JP3746130B2 - 合成繊維用紡績油剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は合成繊維用紡績油剤(以下、紡績油剤という)に関する。近年、合成繊維の紡績においては、生産コストの低減や生産性の向上を目的として高速リング紡績や高速ローター式オープンエンド紡績等の高速紡績への転換が進んでいる。そのためかかる高速紡績に適用できる操業性の優れた紡績油剤の出現が強く要請されるようになっている。合成繊維、特にポリエステル繊維の高速紡績においては、合成繊維が紡績機材と接触して通過する部分への繊維からの各種脱落物の付着や堆積が紡績の高速化に対して大きな支障となっている。かかる脱落物の付着や堆積は、例えばカード工程におけるテーカーインやシリンダーへの繊維の捲き付き、練条工程におけるチューブ詰まりやコイル乱れ、練条工程以降の各工程におけるローラー捲き付き等の他、高速ローター式オープンエンド紡績における精紡工程においてローター内への脱落物の蓄積等を引き起こし、糸切れや糸強度の低下等の繊維損傷の原因となる。本発明は上記のような合成繊維の高速紡績においても該合成繊維に優れた紡績性を与える紡績油剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、紡績油剤としては、各種のアルキルリン酸エステル塩が広く使用されている。これには、アルキル基として、1)炭素数8〜14程度の単一の直鎖アルキル基から成るもの又はそれらの混合アルキル基からなるもの、炭素数16〜24の単一の直鎖アルキル基からなるもの又はそれらの混合アルキル基から成るもの(特開昭59−223370、特開昭60−224869)が提案されている。ところが、一般に上記のような炭素数8〜14のアルキルリン酸エステル塩を用いたものは、吸湿によって粘着化し、捲き付きやスカム発生の原因となり易く、また炭素数16〜24のアルキルリン酸エステル塩を用いたものは、低湿下での制電性が不足する上に、平滑性が劣るため、合成繊維由来のオリゴマーやポリマーの削れ片が合成繊維と紡績機材との接触通過部へ堆積し易いという欠点がある。かかる弊害を解消するため、2)炭素数12〜18の直鎖アルコールの混合物で且つ炭素数16のセチルアルコールを50重量%以上の割合で含有するものをリン酸化した直鎖アルキルリン酸エステル塩を用いる例(特開昭58−65070)、3)直鎖アルコールと分岐アルコールとの混合アルコールから得られるアルキルリン酸エステル塩と分岐アルキルリン酸エステル塩との混合物を用いる例(特公昭52−31999、特開昭54−138695)、4)炭素数8〜22のアルキル基と炭素数1〜6のアルキル基とを有する非対称型のジアルキルリン酸エステル塩を用いる例(特開昭50−195)、5)炭素数が16よりも大きい直鎖アルキル基を有するモノアルキルリン酸エステル塩を用いる例(特公昭42−11480)等が提案されている。ところが上記2)の例では、オリゴマーやポリマーの削れを防止する上で相応の効果が得られず、また上記3)の例では吸湿によるスカム発生の防止が不充分であり、更に上記4)及び5)の例では高湿下において吸湿によるスカム発生の防止効果が得られないという欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、従来の紡績油剤では、合成繊維の紡績において、特にその高速紡績において、該合成繊維からの脱落物が紡績機材の接触通過部へ付着、堆積するのを充分に防止できない点である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
しかして本発明者らは、脂肪族1価アルコールをリン酸化して中和したアルキルリン酸エステル塩に着目し、リン酸化反応に用いる脂肪族1価アルコールのアルキル基の鎖長の違いやその割合及びこれらをリン酸化して中和した各種のアルキルリン酸エステル塩同族体の成分割合等と、合成繊維の紡績、特にその高速紡績における脱落物の紡績機材の接触通過部への付着、堆積の防止効果との関係を研究した結果、所定の混合脂肪族1価アルコールから得られる特定組成割合の混合アルキルリン酸エステル塩が正しく好適であることを見出した。
【0005】
