JP3746351B2 - オレフィン系エラストマー組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オレフィン系エラストマー組成物に関し、さらに詳しくは、耐傷付き性に優れた成形体を提供し得るオレフィン系エラストマー組成物に関するものである。
【0002】
【発明の技術的背景】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、軽量でリサイクルが容易であることから、省エネルギー、省資源タイプのエラストマーとして、特に加硫ゴムの代替品として自動車部品、工業機械部品、電気・電子部品、建材等に広く使用さている。
【0003】
また近年、地球環境保護の観点から、焼却時に有害なガスを発生する塩化ビニル樹脂に代わって、有害なガスが発生しないオレフィン系熱可塑性エラストマーが使われるようになってきている。
【0004】
しかしながら、従来のオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる成形体は、塩化ビニル樹脂からなる成形体と比較して、引張強度、耐傷付き性、耐摩耗性が劣るという欠点があり、その改良が強く望まれている。
【0005】
このような状況のもと本発明者らは、引張強度、耐傷付き性、耐摩耗性等に優れたオレフィン系エラストマーを得るべく鋭意検討した結果、結晶性ポリオレフィン樹脂と、エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体と、芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体とを特定の割合で配合したエラストマー組成物は、引張強度、耐傷付き性、耐摩耗性等に優れることを見出して本発明に至った。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、軽量でリサイクルが容易であり、しかも、焼却しても有毒なガスを発生しない、引張強度、耐傷付き性、耐摩耗性等に優れた成形体を提供し得るオレフィン系エラストマー組成物を提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物は、
(A)結晶性ポリオレフィン樹脂:10〜85重量部と、
(B)エチレンとα−オレフィンと芳香族ビニル化合物との共重合体であって、エチレンから導かれる構成単位およびα−オレフィンから導かれる構成単位と、芳香族ビニル化合物から導かれる構成単位とのモル比(エチレン+α−オレフィン/芳香族ビニル化合物)が99.5/0.5〜65/35の範囲にあり、エチレンから導かれる構成単位と、α−オレフィンから導かれる構成単位とのモル比(エチレン/α−オレフィン)が99.5/0.5〜70/30の範囲にあり、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が0.1〜10.0dl/gの範囲にあるエチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体:10〜85重量部と、
(C)スチレンまたはその誘導体の重合体ブロック(c-1) と、
イソプレン重合体ブロックまたはイソプレン・ブタジエン共重合体ブロックであって、全イソプレン単位に対する1,2-位または3,4-位で結合しているイソプレン単位の含有割合が40モル%以上である重合体または共重合体ブロック(c-2) とからなる、水素添加されていてもよい芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体:5〜50重量部(但し、(A)と(B)と(C)の合計量は100重量部)とを含むことを特徴としている。
【0008】
また本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物は、
(A)結晶性ポリオレフィン樹脂:10〜85重量部と、
(B)エチレンとα−オレフィンと芳香族ビニル化合物との共重合体であって、エチレンから導かれる構成単位およびα−オレフィンから導かれる構成単位と、芳香族ビニル化合物から導かれる構成単位とのモル比(エチレン+α−オレフィン/芳香族ビニル化合物)が99.5/0.5〜65/35の範囲にあり、エチレンから導かれる構成単位と、α−オレフィンから導かれる構成単位とのモル比(エチレン/α−オレフィン)が99.5/0.5〜70/30の範囲にあり、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1〜10.0dl/gの範囲にあるエチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体:10〜85重量部と、
(C)スチレンまたはその誘導体の重合体ブロック(c-1) と、
イソプレン重合体ブロックまたはイソプレン・ブタジエン共重合体ブロックであって、全イソプレン単位に対する1,2-位または3,4-位で結合しているイソプレン単位の含有割合が40モル%以上である重合体または共重合体ブロック(c-2) とからなる、水素添加されていてもよい芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体:5〜50重量部と、
(D)オレフィン系ゴム(d-1) および/または軟化剤(d-2) ;1〜50重量部(但し、(A)と(B)と(C)と(D)の合計量は100重量部)とを含むことを特徴としている。
【0009】
本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物は、前記成分(A)〜(C)(合計100重量部)または前記成分(A)〜(D)(合計100重量部)に加えて、さらに
(E)高級脂肪酸アミド(e-1) 、シリコーンオイル(e-2) 、エステル化合物(e-3) およびフッ素系ポリマー(e-4) から選ばれる少なくとも1種の成分を0.01〜10重量部の量で含むことができる。
【0010】
本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物は、前記各成分のうち少なくとも1つの成分が架橋されていてもよく、また前記各成分は架橋されていなくてもよい。
【0011】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物について具体的に説明する。
【0012】
本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物は、(A)結晶性ポリプロピレン樹脂、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体および(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体、必要に応じて(D)オレフィン系ゴム(d-1) および/または軟化剤(d-2) 、(E)高級脂肪酸アミド(e-1) 、シリコーンオイル(e-2) 、エステル化合物(e-3) およびフッ素系ポリマー(e-4) から選ばれる少なくとも1種の成分から形成されている。まず、本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物を形成する各成分について説明する。
【0013】
(A)結晶性ポリオレフィン樹脂
本発明で用いられる(A)結晶性ポリオレフィン樹脂としては、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。ここで炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-エチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0014】
結晶性ポリオレフィン樹脂の具体的な例としては、以下のような(共)重合体が挙げられる。
(1)エチレン単独重合体(製法は、低圧法、高圧法のいずれでも良い)
(2)エチレンと、10モル%以下の他のα−オレフィンまたは酢酸ビニル、エチルアクリレートなどのビニルモノマーとの共重合体
(3)プロピレン単独重合体
(4)プロピレンと10モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体
(5)プロピレンと30モル%以下の他のα−オレフィンとのブロック共重合体
(6)1-ブテン単独重合体
(7)1-ブテンと10モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体
(8)4-メチル-1-ペンテン単独重合体
(9)4-メチル-1-ペンテンと20モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体
上記の他のα−オレフィンとして具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが挙げられる。
【0015】
このような(A)結晶性ポリオレフィン樹脂は、メルトフローレート(ASTM D1238-65T に従い230℃、2.16kg荷重の条件下に測定)が0.01〜100g/10分、好ましくは0.3〜70g/10分の範囲にあることが望ましい。また、X線回折法により求めた結晶化度は通常5〜100%、好ましくは20〜80%の範囲にある。
【0016】
このような結晶性ポリオレフィン樹脂は、従来公知の方法により製造することができる。
