JP3746745B2 - ファイバ型光部品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光学部品として使用される光ファイバと光ファイバを用いたファイバ型光部品に関し、特にファイバ側面からの光の照射により屈折率を上昇させて作製するファイバ型光部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバに光感受性を持つ物質を添加し、その光感受性物質に対応した光を照射することにより屈折率を変化させた光部品が色々と実用化されている。ただし、ここでいう光感受性とは、光の照射により物質の屈折率が変化する特性のことである。その代表例として、光ファイバグレーティングがある。光ファイバグレーティングとは、光ファイバの光が伝搬する領域に所定の周期で摂動を加えたもので、通常その摂動は屈折率の変化である。この周期的な屈折率変化は、光ファイバに光感受性を持つ物質を添加し、この光ファイバに光感受性物質に対応した光を照射することにより作製する場合が多い。この周期的な屈折率変化を得る方法としては、二光束干渉法、位相マスク法、ステップバイステップ法などが広く用いられている。
光感受物質が添加された部分の屈折率上昇は、照射光の吸収により生じる。つまり、照射光は光感受性物質が添加された領域を通ると強度が減衰してしまう。そのため、光ファイバの側面から光を照射する上記のような方法では、照射された側の屈折率が上昇しやすく、逆に反対側では屈折率上昇が小さく抑えられ、光ファイバ断面で均一な屈折率上昇が得られない心配があった。しかし、光感受性物質は従来ファイバのコア部のみに添加されており、その外径は最大でも10μm程度と細いため、屈折率上昇の不均一性は小さく、問題視されていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし最近では、Braggグレーティングにおいてクラッドモードへの結合を抑制するグレーティングや、スラント型Braggグレーティングのようにクラッドにも光感受性物質を添加したファイバを用いてグレーティングを作製する必要が出てきた。このようなファイバグレーティングの場合、クラッドに添加している光感受層の外径を小さくすると、目的の特性が得られないため、光感受性物質を添加している領域の外径を20μm以上などと、大きくする必要がある。
しかし、光感受性物質を添加した外径をあまり大きくすると屈折率上昇の不均一性により、コア付近での屈折率上昇が抑制されてしまったり、光部品に偏波依存性が出るなど、屈折率の不均一による影響が無視できないという問題点があった。
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、コアとクラッドに光感受性物質が添加された光ファイバにおいて、所望の特性が得られ、かつ、屈折率上昇の不均一性の影響を小さく抑えたファイバ構造を提供し、この光ファイバを用いたファイバ型部品、特にグレーティング型光部品を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、コアとクラッドに光感受性物質を添加して光感受性を持たせた光ファイバに紫外線を照射して屈折率上昇部を形成したファイバ型光部品において、
該コアと該クラッドにおける光感受性を持つ層の光感受性物質の濃度が30〔μm・wt%〕<Σkβkdk<100〔μm・wt%〕を満たす光ファイバを用い、該光ファイバの断面のうち、照射された紫外線が出射する側において、紫外光照射による該コアおよび該クラッドの屈折率変化量が波長674.9nm帯において0.002未満であり、さらに前記光ファイバの光感受性を持つ層の最外郭直径が波長1550nmにおけるモードフィールド直径の2〜3倍であることを特徴とするファイバ型光部品である。
請求項2記載の発明は、コアとクラッドに光感受性物質を添加して光感受性を持たせた光ファイバに紫外線を照射して屈折率上昇部を形成したファイバ型光部品において、
該コアおよび該クラッドにおける光感受性を持つ層が0.35<exp(−2Σkαkdk)を満たす光ファイバを用い、該光ファイバの断面のうち、照射された紫外線が出射する側において、紫外線照射による該コアおよび該クラッドの屈折率変化量が波長674.9nm帯において0.002未満であり、さらに前記光ファイバの光感受性を持つ層の最外郭直径が波長1550nmにおけるモードフィールド直径の2〜3倍であることを特徴とするファイバ型光部品である。