すなわち本発明は、炭素数8〜12の脂肪族1価アルコール(A)及び炭素数18〜22の脂肪族1価アルコール(B)からなる混合脂肪族1価アルコールをリン酸化剤でリン酸化し、次いでそのリン酸化物をアルカリで中和した混合脂肪族1価アルコールのリン酸エステル塩であって、該リン酸エステル塩中に含まれる下記の式1で示されるリン酸ジエステル塩(AB−P)が下記の式2で示されるリン酸ジエステル塩(AA−P)及び下記の式3で示されるリン酸モノエステル塩(A−P)の総和に対して、(AB−P)/{(AA−P)+(A−P)}≧1/1(モル比)の割合で含有されているリン酸エステル塩から成ることを特徴とする紡績油剤に係る。
【0006】
【式1】
【式2】
【式3】
【0007】
式1〜3において、
R1:炭素数8〜12の直鎖アルキル基
R2:炭素数18〜22の直鎖アルキル基
M1:アルカリ
M2:水素又はアルカリ
【0008】
本発明は紡績油剤として、前記の混合脂肪族1価アルコールのリン酸エステル塩(以下、混合アルキルリン酸エステル塩という)を用いるものであり、該混合脂肪族1価アルコールとは、炭素数8〜12の脂肪族1価アルコール群(以下、脂肪族1価アルコールAという)と炭素数18〜22の脂肪族1価アルコール群(以下、脂肪族1価アルコールBという)との混合物である。
【0009】
混合アルキルリン酸エステル塩は前記した混合脂肪族1価アルコールとリン酸化剤とを反応させて得られるリン酸化物の塩であって、これにはモノアルキルリン酸エステル塩とジアルキルリン酸エステル塩とが含有されてくる。また前記したモノアルキルリン酸エステル塩には、アルキル基が脂肪族1価アルコールAに由来するもの(A−P)及びアルキル基が脂肪族1価アルコールBに由来するもの(B−P)が包含される。更に前記したジアルキルリン酸エステル塩には、アルキル基が脂肪族1価アルコールAとBに由来するもの(AB−P)、アルキル基が脂肪族1価アルコールAのみに由来するもの(AA−P)、アルキル基が脂肪族1価アルコールBのみに由来するもの(BB−P)が包含される。
【0010】
本発明の混合アルキルリン酸エステル塩は、これに含まれる前記の各成分のうち式1で示されるジアルキルリン酸エステル塩(AB−P)が式2で示されるジアルキルリン酸エステル塩(AA−P)と式3で示されるモノアルキルリン酸エステル塩(A−P)との総和よりもモル換算で等しいか若しくは多いという成分割合を有するものである。
【0011】
式1で示されるジアルキルリン酸エステル塩(AB−P)が式2で示されるジアルキルリン酸エステル塩(AA−P)と式3で示されるモノアルキルリン酸エステル塩(A−P)との総和よりもモル換算で等しいか若しくは多くなるような混合アルキルリン酸エステル塩は、1)リン酸化反応に供する混合脂肪族1価アルコール1モル中における脂肪族1価アルコールAの割合Xを1/4〜2/3モルの範囲とし、且つ2)リン酸化反応に供するリン酸化剤と混合脂肪族1価アルコールとを、該リン酸化剤中のリン原子1個に対して反応に供する混合脂肪族1価アルコールのモル数Mと前記Xとが下記の式4を満足する条件で用いることにより製造できる。
【0012】
【式4】
【0013】
式4において、
X:混合脂肪族1価アルコール1モル中における脂肪族1価アルコール(A)のモル数であって、1/4≦X≦2/3を満足するモル数
M:リン酸化剤中のリン原子1個に対して反応に供する混合脂肪族1価アルコールのモル数
【0014】
前記1)において、混合脂肪族1価アルコール1モル中に脂肪族1価アルコールAが1/4〜2/3モルの割合で含まれるということは脂肪族1価アルコールA/脂肪族1価アルコールB=1/3〜2/1(モル比)を意味する。また前記2)において、リン酸化剤として例えば、分子中にリン原子1個を有するオキシ塩化リン(POCl3)を用いる場合には、混合脂肪族1価アルコール/オキシ塩化リン=13/9〜2/1(モル比)となり、またリン酸化剤として分子中にリン原子2個を有する無水リン酸を用いる場合には、混合脂肪族1価アルコール/無水リン酸=26/9〜4/1(モル比)となる。
【0015】
本発明の混合アルキルリン酸エステル塩の製造に用いる混合脂肪族1価アルコールにおいて、それを形成する脂肪族1価アルコールAとしては、1−オクタノール、1−デカノール、ラウリルアルコール(1−ドデカノール)及びそれらの混合アルコールが挙げられる。また脂肪族1価アルコールBとしては、ステアリルアルコール(1−オクタデカノール)、1−エイコサノール、1−ドコサノール及びそれらの混合アルコールが挙げられる。本発明によれば、混合脂肪族1価アルコールとしては、脂肪族1価アルコールAとしてラウリルアルコールを、また脂肪族1価アルコールBとしてステアリルアルコールを用いたものが好ましい。
