JP3747077B2 - 百日咳菌由来感染防御成分の分離取得方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、百日咳菌由来感染防御成分の分離取得方法に関する。
本発明方法により得られる該感染防御成分を所望の比率で混合し、百日咳ワクチンを製造することができる。
【0002】
【従来の技術】
伝染病の疾患の予防のためワクチンが広く用いられている。百日咳は百日咳菌(Bordetella pertussis)による感染が原因となって生ずる呼吸器系伝染病である。この感染症は、特に乳幼児の場合には、無呼吸発作の咳が生じ、痙攣を伴うことがあり重症になりやすい。そのため百日咳菌を培養し、得られた全菌体を不活化して利用(不活化ワクチン)してきたが、ワクチン接種部位における局所反応、発熱などの副反応が報告され、これを改善することは社会的急務であった。その方策として、百日咳菌から該菌由来感染防御成分を取り出しワクチン化する多くの試みが報告されている。例えば、百日咳菌体から百日咳毒素(PT)、百日咳線維状赤血球凝集素(FHA)、百日咳外膜蛋白(パータクチン:Pertactin、PRNまたは69K-OMPと呼ばれることもある)、百日咳線毛(FIM)などの感染防御蛋白を取り出し、内毒素(ET)を除去した精製百日せきワクチン(Acellular pertussis vaccine:ACPワクチン)も実用化されつつはあるが、後述するような問題があり、十分満足できるまでには至っていない。
百日咳の感染防御成分として既に有効性が証明され実用化されている百日咳毒素、百日咳線維状赤血球凝集素、百日咳外膜蛋白および百日咳線毛をそれぞれ分離取得するためには各感染防御成分により異なった方法が行われている。
百日咳毒素に関しては、ヒトハプトグロビンをリガンドとして用いるアフィニティークロマトグラフィー〔バイオケミカ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica acta)、第580巻、175頁、(1979)〕があるが、ヒトハプトグロビンは人血液から採取されるため肝炎ウイルス混入などの恐れがあり、これは動物血清を用いる場合も同様である。また、変性セルロプラスミンをリガンドとして用いるアフィニティークロマトグラフィー(特開昭62-62135号公報)があり、ウイルス混入の問題は解決できるがワクチン中へのセルロプラスミンの混入や、溶出剤として用いられるチオシアン酸ナトリウムなどは蛋白変性効果があり、毒性も強く体内に残留する恐れなどの問題がある。
百日咳線維状赤血球凝集素に関しては、ハイドロキシアパタイトを用いる精製法〔インフェクション・アンド・イミュニティー(Infection and Immunity)第41巻313頁(1983)、特開昭62-234031号公報、特開平3-169893号公報、特開平4-368337号公報〕があるが、これらの方法はすべて調製済みの市販のハイドロキシアパタイトゲルを用いている。また、カラム操作にも長時間を要し、ハイドロキシアパタイトが高価であるため経済的な面からも、工業生産に用いるには不適当である。
百日咳外膜蛋白に関しては、マウス血清をリガンドとして用いるアフィニティークロマトグラフィー〔インフェクション・アンド・イミュニティー(Infection and Immunity)、第56巻、3189頁、(1988)〕があるが、前記と同様の問題がある。
百日咳線毛に関しては、百日咳菌体から抽出した材料を硫酸アンモニウムと塩化マグネシウムによる塩析法〔インフェクション・アンド・イミュニティー(Infection and Immnity)、第48巻、442頁、(1985)〕で精製しているが、収量が少なくワクチン製造には効率が悪い。
グラム陰性菌ワクチンを製造する際、水酸化アルミニウムゲル処理を行った例(国際特許出願公開番号WO93/10216)があるが、これは多量の水酸化アルミニウムゲルを用い、百日咳菌由来感染防御成分および内毒素を吸着し、これを希釈して使用するため生体内で遊離する内毒素により発熱やエンドトキシン・ショック等の副反応を引き起こす危険性がある。
個々の百日咳菌由来感染防御成分を分離せず該成分の混合物としての百日咳菌ワクチンを製造する際、リン酸カルシウムゲル処理を行った例(特開昭64-52726号公報)があるが、これは1M塩化ナトリウム存在下で該ゲルを生成せしめ、内毒素の吸着除去を行う処理であり、該感染防御有効成分は吸着されない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように百日咳菌由来感染防御成分の取得にあたっては、各成分それぞれに全く異なった精製法を使わざるを得ないのが現状であり、操作上繁雑でワクチンを製造するための大量生産に適した方法とはいえず、実用に供しがたいものである。また、従来の分離方法には、使用する素材や試薬が病原性または毒性を有している等の問題点もある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる技術的背景のもとに、百日咳菌由来感染防御成分を効率よく分離取得する方法を検討した結果、百日咳菌培養物中に、過剰のリン酸イオン存在下でカルシウムイオンを添加して生成せしめるリン酸カルシウムゲルへの吸着性の違いにより、百日咳菌培養物から該菌由来感染防御成分の効率的分離取得が可能であることを見いだし、これらの知見に基づいてさらに研究した結果、リン酸カルシウムゲル処理に、塩溶出、加温抽出を組み合わせてなる該感染防御成分の効率的かつ安全な分離取得法である本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、
(1)百日咳菌培養物に、リン酸イオン存在下にカルシウムイオンを添加して生成せしめたリン酸カルシウムゲルを接触させることを特徴とする、百日咳繊維状赤血球凝集素、百日咳外膜蛋白、百日咳線毛または百日咳毒素の少なくとも1種を分離取得する方法、
(2)百日咳菌培養物を菌体と培養液とに分離し、
