構とすることで、小さな入力で大きな出力を出すアンプが実現できる。これを能動的制御に応用した場合、
(1)駆動部と可動部が非接触なので、隔壁で仕切られたところでも動力の伝達が可能になる。
(2)駆動部と可動部が別空間なので、レイアウトの自由度が広がる。
(3)倍力機能を有し、かつ、駆動部と可動部とも殆どそんしつないため、低騒音で省エネとなる。
(4)アクチュエータ機能をOFFにしても、振動絶縁性を有する構造である。つまり、バネ性と減衰性を有する柔構造のアクチュエータとなる。
【0138】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
対向する少なくとも二つの永久磁石間の幾何学的寸法を外力により入力側と出力側で変化させ、その運動系内で反発力に変換させることにより、永久磁石の平衡位置からの入力側の反発力より出力側の反発力を大きくしたので、パッシブコントロール、セミアクティブコントロール、アクティブコントロールのいずれも同一構想で対処できる。
【0139】
また、永久磁石の対向面積を最近接位置あるいは最近接位置を過ぎた位置で最大反発力を発生するようにしたので、ポテンシャルの場としての磁場を有効利用することができ、廉価な磁力ブレーキ、動吸振器、発電機、アンプ等が実現できる。
【0140】
さらに、本発明は、減衰特性を示す磁気バネを利用して、減衰あるいは持続あるいは発散振動にエネルギを変換する構造としたので、自動車用シートあるいは救急車用ベッド等の除振装置に組み込むことにより、高周波領域の振動伝達率の低減、体重差の吸収、及び、共振点の低下等低周波領域の振動エネルギの低減にも効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる磁気バネにおいて、二つの永久磁石の入力側と出力側の平衡位置を示した模式図である。
【図2】 図1の磁気バネにおいて、加えられた荷重と永久磁石の平衡位置からの変位量との関係を示す基本特性のグラフである。
【図3】 実測された荷重と変位量との関係を示すグラフである。
【図4】 永久磁石の端面上に磁荷が均一に分布していると仮定したチャージモデルにおける入出力の考え方を示す模式図であり、(a)は吸引を、(b)は反発を、(c)は(b)とは異なる部位の反発をそれぞれ示している。
【図5】 同磁極を対向させた永久磁石において、一方を他方に対し移動させた(対向面積を変えた)場合の模式図である。
【図6】 図5に基づいて計算した場合のX軸移動量に対するX軸及びZ軸方向の荷重を示すグラフである。
【図7】 図5の永久磁石の離間距離を一定に保持し、一方を他方に対し完全にずれた状態から完全にラップした状態まで移動し、さらにこの状態から完全にずれた状態まで移動させた時の変位量と荷重との関係を示すグラフである。
【図8】 同磁極を対向させた永久磁石において、一方を他方に対し回転させた(対向面積を変えた)場合の模式図である。
【図9】 図8に基づいて永久磁石を回転させた場合の対向面積に対する最大荷重を示すグラフである。
【図10】 永久磁石としてネオジム系磁石を採用した場合の磁石間距離と荷重との関係を示すグラフである。
【図11】 永久磁石の対向面積を変化させることにより幾何学的寸法を変化させるようにした第一の磁気バネモデルの正面図である。
【図12】 永久磁石間の離間距離を変化させることにより幾何学的寸法を変化させるようにした第二の磁気バネモデルの正面図である。
【図13】 レバー比変換との組合せで幾何学的寸法を変化させるようにした第三の磁気バネモデルの正面図である。
【図14】 極変換により幾何学的寸法を変化させるようにした第四の磁気バネモデルの正面図である。
【図15】 磁気回路変換により幾何学的寸法を変化させるようにした第五の磁気バネモデルの正面図である。
【図16】 磁気バネの特性を説明するための基本モデルである。
【図17】 対向する二つの永久磁石の離間距離と反発力との関係を示すグラフである。
【図18】 面積変換しない場合の磁気バネの静・動特性を得るために使用された装置の正面図である。
【図19】 図18の装置を使用して得られた磁気バネの動特性を示しており、(a)は50×50×10mmの磁石を使用した場合の、(b)は50×50×15mmの磁石を使用した場合の、(c)は50×50×20mmの磁石を使用した場合の、(d)は75×75×15mmの磁石を使用した場合の、(e)は75×75×20mmの磁石を使用した場合の、(f)は75×75×25mmの磁石を使用した場合のグラフである。
