JP3745994B2 - 複合管状物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリイミド樹脂製複合管状物とその製造方法に関するものである。詳しくは、例えば複写機やプリンターなどの定着装置に使用される、ポリイミド樹脂前駆体からイミド転化させて得られるポリイミド系樹脂性複合管状物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド樹脂は優れた耐熱性、寸法安定性、機械的特性および化学的特性を有しており、その用途としては複写機やレーザービームプリンターなどの熱定着ベルトやトナー画像の中間転写ベルトなど広い分野で使用されている。その用途の一例として複写機やレーザービームプリンターなどの熱定着ベルトが挙げられる。
【0003】
ここで、複写機やレーザービームプリンターの定着部品として使用されるポリイミド複合管状物について例を挙げて説明する。電子写真技術を利用した複写機やレーザービームプリンターにおいては、複写紙や転写紙上に形成したトナー像を定着するための定着装置として熱ローラー方式すなわち、加熱機構を有する定着ローラーとこれに圧接した加圧ローラーの両ローラーの間にトナー像が形成された複写紙を順次送り込み、トナーを加熱溶融させ、トナー像を複写紙上に定着させる方式がある。また定着時の電気エネルギーを少なくする方法、あるいは電源を入れてから複写するまで待ち時間を短縮するための方法として、オンデマンド方式と呼ばれている方法がある。この方法は、ポリイミド樹脂管状物を使用したベルト定着方式に技術開発が進められ、図5に示すようにポリイミド樹脂管状物61の内側にセラミックスヒーター63及びフィルムガイド62を備え、ヒーター63と圧接した加圧ロール64の間にトナー像67を形成した複写紙66を順次送り込みながら、トナー67を加熱溶融させ、トナー像を複写紙上に定着する方法に変わってきている。同図において、65はサーミスタ、68は定着物、69は加圧ロールの芯金、Nはニップ点である。
【0004】
さらに近年、省エネルギー化、複写速度の高速化、待ち時間ゼロなどの要求により、ポリイミド樹脂フィルムの表面に金属薄膜層を設けその金属層を電磁誘導作用により発熱させ、トナー像を複写紙に熱定着させる方法が提案されている(例えば特開2000−188177号公報)。
【0005】
このような電磁誘導発熱作用を利用したトナー定着装置に使用するためのポリイミド複合管状物において、ポリイミド樹脂フィルムに金属薄膜層を積層する方法としては、接着剤を用いて金属箔を貼り合わせるラミネート法やスパッタリング法、イオンプレーティング法、蒸着法、無電解めっき法、ダイレクトメタラリゼーション法などによって直接あるいは間接的に金属層をポリイミド層に積層する方法がある。特に、湿式めっき法は、低コストでの量産が可能な点から注目されており、絶縁体上に直接めっきをすることができる無電解めっき方法は、プラスティックフィルムなどの上に金属をめっきする際にしばしば用いられる。
【0006】
しかしながら、前記のトナー定着用ポリイミド管状物は、電磁誘導作用により瞬間的に急激に金属層のみが発熱させられるために、膨張率の異なるポリイミドフイルム層と金属層の接着力が十分なものが得られておらず、剥離してしまう問題がある。また銅箔や銅板に直接ポリイミド前駆体液を塗布しイミド転化させたものは、銅がポリイミド樹脂内へ拡散を起こすために密着強度が低下することが明らかにされている。
【0007】
上記の問題を解決する方法として、ポリイミド樹脂に銅層を形成する際に樹脂と銅層との中間にニッケルなどの金属を形成する方法(特開昭63−286580号公報等)、あるいはあらかじめポリイミド前駆体液に金属粉末を混合させイミド転化後フィルム表面に突出する金属紛を核に無電解めっき、及び電解めっきを行いポリイミドフイルムと金属層を積層する方法(特開平7−216225号公報)など提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、現状ではいずれの方法もポリイミド層と、金属層の接着力が満足なものが得られておらず、常温と200℃の定着温度のヒートサイクル条件下で数十万枚の複写耐久性及び高速回転に必要な十分な機械的強度が要求される電磁誘導発熱定着方式に使用できるポリイミド樹脂製ベルトは実現されていない。特に極端に熱膨張率の異なるポリイミドと金属層との接着力の要求特性において十分な複合管状物は開発されていない。