【0016】
本発明は混合アルキルリン酸エステル塩の製造に用いるリン酸化剤の種類を特に制限するものではないが、リン酸化剤としては前記したようなオキシ塩化リン等のオキシハロゲン化リン又は無水リン酸が有利に適用できる。本発明によれば、リン酸化剤としてオキシハロゲン化リンを用いる場合には、混合脂肪族1価アルコール1モル中における脂肪族1価アルコールAの割合Xを1/3〜2/3(モル比)の割合とするのが好ましく、またリン酸化剤として無水リン酸を用いる場合には、前記のXを1/4〜1/3(モル比)とするのが好ましい。後者の場合にはなかでも、式1におけるMが1.75を超えないようにすることが特に好ましい。すなわち、リン酸化剤として無水リン酸を用いる場合には、脂肪族1価アルコールA/脂肪族1価アルコールB=1/3〜1/2(モル比)とし且つ混合脂肪族1価アルコール/無水リン酸が3.5/1(モル比)を超えないようにすることが特に好ましい。
【0017】
本発明の混合アルキルリン酸エステル塩の製造には公知の方法が適用できる。これには、リン酸化剤としてオキシハロゲン化リンを用いる場合には、石油エーテル、ベンゼン、キシレン等の活性水素基を有しない不活性溶剤に所定量の混合脂肪族1価アルコールを溶解させておき、これにオキシハロゲン化リンとして例えば所定量のオキシ塩化リンを滴下してゆき、反応させる。反応によって発生する塩化水素ガスを反応系外へ放出させるか若しくは予め反応系に3級アミン例えばピリジン、トリエチルアミン等を共存させて発生する塩化水素ガスを捕捉する。この場合反応によって生成する物質はジアルキルホスホリルモノクロライド、モノアルキルホスホリルジクロライドと一部副生するトリアルキルホスフェートである。この反応系にホスホリルクロライド類と当量のアルカリ類を溶解したアルカリ水溶液を加えてホスホリルクロライド類を加水分解させてジアルキルハイドロジェンホスフェート、モノアルキルジハイドロジェンホスフェートの混合物が得られる。またリン酸化剤として無水リン酸を用いる場合には、所定量の混合脂肪族1価アルコールを撹拌しながら所定量の無水リン酸を加えて反応させて、酸性アルキルリン酸エステルを得る方法が適用できる。この場合、無水リン酸としては、加熱して完全に脱水させたものを用いること、反応操作中に吸湿させないことが必要である。かくして得られる酸性アルキルリン酸エステルを、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコラート、炭酸アルカリ等のアルカリの水溶液を用いて中和し、本発明の混合アルキルリン酸エステル塩を製造することができる。本発明によればアルカリとして水酸化カリウムを用いて中和して得られる混合アルキルリン酸エステルカリウム塩が特に好ましい。
【0018】
以上説明したような混合アルキルリン酸エステル塩から成る本発明の紡績油剤は水性液とした後、合成繊維に付着させる。通常は、予め紡績油剤濃度が30〜60重量%程度の高濃度水性液を調製しておき、使用の際にこれを0.1〜10重量%程度の低濃度水性液として、合成繊維に付着させる。この場合、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤又は両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上の公知の界面活性剤を必要に応じて適宜用いることができるが、その使用量は可及的に少量とするのが好ましい。
【0019】
本発明の紡績油剤の付着工程は合成繊維の紡糸工程、延伸工程、捲縮工程等の各工程のいずれでもよいが、紡糸工程又は捲縮工程の前後に付着させることが好ましい。またその付着方法は、浸漬給油法、スプレー給油法、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法等のいずれでもよいが、浸漬給油法若しくはスプレー給油法で付着させるのが好ましい。紡績油剤の付着量は、合成繊維に対し0.05〜0.4重量%とするのが好ましく、0.08〜0.2重量%とするのがより好ましい。