(A)該分離菌体を塩溶液で溶出後、その上清に請求項1記載のリン酸カルシウムゲルを接触させ百日咳繊維状赤血球凝集素を分離する工程、
(B)上記工程(A)の溶出処理後の菌体残渣に塩溶液を加えて加温後、請求項1記載のリン酸カルシウムゲルを接触させて得られる上清から百日咳外膜蛋白を分離する工程、
(C)上記工程(A)の溶出処理後の菌体残渣に塩溶液を加えて加温後、その上清に請求項1記載のリン酸カルシウムゲルを接触させ、塩溶液で溶出後の上清から百日咳線毛を分離する工程、
(D)該培養物または該分離培養液を請求項1記載のリン酸カルシウムゲルに接触後、その上清から百日咳毒素を分離する工程、の少なくとも1工程を実施することを特徴とする、百日咳繊維状赤血球凝集素、百日咳外膜蛋白、百日咳線毛または百日咳毒素の少なくとも1種を分離取得する方法、
(3)工程(A)において、上清にリン酸カルシウムゲルを接触後、塩溶液で処理し、百日咳繊維状赤血球凝集素を溶出分離する請求項2記載の分離取得方法、
(4)工程(B)において、リン酸カルシウムゲル接触後の上清をイオン交換ゲルと接触させ、百日咳外膜蛋白を分離する請求項2記載の分離取得方法、
(5)工程(C)において、リン酸カルシウムゲル接触後、その上清を除去した残渣を塩溶液で処理し、百日咳線毛を溶出分離する請求項2記載の分離取得方法、
(6)工程(D)において、上清にイオン交換ゲルを接触させて、百日咳毒素を分離取得する請求項2記載の分離取得方法、
(7)工程(A)および(C)において、塩溶液がアルカリ金属塩含有緩衝液である請求項2記載の分離取得方法、
(8)塩溶液が0.01〜1.0M塩化ナトリウム含有緩衝液である請求項7記載の分離取得方法、
(9)リン酸カルシウムゲルを、リン酸イオン存在下のpH7〜9の培養物またはその上清中に、カルシウムイオンを添加して生成せしめる請求項1または2記載の分離取得方法、
(10)リン酸イオンとカルシウムイオンとの当量比が、カルシウムイオン1当量に対してリン酸イオンが1.25〜30当量である請求項9記載の分離取得方法、
(11)リン酸カルシウムゲルが、0.05〜0.1Mリン酸イオン存在下の培養物またはその上清中に、カルシウムイオン源として酢酸カルシウムを0.1〜2W/V%添加して生成されるものである請求項9記載の分離取得方法、
(12)百日咳毒素、百日咳繊維状赤血球凝集素、百日咳外膜蛋白または百日咳線毛の少なくとも1種を分離後、硫酸アンモニウム存在下、内毒素を水酸化アルミニウムゲルで吸着除去する、請求項1または2記載の分離取得方法、
(13)百日咳毒素、百日咳繊維状赤血球凝集素、百日咳外膜蛋白または百日咳線毛の少なくとも1種を分離後、ゾーナル遠心法により内毒素を除去する、請求項1または2記載の分離取得方法、
(14)百日咳毒素、百日咳繊維状赤血球凝集素および百日咳線毛を4〜6:8〜10:1の組成比で混合してなる百日咳ワクチン、および、
(15)百日咳毒素、百日咳繊維状赤血球凝集素、百日咳外膜蛋白および百日咳線毛を2〜6:4〜10:1〜2:1の組成比で混合してなる百日咳ワクチン、に関するものである。
【0005】
本発明に用いられる百日咳菌〔ボルデテラ パターシス(Bordetella pertussis)〕としては、百日咳菌由来感染防御成分である百日咳繊維状赤血球凝集素、百日咳外膜蛋白、百日咳線毛または百日咳毒素を、1種または2種以上産生し得るものであれば特に限定されない、例えば、百日咳I相菌東浜株〔インフェクション・アンド・イミュニティー(Infection and Immunity)、第6巻、89頁、(1972)〕(当該株は国立予防衛生研究所において保管され(NIHJ 1052)、昭和55年8月13日より財団法人発酵研究所においても受託番号 IFO 14073として寄託されている)、百日咳I相菌山口株、百日咳I相菌18-323株、百日咳I相菌165株など公知の株が挙げられるが、なかでも百日咳I相菌東浜株(IFO 14073)が生産性の面で好都合に用いられる。百日咳菌の培養は公知の方法に従って実施すればよい。例えば、培地としては公知の基本培地、例えばコーエンウイラー培地(Cohen-Wheeler Medium)、ステイナーショルト培地(Stainer-Scholte Medium)等の液体培地を用いることができるが、なかでもステイナーショルト培地が好ましい。感染防御成分および内毒素含有液としては静置培養またはタンク培養して得られる培養物を用いることができる。本発明における培養物とは、前述の百日咳菌を培養して得られる菌体および/またはその培養液を意味する。また、本発明における上清とは、培養上清の他、百日咳菌培養菌体または後述の感染防御成分を吸着したリン酸カルシウムゲルを塩溶液処理もしくは加温処理により溶出して得られる上清を意味する。該菌体は、菌体および菌体残渣を含む。本発明において、百日咳菌培養物を菌体と培養液とに分離する方法は、遠心沈降や濾過など公知の方法が適用できる。
【0006】
本発明で用いられるリン酸カルシウムゲルは、出来合いのゲルではなく、処理対象とする培養物や上清に、過剰のリン酸イオン存在下、カルシウムイオンを添加して、該溶液中に生成せしめたリン酸カルシウムゲル(以下、内ゲル法と称することがある)が好ましく用いられる。本発明方法のリン酸カルシウムゲル処理の場合、前述の出来合いのハイドロキシアパタイトゲルを用いる場合(以下、外ゲル法と称することがある)に比べ、後述するように百日咳繊維状赤血球凝集素および百日咳線毛の吸着効率が良く、また該ゲルからの回収率も高い。また、ゲルの前処理および再生工程が不要であるなどの点で作業効率もよく、コスト的にも有利である。さらにまた、リン酸イオンとカルシウムイオンとの量比を適宜選択することにより、目的とする百日咳菌由来の各感染防御成分を選択的に吸着させることができる。
リン酸カルシウムゲル処理を行う対象とする培養物や上清に、充分量のリン酸イオンが存在しない場合には、適当な濃度のリン酸緩衝液を添加することにより、リン酸イオンを共存させた後カルシウムイオンを添加すればよい。例えば1Mリン酸緩衝液などを添加することにより、リン酸イオンの最終濃度を0.02〜0.2M、より好ましくは0.05〜0.1Mとする。