【0009】
本発明は前記従来の問題を解決するため、ポリイミド層と金属層が高温定着時にも優れた密着強度を持ち、なおかつ高速回転においても高耐久性を持ち、電磁誘導発熱方式で十分な定着温度が得られるポリイミド樹脂複合管状物とそれを安定的かつ容易に製造する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成させるために本発明の複合管状物は、基材がポリイミド樹脂からなる管状物の外層に、粉体状の金属アンカー層が形成され、その表面に金属薄膜層が形成されており、前記金属薄膜層の外層に、シリコーンゴム層、フッ素樹脂層及びフッ素ゴム層から選ばれる少なくとも一つの層が積層されていることを特徴とする。
【0011】
また本発明の複合管状物の製造方法は、ポリイミド管状物の成形用芯体の外面にポリイミド前駆体液を成形し、イミド転化させる前に金属粉体をポリイミド前駆体成形外面に付着させて金属アンカー層とし、その後イミド転化させたのち、前記金属アンカー層の表面に金属薄膜層を形成し、前記金属薄膜層の外層に、シリコーンゴム層、フッ素樹脂層及びフッ素ゴム層から選ばれる少なくとも一つの層を積層することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1(a)は本発明の一実施の形態における複合管状物10の断面図である。同図において、基材であるポリイミド管状物1の外層に粉体状の金属アンカー層2を介して電磁誘導発熱用金属薄膜層3が形成されている。発熱用金属薄膜3の厚みは1〜300μmの範囲が好ましい。金属アンカー層2を形成する粉体状金属の平均粒子直径は50μm以下であることが好ましい。また金属アンカー層2は単独で形成されているわけではなく、その一部はポリイミド管状物1に埋め込まれている。もちろんポリイミド層に付着しているものが存在していてもよい。
【0014】
ポリイミド管状物1の外面に金属粉体2が積層されていると、この粉体層2を電極層にして、直接電磁誘導発熱用金属薄膜3を例えば電気めっき法で積層できるので好ましい。前記構成において基材となるポリイミド前駆体液による管状物の成形方法は、例えば特許第3054010号の方法などがあるが、これに限定されるものではない。
【0015】
前記方法などにより円筒型芯体の外型表面にポリイミド前駆体液を一定の厚みにキャスト成形し、次いでイミド転化させる前に金属粉末をスプレー方法、あるいは磁力による吸着力などによって金属粉体を付着させ、次いで乾燥、及びイミド転化を完成させることが好ましい。このようにすると、アンカー層を形成する粉体状金属が、ポリイミド前駆体液キャスト層の表面にのみ込まれたり、または表面に付着するものが混在し、後にこの粉体状金属層の表面に形成される電磁誘導発熱用金属薄膜層が発熱及び冷却のヒートサイクルを繰り返しても、剥離しないものとなる。
【0016】
前記において金属粉体の平均粒子直径は50μm以下が好ましく、より好ましくは平均粒子直径が5〜15μmである。金属粉体の平均粒子直径が50μmを超える場合は複合管状物の表面粗度が粗くなる。またポリイミド前駆体のキャスト成形面に金属粉体を塗布した時に液体中に埋め込まれる比率が高くなり、イミド転化後の通電特性が低下し、この金属粉体面に直接電気めっきが困難になる。また金属粉体が細かすぎると、二次凝集しポリイミド前駆体表面での付着量がばらつき最終的には金属薄膜の積層厚みにも影響を及ぼすことになる。また金属粉末の積層工程で金属粉末がポリイミド前駆体成形層の内部に沈降する現象については、ポリイミド前駆体液の粘度、あるいは金属粉体をポリイミド前駆体表面に搬送する速度や強さなどにも影響を受けるため、あらかじめ実験により適切な条件を見出すことができる。
【0017】
本発明で用いる金属粉体の材料は特に限定されるものではなく、導電性であれば各種の金属粉末を単体であるいは混合して使用することができる。磁力により金属粉末を付着させる場合には、磁性体の金属粉末が有用であり、ニッケル、鉄、コバルトなどは好ましい材料である。また金属粉体の形状も特に限定するものではないが、麟片状または片平板状(偏平板状)のものが好ましい。