【0020】
本発明の紡績油剤が適用される合成繊維としては、1)エチレンテレフタレ一卜を主たる構成単位とするポリエステル繊維、2)ポリアクリロニトリル、モダアクリル等のアクリル繊維、3)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、等の合成繊維が挙げられるが、なかでもポリエステル繊維に適用するのが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態としては、次の1)〜4)が挙げられる。
1)脂肪族1価アルコールAとしてラウリルアルコール2/7モル及び脂肪族1価アルコールBとしてステアリルアルコール5/7モルからなる混合脂肪族1価アルコールと無水リン酸とを該混合脂肪族1価アルコール/無水リン酸=3.33/1(モル比)の割合で反応させて得られる混合脂肪族1価アルコールのリン酸エステルを水酸化カリウムを用いて中和した混合アルキルリン酸エステルカリウム塩から成る紡績油剤。
【0022】
2)上記1)と同様にして、ラウリルアルコール1/3モル及びステアリルアルコール2/3モルからなる混合脂肪族1価アルコールと無水リン酸とを該混合脂肪族1価アルコール/無水リン酸=3.50/1(モル比)の割合で反応させて得られる混合脂肪族1価アルコールのリン酸エステルを水酸化カリウムを用いて中和した混合アルキルリン酸エステルカリウム塩から成る紡績油剤。
【0023】
3)脂肪族1価アルコールAとしてオクタノール1/4モル及び脂肪族1価アルコールBとしてエイコサノール3/4モルからなる混合脂肪族1価アルコールと無水リン酸とを該混合脂肪族1価アルコール/無水リン酸=3.0/1(モル比)の割合で反応させて得られる混合脂肪族1価アルコールのリン酸エステルを水酸化カリウムを用いて中和した混合アルキルリン酸エステルカリウム塩から成る紡績油剤。
【0024】
4)脂肪族1価アルコールAとしてラウリルアルコール1/2モル及び脂肪族1価アルコールBとしてステアリルアルコール1/2モルからなる混合脂肪族1価アルコールとオキシ塩化リンとを該混合脂肪族1価アルコール/オキシ塩化リン=1.75/1(モル比)の割合で反応させて得られる混合脂肪族1価アルコールのリン酸エステルクロライドを加水分解して生成する該混合脂肪族1価アルコールのリン酸エステルを水酸化カリウムを用いて中和した混合アルキルリン酸エステルカリウム塩から成る紡績油剤。
【0025】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的に示すため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例等において、別に記載しない限り、部は重量部、%は重量%である。
【0026】
【実施例】
試験区分1(混合アルキルリン酸エステル塩の合成)
・混合アルキルリン酸エステル塩(P−1)の合成
ラウリルアルコール178.1部(20/21モル)とステアリルアルコール642.9部(50/21モル)とを反応容器にとり、75〜85℃に保持して、撹拌しながら無水リン酸142部(1モル)を少量づつ60分かけて反応させた。更に80〜85℃で3時間保持して反応を終了し、混合アルキル酸性リン酸エステル963部を得た。得られた混合アルキルリン酸エステルの酸価は電位差滴定装置を用いたアルカリ滴定で測定したところ、165であった。この混合アルキルリン酸エステル360部を6.3%KOH水溶液640部の入った容器に撹拌しながら徐々に加えて中和した。この際に中和熱がでるが、中和温度を80〜90℃に保ち、混合アルキルリン酸エステル塩(P−1)の40%水性液1000部を得た。混合アルキルリン酸エステル塩(P−1)をトリメチルシリル化法によるキャピラリーガスクロマトグラフィで分析したところ、ラウリルステアリルリン酸エステルカリウム塩/(ジラウリルリン酸エステルカリウム塩+モノラウリルリン酸エステルカリウム塩)=1.8/1(モル比)から成る混合アルキルリン酸エステルカリウム塩であった。
【0027】
・混合アルキルリン酸エステル塩(P−2)、(P−3)及び(R−1)〜(R−4)の合成
混合アルキルリン酸エステル塩(P−1)の合成と同様にして、混合アルキルリン酸エステル塩(P−2)、(P−3)及び(R−1)〜(R−4)を合成した。
【0028】