添加するカルシウムイオン源としては、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウムなどの可溶性のカルシウム塩が挙げられるが、なかでも酢酸カルシウム由来のカルシウムイオンが好ましい。リン酸イオンとカルシウムイオンの割合としてはリン酸イオンがカルシウムイオンに対し過剰である条件がよく、その割合は後述するように目的とする百日咳菌由来の各感染防御成分ごとに適宜選択される。
【0007】
上記の工程(A)において、百日咳繊維状赤血球凝集素の分離取得は、次のように実施される。遠心沈降や濾過など公知の方法により該菌培養物から培養液即ち培養上清を除去後の菌体に、培養液量に対し1/10〜1/20容量の(すなわち、菌体濃度が500〜1000億個/mlとなるように)塩溶液を加え該凝集素を溶出する。この場合の塩溶液としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を添加した緩衝液が好ましく、中でも0.25〜1.0Mのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を添加した0.04〜0.08Mのリン酸緩衝液が好ましく、特に0.5〜1.0Mのアルカリ金属塩を添加した0.05Mのリン酸緩衝液がより好ましい。緩衝液に添加するアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウムまたは塩化マグネシウムなどが挙げられる。例えば、培養液量に対し1/10〜1/20容量の0.5〜1.0M塩化ナトリウムを添加した0.04〜0.08Mリン酸緩衝液(pH7〜9)、とりわけ1M塩化ナトリウムを添加した0.05Mリン酸緩衝液(pH8)を採取菌体に加え、4℃〜室温、好ましくは8〜15°Cで、1〜60分、好ましくは1〜30分間撹拌し、1〜2日間放置し、該凝集素を溶出するのが好ましい。溶出された該百日咳繊維状赤血球凝集素含有液を、次に遠心沈降や濾過など公知の方法により上清を回収する(この処理で同時に得られる菌体残渣は、百日咳外膜蛋白および百日咳線毛の単離に使用される)。こうして得られる上清に、次にリン酸カルシウムゲルを接触させる。
リン酸イオンとカルシウムイオンの割合としてはリン酸イオンがカルシウムイオンに対し過剰である条件がよく、例えば当量比としては、カルシウムイオン1当量に対してリン酸イオンが1.25〜30当量、なかでも1.5〜7.5当量となるのが好ましい。この量比をモル比で表すと、リン酸イオン対カルシウムイオンが0.8〜20M対1M、より好ましくはリン酸イオン対カルシウムイオンが1〜5M対1Mに相当する。例えば、前記濃度(0.02〜0.2M、より好ましくは0.05〜0.1M)のリン酸イオン存在下の溶液(pH7〜9)に、カルシウム塩を最終濃度が4〜70mM、好ましくは8〜50mM(例えば、酢酸カルシウムを最終濃度が0.1〜0.8W/V%、好ましくは0.2〜0.6W/V%)となるよう添加し、4℃〜室温、好ましくは8〜15°Cで、1〜4時間、好ましくは1〜2時間ゆるやかに反応させてリン酸カルシウムゲルを生成せしめる。
添加する酢酸カルシウムは最終濃度が0.8W/V%以上となる量であれば、百日咳繊維状赤血球凝集素は該リン酸カルシウムゲルに吸着されるが、百日咳繊維状赤血球凝集素のみを選択的に吸着させるためには上記の濃度域となるように添加することが好ましい。反応終了後、上清を遠心沈降や濾過など公知の方法により除去し、生じたゲル沈殿を採取する。この沈殿に、培養液量に対し1/10〜1/20量の塩溶液を加え該百日咳繊維状赤血球凝集素を溶出する。この場合、塩溶液としては、前記菌体から百日咳繊維状赤血球凝集素の溶出に用いたものと同様のものを用いることができ、上記ゲル沈殿に、例えば、1/10〜1/20容量の1〜2M塩化ナトリウムを添加した0.05〜0.1Mリン酸緩衝液(pH7〜9)、とりわけ1〜1.5M塩化ナトリウムを添加した0.1Mリン酸緩衝液(pH8)を加え、4℃〜室温でゆるやかに1〜2時間撹拌し、該凝集素を溶出するのが好ましい。撹拌終了後、遠心沈降や濾過など公知の方法により沈殿を除去すると、百日咳線維状赤血球凝集素を上清として回収することができる。該上清は、必要に応じて、公知の硫酸アンモニウム塩析法あるいは限外濾過膜法により濃縮できる。上記処理によって得られる上清に、後述する水酸化アルミニウムゲル処理、またはゾーナル遠心処理を付すことにより、選択的に内毒素が除去された百日咳線維状赤血球凝集素をほとんど損失することなく分離取得することができる。
【0008】
上記、工程(B)または(C)において、百日咳外膜蛋白および百日咳線毛の分離取得は、次のように実施される。百日咳線維状赤血球凝集素含有液を溶出した後の菌体残渣を、培養液量に対し1/10〜1/20容量の(すなわち、菌体濃度が500〜1000億個/mlとなるように)塩溶液を加え加温することにより、該百日咳外膜蛋白および百日咳線毛を抽出する。この場合、塩溶液は、上記工程(A)の場合と同様のものを用いることができるが、例えば、培養液量に対し1/10〜1/20容量の0.15〜0.25M塩化ナトリウムを添加した0.01〜0.05Mリン酸緩衝液(pH7〜9)、とりわけ0.15〜0.25M塩化ナトリウムを添加した0.01Mリン酸緩衝液(pH7)がより好ましい。加温は、40〜80°C、好ましくは50〜60°Cの温水中で、60〜120分間、好ましくは80〜90分間行うのがよい。加温抽出された該百日咳外膜蛋白および百日咳線毛は、遠心沈降や濾過など公知の方法により上清として回収される。こうして得られる上清に、次にリン酸カルシウムゲルを接触させる。この場合、リン酸カルシウムゲル処理は、上記の工程(A)に準じて実施できるが、好ましくは次に示す濃度域で行われる。例えば、必要に応じて1Mリン酸緩衝液などを添加することによりリン酸イオンの最終濃度を0.05〜0.1M、より好ましくは0.1Mに調整したリン酸イオン存在下の溶液(pH7〜9)に、カルシウム塩を最終濃度が40〜180mM、好ましくは55〜150mM(例えば、酢酸カルシウムを最終濃度が1〜2W/V%、好ましくは1.3〜1.7W/V%)となるよう添加し、4℃〜室温、好ましくは8〜15°Cで、1〜4時間、好ましくは1〜2時間ゆるやかに反応させてリン酸カルシウムゲルを生成せしめる。反応終了後、生じた沈殿と上清を公知の分離法例えば濾過、遠心分離などにより分離すると、ほとんど損失することなく上清中に百日咳外膜蛋白を、ゲル残渣中に百日咳線毛をそれぞれ回収することができる。