【0018】
金属粉体のアンカー層2を介して形成する発熱用金属薄膜3の平均厚みは、1〜300μmの範囲が好ましく、より好ましい平均厚みは2〜100μmの範囲である。前記金属薄膜の特性であると電磁誘導発熱作用によって十分な定着温度を得ることができる。
【0019】
発熱用金属薄膜層3の形成方法は、電気めっき、イオンスパッタリング、蒸着、無電解めっき、ダイレクトメタラリゼーション、低温溶融金属槽への浸漬など種々の方法が利用できる。2〜10μmの厚さの金属薄膜を得るためには、電気めっき方法が安価で好ましい。
【0020】
また本発明の複合管状物の発熱用金属薄膜層3の外層には、シリコーンゴム層、フッ素ゴムあるいはフッ素樹脂層のいずれか一つの離型層4が積層されていることが好ましい。離型層4として、シリコーンゴム、フッ素ゴムあるいはフッ素樹脂などを使用することができる。これらの材料のいずれか一つの材料が積層されていると、トナー定着時に溶融したトナーがポリイミド管状物の最外表面に付着し複写紙に再転写(オフセット現象)することを防止できるので好ましい。またシリコーンゴム層はカラートナーの定着において基本色の溶融したトナー像を混色させるために、シリコーンゴムの弾力性が有用であり、好ましい材料である。シリコーンゴム層の厚みは50〜500μの厚さが好ましい。シリコーンゴムと同様にフッ素ゴムも使用できる。またフッ素樹脂材料の種類は特に限定するものではなくポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)が単体でまた混合体で使用することができる。PFAは耐熱性、及び耐久性の面から好ましい材料である。フッ素樹脂層の平均厚みも10〜30μmの範囲が好ましい。また、これらの材料のチューブを被覆することもできる。
【0021】
図1(b)は本発明の複合管状物10の他の一つの実施形態の断面図である。同図において、電磁誘導発熱用金属薄膜層3と離型層4の間に耐酸化金属膜層5が形成されている。耐酸化金属膜層5の厚みは0.1〜10μmの範囲が好ましい。電磁誘導発熱用金属薄膜層3の外面に耐酸化金属膜層5が積層されていると、離型層4を高温で焼き付けて積層する場合や、複合管状物を定着用ベルトとして高温で使用する場合に、電磁誘導発熱用の金属薄膜層の酸化防止に有効であり、金属薄膜層と離型層の強固な接着力を保持することができる。この耐酸化金属膜層の積層は、発熱用金属薄膜層が銅や鉄のように酸化され易い金属の場合に特に有効であり、その材料として銀やニッケルなどを挙げることができる。
【0022】
耐酸化金属膜層の形成方法は、金属蒸着、スパッタリング、ダイレクトメタラリゼーション、無電解めっきおよび電気めっきなど種々の方法で行うことができる。
【0023】
本発明の複合管状物は、電磁誘導作用によって前記金属薄膜層3が発熱する。この原理の一例を図2を用いて説明する。電磁誘導発熱装置20は、鉄心(磁心)21の突起部に電源に接続する励磁回路22からワークコイル(巻線)23に高周波電力を流すようになっている。これにより、金属薄膜層3にジュール熱が発生する。すなわち、電磁誘導作用は前記複合管状物に隣接した高周波電源により交番磁束を発生させ、管状物表面の金属薄膜部分のみを発熱させるものであり、前記金属薄膜の材料が非磁性体であれば金属薄膜の厚みが2〜20μmの範囲が好ましく、また磁性体材料である場合は2〜100μmの厚い方が好ましい。高周波電磁誘導発熱を利用する場合は、発生周波数は1〜100kHzの範囲を用いることができ、20〜40kHzの範囲が実用的である。本発明は高周波誘導発熱に限定されるものではなく、商用波数の50Hzまたは60Hz以上前記高周波の領域までの範囲で使用できる。
【0024】
本発明の製造方法は、芯体の外面にポリイミド前駆体液を成形し、イミド転化させる前に金属粉体をポリイミド前駆体成形外面に付着させ、その後イミド転化させたのち、金属薄膜を成形させ更にシリコーンゴム層、フッ素ゴム層あるいはフッ素樹脂層のいずれかを積層する。また、芯体の外面にポリイミド前駆体液を成形しイミド転化させる前に金属粉体をポリイミド前駆体成形外面に付着させる手段が、スプレー法、粉体バブリング法、磁力吸引のいずれかの方法であることが好ましい。
【0025】