これにより、光ファイバ断面における屈折率変化量の不均一性を小さくして、良好な光学特性を持つファイバ型光部品を実現することができる。これに加えて、光ファイバの光感受性を持つ層の最外郭直径が波長1550nmにおけるモードフィールド直径の2〜3倍とする構成を採ることにより、反射抑制角において、透過損失帯域が狭く急峻で、かつ、透過損失の大きいフィルタ特性も併せ持つことが可能となる。
ここで、紫外線は光ファイバに照射され、この光ファイバを透過し、光ファイバの照射面の反対側から出射する。この紫外線の照射方向に垂直で、かつ光ファイバの中心を通る線分にて光ファイバの断面を2分割すると、一方は紫外線の照射面を有し、他方は紫外線の出射面を有する。
本発明において、光ファイバの断面のうち照射された紫外線が出射する側とは、この2分割された光ファイバの断面のうち、紫外線の出射面を有する側と定義する。
【0005】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のファイバ型光部品において、前記コアおよび前記クラッドの屈折率変化量が波長674.9nm帯において0.001以下であることを特徴とする。
このように、コアおよびクラッドの屈折率変化量が0.001以下とする構成を採ることにより、屈折率上昇の不均一性が現れないので好ましい。
【0006】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載のファイバ型光部品において、前記光感受性物質がゲルマニウムであることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載のファイバ型光部品において、前記コアおよび前記クラッドの屈折率を上昇させるために照射されるレーザがKrFエキシマレーザであることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1又は2に記載のファイバ型光部品において、前記光ファイバ中に周期的な屈折率上昇部を形成して光ファイバグレーティングとしたことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のファイバ型光部品において、前記光ファイバグレーティングの格子ベクトルがファイバ軸に対し非ゼロの角度に設定されていることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
ここでは、ファイバ型光部品の一例として、クラッドに光感受性を持つスラント型短周期グレーティング(以下「SSPG」と略記する)を例にとり説明する。
図1は、この例のスラント型短周期光ファイバグレーティングの側断面図である。図1中、符号1はコアであり、このコア1の周囲にコア1よりも屈折率の小さいクラッド2が設けられている。コア1とクラッド2とは石英系ガラスからなり、コア1とクラッド2には特定波長の紫外光を照射することによって石英系ガラスの屈折率を上昇させるために、光感受性のドーパントが添加され、このドーパントとして通常ゲルマニウムが用いられる。
このゲルマニウムを添加した石英系ガラスに、位相マスクを介してコア1とクラッド2の長手方向にそって所定の周期で紫外光を照射して、紫外光が照射された部分のコア1とクラッド2の屈折率を上昇させ、複数の高屈折率部3が配列されたグレーティング部4が形成されている。この高屈折率部3は、コア1を横切るように、かつコア1の中心軸Bに直交せず、斜めに形成され、複数の高屈折率部3は、長手方向にそって互いに平行に配置されている。スラント型短周期光ファイバグレーティングには、動作波長の約1/3の周期の屈折変化率変調が光ファイバ内部につくり込まれている。
【0008】
この高屈折率部3に直交する線Aの方向をグレーティングの格子ベクトル方向という。この格子ベクトル方向とコア1の中心軸との非ゼロの角度θをスラント角といい、このスラント角によって高屈折率部3の傾きの大きさを表す。このスラント型短周期光ファイバグレーティングにおいては、入射光5のうち、グレーティング部4で反射された光の一部はクラッド2への放射光6となり、後進クラッドモードと結合する。これにより、コア1を逆行する反射モードとの結合が小さくなり、多重反射が生じにくくなる。
この後進クラッドモードと結合した光は損失となるので、スラント型短周期光ファイバグレーティングは結合に対応した特定の光を減衰させるフィルタとして用いられる。また、スラント角度を適切な値に設定することにより反射モードへの結合を抑えることが出来る利点もある。この反射モードへの結合を抑えられるスラント角度を反射抑制角という。このようなスラント型短周期光ファイバグレーティングは光増幅器の利得を平坦化する利得等化器などへの応用が可能である。
【0009】