【0009】
上記処理によって得られる百日咳外膜蛋白粗精製物は、さらに公知の方法により精製することができるが、とりわけ、イオン交換ゲル処理が好ましく用いられる。該イオン交換ゲル処理前に、公知の硫酸アンモニウム塩析あるいは限外濾過膜法により濃縮および脱塩しておくのが好ましい。本発明におけるイオン交換ゲルとしては、陰イオン交換ゲル法、陽イオン交換ゲルなどが挙げられるが、なかでも陽イオン交換ゲルがより好ましく、イオン交換ゲルとの接触はカラムクロマトグラフィー法またはバッチ法のいずれかを実施してもよい。この処理により百日咳外膜蛋白粗精製物中の百日咳外膜蛋白以外の夾雑物を吸着させ、素通りした部分を採取して百日咳外膜蛋白含有液を得る。カラムクロマトグラフィー法ではカラムにイオン交換ゲルを充填し、出発材料の百日咳外膜蛋白粗精製物を流速100〜500ml/cm2/hrで通液させて素通りさせる。バッチ法では容器中に百日咳外膜蛋白粗精製物を入れ、これにイオン交換ゲルを直接添加し、30分〜3時間程度、好ましくは1時間程度撹拌して百日咳外膜蛋白以外の夾雑物を吸着させる。該夾雑物の吸着には、pH5.0〜6.0、伝導度100〜300umho(0.1〜0.3mS)の緩衝液、例えば、0.01〜0.02Mのリン酸緩衝液(pH5.5〜pH6.0)が用いられる。上記処理によって得られる上清に、後述する水酸化アルミニウムゲル処理、またはゾーナル遠心処理を付すことにより内毒素が除去された百日咳外膜蛋白をほとんど損失することなく分離取得することができる。
上記処理によって得られる粗百日咳線毛を含んだゲル残渣は、培養液量に対し1/10〜1/20容量の塩溶液を加え該百日咳線毛を溶出する。この場合においても塩溶液は、上記工程(A)の場合と同様のものを用いることができ、例えば、培養液量に対し1/10〜1/20容量の1〜2M塩化ナトリウムを添加した0.05〜0.1Mリン酸緩衝液(pH7〜9)、とりわけ1〜1.5M塩化ナトリウムを添加した0.1Mリン酸緩衝液(pH8)を加え、4℃〜室温でゆるやかに1〜2時間撹拌し、該百日咳線毛を溶出するのが好ましい。撹拌終了後、遠心沈降や濾過など公知の方法により沈殿を除去すると、百日咳線毛を上清として回収することができる。上記処理によって得られる上清に、前述のように水酸化アルミニウムゲル処理、またはゾーナル遠心処理を付すことにより、選択的に内毒素が除去された百日咳線毛をほとんど損失することなく分離取得することができる。
【0010】
上記の工程(D)において、百日咳毒素の分離取得は、次のように実施される。本工程においては、百日咳菌培養物を培養菌体と培養液即ち培養上清とに分離しないで使用することも可能であるが、遠心沈降や濾過など公知の方法によって該菌培養物から培養上清を回収し、限外濾過膜などで10〜20倍程度濃縮後、遠心沈降などの方法によって予め培養上清を集液しておく方が効率の点からは好ましい。該培養物またはその培養上清に、次にリン酸カルシウムゲルを接触させる。この場合、リン酸カルシウムゲル処理は、上記の工程(A)の場合と同様に実施できるが、次に示す濃度域で好ましく実施される。例えば、必要に応じて1Mリン酸緩衝液などを添加することによりリン酸イオンの最終濃度を0.05〜0.1M、より好ましくは0.1Mに調整したリン酸イオン存在下の溶液(pH7〜9)に、カルシウム塩を最終濃度が40〜180mM、好ましくは55〜150mM(例えば、酢酸カルシウムを最終濃度が1〜2W/V%、好ましくは1.3〜1.7W/V%)となるよう添加し、4℃〜室温、好ましくは8〜15°Cで、1〜4時間、好ましくは1〜2時間ゆるやかに反応させてリン酸カルシウムゲルを生成せしめる。反応終了後、生じた沈殿と上清を遠心沈降や濾過など公知の方法により分離すると、ほとんど損失することなく上清中に百日咳毒素を回収することができる。上記処理によって得られる百日咳毒素粗精製物は、さらに、イオン交換ゲル処理による精製に供されるが、予め硫酸アンモニウム塩析あるいは限外濾過膜により濃縮および脱塩しておくのが好ましい。ここで用いられるイオン交換ゲルとしては、陰イオン交換ゲル法、陽イオン交換ゲルなどが挙げられるが、なかでも陽イオン交換ゲルがより好ましく、イオン交換ゲルとの接触はカラムクロマトグラフィー法またはバッチ法のいずれを採用してもよい。この処理により、百日咳毒素粗精製物中の百日咳毒素をゲルに吸着させ、ついで適当な緩衝液で洗浄して夾雑物を溶出除去したのち、pHやイオン強度を適宜に選択した緩衝液で百日咳毒素を溶出単離する。カラムクロマトグラフィー法による場合、カラムにイオン交換ゲルを充填し出発材料の百日咳毒素粗精製物を流速100〜500ml/cm2/hrで通液し吸着させる。バッチ法の場合、容器中に百日咳毒素粗精製物を入れ、これにイオン交換ゲルを直接添加し、30分〜3時間程度、好ましくは1時間程度撹拌して吸着させる。百日咳毒素粗精製物の吸着は、pH5.0〜6.0、電導度100〜300umho(0.1〜0.3mS)の緩衝液、例えば、0.01〜0.02Mのリン酸緩衝液(pH5.5〜6.0)が用いられる。該百日咳毒素を吸着したイオン交換ゲルからの溶出には、pH7.0〜7.5、電導度1000〜2000umho(1〜2mS)の緩衝液、例えば、0.1〜0.2Mのリン酸緩衝液(pH7.0〜7.5)が用いられる。上記処理によって得られる溶出液に、後述する水酸化アルミニウムゲルによる処理、またはゾーナル遠心処理に付し、選択的に内毒素が除去された百日咳毒素をほとんど損失することなく分離取得することができる。