ポリイミド前駆体液をキャスト成形しイミド転化させる前に金属粉体を積層しその後イミド化を完成させると、金属粉体がポリイミド管状物の外面で強固に接着され投錨(アンカー)効果があり、その後の積層する金属薄膜との接着力を強固にすることができて好ましい。
【0026】
以下に本発明の複合管状物及びその製造方法について代表的な実施の形態に従って説明する。
【0027】
本発明のポリイミド樹脂複合管状物は、芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分を極性有機溶媒中で、重合させてなるポリイミド前駆体液を製造した後、このポリイミド前駆体液を公知の管状物製造方法に従って、円筒状金型の外面に塗布し、次いで金属粉体の積層を行い、その後加熱閉環あるいは化学的閉環法を用いて、イミド転化を行う方法により基本となるベース管状物を製造することができる。
【0028】
その後、金属粉体層を核にし金属薄膜層の積層を行い、さらに必要に応じて耐酸化金属膜層を積層した後、シリコーンゴム、フッ素ゴムあるいはフッ素樹脂などの離型層を積層し本発明の複合管状物を完成できる。
【0029】
前記芳香族テトラカルボン酸成分の代表例としては次のようなものが上げられる。ピロメリット酸二無水物、3、3'、4、4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3、3'、4、4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2、3、4、4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2、3、6、7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1、2、5、6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2、2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、あるいはこれらテトラカルボン酸エステル、上記各テトラカルボン酸類の混合物でも良い。
【0030】
一方、芳香族ジアミン成分としては特に制限はなく、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4、4'−ジアミノジフェニルエーテル、4、4'−ジアミノフェニルメタン、ベンジジン、3、3'−ジアミノジフェニルメタン、3、3'−ジメトキシベンチジン、4、4'ジアミノジフェニルプロパン、2、2−ビス〔4-(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンなどが挙げられる。
【0031】
本発明の方法においてはポリイミド前駆体が有機極性溶媒に溶解している組成物(原料)を用いて管状物を製作する。有機極性溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、フェノール類などが挙げられる。これらの有機極性溶媒にはキシレン、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類などを混合することもできる。
【0032】
また、芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とを有機極性溶媒中で重合させて得られたポリイミド前駆体液の中に必要に応じて窒化ホウ素、アルミナ、炭化珪素、シリカ、酸化チタン、金属粉末などの熱伝導改良剤などを混合しても良い。熱伝導性フィラーの形状は球状、鱗片状、繊維状のいずれも使用できるが、管状物表面の平滑性を確保するために球状であることが好ましい。さらに好ましくは、平均粒径1〜20ミクロン球状粒子を挙げることができる。
【0033】
前記した本発明のポリイミド複合管状物によれば、ポリイミド前駆体液を円筒型芯体の外型表面に一定の厚みにキャスト成形し、次いでイミド転化させる前に金属粉末をスプレー方法、あるいは磁力による吸引力などによって付着させ、次いで乾燥、及びイミド転化を完成させると複合管状物の内面は純粋のポリイミド層であり、外層に金属粉体を積層させるため管状物の機械特性が損なわれることがなく耐久性の向上が図れる。
【0034】