このようなスラント型短周期光ファイバグレーティングについて、所望の条件を満たす光感受性を持つクラッドの最外径を求めるためにシミュレーションを行った。
このスラント型短周期光ファイバグレーティングの場合、クラッドにもゲルマニウムを添加することでフィルタ特性が良くなることが知られている。具体的にはクラッドにゲルマニウムを添加すると反射抑制角においてより透過損失帯域が狭く急峻でかつ、透過損失の大きいフィルタ特性を得ることが可能となる。ただ、上述のようにクラッドのうちゲルマニウムが添加された層の径が大きいと、照射した際の屈折率上昇が不均一になるなどの不都合が生じる。
そこで、表1に示す3種類のファイバ条件を用いクラッドのうちゲルマニウムが添加された層の最外径を変化させたときのフィルタ特性への影響を調べた。
【0010】
【表1】
Figure 0003746745
【0011】
光ファイバのコアとクラッドの屈折率と光感受性を図2(a)、(b)に示す。
図2(a)において、符号1はコア、符号2はクラッドであり、aがコア半径、ncoreとncladがそれぞれコアとクラッドの屈折率である。図2(b)において、RGeが光感受性を持つ層の最外郭半径、PcoreとPcladはコアとクラッドの光感受性であり、GeO濃度を示す。この光感受性はコア部とクラッド部の比が重要であり、ここではPcore/Pclad=0、0.15、0.3の3種類について検討を行った。表1中のV値は正規化周波数であり、式(3)により求められる。
【0012】
【数3】
Figure 0003746745
【0013】
ここでλは動作光の波長でここでは1550nmである。また、表1中のMFDはモードフィールド直径と呼ばれる値で、導波モードの電界分布がピークの1/eになる点での直径を表す。
【0014】
各条件の計算において、スラント角度はゲルマニウム添加クラッド半径RGe=30μmの時の反射抑制角度に設定した。また、クラッド部分での平均屈折率変化は全て0.001に固定した。図3に計算結果の例を示す。ここに示したのは、表1の条件1(a=3.5、V=1.7、MFD=10.5)においてコアとクラッドの光感受性の比が0.15の場合であり、(a)がRGe=6μm、(b)がRGe=9μm、(c)がRGe=12μm、(d)がRGe=15μmの場合である。このように、RGeが小さくなると透過損失の形状が崩れていく様子が確認出来る。この変化の様子を定量的に確認するために、図4に示す透過損失面積を各条件において求めその変化を確認した。
その結果を図5、図6、図7に示す。図5、図6、図7の透過損失面積はRGe=30μmの時の透過損失面積で規格化している。図5が横軸をRGeにとった場合で、図6が横軸をRGe/aにした場合、図7が横軸を2RGe/MFDにした場合である。図中の符号の説明に示されたpsは、コアとクラッドにおける光感受性の比(Pcore/Pclad)を示す。図5や図6ではファイバの構造条件によって規格化面積比の挙動が変化しており、全てのファイバに対応した条件を見出す事は出来ない。
【0015】
しかし、図7に示すように2RGe/MFDを横軸にとることでファイバパラメータを変化させても、同じ特性を示すことが確認できた。つまり、光感受性を持つ層の最外郭半径RGeの最適値を考える際は、MFDを基準にすると全てのファイバ構造に対応できることを定量的に確認した。また、図7より光感受性を持つ層の最外郭直径2RGeをMFDの2倍以上にする事で96%以上の透過損失面積を確保できることがわかった。また、光感受性を持つ層の最外郭直径2RGeをMFDの2.5倍以上とすると99%以上の透過損失面積を確保することが出来る。このことから、2RGeをMFDの2.5倍以上にしても特性の改善はほとんど得られず、3倍以上にする意味はほとんどない。
従って、光ファイバの光感受性を持つ層の最外郭直径がモードフィールド直径の2倍以上であることが好ましく、2.5倍以上であることがより好ましい。また、3倍以下とすることで十分な特性を得ることができる。
【0016】
次に、紫外線照射時の紫外線吸収によって、光感受性を持つ層での屈折率上昇が受ける影響について説明する。
光ファイバは、一般にはVAD法やCVD法などで作製されるが、これらの方法で作製された光ファイバは通常、半径方向には特性が変化するが、円周方向には同一特性をもつ構造となる。このような構造をもつ光ファイバを同心円状の極薄い層に分割してみると、それぞれの層の屈折率および光感受性は均一であると考えられる。このとき各層の半径方向の厚さをdkとし、その層での吸収係数をαkとする。ただし、添字のkは各層の番号を示す。また、吸収係数αは、T/T=exp(−αd)で定義される単位長さ当たりの光の吸収量を表す係数で長さの逆数の次元を持つ。ここで、Tは吸収層に入射する光パワー、dは層の厚さ、Tは吸収層により減衰された後の出射光の強度である。
