JP3744229B2 - 放電加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極を加工液で満たした微小な隙間を介して被加工物に近接させ、この電極と被加工物の間に放電を生じさせて加工する放電加工装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図12は、従来の放電加工機の構成を説明するための側面図である。図において、1はベッドであり、その上部の一端側に被加工物を載置し、他端側に後述のサドル、コラム、電極支持ビームなどからなる電極駆動機構を搭載している。2は被加工物を載置するテーブル、3は加工液を保持し被加工物をこの加工液に浸漬させるための加工液保持槽、4はサドルであり、左右方向(以下、X軸方向と呼ぶ)の平行運動の軌跡を規制する案内機構(以下、X軸案内機構という)4a を介してベッド1が支持している。5はコラムであり、前後方向(以下、Y軸方向と呼ぶ)の平行運動の軌跡を規制する案内機構(以下、Y軸案内機構という)5a を介してサドル4が支持している。61 は第1の電極支持ビームで、上下方向(以下、Z軸方向と呼ぶ)の平行運動の軌跡を規制する案内機構(以下、Z軸案内機構という)6a を介してコラム5が支持しており、その先端部で後述の第2の電極支持ビーム62 とともに図示しない電極を支持している。62 はコラム5が支持し被加工物の下側で電極を支持する第2の電極支持ビームであり、加工液保持槽3のコラム5に対向する側面には第2の電極支持ビーム62 が貫通する貫通孔を設けてある。7はサドル5が支持するシール板であり、第2の電極支持ビーム62 がY軸方向に摺動自在に貫通し、かつ、加工液が加工液保持槽3の貫通孔を通して漏出しないように加工液保持槽2の側面に押つけ、サドル4のX軸方向平行移動に応じて加工液保持槽2の側面を摺動するようになっている。
【0003】
なお、一部の図示および当該部分への符号付けを省略しているが、X軸案内機構4a 、Y軸案内機構5a およびZ軸案内機構6a のそれぞれ中央付近にはサドル4、コラム5および電極支持ビーム61 をそれぞれの方向に平行移動させるサーボモータおよびボールねじを有し、数値制御装置(以下、NC装置と呼ぶ)で駆動される各軸の駆動装置を備えている。なお、各軸の案内機構は平行移動する2つの要素のうちの一方に固着され他方の要素の平行移動する方向に延在する2本の軌道と他方の要素に固着し各軌道上を移動する複数の荷重支持台とからなっている。
【0004】
次に動作を説明する。テーブル2上に載置した被加工物に対し、電極支持ビーム61 および62 の先端部で支持する電極を所望の軌跡にそって移動させ被加工物の加工を行う。ベッド1に対するサドル4と平行移動によって電極のX軸方向位置の、サドル4に対するコラム5の平行移動によって電極のY軸方向位置の位置決めを行い、コラム5に対する電極支持ビーム61 の平行移動によって被加工物の高さに応じた電極支持ビーム61 のZ軸方向位置決めを行う。それぞれの方向への移動は互いに平行移動する2つの要素間に設けた上述の駆動装置によって行う。なお、サドル4のX軸方向への移動に伴って加工液保持槽3の側面とシール板7との間に摩擦力が発生する。
【0005】
特開平1−222302号公報には、工作機械で生じる位置決め誤差を、駆動装置を構成するボールねじなどのバックラッシュと、駆動装置各部の剛性や摩擦トルク、さらには被加工物の慣性量などによって変化するロストモーションとに分離して把握し、位置決め誤差を精度よく補償するように構成したNC装置が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の放電加工機では電極を直交する3方向のそれぞれに設けた駆動装置により移動させており、電極の位置検出は各軸の駆動装置(具体的には各駆動装置を構成するサーボモータ)の回転角度に応じた位置信号を生成する位置検出器(以下、ロータリエンコーダと呼ぶ)からの信号に基づいている。しかし、加工液保持槽3とシール板7の位置がX軸駆動装置のサドル4に対する駆動力の作用点から離れているため、サドル4をX軸方向に移動させると、シール板7と加工液保持槽3の側面の間に作用する摩擦力によってX軸駆動装置のサドル4に対する駆動力の作用点を中心としてサドル5が回転変位し、真の電極位置とX軸駆動装置が備えるロータリエンコーダの信号に基づいて取得する電極位置との間に誤差が発生する。この誤差は電極とX軸駆動装置のサドル5に対する駆動力の作用点との間のY軸方向距離にも依存するため、サドル4とコラム5との平行移動の移動距離につれて変化する。