また金属粉体をポリイミド前駆体キャスト表面の最外層に電磁力などにより集積させ、その後イミド転化し複合管状物にするため金属粉体は管状物の表面に強固に固着され、尚且つ個々の金属粒子が接触して固着されているため通電作用があり、金属粉体表面に直接電気めっきなどの処理ができ金属薄膜の成形が簡単な工程で可能になる。同時にポリイミド層と金属薄膜層との十分な接着力を得ることができる。すなわち従来技術では、あらかじめポリイミド前駆体液に金属粉末を混合しポリイミド表面の微小な突出した金属粉末を核にし無電解めっき処理、次いで電気めっきなどにより金属薄膜層を積層する方法であるためポリイミド樹脂層の機械特性が著しく低下する。
【0035】
また金属薄膜の厚みが1〜300μmの範囲であると電磁誘導作用により十分な定着温度を確保でき、電力量の削減、同時に待ち時間ゼロで複写が可能になる。
【0036】
また金属粉体の平均粒子直径は50μm以下が好ましく、より好ましくは平均粒子直径5〜15μmであり、ポリイミド層への投錨効果及び次工程で電気めっきを行う場合の電極として十分な導電性が得られる。
【0037】
またポリイミド系管状物の金属薄膜層の外層に、シリコーンゴム層、フッ素ゴム層あるいはフッ素樹脂層のいずれ一つが積層されていると、トナー定着時に溶融したトナーがポリイミド管状物の表面に付着し複写紙に再転写(オフセット現象)することを防止できる。またシリコーンゴム層はカラートナーの定着において基本色の溶融したトナー像を混色させるためにシリコーンゴムの弾力性が有用であり好ましい材料である。シリコーンゴム層の厚みは50〜500μmの厚さが好ましい。またフッ素樹脂材料の種類は特に限定するものではなくPTFE、PFA、FEPが単体でまた混合体で使用することができる。PFAは耐熱性、及び耐久性の面から好ましい材料である。フッ素樹脂層の厚みも10〜30μmの厚さが好ましい。またこれらの材料のチューブを被覆することもできる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0039】
(実施例1)
外径が35mm、長さ500mm、厚み3mmの円筒状アルミニウム製金型を用意した。この金型の表面に酸化けい素コーティング剤をディッピング法によりコーティングし、120℃で30分および380℃で30分加熱して焼付け、平均厚み1μmの酸化けい素膜で被覆した。
【0040】
次に、第1工程として粘度1500ポアズのポリイミド前駆体溶液(IST社製「RC5063PyreMLワニス」)内に前記金型を400mm部分まで浸漬し、塗布したのち内径36.5mmのリング状ダイスを前記金型の上部から挿入し走行させ、前記金型の表面に750μmの厚みのポリイミド前駆体液をキャスト成形した。
【0041】
その後、図3(a)に示すように前記金型(円筒状芯体)31の内側に永久磁石35を挿入し、金型(円筒状芯体)31の両端部を駆動付き軸受け36と従動軸受け36’に水平に置き(図3(b))、5rpmの速度で回転させた。同時に平均粒子直径が12μmの麟片状のニッケル粉末33をトレイ34に入れ、前記キャスト成形されたポリイミド前駆体液層32を有し、水平に配置された金型(円筒状芯体)31の下に20mmの間隔でセットした。その後、モーター37を駆動させ、2分間回転させて金型(円筒型芯体)31から永久磁石35を取り除き、さらに1分間回転させた。ポリイミド前駆体をキャスト成形した最外表面に均一に緻密にニッケル粉末を塗布した管状物中間体を得た。
【0042】
しかる後、第1次イミド転化処理として120℃のオーブンに入れ、60分間乾燥後、200℃の温度まで40分間で昇温させ、同温度で20分間保持し、さらに320℃で40分、400℃で20分間加熱し、ポリイミド前駆体液のイミド転化を完了させたのちオーブンから取出し冷却した後、金型と管状物を分離し目的とするポリイミド管状物を製作した。
【0043】
この管状物の内径は35mmで、金属粉末層を含むポリイミド管状物の平均厚みは79μmであり、管状物の表面粗度(Rz)を測定したところRzは3.7μmであった。
【0044】
次に第2工程として前記金属粉末を塗布しイミド転化を完了した管状物を外径35mmのガラスパイプに挿入し管状物とガラスパイプの隙間にメッキ液が侵入しないようにマスキング処理した。次いで温度50℃の50容量%のHCl水溶液槽に前記管状物を30分浸漬し、ニッケルめっき層の酸化皮膜あるいは不動態化膜を除去し、水洗した。電解めっき液(電気銅めっき)の条件は、次のとおりである。