ここでは、ファイバ側面から入射された光がファイバ中心を通過する場合に着目する。入射光は各層で吸収されて、その強度はexp(−αkk)倍となるので各層を通過してファイバの照射面の反対側まで達する光のパワーは式(4)で表される。
【0017】
【数4】
Figure 0003746745
【0018】
ここでTinは光ファイバへの入射光パワー、Toutは出射光パワーである。
この考え方を実際のファイバで検証してみる。通常のファイバでは光感受性物質としてゲルマニウムが添加されている。石英系ファイバはゲルマニウムを添加する事により波長248nm付近の光に光感受性を示し、照射に用いる光としてはKrFエキシマレーザやArレーザの第二高調波などを使用することが好ましい。
ここでは、照射光として波長は248nmのKrFエキシマレーザを使用した。ここで、GeO濃度1wt%あたりの吸収係数をαGeとし、各層でのGeO濃度をβk〔wt%〕とすると、式(4)は式(5)と書き直すことができる。
【0019】
【数5】
Figure 0003746745
【0020】
Applide Optics,Vol.34,No.18,3436-3440(以下「参考文献1」と略記する)及びElectronics Letters, Vol.28,No.18,1743-1744(以下「参考文献2」と略記する)によると、ゲルマニウムが添加された石英の248nm帯での吸収係数はGeO濃度1wt%あたり、αGe=40〜55cm−1程度であると報告されている。
このような条件をふまえ、図8に示すようにゲルマニウムを添加したファイバで屈折率上昇の様子を確認した。この光ファイバは、コアの光感受性Pcore=1wt%、クラッドの光感受性Pclad=4.3wt%、コア半径a=4.2μm、クラッドの光感受性を持つ層の最外郭半径RGe=26.2μmである。この条件を式(5)に当てはめると、式(6)のように表すことができる。
【0021】
【数6】
Figure 0003746745
【0022】
このことから、光感受性を持つ層は、Σkβkk<100〔μm・wt%〕の関係を満たすことが好ましい。
αGeの値を参考文献1及び参考文献2に従い40〜55cm−1と考えると、照射光の透過率は33.5〜45%程度である。この光ファイバにKrFエキシマレーザを照射したあとの屈折率上昇の様子を図9に示す。この屈折率分布はJISとITU−Tで寸法測定の基準測定法となっているRNF法を用い測定した。
ただしここでは、測定光源として半導体レーザを使用しており、その波長は674.9nmであるので、ここで測定される屈折率及び屈折率変化量は全て波長674.9nmでの値である。また、光ファイバグレーティングのように屈折率変化が長手方向に周期的に変化している場合の屈折率変化は、長手方向での屈折率変化の平均をもって屈折率変化としている。
【0023】
図9の(a)は、1パルス当たりのパワー密度1.7mJ/mm、繰り返し周波数60Hz、照射時間100秒後の屈折率変化で、その屈折率変化量は0.0008程度である。(b)は1パルス当たりのパワー密度に2.7mJ/mm、繰り返し周波数60Hz、照射時間50秒後の屈折率変化で、その屈折率変化量は0.001程度である。(c)は、1パルスあたりのパワー密度2.7mJ/mm、繰り返し周波数60Hz、照射時間100秒後の屈折率変化で、その光ファイバの断面のうち紫外線の出射側の径が0〜60μmの部分では、屈折率変化量の平均値は0.002である。
いずれの場合も、光ファイバに対して、図の左側(径が−60μmの側)から紫外線を照射したときの屈折率変化量を示す。照射された紫外線は、光ファイバを透過した後、この光ファイバの中心に対して紫外線の照射面の反対側の側面(径が60μmの側)から出射する。このため図9では、径が0〜60μmの部分が、光ファイバの断面における紫外線の出射側となる。
図9からわかるように、光ファイバの断面のうち紫外線の出射側の屈折率変化量の平均値は、(a)が0.0008であり、(b)が0.001である。この(a),(b)では、特に径が−60μmの紫外線照射側だけ屈折率が極端に上昇している様子は確認できない。これに対して、(c)は、光ファイバの断面のうち紫外線の出射側の屈折率変化量の平均値が0.002である。この(c)では、明らかに紫外線照射側の屈折率上昇が増大しており、照射による屈折率上昇の不均一性が確認出来る。つまり、照射光の側面からの透過率が35%程度の光ファイバでは、光ファイバの断面のうち紫外線の出射側において、紫外線の照射による屈折率変化量が0.001程度まででは屈折率上昇の不均一性が現れないが、この紫外線の出射側の屈折率変化量が0.002以上となるように紫外線を照射すると、屈折率不均一性が大きくなる事が確認された。また透過率が35%以下であると、その光ファイバの断面のうち紫外線の出射側の屈折率変化量が0.001程度であっても屈折率不均一性が大きくなることから透過率は35%以上あることが望ましい。