本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物においては、(A)結晶性ポリオレフィン樹脂は、(A)結晶性ポリオレフィン樹脂、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体および(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体の合計量を100重量部として、10〜85重量部、好ましくは20〜80重量部、さらに好ましくは35〜75重量部の割合で用いられる。また、(D)オレフィン系ゴム(d-1) および/または軟化剤(d-2) が配合される場合には、(A)結晶性ポリオレフィン樹脂は、(A)結晶性ポリオレフィン樹脂、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体および(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体、(D)オレフィン系ゴム(d-1) および軟化剤(d-2) の合計量を100重量部として、10〜85重量部、好ましくは20〜80重量部、さらに好ましくは35〜75重量部の割合で用いられる。
【0017】
結晶性ポリオレフィン樹脂(A)を上記のような割合で用いると、耐傷付き性に優れるとともに、耐熱性に優れた成形体を提供し得るような成形性に優れたオレフィン系エラストマー組成物が得られる。
【0018】
(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体
本発明で用いられる(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体は、エチレンと炭素原子数が3〜20のα−オレフィンと芳香族ビニル化合物とのランダム共重合体であって、エチレンから導かれる構成単位およびα−オレフィンから導かれる構成単位と、芳香族ビニル化合物から導かれる構成単位とのモル比(エチレン+α−オレフィン/芳香族ビニル化合物)が99.5/0.5〜65/35、好ましくは95/5〜70/30の範囲にあり、エチレンから導かれる構成単位と、α−オレフィンから導かれる構成単位とのモル比(エチレン/α−オレフィン)が99.5/0.5〜70/30、好ましくは90/10〜75/25の範囲にある。
【0019】
ここで炭素原子数が3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコデセンなどが挙げられる。これらのなかでは1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンまたは1-オクテンが好ましい。これらのα−オレフィンは、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0020】
また芳香族ビニル化合物としては、スチレン;o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレンなどのモノもしくはポリアルキルスチレン;メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどの官能基含有スチレン誘導体;3-フェニルプロピレン、4-フェニルブテン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物は、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。これらのなかではスチレンまたは4-メトキシスチレンが好ましい。
【0021】
さらにエチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体には、他の単量体たとえば非共役ジエンが共重合されていてよく、非共役ジエンとしては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,5-ヘプタジエン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、2,5-ノルボルナジエン、1,6-シクロオクタジエン、2-エチレン-2,5-ノルボルナジエン、2-イソプロペニル-2,5-ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、トリシクロペンタジエン、およびジヒドロジシクロペンタジエニルオキシエチレンと、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸とのエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0022】
エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体において炭素原子数が3〜20のα−オレフィンとしては1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンまたは1-オクテンが好ましく、芳香族ビニル化合物としてはスチレンまたは4-メトキシスチレンが好ましい。
【0023】
本発明で用いる(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体としては、190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが0.05〜100g/10分、好ましくは0.1〜50g/10分の範囲にあることが望ましい。
【0024】
また示差走査型熱量計により測定した吸熱曲線における最大ピーク位置の温度(Tm)が50〜125℃、好ましくは60〜110℃の範囲にあるものが望ましい。
【0025】
さらに本発明で用いる(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体としては、芳香族ビニル化合物から導かれる構成単位が2以上連続した連鎖構造(以下、「芳香族ビニル化合物・芳香族ビニル化合物連鎖構造」という場合がある)を構成する構成単位の割合(以下、「芳香族ビニル化合物・芳香族ビニル化合物連鎖構造含量」という場合がある)が、芳香族ビニル化合物から導かれる全構成単位に対して1%以下、好ましくは0.1%以下の共重合体が好ましい。なお芳香族ビニル化合物・芳香族ビニル化合物連鎖構造含量は13C−NMRより求められる値である。
【0026】
次に、エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体(B)の製造方法について説明する。
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体(B)は、例えばメタロセン触媒(a)の存在下に、エチレンとα−オレフィンと芳香族ビニル化合物とを共重合することにより製造することができる。
【0027】
上記メタロセン触媒(a)としては、シングルサイト触媒として従来より用いられているメタロセン系触媒、ならびにこれらに類似するメタロセン系触媒が制限なく用いられるが、特に遷移金属のメタロセン化合物(遷移金属化合物)(b)と、有機アルミニウムオキシ化合物(c)および/またはイオン化イオン性化合物(d)とからなる触媒が好ましく用いられる。
【0028】
メタロセン化合物(b)としては、IUPAC無機化学命名法改定版(1989)による族番号1〜18で表示される元素の周期表(長周期型)の4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物、具体的には下記一般式(1)で表されるメタロセン化合物が挙げられる。
【0029】
MLX … (1)
式中、Mは周期表の4族から選ばれる遷移金属であり、具体的にはジルコニウム、チタンまたはハフニウムであり、xは遷移金属の原子価である。
【0030】
Lは遷移金属に配位する配位子であり、これらのうち少なくとも1個の配位子Lはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は置換基を有していてもよい。
【0031】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、例えば、
シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n-またはi-プロピルシクロペンタジエニル基、n-、i-、sec-、t-、ブチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基、オクチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、メチルエチルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、メチルヘキシルシクロペンタジエニル基、メチルベンジルシクロペンタジエニル基、エチルブチルシクロペンタジエニル基、エチルヘキシルシクロペンタジエニル基、メチルシクロヘキシルシクロペンタジエニル基などのアルキルまたはシクロアルキル置換シクロペンタジエニル基、さらにインデニル基、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などが挙げられる。
【0032】
これらの基は、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基などで置換されていてもよい。
これらの中では、アルキル置換シクロペンタジエニル基が特に好ましい。
【0033】