【0011】
本発明において、内毒素を除去するための水酸化アルミニウムゲル処理は、硫酸アンモニウム共存下で予め調製した水酸化アルミニウムゲルと対象物とを接触させることにより内毒素のみを選択的に吸着除去するものである。しかし、国際特許出願公開番号WO93/10216の方法と異なり、使用するゲルの量が約10分の1以下であり、該ゲルには百日咳菌由来感染防御成分はほとんど吸着されない。
本発明においては通常、硫酸アンモニウム塩析法あるいは限外濾過膜法など公知の方法による濃縮後にこの処理を行うのが好ましい。予め調製した水酸化アルミニウムゲルに供されるアルミニウムイオンとしては、硫酸アルミニウムや塩化アルミニウムなどの可溶性のアルミニウムイオンが挙げられるが、なかでも塩化アルミニウムのアルミニウムイオンが好ましい。水酸化アルミニウムゲルの調製は、25〜190mMのアルミニウム塩溶液に対し(例えば、0.9〜4.5%の塩化アルミニウム塩溶液に対し)、pH7.0〜7.5になるよう2M水酸化ナトリウム溶液を添加し、4℃〜室温でゆるやかに1時間〜3時間反応させて、水酸化アルミニウムゲルを生ぜしめるのがよい。上記処理によって得られた水酸化アルミニウムゲルは、反応終了後遊離のアルミニウムイオンを除去するために、生じたゲル沈殿を濾過、遠心沈降法など公知の方法により回収する。硫酸アンモニウム塩析など公知の方法により濃縮した百日咳菌由来感染防御成分を遠沈法により回収し、沈殿を0.25M塩化ナトリウムを添加した0.25Mリン酸緩衝液(pH7.0〜7.5)に溶解する。該百日咳菌由来感染防御成分に飽和硫酸アンモニウム溶液を最終濃度が2.0V/V%〜8.0V/V%となるよう添加し、さらに、これに、予め調製し回収しておいた水酸化アルミニウムゲルを最終濃度が0.1〜1.0mg/ml好ましくは0.2〜~0.5mg/mlとなるよう添加し、4℃〜室温でゆるやかに30分〜1時間反応させる。反応終了後、水酸化アルミニウムゲルを、濾過、遠心分離など公知の方法により除去すると、内毒素が除去された百日咳菌由来感染防御成分をほとんど損失することなく分離取得することができる。
本発明におけるゾーナル遠心法による処理は、内毒素除去の目的で行われるものであり、硫酸アンモニウム塩析など公知の方法による濃縮後に行うのが好ましい。ゾーナル遠心法としては、例えば、ショ糖密度勾配遠心法、セシウムクロライド密度勾配遠心法、酒石酸カリウム密度勾配遠心法などが挙げられるが、なかでもショ糖密度勾配遠心法が好ましい。例えば、ショ糖密度勾配遠心を、ショ糖濃度0〜30w/v%のグラジエント、Rmax 60,000〜122,000Gで、約10〜24時間の条件で行うと、内毒素が除去された該百日咳菌由来感染防御成分を分離取得できる。
【0012】
本発明により得られる百日咳毒素は、公知の方法、例えば、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・パソロジー〔(Brit. J. Exp. Pathol.)、第44巻、177頁(1963)〕に記載の方法により、トキソイド化(無毒化)してワクチンとして用いることができる。
また、本発明により得られる百日咳繊維状赤血球凝集素、百日咳外膜蛋白および百日咳線毛は、特開昭64-52726号公報に記載の方法により、不活性化してワクチンとして用いることができる。
本発明により得られる百日咳菌由来感染防御成分を任意の所望の比率で混合し、従来の百日咳ワクチンよりも優れた、改良精製百日咳コンポーネントワクチンを製造することができる。即ち、全細胞百日咳ワクチンまたは各成分を分取することなく同時精製した無細胞百日咳ワクチンでは、各成分の組成比が一定で変えることができないのに対し、本発明では各成分を効率良く分離取得しているため、百日咳ワクチンとしてヒト投与する際最適の免疫原性を与える抗原比率を選択することができる。個々の精製した百日咳菌由来感染防御成分は、可能な限り少ない蛋白量でより効果的な免疫原性を与えるよう混合することが望ましい。例えば、後述の実施例に例示した組成比などが挙げられる。本発明における精製百日咳コンポーネントワクチンは、百日咳線維状赤血球凝集素、百日咳線毛および百日咳毒素を混合してなるものが好ましい。また、百日咳外膜蛋白など副作用を与えない生理学的に許容し得る百日咳菌由来の他の成分を含むことも可能である。例えば、後述の実施例中に例示した組成比などが挙げられる。本発明においては、百日咳毒素20〜30μg蛋白/ml、百日咳繊維状赤血球凝集素40〜50μg蛋白/mlおよび百日咳線毛5〜10μg蛋白/mlの蛋白含量で、百日咳毒素:百日咳繊維状赤血球凝集素:百日咳線毛が、4〜6:8〜10:1の組成比、とりわけ百日咳毒素25〜30μg蛋白/ml、百日咳繊維状赤血球凝集素40〜50μg蛋白/mlおよび百日咳線毛5μg蛋白/mlの蛋白含量で、百日咳毒素:百日咳繊維状赤血球凝集素:百日咳線毛が、5〜6:8〜10:1の組成比からなるコンポーネントワクチンがより好ましい。さらに、上記したコンポーネントワクチンに百日咳外膜蛋白5〜10μg蛋白/mlとなるよう加えてもよく、この場合、百日咳毒素:百日咳繊維状赤血球凝集素:百日咳外膜蛋白:百日咳線毛が、2〜6:4〜10:1〜2:1の組成比、とりわけ百日咳毒素25〜30μg蛋白/ml、百日咳繊維状赤血球凝集素40〜50μg蛋白/ml、百日咳外膜蛋白10μg蛋白/mlおよび百日咳線毛5μg蛋白/mlの蛋白含量で、百日咳毒素:百日咳繊維状赤血球凝集素:百日咳外膜蛋白:百日咳線毛が、5〜6:8〜10:2:1の組成比からなるコンポーネントワクチンがより好ましい。
以上述べたように、本発明の効果は、以下のようにまとめられる。各百日咳菌由来感染防御成分に対し、共通の精製手段を用いることを特徴としており、このため、従来のように各成分ごとによって異なる繁雑な操作を行う必要なく、各成分を効率的にかつ収率よく精製することが初めて可能となり、工業的生産上極めて有利である。また、リムラス試験法により内毒素含量を測定した場合、本発明により得られる各百日咳菌由来感染防御成分の内毒素含量は、総蛋白100μg当たり1ng以下であり、実用的価値も極めて高い。また、百日咳線維状赤血球凝集素、百日咳外膜蛋白、百日咳線毛および百日咳毒素などの各コンポーネントを有効に組み合わせた改良精製百日咳コンポーネントワクチンの製造も可能となる。