【0024】
よって、グレーティング等のファイバ型光部品を作成する際、光ファイバの断面のうち紫外線の出射側において、屈折率変化量は0.002未満に抑えることが好ましく、0.001以下にすることがより好ましい。
この範囲の屈折率変化は、ゲルマニウムの添加量を考慮し、1パルス当たりのパワー密度、繰り返し周波数、照射時間を適切に設定することで得られる。例えば、ゲルマニウムの濃度が4wt%程度の光ファイバにおいて、1パルス当たりのパワー密度が1.7mJ/mmの場合、総照射量が15J/mm2以下になるように繰り返し周波数および照射時間を設定するのが好ましい。同様に、パワー密度が2.7mJ/mmの場合、総照射量が13J/mm以下になるように繰り返し周波数および照射時間を設定するのが好ましい。
以上の実験より、クラッドに光感受層を持つ光ファイバにおいて、光ファイバの各層の厚さをdk、GeO濃度をβk〔wt%〕としたとき、Σkβkk<100〔μm・wt%〕に設定し、この光ファイバの断面のうち紫外線の出射側において、屈折率変化量が0.002未満、望ましくは0.001以下の条件を満たせば屈折率上昇の不均一性を抑えた光ファイバグレーティングを作製できることが確認された。この時の照射光の側面からの透過率は35%程度に相当する。
【0025】
また、通常のファイバのMFDは小さくても約8μm程度である。従って、ゲルマニウム添加最外郭直径は、モードフィールド直径の2.5倍と設定すると、8×2.5=20μm程度必要となる。また、通常SSPGを作製するためには0.0005以上の屈折率変化を必要とするが、光感受性を持つ層のGeO濃度が薄く光感受性が小さいと露光する紫外光のパワーを大きくするか、露光時間を長くする必要がある。しかし、紫外光パワーをあまり大きくすると光ファイバ自体の強度劣化が生じ、また露光時間を長くすると生産性が悪くなるばかりでなく、露光での不安定性も増すため歩留まりが悪くなる。これらを鑑みると、0.0005以上の屈折率変化を得るためにはGeO濃度は3.0wt%以上あることが望ましい。従って、先に求めた20μmと3.0wt%より、Σkβkk=20/2×3=30μm・wt%となる。つまり、ゲルマニウムをクラッド層に添加する光ファイバの場合Σkβkk>30μm・wt%の関係を満たすことが好ましい。
以上の説明においては、光ファイバグレーティングを例として説明したが、光ファイバグレーティングに適用する場合に限定されるものではなく、紫外線を光ファイバの側面から照射することによる屈折率上昇を用いた光部品であれば、他の種類の光部品に適用することが可能である。
【0026】
この例のファイバ型光部品によると、コアおよびクラッドにおける光感受性を持つ層のゲルマニウム濃度が30〔μm・wt%〕<Σkβkk<100〔μm・wt%〕を満たす光ファイバを用い、この光ファイバの断面のうち紫外線の出射側において、紫外光照射によるコアおよびクラッドの屈折率変化量を波長674.9nm帯において0.002未満とすることにより、光ファイバ断面における屈折率変化量の不均一性を小さくして、良好な光学特性を持つファイバ型光部品を実現することができる。
また、コアおよびクラッドにおける光感受性を持つ層が0.35<exp(−2Σkαkk)を満たす光ファイバを用い、この光ファイバの断面のうち紫外線の出射側において、紫外線照射によるコアおよびクラッドの屈折率変化量が波長674.9nm帯において0.002未満とすることにより、光ファイバ断面における屈折率変化量の不均一性を小さくして、良好な光学特性を持つファイバ型光部品を実現することができる。
【0027】
さらに、光ファイバの光感受性を持つ層の最外郭直径をモードフィールド直径の2倍以上、より好ましくは2.5倍以上として光ファイバを形成し、この光ファイバを用いてスラント型光ファイバグレーティングを形成することにより、反射抑制角において、透過損失帯域が狭く急峻で、かつ、透過損失の大きいフィルタ特性を得ることが可能なファイバ型光部品を実現することができる。
【0028】
本発明の具体例を以下に示す。表2は、光感受性を持たせた光ファイバのGeO濃度などの諸特性を示す。ここで、表2中のΣkβkkは、コアとクラッドにおけるゲルマニウムが添加された層において、GeO濃度をβkとし、層の厚さをdkとして算出された値である。