式(1)で示されるメタロセン化合物(b)が配位子Lとしてシクロペンタジエニル骨格を有する基を2個以上有する場合には、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する基同士は、エチレン、プロピレンなどのアルキレン基、イソプロピリデン、ジフェニルメチレンなどの置換アルキレン基、シリレン基またはジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基などの置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。
【0034】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLとしては、炭素数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホン酸含有基(−SO3 R1 )、ハロゲン原子または水素原子(ここで、R1 はアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アリール基またはハロゲン原子またはアルキル基で置換されたアリール基である。)などが挙げられる。
【0035】
炭素数1〜12の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられ、より具体的には、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、
シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、
フェニル基、トリル基などのアリール基、
ベンジル基、ネオフィル基などのアラルキル基が挙げられる。
【0036】
また、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、オクトキシ基などが挙げられる。
【0037】
アリーロキシ基としては、フェノキシ基などが挙げられる。
スルホン酸含有基(−SO3 R1 )としては、メタンスルホナト基、p-トルエンスルホナト基、トリフルオロメタンスルホナト基、p-クロルベンゼンスルホナト基などが挙げられる。
【0038】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
前記式(1)で表されるメタロセン化合物(b)は、例えば遷移金属の原子価が4である場合、より具体的には下記一般式(2)で表される。
【0039】
R2 k R3 l R4 m R5 n M … (2)
式(2)中、Mは式(1)の遷移金属と同様の遷移金属、好ましくはジルコニウムまたはチタンであり、R2 はシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)であり、R3 、R4 およびR5 は、互いに同一でも異なっていてもよく、シクロペンタジエニル骨格を有する基または前記一般式(1)中のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLと同様である。kは1以上の整数であり、k+l+m+n=4である。
【0040】
また本発明では、メタロセン化合物(b)として下記一般式(3)で示されるメタロセン化合物を用いることもできる。
L1 M2 Z1 2 … (3)
(式中、M2 は周期表の4族またはランタニド系列の金属であり、
L1 は、非局在化π結合基の誘導体であり、金属M2 活性サイトに拘束幾何形状を付与しており、
Z1 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または20以下の炭素原子、ケイ素原子もしくはゲルマニウム原子を含有する、炭化水素基、シリル基もしくはゲルミル基である。)
このような式(3)で示されるメタロセン化合物(b)の中では、下記一般式(4)で示されるメタロセン化合物が好ましい。
【0041】
【化1】
【0042】
式(4)中、M3 はチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Z1 は上記と同様である。
CpはM3 にη5 結合様式でπ結合したシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基またはこれらの誘導体である。
【0043】
W1 は酸素、イオウ、ホウ素もしくは周期表の14族の元素、またはこれらの元素を含む基であり、
V1 は窒素、リン、酸素またはイオウを含む配位子である。
【0044】
W1 とV1 とで縮合環を形成してもよい。またCpとW1 とで縮合環を形成してもよい。
一般式(4)のCpで示される基の好ましいものとしては、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基およびこれらの飽和誘導体などが挙げられ、これらは金属原子(M3 )と環を形成する。シクロペンタジエニル基中のそれぞれの炭素原子はヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基からなる群から選ばれた同一または異なった基であることができ、1種またはそれ以上の炭素原子はハロゲン原子、ヒドロカルビル置換メタロイド基によって置換され、そしてメタロイドは元素の周期表の14族およびハロゲン原子から選ばれる。また、1種またはそれ以上の置換基は一緒になって縮合環を形成していてもよい。シクロペンタジエニル基中の少なくとも1つの水素原子置換しうる好ましいヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビル基は1〜20個の炭素原子を含み、かつ直鎖または分岐状のアルキル基、環状炭化水素基、アルキル置換環状炭化水素基、芳香族基およびアルキル置換芳香族基を包含する。好ましい有機メタロイド基は14族元素のモノ−、ジ−およびトリ−置換有機メタロイド基を包含し、ヒドロカルビル基のそれぞれは1〜20個の炭素原子を含む。好ましい有機メタロイド基の具体的なものとしてはトリメチルシリル、トリエチルシリル、エチルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、フェニルジメチルシリル、メチルジフェニルシリル、トリフェニルシリル、トリフェニルジャーミル、トリメチルジャーミルなどが挙げられる。
【0045】
一般式(4)のZ1 の具体的なものとしては、ヒドライド、ハロ、アルキル、シリル、ジャーミル、アリール、アミド、アリールオキシ、アルコキシ、ホスファイド、サルファイド、アシル、疑似ハライドたとえばシアニド、アジドなど、アセチルアセトネートまたはそれらの混合物などが挙げられ、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0046】
メタロセン化合物(b)としては、前記一般式(3)で示されるメタロセン化合物が特に重合活性ならびに成形体の透明性、剛性、耐熱性および耐衝撃性の面から好ましい。これまで説明したメタロセン化合物(b)は単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0047】
本発明で使用するメタロセン化合物(b)は、炭化水素またはハロゲン化炭化水素に希釈して用いてもよい。
次に、メタロセン触媒(a)を形成する際に用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(c)およびイオン化イオン性化合物(d)について説明する。
【0048】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(c)は、従来公知のアルミノオキサン(c)であってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物(c)であってもよい。
【0049】
アルミノオキサン(c)は、例えば下記のような方法によって製造され、通常炭化水素溶媒の溶液として回収される。
(1)吸着水を含有する化合物あるいは結晶水を含有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などを懸濁した芳香族炭化水素溶媒に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して反応させて芳香族炭化水素溶媒の溶液として回収する方法。
【0050】
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水(水、氷または水蒸気)を作用させて芳香族炭化水素溶媒の溶液として回収する方法。
【0051】
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0052】
イオン化イオン性化合物(d)としては、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物、およびカルボラン化合物を例示することができる。これらのイオン化イオン性化合物(d)は、特表平1−501950号公報、特表平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号公報などに記載されている。
【0053】
イオン化イオン性化合物(d)として用いるルイス酸としては、BR3 (ここで、Rは同一または相異なり、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、例えば
トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0054】