【図20】 図18の装置を使用して得られた磁気バネの動特性を示しており、同じ磁石を使用して負荷を変えた場合のグラフである。
【図21】 比較例としての従来の乗用車用シートの動特性を示すグラフである。
【図22】 本発明の磁気バネ構造におけるバネ定数及び係数の時間に対する変化を示すグラフである。
【図23】 パッドのみを使用した場合、パッドと磁気バネを使用した場合、及び、さらにセミアクティブ制御した場合のベッド型除振ユニットの動特性を示すグラフである。
【図24】 磁気バネの動特性を測定するために使用されたマグレブユニットの正面図である。
【図25】 図24のマグレブユニットを使用して測定されたマグレブユニットの動特性を示すグラフである。
【図26】 マグレブユニットを含む種々のシートを使用して測定された乗り心地評価定数を示すグラフである。
【図27】 負荷及びクッション材を変えて測定されたマグレブユニットの乗り心地評価定数を示すグラフである。
【図28】 マグレブユニットを含む種々のシートを使用して測定された動特性を示すグラフである。
【図29】 ストッパ及び弾性支持部材を磁気バネに組み込んだモデルの模式図である。
【図30】 スライド型原理モデルの入出力仕事特性を示すグラフである。
【図31】 回転型原理モデルの入出力の実験値を示すグラフである。
【図32】 回転型原理モデルの入出力仕事特性を示すグラフである。
【図33】 入出力原理モデルの要点を示す説明図である。
【図34】 あるチャージモデルで計算した磁石間距離と反発力及び磁束密度との関係を示すグラフである。
【図35】 面積変換による回転型原理モデルの変位と反発力との関係を示すグラフである。
【図36】 スライド型金属バネモデルの入出力仕事特性を示すグラフである。
【図37】 金属バネモデルの要点を示す説明図である。
【図38】 回転型原理モデルの斜視図である。
【図39】 スライド型原理モデルの斜視図である。
【図40】 図11の磁気バネモデルにおいて、バランスウェイトがある場合とない場合の入力あるいは要求推力と加速度との関係を示すグラフである。
【図41】 図11の磁気バネモデルにおいて、バランスウェイトがある場合とない場合の周波数に対する振幅及び加速度の関係を示すグラフである。
【図42】 金属導体中の磁場モデルを示しており、(a)は円柱状磁石と金属導体の座標を、(b)は円柱状磁石の円柱座標を、(c)は金属導体中の電流密度を示す図である。
【図43】 本発明にかかる磁気バネを組み込んだサスペンションシート用除振装置を示しており、(a)は除振装置全体の正面図を、(b)はその側面図を、(c)は(a)の除振装置の上部に揺動自在に取り付けられた水平方向の除振ユニットの斜視図である。
【図44】 電磁誘導による前後方向減衰力効果の振動特性を示すグラフである。
【図45】 極数の異なる磁気バネの磁石配置を示しており、(a)は単極磁気バネの正面図を、(b)は2極磁気バネの正面図を、(c)は3極磁気バネの正面図を(d)は田形4極磁気バネの正面図を、(e)は(d)における矢印方向から見た平面図である。
【図46】 極数別磁石間距離と反発力との関係を示すグラフである。
【図47】 2極磁気バネと田形4極磁気バネを採用したサスペンションシート用除振装置の振動特性を示すグラフである。
【図48】 各種バネの振動特性を示しており、(a)は金属バネの振動特性を、(b)は空気バネの振動特性を、(c)は磁気バネの振動特性を示すグラフである。
【図49】 磁気バネを採用したサスペンションユニットの静特性を示すグラフである。
【図50】 従来のサスペンションユニットと磁気バネを採用したサスペンションユニットの振動特性を示すグラフである。
【図51】 従来の一般的なサスペンションシートの振動特性を示すグラフである。
【符号の説明】
2,4 永久磁石
Claims (8)
- 同一磁極が対向する第1及び第2の永久磁石(2,4)を互いに離間せしめ、該第1及び第2の永久磁石(2,4)が最も接近した最近接位置と最も離間した最離間位置との間で上記第1の永久磁石(2)を上記第2の永久磁石(4)に対し往復運動させる機構(10,12,14)と、上記第1の永久磁石(2)の摺動とともに上記第1の永久磁石(2)が上記第2の永久磁石(4)に向かって接近するにつれて上記第1及び第2の永久磁石(2,4)間の対向面積を増大させる一方、上記第1の永久磁石(2)が上記第2の永久磁石(4)から離反するにつれて上記第1及び第2の永久磁石(2,4)間の対向面積を減少させる手段(16,22,24)と、上記対向面積の増加を遅らせる位相遅れ発生手段(22,24)とを設け、上記第1の永久磁石(2)に入力が加えられ、上記第1の永久磁石(2)が第2の永久磁石(4)に向かって接近すると、上記第1及び第2の永久磁石(2,4)の対向面積が増加して、上記位相遅れ発生手段(22,24)により離反方向に最近接位置を過ぎた位置で最大反発力を発生させ、その後、上記第1の永久磁石(2)は上記第2の永久磁石(4)との反発力により上記第2の永久磁石(4)から離反しながら対向面積を減少させるようにしたことを特徴とする磁気バネ。