【0013】
【実施例】
以下に実施例および参考例により、本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲がこれらに限定されるものでないことは言うまでもない。
以下、百日咳毒素をPT、百日咳線維状赤血球凝集素をFHA、百日咳外膜蛋白(パータクチン:pertactin)を69K-OMP(またはPRN)、百日咳線毛をFIMおよび内毒素をET、のようにそれぞれ略称することもある。
実施例1
百日咳菌I相東浜株を最終濃度が20億個/mlになるよう接種し、ステナーショルト培地を用い、ルー瓶静置培養(450ml、35℃、5日間)とタンク撹拌培養(40l、35℃、2日間)を行い該菌培養物を得た。
該菌培養物を限外濾過膜で10分の1に濃縮後、遠心分離により上清と菌体を得た。上清に1Mリン酸緩衝液(pH8.0)を最終濃度が0.1Mになるよう添加後、酢酸カルシウム溶液を最終濃度が1.6w/v%になるよう添加し、室温で1時間撹拌を行った。このカルシウムゲル溶液を濾過し濾過液を採取した。濾過液を限外濾過膜で電導度が200umhoになるよう濃縮と脱塩を行い、スルフォプロピル陽イオン交換クロマトグラフィー(東ソー製)に流し、0.01Mリン酸緩衝液(pH6.0)で洗浄後、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で溶出してPTを得た。次に菌体を培養液量に対し10分の1量の1M塩化ナトリウムを添加した0.05Mリン酸緩衝液(pH8.0)に分散後、遠心分離により上清と菌体を得た。上清に酢酸カルシウム溶液を最終濃度が0.5w/v%になるよう添加し、室温で1時間撹拌を行った。このカルシウムゲル溶液を濾過し、ゲル層を採取した。ゲル層を1M塩化ナトリウムを添加した0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)で溶出してFHA含有液を得た。 更に、菌を培養液量に対し10分の1量に相当する0.15M塩化ナトリウムを添加した0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)に分散後、60℃の温水中で90分加温した後、遠心分離により上清を得た。上清に1Mリン酸緩衝液(pH8.0)を最終濃度が0.1Mになるよう添加後、酢酸カルシウム溶液を最終濃度が1.6w/v%になるよう添加し、室温で1時間撹拌を行った。このカルシウムゲル溶液を濾過し、濾過液とゲル層を採取した。濾過液を限外濾過膜で電導度が200umhoになるよう濃縮と脱塩を行い、スルフォプロピル陽イオン交換クロマトグラフィー(東ソー製)に流し、素通り部分を採取して69K-OMP含有液を得た。一方、ゲル層を1M塩化ナトリウムを添加した0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)で溶出してFIM含有液を得た。
【0014】
対照群の調製は、培養液1リッター当たり220gの硫酸アンモニウムを添加し、充分撹拌した後4℃にて静置した。約14日後遠心分離を行い、上清を捨て沈殿を集めた。得られた沈殿に、培養液量に対し10分の1量に相当する1M塩化ナトリウムを添加した0.05Mリン酸緩衝液(pH8.0)を加え、充分撹拌した。4℃にて4日間放置後、再び遠心分離を行い上清を採取して、PT、FHA、69K-OMPおよびFIMを含む溶液を得た。
各検体中のPT、FHA、69K-OMPおよびFIMの測定はELISA法により精製したPT、FHA、69K-OMPおよびFIMを標準として算出した。単位はμg蛋白/ml。
蛋白含量の測定:牛血清アルブミン(和光純薬 フラクションV)を標準として加熱トリクロル酢酸によって沈殿する蛋白質をローリー法によって測定した。単位はμg蛋白/ml。
ルー瓶培養液の結果を〔表1〕、タンク培養液の結果を〔表2〕にそれぞれ示す。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
これらの表から明らかなように、回収率良く各感染防御成分が単離されている。また、特にタンク培養液では産生の少なかった百日外膜蛋白およびFIMが多量回収されている。
【0017】
参考例1
実施例1に記載の方法で得られた対照群溶液に酢酸カルシウムを最終濃度が0.5w/v%になるよう添加し、室温で1時間撹拌した。このカルシウム溶液を濾過して得られる濾液に飽和硫酸アンモニウム溶液を2分の1量添加して4℃にて7日間静置した。この硫酸アンモニウム塩析物を遠心分離して、沈殿を集め0.25M塩化ナトリウムを添加した0.025Mリン酸緩衝液(pH7.0)で再浮遊したものを材料とした。 この材料に対し、最終濃度が0.4mg/mlになるよう予め調製した水酸化アルミニウムゲルを採取し、遠心分離により回収した水酸化アルミニュウムゲルに硫酸アンモニウムを最終濃度が、0、 2、 4、 8w/v%になるよう添加し室温でゆるやかに30分撹拌させた。反応終了後、水酸化アルミニュウムゲルを遠心分離により除去し上清を得た。各上清について、赤血球凝集活性および内毒素含量を下記の方法に従って測定した。その結果を〔表3〕に示す。
赤血球凝集活性の測定:検体を0.01Mリン酸緩衝液で2倍段階希釈後、0.6v/v%のヒヨコ固定化血球を添加混合し、赤血球凝集反応を行った。凝集を起こした検体の最高希釈倍数を赤血球凝集活性(Haemagglutinin Titer:HA)として測定した。内毒素(ET)の測定:大腸菌(Difico 055 - B5)を標準としてリムラス試験法(和光純薬キット)により測定した。単位はng/ml。この表から明らかなように、硫酸アンモニウム共存下で予め調製した水酸化アルミニウムゲル処理を行うことにより、有効成分を損失することなく、選択的に内毒素を除去することができる。