また透過率は、光ファイバ側面から光を入射したとき、光ファイバの各層を通過してファイバの照射面の反対側まで達する光の透過率であり、exp(−2αGeΣkβkk)により算出された値である。石英の248nm帯での吸収係数αGeは、GeO濃度1wt%あたり40cm−1又は50cm−1として算出した。
【0029】
【表2】
Figure 0003746745
【0030】
この光感受性を持たせた光ファイバに、KrFエキシマレーザの紫外線を照射して、屈折率上昇部を形成し、スラント型短周期光ファイバグレーティングとした。図10は、表2に示された光ファイバ(No.1)に、紫外線を照射したときの光感受性を持つ層の屈折率変化量の分布を示す。同様に、図11は、光ファイバ(No.2)を用いたときの屈折率変化量の分布であり、図12は、光ファイバ(No.3)を用いたときの屈折率変化量の分布であり、図13は、光ファイバ(No.4)を用いたときの屈折率変化量の分布であり、図14は、光ファイバ(No.5)を用いたときの屈折率変化量の分布をそれぞれ示す。
これらは、RNF法にて波長674.9nm帯の測定用光源を用いて、紫外線の照射前後での屈折率分布を測定し、その屈折率分布の変化量を求めたものである。また図中、径が−60μmの側が紫外線を照射した側であり、径が0〜60μmの部分が、光ファイバの断面のうち紫外線の出射側となる。
【0031】
図10〜12の(a)及び図13,14は、1パルス当たりのパワー密度2.7mJ/mm、繰り返し周波数60Hz、照射時間50秒後の屈折率変化であり、その屈折率変化量は0.001程度である。図10〜12の(b)は、1パルスあたりのパワー密度2.7mJ/mm、繰り返し周波数60Hz、照射時間100秒後の屈折率変化であり、光ファイバの断面のうち紫外線の出射側の屈折率変化量の平均値は0.002以上である。
【0032】
表2中のサンプル(No.1〜3)は、30<Σkβkk<100を満たし、かつ透過率が0.35よりも大きい光ファイバである。このような光ファイバにあっては、図10〜12の(a)に示されたように、光ファイバの断面のうち紫外線の出射側において、紫外光照射による屈折率変化量が0.002未満となるように紫外線を照射した場合、屈折率変化量がほぼ一定であり、不均一性が現れないことが確認できた。
【0033】
しかし、図10〜12の(b)に示されたように、光ファイバの断面のうち紫外線の出射側において、紫外光照射による屈折率変化量が0.002以上となるように紫外線を照射した場合、紫外線照射側の屈折率変化量が大きく、屈折率変化量に不均一性が現れることが確認できた。
【0034】
次に表2中のサンプル(No.4,5)は、Σkβkkが100以上であり、また透過率が0.35よりも小さい光ファイバである。このような光ファイバにあっては、図13,14に示されたように、光ファイバの断面のうち紫外線の出射側において、紫外光照射による屈折率変化量が0.002未満となるように紫外線を照射しても、紫外線照射側の屈折率変化量が大きく、屈折率変化量に不均一性が現れることが確認できた。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、コアおよびクラッドにおける光感受性を持つ層のゲルマニウム濃度が30〔μm・wt%〕<Σkβkk<100〔μm・wt%〕を満たす光ファイバを用い、光ファイバの断面のうち、照射された紫外線が出射する側において、紫外光照射によるコアおよびクラッドの屈折率変化量を波長674.9nm帯において0.002未満とすることにより、光ファイバ断面における屈折率変化量の不均一性を小さくして、良好な光学特性を持つファイバ型光部品を実現することができる。
また、コアおよびクラッドにおける光感受性を持つ層が0.35<exp(−2Σkαkk)を満たす光ファイバを用い、光ファイバの断面のうち、照射された紫外線が出射する側において、紫外線照射によるコアおよびクラッドの屈折率変化量が波長674.9nm帯において0.002未満とすることにより、光ファイバ断面における屈折率変化量の不均一性を小さくして、良好な光学特性を持つファイバ型光部品を実現することができる。
【0036】
さらに、光ファイバの光感受性を持つ層の最外郭直径をモードフィールド直径の2倍以上、より好ましくは2.5倍以上として光ファイバを形成し、この光ファイバを用いてスラント型光ファイバグレーティングを形成することにより、反射抑制角において、透過損失帯域が狭く急峻で、かつ、透過損失の大きいフィルタ特性を得ることが可能なファイバ型光部品を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スラント型短周期光ファイバグレーティングの側断面図である。