- 互いに平行に延在する基台(6)と頂板(8)を設け、上記第1の永久磁石(2)を上記基台(6)に摺動自在に取り付ける一方、上記第2の永久磁石(4)を上記頂板(8)に固定し、上記機構(10,12,14)により上記基台(6)を上記頂板(8)に対し往復運動させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の磁気バネ。
- 上記位相遅れ発生手段は、中央部が上記基台(6)に枢着されたレバー(22)と、該レバー(22)の一端部に取り付けられたバランスウェイト(24)とを有し、上記レバー(22)の他端部に上記第1の永久磁石(2)を枢着するとともに、上記レバー(22)の一端部に対する上記バランスウェイト(24)の位置を調節できるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の磁気バネ。
- 上記レバー(22)を、第1アーム(22a)と第2アーム(22b)とを有するL字状レバー(22)により構成し、上記第1アーム(22a)の一端を上記第1の永久磁石(2)に枢着する一方、上記第2アーム(22b)に上記バランスウェイト(24)を取り付けるとともに、上記第1アーム(22a)と上記第2アーム(22b)の連結部を上記基台(6)に枢着したことを特徴とする請求項3に記載の磁気バネ。
- 同一磁極が対向する第1及び第2の永久磁石(2,4)を互いに離間せしめ、上記第1の永久磁石(2)に隣接して設けられ2極磁石を構成する第3の永久磁石(26)を、上記第2の永久磁石(4)に隣接して設けられ2極磁石を構成する第4の永久磁石(28)に対し同一磁極が対向するように互いに離間せしめ、上記第1及び第3の永久磁石(2,26)は逆磁極を対向させて吸引力を作用させ、上記第1及び第2の永久磁石(2,4)と上記第3及び第4の永久磁石(26,28)がそれぞれ最も接近した最近接位置と最も離間した最離間位置との間で上記第1及び第3の永久磁石(2,26)を上記第2及び第4の永久磁石(4,28)に対し往復運動させる機構(10,12,14)を設けるとともに、上記第3の永久磁石(26)に一端部が連結され揺動自在に中央部が支持された揺動レバー(30)と、該揺動レバー(30)の他端部に取り付けられたバランスウェイト(24)とにより上記第3の永久磁石(26)の揺動手段(24,30)を構成し、上記第1及び第3の永久磁石(2,26)に入力が加えられ、上記第1及び第3の永久磁石(2,26)が上記第2及び第4の永久磁石(4,28)に向かってそれぞれ接近すると、上記バランスウェイト(24)の慣性力により上記第1及び第3の永久磁石(2,26)の吸引力に抗して上記第3の永久磁石(26)が揺動し、上記最近接位置あるいはその近傍で最大反発力を発生させ、その後、上記第1及び第3の永久磁石(2,26)はそれぞれ上記第2及び第4の永久磁石(4,28)との反発力により上記第2及び第4の永久磁石(4,28)から離反させるようにしたことを特徴とする磁気バネ。
- 互いに平行に延在する基台(6)と頂板(8)を設け、上記第1の永久磁石(2)を上記基台(6)に固定し、上記第3の永久磁石(26)を上記基台(6) に揺動自在に取り付ける一方、上記第2及び第4の永久磁石(4,28)を上記頂板(8)に固定し、上記機構(10,12,14)により上記基台(6)を上記頂板(8)に対し往復運動させるようにしたことを特徴とする請求項5に記載の磁気バネ。
- 上記揺動手段(24,30)は、上記揺動レバー(30)の中央部を上記基台(6)に枢着し、上記揺動レバー(30)の他端部に上記バランスウェイト(24)をその位置を調節できるように取り付けて構成したことを特徴とする請求項6に記載の磁気バネ。
- 上記最近接位置を過ぎた位置で最大反発力を発生するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の磁気バネ。
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