(1)CuSO4:0.1M
(2)エチレンジアミン:0.3M
(3)(NH42SO4:1.5M
(4)Glycine:0.3M
めっき条件は、次のとおりである。
(1)PH:5
(2)めっき液温度:25℃
(3)電流:3.8A
(4)処理時間:30分
電気銅めっき槽から取出し、水洗後、ポリイミド管状物の外面に金属粉体が固着されこの粉体層を介して電気銅めっきされた最外層を有する複合管状物を得た。この複合管状物の総厚みは83μmであり電気銅のめっき厚みは4μmであった。この複合管状物を切り開き平面状の電磁誘導加熱プレートに載せ20KHzの周波数で印加したところ印加電圧に応じて複合管状物の表面温度を任意に制御することができた。同時に印加電圧を上昇させ複合管状物表面温度を350℃まで冷却と昇温のヒートサイクルを繰り返したが金属薄膜とポリイミド樹脂層の剥離はまったく生じなかった。
【0045】
第3工程として本実施例と同様の方法で10μm厚みに銅めっき処理した総厚み89μmの複合管状物を作製し、外径35mmの樹脂製のパイプに挿入して電気ニッケルめっきを次の条件で行い、耐酸化性のニッケル膜層を積層した。
(1)塩化ニッケル:1M
(2)塩酸:4M
(3)めっき液温度:25℃
(4)陰極電流密度:8A/dm2
(5)処理時間:2分
水洗、乾燥した管状物の総厚みは90μmであり、ニッケル膜層の平均厚みは1μmであった。
【0046】
第4工程として上記ニッケルめっきした複合管状物に外径35mmのステンレスパイプを挿入し、下部をマスキング後、フッ素樹脂プライマー液(デュポン社製:商品名「テフロン855−003」)に浸漬し、4μmの厚みにコーティングした。その後200℃の温度で30分間乾燥し再び常温まで冷却した。
【0047】
次いでPTFEディスパーション(デュポン社製:商品名「テフロン 855−510」)に浸漬し引き上げ10μmの厚みにコーティングし、200℃で10分、320℃で40分、400℃で20分間加熱し、前記複合管状物の表面に焼成されたPTFE樹脂がコーティングされた管状物を得た。この管状物の内径は35mmでPTFE樹脂を含む総厚みは104μmであり、管状物の表面粗度はRz0.8μmであった。
【0048】
このポリイミド管状物を図4の電磁誘導発熱装置を有する定着機に組み込み、毎分12枚の複写速度でモノクロ複写の通紙耐久テストを行なった結果、20万枚の通紙耐久性が得られた。図4において、41は複合管状物、42は電磁誘導発熱装置、43は加圧ロール、44は複写紙、45はトナー像、46はフッ素樹脂層、47はシリコーンゴム層、48は発熱用金属薄膜層、49は金属粉体アンカー層、50はポリイミドベース層、51はバックアップ支持体、52は摺動バックアップパッド、53は加圧ロール芯金である。
【0049】
(実施例2)
実施例1と同一条件で第3工程まで完了させた複合管状物中間体を得た。すなわちポリイミド前駆体成形表面にニッケル粉末を塗布後、管状物のイミド転化を完了させ、さらに金属粉末層の外面に銅めっき薄膜層及びニッケルめっき薄膜層を有する管状物を用意した。この管状物をステンレス製芯体に挿入し、シリコーンゴム用プライマー「DY−39−0067」(東レダウコーニング製)を管状物表面にコーティングし、常温で乾燥した。その後、液状シリコーンゴム「DY−35−4002」(東レダウコーニング製)を管状物上部に付着させ、内径35.5mmのリング状ダイスを自重で走行させ、150μm厚みにシリコーンゴムを被覆した。
【0050】
しかる後、150℃の温度で40分、200℃の温度で5時間加硫を行い、外層をシリコーンゴム被覆した管状物を得た。その後、さらにこのシリコーンゴム表面にフッ素樹脂ディスパージョン「AD−1」(旭硝子製)を10μmの厚み(乾燥後厚み)にスプレー塗布し、フッ素樹脂の融点以上の温度で焼成し、目的とする複合管状物を得た。この管状物を実施例1の電磁誘導発熱装置を有するプリンターに組み込みカラー複写を行ったところ、良好な画像を得ることができた。
【0051】
(実施例3)