イオン化イオン性化合物(d)として用いるイオン性化合物は、カチオン性化合物とアニオン性化合物とからなる塩である。アニオンは前記メタロセン化合物(b)と反応することによりメタロセン化合物(b)をカチオン化し、イオン対を形成することにより遷移金属カチオン種を安定化させる働きがある。そのようなアニオンとしては、有機ホウ素化合物アニオン、有機ヒ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオンなどがあり、比較的嵩高で遷移金属カチオン種を安定化させるものが好ましい。カチオンとしては、金属カチオン、有機金属カチオン、カルボニウムカチオン、トリピウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが挙げられる。さらに詳しくはトリフェニルカルベニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチルアンモニウムカチオン、フェロセニウムカチオンなどである。
【0055】
これらのうち、アニオンとしてホウ素化合物を含有するイオン性化合物が好ましく、具体的にはイオン性化合物としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることができる。
【0056】
上記トリアルキル置換アンモニウム塩としては、例えばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0057】
前記N,N-ジアルキルアニリニウム塩としては、例えばN,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
前記ジアルキルアンモニウム塩としては、例えばジ(n-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0058】
前記トリアリールホスフォニウム塩としては、例えばトリフェニルホスフォニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(メチルフェニル)ホスフォニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(ジメチルフェニル)ホスフォニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0059】
さらに前記イオン性化合物としては、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることもできる。
【0060】
イオン化イオン性化合物(d)として用いるボラン化合物としては、下記のような化合物を挙げることもできる。
デカボラン(14);
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレートなどのアニオンの塩;および
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0061】
イオン化イオン性化合物(d)として用いるカルボラン化合物としては、
4-カルバノナボラン(14)、1,3-ジカルバノナボラン(13)などのアニオンの塩;および
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-1,3-ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0062】
上記のようなイオン化イオン性化合物(d)は、2種以上組合せて用いてもよい。
本発明で用いるメタロセン触媒(a)は、必要に応じて、前記各成分に加えてさらに下記有機アルミニウム化合物(e)を含んでいてもよい。
【0063】
必要に応じて用いられる有機アルミニウム化合物(e)としては、例えば下記一般式(5)で示される有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
(R6 )n AlX3-n … (5)
式(5)中、R6 は炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子または水素原子であり、nは1〜3である。
【0064】
このような炭素数1〜15の炭化水素基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基またはアリ−ル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基などが挙げられる。
【0065】
このような有機アルミニウム化合物としては、具体的には以下のような化合物が挙げられる。
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、
一般式 (i-C4 H9 )x Aly (C5 H10)z
(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)
で表わされるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム、
ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド、
ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド、
ジメチルアルミニウムメトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、
ジエチルアルミニウムフェノキシドなどのジアルキルアルミニウムアリーロキシドなどが挙げられる。
【0066】
エチレンとα−オレフィンと芳香族ビニル化合物とは、バッチ法、連続法のいずれの方法で共重合されてもよい。共重合を連続法で実施するに際しては、メタロセン触媒(a)は以下のような濃度で用いられる。
【0067】
すなわち重合系内のメタロセン化合物(b)の濃度は、通常0.00005〜1.0ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは0.0001〜0.5ミリモル/リットルである。
【0068】
また有機アルミニウムオキシ化合物(c)は、重合系内のメタロセン化合物(b)に対するアルミニウム原子の比(Al/遷移金属)で0.1〜10000、好ましくは1〜5000の量で供給される。
【0069】
イオン化イオン性化合物(d)は、重合系内のメタロセン化合物(b)に対するイオン化イオン性化合物(d)のモル比(イオン化イオン性化合物(d)/メタロセン化合物(b))で0.1〜20、好ましくは1〜10の量で供給される。
【0070】
また有機アルミニウム化合物(e)が用いられる場合には、通常約0〜5ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは約0〜2ミリモル/リットルとなるような量で供給される。
【0071】
エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体を製造する際の共重合反応は、通常温度が−30〜+250℃、好ましくは0〜200℃、圧力が0を超えて〜80kg/cm2 (ゲージ圧)、好ましくは0を超えて〜50kg/cm2 (ゲージ圧)の条件下に行われる。
【0072】
また反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常5分間〜3時間、好ましくは10分間〜1.5時間である。
【0073】
エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体(B)を製造する際には、エチレン、α−オレフィンおよび芳香族ビニル化合物は、前記のような特定組成の共重合体が得られるような量で重合系に供給される。さらに共重合に際しては、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。
【0074】
上記のようにしてエチレン、α−オレフィンおよび芳香族ビニル化合物を共重合させると、エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体(B)は通常これを含む重合液として得られる。この重合液は常法により処理され、エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体(B)が得られる。
【0075】
本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物においては、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体は、(A)結晶性ポリオレフィン樹脂、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体および(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体の合計量を100重量部として、10〜85重量部、好ましくは20〜80重量部、さらに好ましくは35〜75重量部の割合で用いられる。また、(D)オレフィン系ゴム(d-1) および/または軟化剤(d-2) が配合される場合には、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体は、(A)結晶性ポリオレフィン樹脂、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体および(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体、(D)オレフィン系ゴム(d-1) および軟化剤(d-2) の合計量を100重量部として、10〜85重量部、好ましくは20〜80重量部、さらに好ましくは35〜75重量部の割合で用いられる。