【0018】
【表3】
【0019】
実施例2
実施例1で得られたPT、FHA、69K-OMPおよびFIMに対し、それぞれ飽和硫酸アンモニウム溶液を2分の1量添加し、充分撹拌した。4℃にて1週間放置後、再び遠心分離を行い、沈殿を採取した。
次いでこの沈殿に0.25M塩化ナトリウムを添加した0.025Mリン酸緩衝液(pH7.0)を添加し溶解して、PT溶液、FHA溶液、69K-OMP溶液およびFIM溶液を調製した。これら各溶液に対し、それぞれに飽和硫酸アンモニウム溶液を最終濃度が4.0V/V%となるよう添加し、さらに、これに、予め調製し回収しておいた水酸化アルミニウムゲルを最終濃度が0.4mg/mlとなるよう添加し、室温でゆるやかに30分撹拌させた。反応終了後、水酸化アルミニウムゲルを遠心分離により除去し、PT、FHA、69K-OMPおよびFIMを調製した。
PT、FHA、69K-OMPおよびFIMを実施例1、内毒素含量を参考例1と同様な方法で測定した。その結果を〔表4〕に示す。
【0020】
【表4】
この表から明らかなように、各感染防御成分をほとんど損失することなく、選択的に内毒素が除去されおり、いずれの成分も蛋白含量100μg/ml当たりの内毒素含量は1ng/ml以下であった。
【0021】
実施例3
実施例1で得られたPT、FHA、69K-OMPおよびFIMに対し、それぞれ飽和硫酸アンモニウム溶液を2分の1量添加し、充分撹拌した。4℃にて1週間放置後、再び遠心分離を行い、沈殿を採取した。次いでこの沈殿に1M塩化ナトリウムを添加した0.05Mリン酸緩衝液(pH8.0)を添加し溶解後、外液に1M塩化ナトリウムを添加した0.05Mリン酸緩衝液(pH8.0)を用いてチューブ法で透析して、PT溶液、FHA溶液、69K-OMP溶液およびFIM溶液を調製した。透析後の濃縮液を、ショ糖密度勾配1〜30w/w%、Rmax 64900Gで約18時間ショ糖密度勾配遠心処理した。遠心終了後、、低速回転で34w/w%ショ糖をローター内に送入して画分採取を行った。
PT、FHA、69K-OMPおよびFIMを実施例1、内毒素含量を参考例1と同様な方法で測定した。その結果を〔表5〕に示す。
【0022】
【表5】
この表から明らかなように、各感染防御成分をほとんど損失することなく、内毒素が除去されおり、いずれの成分も蛋白含量100μg/ml当たりの内毒素含量は、1ng/ml以下であった。
【0023】
実施例4
実施例3で得られたPTに、リジンなどのアミノ酸を添加し、さらにホルマリンを最終濃度0.4v/v%になるよう添加した後、充分に混合し、39℃で21〜35日保持した。また、FHA、69K-OMPおよびFIMにそれぞれホルマリンを最終濃度0.4v/v%になるよう添加した後、39℃で7日保持した。これらを0.15M塩化ナトリウムを添加した4mMリン酸緩衝液(pH7.0)に透析してホルマリンを除去し、無毒化PT、不活化FHA、不活化69K-OMPおよび不活化FIMを得た。無毒化および不活化有効成分を〔表6〕および〔表7〕に示す組成で混合し、それぞれ最終濃度0.2mg/mlになるよう塩化アルミニウム溶液を添加し、ワクチンを調製した。これらワクチンを用いたマウス脳内力価試験を実施し、その結果を〔表6〕および〔表7〕に示す。マウス脳内力価試験は、生物学的製剤基準(厚生省薬務局監修、社団法人 細菌製剤協会発行)に従い測定した。
【0024】
【表6】
【0025】
【表7】
これらの表から明らかなように、不活化69K-OMPおよび不活化FIMのマウス脳内力価に与える影響はすくなく、無毒化PT 25μg蛋白/ml以上の蛋白含量で力価に差は認められず、無毒化PT 25μg蛋白/mlおよび不活化FHA 25〜50μg蛋白/mlで力価は保持されている。
【0026】
実施例5
実施例4で調製したワクチンを用い、マウス噴霧感染防御試験を実施した。マウス噴霧感染防御試験は、4週令のマウスの皮下に3倍段階希釈したワクチンを各々マウス当たり0.2ml接種する。接種4週間後に百日咳1相菌18-323株を噴霧感染器を用いて気道感染させ、感染10日後にマウスから気管および肺臓を摘出し、ホモジナイザーですりつぶした組織を Bordet-Gengou 培地に植え付け、35℃で5日間培養してコロニー数をカウントする。非免疫群のコロニー数をもとに、感染防御量を算出する。気管の場合は75%感染防御量、肺臓の場合は50%感染防御量をμg蛋白で表した。また、高濃度免疫群における増殖阻止率を算出した。
増殖阻止率の算出法は以下の通り。
【数1】
結果を〔表8〕に示す。
【表8】
この表から明らかなように、マウス脳内力価で認められなかった不活化69K-OMPおよび不活化FIMの感染防御効果が示されている。
【0027】
試験例1. リン酸カルシウムゲル(内ゲル法)とハイドロキシアパタイト(外ゲル法)のFHAおよびFIMに対する吸着力の違い
実施例1の方法と同様にルー瓶静置培養で得た百日咳菌培養物を限外濾過膜で10分1に濃縮後、遠心分離により培養上清(試料a)および菌体を得た。この菌体を培養液量に対し10分の1量の1M塩化ナトリウムを添加した0.05Mリン酸緩衝液(pH8.0)を加え、充分撹拌した。4°Cで4日間放置後、再び遠心分離により上清を採取して、PT、FHA、69K-OMPおよびFIMを含む菌体からの抽出液(試料b)を得た。
上記培養上清(試料a)および抽出液(試料b)を下記の1)または2)の方法で処理した。
1) リン酸カルシウムゲル(内ゲル法)処理
1Mリン酸緩衝液(pH8.0)でリン酸濃度を補正した材料に、25%酢酸カルシウム溶液を最終濃度が0.5w/v%,1.0w/v%,2.0w/v%になるように添加後、それぞれ室温で1時間ゆっくり撹拌後、1000rpm、10分間の遠心分離により上清を得、ゲル残渣を1M塩化ナトリウムを添加した0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)による抽出処理で得られた抽出液と併せて処理試料とした。