実施例1と同様の方法で金型にポリイミド前駆体をキャスト成形した。その後、金型の両端部を図3に示す装置(ただし、永久磁石なし)の駆動付き軸受けに水平に置き、8rpmの速度で回転させた。同時に平均粒子直径が10μmの銀粉末を0.5kg/m2の圧力で金型長さ方向に移動させながら吹き付け、ポリイミド前駆体をキャスト成形した最外表面に均一に緻密に銀粉末を塗布した管状物中間体を得た。
【0052】
しかる後、実施例1と同条件によってイミド転化を行い、冷却後金型と管状物を分離し目的とするポリイミド管状物を作製した。この管状物の内径は35mmで、銀粉末層を含むポリイミド管状物の厚みは78μmであり、管状物の表面粗度を測定したところRz2.5μmであった。次に第2工程として前記銀粉末を塗布し、イミド転化を完了した管状物を外径35mmのガラスパイプに挿入し、管状物とガラスパイプの隙間にめっき液が侵入しないようにマスキング処理した。次いで硝酸槽に前記管状物を30分浸漬し、水洗いした。その後、下記の条件で電気ニッケルめっきを行った。
(1)硫酸ニッケル:240g/L
(2)塩化ニッケル:45g/L
(3)ホウ酸:30g/L
(4)pH:4.0〜5.5
(5)陰極電流密度:1A/dm2
管状物をめっき槽から取出し、水洗い後、ポリイミド管状物の外面に金属粉体が固着されこの粉体層を介してニッケルめっきされた最外層を有する複合管状物を得た。この複合管状物の総厚みは128μmであり、ニッケルめっき厚みは50μmであった。この複合管状物を切り開き、平面状の電磁誘導加熱プレートに載せ、20KHzの周波数で印加したところ印加電圧に応じて複合管状物の表面温度を任意に制御することができた。同時に印加電圧を上昇させ複合管状物表面温度を350℃まで冷却と昇温のヒートサイクルを繰り返したが金属薄膜とポリイミド樹脂層の剥離はまったく生じなかった。
【0053】
(比較例1)
ポリイミド前駆体液(RC5063)をステンレス板に流延し、常法によりイミド転化を完成させ、70μm厚みのポリイミドフィルムを得た。その後50℃の5モルのKOH液に5分間浸漬後、水洗した。このフィルムを0.05モルのNiSO4液に1分間浸漬し、水洗し、0.01モルのNaBH4液に5分間浸漬し、次に水洗する工程を5回繰り返し、ポリイミドフィルム表面にニッケルのダイレクトプレーティングを行った。さらにその後、実施例1の電気銅めっきと同様の条件で、4μmの厚みに銅薄膜層を積層し、目的とするポリイミドフィルムに銅薄膜を積層した複合サンプルを得た。このサンプルを実施例1の電磁誘導加熱プレートに載せ発熱させたところ、瞬間的に発熱したがポリイミドフィルムと銅薄膜が簡単に剥離してしまった。
【0054】
(比較例2)
ポリイミド前駆体液にあらかじめ平均粒子直径が4μmの球状のニッケル粉末をポリイミド前駆体液の固形分に対して50wt%均一に混合し、この均一混合液をステンレス板に流延し、常法にもとづきイミド転化を完了させ、フィルム中にニッケル粉末が均一に混合されたポリイミドフィルムを得た。その後、比較例1と同様の処理でダイレクトプレーティング及び電気銅めっきを行い、誘導発熱プレートによる発熱実験を行ったが、比較例1と同様の結果であった。
【0055】
さらに、前記ニッケル粉末の混合量を90wt%まで増量し同様の実験を行ったが、常温では一定の接着強度を得ることができたが、誘導発熱させると剥離が発生し十分な結果が得られなかった。さらにニッケル粉末をポリイミド前駆体液に混合することによってポリイミドフィルムの機械的強度が極端に低下し、実用化できる結果は得られなかった。
【0056】
以上の例においては、電磁誘導発熱定着管状物について説明したが、本発明における複合管状物の他の用途としては、オンデマンド定着管状物、図5に示す従来のヒーター加熱式定着管状物、及び同一ベルトで転写と定着が可能なベルト等にも適用できる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したとおり本発明は、ポリイミド層と金属層が高温定着時にも優れた密着強度を持ち、なおかつ高速回転においても高耐久性を持ち、電磁誘導発熱方式で十分な定着温度が得られるポリイミド樹脂複合管状物とそれを安定的かつ容易に製造する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(b)は本発明の一実施例における電磁誘導加熱用複合管状物の断面図。