【0007】
先に述べた特開平1−222302号公報に記載のNC装置では、上記のような放電加工機に特有の誤差を想定しておらず、この種の誤差の補正に対しては無力である。ことに大型の放電加工機のように長尺の電極支持ビーム61 および62 を備えたものではこの誤差が顕著となり、高い加工精度が得られない。この誤差は各部のねじり剛さを大きくすることによって相対的に抑制できるが、経済性が犠牲になるという問題がある。
【0008】
また、加工液保持槽3とシール板7との間に作用する摩擦力は放電加工による加工くず等の堆積などによっても変化し、稼動時間とともに大きくなる傾向があり、経年的に誤差が増加するという問題点もある。
この発明はこのような課題を解決するためになされたもので、経済性を確保しながら位置決め精度の劣化を防止し、かつ精度の高い加工を実現できる放電加工装置を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る放電加工装置は、X軸駆動装置のサドルとの連結位置に対する加工液保持槽とシール板の摩擦力による回転モーメントと、X軸案内機構の摩擦力による回転モーメントとが互いに逆の向きになるようにX軸駆動装置のサドルとの連結位置を設定したものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面を用いて具体的に説明する。なお、前述した従来の放電加工装置と同一もしくは相当する部分には同一の符号を付し重複する部分についての説明は省略する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、この発明の第1の実施形態である放電加工装置の構成を説明するための上面図および側面図である。図において、4b はX軸案内機構5a の2つの軌道の中央よりもシール板7寄りに設置したX軸駆動装置で、サドル4に連結したボールナット(図示しない)と係合してサドル4をX軸方向に駆動するボールねじ41 、ベッド1とボールねじ41 に連結したサーボモータ42 を備えている。5b はY軸案内機構5a の2つの軌道のほぼ中央に設置したY軸駆動装置で、コラム5のX軸方向の略中央に連結したボールナット(図示しない)と係合しコラム5をY軸方向に駆動するボールねじ51 、サドル4とボールねじ51 に連結したサーボモータ52 を備えている。なお、サーボモータ42 および52 はいずれも図示しないNC装置で駆動している。
【0017】
つぎに、X軸駆動装置4b とX軸案内機構4a の2本の軌道の位置との最適な配置について説明する。
ボールねじ41 と係合するボールナットのサドル4との連結位置をB点とし、ベッド1とサドル4との間に作用するB点のまわりの回転モーメントをMB とすると、
MB=n・Fg・(Lb−Lg1)+Fs・Lb+n・Fg・(Lb−Lg2)
=(2n・Fg+Fs)・Lb−n・Fg・(Lg1+Lg2)
として求めることができる。ここで、
n :X軸案内機構4a の1つの軌道に取付けた荷重支持台の数
Fg :1つの荷重支持台と軌道との間の摩擦力
Fs :加工液保持槽2とシール板7との間の摩擦力
Lb :シール板7とX軸駆動装置4a のY軸方向距離
Lg1:一方の軌道とシール板7のY軸方向距離
Lg2:他方の軌道とシール板7のY軸方向距離
である。
【0018】
X軸駆動装置4b によってサドル4が目的とする位置に達したとき、B点のX軸方向位置と真の電極のX軸方向位置との差(以後、電極遅れ量という)ΔXは、ベッド1とサドル4との間のB点を中心とする回転ばね定数をK(サドル4、X軸案内機構4a 等のねじり剛さできまる)として、
ΔX=Lz・MB/K
として求めることができる。ここで、Lz はB点から電極までのY軸方向距離である。
以上のことから、ベッド1とサドル4との間に作用するB点まわりの回転モーメントMB を小さくすれば、電極遅れ量ΔXを小さくできることが解る。