2) ハイドロキシアパタイトゲル(外ゲル法)処理
0.01Mリン酸緩衝液で平衡化したハイドロキシアパタイトゲル(BDH Chemicals Ltd. 製)を材料液量に対し、2.0w/v%,10w/v%,50w/v%となるように添加後、それぞれ室温で1時間ゆっくり撹拌後、1000rpm、10分間の遠心分離により上清を得、ゲル残渣を1M塩化ナトリウムを添加した0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)による抽出処理で得られた抽出液と併せて処理試料とした。
FHAおよびFIMは、精製したFHAおよびFIMを標準としてELISA法により測定し算出した。単位はμg蛋白/ml。
蛋白含量の測定:牛血清アルブミン(和光純薬 フラクションV)を標準として加熱トリクロル酢酸によって沈殿する蛋白質をローリー法によって測定した。単位はμg蛋白/ml。
FHAおよびFIMのゲルに対する吸着率および吸着後のゲルからの回収率は、それぞれ次式によって求めた。
【数2】
【数3】
この結果を〔表9〕および〔表10〕に示す。
【0028】
【表9】
【0029】
【表10】
リン酸カルシウムゲル(内ゲル法)は、FHAおよびFIMを強く吸着するのに対し、ハイドロキシアパタイトはFIMに対する吸着力が弱い。また、ハイドロキシアパタイトはリン酸カルシウムゲルに比べ、FHAに対する吸着力も弱くハイドロキシアパタイトの添加量に大きく影響される。
【0030】
【発明の効果】
本発明の方法は、各百日咳菌由来感染防御成分に対し、共通の精製手段を用いることを特徴としており、このために各成分を効率的にかつ収率よく精製することが可能となり、工業的生産上極めて有利である。また、本発明方法により得られる百日咳繊維状赤血球凝集素、百日咳外膜蛋白、百日咳線毛および百日咳毒素の各コンポーネントを有効に組み合わせた改良精製百日咳コンポーネントワクチンの効率的な製造が可能となる。
Claims (13)
- 百日咳菌培養物を菌体と培養液とに分離し、
(A)該分離菌体を塩溶液で溶出後、その上清にリン酸イオン存在下にカルシウムイオンを添加して生成せしめたリン酸カルシウムゲルを接触させ百日咳繊維状赤血球凝集素を分離する工程であって、当該リン酸カルシウムゲルが、0.05〜0.1Mリン酸イオン存在下の培養物またはその上清中に、カルシウムイオン源として酢酸カルシウムを0.1〜0.8W/V%添加して生成されるリン酸カルシウムゲルである工程、
(B)上記工程(A)の溶出処理後の菌体残渣に塩溶液を加えて加温後、リン酸イオン存在下にカルシウムイオンを添加して生成せしめたリン酸カルシウムゲルを接触させて得られる上清から百日咳外膜蛋白を分離する工程であって、当該リン酸カルシウムゲルが、0.05〜0.1Mリン酸イオン存在下の培養物またはその上清中に、カルシウムイオン源として酢酸カルシウムを1〜2W/V%添加して生成されるリン酸カルシウムゲルである工程、
(C)上記工程(A)の溶出処理後の菌体残渣に塩溶液を加えて加温後、その上清にリン酸イオン存在下にカルシウムイオンを添加して生成せしめたリン酸カルシウムゲルを接触させ、塩溶液で溶出後の上清から百日咳線毛を分離する工程であって、当該リン酸カルシウムゲルが、0.05〜0.1Mリン酸イオン存在下の培養物またはその上清中に、カルシウムイオン源として酢酸カルシウムを1〜2W/V%添加して生成されるリン酸カルシウムゲルである工程、および
(D)該培養物または該分離培養液をリン酸イオン存在下にカルシウムイオンを添加して生成せしめたリン酸カルシウムゲルに接触後、その上清から百日咳毒素を分離する工程であって、当該リン酸カルシウムゲルが、0.05〜0.1Mリン酸イオン存在下の培養物またはその上清中に、カルシウムイオン源として酢酸カルシウムを1〜2W/V%添加して生成されるリン酸カルシウムゲルである工程を実施することを特徴とする、百日咳繊維状赤血球凝集素、百日咳外膜蛋白、百日咳線毛および百日咳毒素を分離取得する方法。 - 工程(A)において、上清にリン酸カルシウムゲルを接触後、塩溶液で処理し、百日咳繊維状赤血球凝集素を溶出分離する請求項1記載の分離取得方法。
- 工程(B)において、リン酸カルシウムゲル接触後の上清をイオン交換ゲルと接触させ、百日咳外膜蛋白を分離する請求項1記載の分離取得方法。
- 工程(C)において、リン酸カルシウムゲル接触後、その上清を除去した残渣を塩溶液で処理し、百日咳線毛を溶出分離する請求項1記載の分離取得方法。
- 工程(D)において、上清にイオン交換ゲルを接触させて、百日咳毒素を分離取得する請求項1記載の分離取得方法。
- 工程(A)および(C)において、塩溶液がアルカリ金属塩含有緩衝液である請求項1記載の分離取得方法。
- 塩溶液が0.01〜1.0M塩化ナトリウム含有緩衝液である請求項6記載の分離取得方法。
- 百日咳毒素、百日咳繊維状赤血球凝集素、百日咳外膜蛋白および百日咳線毛を分離後、硫酸アンモニウム存在下、内毒素を水酸化アルミニウムゲルで吸着除去する、請求項1記載の分離取得方法。
- 百日咳毒素、百日咳繊維状赤血球凝集素、百日咳外膜蛋白および百日咳線毛を分離後、ゾーナル遠心法により内毒素を除去する、請求項1記載の分離取得方法。
- それぞれ請求項1記載の方法で分離した百日咳毒素、百日咳繊維状赤血球凝集素および百日咳線毛を4〜6:8〜10:1の組成比で混合してなる百日咳ワクチン。
- それぞれ請求項1記載の方法で分離した百日咳毒素、百日咳繊維状赤血球凝集素、百日咳外膜蛋白および百日咳線毛を2〜6:4〜10:1〜2:1の組成比で混合してなる百日咳ワクチン。
- それぞれ請求項1記載の方法で分離した百日咳毒素、百日咳繊維状赤血球凝集素および百日咳線毛を5:10:1の組成比で混合してなる百日咳ワクチン。
- それぞれ請求項1記載の方法で分離した百日咳毒素、百日咳繊維状赤血球凝集素、百日咳外膜蛋白および百日咳線毛を5:10:2:1の組成比で混合してなる百日咳ワクチン。
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