【図2】本発明の一実施例における電磁誘導加熱用複合管状物を発熱させる装置の断面図。
【図3】(a)は本発明の一実施例における電磁誘導加熱用複合管状物を製造するためのアンカー層を形成する装置の一部断面図、(b)は同ロール回転説明図。
【図4】本発明の一実施例における電磁誘導発熱装置を有する定着機の断面図。
【図5】従来のポリイミド樹脂管状物を使用したベルト定着方式を用いた装置の断面図。
【符号の説明】
1 基材のポリイミド管状物
2 金属アンカー層
3 電磁誘導発熱用金属薄膜層
4 離型層
5 耐酸化金属膜層
10 複合管状物
20 電磁誘導発熱装置
21 鉄心(磁心)
22 励磁回路
23 ワークコイル(巻線)
31 金型(円筒状芯体)
32 キャスト成形されたポリイミド前駆体液層
33 ニッケル粉末
34 トレイ
35 永久磁石
36 駆動付き軸受け
36’ 従動軸受け
37 モータ
41 複合管状物
42 電磁誘導発熱装置
43 加圧ロール
44 複写紙
45 トナー像
46 フッ素樹脂コーティング層
47 シリコーンゴム層
48 発熱用金属薄膜層
49 金属粉体アンカー層
50 ポリイミドベース層
51 バックアップ支持体
52 擢動バックアップパッド
53 加圧ロール芯金
61 ポリイミド樹脂管状物
62 フイルムガイド
63 セラミックスヒーター
64 加圧ロール
65 サーミスタ
66 複写紙
67 トナー像
68 定着物
69 加圧ロールの芯金
N ニップ点

Claims (14)

  1. 基材がポリイミド樹脂からなる管状物の外層に、粉体状の金属アンカー層が形成され、その表面に金属薄膜層が形成されており、
    前記金属薄膜層の外層に、シリコーンゴム層、フッ素樹脂層及びフッ素ゴム層から選ばれる少なくとも一つの層が積層されていることを特徴とする複合管状物。
  2. 前記金属薄膜層の厚みが1〜300μmの範囲である請求項1に記載の複合管状物。
  3. 金属アンカー層を構成する粉体状金属の平均粒子直径が50μm以下である請求項1に記載の複合管状物。
  4. 金属アンカー層を構成する粉体状金属の形状が、麟片状または片平板状である請求項1または3に記載の複合管状物。
  5. 金属薄膜層の外層に、さらに耐酸化金属膜層が積層されている請求項1〜4のいずれかに記載の複合管状物。
  6. 耐酸化金属膜層の平均厚さが、0.1〜10μmの範囲である請求項5に記載の複合管状物。
  7. 耐酸化金属膜がニッケルまたは銀である請求項4または5に記載の複合管状物。
  8. 金属薄膜層が、電磁誘導発熱用金属薄膜層である請求項1、2または5に記載の複合管状物。
  9. 基材のポリイミド樹脂層の平均厚さが30〜500μmの範囲である請求項1に記載の複合管状物。
  10. ポリイミド管状物の成形用芯体の外面にポリイミド前駆体液を成形し、イミド転化させる前に金属粉体をポリイミド前駆体成形外面に付着させて金属アンカー層とし、その後イミド転化させたのち、前記金属アンカー層の表面に金属薄膜層を形成し、
    前記金属薄膜層の外層に、シリコーンゴム層、フッ素樹脂層及びフッ素ゴム層から選ばれる少なくとも一つの層を積層することを特徴とする複合管状物の製造方法。
  11. 金属薄膜層の外面に、さらに耐酸化金属膜層を形成する請求項10に記載の複合管状物の製造方法。
  12. 芯体の外面にポリイミド前駆体液を成形し、イミド転化させる前に金属粉体をポリイミド前駆体成形外面に付着させる手段が、スプレー、粉体バブリング及び磁力吸引から選ばれる少なくとも一つの方法である請求項10に記載の複合管状物の製造方法。
  13. 金属アンカー層の外面に金属薄膜層を形成する手段が、金属蒸着、スパッタリング、ダイレクトメタラリゼーション、無電解めっきおよび電気めっきの少なくとも一つの方法である請求項10に記載のポリイミド複合管状物の製造方法。
  14. 金属薄膜層の外面に耐酸化金属膜層が形成する手段が、金属蒸着、スパッタリング、ダイレクトメタラリゼーション、無電解めっきおよび電気めっきの少なくとも一つの方法によることを特徴とする請求項10または11に記載のポリイミド複合管状物の製造方法。
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