【0019】
例えば、図12に示したワイヤ放電加工機のように、B点をX軸案内機構4aの2つの軌道の中央に配置した場合は、B点に対するX軸案内機構4a の荷重支持台と軌道との間の摩擦力Fg は、一方の軌道上の各荷重支持台におけるものと他方の各荷重支持台におけるものとがB点に対称に作用するので、ベッド1とサドル4との間の回転モーメントとしては互いに相殺することになり、B点を中心とするベッド1とサドル4との間に作用する回転モーメントMB は加工液保持槽3とシール板7の間の摩擦力Fs によるFs・Lb のみである。
加工液保持槽3とシール板7の間の摩擦力Fs を3kg-f以下にすることは困難で、摩擦力Fs によってベッド1とサドル4との間に作用する回転モーメントが電極遅れ量ΔXを決定している。
【0020】
B点をX軸案内機構4a の2つの軌道の中央からシール板7側へ移すと、X軸案内機構4a の摩擦力Fg によって加工液保持槽3とシール板7の間の摩擦力Fs によるベッド1とサドル4との間に作用する回転モーメントとは逆向きの回転モーメントが生じ、回転モーメントMB と電極遅れ量ΔXが減少する。ベッド1とサドル4との間に作用する回転モーメントMB をX軸駆動装置4b をX軸案内機構5a の2つの軌道の中央に配置した場合の3分の1以下にするためには、X軸案内機構4a の2つの軌道の中央からシール板7までのY軸方向距離をL、B点のX軸案内機構5a の2つの軌道の中央からシール板7側に見た距離(以下、オフセット距離という)をΔLb をとして、
−(1/3)・Fs・L<
(2n・Fg+Fs)・(L−ΔLb)−n・Fg・(Lg1+Lg2)<(1/3)・Fs・L
の条件を満たすように設定すればよい。
すなわち、オフセット距離ΔLb を(2/3)・Fs・L/(2・n・Fg+Fs) から(4/3)・Fs・L/(2・n・Fg+Fs) の範囲におけば、ベッド1とサドル4との間に作用する回転モーメントMB および電極遅れ量ΔXを前述した従来のワイヤ放電加工機のそれの3分の1以下になる。
上に述べた条件は、B点に対するX軸案内機構の摩擦力による回転モーメントを、B点に対する加工液保持槽3とシール板7の間の摩擦力による回転モーメントの3分の2から3分の4の範囲になるようにB点を設定するといい替えても安全側に略等価である。
【0021】
図2は、加工液保持槽3とシール板7の間の摩擦力Fs を3、5および9kg-fとして、横軸にX軸駆動装置4b の設置位置をとり、縦軸にその設置位置に対応するベッド1とサドル4との間に作用する回転モーメントMB を示したものである。加工液保持槽3とシール板7の間の摩擦力がFs のとき、オフセット距離ΔLb をFs・L/(2・n・Fg+Fs)とすれば、ベッド1とサドル4との間に作用する回転モーメントMB が0になることを示している。図から、摩擦力Fs が3kg-fのときベッド1とサドル4との間に作用する回転モーメントMB が0になるようオフセット距離ΔLb を設定すれば、摩擦力Fs が9kg-fになっても、X軸案内機構4a の2つの軌道の中央にX軸駆動装置4b を設置する場合に比べて、ベッド1とサドル4との間に作用する回転モーメントMB が2分の1以下になることがみてとれる。
【0022】
サドルが支持するシール板で加工液保持槽を押さえる構成の放電加工装置では、シール板と加工液保持槽との間の摩擦力によってサドルとベッドとの間に回転モーメントが生じ電極の位置決め誤差を生じるが、ベッドとサドルとの間に生じるX軸案内機構の摩擦力および加工液保持槽とシール板の間の摩擦力それぞれによる回転モーメントが互いに相殺するようにX軸駆動装置を配置すれば、ベッドとサドルの間に作用する回転モーメントおよび電極遅れ量を抑制でき加工精度が高くなる。
【0023】
なお、以上の説明では、X軸案内機構は2つの軌道と各軌道の上に同数の荷重支持台を備えるものとしたが、3つ以上の軌道を備え、各軌道上に異なる数の荷重支持台を備える放電加工装置の場合は、上述の軌道の中央を荷重支持台と軌道との間の摩擦力の重心と置き換え、各荷重支持台毎にベッドとサドルの間に作用する回転モーメントを求めB点の位置を設定すればよい。
【0024】
実施の形態2.