【0076】
(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体を上記のような割合で用いると、耐傷付き性に優れるとともに、耐熱性に優れた成形体を提供し得る、成形性に優れたオレフィン系エラストマー組成物が得られる。
【0077】
(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体
本発明で用いられる芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体(C)は、スチレンまたはその誘導体などの芳香族ビニル化合物の重合体ブロック(c-1) と、特定のイソプレン重合体または特定のイソプレン・ブタジエン共重合体などの共役ジエン(共)重合体からなるブロック(c-2) とからなり、水素添加されていてもよい。
【0078】
上記ブロック(c-1) を構成する重合体成分は、芳香族ビニル化合物、たとえばスチレンまたはその誘導体である。スチレンの誘導体としては、具体的には、α−メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4- ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレンなどが挙げられる。ブロック(c-1) を構成する重合体成分としては、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0079】
上記ブロック(c-2) を構成する共役ジエン(共)重合体は、イソプレン重合体またはイソプレン・ブタジエン共重合体であって、イソプレン単位全体に対する1,2-位または3,4-位で結合しているイソプレン単位含有量が40モル%以上、好ましくは45モル%以上である。
【0080】
本発明において、全イソプレン単位に対する1,2-位または3,4-位で結合しているイソプレン単位含有量が40モル%以上であるとき、耐傷付き性に優れた成形体を提供し得るオレフィン系エラストマー組成物を得ることができる。
【0081】
芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体(C)におけるスチレンまたはその誘導体の重合体ブロック(c-1) の割合は、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜45重量%の範囲である。
【0082】
本発明においては、水素添加された芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体(C)が好ましい。水素添加された芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体(C)を用いると、耐候性と耐熱性により優れた成形体を提供し得るオレフィン系エラストマー組成物が得られる。
【0083】
本発明で用いられる芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体(C)のメルトフローレート(ASTM D1238-65T に従い230℃、2.16kg荷重の条件下に測定)は、好ましくは0.01〜30g/10分、さらに好ましくは0.01〜10g/10分の範囲にある。メルトフローレートが上記のような範囲にあるブロック共重合体(C)を用いると、耐傷付き性に優れた成形体を提供し得るオレフィン系エラストマー組成物が得られる。
【0084】
本発明で用いられるブロック共重合体(C)のブロック形態としては、ブロック(c-1) −ブロック(c-2) −ブロック(c-1) の形態が最も好ましいが、これに限られるものではない。
【0085】
このような芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体(C)は、たとえば、以下のような方法により製造することができる。
(1) アルキルリチウム化合物を開始剤としてスチレンまたはその誘導体、イソプ
レンまたはイソプレン・ブタジエン混合物を逐次重合させる方法。
(2) スチレンまたはその誘導体、次いで、イソプレンまたはイソプレン・ブタジ
エン混合物を重合し、これをカップリング剤によりカップリングする方法。
(3) ジリチウム化合物を開始剤としてイソプレンまたはイソプレン・ブタジエン
混合物、次いで、スチレンまたはその誘導体を逐次重合させる方法。
【0086】
上記ブロック共重合体(C)の製造方法の詳細は、たとえば特開平2−300250号公報に記載されている。
また、上記のような方法により得られた芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体(C)に水添処理を行なえば、水素添加された芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体(C)が得られる。水添されるブロックは、イソプレン重合体ブロックまたはイソプレン・ブタジエン共重合体ブロック(c-2) である。
【0087】
本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物においては、(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体は、(A)結晶性ポリオレフィン樹脂、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体および(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体の合計量を100重量部として、5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部、さらに好ましくは10〜30重量部の割合で用いられる。また、(D)オレフィン系ゴム(d-1) および/または軟化剤(d-2) が配合される場合には、(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体は、(A)結晶性ポリオレフィン樹脂、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体および(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体、(D)オレフィン系ゴム(d-1) および軟化剤(d-2) の合計量を100重量部として、5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部、さらに好ましくは10〜30重量部の割合で用いられる。
【0088】
(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体を上記のような割合で用いると、耐摩耗性および耐傷付き性に優れるとともに、外観に優れたオレフィン系エラストマー組成物が得られる。
【0089】
また、本発明では、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体と(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体との配合比(B/C(重量比))が70/30〜30〜70の範囲にあることが好ましい。(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体と(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体との配合比が上記の範囲内にあると、耐傷付き性、耐摩耗性に優れ、かつゴム的性質に優れる熱可塑性エラストマーを得ることができる。
【0090】
本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物は、前記(A)結晶性ポリオレフィン樹脂、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体および(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体から形成されているが、必要に応じて(D)オレフィン系ゴム(d-1) および/または軟化剤(d-2) が配合されていてもよい。
【0091】
(d-1) オレフィン系ゴム
本発明において必要に応じて用いられるオレフィン系ゴム(d-1) としては、炭素原子数が2〜20のα−オレフィン含量が50モル%以上の無定形ランダムな弾性共重合体および、その他のゴム、たとえばスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴム、ポリイソブチレンゴムなどが挙げられる。
【0092】
上記の炭素原子数が2〜20のα−オレフィン含量が50モル%以上の無定形ランダムな弾性共重合体としては、2種以上のα−オレフィンからなるα−オレフィン共重合体、2種以上のα−オレフィンと非共役ジエンとからなるα−オレフィン・非共役ジエン共重合体があり、具体的には、以下のようなゴムが挙げられる。
(1)エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム
[エチレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
(2)エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム
[エチレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