・混合アルキルリン酸エステル塩(P−4)の合成
ラウリルアルコール162.8部(7/8モル)、ステアリルアルコール236.3部(7/8モル)及び石油エーテル1000部を反応容器にとり、均一に溶解した。次に内温を5〜10℃に保持して、撹拌しながらオキシ塩化リン153.5(1モル)を60分かけて滴下し、反応させた。同温度で1時間保持して反応を終了し、ジアルキルホスホリルモノクロライドとアルキルホスホリルジクロライドとを主成分とするホスホリルクロライド類を溶解した反応液を得た。次に、この反応液から石油エーテルと発生した塩化水素ガスを減圧下に留去し、ホスホリルクロライド類490.5部を得た。ここで得たホスホリルクロライド類に10%の水酸化ナトリウム500部を加えて、70〜80℃で加水分解し、次いで、水を減圧下に留去して固状物を得た。ここで得た固状物をキシレン1000部で分散し、濾別して、濾液を得た。得られた濾液からキシレンを減圧下に留去してジアルキルハイドロジェンホスフェートとモノアルキルジハイドロジェンホスフェートとを主成分とする混合物467.3部を得た。ここで得た混合物の酸価は180であった。この混合物300部を15%KOH水溶液580.3部の入った容器に攪拌しながら徐々に加えて中和した。この際に中和熱がでるが、中和温度を80〜90℃に保ち、混合アルキルリン酸エステル塩(P一4)の40%水溶液880.3部を得た。混合アルキルリン酸エステル塩(Pー4)を混合アルキルリン酸エステル塩(P−1)と同様に分祈したところ、ラウリルステアリルリン酸エステルカリウム塩/(ジラウリルリン酸エステルカリウム塩+モノラウリルリン酸エステルカリウム塩)=1.19/1(モル比)からなる混合アルキルリン酸エステルカリウム塩であった。
【0029】
・混合アルキルリン酸エステル塩(R−5)の合成
混合アルキルリン酸エステル塩(P−4)の合成と同様にして、混合アルキルリン酸エステル塩(R−5)を合成した。
混合アルキルリン酸エステル塩(P−1)〜(P−4)及び(R−1)〜(R−5)の内容を表1にまとめて示した。
【0030】
・単一のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩(R−6)及び(R−7)の合成
ラウリルアルコール279部(1.5モル)に無水リン酸71部(0.5モル)を常法によって反応させ、酸性ラウリルリン酸エステル350部を得た。これを10%KOH水溶液700部の中へ加えて中和し、ラウリルリン酸エステルカリウム塩(R−6)を得た。同様の合成方法によりラウリルアルコールに代えてステアリルアルコール405部(1.5モル)を用いてステアリルリン酸エステルカリウム塩(R−7)を得た。
【0031】
・アルキルリン酸エステル塩の混合物(R−8)の調製
上記で得たラウリルリン酸エステル塩(R−6)の40%水性液333部とステアリルリン酸エステル塩(R−7)の40%水性液667部を室温で十分均一になるまで撹拌混合して、ラウリルリン酸エステル塩とステアリルリン酸エステル塩との混合物(R−8)を調製した。
【0032】
・アルキルリン酸エステル塩(R−9)の合成
ブチルアルコール86.3部(35/30モル)とステアリルアルコール630部(70/30モル)との混合物に無水リン酸142部(1モル)を前記の(P−1)の場合と同様に反応させ、アルキルリン酸エステル716.3部を得た。これを10%KOH水溶液1433部の中に加えて中和し、アルキルリン酸エステルカリウム塩(R−9)を得た。アルキルリン酸エステルカリウム塩(R−9)を前記(P−1)と同様に分析したところ、ブチルステアリルリン酸エステルカリウム塩/(ジブチルリン酸エステルカリウム塩+モノブチルリン酸エステルカリウム塩)=2.01/1(モル比)から成るアルキルリン酸エステルカリウム塩であった。
【0033】
【表1】
【0034】
表1において、
A−08:オクチルアルコール
A−12:ラウリルアルコール
B−18:ステアリルアルコール
B−20:エイコシルアルコール
X、M:前記した式1中のX、M
(AB−P)/(AA−P)+(A−P):リン酸ジエステル塩(AB−P)に対するリン酸ジエステル(AA−P)及びリン酸モノエステル(A−P)の総和の割合(モル比)
【0035】
試験区分2(ポリエステルステープル繊維への紡績油剤の付着とその評価)