図3は、この発明の第2の実施形態である放電加工装置の構成を説明するための側面図である。X軸駆動装置4b はX軸案内機構4a の2つの軌道の中央に配置しており、このX軸駆動装置4b に対してシール板7とほぼ対称な位置にモーメント発生機構8を備えている。モーメント発生機構8はベッド7の後面に押し当て加工液保持槽3とシール板7との間の摩擦力Fs と同じ大きさの摩擦力を発生させる摺り板81 とこの摺り板81 をサドル4に固定する支持板82 とを備え、支持板82 はシール板7をサドル4に固定する支持板71 とともに互いに近接してサドル4に固定している。
【0025】
ベッド1の後面とモーメント発生機構8との間の摩擦力によりベッド1とサドル4との間に生じる回転モーメントと加工液保持槽3とシール板7の間の摩擦力Fs によりベッド1とサドル4との間に生じる回転モーメントは互いに逆向きのため相殺される。また、シール板7を摺り板81 とともにサドル4に対して互いに近接した位置で固定しているので、サドル4には変形がほとんど生じない。このため、サドル4の剛性が小さくても2つの摩擦力による位置決め精度の低下は生じない。
【0026】
図1を用いて説明したこの発明の第1の実施形態である放電加工装置では、最適なオフセット距離を設定して、加工液保持槽とシール板の間の摩擦力によってベッドとサドルとの間に作用する回転モーメントとX軸案内機構の摩擦力によってベッドとサドルとの間に作用する回転モーメントとが互いに相殺するような構成としたが、オフセット距離を最適値より縮めてX軸駆動装置を設置し、残るベッドとサドルとの間に作用する回転モーメントを上に述べたモーメント発生機構と同等な機構によってベッドとサドルとの間に回転モーメントを作用させ互いに相殺するようにしてもよいのはいうまでもない。
【0027】
実施の形態3.
図4は、この発明の第3の実施形態である放電加工装置の構成を説明するための構成概念図である。
43 はサーボモータ42 に連結したロータリエンコーダ、44 は加工液保持槽3に近接したサドル4の端部下面付近に取り付け、サドル4のベッド1に対するX軸方向の移動距離を検出する位置検出器(以下、リニアエンコーダという)、53 はサーボモータ52 に連結したロータリエンコーダである。10はサーボモータ42 を駆動するNC装置、101 は位置指令生成手段、102 はロータリエンコーダ43 、53 およびリニアエンコーダ44 からの信号に基づいて電極の位置決め誤差を算出する位置決め誤差算出手段、103 は位置指令生成手段101 の信号と位置決め誤差算出手段102 の信号を加算しサーボモータ42 の位置指令信号を生成する位置決め誤差補正手段、104 はサーボモータ駆動手段である。
【0028】
次に、位置決め誤差算出手段102 における位置決め誤差の算出方法を説明する。真の電極位置とNC装置10で生成される位置指令との差は、ロータリエンコーダ43 のからの信号Xe をフィードバックするセミクローズド方式の場合は、電極遅れ量ΔXとX軸駆動装置4b の上述したバックラッシュおよびロストモーションとの和であり、リニアエンコーダ44 の信号Xs をフィードバックするフルクローズド方式の場合は、電極遅れ量ΔXである。セミクローズド方式においては、X軸駆動装置4b のバックラッシュおよびロストモーションは上述したとおり従来から行われている方法で補正することができる。
【0029】
電極遅れ量ΔXは次式で表すことができる。
ΔX=LB・(Xe−Xs)/Ls=(LB−Ls)・(サドル5の回転角度)
ここで、
Ls :リニアエンコーダ44 とX軸駆動装置4b との間のY軸方向距離