【図2】光ファイバのコアとクラッドの屈折率と光感受性を示す図である。
【図3】光ファイバの光感受性を持つ層の最外径を変化させたときの、スラント型光ファイバグレーティングの透過損失帯域を示す図である。
【図4】スラント型光ファイバグレーティングの透過損失帯域について、透過損失面積を示す図である。
【図5】規格化された透過損失面積と、光感受性を持つ層の最外郭半径との関係を示す図である。
【図6】規格化された透過損失面積と、光感受性を持つ層の最外郭半径をコア径で割った値との関係を示す図である。
【図7】規格化された透過損失面積と、光感受性を持つ層の最外郭直径をモードフィールド径で割った値との関係を示す図である。
【図8】光ファイバの光感受性を持つ層のゲルマニウム添加濃度の一例を示す図である。
【図9】光ファイバに紫外線を照射したときの、光感受性を持つ層の屈折率変化量の分布の一例を示す図である。
【図10】Σkβkkが97.65の光ファイバに紫外線を照射したときの、光感受性を持つ層の屈折率変化量の分布の一例を示す図である。
【図11】Σkβkkが61.2の光ファイバに紫外線を照射したときの、光感受性を持つ層の屈折率変化量の分布の一例を示す図である。
【図12】Σkβkkが79.225の光ファイバに紫外線を照射したときの、光感受性を持つ層の屈折率変化量の分布の一例を示す図である。
【図13】Σkβkkが135の光ファイバに紫外線を照射したときの、光感受性を持つ層の屈折率変化量の分布の一例を示す図である。
【図14】Σkβkkが117.35の光ファイバに紫外線を照射したときの、光感受性を持つ層の屈折率変化量の分布の一例を示す図である。
【符号の説明】
1…コア、2…クラッド、3…高屈折率部、4…ファイバグレーティング部

Claims (7)

  1. コアとクラッドに光感受性物質を添加して光感受性を持たせた光ファイバに紫外線を照射して屈折率上昇部を形成したファイバ型光部品において、
    該コアと該クラッドにおける光感受性を持つ層の光感受性物質の濃度が式(1)を満たす光ファイバを用い、該光ファイバの断面のうち、照射された紫外線が出射する側において、紫外光照射による該コアおよび該クラッドの屈折率変化量が波長674.9nm帯において0.002未満であり、さらに前記光ファイバの光感受性を持つ層の最外郭直径が波長1550nmにおけるモードフィールド直径の2〜3倍であることを特徴とするファイバ型光部品。
    Figure 0003746745
    式(1)において、βkは光ファイバ各層のGeO2濃度であり、dkは光ファイバ各層の半径方向の厚さである。
  2. コアとクラッドに光感受性物質を添加して光感受性を持たせた光ファイバに紫外線を照射して屈折率上昇部を形成したファイバ型光部品において、
    該コアおよび該クラッドにおける光感受性を持つ層が式(2)を満たす光ファイバを用い、該光ファイバの断面のうち、照射された紫外線が出射する側において、紫外線照射による該コアおよび該クラッドの屈折率変化量が波長674.9nm帯において0.002未満であり、さらに前記光ファイバの光感受性を持つ層の最外郭直径が波長1550nmにおけるモードフィールド直径の2〜3倍であることを特徴とするファイバ型光部品。
    Figure 0003746745
    式(2)において、αkは光ファイバ各層での吸収係数であり、dkは光ファイバ各層の半径方向の厚さである。
  3. 前記コアおよび前記クラッドの屈折率変化量が波長674.9nm帯において0.001以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のファイバ型光部品。
  4. 前記光感受性物質がゲルマニウムであることを特徴とする請求項2に記載のファイバ型光部品。
  5. 前記コアおよび前記クラッドの屈折率を上昇させるために照射されるレーザがKrFエキシマレーザであることを特徴とする請求項1又は2に記載のファイバ型光部品。
  6. 前記光ファイバ中に周期的な屈折率上昇部を形成して光ファイバグレーティングとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のファイバ型光部品。
  7. 前記光ファイバグレーティングの格子ベクトルがファイバ軸に対し非ゼロの角度に設定されていることを特徴とする請求項6に記載のファイバ型光部品。
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