・ポリエステルステープル繊維への紡績油剤の付着
表2に記載した処理剤の2%水性エマルジョン(紡績油剤濃度として)を調製した。各水性エマルジョンを製綿工程で得られた繊度1.2デニール、繊維長38mmであるセミダルのポリエステルステープル繊維に、紡績油剤としての付着量が0.14%となるようにスプレー給油法で付着させ、80℃の熱風乾燥機に2時間入れて乾燥した後、25℃で40%RHの雰囲気下に一夜調湿して紡績油剤を付着させた処理済みポリエステルステープル繊維を得た。
【0036】
・練条工程におけるスカム防止性評価
上記で得た処理済みポリエステルステープル繊維10kgを用いて、フラットカード(豊田自動織機社製)によりカードスライバーを得た。得られたカードスライバーを30℃で70%RHの雰囲気下、PDF型練条機(石川製作所社製)に紡出速度=250m/分の条件で5回繰り返して通過させた後、PDF型練条機のゴムローラー、レジューサー及びトランペットの各部分に蓄積したスカムの程度を以下の基準で肉眼で判定した。結果をまとめて表2に示した。
◎:スカムがほとんど認められない。
○:スカムが僅かに認められる。
△:スカムがやや多く認められる。
×:スカムが著しく多く認められる。
【0037】
・オープンエンド紡績工程のローター内のスカム防止性評価
上記で得た処理済みポリエステルステープル繊維10kgを用いて、フラットカード(豊田自動織機社製)によりカードスライバーを得た。得られたカードスライバーを用い、ローター式オープンエンド紡績機(オートコロ SE−8:シュラフホルスト社製)を使用して、25℃×65%RHの雰囲気下、ローター回転数=80000r.p.m.、コーミングローラー回転数=8500r.p.m、撚り数=1039T/m、供給スライバー=2.5g/m、トータルドラフト=120倍の条件で2時間運転して、精紡工程を行った後、オープンエンド紡績機のローター内のスカムの程度を以下の基準で肉眼で判定した。結果をまとめて表2に示した。
◎:スカムがほとんど認められない。
○:スカムが僅かに認められる。
△:スカムがやや多く認められる。
×:スカムが著しく多く認められる。
【0038】
【表2】
【0039】
表2において、
e−1:ポリオキシエチレン(10モル)ラウレート/ポリオキシエチレン(8モル)ラウリルアミノエーテルリン酸塩=50/50(重量比)の混合物
e−2:ポリオキシエチレン(10モル)ラウレート/ジメチルエチルラウリルアンモニウムエチルサルフェート=70/30(重量比)の混合物
e−3:ポリオキシエチレン(10モル)ラウレート/N,N−ジメチル−N−ラウリル−N−カルボキシエチレンアンモニウムベタイン=70/30(重量比)の混合物
*:カードスライバーが得られず、評価できなかった
【0040】
【発明の効果】
既に明らかなように、以上説明した本発明には、合成繊維の紡績において、それが高速紡績であっても、脱落物が紡績機材の接触通過部へ付着、堆積するのを防止できるという効果がある。
Claims (3)
- 炭素数8〜12の脂肪族1価アルコール(A)及び炭素数18〜22の脂肪族1価アルコール(B)からなる混合脂肪族1価アルコールをリン酸化剤でリン酸化し、次いでそのリン酸化物をアルカリで中和した混合脂肪族1価アルコールのリン酸エステル塩であって、該リン酸エステル塩中に含まれる下記の式1で示されるリン酸ジエステル塩(AB−P)が下記の式2で示されるリン酸ジエステル塩(AA−P)及び下記の式3で示されるリン酸モノエステル塩(A−P)の総和に対して、(AB−P)/{(AA−P)+(A−P)}≧1/1(モル比)の割合で含有されているリン酸エステル塩から成ることを特徴とする合成繊維用紡績油剤。
【式1】
【式2】
【式3】
(式1〜3において、
R1:炭素数8〜12の直鎖アルキル基
R2:炭素数18〜22の直鎖アルキル基
M1:アルカリ
M2:水素又はアルカリ) - 混合脂肪族1価アルコールが、脂肪族1価アルコール(A)としてラウリルアルコールと脂肪族1価アルコール(B)としてステアリルアルコールとからなるものである請求項1記載の合成繊維用紡績油剤。
- 混合脂肪族1価アルコールのリン酸エステル塩がカリウム塩である請求項1又は2記載の合成繊維用紡績油剤。
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