LB :X軸駆動装置と電極との間のY軸方向距離で、NC装置で生成するY軸位置指令に放電加工装置の大きさによって決まる定数を加えたもの
セミクローズド方式の場合は位置指令生成手段101 で生成した位置指令を別途バックラッシュおよびロストモーションによる補正量で補正した後、位置決め誤差算出手段102 で電極遅れ量ΔXを加算しX軸位置指令とすることにより、電極遅れ量ΔXで補正した位置指令で電極を正確に位置決めできる。もちろん、位置指令生成手段101 で生成した位置指令に対して電極遅れ量とバックラッシュおよびロストモーションを同時に補正してもよいことはいうまでもない。
フルクローズド方式の場合は、先に説明したとおり電極遅れ量のみの補正を行えばよい。
【0030】
図5は、バックラッシュおよびロストモーションの補正済み位置指令に対して電極遅れ量ΔXの補正する場合のフローチャートであり、各ステップの内容は次のとおりである。
S11:ロータリエンコーダ43 からの信号Xe およびリニアエンコーダ44 からの信号Xs の読込み
S12:位置指令生成手段101 で生成したY軸位置指令またはロータリエンコーダ53 からのY軸位置Yの読込み
S13:Y軸位置指令またはY軸位置YによってX軸駆動装置4b と電極との間のY軸方向距離LB を算出
S14:LB 、Xs 、Xe およびLs とからLB・(Xe−Xs)/Ls (電極遅れ量ΔX)の算出
S15:X軸位置指令値Xの電極遅れ量ΔXによる補正(位置指令生成手段101 からのX軸位置指令にバックラッシュおよびロストモーションによる補正をしたX軸位置指令に、電極遅れ量ΔXを加算する)
このようにX軸位置指令を補正して位置決め精度を高め、加工精度を向上させることができる。
【0031】
以上の説明では、加工液保持槽3に近接したサドル4の端部下面付近にリニアエンコーダ44 を設け、サドル4のベッド1に対するX軸方向の移動距離を検出するものとしたが、図6に示すように、加工液保持槽3とサドル4との間のコラム5を支持するY軸案内機構5a と略同じ高さの部位にリニアエンコーダ44■を設け、これから得られる信号Xs■を用いることによりX軸位置指令の位置決め精度をより高めることができる。ただしこの場合、加工液保持槽3のサドル4と対向する面に摩擦力Fs による変形が生じないよう十分な補強を施すことが重要である。図では、リニアエンコーダ44■のスケールを加工液保持槽3に、検出センサーをサドル5に取り付けた場合を示している。
【0032】
次に、このように構成した場合に位置決め誤差が少なくなる理由を説明する。リニアエンコーダ44■からの信号Xs■を用いることによってコラム5を支持するY軸案内機構5a と略同じ高さにあるサドル5前面の位置を検出するので、テーブル2とサドル5の間に生じる変位および補正量をより正確に検出できる。またテーブル2により近い位置で変位を検出するので、電極遅れ量ΔXが小さくなり高い位置決め精度が得られる。
【0033】
以上の説明ではサドル4の加工液保持槽3側にリニアエンコーダ44 を設けるものとしたが、これとは反対側に設けるようにしてもよい。この場合の電極遅れ量ΔXは
ΔX=LB・(Xs−Xe)/Ls
として求めればよい。
【0034】
さらに、サドル4の加工液保持槽3側およびその反対側に2つのリニアエンコーダを設け、両リニアエンコーダ44 の信号をXs1(加工液保持槽3側のリニアエンコーダの信号)、Xs2(加工液保持槽3の反対側のリニアエンコーダの信号)として、電極遅れ量ΔXを
ΔX=LB・(Xs1−Xs2)/Lz
として求めればよい。ここで、
Lz :2つのリニアエンコーダの間のY軸方向距離
である。
【0035】
実施の形態4.