(3)プロピレン・α−オレフィン共重合体ゴム
[プロピレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
(4)ブテン・α−オレフィン共重合体ゴム
[ブテン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
上記α−オレフィンとしては、具体的には、上記した結晶性ポリオレフィン樹脂(A)を構成するα−オレフィンの具体的な例と同様のα−オレフィンを挙げることができる。
【0093】
また、上記非共役ジエンとしては、具体的には、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられる。
【0094】
このような非共役ジエンが共重合している上記(2)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムのヨウ素価は、25以下が好ましい。
上記(1)〜(4)の共重合体ゴムのムーニー粘度[ML1+4 (100℃)]は、10〜250であり、特に30〜150が好ましい。
【0095】
本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物においては、(d-1) オレフィン系ゴムは、(A)結晶性ポリオレフィン樹脂、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体、(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体および(d-1) オレフィン系ゴムの合計量を100重量部として、50重量部以下、好ましくは3〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部の割合で用いられる。また、(d-2) 軟化剤が配合される場合には、(d-1) オレフィン系ゴムは、(A)結晶性ポリオレフィン樹脂、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体および(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体、(D)オレフィン系ゴム(d-1) および軟化剤(d-2) の合計量を100重量部として、50重量部以下、好ましくは3〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部(但し、オレフィン系ゴム(d-1) および軟化剤(d-2) の合計量は50重量部以下である)の割合で用いられる。
【0096】
オレフィン系ゴム(d-1) を上記のような割合で用いると、耐傷付き性に優れるとともに柔軟性に優れた成形体を提供し得るオレフィン系エラストマー組成物が得られる。
【0097】
(d-2) 軟化剤
本発明において必要に応じて用いられる軟化剤(d-2) としては、通常ゴムに使用される軟化剤が適当であり、具体的には、
プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルト、ワセリン等の石油系物質;
コールタール、コールタールピッチ等のコールタール類;
ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、椰子油等の脂肪油;
トール油、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;
リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12- 水酸化ステアリン酸、モンタン酸、オレイン酸、エルカ酸等の脂肪酸またはその金属塩、脂肪酸アミド;
石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子;
ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系可塑剤;
その他マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエンまたはその変性物あるいは水添物、液状チオコールなどが挙げられる。
【0098】
本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物においては、(d-2) 軟化剤は、(A)結晶性ポリオレフィン樹脂、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体、(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体および(d-2) 軟化剤の合計量を100重量部として、50重量部以下、好ましくは3〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部の割合で用いられる。また、(d-1) オレフィン系ゴムが配合される場合には、(d-2) 軟化剤は、(A)結晶性ポリオレフィン樹脂、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体および(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体、(D)オレフィン系ゴム(d-1) および軟化剤(d-2) の合計量を100重量部として、50重量部以下、好ましくは3〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部(但し、オレフィン系ゴム(d-1) および軟化剤(d-2) の合計量は50重量部以下である)の割合で用いられる。
【0099】
軟化剤(d-2) を上記のような割合で用いると、成形時の流動性に優れたオレフィン系エラストマー組成物が得られる。このオレフィン系エラストマー組成物からなる成形品は、耐摩耗性および耐傷付き性が良好である。
【0100】
本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物は、前記(D)オレフィン系ゴム(d-1) および/または軟化剤(d-2) に代えて、または前記(D)とともにさらに(E)高級脂肪酸アミド(e-1) 、シリコーンオイル(e-2) 、エステル化合物(e-3) およびフッ素系ポリマー(e-4) から選ばれる少なくとも1種の成分が配合されていてもよい。
【0101】
(e-1) 高級脂肪酸アミド
本発明で必要に応じて用いられる高級脂肪酸アミド(e-1) として具体的には、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘミン酸アミドなどの飽和脂肪酸アミド;エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ブラシジン酸アミド、エライジン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドなどのビス脂肪酸アミドなどが挙げられる。これらの中ではエルカ酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドが好ましい。
【0102】
(e-2) シリコーンオイル
本発明で必要に応じて用いられるシリコーンオイル(e-2) として具体的には、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、テトラメチルテトラフェニルトリシロキサン、変性シリコーン油などが挙げられる。中でも、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイルが好ましく用いられる。
【0103】
このシリコーンオイル(e-2) の動粘度[JIS K 2283,25℃]は、10〜30,000cSt、好ましくは50〜10,000cSt、さらに好ましくは100〜5,000cStの範囲である。
【0104】
(e-3) エステル化合物
本発明で必要に応じて用いられるエステル化合物(e-3) は、脂肪族アルコールとジカルボン酸、または脂肪族アルコールと脂肪酸とのエステルであり、具体的には、セチルアルコールと酢酸とのエステル、セチルアルコールとプロピオン酸とのエステル、セチルアルコールと酪酸とのエステル、牛脂アルコールと酢酸とのエステル、牛脂アルコールとプロピオン酸とのエステル、牛脂アルコールと酪酸とのエステル、ステアリルアルコールと酢酸とのエステル、ステアリルアルコールとプロピオン酸とのエステル、ステアリルアルコールと酪酸とのエステル、ジステアリルアルコールとフタル酸とのエステル、グリセリンモノオレート、グリセリンモノステアレート、12- 水酸化ステアレート、グリセリントリステアレート、トリメチロールプロパントリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ブチルステアレート、イソブチルステアレート、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、ベヘン酸エステル、カルシウムソープ含有エステル、イソトリデシルステアレート、セチルパルミテート、セチルステアレート、ステアリールステアレート、ベヘニルベヘネート、モンタン酸エチレンブリコールエステル、モンタン酸グリセリンエステル、モンタン酸ペンタエリスリトールエステル、カルシウム含有モンタン酸エステルなどが挙げられる。中でも、ジステアリルアルコールとフタル酸とのエステル、グリセリンモノオレート、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸エステル、モンタン酸グリセリンエステルが好ましく、特にジステアリルアルコールとフタル酸とのエステル、グリセリンモノステアレート、モンタン酸グリセリンエステルが好ましい。