図7は、この発明の第4の実施形態である放電加工装置の構成を説明するための側面図である。図において、45 はサドル5側から延在するシール板7の支持具に取付けた例えばひずみセンサーからなる摩擦力検出手段である。加工液保持槽3とシール板7との間の摩擦力Fを摩擦力検出手段45 で検出し、予め当該放電加工装置について求めた摩擦力検出手段45 の出力と電極遅れ量ΔXの関係から電極遅れ量ΔXを算出し、図4および図5を用いて説明した放電加工装置と同様にX軸位置指令に補正を行えばよい。図8は摩擦力検出手段45 のひずみセンサー出力εと摩擦力Fの関係を示すグラフで、ひずみセンサー出力εと摩擦力Fが比例関係にあることを示している。
【0036】
図9は、摩擦力検出手段45 の出力に基づいて電極遅れ量ΔXの補正する場合のフローチャートであり、各ステップの内容は次のとおりである。
S21:ひずみセンサー45 出力ε読込み
S22:NC装置10が生成したY軸位置指令Yとひずみセンサー45 出力εとからの電極遅れ量ΔX算出
S23:X軸位置指令値Xの電極遅れ量ΔXによる補正
【0037】
このように構成すれば、X軸駆動装置4b を構成するボールねじ41 のリード誤差やバックラッシュの影響を受けずに精度よく電極遅れ量ΔXの補正ができ、位置決め精度を高め、加工精度を向上することができる。
また、加工液保持槽3とシール板7と間の摩擦力の変動に応じて、正確な電極遅れ量ΔXによりX軸位置指令を補正することができ、位置決め精度の低下を防止できる。
なお、摩擦力検出手段として、ひずみセンサーばかりでなく圧電型ロードセルなどの力検出器を用いてもよい。
【0038】
実施の形態6.
図10は、この発明の第5の実施形態である放電加工装置の構成を説明するための構成概念図である。
105 は例えばサーボモータ42 の駆動電流とロータリエンコーダ43 からの信号Xe により、サーボモータ42 に加わる摩擦力を算出する摩擦力推定手段である。102■は信号Xe とロータリエンコーダ53 からの信号Yおよび摩擦力推定手段105 からの信号Fに基づいて、電極遅れ量ΔXを算出する位置決め誤差算出手段である。
【0039】
次に、位置決め誤差算出手段102■の動作について説明する。
加工液保持槽3とシール板7との間の摩擦力Fを摩擦力推定手段105 で検出し、予め当該放電加工装置について求めた加工液保持槽3とシール板7との間の摩擦力Fと電極遅れ量ΔXの関係を求めておき、摩擦力推定手段105 の出力から電極遅れ量ΔXを算出し、X軸位置指令を補正する。
【0040】
図11は電極遅れ量ΔXの補正する場合のフローチャートであり、各ステップの内容は次のとおりである。
S31:サーボモータ42 の駆動電流およびロータリエンコーダ43 の信号Xeの読込み
S32:駆動電流および信号Xe からのサーボモータ42 に加わる摩擦力Fの算出
S33:Y軸位置指令またはロータリエンコーダ53 からの信号Yの読込み
S34:摩擦力Fと信号Yからの電極遅れ量ΔX算出
S35:X軸位置指令値Xの電極遅れ量ΔXによる補正
【0041】
このように構成すれば、図7を用いて説明した放電加工装置と同様にボールねじのリード誤差やバックラッシュの影響を除いた電極遅れ量ΔXの補正、さらに加工液保持槽とシール板との間の摩擦力の変動に応じた電極遅れ量ΔXによる補正ができる。
【0042】
【発明の効果】
この発明によれば、X軸駆動装置のサドルとの連結位置に対する加工液保持槽とシール板の摩擦力による回転モーメントと、X軸案内機構の摩擦力による回転モーメントとが互いに逆の向きになるようにX軸駆動装置のサドルとの連結位置を設定したので、ベッドとサドルの間に作用する回転モーメントおよび電極遅れ量を抑制でき加工精度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の第1の実施形態である放電加工装置の上面図および側面図である。