【0105】
(e-4) フッ素系ポリマー
本発明で必要に応じて用いられるフッ素系ポリマ−(e-4) として具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド共重合物などが挙げられる。中でも、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
【0106】
本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物においては、高級脂肪酸アミド(e-1) 、シリコーンオイル(e-2) 、エステル化合物(e-3) およびフッ素系ポリマー(e-4) から選ばれる少なくとも1種の成分(E)は、(A)結晶性ポリオレフィン樹脂、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体および(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体の合計量を100重量部として、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部の割合で用いられる。また、(D)オレフィン系ゴム(d-1) および/または軟化剤(d-2) が配合される場合には、成分(E)は、(A)結晶性ポリオレフィン樹脂、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体および(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体、(D)オレフィン系ゴム(d-1) および軟化剤(d-2) の合計量を100重量部として、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部の割合で用いられる。
【0107】
本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物は、上述したように(A)結晶性ポリオレフィン樹脂、(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体および(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体、必要に応じて、(D)オレフィン系ゴム(d-1) および/または軟化剤(d-2) 、(E)高級脂肪酸アミド(e-1) 、シリコーンオイル(e-2) 、エステル化合物(e-3) およびフッ素系ポリマー(e-4) から選ばれる少なくとも1種の成分から形成されている。
【0108】
本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物は、非架橋のエラストマー組成物であってもよいし、架橋されたエラストマー組成物であってもよい。本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物が、非架橋のエラストマー組成物である場合には、耐傷付き性に優れるという特徴を有し、一方、架橋されたエラストマー組成物である場合には、耐摩耗性に優れるという特徴がある。
【0109】
ここに、「架橋された」とは、下記の方法で測定したゲル含量(シクロヘキサン不溶解分)が10重量%以上である場合をいう。本発明においては、ゲル含量が20重量%以上、特に30重量%以上であることが好ましい。ゲル含量が上記範囲にあると、得られるオレフィン系エラストマー組成物は、機械強度および耐熱性に優れた成形体を提供することができる。
【0110】
[ゲル含量(シクロヘキサン不溶解分)の測定法]
オレフィン系エラストマー組成物の試料を約100mg秤量して0.5mm×0.5mm×0.5mmの細片に裁断し、次いで、得られた細片を、密閉容器中にて30mlのシクロヘキサンに、23℃で48時間浸漬する。
【0111】
次に、この試料を濾紙上に取り出し、室温にて72時間以上恒量になるまで乾燥する。この乾燥残渣の重量からポリマー成分以外のシクロヘキサン不溶性成分(繊維状フィラー、充填剤、顔料等)の重量を減じた値を、「補正された最終重量(Y)」とする。
【0112】
一方、試料の重量からポリマー成分以外のシクロヘキサン可溶性成分(たとえば軟化剤)の重量およびポリマー成分以外のシクロヘキサン不溶性成分(繊維状フィラー、充填剤、顔料等)の重量を減じた値を、「補正された初期重量(X)」とする。
【0113】
ここに、ゲル含量(シクロヘキサン不溶解分)は、次式により求められる。
ゲル含量[重量%]=[補正された最終重量(Y)]÷[補正された初期重量
(X)]×100
次に、本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物の製造方法について説明する。
【0114】
本発明に掛かるオレフィン系エラストマー組成物のうち、架橋されてない組成物は、上記各成分を上述した割合で混合して得られたブレンド物を、有機過酸化物の不存在下に動的に熱処理することにより得ることができる。また、架橋された組成物は、上記各成分を上述した割合で混合して得られたブレンド物を、有機過酸化物の存在下に動的に熱処理して部分的に架橋することにより得ることができる。ここに、「動的に熱処理する」とは、溶融状態で混練することを指す。
【0115】
上記有機過酸化物としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。
【0116】
これらの内では、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレートが好ましく、中でも、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが最も好ましい。
【0117】
本発明においては、有機過酸化物は、(A)結晶性ポリオレフィン樹脂および(d-1) オレフィン系ゴムの合計量100重量%に対して、0.05〜3重量%、好ましくは0.1〜1重量%の割合で用いられる。
【0118】
本発明においては、上記有機過酸化物による部分架橋処理に際し、硫黄、p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N-4-ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン-N,N'-m-フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋用助剤、またはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーを配合することができる。
【0119】
上記のような化合物を用いることにより、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。特に、本発明においては、ジビニルベンゼンが最も好ましい。ジビニルベンゼンは、取扱い易く、上記の被架橋処理物の主成分である(A)結晶性ポリオレフィン樹脂および(d-1) オレフィン系ゴムとの相溶性が良好であり、かつ、有機過酸化物を可溶化する作用を有し、有機過酸化物の分散剤として働くため、熱処理による架橋効果が均質で、流動性と物性とのバランスのとれた架橋されたオレフィン系エラストマー組成物が得られる。
【0120】
本発明においては、上記のような架橋助剤または多官能性ビニルモノマーは、上記の被架橋処理物全体に対して、0.1〜2重量%、特に0.3〜1重量%の割合で用いるのが好ましい。架橋助剤または多官能性ビニルモノマーの配合割合が上記範囲にあると、得られるオレフィン系エラストマー組成物は、架橋助剤および多官能性ビニルモノマーがエラストマー中に未反応のモノマーとして残存することがないため、加工成形の際に熱履歴による物性の変化が生じることがなく、しかも、流動性に優れている。
【0121】
動的な熱処理は、ミキシングロール、インテンシブミキサー(たとえばバンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機などの混練装置を用いて行なわれるが、非開放型の混練装置中で行なうことが好ましい。また、動的な熱処理は、窒素等の不活性ガス中で行なうことが好ましい。熱処理温度は、通常結晶性ポリオレフィン樹脂(A)の融点以上、300℃以下の範囲であり、混練時間は、1〜10分間が好ましい。また、混練の際に加えられる剪断力は、通常、剪断速度で100〜50,000sec-1の範囲が好ましい。
【0122】
本発明では、上記のような架橋されたオレフィン系エラストマー組成物にさらに結晶性ポリオレフィン樹脂が特定の割合で配合されていてもよい。このような結晶性ポリオレフィン樹脂としては、上述した(A)結晶性ポリオレフィン樹脂と同様の樹脂が好ましく用いられる。このような結晶性ポリオレフィン樹脂は、架橋されたオレフィン系エラストマー組成物を100重量部として、5〜50重量部、好ましくは5〜40重量部の割合で用いられる。
【0123】
このようなエラストマー組成物は、架橋されたオレフィン系エラストマー組成物100重量部と、結晶性ポリオレフィン樹脂5〜50重量部とを、上述した動的な熱処理により製造することが望ましい。ただし、動的な熱処理は、有機過酸化物の不存在下で行われる。
【0124】
結晶性ポリオレフィン樹脂を上記のような割合で用いると、二次加工性に優れるとともに、柔軟性および耐傷付き性に優れた成形体を提供し得るような一次成形性に優れたオレフィン系エラストマー組成物が得られる。