【図2】 オフセット距離とベッドとサドルとの間に作用する回転モーメントの関係を示すグラフである。
【図3】 この発明の第2の実施形態である放電加工装置の側面図である。
【図4】 この発明の第3の実施形態である放電加工装置の構成概念図である。
【図5】 この発明の第3の実施形態における電極遅れ量ΔXの補正に係るフローチャートである。
【図6】 この発明の第3の実施形態の変形例を示す構成概念図である。
【図7】 この発明の第4の実施形態である放電加工装置の側面図である。
【図8】 この発明の第4の実施形態における摩擦力検出手段センサー出力と摩擦力の関係を示すグラフである。
【図9】 この発明の第3の実施形態における摩擦力検出手段45 の出力に基づいて電極遅れ量ΔXの補正する場合のフローチャートである。
【図10】 この発明の第5の実施形態である放電加工装置の構成概念図である。
【図11】 この発明の第5の実施形態における電極遅れ量ΔXの補正に係るフローチャートである。
【図12】 従来のワイヤ放電加工機の側面図である。
【符号の説明】
1…ベッド 、2…テーブル、3…加工液保持槽
4…サドル、4a …X軸案内機構、4b …X軸駆動装置
44 …リニアエンコーダ、45 …摩擦力検出手段
5…コラム、5a …Y軸案内機構、5b …Y軸駆動装置
61 …第1の電極支持ビーム、62 …第2の電極支持ビーム
6a …Z軸案内機構、7…シール板、10…NC装置
Claims (2)
- ベッドと、該ベッドの一端側に搭載し被加工物を載置するテーブルと、該テーブルを囲繞し加工液を保持する加工液保持槽と、前記ベッドの他端側に搭載し第1の駆動装置によって駆動しかつ第1の案内機構が第1の方向への移動軌跡を規制するサドルと、該サドル上に搭載し第2の駆動装置によって駆動しかつ第2の案内機構が前記第1の方向と直交する第2の方向への移動軌跡を規制するコラムと、該コラム上に搭載し第3の駆動装置によって駆動しかつ第3の案内機構が前記第1の方向および前記第2の方向と直交する第3の方向への移動軌跡を規制する第1の電極支持ビームと、前記サドルが支持し前記加工液保持槽を貫通して前記テーブル下部に延在する第2の電極支持ビームと、前記サドルが支持し前記第1の電極支持ビームが貫通する前記加工液保持槽に押圧し前記第1の方向への前記サドルの移動に応じて摺動し前記加工液保持槽からの前記加工液の漏出を防止するシール板と、前記第1の電極支持ビームおよび前記第2の電極支持ビームとによって支持する電極とを備える放電加工装置において、
前記加工液保持槽と前記シール板の摩擦力による前記第1の駆動装置の前記サドルとの連結位置に対する第1の回転モーメントと、前記第1の案内機構の摩擦力による前記第1の駆動装置の前記サドルとの連結位置に対する第2の回転モーメントとが互いに逆の向きになるよう前記第1の駆動装置の前記サドルとの連結位置を設定したことを特徴とする放電加工装置。 - 前記第2の回転モーメントの大きさが前記第1の回転モーメントの3分の2乃至3分の4の範囲となるよう前記第1の駆動装置の前記サドルとの連結位置を設定した請求項1に記載の放電加工装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP28410598A JP3744229B2 (ja) | 1998-10-06 | 1998-10-06 | 放電加工装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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