【0125】
【発明の効果】
本発明に係るオレフィン系エラストマー組成物は、軽量でリサイクルが容易であり、焼却しても有害なガスを発生しない。また、引張強度、耐摩耗性および耐傷付き性に優れた成形体を提供することができる。
【0126】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0127】
なお実施例では、以下の原料を用いた。
(A)結晶性ポリオレフィン樹脂
(A-1) プロピレンホモポリマー…メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重の条件下に測定):15g/10分、X線により求めた結晶化度:71%
(A-2) 直鎖状低密度ポリエチレン…メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重の条件下に測定):20g/10分、密度:0.920g/cm3 、コモノマー:1-ブテン
(B)エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体
(B-1) エチレン・プロピレン・スチレン共重合体…エチレン/プロピレン=78/22、(エチレン+プロピレン)/スチレン=89/11(モル比)、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]:2.3dl/g
(B-2) エチレン・1-ブテン・スチレン共重合体…エチレン/1-ブテン=91/9、(エチレン+1-ブテン)/スチレン=83/17(モル比)、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]:2.0dl/g
(C)芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体
(C-1) スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体の水添化物…スチレン含有量:20重量%、全イソプレン単位に対する1,2-位または3,4-位で結合しているイソプレン単位の含有割合:55モル%、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重の条件下に測定):2.0g/10分
(d-1) オレフィン系ゴム
(D-1) エチレン・プロピレン共重合体…エチレン含有量:75モル%、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]:2.3dl/g
(d-2) 軟化剤
(D-2) 鉱物系プロセスオイル…出光興産(株)製 PW−380TM
(e-1) 高級脂肪酸アミド
(E-1) エルカ酸アミド
(e-2) シリコーンオイル
(E-2) 東レシリコーン社製 SH200TM
(e-3) エステル系化合物
(E-3) ジステアリルフタレート
(e-4) フッ素系ポリマー
(E-4) ポリビニリデンフルオライド樹脂…クレハ社製 KFポリマー W−1000TM
【0128】
【実施例1〜5、比較例1、2】
上記の原料を表1に示す割合で配合し、バンバリーミキサーを用いて窒素雰囲気中、180℃で5分間混練した後、この混練物をロールに通してシート状とし、シートカッターで裁断してオレフィン系エラストマー組成物の角ペレットを製造した。
【0129】
次に、この角ペレットから射出成形機を用いて角板(150mm×150mm×3mm)を220℃で成形した。得られた角板を用いて下記のようにして耐傷付き性および耐摩耗性を測定した。結果を表1に示す。
【0130】
[耐傷付き性]
上記角板の上に20mm角のフエルト布を置き、さらにその上に200g/cm2 の圧力が掛かるように重りを乗せて100回角板上を往復させ、その往復操作前後の表面状態をもって耐傷付き性を下記A〜Eの5段階で評価した。
【0131】
A:傷が殆ど目立たない
B:傷がやや目立つ
C:傷が目立つ
D:傷がかなり目立つ
E:表面が白化した
[耐摩耗性]
JIS K7204に準拠し以下の条件で耐摩耗性の試験(テーパー摩耗試験)を行ない、摩耗量をもって耐摩耗性を評価した。
【0132】
摩耗輪:CS−17
荷重:1000g
回転数:1000回転
速度:60rpm
【0133】
【実施例6〜9、比較例3、4】
上記の原料を表2に示す割合で配合し、バンバリーミキサーを用いて窒素雰囲気中、180℃で5分間混練した後、この混練物をロールに通してシート状とし、シートカッターで裁断してオレフィン系エラストマー組成物の角ペレットを製造した。
【0134】
次に、この角ペレットと、表2に示した量のジビニルベンゼン(DVB)と2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(POX)とをヘンシェルミキサーで攪拌混合した。さらに、得られた混合物を、L/D=40、スクリュー径=50mmの二軸押出機を用いて窒素雰囲気下に220℃の温度で押出し、架橋されたオレフィン系エラストマー組成物のペレットを得た。架橋されたオレフィン系エラストマー組成物のゲル含量は、このペレットを用い上記した方法で測定した。
【0135】
次に、このペレットから射出成形機を用いて角板(150mm×150mm×3mm)を220℃で成形した。
得られた角板を用いて下記のようにして耐傷付き性および摩耗量を測定した。結果を表2に示す。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
Claims (5)
- (A)結晶性ポリオレフィン樹脂:10〜85重量部と、
(B)エチレンとα−オレフィンと芳香族ビニル化合物との共重合体であって、エチレンから導かれる構成単位およびα−オレフィンから導かれる構成単位と、芳香族ビニル化合物から導かれる構成単位とのモル比(エチレン+α−オレフィン/芳香族ビニル化合物)が99.5/0.5〜65/35の範囲にあり、エチレンから導かれる構成単位と、α−オレフィンから導かれる構成単位とのモル比(エチレン/α−オレフィン)が99.5/0.5〜70/30の範囲にあり、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が0.1〜10.0dl/gの範囲にあるエチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体:10〜85重量部と、
(C)スチレンまたはその誘導体の重合体ブロック(c-1) と、
イソプレン重合体ブロックまたはイソプレン・ブタジエン共重合体ブロックであって、全イソプレン単位に対する1,2-位または3,4-位で結合しているイソプレン単位の含有割合が40モル%以上である重合体または共重合体ブロック(c-2) とからなる、水素添加されていてもよい芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体:5〜50重量部(但し、(A)と(B)と(C)の合計量は100重量部)とを含むことを特徴とするオレフィン系エラストマー組成物。 - (A)結晶性ポリオレフィン樹脂:10〜85重量部と、
(B)エチレンとα−オレフィンと芳香族ビニル化合物との共重合体であって、エチレンから導かれる構成単位およびα−オレフィンから導かれる構成単位と、芳香族ビニル化合物から導かれる構成単位とのモル比(エチレン+α−オレフィン/芳香族ビニル化合物)が99.5/0.5〜65/35の範囲にあり、エチレンから導かれる構成単位と、α−オレフィンから導かれる構成単位とのモル比(エチレン/α−オレフィン)が99.5/0.5〜70/30の範囲にあり、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1〜10.0dl/gの範囲にあるエチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物共重合体:10〜85重量部と、
(C)スチレンまたはその誘導体の重合体ブロック(c-1) と、
イソプレン重合体ブロックまたはイソプレン・ブタジエン共重合体ブロックであって、全イソプレン単位に対する1,2-位または3,4-位で結合しているイソプレン単位の含有割合が40モル%以上である重合体または共重合体ブロック(c-2) とからなる、水素添加されていてもよい芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体:5〜50重量部と、
(D)オレフィン系ゴム(d-1) および/または軟化剤(d-2) ;1〜50重量部(但し、(A)と(B)と(C)と(D)の合計量は100重量部)とを含むことを特徴とするオレフィン系エラストマー組成物。 - 請求項1または2に記載のオレフィン系エラストマー組成物100重量部に対して、さらに
(E)高級脂肪酸アミド(e-1) 、シリコーンオイル(e-2) 、エステル化合物(e-3) およびフッ素系ポリマー(e-4) から選ばれる少なくとも1種の成分を0.01〜10重量部の量で含むことを特徴とするオレフィン系エラストマー組成物。 - 前記組成物を構成する各成分のうち少なくとも1つの成分が架橋されている請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン系エラストマー組成物。
- 前記組成物を構成する各成分が架橋されていない請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン系エラストマー組成物。
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